E1750 – 「共通語彙基盤」の構築に向けた取組

カレントアウェアネス-E

No.295 2015.12.24

 

 E1750

「共通語彙基盤」の構築に向けた取組

 

 経済産業省及び独立行政法人情報処理推進機構(IPA)では,「世界最先端IT国家創造宣言」及び各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議による「電子行政分野におけるオープンな利用環境整備に向けたアクションプラン」に沿って,データで用いられる言葉の意味や構造を整理し,システム間の連携やデータの二次利用を円滑にする「共通語彙基盤」(Infrastructure for Multi-layer Interoperability:IMI)事業を推進している。欧州委員会(EC)でもその意義は認められており,ECの欧州行政機関相互運用ソリューション(Interoperability Solutions for European Public Administrations:ISA)コアデータ,米国政府データ連携基盤(National Information Exchange Model:NIEM)等とともに,各国の基本語彙間のマッピングを進めるために国際コミュニティを設立し,連携を強化している。

 共通語彙基盤とは,行政機関等が情報の電子的な公開や交換を行う際,伝えたい内容が正しく伝わるようにするために,
(1)情報の構造に一貫性を持たせ,
(2)そこに用いられる用語の意味を明確にし,
(3)表記の統一または用語間の関連性の明確化を図る
事を目的に,情報の構造,用語の意味定義,データ作成時のルール等の基本情報を共有し,活用するための基盤である。

 共通語彙基盤の整備により,行政機関等は,意味が明確で再利用しやすい情報をオープンデータとして効率的に作成することが出来るようになり,機械的に意味の解釈が可能な情報を公開できる。オープンデータの普及により情報交換効率が向上し,データ収集やデータの横断的利用が機械的に可能になることで,行政の業務効率及びサービスの向上が期待される。さらに,オープンデータの利活用が促進され,行政と民間のデータの組合わせもしやすく,生活利便を高めるサービスや災害時のサービスなど,各種産業の発展等も期待される。

◯共通語彙基盤の取組の成果

 共通語彙基盤の取組の現在の成果として,「コア語彙2」と「表からRDF」をIPAのウェブサイトで公開している。

・コア語彙2(Ver2.2)
 共通語彙基盤では,3つの階層(「コア語彙」・「ドメイン語彙」・「ドメイン階層語彙」)を定義している。

 中でも「コア語彙」は,氏名,住所,組織名,施設表記方法等,あらゆる分野で利用される普遍的な用語の集合で,多くのシステム間で情報交換のための基礎となり,データ交換,オープンデータの二次利用等の効率化に役立つものとして検討を進めている。コア語彙の一覧表をはじめとし,XMLやRDFのスキーマ,その他関連ドキュメントをあわせて公開している。

・「表からRDF」
 「表からRDF」とは,保有する既存のデータを,IMI語彙(共通語彙基盤が提供する語彙)を利用した構造化データに変換するまでの一連の作業を支援するツールである。

 CSVやXLS等の表形式データでも,このツールを利用して,IMI語彙を利用した構造化データ(XMLやRDFのファイルフォーマット)として出力することが可能である。これらの構造化されたIMI語彙のデータは,さまざまなシステム間でのデータの相互運用性を高めることが可能となる。

◯共通語彙基盤普及のためのセミナー
 「共通語彙基盤」の理解を広げるため,「共通語彙基盤セミナー~“つながる”データ“つながる”システム~」を全国5か所(福岡,仙台,札幌,大阪,新潟)で開催した。

 いずれの会場でも,共通語彙基盤事業について,内閣官房CIO補佐官の平本健二氏から,政府の取組を説明していただいた。その後IPAから,語彙を整備して効率的なオープンデータ構築を実施する先進自治体の事例などを中心に,実際にどのように「データ」を活用すればよいか,「表からRDF」のデモを交えながら説明を実施した。

 中でも札幌会場で実施された,IPAのコア語彙を元に機械判別可能な形式でオープンデータ化を進めている北海道森町役場の山形巧哉氏の講演では,データ連携が容易であること,必要なデータの修正や集計・組合せが簡単に行えること,検索が容易となりで文書管理がしやすいなどの理由から,業務効率化の一番の手段は,情報の検索や作成に無駄な時間をかけない「語彙統一」である事が強調された。

 総計200人強の参加を得て,各地のオープンデータに直接関わる情報処理サービス業,ソフトウェア製造業,自治体等関係者から,現状のご苦労や今後に向けてのご要望をいただく事ができ,大きな手応えが得られた。特に今後オープンデータの公開に悩む自治体の方からは,他の自治体の活用事例や「表からRDF」のデモが,公開する情報の参考になったとの感想ももらった。

 今後も,IPAでは共通語彙基盤の整備を進めていく計画であり,事業の進捗をご説明していくセミナーを継続して実施する。ご意見等があれば,IPAにお寄せいただきたい。

情報処理推進機構技術本部国際標準推進センター

Ref:
https://goikiban.ipa.go.jp/
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kettei/pdf/20150630/siryou1.pdf
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/cio/dai56/seibi2.pdf
https://goikiban.ipa.go.jp/node756
https://imi.ipa.go.jp/tools/0051/
http://www.town.hokkaido-mori.lg.jp/docs/2014101000027/
http://www.town.hokkaido-mori.lg.jp/docs/2014101000041/
https://joinup.ec.europa.eu/node/109900/
http://imi.ipa.go.jp/doc/IMI_Overview_v2.pdf