E602 – ブログ発!カバーの色で検索するOPAC

カレントアウェアネス-E

No.100 2007.02.14

 

 E602

ブログ発!カバーの色で検索するOPAC

 

 「表紙がこういう色で・・・」という表現で,図書の検索を依頼された経験を持つ図書館員は,少なくないだろう。このような問いかけに答え得る,図書館員必見のOPACが,英国のシステムライブラリアンのブログから生まれようとしている。

 2007年1月30日,英国中部にあるハダースフィールド大学図書館でシステム管理者を務めるパターン(Dave Pattern)は,敬愛するヒッチコック監督の映画から,数カットごとに画面の平均的な色調を割り出し,それらを時系列順に並べたグラフを,自ら運営するブログ“Self-plagiarism is style”に公開した。当初パターンは,色調を平均化するというアイデアを本に適用し,カバーの色によってヴァーチャルに図書を排列・グルーピングすることを考えていたが,「本のカバーの色が検索に使えるとよいのでは」と,翌1月31日の早朝,ブログにコメントが寄せられた。そこでパターンはさっそく同日夕刻に,「カバーの平均的な色調から,正確に図書が検索できるかどうかわからない」ため,あくまで「急ごしらえの,洗練されていない試作システムである」と前置きした上で,カバーの色から本を検索するOPAC“cover finder!”を公開した。

 “cover finder!”では検索したいカバーのカバー画像を,16進数のRGB値に変換して入力し,“find covers”ボタンをクリックすると,該当する図書のカバーの写真が表示される。表示された写真をクリックすると,ハダーズフィールド大学図書館のOPACシステムに移動し,該当する図書の書誌と同大学内の所蔵状況が表示される。カバー写真のデータは,ハダーズフィールド大学図書館のOPACシステムに搭載されているものを加工して用いている。また検索画面からは特定の色を指定せず,ランダムに色を選び,同時に同じ色の図書のカバーを表示する“pick random colour”機能も装備している。

 パターンはさらに,手書きイメージから画像共有サイト“flickr”の画像を検索するソフト“retrievr”を利用して,手書きのイメージから類似したカバーをもつ図書を検索するシステムも試作している。カバーを縦・横それぞれ8分割して,全64画素の色調データをデータベース化して利用しているが,検索に時間がかかることや,入力画像から意図する本に正確にたどり着けないという技術的課題が存在することを,2月1日の記事で明らかにしている。この記事にも複数のコメントが寄せられており,技術のことはよくわからないがすばらしい,といった感想ばかりでなく,画像を縦・横それぞれ16分割すればよいのでは,といった提案も含まれている。パターンも同じアイデアにたどり着き,現在作成中であるという。

 カバーの色から本を探し出すOPACは魅力的であり,今後の発展が期待される。それとともに,ブログ上で展開される世界中の図書館関係者の会話から,このような新たな検索システムが生み出されていることも,注目に値するのではないだろうか。

Ref:
http://www.daveyp.com/blog/index.php/archives/169/
http://www.daveyp.com/blog/index.php/archives/170/
http://webcat.hud.ac.uk/perl/colour.pl
http://labs.systemone.at/retrievr/about
http://www.daveyp.com/blog/index.php/archives/172/
http://acrlblog.org/2007/02/03/i-know-it-was-red/