E1072 – 「人生を変える」ソートン刑務所図書館

カレントアウェアネス-E

No.175 2010.07.22

 

 E1072

「人生を変える」ソートン刑務所図書館

 

 2010年7月6日,英国の図書館・情報専門家協会(CILIP)が毎年恒例の “Libraries Change Lives Award”の受賞対象プロジェクトを発表した。2010年度に受賞したのは,エジンバラ市とソートン刑務所図書館のパートナーシップである。

 “Libraries Change Lives Award”とは,図書館利用者の人生に影響を与えるようなサービスを行ったり,地域住民を結びつけたりするなど,創造的な活動を行う図書館等のプロジェクトに対して贈られる賞である。この賞の目的は,図書館等が地域住民に対して行うサービスを称え,その良い取り組み事例を広く示すことで,図書館が果たすイニシアチブを促すことにある。

 ソートン刑務所図書館は,2008年11月に開館した,まだ新しい図書館である。同館は,受刑者が出所後に社会に復帰して,教育を受けたり就労したりする機会を得られるようサポートすることを目的としており,開館1年目には12,500人の受刑者が利用したという。また,それ以前の刑務所図書館では資料の80%が破損の被害にあったのに対して,新しい図書館になってからは破損被害がゼロとなるなど,受刑者がこの刑務所図書館に寄せる思いをこれらの数字から見てとることができる。

 同館は明るく入りやすいデザインで,刑務所の環境とは大きく異なる印象を与える。それらのデザインや設備は,受刑者自身の手によるものも含んでいるという。受刑者はそこでリテラシーを身につけるだけでなく,出所後に職を探すための履歴書の書き方について図書館員から教わったり,読書以外にもゲームをしたりすることができ,また,基本的な図書館員のスキルを学んだりすることもできるという。

 “Libraries Change Lives Award”選考委員長のコンスタール(Linda Constale)氏は,「このプロジェクトは,“changing lives”を体現しそれを証明するものであり,受刑者のみならず刑務所内で働くスタッフにも大きな影響を与えるものである。…エジンバラの刑務所が行っている試みは,国内の同様のプロジェクト担当者にインスピレーションを与えるものである」と述べ,ソートン刑務所図書館の取り組みを称えている。

 なお,ソートン刑務所図書館以外の“Libraries Change Lives Award”のファイナリストは,バーキング・アンド・ダゲナム・ロンドン特別区の図書館とマンチェスターの図書館の2つである。それらが取り組んでいるプロジェクトについては,ソートン刑務所図書館の事例も含めて,YouTube上でCILIP が公開している映像で見ることができる。

Ref:
http://www.cilip.org.uk/about-us/medalsandawards/libraries-change-lives/pages/lclawardintro.aspx
http://www.cilip.org.uk/about-us/medalsandawards/libraries-change-lives/pages/lclafinalist10.aspx
http://www.edinburgh.gov.uk/internet/internet_homepage/council_news/joy%20as%20saughton%20prison%20library%20picks%20up%20major%20industry%20award%20-%206%20july%202010/
http://www.youtube.com/CILIPMarketing#p/a/u/0/sp6uNF4hcIw