E423 – 危機に立つ文化財保存の実態(米国)

カレントアウェアネス-E

No.73 2005.12.21

 

 E423

危機に立つ文化財保存の実態(米国)

 

 文化財を所蔵する機関の65%は,適切でない保存環境の影響を受けて収蔵品に何らかの被害を受けたことがある。非営利法人Heritage Preservationが,博物館・図書館サービス機構(IMLS)と協力して実施した全米の美術館・博物館・図書館へのアンケート調査から,光,温度,湿気,ほこりなどの環境要因から文化財を保護する対策が十分取られていない実態が浮き彫りになった。

 3,370機関から回答を得て12月5日に報告された調査結果からは,26%の機関が何らの環境コントロールを全く行っていないこと,現在1億9千万点ほどの所蔵品が何らかの修復処置を必要としていること,コレクションの保護にあたる専門スタッフがいない機関が80%にのぼること,68%の機関の保存にかける予算が年間3,000ドル以下であることなどが明らかになった。また,80%の機関が,自然災害等に遭遇した際の緊急対策プラン(CA1570参照)とそれを実行するだけのスタッフへのトレーニングが欠けていると報告している。

 この結果を受けて,Heritage Preservationは,民間セクターおよび公的セクターの双方に対し,国民のものである文化財の適切な保存のために,より充実した支援策や資金提供を呼びかけている。

Ref:
http://www.heritagehealthindex.org/
http://www.heritagepreservation.org/HHI/HHIsummary.pdf
http://www.ala.org/ala/alonline/currentnews/newsarchive/2005abc/december2005ab/storage.htm
http://www.hozon.co.jp/hobo/hobo_top.htm (12月12日の記事)
CA1570