E1237 – フランス国立視聴覚研究所(INA)テルッジ氏講演会<報告>

カレントアウェアネス-E

No.204 2011.11.10

 

 E1237

フランス国立視聴覚研究所(INA)テルッジ氏講演会<報告>

 

 2011年10月18日に国立国会図書館(NDL)東京本館において,フランス国立視聴覚研究所(INA)の調査研究部長ダニエル・テルッジ(Daniel Teruggi)氏による「音響と映像のアーカイブ」と題した講演会が行われた。以下は,その講演内容及び,講演に引き続き行われた,テルッジ氏,大路幹生氏(株式会社NHKエンタープライズ),長尾真NDL館長による鼎談の内容を要約したものである。

 INAは1974年に発足し,公共放送のテレビ・ラジオ番組の収集・保存を開始した。1992年に放送の法定納入制度が制定され,1995年から全ての番組を対象として収集と保存を行っている。2009年からは,インターネット情報にまで対象を拡大しており(CA1614E433参照),2015年には保存される全ての視聴覚資料がデジタル化される予定である。現在INAでは980人の職員を抱え,350万時間のテレビ・ラジオ番組と120万件の写真を保有している。また,2009年にはデジタル化のために2千万ユーロの投資を行い,2010年の予算は1億2千万ユーロであった。その他,INAは視聴覚資料の研究や研修を行っている。資金調達の手段としては,視聴者のテレビ受信料,商業活動,そして研修等がある。

 INAのコレクションは2つのタイプに分けられる。1つは,公共放送のラジオやテレビ番組のアーカイブであり,INAの所有物として製作権や販売権をINAが持つこととなる。もう1つは,法定納入制度で集められる民間のテレビ・ラジオ番組である。これらについては,販売権も含めいかなる権利もINAは持たず,利用は研究目的に限られており,フランス国立図書館(BNF)等の特定の場所においてのみ利用可能である。

 収集したテレビ・ラジオ番組のデジタル化が必要となってくる理由は原資料の劣化と再生方法の陳腐化である。それらに対する解決法はいくつかあるが,現在ではデジタル化が最適な方法であると言える。デジタル化の計画作成のためには分析やマッピング,優先事項の決定など7段階から成るアプローチがある。INAでは,資料の永久保存と利用者への提供を目的として,アナログ形態の所蔵物のデジタル化事業を1999年に開始した。この計画は2015年に終了することが予定されており,これまでにデジタル化された資料は16ミリ及び35ミリフィルムのテレビ番組14万3千時間,ラジオ番組49万7千時間等である。

 INAの商業活動の対象となるコレクションは,公共放送のラジオやテレビ映像であり,利用希望者からの申請に基づきこれらの使用権を付与し,料金を徴収しているが,意図的にあるいは意図せずに無断で利用されてしまうこともある。それを防ぐための自動コピー検出装置が開発され,テレビ放送の他,YouTube等の動画共有サイトにアップロードされる動画もチェックしている。最終的には人の目でも確認をしている。

 欧州におけるプロジェクトとしては,INAはPrestoPRIME及びEuropeanaに関わっている。PrestoPRIMEは2009年~2012年の期間で実施されている視聴覚コンテンツを保存するプロジェクトであり,INAはコーディネーターとしての役割を担っている。

 鼎談では,参加者からの質問票を踏まえ,INAにおける法定納入制度や許諾の問題,NHKのアーカイブ,災害時等に個人が撮影した映像の取り扱い,データ量と保管方法,メタデータの付け方,フィルム等物理媒体の保存,MLA連携等について活発な意見交換が行われた。

(総務部支部図書館・協力課)

Ref:
http://www.ndl.go.jp/jp/event/events/111018lecture.html
http://www.ina.fr/
http://www.prestoprime.org/
CA1614
E433