E1176 – 欧州図書館,2010年度の年次報告を公開

カレントアウェアネス-E

No.193 2011.05.26

 

 E1176

欧州図書館,2010年度の年次報告を公開

 

 欧州の国立図書館で構成される欧州図書館(The European Library;CA1556参照)が,2011年4月に,2010年度の年次報告を公開した。欧州図書館は,欧州国立図書館長会議(CENL)のメンバーである欧州の48の国立図書館が参加するデジタル図書館で,オランダ王立図書館が事務局業務を担っている。書籍,ポスター,地図,録音,動画等のデジタル資料と書誌的データを自らのサイトで提供するとともに,欧州の文化遺産ポータル“Europeana”にもコンテンツを提供している。

 2010年は,欧州図書館の2010-2012年の3か年戦略における最初の年であり,年次報告では,2012年にかけての5つの優先事項に沿って,2010年における目標と達成状況等が報告されている。

 1つ目の優先事項は,「国際的な研究コミュニティの中に欧州図書館を定着させる」である。500万点の資料をデジタル化するEuropeana Librariesプロジェクトのために400万ユーロの資金を獲得したことで,研究図書館とのつながりがより深いものになるとしている。あわせて,2011-2012年度にウェブサイトのリニューアルを行うことや,学術情報の探索システムと連携する試験プロジェクトにも言及している。

 2つ目の優先事項は,「利用者にとって高い価値を持つコレクションとサービスを構築する」である。欧州図書館には166のデジタルコレクションがあり,フルテキスト検索ができるそれらの資料の合計は2,500万ページに達している。2010年には各国立図書館の所蔵資料でまだ欧州図書館に加えられていないコレクションの調査が行われ,その結果が2011年のコンテンツ追加計画に反映される。また,著作権情報インフラの構築を目指すARROWプロジェクトについて,フランス,ドイツ,スペイン,英国の国立図書館の目録データを基にしたプロトタイプも作成された。

 その他3つの優先事項は,「図書館界での戦略的提携を発展させるとともに,政治的機関や商業的機関との関係を強化する」「革新し続ける一流のインフラを提供する」「欧州図書館の持続可能性を確実にする」である。インフラに関しては,ハーベスティングツール“REPOX”の導入や,MACS(E904参照)による多言語(英語・フランス語・ドイツ語)間での主題検索の取組み等が紹介されている。また,集中型目録のインデックス(central index)の数が87%増加し,191のコレクション,21の国立図書館の目録,4,077万の書誌レコードを含むものとなったことについて,従前の横断検索よりも格段に速い統合検索の実現という目標への大きな一歩であるとしている。

Ref:
http://www.theeuropeanlibrary.org/portal/organisation/press/documents/TELannualreport.pdf
http://www.theeuropeanlibrary.org/portal/organisation/about_us/aboutus_en.html
http://www.europeanaconnect.eu/img/65-72-.pdf
http://www.europeana-libraries.eu/
CA1556
E904