E1326 – 大阪市立図書館,「知識創造型図書館改革」検証結果を公表

カレントアウェアネス-E

No.220 2012.08.09

 

 E1326

大阪市立図書館,「知識創造型図書館改革」検証結果を公表

 

 2012年7月3日,大阪市立図書館の「知識創造型図書館改革」についての検証結果が,同館ウェブサイト上に公開された。この改革は,2006年に策定された「市政改革マニフェスト」に基づき,2007年度から2010年度までの4年間,市民が課題解決に必要な情報にいつでもどこでもアクセスできる「知識を創造する図書館」と,未来を担う子どもの心を育て,豊かな感性と創造力を育む「人と,心を育てる図書館」とを目指すものである。定型業務の民間委託など効率的な運営体制の構築によってコストを抑制するとともに,これまでの図書館機能をより拡充することが取り組まれた。

 検証では,「効率的な運営体制の確立」,「知識を創造する図書館へ」,「人と,心を育てる図書館へ」の3項目に分け,各項目に掲げられた複数の戦略目標,進捗指標および成果指標を基にした自己評価が示されている。

 「効率的な運営体制の確立」では,(1)職員数の削減,(2)業務の民間委託拡大,の2点を戦略目標に掲げ,いずれも目標どおりの成果を達成したとの自己評価が示されている。(1)職員数は4年間で4割削減し,(2)民間委託では,相互貸借配送業務および自動車文庫運行業務の新規民間委託を開始,窓口業務の民間委託を全24館へと拡大した。以上により総経費の2割圧縮を達成したとしている。

 「知識を創造する図書館へ」では,(1)全市民への図書館サービス(アクセス機会均等),(2)レファレンス機能・情報サービスの高度化,の2点を戦略目標に掲げ,いずれも目標どおりの成果を達成したとの自己評価が示されている。(1)アクセス機会均等では,中央館の開館日数年間50日増,地域館の20日増を達成し,自動車文庫ステーションを約1.5倍の105か所に拡大した。これにより貸出数も15%増加し,利用者アンケートでも満足度の向上がみられたとしている。(2)レファレンス機能の高度化では,2008年度開始したメールでのレファレンス受付件数は目標に届かなかったものの,商用データベースのアクセス件数10万件の目標は2年目に達成し,国立国会図書館レファレンス協同データベースを用いたレファレンス事例の公開件数,ビジネス支援情報講座の参加者数,および庁内職員向けレファレンスの受付件数はいずれも目標どおりの成果を挙げた。利用者満足度調査でも司書によるレファレンス・サービスは良好な結果が得られたとしている。

 「人と,心を育てる図書館へ」では,(1)地域・学校との連携による子どもの読書活動の推進,(2)市民ボランティアとの協働・読書環境の整備,の2点を戦略目標に掲げ,前者は目標以上の成果,後者は目標どおりの成果を達成したとの自己評価が示されている。(1)子どもの読書活動の推進では,2006年に策定した「大阪市子ども読書活動推進計画」に基づき施策を展開し,おはなし会や絵本展などの子ども向け読書普及の事業実施回数は4割増,その参加者は7割増,子育て支援施設での読書普及事業の実施回数は3倍以上,また市立小学校への団体貸出冊数は1.5倍以上に増加するなど,大きな成果が得られたとしている。(2)市民ボランティアとの協働では,読書支援活動ボランティア養成講座の受講者数が3年目に目標値の年間300人を達成し,登録ボランティア数も2,500人を達成した。また2009年度より,市民の投票によって大阪市の1冊の絵本を選ぶ「One Book One OSAKA事業」を新たに実施し,市民ボランティア協力のもと,2010年度には総投票数の目標値1万票を上回る13,014票を得た。2009年度は「はらぺこあおむし」,2010年度は「ぐりとぐら」がOne Bookに選出されている。

 この検証にかかわった塩見昇氏(日本図書館協会理事長)ら有識者7名は,図書館の自己評価を全体としては概ね妥当としたうえで,今後の課題として,費用対効果だけで考えては不十分なサービスに対する指標設定の工夫の必要性,一層の来館者数増加の取組みや,広報活動強化の必要性等について指摘している。

(関西館図書館協力課・徳森耕太郎)

Ref:
http://www.oml.city.osaka.jp/topics/chishiki2012.html