E1595 - 国立世宗図書館開館と韓国の政策情報サービス

カレントアウェアネス-E

No.264 2014.08.07

 

 E1595

国立世宗図書館開館と韓国の政策情報サービス

 

 2014年7月8日から15日にかけて韓国国立中央図書館(NLK)から代表団4名が来日し,国立国会図書館(NDL)にて第17回日韓業務交流が行われた。この業務交流は,NDLとNLKが1997年から毎年交互に代表団を派遣し,実施してきたものである。今回の業務交流では,韓国国立世宗図書館政策資料課長の崔有珍(チェ・ユジン)氏から,国の行政機関の移転に伴いNLKが進めている政策情報サービス再構築の取組について報告がなされた。主に,政策情報サービスの新たな拠点として開館した国立世宗図書館(以下,世宗図書館)の概要と,そのサービス及び課題について説明が行われた。本稿では,この報告に基づき,NLKの政策情報サービスの最新動向を紹介する。

 韓国政府は,2000年代半ばから,国の行政機関を順次,世宗特別自治市へ移転させ,「行政中心複合都市」の形成を行ってきた。これに対応するため,NLKも世宗市への地方分館設置計画を進め,2013年12月に世宗図書館を開館させた。世宗図書館は世宗市に集中する国の行政機関等への政策情報サービスに特化した図書館を目指している。白書,年鑑・年報,法令,統計,報告書等の図書館資料を活用して,策定・執行・評価といった政策プロセスの各段階に必要な情報提供を行う。

 NLKが世宗図書館の設立とともに進めたのは,関係機関との連携を強化し,政策情報の共同保存と利活用を促進することである。具体的には,「政策情報協力ネットワーク」と呼ばれる連携枠組を構築し,政策情報総合目録の構築を行っている。ソウルにあるNLK本館は,関係機関との協約締結や協議会の設置に取り組み,他方,世宗図書館は総合目録構築の実務を担当している。これまでに,相互貸借サービスや政策資料の受託保管のための関連規定等が整備され,2014年下半期のサービス開始に向け,参加機関の書誌データのシステム入力が続けられている。今後,参加機関と登録資料が増加すれば,政府各機関の情報共有が進み,このデータベースを通じて,政策立案に有益な情報提供が行えるという。さらに,収集された情報の翻訳,要約等の加工を行い,情報コンテンツの強化を行うことも目指していくとしている。

 この総合目録事業のほか,世宗図書館では主に3つの政策情報サービスに着手している。

(1)公務員を対象とする学術雑誌目次メーリングサービス

 学術雑誌の目次のメーリングサービス(メールマガジン配信)を行っている。NLKが購読している国内外の学術雑誌2万タイトル以上を,政府機能分類体系(Business Reference Model:BRM)に基づいて分類し,目録を提供する。利用者は,公務員として政府認証基盤(GPKI)の認証を経て利用申請を行い,希望する雑誌の目次情報を電子メールで受け取る。これを通じて原文のオンラインでの閲覧利用や,複写物の郵送サービス等の申し込みを行うこともできる。現在1,500人以上が利用している。

(2)政策分野別オンライン主題ガイドの提供

 政策分野ごとに,概況,基本書,統計,法令,規格,報告書,会議資料,データベース,ウェブサイト等の有益な情報源を,ポータルサイト上で,ガイドとしてまとめて提供するものである。各政策分野は,BRMの分類体系を基盤に,基本17分野をさらに細分化したもので,必要に応じて追加することも想定されている。現在,「行政中心複合都市」(国土開発),「南北交流」(統一・外交)等,133政策分野の主題ガイドを作成し,提供の準備をしている。最新情報の提供と情報の信頼性を維持し,主題ガイドが政策研究の出発点となるようにするには,司書と各分野の政策専門家による管理が必須と考えている,とのことである。

(3)公務員を対象とする政策メンターリングサービスの提供

 NLKが,政府研究機関の職員(OBを含む)や政策研究者に政策メンターを委託し,司書と共に,実務に役立つ専門情報の提供を行うサービスである。政策資料室での相談方式に加え,今後はオンラインサービスも実施予定である。現在,メンターは30名弱であるが,流通している資料を通じて獲得できる一般的な情報の提供だけでなく,政策分野における長年の実務を通じて蓄積された経験的知識の提供も行えるよう,サービスを充実するため,さらなる人材の確保が課題である,とのことである。

 崔氏によれば,政策情報サービスを今後さらに充実させるには,個々のサービスメニューの改善だけでなく,政府機関刊行物等の納本部数の増加,デジタル納本の義務化,行政資料室への司書の配置等,インフラ面での法整備も重要であるという。国立図書館が立法府である国会に属し,支部図書館制度によって行政機関等への情報提供を行う日本とは異なる手法ではあるが,NLKの意欲的な取組みは今後の政策情報サービスを考える上で良い参考になるとおもわれる。

関西館アジア情報課・緒方佑衣

Ref:
http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/cooperation/nlk.html
http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/pdf/2013_kankoku_kicyo.pdf
http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/pdf/kankoku_kicyo_2012.pdf
http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/pdf/kankoku_theme1.pdf
http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/pdf/kankoku_kicyo.pdf