E1199 - 国立国会図書館,報告会「東日本大震災の復興支援」を開催

カレントアウェアネス-E

No.197 2011.07.28

 

 E1199

国立国会図書館,報告会「東日本大震災の復興支援」を開催

 

 2011年7月13日,国立国会図書館(NDL)東京本館で報告会「東日本大震災の復興支援―図書館支援に求められていること―」が開催された。その内容はNDL関西館にも中継され,東京本館・関西館合わせて191名(NDL職員含む)が参加した。以下,報告会の主な様子を紹介する。

 まず,岩手県立図書館と宮城県図書館より被災状況等が報告された。

 岩手県立図書館では人的被害はなかったものの,1割の資料の落下やシステム障害等の被害を受けて3月いっぱいは閉館していた。県内公共図書館56館のうち,6月27日時点で50館が開館(部分開館含む)しているが,沿岸部に位置する陸前高田市立図書館,大槌町立図書館,野田村立図書館は津波によって壊滅状態にあるという。課題として,支援する側・される側のミスマッチの解消,壊滅的な被害を受けた図書館等に対する長期的な支援等が訴えられた。

 宮城県図書館では利用者・職員約450名は全員無事だったが,約100万点の資料のほとんどが落下し,建物・システム等6,000万円分の被害を受け,5月12日まで閉館していた。南三陸町図書館と女川町生涯教育センターは津波によって建物が全壊した。それ以外の県内公共図書館の多くは高台にあったおかげで津波による浸水を免れたものの,地震そのものによる被害が大きかったために一定期間の休館を余儀なくされた。6月までにはほぼ全ての図書館が再開したという。最後に,同館が実施している震災関連事業として,防災計画・体制の見直し,震災関連資料の収集,県内公共図書館への資料や人の支援等が紹介された。

 続いて,各機関からそれぞれが実施している支援の取組が紹介された。

 NDLからはウェブページでの震災・復興関連情報の発信,資料提供・レファレンス,資料の修復・保存支援,児童サービス支援等の取組を紹介した。文部科学省からは支援の要請と提案をマッチングする「子どもの学び支援ポータルサイト」に加え,公立社会教育施設災害復旧費補助金(87億円)の概要について説明された。日本図書館協会(JLA)からはサービス再開のための復興に止まらない,現在求められているサービスを実現するための図書館復興計画を立案する仕組みが必要だと述べられた。

 Wikiサイトを立ち上げて有志のネットワークによる支援を行ってきたsaveMLAKからは,錯綜する支援が受援者の負担になっている等の反省や,今後「平時の備え」の根拠となるような震災記録アーカイブを構築する必要性が語られた。図書館振興財団は基金のうち1億円を用いて約50館の図書館に書架等の現物支給による支援を実施してきた。大手出版社等から成る〈大震災〉出版対策本部は,14万冊の図書の寄贈や13万人の小学生への図書カード送付等の支援を行った。

 続いて,神戸市立図書館から阪神・淡路大震災での経験が紹介された。神戸市職員は図書館員も含めて24時間体制で復興対応に当たる必要があった,図書館が開館できる状況でも学校の再開の方が優先された等の事情が述べられた。2つの震災の相違点として,東日本大震災ではインターネットによる情報発信・受信ができるようになったが,支援をする側・される側のコミュニケーションがうまく取れていない点は変わらないと指摘された。

 最後に,発表者全員が登壇したパネルディスカッションでは支援活動から見えてきた課題や問題点について意見が出された。

  • 被災地の図書館の被害が大きく,何を支援すればよいかの情報が当初は不足した。また,様々な支援が行われていたがその一部しか県立図書館に情報が届いていなかった。(岩手県立図書館)
  • 子どもたちに送られてきた本の中に,津波や家族の死を思い出させるようなものや大人向けのものがあったケースなど,支援を受ける側と支援する側のミスマッチが存在した。(宮城県図書館)
  • ニーズのマッチングはできないという前提で考えるべき。送っても迷惑にならないものを送ることが必要。また,有事には組織を中核としたネットワークは機能しないため,個人が個人として動けるネットワークを平時から構築しておくべきである。(saveMLAK)
  • 移動図書館のニーズが強い。お互いに貸与しあえるように,全国の移動図書館のデータベースの作成を考えている。(図書館振興財団)

 ディスカッションは岩手県立図書館長の「今後とも,復興に向けては息の長い活動が必要であることから,是非『忘れない』でいただきたく,その時々の要望にあわせてご支援をお願いしたい」,宮城県図書館からの「このような場の設定によって,関係者が会していろいろ意見を交わせたことは良かったと思う」という言葉で締めくくられた。

 当日の発表資料は以下のウェブページで公開している。

Ref:
http://www.ndl.go.jp/jp/event/events/1191804_1368.html