E1233 – 米国での図書館と電子書籍に関する動向紹介

カレントアウェアネス-E

No.204 2011.11.10

 

 E1233

米国での図書館と電子書籍に関する動向紹介

 

 2011年9月下旬から11月上旬にかけて発表された,米国での図書館と電子書籍に関する情報のうち,主なものを以下に紹介する。

●図書館における電子書籍に関する調査

 Library Journal誌による,米国の図書館における電子書籍の購入・提供等の状況の調査“2011 Ebook Penetration & Use in U.S. Libraries Survey”の結果をまとめたレポートが,2011年10月に発行された。2010年に続く第2回目となる今回の調査では,公共図書館1,053館,学校図書館905館,大学図書館488館の計2,446館から回答があり,館種別の3つのレポートが発行されている。ウェブサイトでは,以下のような結果の概要の一部が紹介されている。

  • 電子書籍を提供している図書館の割合は,公共図書館が82%(前年比10ポイント増),大学図書館が95%(同1ポイント増)。
  • 1館あたりの平均タイトル数は,公共図書館が4,350タイトル(前年比184%増),大学図書館が65,208タイトル(同93%増)。
  • 「電子書籍は新しい利用者を呼び込んだか?」という問いに対し,公共図書館では「はい」が76%であったが,大学図書館では「はい」が33%,「いいえ」が36%であった。
  • 電子書籍を読むために使用している機器は,公共図書館では「専用電子書籍リーダー」(85%)や「その他の携帯型端末」(62%)が多いのに対し,大学図書館では「個人のPC」(72%)や「図書館のPC」(62%)が多い。
  • 利用者からの電子書籍の要求については,公共図書館では「劇的に増えた」が66%であったのに対し,大学図書館では「やや増加」が44%,「変化なし」が31%であった。

●電子書籍リーダーKindleへの貸出

 2011年9月21日から,個人の所有するAmazon社の電子書籍リーダーKindleで図書館から電子書籍が借りられるサービスが開始された。対象となるのは大手の電子書籍ベンダーOverDrive社と契約している米国内の約11,000館の公共・学校図書館で,同社がそれらの図書館で提供しているタイトルが貸出対象となる。OverDrive社のサービスは以前から他の電子書籍リーダーや携帯型端末には対応していたが、普及度の高いKindleにも対応することとなった。一方,Kindleへの貸出の際に,図書館ウェブサイトでの検索後にAmazon社のウェブサイトにログインする必要があることについて,図書館利用者のプライバシーの問題を指摘する意見も出ている。

 また,Amazon社は,11月2日から,同社の有料会員(年会費79ドル)の所有するKindleに対し同社から電子書籍を貸し出すサービス“Kindle Owner’s Lending Library”を開始した。一度に1冊ずつ,返却期限なし,新しく借りるのは1か月に1冊,という利用方法で,サービス開始時点では約5,000冊が利用可能とのことである。同社は有料会員向けに追加料金なしでインターネットでの映画やテレビ番組の視聴サービスを提供しており,電子書籍の貸出もそうしたサービスの一つとして位置付けられている。

●電子書籍ベンダーの変更に関わる問題

 カンザス州の公共図書館コンソーシアムでの,電子書籍ベンダーの変更が注目を集めている。2011年12月5日までとなっているOverDrive社との契約を更新しない理由は,値上げに加え,電子書籍の所有に関する文言が変更されたためとされている。現在の契約では,コンソーシアムが「購入」した電子書籍は契約終了時に他のシステムに移行できるとなっているが,新しい契約案は「購入」という用語が削除され,契約終了後はそれらの電子書籍が利用できなくなる内容であったとのことである。

 同コンソーシアムでは,3M社の新たなクラウド型のシステムへの変更を予定しているが,電子書籍の移行にあたっては,対象資料の出版社から許諾を得る必要がある。169の出版社のうちこれまでに半数以上の出版社から許諾を得ており,それらの出版社の電子書籍は新システムで提供できる見込みであるが,州内の図書館には,OverDrive社との契約終了後に電子書籍が提供できない期間が発生することを懸念する館もあるようである。

 同コンソーシアムの活動を主導している州立図書館長のバドラー(Jo Budler)氏は,現状の電子書籍モデルを「本が入った書棚を購入しているようなもの」と表現し,プラットフォームとコンテンツを別々に選びたいとコメントしている。Library Journal誌は,この問題は,蔵書構築や保存に関し,デジタル時代の図書館の位置づけについての根本的な問いを投げかけるものであると指摘している。

Ref:
http://www.thedigitalshift.com/2011/10/12/dramatic-growth-ljs-second-annual-ebook-survey/
http://phx.corporate-ir.net/phoenix.zhtml?c=176060&p=irol-newsArticle&ID=1608874&highlight=
http://www.overdrive.com/News/OverDrive-and-Amazon-launch-Kindle-compatibility-with-Library-eBooks
http://americanlibrariesmagazine.org/e-content/librarians-weigh-kindle-ebook-lending-against-reader-privacy
http://infodocket.com/2011/09/27/8350/
http://phx.corporate-ir.net/phoenix.zhtml?c=176060&p=irol-newsArticle&ID=1625426&highlight=
http://www.libraryjournal.com/lj/home/891052-264/kansas__state_librarian_argues.html.csp
http://www.libraryjournal.com/lj/home/892348-264/kansas_state_librarian_can_transfer.html.csp
http://newsbreaks.infotoday.com/NewsBreaks/Kansas-Leading-the-Fight-for-Fair-Ebook-Access-in-Libraries-78302.asp