E1590 – 東日本大震災後の図書館等をめぐる状況(2014/8/4現在)

カレントアウェアネス-E

No.264 2014.08.07

 

 E1590

東日本大震災後の図書館等をめぐる状況(2014/8/4現在)

 

 東日本大震災後の図書館等をめぐる状況について,本誌での既報(E1555ほか参照)に続き,2014年4月中旬から8月上旬にかけての主な情報をまとめた。

●デジタルアーカイブに関する動き

 5月9日,赤十字原子力災害情報センターのデジタルアーカイブで,「東日本大震災復興支援レポート」のパート1が公開された。日本赤十字社が東日本大震災発生以来実施してきた復興支援事業について,分野ごと(生活再建,福祉サービス,教育支援,医療支援・災害対応能力強化)にまとめたものである。
http://ndrc.jrc.or.jp/special/2369/
http://ndrc.jrc.or.jp/galleries/reconstruction/

 6月13日,東北大学災害科学国際研究所(IRIDeS)とハーバード大学ライシャワー日本研究所(RIJS)が,災害科学およびデジタルアーカイブ分野においての学術協力協定を締結した。
http://irides.tohoku.ac.jp/media/files/_u/topic/file1/20140613_report.pdf

 6月18日,Googleは,三陸海岸の景観を海から撮影する「海からのストリートビュープロジェクト」を開始することを発表した。2011年から行っている東日本大震災デジタルアーカイブプロジェクトの一環であり,これまでの陸からのストリートビューに加え,新たに海側から三陸海岸を撮影するものとのことである。
http://googlejapan.blogspot.jp/2014/06/tohokuseasv.html

 6月23日,日本原子力研究開発機構が,福島原子力事故関連情報アーカイブを公開した。東京電力福島第一原子力発電所事故に関するインターネット情報および学会発表情報を検索・閲覧することができるものである。インターネット情報については,国立国会図書館の「インターネット資料収集保存事業(WARP)」で保存しているページ等にアクセスする。
http://dspace.jaea.go.jp/
http://jolisfukyu.tokai-sc.jaea.go.jp/ird/sanko/archive_koukai.html
http://jolisfukyu.tokai-sc.jaea.go.jp/ird/sanko/archive_goriyou.pdf
http://jolisfukyu.tokai-sc.jaea.go.jp/ird/sanko/fukushima_sanko-top.html

 国立国会図書館東日本大震災アーカイブ(ひなぎく)では,新規コンテンツとして,東松島市図書館(宮城県)のICT地域の絆保存プロジェクト「東日本大震災を語り継ぐ」,埼玉県立浦和図書館の「市町村史に記された地震の記録」,政府インターネットテレビの震災関連の動画が追加された。また,国立国会図書館の東京本館における震災時の画像・動画等の記録が追加された。
http://kn.ndl.go.jp/information/292
http://kn.ndl.go.jp/information/297
http://kn.ndl.go.jp/information/308
http://kn.ndl.go.jp/information/315

●資料保存に関する動き

 5月1日,岩手県立博物館の敷地内に「仮設陸前高田市立博物館被災文化財等保存修復施設」が完成し,本格稼働となった。
http://www.pref.iwate.jp/dbps_data/_material_/_files/000/000/024/869/dai11.pdf
https://twitter.com/Iwahaku/status/461653541904343042
 
 福島第一原発事故による警戒区域に指定されている福島県富岡町で,町内の民家に残されたままの古文書や写真などを搬出するプロジェクトが開始され,7月24日に,初日の活動が行われた。
http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201407/20140726_65002.html
https://www.facebook.com/town.tomioka.fukushima/posts/820390991306200

 8月4日,東京都立図書館は,東日本大震災の津波で被災した陸前高田市立図書館(岩手県)所有の郷土資料について,83点の被災資料の修理を行うことを発表した。修理期間は2016年度末までを予定しているとのことである。なお,同館では、2013年度,2014年度の2年間で,51点の修理を行っている。
http://www.library.metro.tokyo.jp/home/news/tabid/2287/Default.aspx?itemid=949
 
 7月3日,文化庁が,2014年度「美術館・歴史博物館重点分野推進支援事業」の補助対象事業を決定した。このうち「大規模災害に対応した文化財等の防災・救出に係る全国的な体制整備等」には,国立文化財機構による文化財防災ネットワーク推進事業が採択されている。
http://www.bunka.go.jp/ima/press_release/pdf/2014070301.pdf

●展示

 岩手県立図書館は,4月1日から6月29日まで,展示「すすめ!三陸鉄道-東日本大震災と鉄道-」を開催した。三陸鉄道全線開通に合わせて,三陸鉄道の歴史や震災時の被害状況から全線開通までの軌跡を紹介するものである。また同館は,この展示の後期として,7月1日から「すすめ!三陸鉄道-楽しいさんてつの旅-」を開催している。
http://www.library.pref.iwate.jp/info/evecale/event/20140401_santetu.html
http://www.library.pref.iwate.jp/books/booklist/list/201404_miniex_santetu.html
https://www.library.pref.iwate.jp/info/evecale/event/20140701_santetu.html

●講演会・研究会など

 6月21日,宮城県図書館が,東日本大震災文庫展IV関連企画として,トークイベント「小松左京が遺したもの-震災の記憶・未来へのことば-」を開催した。
http://www.library.pref.miyagi.jp/latest/events/schedule/499-komatsu-sakyo-20140621talkevent.html
http://www.library.pref.miyagi.jp/latest/events/schedule/507-komatsu-sakyo-20140621talkevent-2.html
http://current.ndl.go.jp/e1591

 6月21日,いわて高等教育コンソーシアムが,シンポジウム「震災の記録と記憶をどうとどめるのか-震災資料の収集保存と活用-」を開催した。
http://www.ihatov-u.jp/cgi-bin/topics/topics_shosai.cgi?sno=169
http://www.ihatov-u.jp/cgi-bin/topics/topics_shosai.cgi?sno=172

 6月29日,京都国際マンガミュージアムでシンポジウム 「マンガと震災」が開催された。
http://www.jsscc.net/convention/14#symposium

●刊行物

 いわて高等教育コンソーシアムが,2013年3月16日,17日に開催した,シンポジウム「東日本大震災の検証と来るべき震災への備えへの提言?資料保存と救済のあり方から」の記録(2014年3月27日付け)を,ウェブサイトで公開した。
http://www.ihatov-u.jp/kankou/sympo_H250316.pdf

 国立国会図書館は,『国立国会図書館月報』637号(2014年4月)に,東日本大震災アーカイブ国際シンポジウム「未来をつくる地域の記憶」の概略をまとめた記事を掲載した。1月11日に国立国会図書館と東北大学災害科学国際研究所が開催したものである。『NDL Newsletter』193号(2014年4月)に,1月9日に開催した「震災アーカイブに関する研究会-NZカンタベリー地震と東日本大震災の経験から-」の概略をまとめた記事等を掲載した。また『びぶろす』64号(2014年4月)で,「危機管理-いざというときのために-」をテーマとする特集を掲載した。
http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_8619055_po_geppo1404.pdf?contentNo=1
http://www.ndl.go.jp/en/publication/ndl_newsletter/index.html
http://www.ndl.go.jp/jp/publication/biblos/backnumber/biblos.html/

 『博物館研究』552号(2014年6月)において,3月6日,7日に開催された日本博物館協会研究協議会テーマ3「東日本大震災から3年 復興への道のりを検証する」の概略をまとめた記事が掲載された。
http://www.j-muse.or.jp/02program/projects.php?cat=4

 6月21日,福島県立図書館が,「東日本大震災福島県復興ライブラリー」の資料を同館の職員が実際に読み,感じたことを伝える「ブックガイド」の第9号を公開した。
http://www.library.fks.ed.jp/guide9.pdf

 6月24日,日本学術会議が,史学委員会文化財の保護と活用に関する分科会の審議結果として,提言「文化財の次世代への確かな継承-災害を前提とした保護対策の構築をめざして-」を公表した。
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-22-t193-6.pdf
http://www.scj.go.jp/ja/info/index.html

 7月28日,「国立国会図書館と大学図書館との連絡会・東日本大震災被災図書館記録ワーキング・グループ最終報告書:事実の記録から,心の記録へ」が公開された。
http://kn.ndl.go.jp/information/319
http://kn.ndl.go.jp/20830212-d942-4d57-bd85-2844d2ca6d49
http://kn.ndl.go.jp/835ec4ec-db07-4cbf-96f6-28a77a570953

 8月1日,リアス・アーク美術館常設展示図録「東日本大震災の記録と津波の災害史」が,公共図書館及び大学図書館を対象に電子書籍として無料公開された。
http://www.keiyou.jp/elpc/news/riasark.html
http://www.riasark.com/modules/news/article.php?storyid=133

●その他

 明治大学博物館が,震災復興支援事業として,大船渡市立博物館(岩手県)で特別展覧会「明治大学コレクションの世界-氷河期から昭和まで-」を,7月26日から8月31日まで開催している。
http://www.meiji.ac.jp/koho/press/2014/6t5h7p00000hrwvg.html

 8月4日,灰色文献に関する国際的なネットワークGreyNet(Grey Literature Network Service)の2014年のGreyNet Awardに,日本原子力研究開発機構の池田貴儀氏が選出されたことが発表された。
http://www.iaea.org/inis/highlights/2014/news-20140804.html
http://www.greynet.org/home.html


関西館図書館協力課調査情報係