E1597 – 2014年学校図書館法一部改正:学校司書法制化について

カレントアウェアネス-E

No.265 2014.08.28

 

 E1597

2014年学校図書館法一部改正:学校司書法制化について

 

 2014年6月20日の参議院本会議の可決をもって,学校図書館法の一部を改正する法律(以下「改正法」)が成立した。本稿では,改正法及び附帯決議の内容,成立までの経緯と制定前後の動きについて記載する。

 

1. 改正法及び附帯決議

 今回の改正は,従来から規定されていた司書教諭以外に,これまで法律での定義が行われてこなかった学校司書の条項を新たに追加したものである。改正法において,学校司書は“学校図書館の運営の改善及び向上を図り,児童又は生徒及び教員による学校図書館の利用の一層の促進に資するため,専ら学校図書館の職務に従事する職員”と定められた。そして学校には学校司書を“置くよう努めなければならない”とされ,“国及び地方公共団体は,学校司書の資質の向上を図るため,研修の実施その他の必要な措置を講ずるよう努めなければならない”と定められた。

 衆議院文部科学委員会,参議院文教科学委員会とも改正法案に対し,附帯決議を議決している。衆議院と参議院で記述に多少の異なりはあるものの,その内容には以下の6つの要素が盛り込まれている。(1)学校司書の配置と配置水準の維持,(2)現在講じられている措置・取り組みの充実と趣旨の周知,(3)学校司書の継続・安定的な職務従事のための環境整備,(4)学校司書の職の在り方や,配置の促進,資質の向上についての検討,(5)11学級以下の学校における司書教諭の配置促進,(6)司書教諭及び学校司書の職務の在り方についての検討,である。

 

2. 改正法成立までの経緯と制定前後の動き

 今回の改正の発端の一つとして,2012年10月10日に子どもの未来を考える議員連盟,学校図書館活性化協議会,公益財団法人文字・活字文化推進機構によって開かれた「学校司書の法制化を考える全国の集い-学校図書館の活性化をめざして」が挙げられる。この集会を受けて現場と研究者の双方から動きが見られた。具体的には,現場の動きとして,2012年11月23日に学校図書館問題研究会,学校図書館を考える全国連絡会の主催により研究会「いま,学校図書館を考える~なぜ,学校司書が必要か~」が開催され,また研究者の動きとしては,2012年12月1日に,日本図書館情報学会のLIPER3プロジェクトにより,シンポジウム「日本の学校図書館専門職員はどうあるべきか:論点整理と展望」が開催された。

 その後,2013年6月12日には「子どもの未来を考える議員連盟」総会で,「学校司書の法制化について」の協議が行われ,その席上で「学校図書館法の一部を改正する法律案(仮称)骨子案」が示された。この骨子案に対して,日本図書館協会や学校図書館問題研究会,学校図書館を考える全国連絡会が意見を表明した。法制化の動きが加速したのは,2014年3月になってからのことである。3月18日には「子どもの未来を考える議員連盟」が学校図書館法改正案を国会に提出する準備を進めていることを受け,衆議院第一議員会館で「学校図書館法改正緊急集会」が実施された。5月22日には「学校図書館議員連盟実務者協議会」が開催され,各種団体からのヒアリングが行われた。

 附帯決議で挙げられた検討項目について,いくつかは既に検討が始まっている。例えば学校司書の職務については,法律制定に先立って文部科学省の「学校図書館担当職員の役割及びその資質の向上に関する調査研究協力者会議」が報告書をまとめており,学校図書館担当職員の職務を,「間接的支援」,「直接的支援」,「教育指導への支援」の3つの観点から提示している(E1553参照)。続いて2014年6月8日と6月29日には筑波大学東京キャンパス文京校舎にて「学校図書館担当者(司書教諭・学校司書等)の養成と研修に関する研究会」が開かれ,学校司書を含めた担当者の役割や養成について議論が行われている。また司書教諭の養成については,2014年7月14日付けで文部科学省が全国の大学に対して,司書教諭講習科目に相当する授業科目の開設状況調査への協力を依頼しており,実態把握が進められている。

 6月20日の改正法の成立を受け,全国学校図書館協議会は,要望をすべて満たしたものではないとしながらも,“学校司書が法律上に位置付けられたこと,学校司書の資格・養成及び研修について法文に明記されたことは,今後の学校司書制度の確立の第1歩となるもの”との記事を掲載している。また日本図書館協会は7月4日に,改正法に対する見解として,衆参両委員会の附帯決議と同様の内容の要望を公表している。さらに学校図書館問題研究会は,改正法案に関する働きかけをまとめたWebページを公開し,8月5日の総会での議論を受け,職員制度の問題点や,学校図書館職員のあり方について,論議を深めるといった活動方針を公表している。また,法案提出に関わった学校図書館議員連盟などは7月14日にパンフレットを発行し,改正法の趣旨をふまえた学校図書館の整備充実や,学校図書館の改革・改善に取り組むことを明らかにしている。

白百合女子大学文学部・今井福司

Ref:
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http://www.gakuto-seibi.jp/pdf/2014leaflet4.pdf
E1553
 

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