E1668 - 筑波大学雙峰祭「近未来図書館シリーズ」5年間の軌跡

カレントアウェアネス-E

No.280 2015.04.23

 

 E1668

筑波大学雙峰祭「近未来図書館シリーズ」5年間の軌跡

 

 筑波大学大学院図書館情報メディア研究科宇陀・松村研究室は,筑波大学附属図書館と共同で,2010年から「近未来の図書館」をコンセプトとした学園祭企画を出展してきた。学園祭の来場者投票による企画コンテストでグランプリを3回受賞する快挙も成し遂げ,高い評価をうけている。本稿では,5年間にわたる試みの全体像を概観する。

○出展経緯と企画概要
 筑波大学学園祭「雙峰祭」(そうほうさい)では,研究系団体のみが応募できる「学研(学内研究)企画」という優遇枠があり,学園祭の場での研究成果発信が奨励されている。先鋭的な電子図書館システムや情報サービスを研究する本研究室も,研究成果の実証と社会還元を志向して応募に至った。

 出展場所として,雙峰祭会場の中心に位置する附属図書館の集会室(ゲート外)を利用させて頂き,資料の特別貸出等の点でも協力を得た。  

 各年の企画内容は,学生の自主的なゼミや,研究室合宿でのワークショップを通して素案を作成し,附属図書館職員と協議を重ねて決定した。リアルとバーチャルが融合した新たな図書館空間を魅せるという目標のもと,「近未来書籍カフェ」,「近未来書籍空間」,「近未来書籍Lab.」,「近未来らいぶらり」,「近未来図書館これくしょん」と毎年タイトルを変え,様々な企画を試みてきた。以下にその一部を紹介する。

○空間のプロデュース
 本を魅力的に展示することで,本と人とのよりよい出会いの場を作ることを目指した。書棚ごとにユニークなテーマを与え,紙の書籍,電子書籍,オブジェ,家具や什器,照明,BGMなど様々な要素を組み合わせて読書空間を演出した。筑波大学の学長や理事の本棚を再現するスペシャル本棚や,教職員と来場者が本を持ち寄った共同制作本棚も設置した。

 本を1冊ずつ紙袋に入れ,本文中の印象的な一文だけ紙袋の外側に書いた「覆面本棚」も実施した。これらの紙袋をポールハンガーに吊るして木のように並べ,どんな本が隠れているのか胸躍らせながら本の森を探索できる「ブックツリー」も制作した。

 その他,附属図書館所蔵の貴重書を多数のiPadで表示し,古典籍と最新機器のコラボレーション本棚も実現した。本研究室開発のシステム体験コーナーも設け,最新の図書館情報学研究に触れられる機会も提供した。

○参加型のイベントや子ども向け企画
 来場者の知的好奇心を誘発する効果的な図書館イベントの開発を目指し,情報技術を活かした新たなイベントの試行を重ねてきた。

 書評ゲーム「ビブリオバトル」を,その流行前からいち早く取り入れ,全年度で実施した。授業支援機器「クリッカー」を使った電子投票,学内サークルの方々によるPRを兼ねた発表など,学園祭独特の工夫を究めてきた。

 東日本大震災後に東北の図書館員が考案した「図書館体操第一」の実演や,NHK「みんなのうた」で話題となった楽曲「図書館ロケット」のiPadアプリによるライブコンサートも実施し,図書館の業務紹介や防災意識の啓蒙を図った。

 子ども向けおはなし会では,iPadによる電子絵本やiPod touchでの体験型コンテンツ等を組み合わせ,天井や壁にプロジェクタで映像を投影し,物語の世界観を会場に再現する工夫をした。また,AR(拡張現実)技術を用いて,絵本の中のキャラクターが現実世界に飛び出してくるような仕掛けも演出した。

 来場者がiPadで描いた絵が会場入口に表示され,装飾に貢献できる掲示板や,栞・ブックカバー作成コーナーといった,創作体験の場も設けた。宝探し・絵本探しなど親子で取り組めるゲームも実施したほか,地図に書かれた謎を解きながら会場を回ると日本十進分類法等の知識が得られるような「脱出ゲーム」も実施し,大人も楽しんでいた。

○独創的なプロモーション
 本企画に欠かせないのが,マスコットキャラクターの存在であった。附属図書館公式キャラクター「がまじゃんぱー」を有志で着ぐるみ化し,会場を練り歩いたり,学園祭生中継番組や後夜祭の企画コンテスト表彰式に出演するなど,広告塔になった。

 また,もう1人の公式キャラクター「ちゅーりっぷさん」に学生が扮したり,結婚式を控えた学生達がドレス・タキシードを着て,会場でウェディングフォトを兼ねた企画PR写真を撮影するなど,視覚的にもインパクトの強い宣伝が功を奏した。

 最後に,本企画の効果として,学内での「がまじゃんぱー」の知名度が飛躍的に向上し,図書館の広報物やソーシャルメディア等でも積極的に用いられるようになった。また,5年目に実施した来場者同士で本や図書館への愛を語るコミュニケーションイベント「Bibliothek Kompanie」は,学外の大手ニュースメディアにも取り上げられ,図書館の存在感を強めたことは間違いない。

 研究室と大学図書館が強く連携し,学生主体の協働体制を構築したことが,このような大規模企画継続の成功要因であっただろう。

筑波大学大学院図書館情報メディア研究科・小野永貴
筑波大学図書館情報メディア系・宇陀則彦
筑波大学図書館情報メディア系・松村敦

Ref:
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http://www.tulips.tsukuba.ac.jp/prism/?p=379
http://www.tulips.tsukuba.ac.jp/prism/?p=533
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