E1138 – 国立国会図書館における2009年度の大量脱酸性化処理試行結果

カレントアウェアネス-E

No.186 2011.01.20

 

 E1138

国立国会図書館における2009年度の大量脱酸性化処理試行結果

 

 国立国会図書館(NDL)は,2009年度に,国内で実用化されている大量脱酸性化処理の二つの処理方法を試行し,その有効性,安全性等について調査した。『国立国会図書館における平成21年度の大量脱酸性化処理試行に関する結果報告』(2010年12月)は,その試行結果を取りまとめ,NDLホームページで公開したものである。

 NDLでは,1998年度及び1999年度に,酸性紙資料の保存対策として,当時日本でただひとつ実用化されていた乾式アンモニア・酸化エチレン法(DAE法)による大量脱酸性化処理の試行を行った。その後,DAE法は改良され,2008年には日本でもブックキーパー法(BK法)による大量脱酸性化処理が開始された。今回の試行は,こうした経緯を受けて,所蔵資料へのBK法及びDAE法による大量脱酸性化処理の適用の検討に資することを目的に行ったものである。

 DAE法は,アンモニアガス及び酸化エチレンガスを用いる気相処理による方法である。化学反応により,酸を中和するアルカリ物質としてエタノールアミン類が紙中に生成される。国内で研究・開発され1999年から本格的に操業を行っている。BK法は,液相法で,不活性な非水溶液中に酸化マグネシウムの微粒子を分散させた処理液を用いる。処理液に資料を浸した後,液体を気化させるとアルカリ物質である酸化マグネシウムが紙繊維間に残留する。1992年に,BK法を用いた大量脱酸性化処理が米国で操業を開始した。

 試行内容は,NDLの所蔵資料(複本)245冊及びテスト用資料(所蔵資料ではなく破壊試験が可能なもの)77冊を対象に,それらを二つのグループに分けて別々の処理を行い,処理済資料について,職員による点検,色差測定及び変色・手触り・においの評価,外部委託による有効性調査及び安全性調査を行うというものであった。

 試行結果から,両処理方法とも脱酸性化処理としては有効であり,処理済資料の安全性にも問題がないことが確認された。また,本報告では,各処理方法の特質上,処理に向き不向きの資料があること,機械で一括処理するという大量脱酸性化処理の特徴をふまえて資料に合った方法を選択することが重要であること,そのためにはこれまで蓄積された情報を基に対象資料の事前選別を慎重に行うことが必要であることも指摘している。

 NDLホームページでは,本報告と併せて,有効性調査及び安全性調査の結果報告書も掲載している。ともに全調査項目の測定データを含めた詳細な調査結果を示すものである。大量脱酸性化処理を今後実施しようとする機関や酸性紙資料の保存に関心を持つ方々の参考になれば幸いである。

(収集書誌部資料保存課)

Ref:
http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/data_operat_05acidremove2.html
http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/data/deacid_h21_rep1.pdf
http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/data/deacid_h21_rep2.pdf
http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/data/deacid_h21_rep3.pdf