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No.397 (E2293-E2298) 2020.09.03

  • 参照(2370)

E2293 - 八王子市(東京都)のオーディオブック配信サービスについて

  • 参照(3759)

カレントアウェアネス-E

No.397 2020.09.03

 

 E2293

八王子市(東京都)のオーディオブック配信サービスについて

八王子市生涯学習センター図書館・藤原頼晶(ふじわらよりあき)

 

●導入の経緯・目的

   八王子市(東京都)では,2020年3月に「第4次読書のまち八王子推進計画 2020年度~2024年度」を策定し,「いつでも,どこでも,だれでも」読書に親しめるまち八王子の実現を基本指針に掲げている。図書館を中心として,家庭,地域,市民・市民団体,事業者,教育機関,行政などが連携した取組や,「いつでも,どこでも,だれでも」読書に親しめる環境を整備するとともに,全ての市民の読書活動を切れ目なく支援し,市民が,生涯にわたって,“読書”を楽しめる,知的好奇心あふれるまちをめざしている。

   八王子市図書館ではこれまでも,誰もが読書に親しめるよう,視覚に障害がある利用者等に向けた資料として,DAISY等の録音図書や録音雑誌などを提供しており,2018年4月からは,電子書籍サービスの中の音声読み上げ機能なども案内しているところである。そして,2019年6月に成立・施行された読書バリアフリー法(CA1974 [1]参照)への対応や非来館型サービスの更なる拡充として,誰でも気軽にいつでも聴くことができる図書の導入を考えていた。しかし,当時,公共図書館で実現するためには電子書籍の音声コンテンツを購入するしかなく,電子書籍(目)と音声コンテンツ(耳)を同じプラットフォームで提供することについて利用者・管理者の両面から議論を重ねていたが,導入には至っていなかった。

   そのような中,八王子市図書館で使用している京セラコミュニケーションシステム株式会社(KCCS)の公共図書館システムELCIELOと株式会社オトバンクのオーディオブックサービスaudiobook.jpが連携し,プロの声優やナレーターの朗読で読書を楽しむことができる「オーディオブック配信サービス」の提供を開始するとのプレスリリースがあった。2019年11月の第21回図書館総合展での説明を経て,有償トライアルについて案内があり,実施に向けて調整してきた。

●導入後の利用状況

   2020年6月1日から「オーディオブック配信サービス」を導入した。現在,ビジネス書や英語学習,子育て・健康に関する本,時代小説,落語,文学など3,102点を提供している。図書館ウェブサイトからパソコンやスマートフォンを通じて,場所や時間を選ばず,本を耳で聴くという新しいスタイルの「読書」を楽しむことができる。

   視覚に障害のある人が利用した感想の中には,「聞きやすい」というものがあった。聞きやすい朗読の声は,機械音声と違い,長い時間耳にしても疲れにくいことから,リラックスして楽しめると好評である。

   サービス開始後2か月間(6月・7月)の利用状況は,実利用者が681人で, 再生タイトル数(書誌)は709点,延べ利用回数は2,162回(6月1,432回,7月730回)だった。再生回数の多いジャンルは,文芸・落語が1,487回(名作文学853回,絵本237回,童話・昔話132回など),講演会が289回,自己啓発121回(スピリチュアル121回など)だった。時間帯別では,13時台・14時台と20時台・21時台の利用が多く, 年代別では,40歳代から60歳代,男女別でみると,女性の利用が男性より2割ほど多かった。また、講演会は40歳代・50歳代男性および40歳代女性,スピリチュアルは30歳代から50歳代女性,名作文学は30歳代から70歳代の男女において多かった。導入初期2か月間という利用分析であるが、利用年代や性別は,電子書籍サービスの利用傾向と似ている。そして, 名作文学や講演会,絵本や童話・昔話の利用が多いことは,本を耳で聴くというオーディオブックの特性の表れであり,想定通りであった。利用者の興味関心もそこにあると感じている。

●今後の予定

   システム自体のインターフェースが開発途上にあり,操作性の向上が課題と感じている。また,コンテンツも,時間的に短いもの,特定の話者のものに偏っている。新聞等への記事掲載や導入直後ということもあり,多くの利用があったが, サービス提供事業者には,お試し利用から継続利用につなげ,一定の利用者を確保していくためにも,公共図書館での利用許諾や提供価格について著作権者等と調整し,公共図書館向けコンテンツを充実させることをお願いしたい。

   読書バリアフリー法の趣旨のもと,現在導入している電子書籍やオーディオブックサービスを図書館利用に障害がある人の利用につなげていくためには,障害者団体や障害者を支援する(介助者)団体へのPRや使い方説明会など,図書館の取組にかかっていると感じている。また、最近は高齢者を中心に朗読CDのニーズも多くなっている。活字をそのまま読むことが困難になってきた利用者にも,「読書」を継続できる方法のひとつとしてオーディオブックサービスを案内していきたい。

Ref:
“オーディオブックサービス”. 八王子市図書館.
https://www.library.city.hachioji.tokyo.jp/audiobooks.html [2]
“奈良市立図書館と八王子市立図書館が本を耳で聴くKCCSの「オーディオブック配信サービス」を導入”. 京セラコミュニケーションシステム株式会社. 2020-06-01.
https://www.kccs.co.jp/news/release/2020/0601/ [3]
“第4次読書のまち八王子推進計画”. 八王子市図書館.
https://www.library.city.hachioji.tokyo.jp/reading-town/page05.html [4]
“公共図書館システム「ELCIELO」が「audiobook.jp」と連携し、本を耳で聴く「オーディオブック配信サービス」を提供開始へ”. 京セラコミュニケーションシステム株式会社. 2019-11-12.
https://www.kccs.co.jp/news/release/2019/1112/ [5]
野口武悟. 読書バリアフリー法の制定背景と内容、そして課題. カレントアウェアネス. 2020, (344), CA1974, p. 2-3.
https://doi.org/10.11501/11509684 [6]

カレントアウェアネス-E [7]
オーディオブック [8]
貸出 [9]
障害者サービス [10]
図書館システム [11]
日本 [12]
公共図書館 [13]
公立図書館 [14]

E2294 - フロッピーディスク保存の新デバイス「ポリーヌ」について

カレントアウェアネス-E

No.397 2020.09.03

 

 E2294

フロッピーディスク保存の新デバイス「ポリーヌ」について

ゲーム保存協会・ルドン・ジョゼフ

 

   1970年代に登場したフロッピーディスク(FD)は,初期の8インチ,5.25インチそして21世紀まで活躍した3.5インチまで,デジタルデータの保存メディアとして広く使われてきた。だがこれらFDは,カセットテープなどと同じ磁気媒体で,経年劣化により近い将来データの読み込みが完全に不可能となる。筆者が理事長を務める特定非営利活動法人ゲーム保存協会は,日本のPCゲーム作品を歴史的文化資料として収集し,長期的にアーカイブする日本唯一の機関だが,1980年代の資料の多くはFDに記録されており,データのマイグレーションが喫緊の課題であった。

   筆者は1990年代からFDの劣化を問題視し,その解決策を検討してきたが,海外の技術者が集まるSoftware Preservation Societyに協力し,2009年に最初のFD保存のデバイスであるクリオフラックス(KryoFlux:以下「KF」)を完成させた。このKFは各国のアーカイブ機関で現在も,ゲームに限らず著名作家の初稿が保存されたFDや,各種貴重な情報が収められたFD資料群保存の決定打として利用されている。

   それまで一般的だった,PC側が受け取ったFD由来のデータを保存する方法と異なり,KFではFDドライブがFDから読み取る磁気データを,PC側の処理を通さずそのまま抜き取ることができる。そのため,コピープロテクトのかかったゲーム作品などは,そのプロテクトの情報もすべて正確にマイグレーション可能となる,まさに夢のデバイスであった。だが,当協会が扱う日本のPCゲーム作品には,デュプリケーションの方法が海外のソフトとは異なるためKFでは正規の製品版とユーザーらによる勝手なコピーとの差が見抜けないなどの特殊なケースも多く,同様にゲームなどの資料をアーカイブする海外機関との話し合いでも,FD保存デバイスのさらなるアップグレードが求められるようになっていた。

   本稿で紹介するポリーヌ(Pauline)は,当協会がKFの登場直後から動き出し、2016年ごろからフランスのビデオゲーム保存に取り組む団体ラ・リュドテーク・フランセーズ(La Ludothèque française)と協働し製作した新デバイスで,従来のKFでは対応できなかった様々な課題を解決した。アーカイブ機関や研究所などでFDデータの保存を行う際に求められる高いクオリティを実現しながら,特別なライセンス契約がなくても使用できるようオープンソース下で開発されており,デバイス自体の製作も安価なFPGA(プログラム可能な集積回路)の登場によって少額に抑えられる。デジタルアーキビストやまだFDを現役利用している企業向けの完全なプロ仕様であるため,一般のユーザーであれば従来のKFで十分FD保存に関するニーズを満たし扱いやすいが,さらに一歩踏み込んだ専門的なデータのマイグレーションを行うのであればポリーヌを使うべきだろう。

   ポリーヌの特徴は大きく三点あり,一つはハード面である。KFよりも可変性が高く様々なニーズに対応できるパワフルなハードは,追加のカスタマイズを加えやすい余裕のある設計で,対象資料や保存の内容に合わせて機能の追加がしやすい。例えば当協会では現在,データ保存と同時にFDの回転速度も計測し記録するための拡張機能の開発を進めている。また,測定可能な周波数に余裕があるため,すでに劣化が進み磁気に弱い部分があったり一部壊れたFDでも,デジタル修復を施しながら保存作業を進めることができる利点もある。

   二つ目はソフトである。ポリーヌはスキャナーのようなもので,FDから出る磁気データを受け取るが,それを可視化し分析・解析を行うにはソフトが必要である。ポリーヌにはリュド(Ludo)と呼ばれる専用のソフトがあり,これによりデジタルアーキビストが自分の目で作業中のデータを確認することが可能となる。また,ポリーヌにはネットワーク機能が付いており,ドライバーをインストールしなくてもどの端末からでも操作が可能である。受け取ったデータをすぐにパソコン画面で画像として目視できることは大きな強みである。

   そして三つ目が,オープンソースでの公開である。ポリーヌはリュドと合わせて完全なオープンソースとして公開した。デバイスの製作は回路図などが公開されているので誰でも自由に作ることができる。カスタマイズや機能の追加も各自が好きなように開発を行え,その情報を共有することで各国のアーキビストがお互いに保存作業を助け合うことも可能となる。特にゲーム資料など,歴史的文化資料として保存を開始したのが最近で,ノウハウが確立されていないものの保存では,自由な建付けで知識や技術さえあれば誰でも参加でき,助け合えることが重要だ。ライセンス契約等の必要がないので企業やinstitutions(国立国会図書館など)が安心して使える。

   現在,当協会では日本にしか存在しなかった日本独自のPC用ゲームソフトを中心に,順次アーカイブ室に収蔵しているFD資料のマイグレーションを進めるべく,ポリーヌの本格的導入の準備をしている。同じ技術はゲーム以外のFD資料にも当然,使うことができる。手持ちの文化資料や貴重なデータの保存で相談があれば,ぜひ一度連絡をしてほしい。

Ref:
“フロッピー保存の新時代がはじまります!”. ゲーム保存協会. 2020-05-15.
https://www.gamepres.org/2020/05/15/pauline-tanjo/ [15]
“HxC Floppy Drive Emulator”. SOURCEFORGE.
https://sourceforge.net/projects/hxcfloppyemu/ [16]
Software Preservation Society.
http://www.softpres.org/ [17]
KryoFlux.
https://www.kryoflux.com/ [18]
La Ludothèque Française.
https://www.laludotheque.fr/ [19]

  • 参照(4319)
カレントアウェアネス-E [7]
電子情報保存 [20]
オープンソース [21]
ゲーム [22]
日本 [12]
フランス [23]

E2295 - 「京都大学研究データ管理・公開ポリシー」採択の経緯

  • 参照(3633)

カレントアウェアネス-E

No.397 2020.09.03

 

 E2295

「京都大学研究データ管理・公開ポリシー」採択の経緯

京都大学附属図書館・西岡千文(にしおかちふみ),藤原由華(ふじわらゆか),吉田弘子(よしだひろこ)

 

   京都大学では,2020年3月19日に「京都大学研究データ管理・公開ポリシー」(以下「ポリシー」)を採択した。ポリシーは,本学における研究データの取り扱いについて基本的な方針を示すものである。具体的には,本学の研究者が各分野の特性に応じた研究データ管理を行うこと,研究データを可能な限り公開して利活用を促進することを原則として定めている。ポリシーの目的は,研究データの適切な管理・保存・公開を促進することで,本学の理念でもある学術研究の発展と地球社会の調和ある共存に貢献することである。ポリシーの各文言の意図については,ポリシー本文と共に公開されている「ポリシーの解説・補足」で詳述している。よって本稿は,ポリシー採択までの経緯を中心に扱う。

   ポリシー検討の背景として,内閣府による2018年の「国立研究開発法人におけるデータポリシー策定のためのガイドライン」の制定,同じく内閣府が主導するムーンショット型研究開発制度における先進的な研究データの管理ならびに利活用の推進,海外大学での研究データに関するポリシーの策定の動き等が挙げられる。

   本学では,研究データを総括的に担当する専門部署は未設置であり,関連部署は多岐にわたる。このことから,全学委員会である研究者情報整備委員会がポリシーに関する審議を掌ることとなった。研究者情報整備委員会は,本学の研究者等の教育研究活動等に係る情報の収集,保管,利用,公開等に関し必要な事項を審議するために設置されている。理事,部局長等によって構成されており,情報担当理事が委員長を務める。この委員会の下に,研究データの保存,管理および利活用について,検討ならびに審議を行うことを目的として,2019年12月11日,リサーチデータマネジメント専門部会(以下「専門部会」)を設置した。専門部会は図書館機構長を部会長とし,学際融合教育研究推進センターアカデミックデータ・イノベーションユニット(以下「葛ユニット」),図書館機構,附属図書館,情報環境機構,研究推進部の教職員7人により構成される。さらに,専門部会の下に2019年12月25日,リサーチデータポリシー策定ワーキンググループ(以下「WG」)を設置して,ポリシー案の作成を進めた。WGは,図書館機構副機構長が主査を務め,情報環境機構,研究推進部,学術研究支援室,附属図書館の教職員7人から構成された。

   WGでのたたき台となったポリシーの素案は,筆者らを含む附属図書館教職員が中心となって作成した。素案の作成に貢献した活動は2点挙げられる。1点目は,学内の図書系職員によって構成されていた海外研究データポリシー調査ワーキンググループである。ここでは,2019年5月から7月にかけて海外の研究大学の研究データに関するポリシーの調査を行っていた。主にTimes Higher Education(THE)等の大学ランキングで上位に位置する大学ならびに本学と近い順位に位置する大学を対象とした。2点目は,2019年7月から9月に実施していたMLA勉強会である。勉強会は総合博物館,大学文書館の教員ならびに附属図書館の教職員で構成され,研究データを含めた資料管理手法に関する事例報告や意見交換を実施した。その上で,調査した研究大学のポリシーを参考にして附属図書館職員が素案を作成し,WGでの検討開始よりも前に勉強会内で意見交換した。素案の作成に際しては,先行して研究データに関するポリシーを検討していた他大学から情報提供を受けた他,大学ICT推進協議会による「学術機関における研究データ管理に関する提言」等の資料も参考にした。

   WGは2019年12月25日から2020年3月6日にかけて,8回開催された。第1回から第5回のWGでは,素案をもとに,目的,定義,帰属,管理・保存,公開といった項目に沿ってポリシー案を検討した。第6回WGでは,葛ユニットの研究者とポリシー案について意見交換し,それまでの検討を踏まえたポリシー案に対して,専門部会,葛ユニットに所属する学内外研究者等から意見を収集した。学内規程との整合性について,本学の知的財産に係る業務を所掌する産学連携本部知的財産部門にもヒアリングを行った。第7回WGでは,他大学図書館と意見交換を行い,第8回WGにて,WGでのポリシー案を確定した。その後,専門部会での協議・修正を経て,2020年3月19日の研究者情報整備委員会での承認を以ってポリシーの採択となった。

   各分野の研究者等からの意見は多様であり,WGでの取りまとめに苦労したが,それらは「ポリシーの解説・補足」に反映されている。ポリシー採択後に行った英文版の作成では,日本語タイトルにおける「公開」の訳語の選択等,日本語と英語とでニュアンスのずれが生じないよう注意を要した。英文版は,外国人研究者への周知ならびに世界へ向けた本学の取り組みの発信を意図して作成した。

   ポリシーは上記の通り基本的な方針を示すものであり,各部局で分野の特性に鑑みて、より具体的な実施方針を策定することが期待される。ポリシー策定の次段階として,研究データ管理・公開を促進するため,2020年7月1日に専門部会の下に前述のWGと同じメンバー構成からなるポリシー利活用ワーキンググループを設置した。今年度,このワーキンググループでは,部局実施方針策定のためのガイドラインならびに実施方針雛形の作成を予定している。

   ポリシー策定にあたり,学内外の多くの方々にご助言をいただいた。ここに謝意を表する。

Ref:
“研究データ管理・公開ポリシー”. 京都大学.
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_policy/kanrikoukai [24]
“基本理念”. 京都大学.
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/about/operation/ideals/basic [25]
京都大学. ポリシーについての解説・補足. 2020, 10p.
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_policy/documents/hosoku_20200619.pdf [26]
“国立研究開発法人におけるデータポリシー策定について”. 内閣府.
https://www8.cao.go.jp/cstp/stsonota/datapolicy/datapolicy.html [27]
“ムーンショット型研究開発制度”. 内閣府.
https://www8.cao.go.jp/cstp/moonshot/index.html [28]
“ムーンショット型研究開発制度の運用・評価指針(ムーンショット目標1~6)”. 内閣府.
https://www8.cao.go.jp/cstp/moonshot/shishin.html [29]
“京都大学研究者情報整備委員会規程”. 京都大学. 2018-05-15.
http://www.kyoto-u.ac.jp/uni_int/kitei/reiki_honbun/w002RG00001415.html [30]
“アカデミックデータ・イノベーション ユニット”. 京都大学.
http://www.cpier.kyoto-u.ac.jp/unitlist/academic-data-innovation/ [31]
“学術機関における研究データ管理に関する提言”. 大学ICT推進協議会. 2019-05-11.
https://rdm.axies.jp/sig/57/ [32]
松井啓之. “京都大学でのデータポリシー検討状況”. 第3回京都大学研究データマネジメントワークショップ. 京都, 2020-02-27, 京都大学アカデミックデータ・イノベーションユニット. 京都大学, 2020, 29p.
http://hdl.handle.net/2433/246277 [33]

カレントアウェアネス-E [7]
研究データ [34]
学術情報流通 [35]
オープンデータ [36]
日本 [12]
大学図書館 [37]

E2296 - データリポジトリの信頼性に関するTRUST原則

カレントアウェアネス-E

No.397 2020.09.03

 

 E2296

データリポジトリの信頼性に関するTRUST原則

国立情報学研究所オープンサイエンス基盤研究センター・南山泰之(みなみやまやすゆき)

 

  データリポジトリの信頼性に関するTRUST原則(The TRUST Principles for digital repositories:以下「TRUST原則」)は, 2020年5月に公表された,デジタルリポジトリの信頼性を実証するための一連の指針である。本稿では,公表までの経緯や要件の概要,他の基準との関わりを紹介する。

●公表までの経緯

   TRUST原則に関する構想は,当初CoreTrustSealのボードメンバーによって検討され,2019年4月に開催された第13回研究データ同盟(RDA)総会のセッションで,正式にコミュニティによる議論が開始された。同セッションではTRUST原則のホワイトペーパー草案(Ver. 0.01)が公開され,翌週に米国立衛生研究所(NIH)で開催されたワークショップ,RDA総会のセッション等を通じて議論が続けられた。議論の進展に伴いホワイトペーパーも数度の改訂が加えられ,翌年5月にはリン(Dawei Lin)氏らによりSpringer Nature社のオープンアクセス(OA)ジャーナル“Scientific Data”において同原則が公表されるに至っている。

●要件

   TRUST原則は,透明性(Transparency),責任(Responsibility),ユーザーフォーカス(User Focus),持続性(Sustainability),技術(Technology)の5つの要件からなる。以下では,リン氏らによる文献をもとに,提案されている各原則およびリポジトリへの指針に加え,それぞれについて挙げられている明示/実践の具体例を紹介する。

  • 透明性:リポジトリサービスと保持するデータを,誰でもアクセスできるエビデンスで検証可能にし,透明性を保つこと
    【明示の具体例】
    • リポジトリの使命,スコープを明示する
    • リポジトリと保持するデータの両方の使用条件を示す
    • 保持するデータの最低保存期間を示す
    • 関連する追加機能やサービスを明示する。例えば,機密データの管理責任に関する機能など
  • 責任:保持するデータの信憑性と完全性を確保し,サービスの信頼性と永続性に責任を負うこと
    【実践の具体例】
    • 対象コミュニティのメタデータとキュレーションの標準を遵守し,技術的検証,文書化,品質管理,真正性の保護,長期保存など,保持するデータのスチュワードシップを提供する
    • ポータルやマシンインターフェース,データダウンロード,サーバサイド処理などのデータサービスを提供する
    • データ作成者の知的財産権,機密情報資源の保護,システムとコンテンツのセキュリティを管理する
  • ユーザーフォーカス:データ管理における達成基準とユーザーコミュニティからの期待を一致させること
    【実践の具体例】
    • 関連するデータの指標を実装し,ユーザーが利用できるようにする
    • データの発見を促進するため,コミュニティカタログを提供(または貢献)する
    • 進化するコミュニティの期待をモニタリングして特定し,変化するニーズに適宜対応する
  • 持続性:サービスを持続させ,保持するデータを長期に保存すること
    【実践の具体例】
    • リスク軽減,事業継続,災害復旧,継承のために十分な計画を立案する
    • リポジトリが保存・普及を担うデータ資源に対して,継続的な利用と望ましい特性を維持することで,信頼を得続けるための資金を確保する
    • データ資源が将来にわたり発見・アクセス・利用可能であるために,データの長期保存に必要なガバナンスを提供する
  • 技術:安全で,永続的かつ信頼できるサービスをサポートするためのインフラと機能を提供すること
    【実践の具体例】
    • データ管理とキュレーションのために,関連する適切な標準,ツール,技術を実装する
    • サイバーセキュリティや物理セキュリティ上の脅威を防止し,検知し,対応するための計画と仕組みを持つ

●TRUST原則の位置づけ

   ホワイトペーパー(Ver. 0.03)内では,TRUST原則を検討する動機が“Who can we trust to enable FAIR?”と述べられている。データ公開の適切な実施方法を示す基準としてFAIR原則(E2052 [38]参照)が提唱されているが,同原則は,将来にわたってデータが保存され,分析結果の検証に利用できることを保証するものではない。TRUST原則は責任を持ってデータを管理・普及し,長期間にわたってFAIRな状態を維持するために必要なリポジトリの特性を記述している。

   また,同ペーパー内では関連するモデルや基準として,Open Archival Information System(OAIS)参照モデル(CA1489 [39]参照)や,実装レベルの認証基準である「信頼できるデータリポジトリを認定するための中核的な統一要件」(Core Trustworthy Data Repositories Requirements;E1888 [40]参照)などとの違いについて整理が試みられている。OAIS参照モデルは,アーカイブ情報システムの管理のための原則と用語の首尾一貫した包括的な枠組みを提供している。しかし,信頼性を評価するためには,参照モデルであるOAISが扱っていない要素として,適切なガバナンス,リソース,セキュリティなどに対応した基準が必要なほか,さまざまな解釈や実装を許容するための定期的な監査や認証の仕組みが必要である。ISO 16363(Audit and Certification of Trustworthy Digital Repositories),DIN 31644(Information and documentation - Criteria for trustworthy digital archives),前述の統一要件などのリポジトリ認証要件はこれに応えるものであるが,認証の種類やレベルが複数存在しており,リポジトリが提供するサービスの評価を行う客観的な指針が存在していない。TRUST原則は,様々なリポジトリの認証基準を満たす概念的なフレームワークを提供し,資金提供者やリポジトリの利用者も含めた形で客観的な指針を示すことを企図している。

●今後の展開

   TRUST原則は,2020年8月時点で27機関が支持を表明している。国内においては,近しい基準として2019年に内閣府より「研究データリポジトリ整備・運用ガイドライン」が公表されており,どのように両者の関係性を整理すべきか議論の余地があろう。引き続き動向を注視していきたい。

Ref:
“CoreTrustSeal”.
https://www.coretrustseal.org/ [41]
“IG RDA/WDS Certification of Digital Repositories - RDA 13th Plenary Meeting”. RDA. 2019-04-04.
https://www.rd-alliance.org/ig-rdawds-certification-digital-repositories-rda-13th-plenary-meeting-0 [42]
“Trustworthy Data Repositories Workshop”. National Institute of Health, Office of Data Science Strategy.
https://datascience.nih.gov/data-ecosystem/trustworthy-data-repositories-workshop [43]
“The TRUST Principles for Trustworthy Data Repositories – An Update”. RDA/WDS Certification of Digital Repositories IG. 2019-09-13.
https://www.rd-alliance.org/trust-principles-trustworthy-data-repositories-%E2%80%93-update [44]
Lin, Dawei., et al. The TRUST Principles for digital repositories. Scientific Data. 2020, 7, 144.
https://doi.org/10.1038/s41597-020-0486-7 [45]
Lin, Dawei., et al. The TRUST Principles for Digital Repositories - A White Paper Version 0.03 (draft). 2019, 22p.
https://docs.google.com/document/d/1pbRw1uf-W-BRMxjj8ZNZJHQTI-ggLjRWq8jiu4Oy6Yc/edit [46]
Wilkinson, Mark. D. et al. The FAIR Guiding Principles for scientific data management and stewardship. Scientific Data. 2020, 3, 160018.
https://doi.org/10.1038/sdata.2016.18 [47]
The Consultative Committee for Space Data Systems. ISO 14721:2012 Reference Model for an Open Archival Information System (OAIS). MAGENTA BOOK, 2012.
https://public.ccsds.org/Pubs/650x0m2.pdf [48]
CoreTrustSeal Standards and Certification Board. CoreTrustSeal Trustworthy Data Repositories Requirements 2020–2022. 2019, 2p.
http://doi.org/10.5281/zenodo.3638211 [49]
“The TRUST Principles: An RDA Community Effort”. RDA. 2020-05-18.
https://www.rd-alliance.org/rda-community-effort-trust-principles-digital-repositories [50]
国際的動向を踏まえたオープンサイエンスの推進に関する検討会. 研究データリポジトリ整備・運用ガイドライン. 2019, 13p.
https://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/kokusaiopen/guideline.pdf [51]
八塚茂. FAIR原則と生命科学分野における取組状況. カレントアウェアネス-E. 2018, (353), E2052.
https://current.ndl.go.jp/E2052 [52]
南山泰之. 信頼できるデータリポジトリの中核的な統一要件. カレントアウェアネス-E. 2017, (320), E1888.
https://current.ndl.go.jp/e1888 [40]
栗山正光. 動向レビュー:デジタル情報保存のためのメタデータに関する動向. カレントアウェアネス. 2003, (275), CA1489, p. 13-16.
https://doi.org/10.11501/1012127 [53]

 

 

クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0

※本著作(E2296 [54])はクリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 国際 パブリック・ライセンスの下に提供されています。ライセンスの内容を知りたい方はhttps://creativecommons.org/licenses/by/4.0/legalcode.ja [55]でご確認ください。

  • 参照(3479)
カレントアウェアネス-E [7]
オープンデータ [36]
リポジトリ [56]
研究データ [34]
RDA(研究データ同盟) [57]

E2297 - 韓国国立中央図書館の新型コロナウイルス対応

  • 参照(3209)

カレントアウェアネス-E

No.397 2020.09.03

 

 E2297

韓国国立中央図書館の新型コロナウイルス対応

利用者サービス部政治史料課・河村真澄(かわむらますみ)

 

●はじめに

   2020年1月以降の新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって,韓国国立中央図書館は同年 2月下旬から7月下旬まで,約5か月間の臨時休館となり,その間様々な対応に迫られた。

   本稿では7月31日までの情報を基に,国立中央図書館(本館)およびその付属図書館である国立障害者図書館(同館は6月4日に文化体育観光部直属に移管),国立子ども青少年図書館,国立世宗図書館の取り組みを紹介する。

●国立中央図書館(本館)

   国立中央図書館(本館)では臨時休館中,来館利用者向けの対面サービスを休止する代わりに,自宅で利用できるデジタル資料の提供を拡充した。4月以降,従来からの27種類に加え,韓国の主要学術誌2,000タイトル以上を提供する学術論文データベースDBpiaなど,国内外10種類の民間学術データベースを自宅からも利用可能なサービスに追加した(期間限定)。6月からは,米国の大学・研究図書館協会(ACRL)が発行する書評専門誌に掲載された学術図書等,海外の電子書籍1,352点を追加購入し,計4,057点が館外から利用できるようになった。

   一方で,同館がデジタル化した資料約133万点のうち,オンライン公開されている資料は約21万5,000点にとどまる(2019年12月末時点)。残りの約110万点の資料を対象に,今回のような国家的災害時には一時的に館外からも利用できるよう許諾を求める著作権利用同意キャンペーンを5月6日から展開し,著作権者の協力を仰いでいる。

   また,ウェブ資源アーカイブOASIS(E457 [58]参照)の一環として構築している災害アーカイブのテーマに新型コロナウイルス感染症を加え,関連するウェブサイトや画像・文書ファイルを収集,公開している(7月31日現在3,251件)。収集対象には政府機関のほか,報道機関,医療機関のウェブサイト等が含まれている。

   このほか,同館は国内唯一の司書職専門教育訓練機関として,全国の公共・学校図書館等の職員を対象に司書教育プログラムを実施してきたが,今回,対面での集合研修が延期されたことを受け,その影響を最小化するため,eラーニングの課程を増設して参加定員を拡大するなどの対策をとっている。

   加えて,同館が開催し,今年で14回目を迎える「図書館の革新的アイデアおよび優秀実践事例」公募展では,応募テーマに新型コロナウイルス感染症以後の変化した図書館の政策方針とサービスが加えられた。9月に審査が行われ,優秀作は資料集にまとめられて全国図書館に配布される予定である。

●国立障害者図書館

   国立障害者図書館では,2013年から聴覚障害者向け手話読書プログラムを運営してきた。今年は対面でのグループ講座に代えて,4月14日から6月23日まで全10回にわたり,課題図書(手話映像図書)に関連する講義動画を同館ウェブサイトで公開した。

   このほか,同館を所管する文化体育観光部は7月23日,2020年度第3次補正予算に基づき,障害者の非対面学習の受講が増加したことに対応するため,国立障害者図書館による障害者用代替資料の製作事業に13億ウォン余りを投じることを発表している。

●国立子ども青少年図書館

   国立子ども青少年図書館でも,対面型のイベントをオンラインイベントに切り替えて実施している。

   まず,同館のメイカースペース「未夢所(未来の夢・希望創作所)」で行われていたプログラムを活用したオンラインイベント「挑戦!未夢所」が,3月から5月にかけて第4弾まで開催された。同イベントでは,図書の推薦文や工作などの課題をInstagramやFacebookに投稿した参加者に対して,先着順や選考の結果に応じてアイスクリームやギフトカードなどをプレゼントした。

   また,5月5日のこどもの日には,同館ウェブサイト上でオンラインイベントを開催し,サンドアニメーションを交えながら韓国の昔話の読み聞かせをする朗読会,読書感想文や読書写真のコンクール等を実施している。

●国立世宗図書館

   国立世宗図書館は公務員の政策立案業務に関する情報支援を目的とする専門図書館である(E2274 [59]参照)。同館では1月1日から3月12日までの電子書籍の利用者数が前年同期比で30.5%増加したとされ,4月以降,オンラインで利用できる国内外の電子書籍の提供拡大を期間限定で実施した。対象には,約2,000種類の韓国学,人文教養コンテンツを提供するKRpiaのほか,英語の原書を提供するOverDrive等が含まれる。

   また,新型コロナウイルス感染症関連の情報提供も行っている。同館が発行する政策情報専門誌『政策と図書館』6月号では,「ポスト・コロナ,危機のなかの新たな機会を探す」というテーマで特集を組んでいる。専門家の対談記事のほか,韓国・国土交通部による新型コロナウイルス疫学調査支援システムの開発に関する紹介記事などを掲載した。このほか,同館が運営する政策情報ポータルサイトPOINTでは,「ポスト・コロナ」をテーマに,国内外機関の報告書やウェブサイトのリンク等をまとめて紹介している。

●おわりに

   上述のように,韓国国立中央図書館では新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う対面サービスの休止を受けて,サービスのオンライン化やデジタル資料の提供拡大が積極的に進められた。

   また,韓国・企画財政部は7月14日,ポスト・コロナ時代を見据えた国家発展戦略「韓国版ニューディール総合計画」を発表した。そのなかで国立中央図書館・国会図書館所蔵の学術誌・図書等のデジタル化(年間で国立中央図書館20万点,国会図書館105万点)を実施する計画案を示すなど,関心はポスト・コロナ時代に向かいつつある。

   新型コロナウイルス感染症による影響の長期化が予想されるなか,韓国国立中央図書館がどのような取り組みを見せるのか,今後の動向が注目される。

   なお,韓国国立中央図書館(国立障害者図書館,国立子ども青少年図書館,国立世宗図書館含む)は,館内での感染者発生,および韓国政府による社会的距離確保の措置強化に伴い,8月中旬以降,順次再休館となっている。

Ref:
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カレントアウェアネス-E [7]
感染症 [81]
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E2298 - 南欧の国立図書館における複写貸出サービス

  • 参照(2746)

カレントアウェアネス-E

No.397 2020.09.03

 

 E2298

南欧の国立図書館における複写貸出サービス

関西館文献提供課・加藤大地(かとうだいち)

 

   2019年の晩秋,南欧4か国の国立図書館や大学図書館を実地に訪ね,利用者サービスについて調査を行う機会を得た。訪ねたのはポルトガル,スペイン,イタリアそしてギリシャの4か国である。本稿ではイタリア以外の3か国の国立図書館について職員へのインタビューによって得た見聞をもとに,複写および貸出サービスの実態を紹介したい。イタリアの国立図書館における複写サービスについては同僚の伊藤暁子が2018年にローマとフィレンツェの2館を訪問し(E2165 [96]参照),『国立国会図書館月報』第706号に豊富な写真つきでまとめている。イタリア以外の欧州の国立図書館についても知ることができる。ぜひ参照されたい。

●ポルトガル国立図書館

   では訪れた順番にまずはポルトガル国立図書館について紹介しよう。その複写サービスを一言で表せば,自写中心ということになるであろう。同館では特別な手続をすることなく無料で資料を自写することができる。自写というのは,利用者が自ら機器を持ち込んで資料を複写(多くは撮影)することであり,同館は各自がデジタルカメラやスマートフォン等で撮影することを認めている。著作権との関係を担当者に尋ねたところ,研究目的での複製は認められており,その法的責任はすべて利用者が負うとのことであった。資料の扱いや他の利用者に配慮するという基本的なルールのもと,どうやら自写が広く認められているようである。有料の複写サービスももちろん用意されており,その中にはデジタル撮影した画像を利用者に送信するというメニューもある。資料により,また目的により活用されていることは同館の活動報告からも分かるが,個人にとっては経済的な負担が大きく,また国内よりも国外からの申込みが多いことを担当者は話してくれた。

   次に貸出サービスについては,国内外の機関に対して貸出を行っているが,同一の資料を2部以上所蔵している場合に限っている点に特徴がある。また,先の活動報告の2019年版によれば,他機関の資料を同館に取り寄せることもできることになっているが,いずれにせよ活発に利用されている訳ではなく,両者を合わせて300件に満たない数である。

●スペイン国立図書館

   続いてスペイン国立図書館について紹介しよう。ここでも利用者は,事前に司書が確認すれば決められた場所で各自のカメラやスキャナを用いて自写することが許されている。担当者の話では,スペインの著作権法は1958年以降に出版された本なら1冊の20%までの私的複製を認めているようであるが,具体的に説明することを条件に研究目的で全部を複製することができる。また,いわゆる遠隔複写について聞くと,週に150件から200件程度の申込みがあること,そのうち3%くらいが何らかの理由で謝絶になること,複写は事前支払制であることなどを教えてくれた。

   貸出サービスはといえば,ポルトガル国立図書館よりもなお厳しく,同館が3部以上同じものをもっている場合にしか原本の貸出を認めていないが,一方でコピーしたものをデジタル形式で提供することもしている。貸出に関することは全てウェブ上のフォーマットを使って管理しており,図書館などの文化機関のみならず個人研究者向けにも貸出を行っている。担当者によれば週に30件から40件程度の利用があるとのことであった。

●ギリシャ国立図書館

   最後にギリシャ国立図書館を紹介しよう。先の2館とは毛色が違う。スタブロス・ニアルコス財団から巨額の援助を受けて海寄りの現在地に新館が開館したのが2017年である。訪問時も資料を旧館から移転中であり,訪れたときはまだ書架に資料が並ぶのを待っている閲覧室もあった。著作権について定めた国内法により,そもそも図書館に対しても極めて限られた目的でしか複製は認められておらず,そのため同館においてもいわゆる複写サービスは提供されていない。著作権の保護期間が満了した資料は利用者からの求めに応じてデジタル化し,電子ファイルを渡していると担当者は教えてくれた。

   貸出サービスは,経済危機による財源不足・人手不足を理由に行っていないとのことである。そうなると,遠隔地への資料提供サービスとしてはデジタルライブラリーがほぼ唯一となる。

   同じ南欧の国立図書館とはいえ,利用者サービスの実態は様々である。国が違えば当然だが,つい欧州一枚岩のように思いがちであった。今回の訪問は,それを正す良い機会となった。遠方からの訪問者を迎えて案内してくださった3館の方々に心から感謝申し上げたい。

Ref:
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“Faq”. National Library of Greece.
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https://current.ndl.go.jp/E2165 [100]

カレントアウェアネス-E [7]
複写 [101]
貸出 [9]
図書館サービス [102]
ポルトガル [103]
スペイン [104]
ギリシャ [105]
欧州 [106]
国立図書館 [92]

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[98] http://www.bnportugal.gov.pt/index.php?option=com_content&view=article&id=83&Itemid=92&lang=pt
[99] https://www.nlg.gr/faq/#633-2
[100] https://current.ndl.go.jp/E2165
[101] https://current.ndl.go.jp/taxonomy/term/117
[102] https://current.ndl.go.jp/taxonomy/term/64
[103] https://current.ndl.go.jp/taxonomy/term/533
[104] https://current.ndl.go.jp/taxonomy/term/19
[105] https://current.ndl.go.jp/taxonomy/term/586
[106] https://current.ndl.go.jp/taxonomy/term/230