カレントアウェアネス-E

No.245 2013.09.26

 E1478

IFLAでベストポスター賞を受賞の鈴木史穂さんにインタビュー

　8月にシンガポールで開催された2013年国際図書館連盟（IFLA）・世界図書館情報会議（WLIC）年次大会において，福島県立図書館の鈴木史穂さんの作成した「The Librarians of Fukushima」が，ベストポスター賞を受賞した。受賞の感想やポスターにまつわるお話を鈴木さんに伺った。

○受賞おめでとうございます。改めて受賞のご感想をお聞かせください。

　ありがとうございます。私自身とても驚いています。受賞するとは思っていなかったので，受賞作品発表の日を待たず，ポスターセッションが終わった日にシンガポールから帰国していました。そのため，現地でBest IFLA Poster 2013の発表を見た日本の方から連絡をいただき，はじめて受賞したことを知りました。

　他のポスターは，センスのある洗練された作品ばかりでした。国をあげての読書活動や各国の研究者による研究成果など，最先端の取り組みに関する発表が多かったように思います。それらに比べて私の作ったポスターは，色画用紙を重ね，クレヨンで描いたものだったので，かえって来場者の興味をひいたのだと思います。内容も国家プロジェクトでも最先端の研究でもありません。東日本大震災後に福島の図書館員たちが活動してきた様子を紹介したものでした。まさか受賞するとは思っていませんでした。

○ポスターはどのような内容でしょうか？

　世界中からいただいた福島への支援に対する感謝の気持ちと，東日本大震災後に福島の図書館員たちがどのような読書支援，情報支援をしてきたかということを，ポスターにまとめました。

　ポスターでは，「震災直後」，「震災から１か月」，「震災後約１か月～１年」，「現在」という時間軸を設け，それぞれの時期に図書館員たちが何を考え，どのように活動したのかを，短い文章で，私が描いた似顔絵と一緒に紹介しました。

　震災直後から，福島では避難所として使われた学校が多数あり，そこで学校図書館司書たちは図書館の本を避難されてきた方に届けたり，子どもたちに本を読んであげたりしました。また，震災直後から避難所が閉鎖されるまでの間，避難区域にある図書館の図書館員たちは，自治体住民と一緒に避難し，避難所で新聞を作ったり，寄贈された本で小さな図書室を作ったりして，避難してきた人たちに必要な情報を届けたり，安らげるスペースを作ったりしました。

　震災と原発事故の影響で，図書館の仕事から離れざるをえなくなった図書館員が複数いますが，震災当時，福島にはベテランの図書館員が数多くいました。図書館員たちは，福島の人たちに寄り添い，その時できる最善の方法を模索しながら，情報収集，資料・情報提供を行ってきました。私がこれまでに実際に会って，話を聞くことができた図書館員たちのことを，世界に伝えたい，記録に残したいと思ったのです。

○IFLAの会場では来場者とどのようなやりとりがあったのでしょうか？

　図書館はどのような被害を受けたのか，現在はどのくらい復旧しているのか，原発事故のため避難区域にある図書館はどうしているのかなど，多くの方から質問を受けました。セッションでは，被災した図書館や避難所に作られた図書室の写真などをiPadで見ていただきながら，説明しました。

　私が描いた似顔絵を“Kawaii”と言って下さる方が何人もいらして，日本語の「かわいい」という言葉が世界に広まっていることに驚きました。ポスターには，私自身の似顔絵も描いたので，「これが私です」と自己紹介することもありました。

　さまざまな国の方から，いたわりと応援の言葉をいただき，励ましていただきました。

○帰国後，福島県立図書館の東日本大震災福島県復興ライブラリーの隣にポスターを飾っていらっしゃったとのことですが，利用者からはどのような反応がありましたか？

　さまざまなメディアで報道していただいたおかげで，わざわざポスターを見に来てくださる方も多く，ありがたく思いました。

　かなり大きなポスターで目立つせいか，立ち止まってポスターを見ていかれる方が何人もいらっしゃいました。「〔受賞して〕よかったですね」，「図書館も大変だったんだね」と，声をかけていただきました。

○最後に，国内外の図書館員に向けて一言お願いします。

　ベストポスター賞は，福島と福島の図書館員たちへのエールだと思っています。本当にありがとうございました。福島の復興には，とてもとても長い時間がかかります。今後とも，福島へのご支援をよろしくお願いいたします。

（協力　福島県立図書館・鈴木史穂さん）

Ref:
http://express.ifla.org/node/6141
http://www.minyu-net.com/news/topic/130828/topic5.html