E1423 - 図書館の現場につなぐ:図書館就職のためのMULUのセミナー

カレントアウェアネス-E

No.236 2013.04.25

 

 E1423

図書館の現場につなぐ:図書館就職のためのMULUのセミナー

 

 みちのく図書館員連合(MULU)では,図書館への就職を希望する人たちのためのセミナーを2012年から開催している。MULUとは2009年7月7日に発足した,東北地方の図書館員を中心とした“顔が見える”コミュニティである。メンバー数は約150名であり,主にメーリングリストによる情報交換と月に一度の茶話会を開催している。最近では,図書館員の日常業務と東日本大震災の教訓を体操にした「図書館体操第一」でよく話題となる。

 セミナーでは,若手MULU会員が講師役となり,図書館への就職に関する概論や,館種や業務形態(専任や業務委託等)のカテゴリーごとに就職試験の概要やその経験を説明している。また,それぞれの仕事内容や図書館情報学系大学院への進学についても紹介し,その後参加者と現役図書館員で個別相談を実施している。図書館が開催する就職説明会はあるが,様々な館種や雇用形態を網羅的に説明するようなものは希有だと思う。

 「情報を扱う図書館員になるのだから,就職情報を探索することは図書館就職への第一歩だ」という言葉は確かにその通りだ。しかし,就職情報や現場の仕事内容について知ることは大変困難である。あたかも「入れるものならば入ってみろ」と言わんばかりの閉じられた不親切さを感じる時もある。司書資格を与える大学でも,図書館への就職希望者に対し情報面でのサポートを特に行ってないこと,そしてその結果多くの有資格者が就職情報を全く得られないことがあることを,よく耳にしてきた。

 こうしたことから,図書館への就職希望者に現役の図書館員の立場として出来ることがあればと思い,司書科目を持つ大学の教員(東北学院大学早坂信子先生)と協力の上,図書館就職のためのセミナーを企画したのである。

 セミナーはこれまでに2回開催している。第1回は2012年2月27日に仙台駅前の研修施設の一室で開催した。まず図書館への就職について概要を説明し,続けて館種別等に6名の現役図書館員が報告した。参加者からは,採用試験に向けて何をすればよいのかといった,具体的な勉強内容や方法に関する質問が多く集まった。

 広報と準備に十分な時間が取れなかったが,大学生等25名もの受講者を得て,この企画へのニーズがあると感じた。参加者アンケートを見ても,現役図書館員の生の声が聞けることへの評価が高かった。その後,3名の参加者から東北の図書館に就職できたとの報告を受けた。企画した我々としては本望であるとともに,本セミナーがいささかなりとも貢献できたのではないかと感じられた。

 第2回は2013年2月10日に東北大学附属図書館のラーニングコモンズで実施した。東北地区の司書課程がある大学や仙台市内の大学のほか,宮城県の地方紙である河北新報の協力を得て広報した結果,大学生のみならず,高校生や一般を含めた44名が受講した。今回は,できるだけ新鮮な情報を提供できるように,初回に参加してその後図書館に就職した2名の新人職員にも講師役になってもらった。また参加者から事前に質問を受け付け,その中で多く挙げられた「司書資格有無の影響」「図書館へ就職する方法」などの情報をできるだけ提供するように努めた。

 参加者からは「図書館で働くことに興味はありましたが,何をしたらいいのか全く分からなかったのでとても有意義でした」「詳しいことが聞けて良かったです。これから司書を目指すモチベーションになりました」「図書館への就職は大変だと思いましたが,それ以上に,楽しい仕事,魅力的な仕事だと話していて感じました」など,大変好評だった。公立図書館への就職希望者が多かったことや,個別相談では多くの参加者が業務委託スタッフへの就職に関心を示したことが印象深かった。

 セミナーは就職希望者だけでなく,開催する図書館側にとってもメリットがある。例えば,図書館への就職情報を多くの学生が得ることで,図書館界にとっては質の高い人材を確保できる可能性が高まったと言える。また,セミナーを通じて図書館に関心のある学生とつながりができ,特に大学図書館にとっては利用者のニーズの収集や学生と協同したイベントを実施しやすくなった。そのほかにも,図書館で急に求人が出た際に,セミナーに参加していた求職者に声をかけることができるなど,司書バンクの様な役割も果たしている。このようなメリットを活かしつつ,今後も図書館志望者と現役職員との繋がりの架け橋を大きくし,「すべての志望者に開かれた門を」のスピリットの実現を目指す。そして我々の住む東北への貢献のため,いわば図書館員の「地産地消」の機会を広げ,みちのくの図書館文化の更なる向上を目指して行きたい。

(宮城教育大学附属図書館・吉植庄栄)
(日本アスペクトコア・佐藤友則)
(宮城教育大学附属図書館・石橋典子)
(東北大学金属材料研究所図書室・小林真理絵)

Ref:
http://mulu.g.hatena.ne.jp/michinoku_librarian/20100300/1333542342
http://mulu.g.hatena.ne.jp/michinoku_librarian/20120324/1332599874
http://mulu.g.hatena.ne.jp/michinoku_librarian/20130224/1361982722
http://mulus.wiki.fc2.com/wiki/%E7%AC%AC1%E5%9B%9E
http://mulus.wiki.fc2.com/wiki/%E7%AC%AC2%E5%9B%9E