CA621 – オランダでも遡及全国書誌を推進 / 石山洋

カレントアウェアネス
No.122 1989.10.20


CA621

オランダでも遡及全国書誌を推進

英国図書館(BL)が蔵書目録をデータベース(DB)化しつつあることは報じられた(参照CA600)。オランダでも過去の出版物の書誌情報を網羅的にコンピュータ処理で検索できる体制へ向って歩み出した。1986年にPICAがパイロット・プロジェクトを試みた。PICAとはオランダの人文科学系重要コレクションを持つ調査研究図書館の大部分を包含するオンライン・システムである。PICAはOCLCと協定して,PICAのDBに入っていないオランダの既刊書を,OCLCのDBで検索させてもらった。しかし全国書誌に責任があるのは国立図書館であり,オランダの場合,王立図書館が1974年以来,オランダで刊行された図書を,なかば総合的に収集しており,全国書誌も作成している。もっとも,その全国書誌はBrinkman社(書籍商)の販売目録だったものの拡大である。PICAに王立図書館の蔵書を組み込んだ総合目録は過去にオランダで刊行したという図書の3分の2を収めており,Brinkmanの目録に現われない図書の3分の1をカバーする。ただし,Brinkman目録はPICAの総合目録に現われない図書の3分の1を収録している。1800年以後の全国書誌については,その再構築により満されるように進められている。

1800年前の図書については,「オランダ簡略書名目録(Short Title Catalogue Netherlands:略称STCN)」プロジェクトが対応する。このプロジェクトは,BLでのSTCをモデルとし,1540-1800年のオランダ刊行の出版物を目録化する計画で,1970年代から準備されてきた。

他方,王立図書館は,「国際インキュナビラ簡略書名目録(International Incunabula Short Title Catalogue: ISTC)計画に参加し,1983年にIncunabula in Dutch Libraries(IDL)を刊行した。STCNプロジェクトは1982年発足し,王立図書館蔵書の1540-1700年刊本を組み込んで第1次版がDB化され,CD-ROM版も1987年に作られた。第2次版はアムステルダム大学,第3次版はライデン大学の蔵書がつけ加えられる予定。晩くとも25-30年以内に完全な1800年までのオランダ出版物書誌を作るという。収録量は30万タイトル(17世紀が10万タイトル,18世紀が20万タイトル)と推定されている。

―IFLAシドニー大会の発表から。

石山 洋

Ref. Willemsen, A.W.: Retrospective national bibliography: operational projects and possible future developments in the Netherlands International Cataloguing & Bibliographic Control 18 (1) 5-8, 1989.