カレントアウェアネス-E
No.244 2013.09.12
E1476
ゲティ美術館のオープンコンテンツプログラム
2013年8月12日,米国のJ・ポール・ゲティ財団は,所蔵する美術品に関する画像のうち,同財団が権利を保有する,もしくはパブリックドメインとなっているデジタル資料をオンラインで無償提供する「オープンコンテンツプログラム(Open Content Program)」を開始すると発表した。このプログラムにより,同財団の運営するJ・ポール・ゲティ美術館が所蔵する作品のうち,約4,600点の作品について,その高精細画像を制限なく利用することが可能となった。
ゲティ財団は,石油会社の経営者であったゲティ(J. Paul Getty)氏が,自身が所有する美術品を一般に公開するために1953年に設立した美術館が元となっている。現在はゲティ保存研究所,ゲティ基金,ゲティ美術館,ゲティ研究所の4つの施設を含む文化慈善団体となっている。このうちゲティ美術館は,ロサンゼルスのゲティ・センターで欧州の絵画,彫刻,装飾品,写真作品等を収蔵し,また,マリブのゲティ・ヴィラで約44,000点の古代ギリシャ,ローマ,エトルリアの美術品を収蔵している。
今回利用可能となったデジタル資料には,ゲティ美術館が所蔵する絵画や写本,写真,彫刻作品等の画像が含まれている。これらはゲティ美術館のウェブサイトで検索、及び製作者名や作品の種類等によってブラウジングすることができる。また,“Getty Search Gateway”で検索することも可能である。“Getty Search Gateway”は,ゲティ財団の複数の施設のコレクションを横断検索できる検索システムであり,検索結果からXML形式のメタデータを出力することもできる。
オープンコンテンツプログラムで利用可能な画像の下にはダウンロードリンクがあり,ダウンロードする際には,利用者の所属の区分(営利企業,非営利組織,個人等)と利用目的について質問される。出版や商用目的を含む,いかなる目的で利用することも可能であり,また,ダウンロードした画像の加工も認められているが,利用目的に「出版」と回答した場合には,利用者の名前やメールアドレス,出版物のタイトル等が質問される。これらの出版に関する情報は,コレクションの出版目録の更新のために必要とされている。また,複製する際にはゲティ財団のオープンコンテンツプログラムの無料提供によるデジタル画像であるとのクレジットラインの使用が求められる。
ゲティ美術館の館長であるポッツ(Timothy Potts)氏は,「ゲティ財団のコレクションは出版,研究,様々な個人利用において非常に需要がある。この取組みによって世界的規模で誰でもインターネットを介して利用可能になることは喜ばしい」とコメントしている。また,ゲティ財団の代表でありCEOであるクーノー(James Cuno)氏は財団のブログにおいて「ゲティ財団は,芸術を理解することは世界をより良くするとの信念に基づいて設立された。デジタル資料の共有はこの信念を継承するものだ」と述べている。財団のブログにはプログラムについて利用者からの好意的なコメントが寄せられている。
ゲティ財団では今後,ゲティ研究所やゲティ保存研究所が所蔵する資料の画像も同プログラムに追加する予定としている。クーノー氏はブログで,オープンコンテンツプログラムはゲティ財団の取り組みにおいて,デジタルオープン化への新たな役割を象徴するものであるとし,利用者がプログラムの資料から着想を得て,更なる創造を行い,共有することを期待していると述べている。
(関西館図書館協力課・安原通代)
Ref:
http://news.getty.edu/press-materials/press-releases/getty-open-content-images.htm
http://www.getty.edu/about/getty/founder.html
http://www.getty.edu/about/getty/index.html
http://www.getty.edu/about/opencontent.html
http://www.getty.edu/about/governance/mission_statement.html
http://www.getty.edu/museum/about.html
http://www.getty.edu/about/opencontent.html
http://search.getty.edu/gateway/about.html
http://www.getty.edu/art/
http://www.getty.edu/about/opencontentfaq.html
http://blogs.getty.edu/iris/open-content-an-idea-whose-time-has-come/