E1524 – 情報都市における公共図書館の中核的サービス像<文献紹介>

カレントアウェアネス-E

No.252 2014.01.23

 

 E1524

情報都市における公共図書館の中核的サービス像<文献紹介>

 

 Agnes Mainka. Et al. Public Libraries in the Knowledge Society: Core Services of Libraries in Informational World Cities. Libri. 2013, 63(4), p. 295-319.

 東京,ニューヨーク,パリ,ロンドン…。知識社会の典型といえる情報都市では,公共図書館はどのようなサービスを提供しているのだろうか。2013年第63巻第4号のLibri誌で,ドイツのハインリッヒ・ハイネ大学の情報学部(Department of Information Science)のメンバーが,31の「世界的な情報都市(Informational World City)」を選定し,それらの都市における公共図書館の中核的なサービスについて調査した結果を公表した。本稿では,調査における「世界的な情報都市」の選定方法,調査項目となる公共図書館のサービスを確認し,選定した都市におけるそのサービスの実施状況について紹介する。

 まず,文献調査から得られるさまざまな指標から,社会基盤,娯楽としての場所の要素に注目し,「世界的な情報都市」を(1)文字どおり“World/Global city”として言及されている都市,(2)“digital”,“smart”,“knowledge”,“creative”のいずれかで形容されている都市と定義した。Web of Science,Scopus,Google Scholar,Wiley Online Libraryに収録されている文献から(1)かつ(2)に該当する20か国31の都市を選定した。

 次いで,調査の項目にあげるべき,公共図書館のサービスを検討している。文献調査から,上記の定義で形容される都市での図書館の役割を概観し,それらに寄与するサービスをデジタルサービスと物理的なサービスの二つの側面から調査項目として挙げている。デジタルの側面については,(1)図書館のウェブサイトの自国の公用語と英語による公開,(2)OPACの自国の公用語と英語による公開,(3)電子リソース(電子ジャーナル,電子書籍,画像,オーディオブック,音楽,電子雑誌,ビデオ,新聞,書誌データベースなど)の提供,(4)図書館でデジタル化した資料やコレクションの提供,(5)電子リソースの図書館登録者による無料での利用の可否,(6)電子リソースの利用案内(ビデオガイド,セミナー,マニュアル,FAQ)の提供,(7)デジタルレファレンスサービス(電子メール,ショートメッセージサービス,ウェブフォーム,Skype)の提供,(8)ソーシャルメディア(ブログ,Facebook,Twitter,新浪微博,Flickr,Youtube)の利用と(9)その利用状況(Facebook,Twitterまたは新浪微博,Youtube),(10)モバイル端末向けのアプリケーションの提供の有無,を調査している。物理的な側面については,(1)建築的なランドマークとしての図書館,(2)学習・会議・子どものための場所とその魅力,(3)図書館内での飲食,(4)RFID,(5)図書館で借りた資料の返却が市内のどこでも可能である事,(6)Wi-Fi,(7)図書館のマーケティング戦略,を調査項目としている。

 選定された都市の公共図書館のウェブサイトで上記のサービスの実施状況を調査し,必要に応じて職員へのメールでのインタビューを行った。主な結果は以下のとおりである。
デジタルの側面においては,81%の公共図書館において,英語のウェブサイトが提供されていた。電子リソースについては,約半数の図書館において,提示したほぼすべての種類のリソースが提供されており,80%の公共図書館が無料で利用者にデータベースを提供していた。なお,電子リソース自体の高い提供率に対して,その利用案内の提供は低い割合にとどまっていた。レファレンスサービスの提供方法は,電子メールが81%,次いでウェブフォームが65%で,チャットやインスタントメッセージも29%ほど使用されていた。ソーシャルメディアに関しては,71%の公共図書館はTwitterもしくは新浪微博を利用しており,74%はFacebookアカウントを持っていることがわかった。

 物理的な側面においては,9割以上の図書館がその都市のランドマークとなっていた。また,学習,会議や仕事の利用だけではなく,子どものためにも場所を提供している図書館が多かった。一方で,図書館内で飲食ができるのは45%に過ぎなかった。70%以上の図書館で,市内に図書館資料を返却できる場を設けている。RFIDについては,58%の図書館で利用されている。図書館のマーケティング戦略としては,3分の2の図書館が情報リテラシーのプログラムを提供するなど,教育の役割を重視していることがわかった。

 記事では,典型的な情報都市における公共図書館の中核的なサービスとして望ましいありかたを次の二点にまとめている。・電子リソースやレファレンスサービスなどのデジタルサービスを提供し,ソーシャルメディアで利用者と交流することで,市民,企業,政府を支援する。・会議や学習,仕事のための場所だけでなく,特に子どもやその他のグループのために物理的な場所を提供し,図書館の建物はその都市におけるランドマークとなっている。

 文献調査からあるべきサービスを抽出し,調査する手法,また調査結果から明らかになった各図書館の実情が興味深い。都市における公共図書館のサービスのあり方の検討に資する記事ではないだろうか。

関西館図書館協力課・篠田麻美

Ref:
http://dx.doi.org/10.1515/libri-2013-0024