図書館調査研究リポート

3.2 利用

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 第1章冒頭の本研究調査の背景及び目的でも述べたように、電子書籍の定義は定まっていない。長らく広く普及してき、今も多くの出版がなされている紙媒体の書籍からのアナロジーからは、「電子媒体の本」であろうが、現在では電子ファイルの媒体型配布(CD-ROMなど)流通、利用から、サーバー蓄積コンテンツへのアクセス型やダウンロード型への急速な変容が生じている。

 ビジネスモデルとしては、無償提供型・広告モデルとコンテンツ有償配布型に二分される。さらにコンテンツ有償配布型は、対象組織限定の年間固定契約モデルと対象コンテンツごとのテンポラリーな課金モデルに分かれる。テンポラリーな課金モデルは、書籍出版物の流通慣習を反映した「出版物理単位」での課金、連続小説やまんがなどでの1話単位、雑誌などの連載物の1回単位など、販売の粒度は多様である。

 本節では、電子書籍の利用について取り上げるが、主として「書籍」コンテンツを中心対象とし、「雑誌」については割愛をする。

3.1 流通

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 日本における電子書籍流通はどのようになされているのか。実態に即した把握を試みてみたい。その実情をどうとらえるかにあたり、いくつかの前提を設けておくことにする。一般的に電子書籍のカバーする範囲・境界は茫洋としており極めて近い将来の対応なども含めるとますます広い範囲を想定せざるを得なくなる。従って、本調査においては第1章において触れられている定義を前提に、

  • 1)現在の市場において、有償で流通するもの
  • 2)現在の市場において、無償で流通するもの一般
  • 3)無償で流通するもののうち、今回調査対象となった代表的な事例

以上の3項目を中心に言及するものである。

2.6 学術系の電子書籍サービス

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 学術系の電子書籍サービスでは新たな動向が見られる。小学館系のネットアドバンスが運営する辞書検索サイト「JapanKnowledge」はすでに利用者が定着し、安定的な成長を見せているが、それ以外にも丸善と日本化学会が運営する「化学書資料館」や紀伊國屋書店と米国OCLCによる「NetLibrary」などがある。

 「化学書資料館」は国内で出版された化学書を統合的に検索し、閲覧することができるサイトである。現在、日本化学会の編集による専門書・便覧・辞典が147冊、約83,300ページ相当の情報が集められている。

 また「NetLibrary」は学術系eBook(電子書籍・電子図書・電子ブック:和書・洋書)を17万タイトル以上含むコレクションで、日本・欧米の出版社500社が参加して、大学図書館、公共図書館、研究所など世界112カ国で16,000の機関が利用している。2007年11月より和書コンテンツが搭載され、2008年8月現在、40社547タイトルを提供している。

2.5 コンテンツプロバイダーの動向

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2.5.1 コンテンツプロバイダーの事業

 日本で初めて「オンライン電子書籍サービス」を開始したのはパピレスである。天谷幹夫代表取締役は、富士通に在籍していた当時、社内で新しい事業の企画募集があり、これにネットワーク発信事業で応募。1995年3月に富士通のベンチャー支援制度を利用してフジオンラインシステムを設立し、1995年11月にパソコン通信で「電子書店パピレス」を開始している。日本最大規模の電子書籍販売サイトで、小説、コミック、趣味・実用書、写真集、音声ブック、ビジネス等約9万点のコンテンツをPC向けに配信、2003年10月からはEZWebで携帯電話電子書籍サイトも開設している。

2.4 視覚障害者の読書と電子書籍の可能性

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 本節では、視覚障害をもつ人の読書と電子書籍の可能性について取り上げる。

 厚生労働省によると、2006年の日本の視覚障害者は、約31万人であると推計されている(1)。また日本眼科医会の推計によると、高齢化などによる強度の視力の衰えに悩む「ロービジョン」と呼ばれる人々は、約100万人にのぼるという(2)

 このように視覚障害をもつ人々は、情報をどのように入手しているのだろうか。厚生労働省の調査では、視覚障害者の約3分の2はテレビ放送から、55%が家族・友人からと答えている。だが一般図書・新聞・雑誌を情報源と回答している人々も少なくなく、全体の約4分の1を占めている(3)

2.3 無料の電子書籍サイト

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2.3.1 「青空文庫」

 日本の出版業界における電子書籍についてここまで振り返ってきたが、業界とは別の位相で電子書籍の流れを形成してきた分野を見落としてはならない。1997年から開始した「青空文庫」はその良い例である。

 青空文庫は、著作権が消滅し、パブリックドメインに帰した文学作品を収集・公開しているインターネット上の無料サイトであり、一般読者への電子書籍の認知に大きな影響を与えたと思われる。

 青空文庫は2007年10月、「青空文庫10年の成果をすべての図書館に」と銘打って、これまで蓄積してきたコンテンツを収録したDVD‐ROMを全国の公共図書館、大学附属図書館、高等学校図書館などへ寄贈した。そのDVD‐ROM『青空文庫 全』には次のようにその役割が語られている

 

2.2 携帯電話読書の進展と携帯電話キャリアの動向

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2.2.1  携帯電話向け電子書籍市場の急成長

 前述の『電子書籍ビジネス調査報告書2007』では、電子書籍の動向についておよそ次のように概説している。

 2002年度にPC向けに電子書籍市場が形を整え、PDA(携帯情報端末)向けの電子書籍販売サイトが相次いでスタートし、2003年度はPDA向け電子書籍市場が最盛期を迎え、2004年度はΣBook、LIBRIeといった読書専用端末の登場、2005年度に携帯電話向け電子コミックの伸びが顕著となり、2006年度に携帯電話向け電子書籍市場がPC向けを上回った(10)

 

表2.1 電子書籍市場の売上高の推移(単位:億円)

2.1 出版社と電子書籍

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2.1.1 電子出版としてのCD-ROM

 1985年10月、三修社が『最新科学技術用語辞典』(定価6万円)を発売したのが、CD-ROMの商品化第1号と言われている。そして2年後の1987年7月に岩波書店が『広辞苑』CD-ROM版(定価2万8,000円)を発売したことで、広く社会に認知された。1988年には『現代用語の基礎知識』(自由国民社、定価2万円)、『職員録』(大蔵省印刷局、定価2万円)、『模範六法』(三省堂、定価12万円=CD-ROM3万円+検索ソフト9万円)などが刊行された。なお『広辞苑』『現代用語の基礎知識』『模範六法』は当初、富士通製日本語ワードプロセッサー「OASYS100-CD」でしか稼動しない「WINGフォーマット」のみであった。

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