カレントアウェアネス-E
No.179 2010.09.16
E1096
ハーバード大,新サービス開発のための「図書館ラボ」を開設
2010年7月,米国のハーバード大学図書館は,「図書館ラボ」(Library Lab)の創設を決定した。図書館ラボは,情報技術を活用したよりよい図書館サービスを実現することを目的としており,図書館業務のあらゆる分野について,同大学の教員,学生,職員からプロジェクトの提案を受け付け,優れたプロジェクトへの支援を行う。採用されたプロジェクトに対しては,図書館や大学の情報技術担当者の協力という人的支援と,追加のスタッフやサービス・設備等を手配するための財政的支援が行われる。また,近接するマサチューセッツ工科大学(MIT)での図書館関連プロジェクトとの協同も考えられているとのことである。アルカディア基金からの資金を基にしており,初年度は最大100万ドルの予算とのことである。
プロジェクトの提案においてトップダウン方式ではなくボトムアップ方式が採用されているのは,ラボ運営の原則の一つに「起業家精神」が挙げられていることによる。また,プロジェクトの内容に関する原則としては「スケーラビリティ」「オープン性」「実験」が挙げられており,システムや業務の変革につながり長期的な効果を持つプロジェクトやオープン性を促進するプロジェクトを求めること,失敗のリスクに関係なく実験的なプロジェクトの提案を歓迎すること,が示されている。
図書館ラボの運営担当のシーバー(Stuart Shieber)教授は,図書館ラボの特徴として,図書館職員から見た課題と利用者から見た課題の両方に取り組むという点をあげている。また,図書館の情報担当部門の責任者であるロビンソン(Tracy Robinson)氏は,「創造性を支援しイノベーションに投資することで,図書館業務を根本的に変えることができる。図書館ラボは,技術を活用したりクールなものを作ったりということよりも,図書館や情報利用等についての考え方を変えるということに重きを置いている」と述べている。
なお,ハーバード大学ロースクールでは,既に2009年4月に図書館ラボが開設されており,図書館で借り出された本のタイトルと著者名がTwitterに流れ,それをクリックするとOPACの書誌画面が表示されるという”Library Hose”等が公開されている。今回新設された全学規模での図書館ラボに提案されるプロジェクトについては,2010年12月に第1回目のレビューが予定されており,どのようなサービスが誕生するのか,期待される。
Ref:
http://publications.hul.harvard.edu/ln_1354/library-lab.html
http://hul.harvard.edu/news/2010_0827.html
http://www.libraryjournal.com/lj/home/886534-264/harvard_library_labs_foster_new.html.csp
http://osc.hul.harvard.edu/sites/default/files/LibraryLab_Guidelines_08_10_2010.pdf
http://osc.hul.harvard.edu/liblab
http://librarylab.law.harvard.edu/