学術雑誌

「プランS」の発効と研究成果物のオープンアクセス(OA)化を巡る最新の論点(記事紹介)

2021年1月1日付の米国科学振興協会(AAAS)のScience誌Vol. 371, Issue 6524掲載の記事として、“Open access takes flight”がオープンアクセス(OA)で公開されています。

同記事は、欧州を中心とした研究助成機関のコンソーシアムcOAlition Sのイニシアティブ「プランS」が、2021年1月に発効したことを受けたものです。プランSに対して、購読モデルを基盤とした学術出版の伝統を覆すためのOA運動の現れである一方で、地理的な広がりの停滞、財政的な持続可能性への疑義等の問題点も存在することを指摘しつつ、研究成果物のOA化を巡る最新の論点をテーマ別に解説しています。記事は主に以下のことを指摘しています。

・OAが被引用数に与える影響範囲は一部のスター論文に限られるという指摘がある一方で、ダウンロード数・ビュー数・ソーシャルメディア等における非学術的な言及にはOA論文が優位であるという指摘があり、この点でOAは学術論文の著者に恩恵を与える。また、学術雑誌には研究機関に所属しない読者も一定の割合で存在し、こうした読者層へ研究成果を届けやすいという点もOAが著者に与える恩恵と言える。

E2346 - 著作権とライセンスからみるオープンアクセスの現況

「著作権はオープンアクセスへの鍵を握る課題」。SPARC Europeは,2020年9月に公開した報告書“Open Access: An Analysis of Publisher Copyright and Licensing Policies in Europe, 2020”の序文で,こう述べている。本報告書は,出版社各社の著作権・出版権に係る規約やオープンライセンス方針が,どの程度オープンアクセス(OA)の推進を支援できているかという調査の結果を,関係者への提言とともにまとめたものである。2021年1月に発効したPlan S(CA1990参照)に留意しつつ,内容を概説する。

【イベント】L-INSIGHT/KURA連携プログラム パブリッシングセミナー「ジャーナルをたちあげる」&「ジャーナルを可視化する」(第1回1/19、第2回1/28・オンライン)

2021年1月に、京都大学学際融合教育研究推進センター次世代研究創成ユニットの世界視力を備えた次世代トップ研究者育成プログラム(L-INSIGHT)と京都大学学術研究支援室(KURA)の主催により、学術雑誌の新規刊行や効果的な広報・情報発信をテーマとして、ウェブ会議サービスZoomを利用したオンラインセミナーが2回に分けて開催されます。

2021年1月19日の第1回セミナー「ジャーナルをたちあげる」では、近年創刊された雑誌の関係者による刊行の背景や刊行準備、今後の展望と課題などについての講演や、休刊した雑誌の関係者による休刊に至った事情や復活に向けたシナリオについての講演が行われます。

2021年1月28日の第2回セミナー「ジャーナルを可視化する」では、Googleで検索上位になるための対策、国際的なオープンアクセス(OA)ジャーナルデーターベースへの登録、SNSを通じた情報発信など、効果的な広報のテクニックを学ぶための講演等が行われます。

京都大学の学外者を含む研究者・大学院生・職員・図書館員が参加することができますが、事前の申し込みが必要です。なお、同セミナーの開催は「紀要編集者ネットワーク」が協力しており、第3回・第4回紀要編集者ネットワークセミナーを兼ねて行われます。主な内容は次のとおりです。

cOAlition S、エルゼビア社のジャーナル160誌がPlan Sに準拠した「転換雑誌」として登録されたことを発表

2021年1月4日、cOAlition Sは、エルゼビア社のジャーナル160誌がPlan Sに準拠した「転換雑誌」(Transformative Journals)として登録されたことを発表しました。“Cell”をはじめ、エルゼビア社傘下の出版社Cell Pressによる多くのタイトルが含まれています。

発表では、cOAlition S がPlan S準拠の転換雑誌のリストを公開していることも紹介しています。

160 Elsevier journals become Plan S aligned Transformative Journals(cOAlition S, 2021/1/4)
https://www.coalition-s.org/160-elsevier-journals-become-plan-s-aligned-transformative-journals/

Elsevier社、Cell Pressの学術誌でのオープンアクセス出版オプションの提供範囲を拡大:“Cell”も対象

2020年12月18日、Elsevier社は、Cell Pressの学術誌でのオープンアクセス(OA)出版オプションの提供範囲拡大を発表しました。2021年1月から、Cell Pressのフラッグシップ・タイトルである“Cell”を含め、Cell Pressの全学術誌においてOA出版オプションが提供されます。

Cell Pressが現在OA出版オプションを提供していない学術誌において、OA出版オプションを利用する際の論文処理費用(APC)についても示されています。大多数の学術誌では8,900ドル(7,600ユーロ、7,000ポンド)となり、“Cell”では9,900ドル(8,500ユーロ、7,800ポンド)となります。これらの学術誌では引き続き購読オプションも提供されます。また、Cell Pressの既存のゴールドOA誌のほとんどではAPCを変更しないと述べています。

その他、低・中所得国の研究機関を支援するプログラム“Research4Life”においてグループAに属する69か国にはAPCを免除し、グループBに属する57か国には50パーセントの割引を行うこと等も発表されています。

オープンアクセス出版社・PLOS、PLOS ONE誌で2021年から取り扱う査読論文として新たに2種類の文献種別を試験導入:研究プロトコルを査読論文として公表可能に

2020年12月7日、オープンアクセス(OA)出版社のPLOSは、研究上のプロトコルやメソッドをOAで共有するプラットフォームサービス“protocols.io”との提携関係を拡大することで、同社の査読誌PLOS ONEで2021年から取り扱う査読論文として、“Lab Protocols”と“Study Protocols”の2種類の文献種別を新たに導入することを発表しました。

PLOSは、研究の厳密性と再現性、効率的なフィードバックの獲得、多様な研究貢献の開発と共有に対する認識という研究者にとって身近な3つの問題へ対応することを目的として新たな文献種別の導入を行いました。

ルクセンブルクのLuxembourg Centre for Contemporary and Digital History(C2DH)と独・De Gruyter社がデジタル・ヒストリーに関するオープンアクセス査読誌の創刊を発表

2020年12月4日、ルクセンブルク大学の現代史及びデジタル・ヒストリー研究拠点であるLuxembourg Centre for Contemporary and Digital History(C2DH)は、ドイツの出版社De Gruyter社とともに、“Journal of Digital History(JDH)”誌を創刊することを発表しました。

JDH誌は、先進的な出版プラットフォームの提供、データ駆動型研究やトランスメディア・ストーリーテリングなどの歴史学における新しい形の研究の促進を通じて、デジタル・ヒストリー分野の批判的議論や討議の中心的なハブとなることを目指して創刊に向けた準備を進めています。同誌の概要として、トランスメディア・ナラティブ、デジタルツールやデータ活用に関する方法論的検討、開発中の出版プラットフォームによるデータやコードへのアクセス提供の3層で構成された、デジタル・ヒストリーに関する研究成果の発表が可能なオープンアクセス(OA)査読誌である、と説明しています。

JDH誌は現在、歴史学及びデジタル・ヒストリーに関連したあらゆる分野からの投稿を受付しており、2021年9月に創刊号を刊行することを予定しています。

オープンアクセス誌eLife、2021年7月以降に適用予定の新しい査読・出版方針を発表:原則としてプレプリントとして公開済の原稿のみ査読対象に

オープンアクセス(OA)誌“eLife”は、2020年12月1日付のEditorialにおいて、2021年7月以降に適用予定の新しい査読・出版方針を発表しました。

eLife誌は新方針の背景として、研究成果のプレプリントによる共有が進み、同誌で査読中の原稿の7割近くがbioRxiv、medRxiv、arXivのいずれかで公開されていることを挙げています。このような学術出版を取り巻く変化を受けて、自身の出版社としての機能を公開済の論文を査読してそれを保証することと再定義し、伝統的な「査読後に出版する」モデルを、インターネット時代に最適化された「公開後に査読する(publish, then review)」出版モデルへと改めるため、同誌は新たな方針を策定しました。

eLife誌は新方針の適用に伴う主な変更点として、プレプリントとして投稿された原稿のみ同誌の査読対象とすること、オープン査読による評価システムの構築も含め、公開されたプレプリントの査読済プレプリントへの転換を同誌の編集実務の中心に据えることの2点を挙げています。

cOAlition Sと英国の学会・専門協会出版協会(ALPSP)、図書館と小規模出版社による転換契約等の締結に関する進捗状況のレビュー調査を英・Information Power社へ委託

2020年12月1日、cOAlition Sと英国の学会・専門協会出版協会(ALPSP)は、図書館コンソーシアムと小規模出版社による転換契約等のオープンアクセス(OA)出版に関する契約締結の進捗状況について、英国の研究情報に関するコンサルタント会社Information Power社へレビュー調査を委託したことを発表しました。

同調査は、学会系出版社による即時OAへ移行するための契約締結を支援するプロジェクト“Society Publishers Accelerating Open access and Plan S (SPA-OPS)”の結果を受けて、同プロジェクトのフォローアップ調査プロジェクトとして取り組まれます。プレスリリースでは、プロジェクトの主要な目標として以下の3点を挙げています。

・開発途上国において図書館を通じたデジタル情報へのアクセスを推進するEIFLを介して合意された契約も含め、2020年初頭にSPA-OPSプロジェクトが終了して以降のOA出版等に関する契約締結の進捗状況を調査する

・図書館、図書館コンソーシアム、学会系の出版社、その他の独立出版社が関与した、OA転換契約の締結と実施を成功に導く要因を理解する

ページ