E1053 – ハーバード大,「読む」とは何かに迫る資料群をウェブ公開

カレントアウェアネス-E

No.171 2010.05.19

 

 E1053

ハーバード大,「読む」とは何かに迫る資料群をウェブ公開

 

 2010年3月,米国のハーバード大学図書館が“Reading: Harvard Views of Readers, Readership, and Reading History”と題し,「読む」という行為の本質の研究に役立つ資料群のウェブでの公開を開始した。同大学のダーントン(Robert Darnton)図書館長はこの取組みの意義を高く評価しており,「読むというプロセスは人間の行為の中心にある。それゆえに,すべての文明における極めて重要な要素として,研究に値する」「研究の原資料は豊富にあるものの,ほとんどの人にはアクセス不可能である。多様な所蔵資料からエビデンスを集めることにより,この刺激的な研究分野に誰もが,どこからでもアクセスできるようにすることを,ハーバード大学図書館は目指している」と述べている。

 今回公開されたのは,ジョン・キーツらの個人的な書き込みが入った図書やジョセフ・コンラッドらの備忘録(「個人の読み」に関連するもの),ハーバード・カレッジ図書館の記録や米国・英国の読書クラブ等の資料(「集団の読み」に関連するもの),18世紀から20世紀初頭にかけての読みの教科書(「読みの学習」に関連するもの)など,合わせて1,200点(書籍800冊,手稿400点)である。

 どの資料をコンテンツとするかの選択は,ライブラリアンだけでなく,大学の教員,学芸員らが協力して,慎重に行った。なお,公開されている資料は全てパブリック・ドメインである。

 今回のコレクションは,オープン・コレクション・プログラム(OCP)というプログラムの一環として制作された。OCPは,インターネットを通じてハーバード大学が所蔵する貴重な資料を世界中の人々と共有するという目的の下,2002年に開始され,これまでに「女性の労働」「米国の移民」「伝染病」「探検と発見」「イスラムの遺産」をテーマにした各コレクションが制作され,ウェブ公開されている。

Ref:
http://ocp.hul.harvard.edu/reading/
http://hul.harvard.edu/news/2010_0301.html
http://ocp.hul.harvard.edu/