カレントアウェアネス・ポータルは、図書館界、図書館情報学に関する最新の情報をお知らせする、国立国会図書館のサイトです。

E1013 - 子どもたちの読書を楽しくするセラピー犬

カレントアウェアネス-E

No.165 2010.02.03

 

 E1013

子どもたちの読書を楽しくするセラピー犬

 

 全米でベストセラーとなり,日本語にも翻訳された『図書館ねこデューイ: 町を幸せにしたトラねこの物語』(E881参照)の主人公,デューイの影響もあって,「図書館の動物と言えば,猫」というイメージが定着しつつある。しかし実は,米国を中心に,犬も活躍している。

 「人間と動物のきずなを通じて,生活の質を向上させること」をミッションとして活動する米国の非営利組織“Intermountain Therapy Animals”(ITA)は1999年から,「子どもが犬に本を読んであげる」という方法で,子どものリテラシーを伸ばそうというプログラム“R.E.A.D.”(Reading Education Assistance Dogs)を開始した。どんな犬でもよいわけではなく,R.E.A.D.を実践できるのは,ITAの認定を受けたセラピー犬とトレーナー(セラピー犬を訓練し,また現場に同行してプログラムの遂行を管理する役割を担う)のチームである。プログラム開始から10年以上を経た現在では,全米各地,カナダ,英国で,数千ものチームが活躍している。R.E.A.D.の実践は,図書館はもちろんのこと,学校,福祉施設など,幅広い施設に適用可能となっている。

 なぜ犬に本を読んであげることが,子どものリテラシー向上に繋がるのか。それは,子どもの音読を聞く犬の姿勢にある。リテラシーに課題のある子どもたちは,本を音読する際,教師や同級生から読み間違いを指摘されたりすると,そこで諦めてしまうことがよくあるという。このような子どもにとって音読は,恐ろしい課題になってしまう。ところがR.E.A.D.のセラピー犬は,音読をじっと聞き,子どもが読みに詰まったときには,舐めたり,鼻をこすり付けたりして,優しく励ますよう訓練されている。もちろん,子どもを批判したりはしない。そのために,子どもたちはくつろいだ気持ちで音読ができるようになり,本を最後まで読めるようになる。そして次第に読書を楽しめるようになっていくのである。

 R.E.A.D.のウェブサイトには,子どもたちが犬と読書をする様子の写真が多数掲載されている。2人(1人と1匹)で本を一生懸命のぞき込んでいるもの,犬がゆったりと子どもに体を寄せながら話に耳を傾けているものなど,どの写真からも,子どもたちが大好きな「読書仲間」と本を楽しんでいる様子が伝わってくる。

 ニューヨーク市のある学習センターでは,ホームレスの子どもたち向けにR.E.A.D.を取り入れている。ホームレスの子どもたちは,精神的に大きなストレスを抱えているが,犬と触れ合い,心を通わせることが,そのストレスを和らげるという。R.E.A.D.は,リテラシーの向上だけでなく,子どもたちの心の安定や成長にも優れた効果を発揮している。

Ref:
http://www.therapyanimals.org/R.E.A.D.html
http://www.therapyanimals.org/Pictures-of-READ.html
http://blog.seattlepi.com/bookpatrol/archives/190927.asp
E881