カレントアウェアネス-E
No.182 2010.11.04
E1113
オープンアクセス誌の現状を探る「SOAPプロジェクト」報告書
査読付きのオープンアクセス(OA)誌の出版状況等について調査する「SOAPプロジェクト」(Study of Open Access Publishing project)の第1次の報告書が,2010年9月14日付けで公表された。同プロジェクトは,欧州委員会(EC)の資金援助のもと欧州原子核研究機構(CERN)が中心となり,2009年3月から2011年2月までの期間で実施しているものである。第1フェーズで「提供」(offer)の状況,第2フェーズで「需要」(demand)の状況を調査し,最後の第3フェーズでそれらを統合した結果が示される予定となっている。
今回結果がまとめられたのは第1フェーズの「提供」の状況についてであり,OA誌のディレクトリであるDOAJ(Directory of Open Access Journals)のデータを基にその他の情報源も調査し,刊行開始年,収入源,主題分野,ハイブリッドオプション(非OA誌に掲載する論文をOAとするオプション),著作権等についての分析が行われた。調査対象は,DOAJに掲載されている4,032タイトルのうち,英語以外の言語のものと出版が中止されたものを除いた,1,809の出版社の2,838タイトルである。このうち2,711タイトルについて2007年または2008年における1年間の論文数が数えられ,その合計は116,883であった。
OA誌の創刊は1990年代後半から増え始め,近年では医学系を中心に毎年200から300タイトルの増加となっている。報告書では年間論文数の多い14社を大規模出版社とし,その他の出版社と分けて分析している。年間での全体の論文数の約30%にあたる36,096論文が,大規模出版社14社が刊行する616タイトルの雑誌で公表されている。
主題分野別に見ると,調査対象全体では雑誌タイトル数の3分の2が科学・技術・医学(STM)分野で,残りの3分の1が社会科学・人文科学(SSH)分野という割合になっているが,大規模出版社の雑誌はほとんどがSTM分野で,SSH分野は5%のみである。
主な収入源については,大規模出版社では「投稿手数料」「会費」「広告」が多いのに対し,その他の出版社では「スポンサー」「紙版の購読料」が多いという違いがある。この中でも,投稿手数料については,多くのOA誌を出している出版社ほど投稿手数料を収入源としている割合が高いという,出版社の規模との関連性がみられた。
その他の結果として,クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの使用は大規模出版社に多いこと,インパクトファクター測定のデータベースへの収録割合は出版社の規模による差はないこと,ハイブリッドオプションのあるタイトルの論文の約2%がOAとなっていること,等が示されている。
Ref:
http://arxiv.org/ftp/arxiv/papers/1010/1010.0506.pdf
http://edoc.mpg.de/478647
http://project-soap.eu/