E866 – 「知識はわれらを豊かにする」NDL60周年記念シンポジウム開催

カレントアウェアネス-E

No.140 2008.12.10

 

 E866

「知識はわれらを豊かにする」NDL60周年記念シンポジウム開催

 

 国立国会図書館(NDL)では,開館60周年を記念して,2008年11月19日に開館60周年記念シンポジウム「知識はわれらを豊かにする ―国立国会図書館が果たす新しい役割―」を開催した。

 午前中には,長尾真NDL館長の開催にあたってのスピーチ「知識はわれらを豊かにする」の後,第1部として只野雅人・一橋大学大学院教授による講演「国会の情報基盤―立法補佐機関の役割」が行われた。只野氏の講演は,NDL創設時に立ち返り,戦後の日本の新しい議会の構想や日本国憲法の制定過程において,どのような国会補佐機能が意図されていたかを,金森徳次郎(初代NDL館長)や羽仁五郎(参議院図書館運営委員長)らの国会答弁などを紹介しながら明らかにした。また,米国,英国,フランスとの比較を通して,日本の議院内閣制の特徴や,現在の日本の政治状況下での合意形成のメカニズムをどのように機能させていくかについて,立法補佐機能への期待,などが提示された。

 午後の第2部では,片山善博・慶應義塾大学教授,松岡資明・日本経済新聞社編集委員,浜野保樹・東京大学大学院教授,小林真理・東京大学大学院准教授をパネリストとして招き,パネルディスカッション「知的基盤としての図書館」を開催した。なおディスカッションのモデレーターは,合庭惇・国際日本文化研究センター教授が務めた。各パネリストは知的基盤としての図書館の課題と国立国会図書館への期待について発表し,片山氏は図書館への認識が全般的に低いことを挙げ,図書館が単に本を貸し出すだけではなく,個人の自立を知的にサポートする役割も有していることを述べた。松岡氏は公文書館との連携の必要性を挙げ,浜野氏はデジタル情報も含め長い時間軸で文化を蓄積していくことにNDLの意義があることを指摘,小林氏はモノをもたない劇場やホールなどの文化施設に比べ,モノをもっている図書館の重要性を訴えた。

 会場では,講演やディスカッションのなかで言及された金森徳次郎や中井正一,羽仁五郎,ヴァーナー・W・クラップなどの関係資料,およびNDLの蔵書から豆本や珍しい装丁の資料など計26点を展示した。

 このシンポジウムの内容は,『国立国会図書館月報』2月号で紹介するとともに,記録集を刊行する予定である。

 なおNDL開館60周年記念行事として,記念貴重書展を東京本館(10月16日~29日),関西館(11月13日~26日)で開催した。この展覧会ではNDL所蔵の重要文化財を含む貴重書など77点を展示した。これらの展示資料はNDLのウェブサイト内の電子展示会のページで公開している。

Ref:
http://www.ndl.go.jp/jp/service/event/pdf/60th_sympo.pdf
http://www.ndl.go.jp/exhibit60/index.html