E1414 – 子どもの読書活動の推進に向けたウェブでの情報発信<報告>

カレントアウェアネス-E

No.234 2013.03.28

 

 E1414

子どもの読書活動の推進に向けたウェブでの情報発信<報告>

 

 3年目の今回が最終年度となる国際子ども図書館の「児童サービス協力フォーラム」が,2013年3月4日に「ウェブを活用した情報発信~子どもの読書活動の推進に向けて~」をテーマとして開催された。参加者は全国の公立図書館員(都道府県立図書館,市区町立図書館)約60名を含め,私立図書館員,学校図書館員,大学教員,関連企業社員等計75名であった。

 第一部ではまずコーディネーターの堀川照代教授(青山学院女子短期大学)から,趣旨説明として,参加者への事前アンケートの分析が行われた。そこではウェブによる情報発信の課題と成果が,作成(計画P)・発信/利用(実行D)・見直し(評価C・改善A)の3段階で整理された。課題としては,作成段階では,全体計画や目的が不十分であること,発信内容とその意義が不明確であること,管理体制等,発信/利用段階では,アクセスのしにくさ,対象のぶれ,各対象ページの充実等,見直しの段階では,効果が把握しにくいことに加えて,周知の不足等が,それぞれ挙げられた。一方成果としては,図書館の業務のPR効果,対象者の実際の利用等にまとめられた。

 図書館からの事例発表の第一として,東京都立多摩図書館から,「ウリボウ」というキャラクターが案内役を務める「こどもページ」が紹介された。発表者からは,「児童青少年サービスのショーウインドウを目指す」をコンセプトに,対象読者によってウェブページを明確に分けること,量より質をモットーに信頼できる情報の掲載を心がけていることが述べられた。

 島根県立図書館は,読書活動推進事業「子ども読書県しまね」の一環で,県から市町村への財政的支援を受けて配置された学校司書等を対象に,研修等のイベント情報や図書館活用教育の成果発表などを案内するポータルサイトを開設している。「学校図書館大改造」(E1397参照)や,県内市町村に寄託する「学校図書館活用教育図書」のリスト等もそこに含まれている。これらのコンテンツは義務教育課・社会教育課・図書館が共同で作成し,日々更新しているとのことであった。発表では学校図書館担当者の方向性の統一という成果の一方で,事業体制の維持や更新作業の人員体制が課題として挙げられた。

 岡山県立図書館からは,電子図書館システム「デジタル岡山大百科」から,「郷土情報ネットワーク」の「デジタル絵本」が紹介された。岡山県の民話を題材にした絵本を作成し,それに県内の小中学生がナレーションをつけ,ウェブ上で音読と画像を楽しめるようにしたものなどがあり,2005年度より開始して現在197タイトルが公開されている。作品の閲覧者からの評判はよく,閲覧数も伸びているが,認知度がまだ低くさらに広報の必要があるとのことであった。

 事例発表の最後として,国際子ども図書館からは,開館からの情報発信の歩みを振り返り,現在の情報発信として「子どもと本をつなぐ人のページ」「メールマガジン」「キッズページ」「子どもOPAC」の紹介がなされた。情報発信のポイントとして,ターゲットを明確にすること,利用案内だけでなく役割や存在意義を伝えて,無関心層を重視者・利用者層に変えていく工夫が必要であること,効果の分析が必要であること,が挙げられた。

 第二部では,学校・学校図書館支援,読書案内,中高生向け情報提供,都道府県全域サービスの4種・11のグループに分かれて参加者討議が行われた。それぞれのグループによる討議成果の発表では,各館で実施している情報発信の実践の報告とともに,情報発信の効果が測りにくいなどの意見が聞かれた。

 情報発信事業は図書館によって進捗状況がさまざまであり,学校支援に関しては情報の受け手となる学校図書館側の状況も地域ごとに異なる。しかし,冒頭のアンケート分析による課題の整理によって,参加者は各館の規模や状況の差異を超えて,共通の基盤に立って事例発表やグループ討議に向かうことができた。第一部で示された成果や具体的な事例は,課題解決のヒントや目指すべき目標の明確化に役立つはずだ。さらに,第二部で討議の時間が設けられて,情報発信の事情や工夫についてフェイストゥフェイスで情報交換する機会があったことは特に有意義であったようだ。フォーラム後の参加者アンケートにおいても,討議が参考になったという声が多くを占めていた。コーディネーターによる事前アンケート分析,事例発表,グループ討議と盛り沢山で,時間不足の感があったのはいささか残念ではあったが,何より効果の高い直接交流の出発点として良い機会になったことは確かだろう。

 本フォーラムは来年度以降,公共図書館・学校図書館・児童書出版社等のより幅広い参加者を対象とした「子ども読書連携フォーラム」に発展させる予定とのことである。さらなる効果が期待される。

(園田学園女子大学未来デザイン学部・米谷優子)

Ref:
http://www.kodomo.go.jp/study/cooperation/forum/2013.html
http://www.kodomo.go.jp/study/cooperation/forum/2012.html
http://www.kodomo.go.jp/study/cooperation/forum/2011.html
http://www.library.metro.tokyo.jp/child-page/tabid/2502/Default.aspx
https://www.lib-shimane.jp/dokusyoken-shimane/
http://digioka.libnet.pref.okayama.jp/sup/jp/kyodo/play.html
http://www.kodomo.go.jp/promote/index.html
http://www.kodomo.go.jp/general/menu4.html
http://www.kodomo.go.jp/about/mailmagazine/index.html
http://www.kodomo.go.jp/kids/index.html
http://iss.ndl.go.jp/children/top