E1079 – フィンランド,高速インターネット接続を国民の法的権利に

カレントアウェアネス-E

No.176 2010.08.05

 

 E1079

フィンランド,高速インターネット接続を国民の法的権利に

 

 フィンランドでは,2010年7月1日より,高速インターネット接続が国民の法的な権利となった。これは,通信のユニバーサルサービスを規定する通信市場法の改正と運輸・通信省による省令の内容が同日より適用開始となったことによるものである。これにより,フィンランドでは,高速インターネット接続は,電話や郵便と同様の基本的なコミュニケーションサービスの一つとして位置付けられることとなった。法的に高速インターネット接続の権利が保証されるのは,世界で初とされている。

 フィンランドのインターネット接続率は既に9割以上とされているが,今回の措置は,地理的条件等により整備が行き届いていない地域も含め,高速インターネット接続を保証することが目的とされている。通信市場法では,特定の地域においてユニバーサルサービスを保証するために必要と判断された場合に,ユニバーサルサービス提供主体が指定されることとなっており,今回は,国内各地で26の通信会社が指定されている。

 各地域でのユニバーサルサービス提供主体として指定された通信会社は,全ての住居やオフィス(別荘等の一時的なものを除く)に対し,下りの通信速度が1Mbps(毎秒1メガビット)以上の高品質な接続を,適切な価格で提供しなければならない。接続方式は有線・無線のいずれでもよいとされている。価格については,具体的な額が定められるわけではないが,価格設定の監視を担当する機関では,現時点では月額30-40ユーロ程度が適当と見ているようである。

 フィンランド政府は,2015年までに全国で100Mbpsでの接続を可能とすることを目指している。通信担当大臣のリンデン(Suvi Linden)氏は,「今後は,手ごろな価格でのブロードバンド接続が全国民の基本的な権利となる」とし,「ただ利用できるということだけでなく,価格と品質も使いやすさに影響を与えるものであり,将来的にはそうした点にも焦点をあてていきたい」とコメントしている。また,同氏は,BBCのインタビューで,違法なファイル共有を行う者への対応(E944参照)に関し,「通知は行うが,アクセスを切断することは考えていない」との見解を示している。

Ref:
http://www.lvm.fi/web/en/pressreleases/view/1169259
http://www.viestintavirasto.fi/en/index/asiointi-info/ajankohtaista/lehdistotiedotteet/2010/P_27.html
http://www.viestintavirasto.fi/en/index/internet/laajakaista/yleispalvelu.html
http://www.bbc.co.uk/news/10461048
http://edition.cnn.com/2009/TECH/10/15/finland.internet.rights/index.html
http://www.finlex.fi/en/laki/kaannokset/2009/en20090732.pdf
E944