E1019 – 夢叶う,2010年米国最優秀小規模図書館の取り組み

カレントアウェアネス-E

No.166 2010.02.17

 

 E1019

夢叶う,2010年米国最優秀小規模図書館の取り組み

 

 Library Journal誌(LJ)は,2005年から年に1度,米国の最優秀小規模図書館(Best Small Library in America)の選定を行っている。人口25,000人以下のコミュニティに対してサービスを行っている小規模な図書館が対象で,サービスやプログラムの独創性,利用者教育,サービス拡張のための技術の導入,地域連携といった様々な要素から総合的に評価される。エントリーに費用はかからないが,図書館の紹介文書や他の図書館関係者からの推薦状,統計データなどの提出を必要としている。最優秀館に選ばれた館には,ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団から15,000ドル(約135万円)が贈られる。6回目となる2010年は,エントリーした30機関の中から,人口12,000人ほどのイリノイ州マディソン郡グレン・カーボン村にあるグレン・カーボン・センテニアル図書館(Glen Carbon Centennial Library)が最優秀館に選ばれた。

 同館が選定されたポイントの一つに,図書館利用者の増加が挙げられている。過去2年間で,現在の利用登録者6,430人の35%以上に当たる2,313人が新たに登録をしており,来館者数も33%増えている。利用者を増加させている要因として,スタッフの利用者対応があるという。館全体として利用者対応への意識が高く,同館の館長は図書館サービス業務の向上のため,2009年にグレン・カーボン村で行われた,Walt Disney社の講師派遣型の研修プログラム“Disney’s Keys to Excellence”にも参加している。館長は研修を通して,利用者だけでなく職場の同僚も同じように大切にするということを学んだという。全ての利用者に対し,「また来てもらおう」という気持ちを込めて対応することが,館長から,採用されて間もないパートタイマーにまで浸透しており,小規模図書館のモデルになるとLJは評価している。

 その他のポイントとして,利用者サービスの向上のための“No to yes log”という取り組みも紹介されている。利用者からの要求に対して「No」と言わざるを得なかった場合は,スタッフがwiki形式で記録しておき,「Yes」と言えるように方策を考えるというものである。取り組みの成果として,2007年には,利用者から要求の多かった日曜日の開館を始めている。また,レファレンスツールのデジタル形式への移行やパソコンの増設,利用できるデータベース数の増加などデジタル技術への対応も評価されている。「期待以上のものを」(More than you expect)という同館のモットーが,スタッフの働きや独創的なプログラム,選りすぐりの情報資源など随所に反映されており,高評価につながったようである。

 同館の館長は,数年前に参加したイリノイ州の図書館責任者の会合で,「この賞を取ることが私の夢」と語っていたということだが,今回その夢がついに叶った。

Ref:
http://www.libraryjournal.com/article/CA6716260.html
http://www.libraryjournal.com/article/CA606273.html
http://www.supportlibrary.com/nl/users/glencarbon/mweb/path202-1.html
http://www.edglenchamber.com/disney/EdGlenChamber_Disney_Institute.pdf