E2149 - インド連邦議会下院の“Parliament Digital Library”

カレントアウェアネス-E

No.371 2019.06.27

 

 E2149

インド連邦議会下院の“Parliament Digital Library”

 

●はじめに

   連邦制国家のインドにおいて,連邦議会は大統領,上院(Rajya Sabha),下院(Lok Sabha)から構成される。国民による直接選挙で選ばれた議員からなる下院は,議院内閣制の下で首相を事実上選出するなどの点で上院に優位している。

   インド連邦議会下院は,2018年12月,下院関係の議会資料を収録したデジタルアーカイブ“Parliament Digital Library”(PDL)を公開した。その主な目的は,各種議会資料に一元的にアクセスできるデジタルアーカイブを設けることにより,下院内外からの情報ニーズに応える点にある。加えて,インド連邦議会図書館(Parliament Library)の所蔵資料の長期保存,議会運営におけるペーパーレス化の推進といった意義も併せ持っている。

   以下,PDLの概要を紹介する。

●開発経緯

    PDLの構築にあたり,2012年から2014年までの間,下院議長が設置した委員会において連邦議会図書館,先端電算技術開発センター(C-DAC),国立情報学センター(NIC),連邦政府の関係省庁などが参加して検討を重ね,デジタル化対象資料や開発スケジュールが明確化された。C-DACはスキャニングと画像編集,NICはウェブサイトの構築,省庁などはコンテンツとなる電子ファイルの提供の側面から協力し,PDLの公開へと至った。PDLの運営は下院事務局が担っており,継続的にコンテンツが追加されている。
 

●特長

    PDLの収録コンテンツは,主に連邦議会図書館の所蔵資料をデジタル化して作成されており,その総数は約41万点(一部にボーンデジタルの電子ファイルも含む。2019年6月現在)に達している。デジタル化資料の中心をなすのは,英国植民地時代に遡る1858年以降の議事速記録である。実はPDLのサービスが始まる前から,下院のウェブサイトには過去約20年分の議事速記録の内容が掲載されていた。しかし,1990年代中頃までの議事速記録を参照するには,インドでは連邦議会図書館やインド国立図書館,インド国外においても限られた図書館(日本の場合,国立国会図書館など)の所蔵資料を利用するほかなかった。今回,PDLによって1858年から現在までの議事速記録をはじめとするコンテンツが公開されたことで,インド内外の議会・行政関係者,法律家,マスメディア,研究者などインドの事情に関心を持つ人々が,下院が提供する信頼度の高い資料群に簡便にアクセスできるようになった意義は大きい。
 

●コンテンツ

    PDLで利用できるコンテンツ(英語,ヒンディー語)は,トップページ上部のタブに従えば,次のように大別できる。
  • 下院議事速記録(Lok Sabha Debates):1952年以降における議員による口頭質問と政府による口頭答弁の逐語的記録,議員による文書質問と政府による文書答弁,各種の討論,動議など
  • 議会文書(Parliamentary Documents):大統領演説,予算演説,議会委員会報告書
  • 歴史的議事速記録(Historical Debates):インド立法参事会(1858年から1920年),1919年インド統治法に基づく二院制議会である参事会(1921年から1946年)と立法議会(1921年から1947年),憲法制定議会(1946年から1950年),暫定議会(1950年から1952年)の記録
  • 出版物(Publications):連邦議会の活動に関する書籍,政策課題ごとの小冊子,主に国内の議会動向をまとめた季刊誌など,下院事務局が作成した出版物

●使い方

   PDLのトップページ(英語)には,キーワード検索のためのSEARCH欄と,ブラウジングの起点となるタブ別のプルダウンメニューが用意されている。

   キーワード検索では,コレクション種別も併せて指定することができる。メタデータや議事速記録などの本文にヒットがあれば検索結果が一覧表示され,絞り込むには,画面上部のRefine Your Search欄で検索条件を変更または追加して再検索するか,画面右側のDiscover欄に用意された年代,委員会名などのファセットから選択する。閲覧したいタイトルを特定して右側のViewをクリックするとメタデータが表示され,View/OpenボタンをクリックするとPDFファイルの本文画像を閲覧できる。

   ブラウジングするのであれば,コンテンツを大別した各タブからプルダウンメニューを表示させ,いずれかを選ぶと該当タイトルが一覧表示される。その上で,時系列順の並び替えやファセットからの絞り込みができる。また,右端のExplore Byタブの下には「議員(Members)」,「議事種別(Debate Type)」などのメニューが設けられている。それぞれ豊富な項目があり,選択することで該当タイトルが一覧表示され,適宜並べ替えることもできる。タイトルを特定後,本文画像を閲覧するまでの手順は,キーワード検索の場合と同じである。

●むすび

    このように,PDLは議事速記録をはじめとするインド連邦議会下院の膨大な資料を幅広く検索できるアーカイブである。一方,下院のウェブサイトでは,議事速記録の収録範囲は過去約20年分に限られるが,「質問(Questions)」,「議事(Debates)」ごとに詳細検索画面が用意されている。現時点ではPDLと下院サイトの役割分担が必ずしも明確でない印象もあるが,今後コンテンツの拡充を通じてPDLの役割が増すものと予想される。

   インドでは2019年4月から5月に5年ぶりの総選挙が行われ,新たに成立した第2次モディ政権の動向が世界的に注目されている。日本とインドの経済上,外交上の関係が進展する中,PDLはインドの法令や政策に関する情報を得る際の有用な情報源になるものと思われる。

調査及び立法考査局議会官庁資料課・西願博之

Ref:
https://eparlib.nic.in/
http://eparlib.nic.in/about_us.jsp
http://www.uniindia.com/news/india/mahajan-launches-parliament-digital-library-website/1435450.html
https://www.aninews.in/videos/national/all-discussions-held-parliament-constituent-assembly-have-been-digitized-sumitra-mahajan/
https://mpa.gov.in/sites/default/files/digitalinitiatives.pptx
https://loksabha.nic.in/
https://rnavi.ndl.go.jp/politics/entry/India.php#parliament