E1800 - 障害者差別解消法に対応したJLAの図書館向けガイドライン

カレントアウェアネス-E

No.304 2016.06.02

 

 E1800

障害者差別解消法に対応したJLAの図書館向けガイドライン

 

 日本図書館協会(JLA)は2016年4月の障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)施行に向け、2015年12月に「図書館利用における障害者差別の解消に関する宣言」を発表し、次いで2016年3月「図書館における障害を理由とする差別の解消の推進に関するガイドライン」(以下ガイドライン)を発表した。

 障害者差別解消法は障害者の権利に関する条約(障害者権利条約)(E705参照)批准に向けた国内法の整備の中で制定されたもので、権利条約及びその後改正された障害者基本法を具体的に実現するための法律である。

 JLAは図書館の業務に即した,より具体的な取組を明らかにすることを目的にこのガイドラインを作成した。ガイドライン作成はJLAの障害者サービス委員会を中心に行い、パブリックコメントの実施、案段階でのセミナーの開催、専門家からの意見聴取等の結果を参考にした。

 障害者差別解消法の考え方は、従来の福祉的発想と異なり、障害者を含むあらゆる人が社会で平等に生きていくことを、社会自らが保障することを目的とするものである。この法律のポイントは、(1)不当な差別的取扱いの禁止と、(2)社会的障壁を除去するために合理的配慮の提供と基礎的環境整備の2つを提示していることにある。

 ガイドラインでは、これらの用語の意味を図書館に即して明らかにするとともに、その具体例を示している。さらに合理的配慮の提供と基礎的環境の整備について、より詳細に何を行なうべきか規定した。また、従来図書館が実施してきた障害者サービス(図書館利用に障害のある人々へのサービス)との関係も明らかにした。

 次にガイドラインの内容を紹介すると、1の基本事項の中で、ガイドラインの目的、対象となる図書館、対象となる障害者、対象となる業務・サービス等を規定している。対象となる図書館は公立図書館だけでなく、私立図書館や専門図書館、大学図書館、学校図書館等あらゆる図書館である。さらに、対象となる障害者として、いわゆる心身障害者にとどまらず、例えば高齢者や、入院患者、寝たきり状態の人、外国人など図書館利用に何らかの障害がある人すべてが対象であるとした。2では障害に基づく差別や社会的障壁の意味を明らかにし、3で図書館において不当な差別的取扱いにあたるものを例示しながら説明している。

 4は合理的配慮の項目で、その意味や具体例を示している。また、障害者差別解消法では、差別の解消について「実施に伴う負担が過重でないとき」は合理的配慮を行わなければならないとされており、過度な負担に当たるかどうかが問題となりやすいことから、(1)事務・事業への影響、(2)実現可能性(物理的・技術的制約、法的・制度的な制約、人的・体制上の制約)、(3)費用・負担の3つについての程度と(4)財政・財務状況という4つの要素を示し、これらから個別かつ客観的に判断すべきであるとした。ただし、これらの判断基準は合理的配慮の不提供を理由付けするためにあるものではなく、あくまでも法の趣旨を損なうことのないよう、障害者への前向きな対応が必要である。

 5は基礎的環境整備の項目で、まず、その考え方を示し、続いて図書館における具体的な基礎的環境整備について6つの項目(職員の資質向上のための研修会、施設設備の整備、読書支援機器、障害者サービス用資料、サービス、アクセシブルな図書館ホームページ・広報等、規則・ルールの修正)にわけて具体例を挙げている。現在公開されている他の機関の対応要領等で基礎的環境整備を明確に位置づけているものはあまりない。ガイドラインでは、基礎的環境整備の重要性を説明するとともにその具体的内容を示しており、大きな意味がある。

 6はガイドライン実施のために必要なこととして、相談体制や職員の対応方法を示し、図書館や図書館職員と障害のある利用者との関係、障害のある職員の活用について触れている。また、最後に用語解説と参考資料も付した。

 図書館はこのガイドラインを活用し、図書館利用に障害のある人に不当な差別をしてはならないことはもちろん、図書館サービスに内在する社会的障壁を、合理的配慮の提供と基礎的環境整備により解消していくべきである。障害者権利条約で「合理的配慮の不提供」が差別として規定されており(第2条),図書館のルールや規則を根拠に障害者の利用を拒否することは許されない。では具体的に図書館は何をどうすればよいのか。その答えをガイドラインが示している。

日本図書館協会障害者サービス委員会・佐藤聖一

Ref:
http://www.jla.or.jp/portals/0/html/lsh/sabekai_guideline.html
http://www.jla.or.jp/demand/tabid/78/Default.aspx?itemid=2785
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H25/H25HO065.html
http://www.jla.or.jp/portals/0/html/lsh/sabekai_guideline_an.html
http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/rights/adhoc8/convention131015.html#ARTICLE2
E705