E1245 – 博士課程の学生の情報リテラシーに関する指導教員の役割とは

カレントアウェアネス-E

No.206 2011.12.08

 

 E1245

博士課程の学生の情報リテラシーに関する指導教員の役割とは

 

 2011年10月に,英国の研究情報ネットワーク(RIN)が,博士課程の学生に研究者として求められる情報リテラシーに関して指導教員が果たす役割等を調査したレポートを公表した。調査は2011年1月から6月にかけて実施され,指導教員と学生を対象にしたオンライン調査,ケーススタディ,インタビュー等の手法が用いられた。オンライン調査には,指導教員382名,学生907名の返答があった。以下に,結果の一部を紹介する。

 レポートでは,「情報リテラシー」という言葉について,研究データの取扱い等も含めた,通常よりも広い意味で捉えることが重要だとしている。調査においては,「効率的で包括的な情報探索」「他人の研究成果や主張の批判的分析・評価」「ツールを活用した参照文献管理」「IT活用による研究分野の最新状況の把握」「研究データを自身の研究以外で利用されるようにするための整理・共有・保管」「成果を発表・出版するのに最適な場の選択」「研究成果を利用可能とする際のオープンアクセスの役割についての理解」「ソーシャルメディア活用による自身の認知度向上や人脈拡大」「関連する法的枠組みの理解」の9つの項目について調査された。

 多くの指導教員は,これらの能力について,必ずしも全てを情報リテラシーという概念として捉えてはいないものの,その有用性は認識していた。その中でも学生への支援が必要な項目として多くの指導教員が挙げたのが,批判的分析と成果発表の場の2つの項目であった。これらは,学生からも,指導教員からの指導があるという回答が多かった項目であり,レポートでは指導教員の「中核的な役割」と位置付けている。

 学生が情報リテラシーを学ぶ際の情報源についての回答では,学生と指導教員のいずれも1位は「指導教員」であったが,その後の順位には違いがあった。学生は「ウェブ」「研修」「他の学生」「不要」の順であったのに対し,指導教員は「研修」「図書館員」「大学のオンライン資料」「研究グループの他のメンバー」の順であった。指導教員は大学組織による支援を挙げる率が高かったものの,必ずしも具体的な研修等について認識しているわけではなかった。

 指導教員の自身の情報リテラシーについての認識に関しては,上述の批判的分析と成果発表の場の項目については「自信がある」との回答率が高かったが,ソーシャルメディア,オープンアクセス,法的枠組みについては相対的に低かった。また,過去3年間に知識を更新したかどうかについては,6%が9項目とも更新していた一方,12%は9項目とも更新していなかった。情報の入手先としては,「研究者仲間」が最も多く,次いで「ウェブ」「大学のオンライン資料」「図書館員」「大学・学部」「学生」の順であった。教員向けの研修については,参加する時間がない,内容が有用でない等の意見があった。

 これらの結果を踏まえ,大学で研究者育成支援や図書館サービス等に関わる関係者に対する提言として,学生向け及び教員向けの研修やサポートの情報を指導教員が入手しやすくすること,教員同士のつながり等を用いて教員が知識をアップデートする機会を改善すること,研究スキルに関する学生自身の認識についての指導教員によるサポートを促進すること等が示されている。

 巻末には,指導教員から他の指導教員に対する助言と学生から指導教員への要望についての自由記述の例がまとめられている。

Ref:
http://www.rin.ac.uk/our-work/researcher-development-and-skills/information-handling-training-researchers/research-superv