E1154 – 第7回レファレンス協同データベース事業フォーラム<報告>

カレントアウェアネス-E

No.189 2011.03.03

 

 E1154

第7回レファレンス協同データベース事業フォーラム<報告>

 

 2010年2月25日,第7回レファレンス協同データベース事業フォーラムが,「レファ協のある日常へ」をテーマとして,国立国会図書館関西館で開催された。フォーラムは,専門家の講演,参加館の実践報告等を通じて事業への認識を深め,併せて関係者相互の情報交換,交流の場とすることを目的として毎年開催されているものである。

 午前の部では,国立国会図書館からの2010年度事業報告に続き,大庭一郎・筑波大学大学院講師から「日本の図書館のレファレンス事例集」と題した基調講演が行われた。講演では,日本の図書館のレファレンス事例集の整備の変遷,提供の現状,そしてナレッジマネジメントの観点から,レファレス事例集のあり方について述べられた。

 午後の部では,2010年度実施した「API腕自慢」の応募作品について,アカデミック・リソース・ガイド株式会社代表取締役の岡本真氏から講評が行われた。「API腕自慢」は,2010年3月のレファ協の外部提供インタフェース(API)公開を記念して,レファ協API,ならびにレファ協データの利用促進を図り,その新たな可能性・活用方法を探るべく実施したもので,9名10作品の応募があった。岡本氏からは,西佳祐氏作成の「Wikipediaにレファレンス協同データベースでの検索結果を表示するGreasemonkeyスクリプト」について,より多くの利用者がいるWikipedia内にレファ協の役立つ情報を表示するのがよい,宮川陽子氏作成の「福井県立図書館公式サイト:調べる・相談するメニュー内:『レファレンス事例集,アクセスランキングトップ10』」について,レファ協のみでなく,福井県立図書館にとっても役立つところがよい 等々,個々の作品へのコメントがあった。また,レファ協のデータは100万件は必要であろう,といった量の追求など今後のレファ協の課題についても語られた。

 その後,岐阜市立図書館の岩永知子氏,同志社大学図書館の中島晴子氏,東京都江戸東京博物館図書室の井上美奈子氏から,それぞれレファ協に関する業務体制などについての実践報告が行われた。岩永氏からはレファレンス処理票の改訂や館内での研修の実施によるレファ協を定着させる取組みなどについて,中島氏からは働きながらレファレンス技能について学ぶ体制作りの必要性や,データを公開してわかったことなどについて,井上氏からは博物館図書室と公共図書館の違い,更新し続けられる組織作りなどについての報告があった。

 実践報告に引き続き,斎藤誠一・千葉経済大学准教授をコーディネーターに,大庭講師,岡本氏,岩永氏,中島氏,井上氏をパネリストに迎えて,パネルディスカッション「レファ協のある日常へ」が行われた。ディスカッションでは,「日常的なデータ登録」という着眼点から,「レファレンス協同データベース事業の,組織内での位置づけの現状について」「登録するデータを選別することについて」「図書館員の専門性と研究者との違い」などについて意見交換が行われた。また「日常的な利用」という観点から,「APIの活用」「研修での利用(司書課程での研修と,図書館員への研修)」などについて,活発な議論が行われた。会場からは,レファ協への参加規定の中に学校図書館が位置付けられていない中での京都府立高等学校図書館協議会司書部会の実験参加の経緯と,今後の学校図書館のレファ協への参加の可能性などについての質問が出された。

 基調講演,「API腕自慢」の講評,様々な館種からの実践報告,そしてパネルディスカッションでの意見交換は,参加者にとって示唆に富むものになったのではないだろうか。

 なお,本フォーラムは,Twitterで中継を行い(ハッシュタグ“#crdf2011”),インターネット上でも意見交換が行われた。

(関西館図書館協力課・レファレンス協同データベース事業事務局)

Ref:
http://crd.ndl.go.jp/jp/library/forum_7.html
http://crd.ndl.go.jp/jp/library/api_2010_list.html
http://twitter.com/crd_tweet