E639 – グラフィックノベル事始め

カレントアウェアネス-E

No.105 2007.04.25

 

 E639

グラフィックノベル事始め

 

 バットマン,スパイダーマン,シン・シティ。米国では「グラフィックノベル」(graphic novel)をベースにメディアミックスで人気を博す作品が,近年数多く現れている。グラフィックノベルとは,イラストと文章で綴られ,一定の連続性のある作品のことであり,「右開き」という特有のフォーマットを持つ日本のマンガも,“manga”として,グラフィックノベルの一角で存在感を増しつつある。

 グラフィックノベルのこのような展開を受けて,米国の図書館界でも,グラフィックノベルに対する理解が深まりつつある。例えば,図書館員の選書ツールとなっているLibrary Journal誌やSchool Library Journal誌などにグラフィックノベルの多くの書評が掲載されており,また米国図書館協会(ALA)のレファレンス・利用者サービス部会(RUSA)の分科会が示した書評についての手引き(a href=”http://current.ndl.go.jp/e567″>E567参照)の中でも,グラフィックノベルについて独立した項目が立てられている。また,ALAのヤングアダルト図書館サービス部会(YALSA)でも,優れたグラフィックノベルの情報を集めている。

 ALA/RUSAが刊行するReference & User Service Quaterly誌2007年1月号に 掲載されたコラム「グラフィックノベル事始め」(Getting Started with Graphic Novels)では,グラフィックノベルを知るための入門書・専門書,選書担当者のためのツール,蔵書構築の核となる作品などが紹介されている。このうち選書ツールとしては,上述の雑誌のほか,ウェブサイトとして,ティーン向けの作品の書評を掲載している“No Flying, No Tights”,日本の作品にも数多く言及している“Recommended Graphic Novels for Public Libraries”,図書館員用メーリングリストも併せて運営している“Graphic Novels for Libraries”,そして日本のアニメ・マンガに特化した“A Librarians’s Guide to Anime and Manga”を紹介している。選書ツールの充実ぶりとともに,マンガの影響の大きさが覗える。

 このコラムの執筆者であり,ペンシルベニア州立大学のレファレンスライブラリアンであるベーラー(Anne Behler)は,グラフィックノベルが「嫌々本を読んでいる読者(reluctant reader)を本の世界に誘う効果的なツール」であり,また「蔵書を豊かで深いものにし読書への愛をより一層育むもの」であると,その重要性に対する認識を示している。

Ref:
http://www.rusq.org/wp-content/uploads/2007/winter06/alert_collector.pdf
http://www.ala.org/ala/yalsa/booklistsawards/greatgraphicnovelsforteens/gn.htm
http://www.libraryjournal.com/
http://www.schoollibraryjournal.com/community/Graphic+Novels/47069.html
http://www.noflyingnotights.com/lair/index.html
http://my.voyager.net/~sraiteri/graphicnovels.htm
http://www.angelfire.com/comics/gnlib/index.html
http://www.koyagi.com/Libguide.html
E567
E615