学術出版

論文における「引用のハッキング」のサイン(記事紹介)

2020年8月14日付けのNature誌オンライン版で、"Signs of ‘citation hacking’ flagged in scientific papers"と題された記事が公開されました。記事では、研究者間での事前の交渉、あるいは査読において追加で論文を引用することを要求することで、引用を稼ぐ行為を「引用のハッキング("citation hacking”)」としており、米国・オクラホマ医学研究財団(Oklahoma Medical Research Foundation)のJonathan Wren氏とConstantin Georgescu氏の取り組みを中心として、引用のハッキングの抽出について述べられています。

引用のハッキングは問題となっており、約20%の研究者が査読者から不要な参考文献を追加するように要求された経験があるとしています。また、2019年にエルゼビアは、エルゼビアが出版している学術雑誌の査読記録の検査に続いて、被引用数を稼ぐために故意に査読プロセスを操作した疑いのある研究者を調査していると述べています。引用ハッキングの疑いによって、2020年2月には米国の生物学者が複数の学術雑誌の職を解かれています。

EBSCO社、英国の大学コンソーシアムと協力して2020年5月1日に発効した電子出版物の付加価値税をゼロ税率化する法律への対応を実施

2020年7月29日、EBSCO社は、英国の大学コンソーシアムである南部大学共同購買コンソーシアム(Southern Universities Purchasing Consortium:SUPC)の協力の下、2020年5月1日に発効した電子出版物の付加価値税(VAT)をゼロ税率化する英国の法律への対応を実施したことを発表しました。

英国では電子書籍や電子ジャーナルなどの電子出版物について、2020年5月1日以降VATをゼロ税率化する法律が発効しています。2020年分の購読料を法律の適用前に支払いしていた場合、5月から12月分のVATをゼロ税率により再請求することも可能ですが、猶予が45日間と短く、また、事業者に強制するものではないという状況になっていました。

このような中、EBSCO社はSUPCの協力の下、同社の商品のうち法律の適用によりVATのコストが不要となる対象を特定し、SUPCに加盟する契約者に対して合計450万ポンド以上の還元を実現した、と報告しています。

英国研究図書館コンソーシアム(RLUK)、英国国立・大学図書館協会(SCONUL)、Jiscら、出版社に大学の財政状況逼迫を踏まえた雑誌購読料の値下げを要請

2020年8月13日、英国研究図書館コンソーシアム(RLUK)、英国国立・大学図書館協会(SCONUL)、Jiscらが、出版社に対する大学の財政状況逼迫を踏まえた雑誌購読料の即時値下げの要請を発表しました。

発表では、大学は、全体的に支出を削減すること、オンライン授業や新型コロナウイルス感染症対策へ資金を割くことが強く求められ、出版社がこの状況を考慮した対応を行わない場合、出版社との契約を取り消す可能性があることが指摘されています。

また、Jiscは、大手出版社に2021年度(学年度)の予算提案を2020年8月半ばまでに再提出することを求めたことに触れています。再提出された提案は、Jiscのコンテンツ専門部会で検討され、大学との協議のため共有する予定であると述べられています。

米国科学振興協会(AAAS)、“Science”誌を含む全ての電子ジャーナルコンテンツを2021年夏からWiley社傘下Atyponの電子出版プラットフォーム“Literatum”で公開

2020年8月7日、Wiley社傘下のAtyponは、米国科学振興協会(AAAS)が2021年夏に、全ての電子ジャーナルコンテンツの公開プラットフォームをAtyponの電子出版プラットフォーム“Literatum”へ移行する予定であることを発表しました。

プラットフォーム移行の対象には、1880年まで遡る“Science”誌のアーカイブコンテンツ、同誌のお知らせ(News)や研究者へのキャリア情報提供サイト“Science Careers”のコンテンツ、“Science Translational Medicine”、“Science Signaling”、“Science Immunology”、“Science Robotics”等の“Science”誌の姉妹誌やオープンアクセス誌“Science Advances”に掲載された研究論文・解説論文などが含まれています。

新しいプラットフォームでは、“Science”のポートフォリオ全体を総合的に利用可能になるほか、検索機能の強化をはじめとした機能改善も行われます。

英国研究図書館コンソーシアム(RLUK)、感染症の影響下で学生・研究者に安定して電子コンテンツを供給するための出版社等への要望を示した声明を公開

英国研究図書館コンソーシアム(RLUK)は、2020年8月11日付で、英国及び世界中の高等教育機関が新型コロナウイルス感染症の深刻な影響を受ける中で出版社等に求める要望として、図書館が学生・研究者に安定して電子コンテンツを供給するための要件を示した声明“RLUK Content Statement”を公開しました。

RLUKは新型コロナウイルス感染症が高等教育機関に与えた影響により、多くの図書館が次年度予算の大幅削減を余儀なくされ、既存の購読契約の解約や新規コンテンツ契約の凍結を検討しており、今後数年間はコンテンツな合理的な価格と教育・研究のために必要なリソースへのアクセス確保が図書館の中心的な検討課題であることを声明の背景に挙げています。声明は出版社等に対して、研究図書館が直面する財政的な困難を認識し、学術情報流通に関わるシステムをよりオープンにし、持続可能性と透明性を向上させるため協力を求める内容です。

米国・カナダ・ラテンアメリカの大学図書館におけるハゲタカ出版に対する取り組み(文献紹介)

2020年7月8日付で、図書館情報学分野の査読誌“Aslib Journal of Information Management”にて、研究論文“Investigating academic library responses to predatory publishing in the United States, Canada and Spanish-speaking Latin America”が公開されていました。カナダ・オタワ大学の機関リポジトリで、著者版が公開されています。

論文では、米国、カナダ、スペイン語圏のラテンアメリカの国々の大学図書館におけるハゲタカ出版に対する取り組みについて比較調査が実施されています。Times Higher Education(THE)社の世界大学ランキングで上位に位置している各地域の大学の大学図書館が対象となっています。各大学図書館のウェブサイトを閲覧して、学術コミュニケーション司書の雇用、学術コミュニケーションに関するワークショップの開催、ウェブサイトでの学術コミュニケーションに関する情報の提供の有無について調査しています。さらに、これらのイベントや情報にて、ハゲタカ出版が扱われているか探っています。

新たな研究成果公開のプラットフォームOctopus(記事紹介)

2020年6月23日、Europe Science社が運営するニュースサイトResearch informationに、“Cambridge scientist 'breaks up the old-fashioned academic paper'”と題された記事が公開されていました。

記事では、新たな研究成果公開のプラットフォームであるOctopusについて紹介されています。同プラットフォームは、研究成果の出版のプロセスをProblems、Hypotheses、Methods/Protocols、Data/Results、Analyses、Interpretations、Applications、Reviewsの8個の要素に分解して、それぞれに応じた研究成果を公開することができます。Octopusは英・ケンブリッジ大学のAlex Freeman氏によって取り組まれており、英・Jisc等が助成するReproducibility Networkによって支援されています。

このようなモデルを採用したプラットフォームの利点として、下記が挙げられています。

英・ケンブリッジ大学出版局(CUP)、Hindawi社との共同出版契約により2021年1月刊行号から5誌の編集・制作を同社に移管して完全オープンアクセス(OA)化

2020年8月6日、英・ケンブリッジ大学出版局(CUP)は、オープンアクセス(OA)に向けた継続事業の一環として、OA出版を手掛けるHindawi社と刊行中の5誌に関する共同出版契約を締結したことを発表しました。

両者が締結した契約により、CUPが刊行する“Global Health, Epidemiology and Genomics”、“Genetics Research”、“Journal of Smoking Cessation”、“Wireless Power Transfer”、“Laser and Particle Beams”の5誌について、2021年1月刊行号からHindawi社が同社のオープンソースの出版プラットフォーム“Phenom”により編集・制作を担います。また、5誌全てが2021年1月以降完全OA化します。

オープンアクセスリポジトリ連合(COAR)、リポジトリ内のリソースを対象とした査読サービスのための標準手法を示したモデル案を公開:パブリックコメントを実施中

2020年8月3日、オープンアクセスリポジトリ連合(COAR)は、リポジトリ内のリソースを対象とした査読サービスのための標準手法を示したモデル案の公開を発表しました。8月4日から9月11日までパブリックコメントを実施しています。

COARは2020年1月、フランス・パリで開催した会議において、リポジトリとオーバーレイ査読サービスとを接続する共通アプローチの可能性を調査しました。参加者からは多くの異なるユースケースが提示されたものの、ワークフロー、機能性、目的という点で大きな類似があり、共通アプローチが開発可能であることが明らかになったとしています。

今回公開されたモデルは、COARの次世代リポジトリイニシアチブによる作業の成果であり、2020年1月の会議で提示されたユースケースを参考にしています。

米国化学会(ACS)、研究者等にオープンサイエンスやオープンアクセス出版に関する情報を提供する「オープンサイエンスリソースセンター」をウェブサイト上に開設

2020年7月16日、米国化学会(ACS)は、ACSの出版部門による「オープンサイエンスリソースセンター」の開設を発表しました。

「オープンサイエンスリソースセンター」は、ACSの出版部門がオープンサイエンスやオープンアクセス(OA)に対する関与を深化し、研究者がこれらの動向へ積極的に関わることを支援する目的で立ち上げられました。ウェブサイト上に開設された同センターでは、研究者・図書館員等向けに、オープンサイエンス・OA出版に関する情報、研究助成元の求める要件に準拠する方法の案内、ACSと学術機関の“Read and Publish”契約の締結状況の検索、などが提供されます。

ACSは同センターの提供するこれらのツールは、広範な研究者コミュニティに対してOA出版の機能を効果的に伝えることで、オープンサイエンスへの転換を加速させるものである、としています。

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