E1212 – 知識が動かす地域社会を目指して 学習へのアクセス賞2011

カレントアウェアネス-E

No.200 2011.09.08

 

 E1212

知識が動かす地域社会を目指して 学習へのアクセス賞2011

 

 2011年8月16日,毎年恒例のビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団による2011年の「学習へのアクセス賞」(E827E968E1089参照)が,東アフリカの住民にインターネットへのアクセス環境等を提供している国際NGO「乾燥地域情報ネットワーク」(Arid Lands Information Network:ALIN)に贈られた。同賞は,コンピュータやインターネットを通じて人々と情報を結びつけるための革新的な努力を行っている米国外の公共図書館や関連施設を表彰するもので,受賞団体には賞金として100万ドルが贈られる。また,今回は財団のパートナーであるマイクロソフト社から,ALINが地域コミュニティを支援するのに役立つソフトや技術指導等,約27万ドル相当の支援が行われる。

 ALINは,ケニアやウガンダ,タンザニアの乾燥地域で孤立している集落に対して,「知識センター」(Maarifa Center)と呼ばれる施設を設置し,干ばつや害虫対策,商品作物を売るための市場情報等,生活向上に役立つ情報を提供している。この知識センターでは,利用者はインターネットやその使い方についての研修を無料で利用することができる。だが,ALINの成功はそれだけではなく,利用者に合った形でそれぞれが必要としている知識を提供していることにあるという。

 ALINは,インターネットでの情報収集を希望する利用者には,インターネットを利用するための研修の機会やPCの利用環境を提供している。また,印刷媒体からの情報を求める利用者には,ALINが発行している雑誌「バオバブ・マガジン」を渡し,文字の読めない利用者に対しては,ビデオを見せたりワークショップを行ったりしているという。このような取り組みについて,ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団のジェイコブス(Deborah Jacobs)氏は,「その人に合った情報を提供する独創的なモデルからは,あらゆる知識労働者は学ぶところがあるだろう」と述べ,その取り組みを称えている。

 12ある知識センターの運営のほぼすべてを熱意あるボランティアが担っていることもALINの成功の理由の一つとして挙げられている。センターでボランティアとして働くマテイ(Julius Matei)氏は,普段は農業に従事しており牧師も務めている。「生活水準を高めるような知識を皆に伝えていきたい」と語るマテイ氏は,センター等で学んだ知識をその地方の言葉に訳して利用者に伝えたり,コンピュータスキルを教えたりしているという。また,ケニアのンドヒワで看護師として働くオサノ(Emmy Osano)氏は,HIVに関する知識が乏しいために地域で多くの死者が出ているとして,ナイロビでHIVに関するワークショップに自主参加した後は,その学んだ知識を広めるように努めているとのことである。

 ALINの目標は,知識を活用する人々が動かす地域社会となるような支援を行うことにあるという。ALINは今後,賞金をもとに,知識センターのネットワークの拡大や,端末のハード・ソフトのアップグレード,利用者用の端末の増加,ボランティアスタッフへの研修等を予定しているとのことである。

Ref:
http://www.alin.or.ke/i/ALIN%20Awarded%202011%20Access%20to%20Learning%20Award%20by%20Bill%20&%20Melinda%20Gates%20Foundation
http://www.gatesfoundation.org/atla/Pages/2011-atla-winner-alin-eastern-africa.aspx
http://www.gatesfoundation.org/press-releases/Pages/arid-lands-information-network-atla-110816.aspx
E827
E968
E1089