E1405 – 文化資源のデジタル化に関するLAMMSの原則声明

カレントアウェアネス-E

No.233 2013.03.07

 

 E1405

文化資源のデジタル化に関するLAMMSの原則声明

 

 LAMMS(Libraries, Archives, Museums, Monuments & Sites)はIFLA(国際図書館連盟),ICA(国際公文書館会議),CCAAA(視聴覚保存機関連絡協議会),ICOM(国際博物館会議),ICOMOS(国際記念物遺跡会議)の5機関で構成された文化遺産に関する連携協力のためのグループで,2008年に誕生した。その後,2011年11月までに6回の集まりが持たれたが,その第6回で採択され,ICSTI(国際科学技術情報会議)を加えた6機関の名前で2013年2月5日に公表されたのが「グローバルで分野横断的なデジタル化の取り組みに関する原則声明(Statement of Principles on Global Cross Sectoral Digitisation Initiatives)」である。

 その内容だが,まず前文として,CDNL(国立図書館長会議)によって2008年に取りまとめられた「グローバルな電子図書館に関するビジョン(CDNL Vison For the Global Digital Library)」を6機関が共有し,支持するとある。そして,世界デジタル遺産のための共有ビジョンとして以下の10項目を推進していくとある。これらはいずれもCDNLのビジョンの内容を図書館以外に拡張した内容となっている。

  1. あらゆる種類の協同的なデジタルコレクションの構築について促進,奨励,支援を行うこと。
  2. 分野横断的な対話を通して,国の文化遺産機関が持つデジタルコレクションを相互に繋げることの促進,支援を行うこと。それにより世界の文化への扉が開き,豊かで多様な資料が人々の目に留まるようになる。
  3. 文化的,言語的多様性及び多言語主義を支援し,また先住民族の文化や文化財を尊重すること。
  4. 6機関内の標準化部会及び国際インターネット保存コンソーシアム(IIPC)を通じて,デジタル資料に関するツール,製品,サービスそして標準の開発を促進すること。特に,長期的なデジタル保存,信頼性,ユーザニーズの把握等の重要な問題に焦点を当てること。
  5. デジタルコレクションの構築に関する知見やベストプラクティスについては,プライベートコレクションか文化遺産機関のものかを問わず,分野横断的に共有されることを確実にすること。
  6. デジタルの可能性を増やし,文化遺産機関で,あるいは発展途上国でのプライベートコレクションと協力しながら,文化遺産の専門家によるデジタル資料の作成を支援すること。
  7. デジタル時代における知的財産権問題の重要性について,広く理解されるよう活動すること。
  8. 人々の極めて重要な関心事である情報,知識へのアクセスを確保することと,それらの作成者が評価及び利益を受ける権利との適切なバランスを崩さないよう,知的財産権問題への解決に向けたアドボカシー活動を行うこと。
  9. グローバルなデジタルコレクションの構築,及びそのための制度的(特に法定納本と知的財産権制度)そして財政的な支援のためのアドボカシー活動を行うこと。
  10. 文化遺産機関あるいはプライベートコレクションを通じて,国内及び国際的な政府機関,出版社,情報プロバイダ,及びその他の民間団体と文化遺産の専門家の戦略的協力を強化すること。

 続けて,「文化遺産への長期的なアクセス」と題して以下の5項目を挙げている。

  • 著作権,文化遺産の保護と修復,国際的なレベルでの効果的なアドボカシー活動とロビー活動,それぞれの組織での文化遺産の長期保存とそれらへのアクセスといった,国際的な文化遺産セクタ共通の関心事項について,議論を円滑化するとともに理解と協力を促進する。
  • プライベートコレクションか文化遺産機関のものかを問わず,文化遺産の専門家によって保存されているあらゆる形態の文化遺産について,長期的なアクセスの提供の促進,円滑化,アドボカシー活動を支援する。
  • 文化的,言語的多様性について取り組む。
  • 相互理解だけでなく,ベストプラクティスの共有,相互支援,専門家のネットワークの構築を促進する。
  • 国際社会の利益のため,文化遺産機関や文化遺産の専門家の分野横断的な協働及び,コレクションへのアクセスの統合を円滑化させる。

 異なった文化資源を扱う国際的な6機関が,このような形で協同の声明を出すことは珍しい。現在のところIFLA以外の機関からはこの声明に関する発表は見当たらないが,それぞれの基盤を活かしたロビー活動などに期待が持てる。博物館・図書館・文書館(MLA)を超えた国際的な連携が,文化資源のデジタル化と共有にどのような影響を及ぼすのか,LAMMSの今後の活動を含め注目していきたい。

(電子情報部電子情報サービス課・川島隆徳)

Ref:
http://www.ifla.org/lamms

http://www.ifla.org/publications/statement-of-principles-on-global-cross-sectoral-digitisation-initiatives
http://cdnl.info/2008/CDNL_Vision_for_the_Global_Digital_Library.pdf