E1026 – 電子書籍へのISBN付与に関する国際ISBN機関の見解が示される

カレントアウェアネス-E

No.167 2010.03.10

 

E1026

電子書籍へのISBN付与に関する国際ISBN機関の見解が示される

 

 国際ISBN機関(International ISBN Agency)は,2010年2月22日に,電子書籍へのISBN付与に関する同機関の見解を示すポジションペーパーを公開した。ポジションペーパーに示されている,背景,勧告,今後の行動について,概要を紹介する。

<ポジションペーパーの出された背景>
 デジタル化の進展とそれに伴う書籍流通の仕組みの変化により,個別の書籍を識別するというISBNの役割が不明確になっている。現在のISBNを規定しているISO規格「ISO2108」では,同じ内容の出版物でも別の形態をとる場合には,別のISBNを付与すべきとされている。ISO2108の2005年の改正に際し,電子出版物の扱いについての議論があったが,紙の書籍と同様のルールを適用し,異なるフォーマットの電子書籍には異なるISBNを付与するということで合意された。電子書籍の場合は,出版社が作成したファイルのフォーマットが流通過程で別のフォーマットに変換されたり,様々なルートで販売されたりすることにより,複数の異なるバージョンが存在しうるが,必要とするバージョンを読者が入手できるよう,これらを識別する必要があるからである。
 しかし,出版社によっては,出版社が作成した原本である汎用(generic)のファイル(EPUBフォーマットが主流となっている)にのみISBNを付与し,その後の流通段階で発生する別バージョンについてはISBNを付与していないところもある。一方,ルールに従い,別々のフォーマットには別々のISBNを付与している出版社もあり,混乱が生じている。

<国際ISBN機関の勧告(recommendation)>

  • 出版社は,複数のフォーマットで利用可能な電子書籍には,それぞれ異なるISBNを付与すべきである。ただし,Amazon社のKindleのように,単一のルートで特定のフォーマットのみが流通する場合には,付与しなくてもよい。大まかな原則としては,流通段階で識別の必要がある場合には別々の識別子が必要,ということである。
  • 出版社が別々のISBNを付与しない場合には,2008年4月に国際ISBN機関が発行したガイドラインに従い,流通に携わる卸売業者等によりISBNが付与されることも認める。ただし,自ら付与する前に,まずは出版社が付与するよう働きかけるべきである。
  • 出版社の原本である汎用ファイルと,流通段階での別バージョンであるファイルとを同じレベルで扱うと混乱が起こる可能性があるので,原本の汎用ファイルを区別できるような識別の仕組みが必要である。音楽産業での取り組みが参考となろう。
  • 学術書等の書籍で,その一部分である「章」等が独立して流通する場合は,それらにもISBNを付与すべきである。ただし,一つのルートでしか流通しない場合はISBN付与の必要はなく,内部的な識別子やDOIが用いられることとなろう。

<国際ISBN機関の今後の活動>

  • 書籍業界の標準化団体EDItEURと協同で,卸売業者等が出版社に対しISBN付与を要請するためのウェブサービスの研究・開発を行う。
  • 電子書籍の原本を識別するための仕組みについて,関係団体等と協同で検討する。

 

Ref:
http://www.isbn-international.org/pages/media/ISBN_e-book_paper_Feb2010.pdf
http://www.isbn-international.org/news/view/29
http://www.iso.org/iso/catalogue_detail?csnumber=36563