E1200 – 被災地支援活動紹介(1)心のとしょかんプロジェクト

カレントアウェアネス-E

No.198 2011.08.11

 

 E1200

被災地支援活動紹介(1)心のとしょかんプロジェクト

 

 2011年3月11日の東日本大震災の発生以降,日本各地で本を通じた被災者支援が行われている。その中で,Facebookを通じて協力を呼び掛け,被災地へ本を寄贈する活動を行っている「心のとしょかんプロジェクト」代表の山中善昭氏にインタビューを行った。

●プロジェクト発足のきっかけについてお聞かせください。

 3.11の大震災の日から,何か役立てることはないか自問自答をしておりました。本に関わる仕事をしている私は,「本で被災地の方々を勇気づけることができないだろうか」と考え続け,「避難所にミニ図書館を寄贈する活動」を始めました。

 当初は,自分達で本を買ったり,知り合いの編集者や出版社の方々に献本いただいたりして,第一弾として活動開始の1週間後に東京武道館(福島からの避難所)に139冊を寄贈することができました(4月4日)。その10日後に宮城県女川町を訪問し寄贈いたしました。

 当初「避難所100か所に設置」を目標にしていたのですが,避難所の縮小に伴い,現在は仮設住宅への寄贈を進めております。その時々で現地の状況やニーズは変わっていると痛感しております。そのため当活動は,具体的な到達点は設けずに,「心」をベースとした「としょかん」として,その時々の被災地のニーズに合わせてしなやかに,また,広く継続的な活動にしたいと考えております。

 多くの方にご協力いただいている点については,被災地の本好きの方々同様,本に対する特別の思い入れをお持ちの支援者も多いという実感を持っております。本というものが通常の商品と違う何か大きな力を持っているからではないか,Facebookでの「いいね!」の数は本に対する皆様の思いのバロメーターではないかと思います。

●寄贈する本の選定基準,選定者についてお聞かせください。

 当初の選定基準は,本のプロである編集者や翻訳家,出版に関わる方々や本が大好きなメンバーで,「被災地の方々が『ホッとするような』『勇気づけられるような』本」という切り口で選んだものがベースとなっています。その後,ご協力を頂いている皆様方の推薦や現地のお声を入れて現状の「指定図書」を作成しています。この「指定図書」については,Amazonの「ほしい物リスト」で公開することで,広く寄贈をお願いしています。

 避難所の方からは,読み切りでその時に没頭できるようなミステリーが良いというお話がありました。仮設住宅の方からは,編み物の本が欲しいというお声もあり,その時々によって,選定基準は違ってくるように思います。今後は,現地のリクエストに応じた本をお届けできるような仕組みにしてまいりたいと思います。

●被災地の様子・現地での活動の様子についてお聞かせください。

 現地での活動は,主に設置のための交渉となります。避難所の場合は,地方自治体の防災本部に許可をもらい設置していましたが,仮設住宅の場合は自治会の活動がはじまった自治会長様に設置の交渉をしております。仮設住宅は様々な地域からの寄り集まりとなっていることが多いため,実際に自治会がスタートするところはまだ少なく,設置のためのお話がなかなかできない状況です。

●これまでの成果,避難所ではどのように「心のとしょかん」が利用されているのか等についてお聞かせください。

 「心のとしょかん」は,これまでに女川町総合体育館や気仙沼小原木小学校等,避難所に11か所985冊,仮設住宅に1か所330冊を設置してきました。当初,避難所はいずれ解散するため,解散時に避難所生活の方々に本を持ち帰っていただくという仕組みにしておりましたが,設置後すぐに本がなくなってしまうという状況となりました。また,他の寄贈本と区別がつかなくなってしまっていました。そのため,現在は自治会に寄贈し,自治会の所有物として貸出をお任せしております。また,他の寄贈本と区別がつくように「心のとしょかん」のロゴシールを貼っております。

●図書館・図書館員へ伝えたいことがございましたら,お聞かせください。

 「心のとしょかんプロジェクト」は,少人数での活動のため,なかなか思うような活動にはいたっておりません。「より良い本の選別方法」や「本の貸出や管理の仕方」,「被災者の本当のニーズの把握の仕方」,「寄贈先との継続的な関係構築」について,皆様方のご協力やアドバイスが得られましたら大変ありがたいです。また,関東や関西在住メンバーが中心の活動のため,現地での活動にご協力いただける方を探しています。

 今後は,本が被災してしまって困っておられる図書館に民間のボランティアとして何かできるかということを考え,皆様のご意見を頂戴しながら,復興のお手伝いができればと考えております。

Ref:
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