学術雑誌

『中國工業經濟』誌を事例とした研究データ公開の義務化が学術雑誌へ及ぼす影響に関する実証研究(文献紹介)

2021年2月14日付で、Springer Nature社が刊行する科学計量学分野の査読誌“Scientometrics”に、中国の山东大学国际创新转化学院の张立伟(Liwei Zhang)副教授と中国人民大学公共管理学院の马亮(Liang Ma)教授による共著論文“Does open data boost journal impact: evidence from Chinese economics”のオンライン速報版が掲載されています。

同論文は多くの学術雑誌で研究データの公開が進んでいることを背景に、研究データの公開が学術雑誌に及ぼす影響を実証的に検討した結果を報告する内容です。著者らは、中国社会科学院(CASS)の刊行する『中國工業經濟(China Industrial Economics:CIE)』誌を検討の対象としました。CIE誌は2016年末に中国の社会科学系の学術雑誌として初めて、論文の著者に研究データの公開を義務付けており、論文の執筆時点でもこの分野でオープンデータを義務化する唯一の雑誌であることを紹介しています。

英国出版協会、UKRIの新オープンアクセス(OA)方針案が英国経済に与える影響を評価した報告書を公開

2021年2月17日、英国出版協会(Publishers Association)は、英国研究イノベーション機構(UKRI)が策定を進めている新しいオープンアクセス(OA)方針案について、英国経済に与える影響を評価した報告書を公開したことを発表しました。

同報告書は英国出版協会の求めに応じて、コンサルタント会社のFTI Consultingが作成しました。UKRIによる新OA方針案は、英国の研究競争力や学術研究に関するグローバル拠点としての英国の魅力にも悪影響が及ぶ可能性があるとして、主な知見を次のように示しています。

・新OA方針案に対応して相当数の学術雑誌が完全OAに移行した場合、英国の研究集約型大学の年間支出を約1億3,000万から4,000万ポンド増加させる可能性がある。

・新OA方針案の内容がそのまま実施された場合、2022年から2027年までの期間に、英国に基盤を置く学術雑誌が被る損失は約20億ポンドと推定される。それに伴い、単行書の出版が維持できなくなる出版社や小規模出版社の廃業も発生し、関連する英国の経済生産高の損失は約32億ポンドに達することが見込まれる。

・英国に基盤を置く学術雑誌が被る損失の大部分は英国の輸出収入の損失を意味しており、これによって最も利益を得るのは外国出版社である。

ドイツ国立科学技術図書館(TIB)、ドイツ連邦教育研究省(BMBF)の助成によりオープンアクセス(OA)への移行を推進するための3種類のプロジェクトを実施

2021年2月8日、ドイツ国立科学技術図書館(TIB)は、ドイツ連邦教育研究省(BMBF)の2年間の助成に基づいて、研究成果物のオープンアクセス(OA)への移行を推進するための3種類のプロジェクトを実施することを発表しました。

ザクセン州立・ドレスデン工科大学図書館 (SLUB)と共同で取り組む“B!SON (Bibliometric and Semantic Open Access Recommender Network)”は、OAジャーナルの推薦システムの開発に関するプロジェクトです。DOAJとオープン書誌データ・引用データを提供する学術インフラサービスOpenCitationsをプロジェクトパートナーとして、機械学習を利用したユーザーの入力情報の類似度判定などにより、著者に自身の研究成果の出版に最適な高品質のOAジャーナルを推薦することを目的に挙げています。

主要な医学雑誌の掲載論文における臨床試験データ共有の実際(文献紹介)

2021年1月28日付で、米国医師会(JAMA)が刊行するオープンアクセス(OA)の査読誌“JAMA Network Open”に、米・スタンフォード大学メタリサーチ・イノベーションセンターのValentin Danchev氏を筆頭著者とする論文“Evaluation of Data Sharing After Implementation of the International Committee of Medical Journal Editors Data Sharing Statement Requirement”が掲載されています。

cOAlition S、国際STM出版社協会の「権利保持戦略」に対する懸念表明へ反論

2021年2月3日付で、cOAlition SによるプランSの実施に関連した見解・インタビュー・方法等を紹介するブログ“sOApbox”に、cOAlition SのCoordinatorであるRobert Kiley氏とExecutive DirectorであるJohan Rooryck氏の連名の声明が掲載されています。

この声明は、同日付で国際STM出版社協会が発表したプランSの「権利保持戦略」に対する懸念表明について、同戦略に対する誤った認識に基づいたものであるとして反論する内容です。cOAlition Sは、国際STM出版社協会の懸念表明で示された点について、主に次のように説明しています。

・出版社版(Version of Record)論文の価値の低下に対する懸念が示されているが、プランSは論文処理費用(APC)・転換契約・転換雑誌等への支援を通して、出版社版論文のオープンアクセス(OA)化を積極的に進めている

・出版社が査読の管理に多大なリソースを割いている点は認識しており過小評価していないが、査読は研究コミュニティが自発的に行う営為である点には留意すべきである

・長年尊重されてきた学問の自由を損なっているという指摘は具体性を欠いており、そのようなことが実際に起こることはまず想定できない

国際STM出版社協会、出版社・学協会と連名でプランSの「権利保持戦略」に対する懸念を表明

2021年2月3日付で、国際STM出版社協会が、出版社・学協会と連名でプランSの「権利保持戦略」に対する懸念を示した声明を発表しています。

同声明は、欧州の研究助成機関のコンソーシアムcOAlition Sのイニシアティブ「プランS」による研究成果のオープンアクセス(OA)化の拡大という理念に共感しつつ、即時OA化の保証を意図して導入された「権利保持戦略」については、現状のままでは支持することができないと表明しています。「権利保持戦略」の問題点として、無料の代替物の提供が出版社の購読料・論文処理費用(APC)収入を脅かしOA誌の財政的持続可能性を損なうこと、学術情報の基盤である出版社版(Version of Record)論文の公正性を掘り崩す恐れがあることなどを挙げています。

同声明は、署名した出版社を含む多くの出版社で運用されているように、著者に対して再利用可能なライセンスの付与を認めて、リポジトリ等で公開できる選択肢の提供は可能であるが、持続可能性を保証するためには、「権利保持戦略」のような包括的なポリシーとしてではなく、個々の雑誌のレベルで採用が検討されるべきである、と主張しています。

オランダで刊行された学術雑誌にオープンアクセス(OA)出版を提供するプラットフォーム“openjournals.nl”が運用を開始:人文学・社会科学分野の7誌とともにスタート

2021年1月29日付のオランダ科学研究機構(NWO)のお知らせで、“openjournals.nl”の運用開始が発表されています。

openjournals.nlは、NWOとオランダ王立芸術科学アカデミー(KNAW)、オープンアクセス(OA)出版に取り組む非営利財団Open Access Publishing Services(OPuS)が共同構築したプラットフォームです。オランダで刊行された学術雑誌にOA出版の機会を提供するプラットフォームであり、特に研究成果の100%のOA化にしばしば困難が伴う人文学・社会科学分野の高品質の学術雑誌への支援が目的に掲げられ、運用開始時点では人文学・社会科学分野の7誌が参加しています。

openjournals.nlは、KNAW内の人文学部門からオープンソースの出版・投稿システムが提供され、論文著者に金銭的負担を負わせない「ダイヤモンドOA」モデルで運営しています。このような運営体制は、デンマークの“tidsskrift.dk”やフィンランドの“Journal.fi”といった先行の成功事例をモデルにしたことを説明しています。

科学技術振興機構(JST)、2020年度第2回J-STAGEセミナー「ジャーナルから見た研究データ:国際動向」の開催報告書を公開

2021年1月29日、科学技術振興機構(JST)は、2020年10月27日に開催した2020年度第2回J-STAGEセミナー「ジャーナルから見た研究データ:国際動向」について、開催報告書の公開を発表しました。

同セミナーは、JSTと国際STM出版社協会(STM)日本支部の合同セミナー「JST-STM ジョイントセミナー「学術出版における変革:研究データ」」の一部として開催されました。当日行われた下記講演の概要、質疑応答の内容、セミナー後の反響等が掲載されています。

・Open science and the PID Graph
Matthew Buys氏(DataCite)

・A chemistry perspective on research data
Richard Kidd氏(Royal Society of Chemistry)

米国科学振興協会(AAAS)、Science誌及びその姉妹誌においてcOAlition Sの研究助成成果に当たる受理済論文にCC BYまたはCC BY-NDライセンスの付与を容認

2021年1月15日、米国科学振興協会(AAAS)は、オンラインニュース配信サイト“EurekAlert!”で、Science誌及びその姉妹誌の合計6誌において、オープンアクセス(OA)出版の条件が更新され、cOAlition Sから助成を受けた研究者は、受理済の論文にCC BYまたはCC BY-NDライセンスを付与できるようになったことを発表しました。

AAASはこのOA出版に関する新方針の背景として、Science Advances誌によりゴールドOAを進める一方で、他の5誌では長年に渡ってグリーンOAを支援してきたこと、ゴールドOAのみの促進では、過大な金銭的負担により、人種・ジェンダー・地域・分野・機関に関する研究者間の不平等が温存・助長される懸念を持っていることを挙げています。

この新方針は、2021年1月1日以降にScience誌及びその姉妹誌に投稿された論文のうち、プランSの「権利保持戦略」を採択済のcOAlition S加盟機関から助成を受けた研究成果に該当する論文に適用されます。

「プランS」の発効と研究成果物のオープンアクセス(OA)化を巡る最新の論点(記事紹介)

2021年1月1日付の米国科学振興協会(AAAS)のScience誌Vol. 371, Issue 6524掲載の記事として、“Open access takes flight”がオープンアクセス(OA)で公開されています。

同記事は、欧州を中心とした研究助成機関のコンソーシアムcOAlition Sのイニシアティブ「プランS」が、2021年1月に発効したことを受けたものです。プランSに対して、購読モデルを基盤とした学術出版の伝統を覆すためのOA運動の現れである一方で、地理的な広がりの停滞、財政的な持続可能性への疑義等の問題点も存在することを指摘しつつ、研究成果物のOA化を巡る最新の論点をテーマ別に解説しています。記事は主に以下のことを指摘しています。

・OAが被引用数に与える影響範囲は一部のスター論文に限られるという指摘がある一方で、ダウンロード数・ビュー数・ソーシャルメディア等における非学術的な言及にはOA論文が優位であるという指摘があり、この点でOAは学術論文の著者に恩恵を与える。また、学術雑誌には研究機関に所属しない読者も一定の割合で存在し、こうした読者層へ研究成果を届けやすいという点もOAが著者に与える恩恵と言える。

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