E1420 – 東日本大震災アーカイブ公開記念シンポジウム<報告>

カレントアウェアネス-E

No.235 2013.04.11

 

 E1420

東日本大震災アーカイブ公開記念シンポジウム<報告>

 

 2013年3月26日,国立国会図書館(NDL)東京本館新館講堂において「東日本大震災アーカイブ公開記念シンポジウム『東日本大震災の記録をのこす意志,つたえる努力』」と題するシンポジウムが,総務省とNDLの主催によって開催され,約230名の参加があった。

 シンポジウムでは,まず,山折哲雄氏(宗教学者)による基調講演「記憶の刻印と風化」が行われた。山折氏は,時代を超えて残ってきたメッセージとして,「天災は忘れた頃にやってくる」,「備えあれば憂いなし」の2つの例を取り上げつつ,記憶の風化を乗り越えるためには,単に記録を残すだけでは足りず,災害列島の日本で,不安と恐怖の中に生き続けた祖先の死生観,自然観,世界観を学び我がものにするしかない,と論じた。

 次に,総務省とNDLが,2013年3月7日に公開した「国立国会図書館東日本大震災アーカイブ(愛称:ひなぎく)」について(E1413参照),その構築趣旨の説明とシステム紹介を行った。

 続く記録収集・保存等の事例報告では,3つの図書館,各種団体が東日本大震災に関する自らの取組みを紹介した。日本生活協同組合連合会は,被災者支援活動と活動情報の発信の取組みを紹介し,被災地の今の状況を伝え続けることが最大の支援であると述べた。国際協力NGOセンターは,支援の最前線にいて,防災や災害対応における役割が増大しているNPO/NGO団体の活動記録の重要性を述べるとともに,記録のためにはコストがかかることや,人材・予算が尽き,関心も薄れ始める3年目が節目の年となることを指摘した。長岡市立中央図書館文書資料室は,2004年の中越大震災で避難所資料の収集を行った経験を踏まえ,東日本大震災で長岡市への避難者の負担とならないよう避難所で廃棄・不要となった文書資料を収集したこと,市役所の各部署と民間支援団体との連携によって,資料収集を実施したこと等が報告された。

 さらに,パネルディスカッションでは,津田大介氏(ジャーナリスト/メディア・アクティビスト)をコーディネーターとして,阪神・淡路大震災,新潟県中越地震,東日本大震災に関する記録の収集活動を行っている有識者が,東日本大震災の記録を残すことの重要性やアーカイブの役割,今後の展望について活発な議論を行った。その中で「アーカイブ構築を単独で考えるのではなく,復興支援の取組みの一環として行うことが望ましい」,「復旧・復興の過程から生まれた様々な知恵もアーカイブし,次の災害からの復旧・復興においてはこれらを組み合わせて活用できる,ナレッジデータベースとなることが期待される」,「アーカイブを続けていくには,産学官と地域との連携が必要であり,これらをつなぐハブとしての役割がNDLに期待される」といった意見が出された。

 このシンポジウムは,記録を残す意義について,具体的に関係者が論じ合う貴重な機会であった。パネリストからは,次の段階として「活かす知恵,拡げる努力」といったテーマでシンポジウムを開き,各機関の進展を報告し合いながら,「ひなぎく」を育てていくと良いとのコメントがあった。この声に応え,アーカイブが復興事業・防災対策等に活用されるよう,今後とも継続した取組みをしていきたい。

 シンポジウムの報告資料等は,NDLのウェブサイトに掲載しており,動画とともに「国立国会図書館東日本大震災アーカイブ」でも公開する。

(電子情報部電子情報流通課・中村若生)

Ref:
http://kn.ndl.go.jp/
http://www.ndl.go.jp/jp/event/events/archive-sympo.html
http://www.ustream.tv/channel/archive-sympo
E1413