E1216 - 被災地支援活動紹介(3)思い出サルベージアルバム

カレントアウェアネス-E

No.201 2011.09.29

 

 E1216

被災地支援活動紹介(3)思い出サルベージアルバム

 

 2011年3月11日の東日本大震災の発生以降,日本各地で本や資料を通じた被災者支援が行われている。その中で,津波に襲われた宮城県亘理郡山元町において,被災した写真を洗浄・複写(デジタル化)して持ち主に届ける活動に取り組んでいる「思い出サルベージアルバム・オンライン」の代表を務める,日本社会情報学会の柴田邦臣氏にインタビューを行った。

●日本社会情報学会災害情報支援チームについてお聞かせください。

 山元町は甚大な津波被害を受けたところですが,特に震災直後はマスコミに取り上げられず救援物資が不足していたため,山元町の友人と山元町・亘理町の情報まとめサイトを立ち上げたのが始まりです。しかし,3月下旬に再び山元町を訪れたときに,支援が進んでいないことや首都圏などに情報が届いていないことに強い衝撃を受けました。その理由が,典型的な過疎地で高齢者の割合が多い被災地ゆえのデジタルディバイドにあると考えました。

 そこで,山元町を情報の面から支援するチームを結成することになりました。チームの主力は,若手研究者・院生・学生たちで,被災地の支援,特に情報支援に燃えた若者ばかりです。また,Twitterなどでの呼びかけで思い出サルベージアルバム・オンラインに集まってくれたカメラマンやデザイナーもいます。現在,災害情報支援チームは日本社会情報学会の正式なプロジェクトとして,資金的・人的サポートを受けています。

●思い出サルベージアルバム・オンライン活動についてお聞かせください。

 写真・アルバムは,記憶という情報の集積そのものです。とっておきたい思い出があるから写真を撮り,それを残し語り継ぎたいからアルバムにするわけです。ですからそれらは,個人・家族,地域の出来事,人間関係を留めるという意味を持っています。被災された方々との語りの中でその重要性に気づかされ,そこに情報技術が役立つのではないかと思って被災写真の洗浄・デジタル化を始めました。それに加え,アーカイブを構築することで写真を見つけやすくし,より多くの方にその「記憶のかけら」を取り戻していただくこと,喪失しかねない「地域の記憶」の保存に寄与することを目指しています。

 複写データから概算すると,山元町で約7,500冊のアルバム(卒業アルバム含む)が回収され,バラのものを含めると合計で推定70~75万枚の写真になります。5月下旬から7月にかけて,週末ごとに東京など全国からボランティア(最大で80人以上)を集める「大洗浄・複写会」を9回にわたって実施し,東京・横浜・滋賀での洗浄作業協力もあり,7月末にはそれらの大半の洗浄,および複写が終わりました。

 プロジェクトでは,ボランティアの方々の他に,山元町役場の方々,洗浄ノウハウをご教示いただいたフジフィルムさん,アーカイブの資源提供だけでなくボランティアでも手伝ってくれているニフティ・富士通さん,そして山元の地元の方々から多くのご協力をいただいてきました。アルバム・写真の管理・展示は,図書館の仕事のようなところがあるので,今後は図書館情報学・アーカイブ学の専門家に助けてもらえると嬉しいと思っています。

 他の自治体からアドバイスを求められることが多くなっていますが,私たちは原則として山元町にこだわっていきたいと思っています。というのも,「はじめから終わりまで,ひとつの輪を完成させないと,災害情報支援はわからない」と考えているからです。学術学会として,災害情報支援が初期から終盤までどのように推移するか,どうすればより良くなるのかを解明し記録する責務を負っていると考えています。山元町にそのモデルケースを打ち立て,他の自治体に参考にしてもらう形で,成果を広めていければと思っています。

●写真の持ち主との印象的なエピソードがあればお聞かせください。

 6月にふるさと伝承館での展示返却をはじめてすぐ,数枚の写真を見つけられたおばあさまが,「自分の体以外,津波に遭う前のものはこれっきゃないから」と大事そうに抱えてお帰りになりました。「これっきゃないから……これっきゃないから……」と繰り返し言われたのが,辛く耳に残っています。また,たくさん写真を見つけられて,すごく喜んでくださりながら「この人はこういう人で,この人はねえ……」と楽しそうに写真を説明してくださった方が,最後に「まあ,流されていなくなっちゃったんだけどね。この写真でしか会えないな」とつぶやかれたのも,言葉にできない経験でした。

 災害時の情報支援は,このような「記憶」や「心」にかかわっていくものでもあります。「記憶を保存する」アーカイブは,そこを忘れてはならないと思います。理想と現実の格差にも苦しみますが,正面から被災地と向き合って,自分たちの役割を誠実に果たしていきたいと思っています。

Ref:
http://jsis-bjk.cocolog-nifty.com/
http://www.town.yamamoto.miyagi.jp/jishin/oojishin.html
http://bizmakoto.jp/bizid/articles/1107/28/news008.html
http://chikyu-no-cocolo.cocolog-nifty.com/blog/2011/06/post-1332.html
http://kouken-int.nifty.co.jp/blog/2011/06/vol28-cea1.html