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中国科学技術情報研究所:李 穎(りえい)
中国科学技術情報研究所:田 瑞強(でんずいきょう)
2003年12月、当時の中国科学院(中国科学院:Chinese Academy of Sciences:CAS)院長の路甬祥氏は中国の科学者を代表して、オープンアクセス(OA)に関するベルリン宣言(E144 [4]参照)に署名した。また2004年5月に路氏と中国国家自然科学基金委員会(国家自然科学基金委员会:National Natural Science Foundation of China:NSFC)主任の陳宜瑜氏は、CASとNSFCを代表し、ベルリン宣言に署名した。
CASは、1949年11月に創立された中国最高レベルの科学技術学術機関及び自然科学・先端技術総合研究センターであり、国務院の直属機関である。また、NSFCも、1986年2月に国務院の認可により設立された、国務院の直属機関である。NSFCは、科学・技術の発展方針と政策に基づき基礎研究と一部の応用研究を国家財政資金で助成している。
これら2機関の動きは、中国の科学界と科学研究助成機関がOAを支持するという立場の表明であり、中国が本格的にOA活動を開始した象徴でもあった。当時の中国は、全体的に言えばOAに対する意識があまり高くなく、OAに関する政策の導入や取組の遂行が欧米や日本などと比較して遅れていた。
OAを進展する際の障壁は、単純な技術的問題によるものではなく、OAに関わる政府内の組織・部門や多くの研究機構、様々な出版社の、それぞれのOAの認識の違いに起因している。このような複雑な事情のため、中国は国家レベルのOA政策を出していない。しかし関連機関や個人レベルでは、OA戦略の検討と実践は盛んに行っている。特にグローバルな規模のオープンサイエンスの進展や、世界を主導する研究開発を中国が行うという政府の方針により、中国ではOAの普及と交流を促し、認識を高め、実践を広める様々な活動が見られる(1)。現在、中国は世界のOAにおいて活躍しており、その貢献が以前より大きくなっていると言える。
本稿では、中国における代表的な国家機関のOAに関する政策や取組、中国の科学技術雑誌のOA化に関する最新の統計データ、権威ある中国の科学技術雑誌のOAプラットフォームを紹介する。最後に中国のOAの2017年の動向をまとめる。
前述の通り、中国は国レベルの政策を策定できていないが、政府に所属する代表的な機関はOA活動を先頭に立って積極的に主導している。本章では、CASとNSFC、国家社会科学基金委員会(国家社会科学基金委员会:The National Social Science Fund of China:NSSFC)、中国の大学図書館コンソーシアムである中国高等教育文献保障系统(China Academic Library & Information System:CALIS)(2)と中国大学機関リポジトリ連盟(中国高校机构知识库联盟:China Academic Institutional Repository:CHAIR)(3)に分けて紹介する。これらの機関の取組を見ることで、中国全体のOAの状況が概観できる。
中国でOA政策に関する最初の大きな動きの端緒は、2014年5月のCASとNSFCによるOA政策の同時発表(4)であった。それは北京で開催されたGlobal Research Council 2014(5)と同じ時期であった。当時CASとNSFCは、それぞれ「CASの公的助成金による研究プロジェクトの成果論文のOA実行に関する政策声明」(6)と「NSFCの助成金によるプロジェクトの研究論文のOA実行に関する政策声明」(7)(8)を発表した。これは公的助成金による研究論文の出版後、査読済みの最終稿をリポジトリへ登録し、12か月のエンバーゴでOAを要求するものである。
これらの声明の採択は、中国の科学技術界がOAを推進し、知識のもたらす恩恵を社会へ普及させるという、「革新駆動発展」(9)(Innovation Driven Development Strategy。イノベーション主導の国家の発展)に対する責任を背負い・努力する方針の表れであった。
また、これらの声明は、科学技術知識を迅速に全社会の革新的な資源と革新能力に転化し、革新型国家建設の後押しを目指すという、中国が国際社会において科学技術情報のOAに貢献する姿勢の表れでもあった。
NSSFCによる研究助成金の配分は、全国哲学社会科学企画室(全国哲学社会科学规划办公室 :National Planning Office of Philosophy and Social Science)の業務の一つである(10)。NSSFCのOAへの取組は人文・社会科学雑誌のプラットフォームである国家哲学社会科学学術雑誌データベース(国家哲学社会科学学术期刊数据库:National Social Sciences Database:NSSD)の構築である。NSSDは中国の哲学社会科学雑誌のOAプラットフォームとして、NSSFCから委託されたプロジェクトであり、2012年3月より構築され、2013年7月に提供を開始した(11)。ユーザー登録を行えば、誰でも論文をダウンロードできる。NSSDは中国で最も規模の大きな、非営利の人文・社会科学系の中国コア雑誌データベースかつ、人文・社会科学のOAプラットフォームを目指している。
このようなOAの取組の発想は、学術資源の共有、学術研究環境の整備、学術成果の社会普及、及び中国における人文・社会科学の発展の成果を世界へ発信することに繋がる。
CALISは国務院が承認した、中国の大学図書館による公的なサービスシステムの一つである。CALISは国内の500を越える大学図書館等から構成されているコンソーシアムであり、「大学図書館コンソーシアム」とも呼ばれる。
CALISのOAへの取組は、2011年に発表された「CALIS第三期プロジェクト」にある「大学機関リポジトリ構築」に遡ることができる(12)(13)。当時の目標は大学図書館においてリポジトリの構築・発展・応用を促進し、大学に蓄積される知識・デジタル資源の発信、共有及び保存に貢献し、資源の集中及びオープン化によって付加価値を高め、最終的に大学間の学術交流を促進することである。そして、中国の大学の現状を踏まえ、未来の発展に対応できるリポジトリの構築及び提供の仕組みを創り出すことを目指していた。これらの目標を踏まえ、2011年6月にリポジトリ構築に関する調査報告を完成し、7月に意見募集とニーズ検討を始めた。2011年8月にリポジトリの構築を開始し、モデルケースとなる図書館での試用を開始し、2012年4月にリポジトリは完成した。
CALISは「大学機関リポジトリ構築」の成果を活かし、2015年9月に中国大学機関リポジトリ連盟(CHAIR)の設立のため、準備会議を開催した。CHAIRは2016年9月に発足した。CHAIRのビジョンは大学リポジトリを推進し、リポジトリ構築の能力を向上させ、リポジトリの可視性と影響力を高め、世界中のOAリポジトリにリンクできる基盤を築くことであった。2017年5月に「オープンアクセスリポジトリ連合(COAR)2017年次大会」(14)で、CHAIRはリポジトリネットワークの連携に関する国際協定に署名した。CHAIRの動向はCALISのウェブサイトから参照可能である。
中国の国家代表機関はOAを主導し、中国全体のOAの実践を推進している。この章では中国における科学技術雑誌のOAの現状に焦点を当て、OAの実態を紹介する。現状を把握するため、中国科学技術論文・引用データベース(中国科技论文与引文数据库:Chinese Science and Technology Paper and Citation Database:CSTPCD)を利用した。同データベースは、「中国科学技術論文統計・分析データベース」(中国科技论文统计与分析数据库)として広く知られ、Science Citation Indexの中国版とも言われる。中国科学技術部に所属する中国科学技術情報研究所(中国科学技术信息研究所:Institute of Scientific and Technical Information of China:ISTIC)による事業の一部分である。CSTPCDに収録されている雑誌は中国における科学技術分野のコア雑誌であり、それらのOAの現状は中国の科学技術雑誌のOAの動きを反映しているため、今回の調査対象とした。
CSTPCDに収録されているのは、自然科学・技術分野のコア雑誌が1,985誌、社会科学誌が373誌の合計2,358誌である(15)(16)。また、2015年時点では、中国の学術雑誌の総数は1万14誌であり、うち自然科学・技術分野は4,983誌で、49.8%を占める。2015年以降、雑誌の質を保証するため、新しい雑誌の発行は政府に厳しく制限され、雑誌数はほぼ不変である。
CSTPCDのOAの現状を調査するため、CSTPCDに登録された中国における科学技術分野のコア雑誌が世界のOAジャーナルを収録するDOAJと中国のOAジャーナルを収録する中国科学技術雑誌OAプラットフォーム(中国科技期刊开放获取平台:China Open Access Journals :COAJ)(17)のそれぞれに収録されているデータを集計した(18)。これらの統計データの比較により中国における科学技術雑誌のOA化の実態がわかる。
2017年8月時点で、DOAJには出版地が中国である雑誌が104誌(19)ある。そのうちCSTPCDに収録された科学技術分野のコア雑誌は28誌であり、全て自然科学分野の雑誌である。
表1、2、図1は、中国の科学技術分野のコア雑誌のDOAJに収録されている実態を示している。表1から、科学技術分野のコア雑誌のOAの比率は低い状態にあることがわかる。表2のデータを見ると、DOAJに収録された雑誌の平均インパクトファクター(IF)は収録されていない雑誌より高いが、引用値(Times Cited:TC)が高くないことがわかる。TCが高くない原因は、OA誌の掲載論文数が比較的少ないためであると思われる。また、図1はDOAJの中国で発行された雑誌に掲載された論文は医学分野のものが圧倒的に多いことを示している。
CSTPCDの 中国科学技術 コア雑誌の分野 |
雑誌数 | DOAJに 収録されて いる雑誌数 |
CSTPCD 雑誌の DOAJに収録さ れている比率(%) |
社会科学 | 373 | 0 | 0 |
自然科学・技術分野 | 1,978 | 28 | 1.42 |
総合* | 7 | 0 | 0 |
合計 | 2,358 | 28 | 1.19 |
*総合は、社会科学及び自然科学・技術分野の双方を含む雑誌を指す。
IF平均値 (2015) |
TC平均値 (2015) |
|
DOAJに収録され ている雑誌 |
0.672 | 1083.7 |
DOAJに収録され ていない雑誌 |
0.562 | 1204.7 |
科学技術コア雑誌 全体 |
0.594 | 1327 |
*1,000件以上のタイトルのみ
COAJは、学術的で非営利の科学技術文献資源を公開するポータルサイトであり、中国における科学技術情報のOA化を先導している。現時点では、490誌の中国における自然科学・技術分野のコア雑誌を収録している。
表3のデータの通り、COAJで見られる自然科学・技術分野雑誌のOA比率は比較的高い。表4は地球科学総合、植物学、生物学分野のOAが進んでいることを示す。図2に示すように、コンピューターサイエンス分野のOA記事が第1位を占めている。それは中国ではこの分野が標準化やオープン化に積極的であり、世界的にも中国がこの分野で研究をリードしていることとも関係があると考えられる。
図3はCOAJにおける中国科学技術コア雑誌収録の最近5年間の論文数の地域分布を表しており、北京が出版地になっている論文が圧倒的に多いことを示している。それは2章で取り上げたような、OAに関する政策や仕組を積極的に推進している機関や大学のほとんどが、北京に集中しているからである。
CSTPCDの 中国科学技術 コア雑誌の分野 |
雑誌数 | COAJに 収録されて いる雑誌数 |
CSTPCD 雑誌の COAJに収録されている比率(%) |
社会科学 | 373 | 12 | 3.2 |
自然科学・技術分野 | 1,978 | 477 | 24.1 |
総合* | 7 | 1 | 14.3 |
合計 | 2,358 | 490 | 20.8 |
*総合は、社会科学及び自然科学・技術分野の双方を含む雑誌を指す。
分野 | COAJの 収録 雑誌数 |
CSTPCSの 収録 雑誌数 |
CSTPCD 雑誌の COAJに収録さ れている比率(%) |
地球科学総合 | 8 | 9 | 88.9 |
生態学 | 6 | 7 | 85.7 |
植物学 | 9 | 11 | 81.8 |
土壌学 | 4 | 6 | 66.7 |
地球物理学 | 8 | 13 | 61.5 |
地質学 | 23 | 38 | 60.5 |
バイオエンジニアリング | 3 | 5 | 60 |
大気科学 | 9 | 16 | 56.3 |
水文学・海洋科学 | 12 | 22 | 54.6 |
地理学 | 9 | 17 | 52.9 |
*CSTPCDは集計のために独自の分類法を持っており、分野名の中には「工程技術大学学報」や「医薬大学学報」等の収録誌名を分野と同列に扱う場合がある。
中国で発行された雑誌の権威あるOAプラットフォームは、CASの中国科学院・機関リポジトリ・グリッド(中国科学院机构知识库网格:CAS Institutional Repositories Grid:CAS IR GRID)、NSFCのNSFCオープンリポジトリ(国家自然科学基金基础研究知识库:Open Repository of the National Natural Science Foundation of China:NSFC-OR)及びCALISのCHAIRが主に挙げられる。
CAS IR GRIDでは、参加機関による迅速な知識の流通を実現し、知識の利用及び利用評価の向上を目指している(20)。CASは2009年より機関リポジトリ構築を開始した。2017年9月時点で、CAS IR GRID はCASに所属する各分野の112の研究所のリポジトリのメタデータをハーベストすることによって、統合的に世界に向けて論文を提供している。論文登録数は78万2,965件で、うち英文論文は35万6,992件である。また、登録されている論文は全て全文が登録されており、全文がOAになっているのは29万262件である。2017年9月の執筆時点の閲覧回数は1億3,047万4,967回、ダウンロードは1,702万33回、そのうち国外からの閲覧は2,298万6,356回、ダウンロードは567万7,029回に達した。一論文あたりの平均ダウンロード回数は21.7回である。
NSFC-ORはNSFCによる自然科学分野の基礎研究のリポジトリである。中国における学術研究のインフラとして位置づけられ、NSFCからの助成金による研究論文のメタデータと全文を収集・保存している。
NSFCは2015年5月にリポジトリを公開し、NSFCの助成金による研究成果を遡及して公開していく予定である。2017年9月時点で公開されている2000年から2017年までの論文の合計は42万8,670件で、64万人の著者と1,707の機関から収録している。これらは2万7,300タイトルの雑誌及び1万9,600点の会議資料である(21)。2017年9月時点でのダウンロード件数は280万2,557回に達している。
CALISは中国の大学図書館の機関リポジトリを取りまとめている。CHAIRはCALISの第三期プロジェクトとして、北京大学図書館、北京理工大学図書館、重慶大学図書館、清華大学図書館及び厦門大学図書館の5つのモデルケースとなる図書館の共同で構築された。プロジェクトで開発されたリポジトリシステムは、無料でCALISメンバー館に提供され、技術サポートとサービスも行っている。
2017年9月時点でCHAIRに登録された機関リポジトリは47、メタデータの件数は8万5,732件にのぼる。2017年以降、CHAIRはコンテンツ整備のフレームワーク、メタデータの規格・処理方法、メタデータの収集・クリーニング、処理の汎用的なツール、及び科学データ管理などに関連する作業を推進していく。
2003年にCASの路氏がベルリン宣言に署名してから、CAS、NSFC、CALIS及びその代表的な大学図書館などは、関連機関同士でOA活動を絶えず行ってきた。政策・仕組みを整備し、システムを構築、論文をOA化することに力を入れている。
CAS傘下の国家科学図書館(国家科学图书馆:National Science Library, Chinese Academy of Science:NSLC)では、2012年から毎年10月後半にある“Open Access Week”に参加している。中国の図書館業界、研究助成機関、研究教育機関、学協会、出版社、科学技術業界は、広くCOAR、EIFL、DOAJ、GigaScience、CODATA等の国際機関と提携し、OA政策の立案者と実践者が一堂に会してOA戦略・戦術を検討し続けている。2016年の“Open Access Week”のテーマは“Open in Action”であり、中国はいかにOAに関する活動を重視するのかを表明した。
2017年のテーマは、“OA2020 initiative”(22)である。同テーマで中国は、将来的に以下のような学術情報環境のオープン化を志向している。
今、中国は日本を含む国際社会と密接に連携してOA雑誌、オープンサイエンスの戦略、政策と実践を積極的に推進していくことだけではなく、国内の科学技術の発展とともに、OA領域でも先頭に立って大国としての責任を果たし、グローバルな研究開発環境での公平化、改善のために努力していくと筆者は考える。
(1)李慧. E-Research环境下高校图书馆科研成果. 四川图书馆学报. 2016, 2016(5), p. 68-72.
(2) 中国高等教育文献保障系统(CALIS)は、中国の大学図書館コンソーシアムの機関名であり、全国の大学図書館が参加する「中国大学機関文献提供サービスシステム」の名称でもある。
(3)中国高校机构知识库联盟.
http://chair.calis.edu.cn/index.html [5], (参照 2017-09-18).
(4)CASとNSFCによるOA政策の同時発表は以下の通り。
“中科院和国家自然科学基金委发布开放获取政策”. CAS IR GRID.
http://www.irgrid.ac.cn/note.jsp [6], (参照 2017-09-18).
(5)Global Research Council 2014に関するページは以下の通り。
“全球研究理事会2014年北京会议新闻通气会召开”. CAS. 2014-05-16.
http://www.cas.cn/xw/yxdt/201405/t20140516_4121375.shtml [7], (参照 2017-08-08).
(6)“中国科学院关于公共资助科研项目发表的论文实行开放获取的政策声明”. CAS. 2014-05-09.
http://www.cas.cn/xw/yxdt/201405/P020140516559414259606.pdf [8], (参照 2017-08-08).
(7)会議は「科学技術論文のOA」と「未来若手科学技術人材の育成」の二つのテーマで実施された。
“全球研究理事会2014年全体大会”. 国家自然科学基金委员会. 2014-05-16.
http://www.nsfc.gov.cn/publish/portal0/tab88/info44456.htm [9], (参照 2017-08-08).
(8)“国家自然科学基金委员会基础研究知识库开放获取政策实施细则”. NSFC.
http://or.nsfc.gov.cn/policies [10], (参照 2017-08-08).
(9)「革新駆動発展」は、2012年に中国共産党の第十八回党大会で出した「意見」であり、社会生産力や総合国力を高める戦略である。
(10)国家社会科学基金.
http://www.npopss-cn.gov.cn/ [11], (参照 2017-09-18).
(11)国家哲学社会科学学术期刊数据库.
http://www.nssd.org/ [12], (参照 2017-09-18).
(12)聂华. “CHAIR虚席以待- CALIS机构知识库建设、普及与展望”. 2012-10-23.
http://ir.las.ac.cn/handle/12502/5498 [13], (参照 2017-09-18).
(13)CALIS机构知识库.
http://ir.calis.edu.cn/ [14], (参照 2017-09-18).
(14)Confederation of Access Repositories.
https://www.coar-repositories.org/ [15],(accessed 2017-09-20).
(15)ISTIC科学技术论文统计结果发表年会.
http://conference.istic.ac.cn/cstpcd/index.html [16], (参照 2017-09-18).
(16)ISTIC科学技术论文统计事业.
http://www.istic.ac.cn/ScienceEvaluate.aspx [17], (参照 2017-09-18).
(17)COAJは2013年12月に運営を開始した。COAJは2010年10月に開始したCASの科学技術雑誌OAプラットフォーム(CAS-OAJ)の拡大版である。COAJの主管機構はCASで、COAJの位置づけは中国初の、科学技術雑誌の権威あるOAプラットフォームであり、国内における既存のOA雑誌を統合し、中国における研究情報の共有・影響力の向上を促進する。COAJは国内外の図書館及び個人利用者に対し、サービスを提供する。中国雑誌のOA化を指導する意義があり、研究者にワン・ストップでOAサービスを提供する。
(18)朱琳.“中国科技期刊开放获取平台”. 2014-05-28.
http://www.docin.com/p-1466417504.html [18], (参照2017-09-18).
(19)台湾の30誌を含む。
(20)Chinese Academy of Sciences Institutional Repositories GRID (CAS IR GRID).
http://www.irgrid.ac.cn/ [19], (参照 2017-09-20).
(21)Open Repository of the NSFC.
http://or.nsfc.gov.cn/ [20], (参照 2017-09-20).
(22)OA2020.
https://oa2020.org/ [21], (accessed 2017-09-20).
[受理:2017-11-13]
李穎, 田瑞強. オープンアクセスに関する中国の取組と科学技術雑誌の実態. カレントアウェアネス. 2017, (334), CA1909, p. 2-7.
http://current.ndl.go.jp/ca1909 [22]
DOI:
https://doi.org/10.11501/11007714 [23]
Li Ying, Tian Ruiqiang.
Current Policy and Academic Journal on Open Access in China.
PDFファイル [30]
電子情報部システム基盤課:水野翔彦(みずのやすひこ)
一般的に、オープンアクセス(OA)の推進には2つの手段があるといわれている。ひとつはOA誌の推進(ゴールドOA)、もうひとつはセルフアーカイブ(グリーンOA)である。
ラテンアメリカについていえば、学術情報のOAが世界に広まり始めた1990年代、汎米保健機構の仮想保健図書館(1)、CLACSO(2)、SciELO(3)(CA1566 [31]参照)やRedALyC(4)などのプラットフォーム上でゴールドOAは広がりを見せていた。DOAJ(Directory of Open Access Journals)(5)の登録情報からも、域内の各国が比較的早い時期からOAに取り組んでいることがわかり、ブラジル、メキシコ(6)を中心に2000年代後半にはかなり浸透していた(7)。
一方、グリーンOAについてはというと、OAジャーナルのディレクトリであるOpenDOAR(8)およびオープンリポジトリのダイレクトリであるROAR(Registry of Open Access Repositories)(9)収録の機関リポジトリ数を見る限り、一部の国以外については十分とは言えない状況であった(10)が、ちょうどこの頃、世界的なOA運動の高まりとともにラテンアメリカでも機関リポジトリの設置が進んでおり、2009年から2010年にかけて新規設置数は最大となっていた(11)。
La Referenciaの事業が開始されたのはこの時期で、ラテンアメリカの高等教育機関や自然科学分野の研究機関において生み出された成果を可視化し共有することを目指す、機関リポジトリによる地域ネットワークとして誕生した。2017年11月現在、そのポータルサイトではラテンアメリカで刊行された論文等143万件(12)へのアクセスを一元的に提供し、世界でも有数の規模となっている。本稿では、La Referenciaの活動をもとに、近年のラテンアメリカにおけるOA運動について紹介する。
La Referenciaは2009年、米州開発銀行(IDB)の地域公共財推進イニシアチブが資金を拠出するプロジェクトとして開始された。その背景として、IDBへのプロジェクトの申請資料(13)は域内外でのラテンアメリカの科学情報の可視性の低さを指摘し、あわせて域内の科学情報のマネジメントに関する公共政策の欠如、インフラや専門的な人材の不足がグッドプラクティスの広がりを阻害しているとしている。また、機関リポジトリの多くは、収録している文献数が1,000件以下の比較的小規模なものばかりであり、メタデータや相互運用のためのプロトコルの標準化も不十分であった(14)。
このような背景のもとで開始されたLa Referenciaの活動は、体制によって2つの時期に分けられる。第1期はIDBの支援のもとでパイロットプロジェクトとして実施されていた2010年から2013年までで、ラテンアメリカ各国の研究教育機関によるネットワークRedCRALAを母体としつつ、活動を4つのコンポーネント(I:連携ネットワークにおける共通戦略、II:共通政策と合意の枠組みの確立、III:パイロットシステムの開発と実装、IV:人材育成戦略のデザイン)に分割(15)、必要に応じて外部のコンサルタントを交えてプロジェクトが進められた。第1期の成果としては、パイロットの実施ならびにそのための諸条件、つまりLa Referenciaの創設に関する技術的な枠組みの確立と、政治的な合意の2つがあげられる。前者については、複数回の会合を通じて2012年にはメタデータ規格としてDRIVER 2.0(16)を採用すること及び、パイロットのために実装すべき必須メタデータ5項目をはじめとした記述ルール、ハーベストの方法・収集対象・実装期限などが定められた(17)。政治的な合意としては、2012年12月にブエノスアイレス宣言(18)がなされ、組織La Referenciaが誕生した。これを踏まえ、2013年にはメタデータのハーベストを開始、2013年10月には約32万件の資料の検索が可能(19)なパイロット版ポータルサイトがリリースされている。また、これに先立つ2013年6月にはすでに欧州の電子インフラ推進プロジェクト“CHAIN-REDS”(20)との提携も発表(21)されており、前述した国際的な可視性について強く意識されていたことがわかる。
第2期は、各国の機関リポジトリに関する政策に従い、持続可能な地域サービスとして事業を強化することを主目的として2013年末から開始された。この時期はIDBではなく、参加国の分担金と人的資源によって事業が進められている(22)。主なトピックとしてオープンアクセスリポジトリに関する欧州の地域ネットワークであるOpenAIRE(23)やオープンアクセスリポジトリ連合(COAR)を通じた国際的な協力関係づくりとメタデータガイドラインの改訂などがあるが、これらは次項で紹介する。
La Referencia には、2017年11月現在9か国が参加しているが、2016年にコスタリカがメンバーに加わった(24)ように、参加国は今後も変更されうるものである。参加国の科学技術・高等教育を所管する官庁が担当機関となり、各国のまとめ役である「ノード」となるシステムを運営している。
国名 | 所管機関 (ノード) | IR数 | データ件数 | 備考 |
アルゼンチン | MINCYT (SNRD) | 21 | 57,915 | 2013年に法制化 |
ブラジル | IBICT (oasisbr) | 22 | 1,045,286 | |
チリ | CONICYT (SIC) | 2 | 19,797 | |
コロンビア | Colciencias (SNAAC) | 26 | 43,046 | |
コスタリカ | CONARE, Micitt (Kímuk) | 4 | 30,601 | |
エクアドル | SENESCYT (RRAAE) | 24 | 28,000 | |
エルサルバドル | MINED, CBUES (REDICCES) | 12 | 988 | |
メキシコ | CONACYT (REMERI) | 22 | 80,063 | 2014年に法制化 |
ペルー | CONCYTEC ( RENARE) | 72 | 36,431 | 2013年に法制化 |
出典:La Referenciaのウェブサイトより
La Referenciaのメタデータ収集は、各ノードが各国内の機関リポジトリの持つメタデータを収集し、ノードとなるシステムに集約、それをさらにLa Referenciaの中央ノードが収集するという流れとなっている。各国のノードでは2016年現在、8か国がLa Referenciaの開発したプラットフォーム(25)を、メキシコが独自構築のシステムを利用している(26)。メタデータの収集は全て、OAI-PMHで行われている。
各機関から収集されたメタデータは各国ノード、中央ノードの両方でバリデートされ、必要に応じてメタデータの変換が行われる。各国と中央ノード双方から取得したデータをOpenAIREのバリデータにかけ有効なデータの割合を比較した調査では、おもに各国ノードにおける変換処理によってメタデータの品質が保たれていること、例えば特に違いが著しい3つの項目においては90%以上のデータに対して変換処理が行われていることなどがわかっている(27)。品質確保のためのデータ変換は事業開始当初から実施しているものであるが、現在は各機関リポジトリ単位でのメタデータの品質向上と各国ノードにおけるデータの変換処理の低減が課題として認識されている(28)。
メタデータの標準化を進めるにあたっては、他地域との連携が大きな力となっている。La ReferenciaはRedCLARAを通じてOpenAIRE 2020、具体的にはワークパッケージ3の“International Alignment”に協力しており(29)、このプログラムの中で欧州とラテンアメリカの地域間の相互運用性を確保するための活動を進めている。先述した、2012年に合意されたメタデータ項目はDRIVERに準拠した10項目程度であったが、2015年5月にはOpenAIREの協力のもとメタデータのガイドラインを改訂し、DRIVERの全項目実装を推奨した(30)。さらに、2015年11月にはブラジル・リオデジャネイロでワークショップを開催し(31)、この際にOpenAIREとガイドラインの共通化について合意、2016年12月からはOpenAIREのポータルサイトにてLa Referenciaのメタデータが検索可能となっている。また、La ReferenciaのメンバーはCOARの統制語彙を策定するvocabulary groupに参加しており、スペイン語のウェビナーの開催(32)などにも携わるなどしている。
今後のLa Referenciaの動きについては、2015年から2018年までを目途としたロードマップ(33)が公開されている。ガイドライン、技術、そして政策の3つの分野について実施すべき内容、例えば著者IDやプロジェクトID、データリポジトリについての記載のほか、資金提供者とその助成を受けた研究の成果との同定について欧州におけるネットワークと協力し実現可能性を探ることなどの記載があるが、全体としては欧州との協力のもとでメタデータの標準化や新しい課題へ対応していくという内容となっている。 先日、COARのブログにラテンアメリカのOA誌に関する記事(34)が公開され反響を呼んだが、他地域との関係を重視しつつ地域内、地域間の2つのレベルで取り組みを進めその可視性を高めるLa Referenciaの活動も同じく“A paragon for the rest of the world”(そのほかの地域のモデル)であるといえるだろう。今後、La Referenciaの活動がどのような展開を見せるのか、引き続き注視していきたい。
(1)VHL Regional Portal.
http://bvsalud.org/ [32], (accessed 2017-10-04).
(2)CLACSO.
http://www.clacso.org.ar/ [33], (accessed 2017-10-04).
(3)SciELO - Scientific Electronic Library Online.
http://www.scielo.br/ [34], (accessed 2017-10-04).
(4)RedALyC.
http://www.redalyc.org/home.oa [35], (accessed 2017-10-04).
(5)Directory of Open Access Journals.
https://doaj.org/ [36], (accessed 2017-10-04).
(6)村井友子. 特集 学術情報へのアクセス向上を目指して―機関リポジトリのいま―第II部 地域編: メキシコ―オープンアクセス化の動き. アジ研ワールド・トレンド. 2009, 162, p. 40-41.
http://hdl.handle.net/2344/00004806 [37], (参照 2017-10-04).
(7)佐々木茂子. 特集 学術情報へのアクセス向上を目指して―機関リポジトリのいま―第II部 地域編: ラテンアメリカ・カリブ地域―充実したオープンアクセス. アジ研ワールド・トレンド. 2009, 162, p. 38-39.
http://hdl.handle.net/2344/00004805 [38], (参照 2017-10-04).
(8)OpenDOAR.
https://doaj.org/ [36], (accessed 2017-10-04).
(9)ROAR(Registry of Open Access Repositories).
http://roar.eprints.org/ [39], (accessed 2017-10-04).
(10)村井. 前掲.
(11)La Referencia. “Edición Especial: América Latina pasa la primera página en Acceso Abierto”. La Referencia. 2013-01.
http://lareferenciaold.redclara.net/rfr/sites/default/files/edicion-especial-referencia.pdf [40], (accessed 2017-10-04).
(12)La Referencia.
http://www.lareferencia.info/joomla/en/ [41], (accessed 2017-10-04).
(13)“IDB - RG-T1684 : ESTRATEGIA Y MARCO REGIONAL PARA RED DE REPOSITORIOS DE DOCUMENTACIÓN CIENTÍFICA”. IDB.
http://www.iadb.org/es/proyectos/project-information-page,1303.html?id=rg-t1684 [42], (accessed 2017-10-04).
(14)“Edición Especial: América Latina pasa la primera página en Acceso Abierto”. La Referencia. 2013-01.
http://lareferenciaold.redclara.net/rfr/sites/default/files/edicion-especial-referencia.pdf [40], (accessed 2017-10-04).
(15)詳しい活動内容や報告書もウェブサイトに掲載されている。
“Documentos por Área”. La Referencia.
http://lareferencia.redclara.net/rfr/documentos-areas.html [43], (accessed 2017-10-04).
(16)Driver 2.0.
http://cordis.europa.eu/project/rcn/86426_en.html [44], (accessed 2017-10-04).
(17)収録の対象は逐次刊行物の記事、学位論文、テクニカルレポートとされている。
La Referencia Plan Piloto Componente III. “Acta acuerdo comité técnico.”. La Referencia.
http://lareferencia.redclara.net/rfr/sites/default/files/docs_publicos/aspectostecnicos.pdf [45], (accessed 2017-10-04).
(18)“ACUERDO DE COOPERACIÓN ENTRE ALTAS AUTORIDADES DE CIENCIA, TECNOLOGÍA E INNOVACIÓN DE AMÉRICA LATINA PARA LA CONSTITUCION DE LA REFERENCIA”. La Referencia.
http://www.lareferencia.info/joomla/es/recursos/documentos/acuerdos-politicos/2-acuerdo-de-cooperacion-regional-acta-de-buenos-aires-que-constituye-la-referencia-2012 [46], (accessed 2017-10-04).
(19)Cabezas, Alberto. “LA Referencia: Estrategias de Repositorios de Acceso Abierto en América Latina”. La Referencia. 2014-11-25.
http://lareferencia.redclara.net/rfr/content/la-referencia-estrategias-de-repositorios-de-acceso-abierto-en-america-latina-0.html [47], (accessed 2017-10-04).
(20)CHAIN-REDS Project.
http://www.chain-project.eu/ [48], (accessed 2017-10-04).
(21)Barbera, Roberto. “LA Referencia Open Access Document Repositories integrated in the CHAIN-REDS Knowledge Base”. CHAIN-REDS Project. 2013-12-06.
https://www.chain-project.eu/news/-/asset_publisher/Y0St/content/la-referencia-open-access-document-repositories-integrated-in-the-chain-reds-knowledge-base [49], (accessed 2017-10-04).
(22)La Referencia. “"3era Edición Especial "A los dos años de la Declaración de Buenos”. La Referencia. 2014-12.
http://lareferenciaold.redclara.net/rfr/sites/default/files/edicion-especial12.pdf [50], (accessed 2017-10-04).
(23)openAIRE.
https://www.openaire.eu/ [51], (accessed 2017-10-04).
(24)“Quienes Somos”. La Referencia.
http://www.lareferencia.info/joomla/es/institucional/quienes-somos [52], (accessed 2017-10-04).
(25)最新のVer.3.0について、導入したブラジルのIBICTの事例がOpen Repositories 2017 Conferenceで発表されている。
Carvalho-Segundo, Washington L. R. de; Matas, Lautaro; Cabezas, Alberto; Amaro, Bianca; Gomes, Gabriel. “The LA Referencia Software and the Brazilian Portal of Scientific Open Access Publications (oasisbr)”. La Referencia. 2017-06-29.
http://www.lareferencia.info/joomla/pt/recursos/documentos/presentaciones-y-folletos/63-presentacion-sobre-herramienta-de-busqueda-or2017 [53], (accessed 2017-10-04).
(26)現在の状況は以下に記載。
“Tecnología”. La Referencia.
http://www.lareferencia.info/joomla/es/servicios/tecnologia [54], (accessed 2017-10-04).
(27)Matas, Lautaro. “Diagnóstico tecnológico, validadores de directrices y plataforma regional.” La referencia. 2015-11-25,26.
http://lareferencia.redclara.net/rfr/sites/default/files/docs_publicos/tecnologia_diagnosticolareferencialmatas.pdf [55], (accessed 2017-10-04).
(28)Ibid.
(29)“WP3 - International Alignment”. OpenAIRE.
https://www.openaire.eu/wp3-international-alignment/ [56], (accessed 2017-10-04).
(30)“Metadatos y Políticas de Cosecha de LA Referencia”. La referencia. 2015-06-01.
http://lareferencia.redclara.net/rfr/sites/default/files/docs_publicos/politicadecosechalareferenciamayo2015final.pdf [57], (accessed 2017-10-04).
以下の資料では主な特徴と以前との違いがまとめられている。
“Síntesis Reglas de Metadatos LA Referencia”. La Referencia. 2015-06-08.
http://lareferencia.redclara.net/rfr/sites/default/files/docs_publicos/sintesis_reglas_de_metadatos_la_referencia.pdf [58], (accessed 2017-10-04).
“Guidelines Compatibility Overview”. La Referencia. 2015-06-08.
http://lareferencia.redclara.net/rfr/sites/default/files/docs_publicos/guidelinescompatibilityoverview_0.pdf [59], (accessed 2017-10-04).
(31)Cabezas, Alberto. “M3.2 Report: Promotional Workshop/Consultation for Latin-American region. 25 and 26 of November 2015”. COAR. 2015-12-15.
https://www.coar-repositories.org/files/LA-Referencia-Workshop-Report-Feb2016.pdf [60], (accessed 2017-10-04).
(32)“Webinar: Vocabularios Controlados para Repositorios: Objetivos y Avances del Grupo de Trabajo COAR (in Spanish)”. COAR.
https://www.coar-repositories.org/activities/webinar-and-discussion/previous-webinars/webinar-vocabularios-controlados-para-repositorios-objetivos-y-avances-del-grupo-de-trabajo-coar-in-spanish/ [61], (accessed 2017-10-04).
(33)Alberto Cabezas B. “D3.2 Report of current state and roadmap for implementation of guidelines in Latin America”. COAR. 2016-04-30.
https://www.openaire.eu/edocman?id=844&task=document.viewdoc [62], (accessed 2017-10-04).
(34)Alperin, Juan Pablo; Babini, Dominique; Chan, Leslie; Gray, Eve; Guédon, Jean-Claude; Joseph, Heather; Rodrigues, Eloy; Shearer, Kathleen; Vessuri, Hebe. “Open Access in Latin America: A paragon for the rest of the world”. COAR. 2015-08-17.
https://www.coar-repositories.org/news-media/open-access-in-latin-america-a-paragon-for-the-rest-of-the-world/ [63], (accessed 2017-10-04).
[受理:2017-11-10]
水野翔彦. ラテンアメリカのオープンアクセスとLa Referencia. カレントアウェアネス. 2017, (334), CA1910, p. 7-9.
http://current.ndl.go.jp/ca1910 [64]
DOI:
https://doi.org/10.11501/11007715 [65]
Mizuno Yasuhiko.
La Referencia and Open Access in Latin America.
PDFファイル [68]
関西館:上綱秀治(かみつなしゅうじ)
国立国会図書館(NDL)の「図書館向けデジタル化資料送信サービス」(図書館送信)は、NDLが収集・保存しているデジタル資料のうち、絶版等で入手困難な資料を全国の公共図書館、大学図書館等の参加館に送信するサービスである。2014年1月21日の図書館送信開始から3年以上が経過した。そこで、参加や利用に関する統計に基づき、2016年12月時点の状況について報告する。関連する基本的な統計等がNDLのウェブサイト(1)や、毎年刊行される電子出版制作・流通協議会の「電子図書館・電子書籍貸出サービス調査報告」(2)に掲載されているのであわせて参照いただきたい。
図書館送信の対象資料は「国立国会図書館デジタルコレクション」(デジコレ)に収録されている。デジコレは、資料を次の3つの公開範囲で提供しており、2.に該当する資料が図書館送信の対象となる。
デジコレで提供している資料は、図書館送信の開始当初(E1540 [69]参照)は約231万点だったが、2016年末時点では約262万点に増えている。資料の公開範囲の割合は当初とほぼ変わらず、約2割(約51万点)をインターネット上で、約5割(約143万点)を図書館送信で、約3割(約68万点)をNDL館内限定で提供している。資料種別の割合は、図書が約4割(約96万点)、雑誌が約5割(約127万点)で、これも当初とほぼ変わらない。2016年末時点に図書館送信で提供していた資料の資料種別の割合も概ね同じである。
2016年末時点の図書館送信参加館数は760館(3)で、内訳は、都道府県立図書館56館、政令指定都市立図書館83館、市区町村立図書館275館、大学図書館324館、その他(研究所、資料館、博物館、美術館等)22館となっている。
都道府県立 | 56 |
政令指定都市立 | 83 |
市区町村立 | 275 |
大学 | 324 |
その他 | 22 |
合計 | 760 |
都道府県立図書館は全ての都道府県が、政令指定都市立図書館は20市中18市が参加しており、最近では市区町村立図書館や大学図書館の参加が増えている。2016年の公共図書館数は約3,300館、大学図書館数は約1,700館とされている(4)ため、公共図書館の約1割が、大学図書館の約2割が参加していることになる。都道府県ごとに公共図書館の参加率を見ると、参加率が1割未満の都道府県が約20あった(図1)。電子出版制作・流通協議会のアンケート(5)によれば、現在のところ参加を考えていない図書館が約5割を占めており、参加を阻む要因として、端末設置スペースがない、セキュリティやネットワークを確保できないなどの施設や機器の課題が挙げられている。また、参加率が4割を超える神奈川県、滋賀県、大阪府の参加状況を確認したところ、主に府県内の市立図書館が同時期にまとまって参加していることがわかった。
参加館では、資料の閲覧または閲覧・複写が可能で、参加館のうち約1割は閲覧サービスのみを提供している。2016年の1年間の統計では、全参加館で合計すると、1日平均約470点の閲覧、約230点の複写が行われている。サービス開始1か月後の統計(約150点の閲覧、約60点の複写)と比較すると、閲覧は約3倍、複写は約4倍に増えている。
図書館送信の開始当初と同様に、利用が多い図書館と少ない図書館の差は大きい。2016年の統計で最も閲覧と複写の合計数(利用点数)が多かったのは京都市右京中央図書館(7)(CA1912 [70]参照)で、1日平均約15点の閲覧、約4点の複写が行われている一方、閲覧・複写ともに全く利用がない図書館もある。なお、2016年に全く利用がなかった図書館を調査したところ、複数の図書館が同時期に参加した地方公共団体(8)の、その一部の図書館であるケースが多いことがわかった。
約3年間の利用点数を館種で比較すると、1館あたりの1か月間の平均利用点数は、都道府県立図書館が際立って多く、残りは概ね、政令指定都市立図書館、国立大学図書館、その他、市区町村立図書館、私立大学図書館、公立大学図書館の順となっており、主に図書館の規模が関係していると推察される(図2)(9)。一方で、1か月間の利用点数全体に占める館種別合計の割合を比較すると、都道府県立図書館と市区町村立図書館の差は大きくない(図3)。市区町村立図書館の参加館数が多いため、図書館送信利用全体の4分の1を占める結果となっていると推察される。
約3年間の利用状況を資料種別ごとに算出すると、閲覧については図書が40%、雑誌が58%、複写については図書が45%、雑誌が52%を占めており、図書館送信で提供している資料の割合(図書35%、雑誌55%)と概ね一致している。
利用された資料の主題を調べると、図書は歴史・地理、文学、社会科学、芸術に関する資料が多く、言語、自然科学、総記に関する資料が少ない傾向がみられた。また、雑誌は科学技術・工学、芸術、社会・労働に関する資料が多い傾向がみられた。
なお、一部の参加館の統計から、参加館ではインターネット公開資料も多く閲覧されていることがわかった。これは、図書館送信の初期設定では、図書館送信資料のみでなく、インターネット公開資料も検索・閲覧可能となっているためと考えられる。
電子出版制作・流通協議会のアンケート(10)によれば、図書館送信を導入した図書館の多くが「より多くの資料を提供できるようになった」(77.0%)、「利用者のニーズに即した資料をより適切に提供できるようになった」(73.8%)、「より迅速に資料を提供できるようになった」(57.4%)ことを導入の利点として挙げている。また、アンケートの自由記入欄では、レファレンスツールとしての有効性を挙げている図書館が多い。これらの利点の一部は、デジコレでは目次も検索対象である効果が発揮されているものと推察される。
導入して感じる課題としては「利用が少ない」(45.1%)、「複写物の提供に係る判断が難しい」(32.8%)、「運用・管理が煩雑である」(32.0%)、「設備や要員に係る負担が大きい」(19.7%)などが挙げられている。利用環境に関する課題に加え、「利用が少ない」という悩みに対して、参加館とNDLが協力して対応する必要があることがわかる。
NDLでは、提供資料数の拡大に加え、図書館送信に関するポスターやちらしの作成・配付、図書館員向け研修の実施などを通じて、参加館の拡大や利用促進に努めているが、今回の調査により、さらに積極的な取り組みが必要であることがわかった。今後もより一層努力していきたい。
今号では、上記で紹介した2016年に利用点数が最も多かった京都市右京中央図書館と、デジコレの書誌情報を自館のOPACに取り込んで提供している静岡大学附属図書館(CA1913 [71]参照)の事例報告を執筆いただいた。これらの参加館での取り組み事例が、参加館における利用促進や非参加館における参加検討の参考になれば幸いである。
(1) 田中譲. “図書館送信の利用状況について”. 国立国会図書館.
http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/digitization/about_riyo.pdf [72], (参照 2017-08-21).
本文中の統計値の多くは、この文献による。
(2)たとえば、2016年版の書誌情報は次のとおりである。
植村八潮, 野口武悟, 電子出版制作・流通協議会. 電子図書館・電子書籍貸出サービス調査報告2016. 電子出版制作・流通協議会, 2016, 134p.
(3)2017年10月末時点では856館。
(4)日本図書館協会図書館調査事業委員会. 日本の図書館: 統計と名簿. 日本図書館協会, 2017, p. 20, 231.
(5)植村八潮, 野口武悟, 電子出版制作・流通協議会. 前掲. p. 32-33, 45-46.
(6)地図の作成にはCraftMAP(http://www.craftmap.box-i.net/ [73])を使用した。参加率は、各都道府県の参加館数を、『日本の図書館: 統計と名簿』の2016年版の20ページに掲載されている都道府県別の図書館数で割ったものである。
(7)閲覧は1位、複写は大阪府立中之島図書館、島根県立図書館に次いで3位だった。
(8)上記の参加率が4割を超える3府県と一部重複するが同じではない。
(9)「その他」が多いのは、研究所等の文献需要の高い利用者が多い機関が含まれているためと推察される。
(10)植村八潮, 野口武悟, 電子出版制作・流通協議会. 前掲. p. 46-49.
[受理:2017-10-27]
上綱秀治. 図書館向けデジタル化資料送信サービスの統計に見る開始から3年の状況. カレントアウェアネス. 2017, (334), CA1911, p. 11-13.
http://current.ndl.go.jp/ca1911 [74]
DOI:
https://doi.org/10.11501/11007716 [75]
Kamitsuna Shuji.
Statistical View of the NDL Digitized Contents Transmission Service for Libraries Three Years after its Launch.
PDFファイル [83]
京都市右京中央図書館:谷内のり子(たにうちのりこ)
本稿では、京都市右京中央図書館における国立国会図書館(NDL)の図書館向けデジタル化資料送信サービス(以下、図書館送信)の実施状況について述べる。
京都市右京中央図書館は、京都市の西南部に位置し、2008年6月に右京区総合庁舎の3階に右京図書館を拡大移転して開館した。図書館の専有面積は、京都市図書館20館の中で最大となる約3,000平方メートルであり、一日の平均来館者数は約2,200人、貸出冊数は約4,500冊、一か月当たりの新規登録者数は約410人と、京都市図書館の中ではいずれも最多である(1)。利用者は、右京区民だけでなく広く京都市全域から来館し、また「学生の街」と呼ばれる京都らしく、市内の大学等に通学している学生の利用者も多い。
現在、約28万冊の蔵書のうち、約4万2,000冊の郷土資料、約4万冊の参考資料を所蔵し、調査・研究のためのインターネット席17席、オンラインデータベース席4席、映像視聴ブース6席を設けている。当館は京都市図書館の中でも蔵書数が2番目に多く(2)、インターネットやデータベース等のデジタル情報にも対応するなど、他の京都市図書館に比べ、ハード面が充実している。また、当館の4つのコンセプト(3)の一つに、京都に関する資料を集中的に収集する「京都大百科事典的図書館」を掲げ、京都市図書館全20館のレファレンス統括機能も併せ持っている。
当館がNDLの図書館送信の提供を開始したのは、2014年2月のことである。複写サービスは2015年4月から開始した。当館では、図書館送信をオンラインデータベース席4席のうち、2席で提供している。
利用受付はレファレンスデスクで行っており、受付状況を見ると、固定の利用層だけでなく、常に新たな利用者もいる。ニーズの高い資料は、公共図書館での所蔵が難しい専門書、専門雑誌、研究書、雑誌のバックナンバー、全国の地域史資料などである。また、レファレンス・インタビューの中で、学生の課題研究や個人的な調査・研究、グループ研究を目的に利用されていることがわかった。その多くの利用者は図書館送信が利用できることを知らずに来館しており、担当者がレファレンスの過程で図書館送信を紹介し、複写サービスについても案内している。その結果か、図書館送信の利用者の8割が閲覧だけでなく資料の複写も行っている(4)。
当館では、利用者への図書館送信の周知を目的とした特徴的な取組みを行っているわけではないが、図書館送信の利用数が多いのは、以下の要因によると考える。
第一に、当館の利用しやすい立地が挙げられる。当館は、京都市営地下鉄東西線と京福電鉄嵐山線の駅、及び路線バスのターミナルが隣接しているため、交通の便が良く、京都市内外からアクセスしやすい。また、図書館の明るい入口に加え、ワンフロアの見渡しやすい構造により、目的の場所に辿り着きやすく、リピーターとして頻繁に来る利用者が多い。
第二に、「図書館利用ガイド」への掲載である。当館では、資料の探し方や使い方を紹介する「図書館利用ガイド」を定期的に発行しているが、昨年度は「使ってみよう!国立国会図書館デジタルコレクション」というテーマで作成した(5)。A4両面カラーで、利用方法などを簡潔にわかりやすくまとめており、多くの利用者に持ち帰ってもらった(6)。
また、図書館送信サービス開始後、当館が毎月発行する図書館だより『U.C.Lib通信』においても紹介し、2015年4月に複写サービスを追加した際にも再度取り上げた(7)。その他、京都市図書館のウェブサイトの「電子メディア」のコンテンツ(8)に、NDLの図書館送信の情報を掲載している。加えて、自宅等で国立国会図書館デジタルコレクション(以下、デジコレ)を閲覧した際に、当館が図書館送信に参加していることを知り、来館していると思われるケースもある。
第三に、京都市図書館全館への周知である。当館は、京都市図書館唯一の、図書館送信参加館である。毎年実施している京都市図書館全館を対象としたレファレンス担当者研修会において、有用なレファレンスツールの一つとして、デジコレの使い方と実例に基づいた研修を行ってきた。また、前掲の当館作成の図書館利用ガイドを毎年レファレンス担当者に配布し、各館におけるレファレンスで活用できるよう情報提供している。これにより、京都市図書館全館において、当館で利用可能な図書館送信の利用・複写サービスの案内ができる体制にある。
京都市において、最初に設置された図書館は、1981年に開館した京都市中央図書館であり(9)、政令指定都市の中でも図書館の歴史は浅い方である。そのため、開館以前に刊行された資料をほとんど所蔵しておらず、絶版になった資料も閲覧できる図書館送信に助けられる部分が大きい。
デジコレの目次情報はインターネット公開もされており大変有用だが、レファレンスにおいて、やはり本文を閲覧できることで回答の幅が広がり、取り寄せ等の手続きが不要なため、早く回答できる。最近の例では、「京都府下の公共、大学図書館に未所蔵の、とある雑誌の中身をどの号でもいいから見てみたい。」という質問があった。デジコレの目次情報だけでは詳細がわからなかったが、図書館送信の収録資料より本文を閲覧してもらうことができた。
また、当館所蔵資料を案内したものの、資料が複写に耐えられる状態でない場合、これまでは複写を謝絶していたが、今では図書館送信に同じものがあれば、そちらをプリントアウトすることで対応が可能となっている。
さらに、京都市以外の地域からも寄せられる電子メールによるレファレンスにおいては、質問者の居住地の図書館が図書館送信参加館かつ、当館で紹介した資料が配信されていれば先方で入手できるため、必ず導入状況を確認し利用者に案内している。
レファレンスにおける調査過程において、図書館送信は7割ほど参照しており、その内3割ほどでは回答として提示している。今や当館では、図書館送信は外すことのできないレファレンスツールの一つとなっている。
当館で図書館送信を利用可能な端末は2台であるが、図書館送信専用ではなく、オンラインデータベースと兼用のため、オンラインデータベースが利用中の場合、図書館送信を利用することができない。また、3人以上利用希望が重なる場合もまれにある。今後、利用が重なる場合、オンラインデータベース利用者には、他の専用端末に移動してもらうことや、一回あたりの利用時間(現在1時間まで)を短くすることも検討する必要がある。
他にも、複写枚数が多い場合は、枚数の確認や著作権の範囲内であるかどうかの確認作業に時間を要する。特に利用者の多い土日は、レファレンス対応と資料の確認作業との両立に苦慮しているところである。
前述のとおり、当館は京都市図書館のレファレンスの統括機能を担っている。カウンター以外でも、京都に関する質問の電子メールや京都市の他の19館から寄せられるレファレンスの回答、支援も行っており、利用件数も年々増加している。
また、最近は利用者から寄せられる質問が複雑、かつ回答に求められるレベルが高くなっていることも実感するところである。
今後、レファレンスの量及び求められる質も高くなると考えられるが、引き続き図書館送信を積極的に活用し、利用者の要望に最大限に応えるレファレンスサービスを心がけたい。
(1)“平成29年度京都市図書館統計概要”. 京都市図書館.
http://www2.kyotocitylib.jp/?action=common_download_main&upload_id=15065 [84], (参照 2017-10-20).
(2) “平成29年度京都市図書館統計概要”. 京都市図書館.
http://www2.kyotocitylib.jp/?action=common_download_main&upload_id=15065 [84], (参照 2017-10-20).
(3)京都市右京中央図書館の4つのコンセプトは、以下の通りである。
(4)2017年度の8月末時点で、複写受付件数は80件、複写枚数は、3,474枚である。
(5)“図書館利用ガイド”. 京都市図書館.
http://www2.kyotocitylib.jp/?page_id=336 [86], (参照2017-10-20).
(6)2017年8月末時点での配布枚数は、約300枚である。
(7)“U.C.Lib通信バックナンバー”. 京都市図書館.
http://www2.kyotocitylib.jp/?page_id=519 [87], (参照2017-10-20).
(8)“ 国立国会図書館デジタル化資料送信サービスの利用案内”. 京都市図書館.
http://www2.kyotocitylib.jp/?page_id=18#degitaru1 [88], (参照 2017-10-20).
(9)“京都市図書館のあゆみ(年表)”. 京都市図書館.
http://www2.kyotocitylib.jp/?action=common_download_main&upload_id=11110 [89], (参照2017-10-20).
[受理:2017-11-06]
谷内のり子. 図書館向けデジタル化資料送信サービスの利用状況-京都市右京中央図書館の事例-. カレントアウェアネス. 2017, (334), CA1912, p. 14-16.
http://current.ndl.go.jp/ca1912 [70]
DOI:
https://doi.org/10.11501/11007717 [90]
Taniuchi Noriko.
Utilization Situation of National Diet Library Digital Collections Only Partner Libraries - The Case of Utilization in Ukyo Central Library -.
PDFファイル [94]
静岡大学附属図書館:杉山智章(すぎやまともあき)
静岡大学附属図書館:中川恵理子(なかがわえりこ)
静岡大学附属図書館(以下、当館)では2015年10月1日から国立国会図書館(NDL)の図書館向けデジタル化資料送信サービス(以下、「図書館送信」)を導入し、閲覧および複写サービスを利用者に提供している。
本稿では、当館における「図書館送信」の利用促進について、主に静岡大学附属図書館OPAC(1)(以下、OPAC)の利便性向上の取り組みを中心に述べたい。
「図書館送信」導入時の広報は、当館ウェブサイトに利用案内ページ(2)を作成し、トップページへのお知らせ掲載を行った。また図1のようなポスターを館内外に掲示し、ちらしを配布した。さらに全教員宛てに、ちらしのファイルを電子メールで送信した。
導入から数か月は、利用申し込みはほとんどなく、レファレンスカウンターでの文献所在調査によって、「図書館送信」に収録されていることが判明した際に、利用者に案内していた。日本語資料の検索について、当館では利用者に国立情報学研究所(NII)が提供しているCiNii(3)を中心に案内しており、多くの利用者にとって「国立国会図書館デジタルコレクション」(以下、「デジコレ」)を利用する機会がなかった(4)。しかし、利用者からの学外へのILL文献複写・相互貸借申し込みの中に、依頼前の所蔵調査の段階で「図書館送信」収録コンテンツがあることがわかるケースが見受けられるようになり、ナビゲーションを改善する必要性が高まっていた。
当館では、いわゆるディスカバリーサービス(CA1772 [95]参照)は未導入であり、利用者に提供している学内資料検索の手段はOPACのみである。利用者には、ILL文献複写・相互貸借申し込み前には必ずOPACを確認するよう案内している。なお、OPACでは所蔵資料の他にも、契約中またはオープンアクセスの電子ジャーナル・電子ブックを検索できるようにしている。
そのため、OPACとは別に「デジコレ」を検索することを利用者に案内するよりも、両者をまとめて検索できるようにしたほうがより効果的であると考え、「デジコレ」収録コンテンツのうち「図書館送信」資料と「インターネット公開」資料を、OPACで電子ジャーナル・電子ブックとして検索できるようにすることにした。
本学が採用している図書館業務システムでは、電子ジャーナルはcsvファイル、電子ブックはCATP形式(5)で、書誌の一括登録・削除が可能である。「デジコレ」についても、この機能を利用して、書誌情報の管理を行うことにした。
「デジコレ」の書誌情報は、NDLが公開しているデータセット(6)を使用した。このうち、「インターネット公開」資料と「図書館送信」資料の図書および古典籍(以下、図書)、雑誌を取り込み対象とした。
雑誌は図書に比べて対象書誌が少なく、システム上取り込みも簡単であるため、2016年3月に「デジコレ」の雑誌の新規登録を行った。登録件数は1万939件で、処理には約1時間かかった。
図書の対象書誌は約95万件と大量であったため、2017年2月の図書館業務システム更新の仕様書に「デジコレ」書誌情報のOPAC取り込みについて記載し、業者側で実施した。取り込みに使用するデータとして、データセットを当館で表のとおりCATP形式に変換したものを業者に提供した。
CATP項目 | 内容 |
TRD | タイトル.△巻次△/△著者 |
ED | 版表示 |
PUBL | 出版者 |
PUBDT | 出版年 |
PTBTR | シリーズ |
NOTE | 公開範囲△:△“図書” もしくは “古典” |
原本の形態:△冊数(ページ数・大きさ) | |
ISBN | ISBN |
IDENT | URL |
なお、本学の図書館業務システムは、アクセス先を記述するIDENTの表記についてカスタマイズをして、ローカル定義項目を設けており、指定のフォーマットで記述することで、利用条件等をOPAC上に表示することができる。
この機能を利用して、利用者がOPACの検索結果一覧および詳細画面から「デジコレ」の利用条件を確認できるよう、業者が取り込んだ書誌の当該ローカル定義項目のメンテナンスを、2017年4月までに行った(7)。これにより、図2のようにOPAC検索結果に、「インターネット公開」資料は「国立国会図書館デジタルコレクション フリー」、「図書館送信」資料は「国立国会図書館デジタルコレクション(静岡本館レファレンスカウンター・浜松分館カウンターへ[平日9:00-12:30, 13:30-17:00] )」と表示され、クリックすると該当するコンテンツのページに遷移できるようになった。
包括的な書誌情報の取り込みはシステム更新時に完了したが、今後も「デジコレ」で新たに公開される資料や公開範囲が変更される資料があるため、定期的にOPACの書誌情報のメンテナンスを行う必要がある。
当館では、OPACに登録している電子ジャーナル・電子ブック書誌のメンテナンスを毎年1回行っているが、今後は「デジコレ」書誌情報についても同じ時期に更新していく予定である。
図書はURLをキーにして、OPACに登録されている書誌情報と最新データセットとの差分を抽出し、新規登録・削除を行う。また、URLと公開範囲をキーにして、「インターネット公開」と「図書館送信」の間で公開範囲が変更になった資料についても抽出し、更新を行う。
一方、雑誌は収録年に変更のある可能性があるため、OPACに登録されている書誌情報を一旦すべて削除し、最新のデータセットから作成した書誌情報を再登録する。
上記の方法で、2017年3月、システム更新後に初めて「デジコレ」書誌情報のアップデートを行った(8)。図書は新規登録5万3,528件、公開範囲の修正1,507件、削除1,095件(9)で、処理に約28時間かかった。雑誌の再登録は1万1,055件で、約1時間かかった。
OPACに「デジコレ」の書誌情報の取り込みを行って最初に現れた効果は、図2の画面についてカウンターへの問い合わせが多くなったことがあげられる。利用者はウェブサイトやちらしの利用案内を読まずに、カウンター対応で利用方法を知る場合がほとんどである。つまり、OPACで検索できなければ、利用者はこれらの資料を知る機会がなかったことになり、取り込みの効果は大きいといえる。
図3の月別利用統計では、2017年4月から8月の合計は閲覧73件(10)、複写115件で、昨年同時期(2016年4月から8月)の閲覧12件、複写42件に比べて閲覧は6.1倍、複写は2.7倍に増加した。図書の取り込み以降の閲覧の増加が顕著である。とくに、2017年8月は学生の休暇期間のため、2016年8月の閲覧は0件であったのに対し、2017年8月は17件であった。例年10月以降の後学期は、卒業論文等の執筆のため図書館利用が多くなるので、「図書館送信」の利用もさらなる増加が見込まれる。
なお、OPACは静岡県立中央図書館が提供する県内図書館横断検索システム「おうだんくんサーチ」(11)にも参加しており、電子ジャーナル・電子ブックも検索対象としている。また、当館では「おうだんくんサーチ」を用いたILLシステムで、県内の公共図書館と相互貸借を行っている。取り込み後には、それまでほとんどなかった電子ブックへの誤った貸借依頼が見受けられるようになった。その都度、デジタル化資料であることを説明して依頼を謝絶しているが、「図書館送信」への潜在的なニーズの高さがうかがえる。
3.4.で述べたとおり、OPACに取り込んだ「デジコレ」書誌情報のメンテナンスに時間がかかることが課題である。
また、2017年3月に行ったメンテナンスでは、図書の新規登録が5万件以上あった。今後は毎年1回のアップデートを予定しているが、OPACの「デジコレ」書誌情報と実際に「デジコレ」で利用できるコンテンツとの差異がアップデート直前は大きくなることが予想される。
これらの課題を解決する方法として、NDLのOAI-PMH(12)提供サービスを利用することが考えられる。2017年5月より、OAI-PMHで「デジコレ」のデータを取得する際に資料種別や公開範囲を指定することが可能になったため(13)、今後はOAI-PMHを利用してOPACの「デジコレ」書誌情報を機械的に最新の状態に維持できるよう検討を進めている。
また、「デジコレ」に収録されている博士論文は、それまでILLの依頼があまりなかったため一旦は取り込みを見送ったが、OPACで検索できることで利用促進が期待されるため、今後の取り込みを検討していきたい。
(1)“静岡大学附属図書館OPAC”. 静岡大学附属図書館.
http://www.lib.shizuoka.ac.jp/opac/ [96], (参照 2017-09-28).
(2)“国立国会図書館 図書館向けデジタル化資料送信サービス”. 静岡大学附属図書館.
http://www.lib.shizuoka.ac.jp/denshi/?ndldigi [97], (参照 2017-09-28).
(3)CiNii.
http://ci.nii.ac.jp/ [98], (参照 2017-09-28).
(4)学内の学生向け『図書館利用のてびき』を毎年作成しているが、2017年度版から「デジコレ」の案内を加えた。
“Library Navigator 図書館利用のてびき 2017”. 静岡大学附属図書館.
http://hdl.handle.net/10297/10017 [99], (参照 2017-09-28).
(5)CATP(Cataloging information Access & Transfer Protocol)とは、NIIの新目録所在情報システムにおけるクライアントとサーバ間のメッセージ交換方式を規定するプロトコルである。国内の大学・研究機関の図書館業務システムは、標準的でCATP形式での書誌の取り込みに対応している。
(6)“オープンデータセット”. 国立国会図書館.
http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/standards/opendataset.html [100], (参照 2017-09-28).
(7)業者側での「デジコレ」書誌情報取り込みの際、本学のカスタマイズ項目を同時に取り込むことができなかったため、システム更新後に当館で別途メンテナンスを行った。
(8)システム更新時には、当時最新であった2016年7月時点のデータセットを使用したが、3月のメンテナンスでは2017年1月時点のデータセットの内容に更新した。
(9)削除対象には「デジコレ」での公開が終了したもののほか、公開範囲が国立国会図書館内のみに変更になったものも含む。
(10)閲覧は1回の利用(原則として1時間以内)を1件として集計しているので、資料件数とは異なる。
(11)“おうだんくんサーチ”. 静岡県立中央図書館.
http://mets.elib.gprime.jp/oudankun-search_pref_shizuoka/ [101], (参照 2017-09-28).
(12)OAI-PMHとは、データの自動収集によってメタデータを交換するためのプロトコルである。
“国立国会図書館サーチが提供するOAI-PMH”. 国立国会図書館サーチ.
http://iss.ndl.go.jp/information/api/oai-pmh_info/ [102], (参照2017-09-28).
(13)“OAI-PMHのサービス再開及び機能追加のお知らせ”.国立国会図書館サーチ.
http://iss.ndl.go.jp/information/2017/05/15_announce-3/ [103], (参照2017-09-28).
[受理:2017-11-07]
杉山智章, 中川恵理子. 図書館向けデジタル化資料送信サービスの利用促進の取り組み―静岡大学附属図書館の事例―. カレントアウェアネス. 2017, (334), CA1913, p. 17-19.
http://current.ndl.go.jp/ca1913 [71]
DOI:
https://doi.org/10.11501/11007718 [104]
Sugiyama Tomoaki, Nakagawa Eriko.
Promotion of the Use of Digitized Contents Transmission Service for Libraries: The Case of Shizuoka University Library.
調査及び立法考査局調査企画課連携協力室:福林靖博(ふくばやしやすひろ)
ベトナム社会主義共和国は、1980年代のドイモイ政策以降、急速な経済成長を遂げてきた。それに伴い社会情勢が変化する中で、発展に見合った政治や行政の体制整備が必要となり、1992年に憲法の大幅な改正が行われた。改正後の憲法の規定では、国民の代表機関である国会の権限が強化されており、それに伴い国会議員の活動を補佐する国会事務局の能力向上が急務とされた(1)。
こうした背景のもとで、ベトナム政府からの日本政府に対する要請を受けて、2014年1月から独立行政法人国際協力機構(JICA)が「国会事務局能力向上プロジェクト」を開始した。プロジェクトの支援対象はベトナム国会事務局であり、ベトナム国会図書館(NALV)はその一部門である(後述)。国立国会図書館(NDL)は、衆議院法制局及び衆議院事務局とともに協力機関としてプロジェクトに参画することとなった。当初2017年1月までの3年の予定であった本プロジェクトは、途中延長を経て、2017年9月まで約3年8か月実施された(プロジェクトフェーズ1)。また、2017年10月以降はフェーズ2としてプロジェクトを継続中である。
本稿では、フェーズ1においてNDLが取り組んだNALVへの支援を中心に紹介する(2)。
2014年 1月 | 「国会事務局能力向上プロジェクト」開始 |
2014年 8月 | 第1回 国会事務局能力向上研修(国立国会図書館) |
2014年10月 | 「ベトナム国会図書館能力向上のための戦略プログラム」策定支援(ベトナム) |
2014年12月 | ベトナム国会図書館の新閲覧室開室支援等(ベトナム) |
2015年 7月 | 予測調査等に係るセミナー、訪日研修の内容に関する協議等(ベトナム) |
2015年 8月 | 第2回 国会事務局能力向上研修(国立国会図書館) |
2015年10月 | 国会議事堂内閲覧室開所式出席、訪日研修の内容に関する協議等(ベトナム) |
2015年12月 | 第3回 国会事務局能力向上研修(国立国会図書館) |
2016年 6月 | ベトナム国会図書館新館建設に係るセミナー(ベトナム) |
2016年 8月 | 第4回 国会事務局能力向上研修(国立国会図書館) |
2016年12月 | 第5回 国会事務局能力向上研修(国立国会図書館) |
2017年 1月 | プロジェクトを2017年9月末まで延長 |
2017年9月 | プロジェクト第1フェーズ総括セミナー(ベトナム) |
2017年10月 | 「国会事務局能力向上プロジェクト第2フェーズ」開始 |
JICAによるベトナム国会への支援は1990年代から行われているが、プロジェクトの直接的な前史としては、2010年から3年にわたって行われた「ベトナム国会能力向上研修」や、憲法改正に際しての法律家の派遣が挙げられる(3)。
これら事業成果の蓄積の上に計画された本プロジェクトでは、JICAがアドバイザリーグループ(4)からの助言を仰ぎつつ、専門家の派遣、研修員の受入れ、機材供与等の支援事業を行ってきた。この中で、衆議院法制局及び衆議院事務局はベトナム国会事務局の主に総務局・法律局・情報局に対する支援(5)を、NDLはNALVへの支援をそれぞれ担当した。
なお、NDLをモデルとしてNALVの整備を進めることは、2011年に「ベトナム国会能力向上研修」の一環でNDLを訪問したグエン・シ・ズン国会事務局次長(当時)が主導して決定したものである。NALVの担当者によれば、さまざまな国の議会図書館を研究した結果、NDLの調査業務が同館の目指すものに最も近かったことがその理由、とのことである。
ベトナム憲法において、国会は人民を代表する最高機関であるとともに、国権の最高機関、憲法制定権及び立法権を持つ唯一の機関並びに国家の全ての活動に対する最高監督権を持つ機関と位置付けられている。
1993年に創設された「情報・図書館・調査サービスセンター」を前身とし、2014年1月に設置されたNALVは、ベトナム国会の運営を担う国会事務局の一部門として、資料の収集・整理・保存、国会常務委員会・民族評議会(6)・国会の各委員会・国会議員の要望に基づく情報提供や調査サービス等を実施している(7)。主な業務は、(1)国政課題に係る調査レポートの執筆、(2)国会議員等からの依頼に基づく調査、(3)シンポジウムやセミナーの開催、(4)中規模・大規模の世論調査、(5)ウェブサイトに寄せられた法案に対する意見の取りまとめ等である。2017年9月現在の定員は18人、所蔵資料は約5万3,000冊である。施設としては、国会事務局の事務棟にある閲覧室に加え、2015年10月にJICAの支援を受けて国会議事堂内に設立された閲覧室があるほか、国会議員及び一般市民の利用を想定した新たな「本館」の建設準備を、2020年末の完工を目指して進めている(8)。
NALVの担当者によれば、国会機能の強化とともに国会議員からの情報サービスへのニーズが高まっている一方で、2014年に立ち上がったばかりのNALVの予算・人員は不十分であると感じているとのことであった。
そのような状況を踏まえ、本プロジェクト開始の時点で、NALVからNDLに対して支援の要請があったのは、(1)発展戦略計画やサービス・蔵書構築方針策定の支援、(2)調査・図書館サービスの向上のための研修等の実施、(3)(2)の研修等の実施のための施設整備・システム構築に係る助言、などの事項である。
NDLは、国会法に基づき設置され、国立国会図書館法により国会議員に対するサービス(国会サービス)を第一義的任務としている。その国会サービスの柱は、国会(両議院・委員会・議員)に対する立法調査業務であり、この業務には、国政課題について、国会議員等からの依頼に基づいて行う調査(依頼調査)と、依頼を予測して独自に行う調査(予測調査)の2つがある。NDLの調査及び立法考査局内には、衆参両議院の常任委員会の構成などを考慮して、調査を担当する調査室・課が設置されており、同業務を遂行している。依頼調査には、審議中の法律案その他の議案・案件の分析・評価等にとどまらず、中長期的な国政課題に関する調査、外国の立法・制度・政策に関する調査、過去に遡る制度・政策の経緯等が含まれる。予測調査は、将来国会において審議されることが予測される国政課題について調査員が調査研究の成果を論文等の形で取りまとめるものであり、その成果は『レファレンス』『調査と情報―ISSUE BRIEF―』『外国の立法―立法情報・翻訳・解説』等の刊行物として国会議員に提供されている(これらはNDLウェブサイトでも公開されている)(9)。これらのサービスを提供するなかで蓄積されたノウハウをNALVに伝えるのが、本プロジェクトの根幹である。
前項で紹介したNALVの要請を受け、プロジェクトの中でNDLが最初に取り組んだのが「ベトナム国会図書館戦略・能力開発計画」の策定支援である。この計画は、NALVの担うべき機能や役割を再定義するとともに、2016年までの具体的な目標や実現のためのステップを定めたもので、調査能力の向上、運営管理機能の強化、人材育成、ウェブサイトの整備、国際交流活動への参画など多岐にわたる。NALVが作成した素案にNDLがコメントを付すというやりとりを幾度か重ね、計画の策定に協力した。
計画策定支援と並行して取り組んだのが、サービスの向上のための研修の実施である。こちらは主に、NALV職員が訪日して研修を受講する形式で行った。最初に、幹部クラスの職員を対象とした座学中心のプログラムを2014年8月と2015年8月の2回にわたり実施した。内容は、NDLが行う調査業務の基礎だけでなく、組織運営、資料整備、国会議員向けの広報、国会議事堂内での図書館サービス(国会分館)など、議会図書館のサービスについて多岐にわたるものであった。
訪日研修3回目以降は、調査サービスに関する実習を中心とした、実務担当者向けの調査業務研修を行った。2015年12月、2016年8月・12月の3回にわたり、各回2名の研修員に対して毎回約2週間の研修プログラムを実施した。プログラムの柱は、各調査室・課が担当する「依頼調査実習」と、特定のテーマについて双方で発表・意見交換を行う「共同政策セミナー」である。
「依頼調査実習」では、研修員はオリエンテーションや、その分野でよく使用するデータベース・ウェブサイトなどの説明を受けた後、研修用に特別に準備した演習問題に取り組む。演習問題は、データベースを検索して資料を準備する基礎的な課題から、複数のデータベースや資料を駆使して回答をまとめ、実習の仕上げとして、ロールプレイ形式で回答内容を議員役の職員に説明する応用的な課題(模擬レクチャー)へと段階的に難易度が上がっていく構成とした(使用言語は英語)。この研修では、調査の焦点を絞るための依頼者へのインタビューの進め方や資料の批判的な読み込み方、回答のまとめ方、レクチャーのコツなど、様々な実践的なスキルを伝えた。
「共同政策セミナー」は、NDLの調査員が特定の国政課題について執筆したレポートに沿って国会議員や議員秘書、国会事務局職員に対してセミナー形式で解説する「政策セミナー」と同様の発表を、研修員が模擬的に行う研修である。「共同政策セミナー」では、両者で事前に取り決めたテーマに沿って、日本側・ベトナム側がそれぞれ30分程度のプレゼンテーションを行い、その後に1時間程度の討議を行う(発表及び討議はそれぞれの母国語で行い、逐語通訳がつく。)。この研修では、発表内容について質疑応答及び情報交換を行うだけでなく、聴講したNDLの調査員から発表資料の構成やプレゼンテーション方法といった技術的なアドバイスも行った。
回数 | 開催時期 | 合計日数 | NALVの 参加者 |
主な研修内容 |
第1回 | 2014年8月 | 4日間 | 3名(館長を含む) | 講義(資料整備、図書館設備、組織運営、広報) |
第2回 | 2015年8月 | 5日間 | 2名(館長代行を含む) | 講義(予測調査、資料整備、データベース、資料デジタル化、情報提供)、閲覧室運営実習、外部機関見学 |
第3回 | 2015年12月 | 10日間 | 2名 | 依頼調査実習(行政法務課・社会労働課)、共同政策セミナー(「TPP加盟交渉」・「農業製品の流通」)、外部機関見学、業務交流 |
第4回 | 2016年8月 | 10日間 | 2名(課長を含む) | 依頼調査実習(政治議会課・財政金融課)、共同政策セミナー(「情報アクセス権」・「教育課程・教科書制度」)、外部機関見学、業務交流 |
第5回 | 2016年12月 | 9日間 | 2名(課長を含む) | 依頼調査実習(国土交通課・外交防衛課)、共同政策セミナー(「社会労働人口」・「憲法をめぐる動向」) |
1週目 | 2週目 | ||
8月15日(月) | オリエンテーション | 8月22日(月) | 依頼調査実習(財政金融課) |
見学(国会・国立国会図書館) | |||
8月16日(火) | 講義:調査業務の概要 | 8月23日(火) | 依頼調査実習(財政金融課) |
依頼調査実習(政治議会課) | |||
8月17日(水) | 依頼調査実習(政治議会課) | 8月24日(水) | 依頼調査実習(財政金融課) |
調査及び立法考査局職員との業務交流 | |||
8月18日(木) | 依頼調査実習(政治議会課) | 8月25日(木) | 共同政策セミナー:「教育課程・教科書制度」 |
外部機関見学(国立公文書館) | |||
8月19日(金) | 共同政策セミナー:「情報アクセス権」 | 8月26日(金) | 2週目の振り返り |
1週目の振り返り | 評価会・閉講式 |
このほかの取組としては、(1)NDLの国会分館運営の経験に基づくベトナム国会議事堂内の閲覧室開設支援(施設・什器等の整備はJICAの支援も受けてNALVが行った)や、(2)NALVの「本館」建設準備に向けて、NDLの関西館及び国際子ども図書館の新館建設と電子図書館サービスに関するベトナム現地セミナーの実施、(3)NALVの業務・利用に係る規則やマニュアル等の文書整備支援、(4)2014年から定期的に行っている資料交換(10)が挙げられる。
本プロジェクト全体について、JICAでは年度ごとにその妥当性や有効性等を評価しているが、とりわけNALVへの支援プログラムについては、研修に熱心に取り組んだ結果として、調査能力の向上とそれに伴う調査サービスの向上が認められたとJICAは評価している。「能力向上」の成果を数値として示すことは難しいが、次の4項目をNDLが行った支援の「成果」として挙げておきたい(11)。
(1)戦略・能力開発計画に基づいた業務・サービスの改善が行われるようになった。現在、国会議員へのレクチャーや政策セミナーについても、実施に向けて準備が進められている。
(2)2015年10月にベトナム国会議事堂内のNALV閲覧室開設に際して、施設の整備・運営等に係る支援を行った。
(3)NDLの刊行物を参考にして、2016年から三種類のレポート(海外事情の調査、特定の立法課題の調査、テーマ別の調査)の刊行を開始した(現時点の刊行頻度は四半期ごと)。
(4)調査業務実習を経験した調査員は、調査に取り組む際に事前に調査計画を立て、分担を決め、報告書案について課内で確認したり意見交換したりするようになり、アウトプットは目に見えて向上した。そのほか、NALV内の研修計画を立案し、実際に後輩や新人調査員の研修及び育成を担当している。
JICAが2016年7月に公開したレポート(12)では、「国会補佐機関の調査・情報提供能力の向上」をNALVの課題として指摘した上で、(1)所蔵資料(外部データベース・政府関係資料・科学技術関係資料)の充実、(2)行政府省ウェブサイトのウェブアーカイビングの実施、(3)法令索引の作成、(4)法律図書館(室)の設置、(5)予算・決算審議に資する参考資料作成のための体制強化、(6)新館建設に向けた体制づくり、(7)国際交流の強化、という取組の必要性がベトナム国会に対して提案された。一方、NALVとしても、これまでの研修等を通じて得た知識やノウハウの共有・定着やそれらを組織としての継続的な発展につなげていくための仕組みづくりが、これからの課題となるという意識を持っている(13)。
こうした提案と、フェーズ1で行った支援、成果及びベトナム国会事務局側の次なる要望を踏まえ、2017年 9月までにJICAとベトナム国会事務局が次のフェーズに向けて新たな協議を行った。その結果、「ベトナム国会事務局能力向上プロジェクトフェーズ2」が2017年10月から4年間を期間として開始された。フェーズ2において、特にNALVに関する支援としては、(1)電子図書館サービスの導入・促進(14)の支援、(2)2021年から2025年までの戦略計画及び2030年向けビジョンの策定支援、といった活動を中心に行うこととなった。
NDLは特にその草創期において、米国議会図書館(LC)をモデルとして米国の助言・支援の下に組織・機能の整備を行ってきた(15)。他国の助言・支援の結果として得られた経験とノウハウを、今度はそれらを必要とする他の国の組織・機関に「技術移転」することは、移転先・移転元の両者にとって大きな意義を持つものと考えている。 このプロジェクトを通じて、NALVとNDLの関係は、NDLによる支援という形から相互協力へと変化しつつあるように感じられる。将来、二つの議会図書館が手を携えて、アジアの議会図書館の発展に貢献できるようになれば、大変嬉しい限りである。
(1)“国会事務局能力向上プロジェクト”. 国際協力機構.
http://www.jica.go.jp/project/vietnam/029/outline/index.html [108], (参照 2017-08-31).
(2)NDLによる支援の概要については、次の記事を参照。
調査及び立法考査局調査企画課.ベトナム国会図書館を支援しています. 国立国会図書館月報. 2017, (672), p. 8-11.
https://doi.org/10.11501/10317780 [109], (参照 2017-08-31).
(3)この他、2011年、2012年にベトナム国会で開催された以下の国際ワークショップにおいてNDL職員が報告を行い、NDLの経験を伝えた。
2011年:ベトナム国会事務局・フリードリヒ・エーベルト財団共催国際会議「議会の本会議-組織及び手続」
2012年:ベトナム国会事務局・コンラート・アデナウアー財団共催ワークショップ「議会図書館:諸外国の経験」
(4)座長は坪井善明・早稲田大学教授。メンバーに、高見勝利・上智大学名誉教授、長谷部恭男・早稲田大学教授、樋口陽一・東京大学名誉教授に加え、衆議院法制局及び同事務局、NDLから各1名が参加している。
(5)各種法案への意見や、議事運営、広報及び審議中継に係るアドバイス等を実施した。
(6)民族評議会は、民族政策、山岳地域・少数民族居住地域における経済・社会開発計画の施行及びその実施に係る政府、各省及び省同格機関の活動を監督するとともに、民族問題に関する法令案その他の草案を審査する権限を有する。
遠藤聡. ベトナムの国会と立法過程. 外国の立法. 2007, (231), p. 110-151.
https://doi.org/10.11501/1000320 [110], (参照 2017-08-31).
(7)国際協力機構. “ベトナム社会主義共和国国会事務局機能にかかる情報収集・確認調査ファイナル・レポート”. 国際協力機構:国際開発センター. p. 28.
http://libopac.jica.go.jp/images/report/12262051.pdf [111], (参照 2017-08-31).
(8)兼松芳之ほか. 世界図書館紀行 ベトナム. 国立国会図書館月報. 2017, (672), p. 14-19.
https://doi.org/10.11501/10317780 [109], (参照 2017-08-31).
なお、当初は2020年以降の竣工とされていたが、2017年9月のプロジェクト第1フェーズ総括セミナーにおいて、2020年末までに竣工する予定である旨、説明があった。
(9)詳細は次の文献を参照。
澤田大祐. 国立国会図書館の国会サービス:立法活動を支える情報の提供. 情報管理. 2016, 59(8), p. 505-513.
https://doi.org/10.1241/johokanri.59.505 [112], (参照 2017-08-31).
(10)日本からは英語又は日本語で書かれたベトナムの政治、法律、日本とベトナムの外交関係などについての資料を、ベトナムからは官公庁の資料などを互いに送付している。
(11) 調査及び立法考査局調査企画課. 前掲.
“国会事務局能力向上プロジェクトプロジェクトニュース国会事務局能力向上訪日研修(図書館OJT研修)”. 国際協力機構.
https://www.jica.go.jp/project/vietnam/029/news/20170413.html [113], (参照 2017-08-31).
(12)国際協力機構. “ベトナム社会主義共和国国会事務局機能にかかる情報収集・確認調査ファイナル・レポート”. 国際協力機構:国際開発センター. p. 37, 216-222.
http://libopac.jica.go.jp/images/report/12262051.pdf [111], (参照 2017-08-31).
(13)調査及び立法考査局調査企画課. 前掲.
(14)NALVの担当者によれば、「国会の会期が短く、国会議員の3分の2を占める兼業議員が地元に帰るため、遠隔利用できる電子図書館サービスの要望が強い」とのことであった。このため、2015年8月の訪日研修でも資料デジタル化に係る研修プログラムも組んだ。
(15)“国立国会図書館の発足とその展開”. 国立国会図書館五十年史. 本編. 国立国会図書館, 1998, p. [2]-37.
[受理:2017-11-20]
福林靖博. 国立国会図書館によるベトナム国会図書館支援の取組. カレントアウェアネス. 2017, (334), CA1914, p. 20-23.
http://current.ndl.go.jp/ca1914 [114]
DOI:
https://doi.org/10.11501/11007719 [115]
Fukubayashi Yasuhiro.
The National Diet Library’ s the National Assembly Library of Viet Nam Support Project.
奥州市立胆沢図書館:渡辺貴子(わたなべ たかこ)
猫本コーナー「猫ノ図書館」は、岩手県奥州市立胆沢図書館内にある「猫本」(猫が出てくる本)だけを集めた常設コーナー(780冊)で、2017年2月22日(猫の日)(1)に開設した。また、コーナーの顔として「ねこ館長」を市内から公募し、来館者投票により「むぎ」を任命した。主な任務は写真やSNSを活用した画像による活動である。
奥州市立胆沢図書館は、市内公立図書館4館1室の1つである。施設は建物が田畑の中に点在する散居集落の中に位置する胆沢文化創造センター(文化会館、郷土資料館との複合施設)内にあり、蔵書は約7万冊である。
2014年以降、当館の入館者数や貸出冊数など図書館の利用が低迷した。例えば2013年度に年間7万7,000冊だった貸出総数が2015年度には6万7,000冊と、2年間で1万冊ほど減少した。
減少要因として、少子化や人口減少など一般的な要因が挙げられるが、どれも明確な要因とはなり得ず、利用者にとって胆沢図書館の魅力不足が要因ではないかと考えた。図書館の魅力とは何か。立地条件や蔵書数などは市内のより大きい図書館には到底敵わない。閑散とした状態が当たり前となり、このままでは働く職員のモチベーションの低下にも繋がり、結果、図書館本来の機能が損なわれてしまうと危惧し始めた。
2015年11月、図書館の利用の低迷に歯止めをかけるには、どうするべきか思案し方針を検討した。まずどこの図書館に行っても同じ本しかないという利用者の言葉から、蔵書7万冊の中で特色を見出し活かすことを思いついた。特色を創り出せば独自性と話題性に繋がり、図書館へ人を呼ぶきっかけになる。この時思いついた胆沢図書館の特色こそが、猫関連本である。思いついたきっかけは以下の4点である。
これらを踏まえ、自称「公立図書館で日本初?の常設の猫本コーナー」を創ろうと考えた。
2015年11月から、猫本を通して読書活動を促進し、以て図書館利用を拡大するため「猫ノ図書館」の構想を練った。その際、主に以下の5点について検討した。
いずれも猫関連のトピックによる来館者数の増加を期待したものである。
猫ノ図書館開設のため、企画書(案)を作成し、館内職員会議で検討、修正したのち、奥州市協働まちづくり部の図書館担当課との協議を経て、成案とした。また、図書館予算は限りがあるため、既存予算の組み替えで対応することにした。そして、利用者の反応を見るために、試行的にコーナーを開設した。2016年2月22日(猫の日)と8月8日(世界猫の日)(4)にあわせて展示をしたところ、コーナー来訪者数は不明であるが、男女問わず幅広い層から称讃を得た。また、猫本の寄贈があったり、市外からわざわざ来館する利用者がいたりするなど、予想以上の嬉しい反響があった。
だが、全てが成功したわけではない。特別感を演出するため、猫本に猫マークの蔵書印を押印し、貸出の際図書館利用券(リライトカード)へ猫マークを印字することなどを検討したが、キーボード上の文字しか印字できないことが判明したことから実現できなかった。また、「猫の図書館長」の就任は国内の公立図書館で先行事例は無く、私設図書館の「ねこのわ文庫」(和歌山県)(5)や長野県喬木村の村立椋鳩十記念館・記念図書館(6)の事例のみだった。生き物を公立図書館で取り扱う問題、例えば猫アレルギーへの対応や猫にストレスを与えるといった動物保護の観点からの課題などに直面し、こちらも敢え無く断念した。
猫ノ図書館開設プロジェクトは2016年2月から始まった。参考事例として、ねこのわ文庫、猫本のネット書店「書肆吾輩堂」(福岡県)(7)、猫本専門「神保町にゃんこ堂」(東京都)(8)があった。特に神保町にゃんこ堂については、「町の小さな「売る気のない本屋」が猫本で生き残りをかける」という記事(9)を読み、似たような境遇と、猫本を他の書籍とは明確に区別し、 書店内に小さな書店をオープンするというコンセプトに共感した。大手書店やネット書店に負けない「これからの本屋」の姿を垣間見た気がした。同じ本を扱う立場として図書館も見習うべきと感じ、神保町にゃんこ堂と書肆吾輩堂についての出版物(10)を読み、出店までのプロセスや猫本の紹介の仕方を学んだ。これらの本に書かれていたお薦め本はただちに発注した。猫本の受入に伴い、固定的であった発注先の購入書店等を拡大するなど発注方法も一から見直した。また、選書の際、猫本の収集を強化するとともに、猫ノ図書館を通して「命の尊さ」「思いやり」の気持ちの育成、世代を超えた交流「ネコミュニケーション」(11)のきっかけ作りを行うなど、少しずつではあるが具体的なイメージを構築した。
2016年10月の蔵書整理期間に排架作業を行い、猫ノ図書館の一部を開設した。本の表紙を見せる面出しも取り入れたが、書棚3列に約400冊を排架しスペースの余裕がなかったため魅力ある棚づくりには程遠かった。当然利用も少なく、神保町にゃんこ堂に改善のために助言を得るべく、2016年12月に同店を訪ねた。
神保町にゃんこ堂は、神保町の小さな本屋姉川書店内にある。常時400種類2,000冊以上の猫本を取り揃え、全て表紙が見えるようディスプレイしている猫好き御用達の書店である。また、猫写真家の写真パネル展示を書棚で行っている独創的な本屋でもある。にゃんこ堂では「猫店長」が居る。店内不在だが書棚に写真を飾り、facebookのアイコンに登場してPRに一役買っている。神保町にゃんこ堂を創ったアネカワユウコ氏に対面し、店内を案内していただいた。そして、猫ノ図書館のアドバイザーになっていただくようお願いし、助言を仰いだ。
アドバイスを受けた点は次のとおりである。
図書館に戻ってから早速面出しを行い、神保町にゃんこ堂から送られた猫写真家五十嵐健太氏の写真パネルを使って書架を修正したところ、コーナーが魅力ある棚に激変した。
また、2017年1月に奥州市内の成猫を対象として、ねこ館長を募集した。公募要項や奥州市および当館の広報で、ねこ館長は画像のみの活動であることを周知した。予想以上の数の応募があり、また、ねこ館長募集の情報がインターネット上で拡散し、新聞社の取材(12)も増え話題となった。ねこ館長は来館者の投票により決定した。開票速報は奥州市のfacebookなどで発信した。
2017年2月22日、猫本約600冊を揃えて猫ノ図書館はグランドオープンを迎えた。オープン初日、平日にも関わらず猫ノ図書館を一目見ようという利用者と多くの報道陣で溢れ、館内はかつてない熱気に包まれていた。猫本コーナー「猫ノ図書館」の珍しさや本物の「ねこ館長」への期待が大きいことが窺えた。当日は、サラリーマン猫写真家あおいとり氏によるパネル展や、豪徳寺(東京都世田谷区)の招福猫児(まねぎねこ)設置式、猫本コレクション『吾輩ハ猫デアル(復刻版)』配架式を実施した。また、初日のみ、ねこ館長が出勤し、胆沢図書館長から辞令交付を受けた後、テープカットを行った。後日テレビ局や新聞社、利用者など、あらゆる方面から問合せや取材が殺到し、前述の通りねこ館長は館内不在で画像でのPR活動のみと説明するのに苦慮した。
グランドオープン後も県内外からの問合せや来館が絶えず、日々猫ノ図書館に多くの利用者が訪れている。当館にはカウント機がなく、目視のため正確な来場者数は把握できないが、2016年度の貸出総数は前年比で3,700冊ほど増加した。
そして、大きな変化は、これまで図書館に来たことのない人の来館が増えたことである。コーナー開設時のコンセプト「図書館に足を運ぶきっかけを作る」は成功したと言えよう。
今後の展望としては、写真パネル展や絵本原画展などのイベントの開催や館内配布の情報紙「猫ノ図書館にゃーす」の発行、猫ノ図書館専用の読書通帳、ねこ館長によるSNSでの継続したPR活動、猫本の継続収集を行う予定である。猫本は予算の許す範囲で、あらゆるジャンルの新刊本のみならず、絶版本や貴重書も収集保存しながら、利用者へ提供していきたい。
また、猫ノ図書館を通して「命の尊さ」「思いやり」の気持ちの育成と世代を超えた交流「ネコミュニケーション」のきっかけ作りを行いたい。そして、猫ノ図書館をきっかけに本と人を繋ぎ、人と人を繋ぎ、まちづくりに発展させていくことは、地域の活力に繋がると筆者は考える。図書館は地域に必要不可欠なコミュニティの核となる役割を担う場所でありたい。小さな図書館の挑戦は始まったばかりである。
(1)猫の日は、1987年に「猫の日制定委員会」が2月22日に制定した。
“猫好きの学者、文化人らがつくる「猫の日制定委員会」がこのほど(窓)”. 日本経済新聞, 1987-02-11, 朝刊, p. 27.
(2)“平成28年(2016年)全国犬猫飼育実態調査 結果”. 一般社団法人ペットフード協会. 2017-01-17.
http://www.petfood.or.jp/topics/img/170118.pdf [122], (参照2017-07-26).
(3)“我が輩は猫駅長である。”. 和歌山電鐵株式会社.
http://www.wakayama-dentetsu.co.jp/sstama/ [123], (参照2017-07-26).
“ネコノミクスが福を招く?たま駅長、猫島観光、ネコゲーム”. 産経ニュース. 2016-02-11.
http://www.sankei.com/premium/news160211-prm1602110004-n1.html [124], (参照2017-07-14).
(4)“World Cat Day: no need to expel Kitty”. IFAW. 2014-08-08.
http://www.ifaw.org/united-states/news/world-cat-day-no-need-expel-kitty [125], (accessed 2017-07-26).
(5)“ねこのわ文庫”. facebook.
https://ja-jp.facebook.com/nekonowabunko/ [126], (参照2017-07-26).
“ねこのわ文庫 猫好きのための図書館オープン”. 毎日新聞. 2016-05-08, 朝刊, p. 13.
http://mainichi.jp/20160508/ddm/013/040/016000c [127], (参照 2017-07-14).
(6)“喬木村立椋鳩十記念館・記念図書館”. facebook.
https://ja-jp.facebook.com/takagi.mukutosyo/ [128], (参照2017-07-26).
“迷い猫「ムクニャン」館長就任で恩返しニャーン 来館者に人気 長野の椋鳩十記念館”. 毎日新聞. 2016-04-08, 朝刊, p26.
http://mainichi.jp/20160408/ddm/041/040/111000c [129], (参照2017-07-14).
(7)書肆吾輩堂.
http://wagahaido.com/ [130], (参照2017-07-26).
“猫が出てくる本の専門店2周年「ツンデレさたまらない」”.朝日新聞. 2015-02-21, 朝刊, p. 2.
http://www.asahi.com./articles/ASH2B4FNRH2BTIPE00M.html [131], (参照2017-07-14).
(8)猫本専門 神保町にゃんこ堂(姉川書店内).
http://nyankodo.jp/ [132], (参照2017-07-26).
(9)アネカワユウコ.“町の小さな「売る気のない本屋」が猫本で生き残りをかける”. YOMIURI ONLINE. 2015-10-15.
http://www.yomiuri.co.jp/fukayomi/ichiran/20151014-OYT8T50157.html [133], (参照2017-07-05).
(10)大久保京. 猫本屋はじめました. 洋泉社, 2014, 255p.
神保町にゃんこ堂 アネカワユウコ. にゃんこ本100選 ~猫本専門「神保町にゃんこ堂」の厳選ガイド~. 宝島社, 2016, 190p.
(11)大久保京. “わだば猫本屋になる”. 猫本屋はじめました. 洋泉社, 2014, p. 57-58.
(12)“専門コーナーPRへ求む猫館長”. 岩手日報. 2017-01-12.
“来館者アップへ「ねこ館長」奥州市立胆沢図書館が公募”. 朝日新聞. 2017-01-13. 朝刊. p. 24.
““猫本”聖地準備着々と 来月22日オープン 小説や漫画など541冊 独自性強調し利用促進 「ねこ館長」も募集中”.胆江日日新聞. 2017-01-14. p. 9.
[受理:2017-08-08]
渡辺貴子. 小さな図書館の挑戦-「猫ノ図書館」開設とねこ館長-. カレントアウェアネス. 2017, (333), CA1904, p. 2-4.
http://current.ndl.go.jp/ca1904 [134]
DOI:
https://doi.org/10.11501/10955540 [135]
Watanabe Takako
Challenge of a Small Library -“Cat Library” Opening and the Cat Chief Librarian
PDFファイル [138]
調査及び立法考査局調査企画課:服部麻央(はっとり まお)
フランス国立図書館(BnF)が運営する電子図書館Gallicaは、2017年10月に20周年を迎える。GallicaはBnFとその提携機関のデジタルコンテンツを420万点以上収録するデータベースである。収録資料の内訳は、図書約52万点、新聞・雑誌約185万点、手稿約9万点、画像資料約117万点、楽譜約4万7,000点、録音資料約5万点、硬貨をはじめとする博物資料約35万7,000点、地図資料約12万8,000点、動画18点となっている(1)。
資料数 | 比率 | |
図書 | 519,291 | 12.3% |
新聞・雑誌 | 1,852,415 | 43.9% |
手稿 | 91,554 | 2.2% |
画像資料 | 1,172,898 | 27.8% |
楽譜 | 47,036 | 1.1% |
録音資料 | 50,856 | 1.2% |
博物資料 | 357,334 | 8.5% |
地図資料 | 128,556 | 3.0% |
動画 | 18 | 0.0% |
計 | 4,219,958 | 100.0% |
Gallicaでは、基本的な書誌情報や全文テキストデータからの検索のほか、資料種別、テーマ、所蔵機関及び掲載ウェブサイトによる絞り込み検索が可能である。一部の資料はテキストモード、EPUB、DAISYでのダウンロードが可能であり、閲覧画面からオンデマンド印刷の申込みもできる。Gallicaが収集したメタデータはEuropeana(CA1785 [139]参照)に提供されるため、Gallica収録資料はEuropeanaからの検索も可能である。資料紹介にも力を入れており、トップページのメニュー“La sélection”から解説文付きの特集ページにアクセスすることができる。本稿では、Gallicaの20年間を振り返り、BnFによる資料デジタル化の歩みと最近の動向を紹介する。
1997年、Gallicaのベータ版が公開された。初期のGallicaが目指した姿は「オネットム(honnête homme:教養人、紳士)の仮想図書館」と言われる(2)。歴史的・文化的観点から価値の高い主要な作品を厳選し、百科全書的なデータベースを構築することがその目標であった。特に最初期のGallicaは19世紀フランスの著作が内容の中心を占めていた(CA1193 [140]参照)。
2005年頃から、デジタル化の方針に変化が現れる。まず、初の大型事業として、2005年から5年計画で日刊紙のデジタル化が始まった(3)。そして、2007年から2009年にかけて大規模デジタル化が推進された。これはGoogleブックスの電子図書館プロジェクトによってもたらされる書籍デジタル化の独占への反動であったと言われている(CA1844 [141]参照)。大規模デジタル化にあたり、それまで重視されてきた内容に基づく選別は優先度が下がった。著作権保護期間内の資料、外国出版物、デジタル化作業に耐えられないような脆弱なものを除き、網羅的にデジタル化が行われた(4)。この間、2007年に新しいバージョン“Gallica 2”のベータ版が公開され、2009年には旧来のGallicaと統合して正式版になった。技術面では、この時期からOCRが導入され、資料の全文検索機能が追加された。
2009年から、デジタル領域における他機関の支援がBnFの協力事業の主軸に置かれている(5)。例えば、特定のテーマまたは地方の利益に資する資料を対象として、BnFはデジタル化支援プログラムを複数用意している。また、2011年からはBnFが結ぶデジタル化契約の一部を提携機関の所蔵資料のデジタル化に充てることも可能になった。BnFの関与によってデジタル化が実施された資料は、提携機関の電子図書館とGallicaの両方で公開される。この際、Gallicaの閲覧画面上には資料がどの提携機関に由来するものかが明示されることになっている。
こうした事業の一環として、2016年には以下の2つの取組が実行された。1つ目は、ボルドー市立図書館所蔵の貴重書である、哲学者モンテーニュ(Michel Eyquem de Montaigne)の著者自注の『随想録』のデジタル化である。取組の成果はボルドー市立図書館の電子図書館SélénéとGallicaで公開されている(6)。2つ目は、パリ市立歴史図書館が所蔵する小説家フローベール(Gustave Flaubert)の手稿のデジタル化である。『感情教育』の最終稿がフローベールの執筆・旅行ノートとともにBnFによってデジタル化された。
以上のように提携機関の所蔵資料をBnFがデジタル化する以外にも、すでにデジタル化済みの資料をGallicaで公開する方法、デジタル化資料のメタデータのみをGallicaに投入する方法も存在する(7)。
そのほか、近年の新しい取組として“Gallica marque blanche”が始まっている。これは、BnFが提携を結んだ機関にGallicaの技術を提供し、新しい電子図書館を構築するというプログラムである(8)。この事業の目的は2つある。1つは、Gallicaを運用する中で得られた最新技術を共有すること、もう1つは、提携機関のデジタル化資料をGallicaに統合することによって、デジタル化されたフランスの文化遺産群の補完を図ることである。このプログラムを活用して、ストラスブール大学図書館のNumistral(9)、フランス省庁間アーカイブズ部(Service interministériel des Archives de France)のLa Grande Collecte(10)に加え、2017年4月にフランス語圏デジタルネットワーク(Réseau Francophone Numérique)の新しい電子図書館が公開された(11)。また、2016年には外務・国際開発省とBnFとの間に外交文書の電子図書館を作成するための協定が結ばれている。この電子図書館の公開は2017年初頭を予定していたが、2017年7月1日現在、まだ実現はしていないようである(12)。
このようにして、近年のGallicaは他機関と相互の協力関係を結ぶことによって、より多様な資料の検索が可能な電子図書館へと発展しつつある。
図書館資料のデジタル化とその公開には常に著作権の問題がつきものである。BnFはこの課題に対処するために、2012年に“Gallica intra muros”をスタートさせた(13)。Gallica intra murosは、通常のGallicaの収録資料に加えて著作権保護期間内の資料も閲覧可能な館内専用のシステムである。
2012年の関連法律制定を受けて、著作権保護期間内にある市場で入手不可能な絶版図書のデジタル化とその商業利用を可能とするReLIRE(Registre des Livres Indisponibles en Réédition Électronique)計画も始動した。このプロジェクトによってデジタル化された書籍は販売開始と同時にGallica intra murosで閲覧が可能となり、さらに一定の期間を経たのちにGallicaで全文公開されることになっていた(CA1844 [141]参照)。しかし、2013年に作家側から著作権侵害の訴えがあり、2017年6月7日のコンセイユ・デタ(国務院)の判決により、ReLIRE計画の法的根拠である施行規則の一部は無効とされた(14)。この判決を受け、BnFは現在ReLIRE計画を停止している。
利用者側に目を転じると、2016年度のGallicaのアクセス数は年間約1,400万件であり(15)、1日あたり約4万件に上る。2016年に実施されたGallicaの利用者アンケート調査結果(16)によると、回答した7,600名のうち70%超はフランス国内に居住しており、16%がイタリアをはじめとするヨーロッパ圏の住人であった。利用者の平均年齢は前回(2011年)の調査時よりも6歳上昇し、54歳という結果が出た。利用目的は「個人的な研究」(45%)が最も多く、前回よりも15ポイント増加した。「学業」(15%)と「仕事」(20%)を合わせると利用目的の8割が何らかの調査であることがわかった。その一方で、利用目的はその時々で異なるという回答も多く、ここから利用者像を類型化することは難しい。このアンケート結果は、研究者や学生だけでなく、Gallicaの利用がより多様化していることを示すものだろう。
利用の多様化の背景には、前述のようなコレクションの充実によってGallica自体の魅力が増したことだけでなく、ソーシャルメディアの積極的な活用もある。Gallicaはインターネット上での情報発信に積極的であり、毎月のニュースレター(17)の発行のほかにも、ブログ(18)、facebook(19)(「いいね!」の数:約12万件)、Twitter(20)(フォロワー数:約4万7000人)、Pinterest(21)(フォロワー数:約5,500人)で公式アカウントを運用している。これらのアカウントを通じてGallicaのコンテンツや新しいサービスの紹介を随時行い、さらに資料の価値を再発見するような記事を定期的に掲載することで、Gallicaの豊富なコレクションと利用者とをつなぐ機能を果たしている。
2016年4月にBnFが公表した『電子化計画』 (Schéma Numérique)では、デジタル領域におけるBnFのミッションや事業内容だけでなく、BnFの未来像についても検証している。この中で、2020年のBnFの予想図が素描されている。質の高い情報源やデジタルツールの充実、電子情報を活用した個人向けサービスの提供によって、快適な情報探索環境を整える。そしてGallica及びGallica intra murosはより豊富で価値の高い資料を収録し、その活用のために明快なナビゲーションを用意する(22)。すべての人々があらゆる知識へアクセス可能な未来を目指し、Gallicaの挑戦は続いている。
(1)BnF. “Gallica en chiffres”. Gallica.
http://gallica.bnf.fr/GallicaEnChiffres [142], (accessed 2017-07-03).
(2)“A propos”. Gallica.
http://gallica.bnf.fr/html/und/a-propos [143], (accessed 2017-07-01).
(3)Dherny, Arnaud. Gallica: construction et stratégie. Pensée. 2010, (361), p. 51-63.
(4)“La numérisation des collections”. Schéma numérique. BnF. 2016, p. 18
http://www.bnf.fr/documents/bnf_schema_numerique.pdf [144], (accessed 2017-07-01).
(5)Bertrand, Sophie; Girard, Aline. Gallica (1997-2016). Bulletin des bibliothèque de France. 2016, 59(9), p. 52.
http://bbf.enssib.fr/consulter/bbf-2016-09-0048-005 [145], (accessed 2017-07-01).
(6)“Montaigne bib numérique – Bordeaux”. Bibliothèque de Bordeaux.
http://bibliotheque.bordeaux.fr/in/le-patrimoine/montaigne [146], (accessed 2017-07-19).
(7)“Gallica, bibliothèque collective”. Rapport annuel 2016. BnF. 2017, p. 41-45.
http://webapp.bnf.fr/rapport/pdf/rapport_2016.pdf [147], (accessed 2017-07-01).
(8)“Gallica marque blanche”. BnF. 2016, 22p.
http://www.bnf.fr/documents/gallica_marque_blanche.pdf [148], (accessed 2017-07-01).
(9)Numistral.
http://www.numistral.fr/numistral/ [149], (accessed 2017-07-01).
(10)La Grande Collecte.
http://www.lagrandecollecte.fr/lagrandecollecte/ [150], (accessed 2017-07-01).
(11)Bibliothèque Réseau Francophone Numérique.
http://rfnum-bibliotheque.org/rfn/ [151], (accessed 2017-07-19).
(12)“Gallica, bibliothèque collective”. Rapport annuel 2016. BnF. 2017, p. 41-45.
http://webapp.bnf.fr/rapport/pdf/rapport_2016.pdf [147], (accessed 2017-07-01).
(13)“Un Gallica, des Gallica”. Schéma numérique. BnF. 2016, p. 46.
http://www.bnf.fr/documents/bnf_schema_numerique.pdf [144], (accessed 2017-07-19).
(14)“Conseil d'État, 10ème - 9ème chambres réunies, 07/06/2017, 368208, Inédit au recueil Lebon”. Legifrance.
https://www.legifrance.gouv.fr/affichJuriAdmin.do?oldAction=rechJuriAdmin&idTexte=CETATEXT000034978289 [152], (accessed 2017-07-01).
(15)“Les public de Gallica”. Rapport annuel 2016. BnF. 2017, p. 40-41.
http://webapp.bnf.fr/rapport/pdf/rapport_2016.pdf [147], (accessed 2017-07-01).
(16)Enquête auprès des usagers de la bibliothèque numérique Gallica. TMO. 2017, 119p.
http://www.bnf.fr/documents/mettre_en_ligne_patrimoine_enquete.pdf [153], (accessed 2017-07-01).
(17)第1号は2009年11月発行。
Gallica lettre d’information.
http://lettre-gallica.bnf.fr/ [154], (accessed 2017-07-01).
(18)2009年開設。
“Le blog de Gallica”. Gallica.
http://gallica.bnf.fr/blog [155], (accessed 2017-07-01).
(19)2010年公式ページ開設。
“@GallicaBnF”. facebook.
http://www.facebook.com/GallicaBnF [156], (accessed 2017-07-01).
(20)2010年公式ページ開設。
“@GallicaBnF”. Twitter.
http://twitter.com/GallicaBnF [157], (accessed 2017-07-01).
(21)2012年公式ページ開設。
“Gallica BnF”. Pinterest.
http://www.pinterest.com/gallicabnf/ [158], (accessed 2017-07-01).
(22)“Vision d’avenir”. Schéma numérique. BnF. 2016, p. 10-12.
http://www.bnf.fr/documents/bnf_schema_numerique.pdf [144], (accessed 2017-07-19).
[受理:2017-08-10]
服部麻央. フランス国立図書館の電子図書館Gallicaの20年. カレントアウェアネス. 2017, (333), CA1905, p. 5-7.
http://current.ndl.go.jp/ca1905 [159]
DOI:
https://doi.org/10.11501/10955541 [160]
Hattori Mao
Twenty Years of Gallica: the Digital Library of the National Library of France
PDFファイル [166]
利用者サービス部サービス運営課:丸本友哉(まるもと ともや)
ドイツデジタル図書館(Deutsche Digitale Bibliothek:DDB)(1)は、ドイツを代表するデジタル資料のポータルサイトである。連邦と各州の2系統の財源でまかなわれる同名の公的機関がその運営に当たっている(2)。この機関は、ドイツの文化・学術機関が発信するデジタル情報を連続的かつ相互にリンクしてアクセス可能にするという目標のもと(3)、Europeana(CA1785 [139]、CA1863 [167]参照)(4)を支えるアグリゲーターとしての役割を果たしながら、同時に独立したサービスを展開している。サービスは上記のポータルサイトのみならず、外部プログラムにデータを提供するウェブAPI機能、文化・学術機関を幅広く紹介する「カルチャーマップ」(Kulturlandkarte)、協力機関向けの情報を提供するウェブサイト、資料のデジタル化プロジェクト等に関わるコンサルティングにまで及んでいる(5)。
日本でも現在、デジタルアーカイブをめぐる様々な施策が打ち出されつつあるが、分野横断型の統合ポータルサイトの構築についてはまだ検討の途上にある(6)。一方DDBは、多分野の機関が公開するデジタル資料の情報を集約して、一つの枠組みの中で簡便に利用できる仕組みの整備を大きく進めており、とりわけその点で注目すべき先進事例であるように思われる。本稿ではこのDDBに焦点を定め、主にユーザーの目線から、今日までの沿革とサービスの概要について紹介する。
DDBは、欧州委員会(EC)によって2007年2月に正式決定された、学術情報のアクセス・提供・保存に関する通知文書(E611 [168]参照)(7)が契機となり誕生した。この文書は欧州連合(EU)加盟各国に、Europeanaのプロジェクトの枠組みにおいて、自国の文化と学術に関わる情報をデジタル化し、提供することなどの努力を求めるものだった。
この要請を受けてドイツでは、国内のデジタル資料の情報を包括的に収集・提供するための機関として、DDBを創設する構想が持ち上がった。連邦政府は各州及び各市町村と共同で文書(8)を取りまとめ、2009年12月の閣議決定を経て正式に発足させた(E897 [169]参照)。その後ほどなくDDBのサイトが開設されたが、この時点で公開されたのは設立計画に関する文書等にすぎなかった(9)。
それが本格的なポータルサイトとしてスタートしたのは、3年後の2012年11月のことである。まだベータ版という位置付けではあったが、すでに560万点もの資料へのアクセスを可能にしていた(10)。2013年11月、ウェブAPI機能の公開により、外部サービスにもそのデータベースが開放された(11)。そして2014年3月には、試験的な運用期間が終わり、正式版としてのDDBの運用が始まった(12)。その後もアクセス可能なデジタル資料は増え続けている。
DDBは、そのサービスの中核として、ドイツ国内の様々な文化・学術機関がインターネット上で公開するデジタル資料のメタデータとプレビュー(以下「メタデータ等」)を広範にわたり収集・整理し、それらを統合的に検索することが可能なデータベースを構築している。
DDBを通じてアクセス可能なデジタル資料は約891万5,000点(2017年7月現在。DDB検索ユーザーインターフェースによる。以下同じ)に達する。これらを媒体種別に分けると、文献が最多の約549万9,000点、絵画・写真が約334万5,000点、音声が約2万6,000点、映像が約4,000点等となっている(表1)。
データ数 | 比率 | |
文献 | 5,499,333 | 61.7% |
絵画・写真 | 3,345,164 | 37.5% |
音声 | 25631 | 0.3% |
映像 | 3,942 | 0.0% |
その他・不明 | 41,370 | 0.5% |
計 | 8,915,440 | 100.0% |
一方、所蔵機関種別の内訳では、約521万4,000点の図書館を筆頭に以下、情報資料館(映像、音声、写真など文献以外の多様な媒体の資料を収集・保存・提供する機関)の約128万8,000点、博物館・美術館の約94万1,000点、文書館の約77万3,000点、研究機関の約65万4,000点、記念館の約4万4,000点と続く(表2)。
データ数 | 比率 | |
図書館 | 5,213,740 | 58.5% |
情報資料館 | 1,288,488 | 14.5% |
博物館・美術館 | 940,557 | 10.5% |
文書館 | 773,220 | 8.7% |
研究機関 | 653,929 | 7.3% |
記念館 | 43,979 | 0.5% |
その他 | 1,527 | 0.0% |
計 | 8,915,440 | 100.0% |
これらのことから、DDBが「図書館」を名乗るものの、取り扱う資料の範囲は従来の図書館を大きく超えていることがわかる。確かに現状では、DDBの全デジタル資料の6割近くは図書館が所蔵するものであるが、それは図書館界でデジタル化が早期に開始されたことを反映しているに過ぎない(13)。
「デジタル」図書館であるDDBが、未デジタル化資料に関するメタデータも同じ枠組みの中で収集していることにも注目したい。そうしたデータはDDB全体で約1,186万2,000点あるが、なかでも豊富なのが文書館の資料で、約1,029万点と85%余りを占めている。2012年にDDBの下位プロジェクトとして発足したArchivportal-Dは、保存記録に関する情報の幅広い蓄積によりDDBをドイツの文書館の横断的な検索ツールとして定着させることを目的としていたが(14)、こうした未デジタル化資料のデータの充実は、保存記録の検索に特化した独自ポータルサイト(15)のリリース(2014年)と並び、同プロジェクトの大きな成果といえる。
DDBのウェブサイトにアクセスすると、文字情報がほぼ削ぎ落とされたシンプルなトップページが表示される。その中央に位置する検索ボックスがデジタル資料のデータベースへのメインエントランスである。任意のキーワードを入力すると検索結果ページへと遷移するが、資料の情報が整然と並ぶこの画面にもタイトル以外の文字情報は少なく、サムネイル画像が際立つ構成になっている。検索ユーザーインターフェースは総じて、見やすさと美しさを重視した設計になっている印象を受ける。
しかし、このシステムはただ視覚的に優れているだけでなく、ファセットナビゲーションによる強力かつ簡便な絞り込み機能を実装している点にも特徴がある。ファセットとして利用できるのは10項目(年月日、場所、人物・組織、キーワード、言語、権利状態、二次利用の可否、媒体種別、所蔵機関種別、所蔵機関)で、各条件を設定するためのメニューが検索結果ページの左カラムに設置されている。
たとえば「マクベス」(Macbeth)の語を検索したあと、メニューから「人物・組織」のファセットをクリックすると、「シェイクスピア」や「ヴェルディ」といった選択候補を示すボックスが現れる。ここから「ヴェルディ」を選び、検索結果をそのオペラの関連資料に絞り込んだうえで、「媒体種別」から「音声」を選べば、100年前の音源などが見つかる。逆に「シェイクスピア」を選び、「言語」等のファセットを組み合わせることで、戯曲のドイツ語版を洗い出すこともできる。
さらに、こうして得られた検索結果ページ(上記の例では『マクベス』ドイツ語版の約30件の資料一覧)から任意の項目を選択すると、その資料の情報ページに移動する。ここでは当該資料のメタデータに含まれる情報(出版年、著者、キーワード、言語、権利状態、媒体種別など)と、デジタル資料が存在する場合はそのサンプル画像等を確認することができる。先述のとおり、DDBに収録されているのは資料のメタデータ等であり、デジタル資料自体ではない。しかし、資料情報ページには所蔵機関のウェブサイトへのリンクが表示され、これをたどってシームレスに資料の閲覧ができるようになっている。
DDBはウェブAPIも一般公開している。ウェブサービスを外部のプログラムから利用するための仕組みであるこのAPIにより、第三者が開発する別のウェブサービスやスマートフォンのアプリなどでも、DDBの豊富なデータと優れた検索機能を内部に取り込んで利用することができる。
APIにアクセスするには、サイト上でのユーザー登録を通じて固有の認証キーを取得するだけで足りる(16)。他の多くのウェブサービスと同様、設計はRESTに従っているため(17)、実装も比較的容易だと考えられる。
実際にこのAPIを用いて構築された外部サービスの一つに、先に紹介したArchivportal-Dのポータルサイトがある。DDBがAPIを公開する狙いは、この例のように、オリジナルとは異なる切り口のサービスを実現する手段を備えることで、資料の利活用につながる多様なアイデアを呼び込むことにある。ただし、API経由で提供されるデータは検索ユーザーインターフェースよりも限定的で、二次利用制限なし(クリエイティブ・コモンズのCC0ライセンス)のものに限られている(18)。
DDBのウェブサイトには、「発見」(ENTDECKEN)と銘打たれたカテゴリに属する3種のサブコンテンツも用意されている。そのいずれも、DDBが取り扱う資料との新たな出会いの機会を提供し、その利用を促す工夫がみられるものである。
DDBや所蔵機関のスタッフが作成した、DDBの資料のお気に入りリスト(Favoritenlisten)である。アクセスしたその日をはじめとする1年366日について、過去の同じ日に起きた出来事にまつわる資料を取り上げるリスト(Kalenderblatt)と、自らの機関のコレクションをまとめたリスト(Aus den Sammlungen)の2種類があり、簡易版のバーチャル展示会といった趣がある。
人物に焦点を当て、その関連資料や外部のインターネット上の情報などを紹介するページである。関連資料については、当該人物が出版や制作に関与したもの(Beteiligt an:)と、当該人物をテーマとして論じたり描写したりしたもの(Thema in:)という2つの観点で分類されている(この分類は検索ユーザーインターフェースのファセットにも組み込まれている)。コンテンツのトップページでは、ゲーテ(Johann Wolfgang von Goethe)からポテンテ(Franka Potente)(映画『ラン・ローラ・ラン』(Lola rennt)の主演女優)まで、多彩な人物の中からランダムに選ばれた50人の肖像が画面いっぱいに並び、視覚的にも楽しむことができる。
DDBのサイト上で開催されている「展示会」(Ausstellungen)である。現在公開中の展示会の多くは各分野の文化・学術機関が中心となって作成したものだが、DDBの資料が特定のテーマに沿って、詳細な解説とともに、機関の枠を超えて幅広く紹介されている。なかには「グリムのAからZ−グリム兄弟が私たちに語らなかったこと」(19)のように、機関ではなく研究者個人の研究業績をもとにした展示もある。現時点ではまだ数は少ないが、今後様々な主体による企画を受け入れて発展していく可能性があるコンテンツではないだろうか。
本稿の締めくくりに、DDBとEuropeanaとの関係性について触れておきたい。設立経緯からも明らかなように、DDBはその主要な任務の一つとしてEuropeanaへのデータ提供を行っている。とはいえ、独自に構築されたそのデータベースは、決して単なるEuropeanaの「縮小版」にはとどまらない。たとえばDDBが収集対象とするデジタル資料のメタデータ等の範囲は、二次利用可能なデータのみを集約しているEuropeanaよりも広い(20)。したがって、博物館・美術館によるデータを中心に、Europeanaには提供されずDDBでしか検索できないものも少なくない。またデータ処理技術の面では、意味に基づく項目のネットワーク化の分野で、たとえば典拠データの組み込みなどに関してDDBが部分的にEuropeanaに先行しているともいわれる(21)。
DDBは2016年10月、今後の運営方針についてまとめた『戦略2020』(Strategie 2020)(22)を公表した。そこには優先的に取り組むべき課題として、コンテンツの拡充、データ収集・処理・提供方法の効率化、APIの拡張によるデータプラットフォーム化の推進、検索機能の改善等によるユーザー体験の向上、データ品質の向上、アクセス数の拡大、検索対象範囲の拡張の7項目が掲げられている。DDBはこの先も、Europeanaと連携・共存しながら、ますます独自サービスを充実させていくように思われる。
(1)Deutsche Digitale Bibliothek - Kultur und Wissen online.
https://www.deutsche-digitale-bibliothek.de [170], (accessed 2017-06-29).
(2)“Fragen & Antworten”. Deutsche Digitale Bibliothek.
https://www.deutsche-digitale-bibliothek.de/content/faq#302 [171], (accessed 2017-07-28).
(3)“Fragen & Antworten”. Deutsche Digitale Bibliothek.
https://www.deutsche-digitale-bibliothek.de/content/faq#188 [172], (accessed 2017-07-28).
(4)Europeana Collections.
http://www.europeana.eu/portal/it [173], (accessed 2017-07-01).
(5)“Strategie 2020”. Deutsche Digitale Bibliothek. 2016-10-13.
https://www.deutsche-digitale-bibliothek.de/static/files/asset/document/ddb_strategie_2020_download.pdf [174], (accessed 2017-06-29).
(6)知的財産戦略本部. “知的財産推進計画2017”. 首相官邸. 2017-05.
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/kettei/chizaikeikaku20170516.pdf [175], (参照 2017-07-28).
(7)Commission of the European Communities. “Communication from the Commission to the European Parliament, the Council and the European Economic and Social Committee on scientific information in the digital age: access, dissemination and preservation {SEC(2007)181}”. EUR-Lex. 2007-02-14.
http://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX:52007DC0056 [176], (accessed 2017-06-29).
(8)“Gemeinsame Eckpunkte von Bund, Ländern und Kommunen zur Errichtung einer ‘Deutschen Digitalen Bibliothek (DDB)’ als Beitrag zur ‘Europäischen Digitalen Bibliothek (EDB)’”. Deutsche Digitale Bibliothek. 2009-12-02.
https://www.deutsche-digitale-bibliothek.de/static/de/sc_documents/div/gemeinsame_eckpunkte_finale_fassung_02122009.pdf [177], (accessed 2017-06-24).
(9)Deutsche Digitale Bibliothek. “Deutsche Digitale Bibliothek - Portal für Kultur und Wissenschaft”. Wayback Machine. 2009-12-06.
https://web.archive.org/web/20091206034247/http://www.deutsche-digitale-bibliothek.de/index.htm [178], (accessed 2017-06-24).
(10)“Deutsche Digitale Bibliothek gestartet”. Spiegel Online. 2012-11-28.
http://www.spiegel.de/netzwelt/netzpolitik/deutsche-digitale-bibliothek-gestartet-a-869793.html [179], (accessed 2017-06-24).
(11)“API der Deutschen Digitalen Bibliothek veröffentlicht”. Deutsche Digitale Bibliothek. 2013-11-04.
https://www.deutsche-digitale-bibliothek.de/content/ueber-uns/aktuelles/api-der-deutschen-digitalen-bibliothek-veroeffentlicht [180], (accessed 2017-06-24).
(12)“Deutsche Digitale Bibliothek präsentiert erste Vollversion”. Deutsche Digitale Bibliothek. 2014-03-31.
https://www.deutsche-digitale-bibliothek.de/content/ueber-uns/aktuelles/deutsche-digitale-bibliothek-praesentiert-erste-vollversion [181], (accessed 2017-06-24).
(13)“Fragen & Antworten”. Deutsche Digitale Bibliothek.
https://www.deutsche-digitale-bibliothek.de/content/faq#189 [182], (accessed 2017-06-24).
(14)“Aufbau eines Archivportals-D”. Landesarchiv Baden-Württemberg.
https://www.landesarchiv-bw.de/web/54267 [183], (accessed 2017-06-24).
(15)Archivportal-D.
https://www.archivportal-d.de [184], (accessed 2017-06-24).
(16)“API der Deutschen Digitalen Bibliothek”. Entwickler-Wiki der Deutschen Digitalen Bibliothek. 2013-12-12.
https://api.deutsche-digitale-bibliothek.de/doku/display/ADD/API+der+Deutschen+Digitalen+Bibliothek [185], (accessed 2017-06-24).
(17)具体的には、APIサーバーのドメイン名、対象データの種類を表す15通りのリソース名(“search”や“items/source”など)、特定データのIDを指定するパスパラメータ、検索条件等を指定するクエリパラメータの組み合わせからなるURLを生成し、これに対してHTTPリクエストを送信すると、URLに包含された要求内容に対応するデータがデータベースから抽出され、HTTPレスポンスとして返信されてくる。返信データはリソース名によりXML形式やJSON形式などと異なるが、いずれも機械可読形式のファイルである。
“Programmierschnittstelle”. Entwickler-Wiki der Deutschen Digitalen Bibliothek. 2014-04-24.
https://api.deutsche-digitale-bibliothek.de/doku/display/ADD/Programmierschnittstelle [186], (accessed 2017-06-24).
(18)“API-Nutzungsbedingungen”. Deutsche Digitale Bibliothek. 2013-10-24.
https://www.deutsche-digitale-bibliothek.de/content/api-nutzungsbedingungen [187], (accessed 2017-06-24).
(19)“Grimm von A bis Z – Was uns die Brüder Grimm nicht erzählten”. Deutsche Digitale Bibliothek.
http://ausstellungen.deutsche-digitale-bibliothek.de/grimm [188], (accessed 2017-06-24).
(20)“Wie ‘offen’ ist die DDB?”. Deutsche Digitale Bibliothek. 2013-01-08.
https://www.deutsche-digitale-bibliothek.de/content/ueber-uns/aktuelles/wie-offen-ist-die-ddb [189], (accessed 2017-06-28).
(21)“Fragen & Antworten”. Deutsche Digitale Bibliothek.
https://www.deutsche-digitale-bibliothek.de/content/faq#301 [190], (accessed 2017-06-24).
(22)“Strategie 2020”. Deutsche Digitale Bibliothek. 2016-10-13.
https://www.deutsche-digitale-bibliothek.de/static/files/asset/document/ddb_strategie_2020_download.pdf [174], (accessed 2017-06-29).
[受理:2017-08-10]
丸本友哉. ドイツデジタル図書館(DDB)の沿革とサービス. カレントアウェアネス. 2017, (333), CA1906, p. 8-11.
http://current.ndl.go.jp/ca1906 [191]
DOI:
https://doi.org/10.11501/10955542 [192]
Marumoto Tomoya
History and Services of the German Digital Library
PDFファイル [194]
京都大学学術研究支援室:天野絵里子(あまの えりこ)
欧州では、単行書のオープンアクセス(OA)を推進するさまざまな取り組みが行われている。2010年にOpen Access Publishing in European Networks(OAPEN)が人文・社会科学分野の単行書のOAについて実施した現況調査(E1038 [195]参照)によれば(1)、当時すでに世界中で多くの萌芽的な取り組みがなされていた。現在も単行書のOAを目指して多様なビジネスモデルが試されており、その持続可能性や学術書としての質の担保といったさまざまな側面についての議論が深められている。
これらの取り組みを後押しするように、いくつかの主要な研究助成機関が、助成を受けた研究プロジェクトの成果はOAとしなければならないという義務化ポリシーの対象を、学術論文だけでなく単行書にまで拡げている。欧州研究評議会(European Research Council:ERC(2)やオーストリア科学財団(Austrian Science Fund:FWF)(3)(4)といった公的助成機関や、民間助成財団のウェルカム財団(5)は、助成を受けて出版された単行書やその一部である章単位をOAとすることを義務化しており、そのための追加の助成金を研究者に与えている(6)。
一方日本では、単行書のOAについての議論さえほとんどなされていない。本稿は、単行書のOAをめぐる背景と課題のほか、特に欧州で試みられている単行書のOA化の取り組みをいくつかの類型に沿って紹介し、学術情報の流通を推進すべき大学・研究機関の図書館ができることを示唆する。
単行書は、特に人文・社会科学分野の研究成果を発表する媒体として重要であるが、OA化を進める上では、その出版コストをどのように負担するかが最も大きな課題の一つとなる。この点では、自然科学分野において重要な媒体である学術論文のOA化における課題と同じといえるかもしれない。まずは単行書のOAをめぐる背景として人文・社会科学系分野における単行書の位置づけについて、次にOA化の課題について述べる。
単行書は特に人文・社会科学分野の研究にとって大きな意味をもっている。研究者が一つのテーマで長年に渡って取り組んだ研究の成果を伝え、さらなる議論を促すことで学問の発展を支える最もふさわしい手段が1冊の本を著すことであるとされる。研究者のキャリアにとっても、単行書の価値は論文1本よりも高く、研究職への採用や、昇進に大きく影響する。また、若手研究者がキャリアの大きな節目に学位論文を単行書として出版する文化もある(7)。OAPEN-UKが2012年に発表した報告書によれば、著者が出版社に望むものとして流通や営業、マーケティングの優先度が高く、著書を読んでほしいという強い欲求があることが窺える(E1372 [196]参照)(8)。
しかしながら、従来の出版と流通のシステムの中で、単行書は読まれているのだろうか。後述するOpen Book Publishers社のガッティ(Rupert Gatti)は、単行書の出版部数は200部から400部で、その多くが図書館に購入されることを考えると「誰も読んでいない」に等しいと評した(9)。 学術論文と同様に、単行書もその価格は高騰している。個人で買おうにも高く、紙媒体であれ電子媒体であれ図書館も必要なすべての図書を買えるわけではない(10)。
ここで、人文・社会科学分野の成果をもっと流通させ、研究の意義を伝える効果的な方策として、単行書のOAが求められる。ガッティは、2015年の日本の文系学部廃止騒動を引き合いに出しながら、人文・社会科学分野の存在意義を正当化するためにも主要な成果である単行書のOA化を進めることの重要性を主張している(11)。Jiscの助成を受けたOAPEN-UKプロジェクトは、成果として芸術および人文・社会科学分野の研究者のためのOA図書出版のためのガイドを2015年に公開した(12)。しかしながら、従来型の出版モデルが確立している中でまったく新しいOAモデルを実現するには、多くの課題が残されている。
単行書のOA化を推進する上での最も大きな課題は、学術書としての質を担保しながら、最初に述べた出版にかかるコストをどう賄うかということであろう。従来型の紙媒体出版のコスト構造(13)を前提にコストを賄うモデルを追求するのではなく、デジタル出版を前提として印刷や流通コストを下げた上で新たなビジネスモデルを模索しようという動きがある(14)。一方、単行書は、学術書としての質が保証されていることが最も重要な価値であると捉えられている。したがって、出版コストのうち人手をかけざるを得ない編集や査読のプロセスにかかるコストは削ることができない。論文のように、著者自身が著書をリポジトリなどへセルフアーカイブすることも可能であるが、質の保証という点で現時点では著者にも読者にも好まれない。質を保証するプロセスのコストをカバーしながら、新しいビジネスモデルを生み出すことが単行書のOA化を進めていく際の軸となる。
学術書としての質を保証しながら出版コストを抑え、いかに学術的・社会的なインパクトを最大化するか。様々なビジネスモデルで単行書のOAに取り組む組織が登場している。それらをいくつかの類型に沿って紹介する。
おそらく最も初期に開始された単行書OAの取り組みは、伝統的な出版社による著者支払い型プログラムであろう。Springer社のSpringerOpen Books(15)は2008年に始まっている。著者は、通常の紙媒体の出版で支払う料金以外に、ページ数にもとづいて計算されたOA料金、つまりBook Processing Charges(BPC)を支払う(16)。読者は、紙媒体がほしければMyCopyというオンデマンド印刷サービスから、25ドル程度で購入できる(17)。Routledge社、Brill社といった人文・社会科学分野の図書を多く出版する出版社も同様の著者支払いモデルによるOAプログラムを提供している。
ただし、これら伝統的な商業出版社によるGold OAモデルは、それほど普及するモデルではないとされる。人文・社会科学分野では、出版助成金を得られる機会が多くなく、助成金の金額も限られている(18)。また、Gold OAを可能にするかどうかは出版社次第であり、売れ続ける単行書はOAの対象とされない可能性もある(19)。OAの単行書の目録であるDirectory of Open Access Books(DOAB)(20)によれば、2017年7月現在、Palgrave Macmillan社は49冊、Routledge社は26冊、Brill社は210冊の単行書をOAとしているが、Brill社を除いてその点数は多くない。OA化に必要なBPCは、Brill社の9,780ドル(350ページまで)からPalgrave Macmillan社の1万7,000ドルまでと高価である。出版社や資金面の限られた条件下でしか実現し得ないモデルであるため、すべての研究成果をOA化しようとする流れを大きく推し進めるものではない。
大手のオックスフォード大学出版局やケンブリッジ大学出版局とは一線を画し、OAを謳った新しいタイプの大学出版局が現れ始めている(21)。
University College London (UCL) では2015年、図書館のもとにUCL出版局(22)を設立した。これまでに43冊の単行書をすべてOAとして出版している。UCL出版局で出版された単行書は、PDFでなら無料であるが、その他の形式での入手は有料である。ハードカバーは30ポンドから50ポンド程度、EPUB形式は6ポンド程度となっている。スウェーデンのストックホルム大学出版局(23)も、後述のUbiquity Press社がホストするプラットフォームを用いてOA出版局を設置している。100年以上の歴史を持つ伝統的な大学出版局の中にも、英国のマンチェスター大学出版局(24)やリバプール大学出版局(25)などOA出版に積極的な出版局があり、Gold OA型のOAの単行書を提供している。
人文・社会科学分野の研究者が中心となって、それぞれ固有の目的を持ちながら、「フリーミアムモデル」によるOA出版を実現している小規模な出版社がいくつか出てきている。フリーミアムモデルとは、品物やサービスを最低限の機能は無償で提供するが、付加価値のある品物やサービスは有償で提供するというモデルである。単行書をHTML形式やPDFでOAとしているが、EPUB形式や、あるいはオンデマンド印刷の紙媒体は有償で提供するというモデルである。前節で紹介したUCL出版局もこのモデルにあたるだろう。ここでは、研究者が中心となって立ち上げた出版社を紹介する。
(1)Open Book Publishers社
Open Book Publishers社(26)は、このモデルを採用している出版社の代表格である。2008年にケンブリッジ大学の研究者を中心に設立され、現在は英国の法人の一種、CIC(Community Interest Company。コミュニティ利益会社)となっている。音楽学や言語学の図書では音声や動画を組み合わせるなど、デジタル出版の可能性を一層拡げるような形態での出版にも力を入れている。HTML形式かPDFであれば無料、ハードカバーは1冊約30ポンド、EPUB形式やKindle形式であれば4ポンドから6ポンドほどで入手できる。今まで99冊が発行され、1冊あたり毎月400人の読者があるという。
注目すべきは、アフリカの口頭伝承に関する図書に対してアフリカの国々から多くのアクセスを集めたということである。紙媒体の少数部数の出版だけではこのような広範な読者は得られなかったであろうし、研究の現場に成果を還元するという倫理的な要請に応えることにもつながっている(27)。
(2)Ubiquity Press社
Ubiquity Press社(28)は、2012年にUCLの研究者を中心に立ち上げられた。単行書、学術論文だけでなくデータやソフトウェアまで、研究成果をなるべく広く流通させ、インパクトを高めるためのOA出版を目指している。コストは公開されており、それにもとづいて設定されているBPCは4,480ポンド(10万ワード)である(29)。また、Ubiquity Press社は、米国のカリフォルニア大学出版局とともに、LUMINOS(30)という、単行書の出版を図書館が共同で助成するプログラムを運営している。その他、ラテンアメリカ、スリランカ等の出版母体に対して出版プラットフォームをホストするなど途上国への貢献も意識している(31)(32)。
Knowledge Unlatched(KU)(33)は、すでに刊行されている単行書のOA化を図書館の共同出資によって実現する取り組みである。英国で2012年に組織され、2013年から2014年にパイロットプログラムを実施し、2015年から2016年にかけ、2回の共同出資を成立させている。
KUの共同出資の仕組みを簡略化して説明する。まず、プログラムに参加した出版社は、自社がすでに出版している図書の中から候補となるタイトルを選定し、BPCを提示する。KUに賛同する図書館の図書館員から成る選書委員会がさらにそこから優先的にOAとすべきタイトルを選び、KUが出資金額を算出する。そのタイトルリストと1館あたりの出資金額を見てプログラムへの参加を決めた図書館は、KUに出資する。十分な数の図書館が参加を表明すれば共同出資が成立する。KUが集めた出資金を各出版社に支払えば、リストに載っていたタイトルがOAとなる。OAとなったタイトルは、OAPEN Library(34)やHathiTrust Digital Library(35)にもアーカイブされる。KUに出資するのは一部の図書館であるが、OAとなった図書はもちろんすべての人が閲覧できる。 2016年に行われた共同出資には21か国、269の図書館が参加し、54社の343タイトルがOAとなった。2017年の共同出資の募集は5月に始まり、343タイトルに対して1館あたり1万547ドルの出資金額が提示されている。つまり、1タイトルあたり約30ドルということになる。最近は、図書館だけでなく読者から直接出資を募ったり、また単行書だけでなく雑誌にも共同出資の対象を拡げたりしている。
単行書をOA化する取り組みと並行して、出版された単行書のメタデータなどの情報を流通させてアクセシビリティを高めたり、本文を検索可能としたり、保存したりする取り組みも進められている。
OAPEN(36)は、査読付きで学術的に質の保証された出版物の流通促進や、図書のOA化を推進する財団である。オランダのアムステルダム大学出版局、ライデン大学、オランダ王立図書館(KB)などが共同で設立した。2010年にはいち早く人文・社会科学分野の単行書のOAのビジネスモデルについて調査報告書(37)を発表するなど、OAを普及するため精力的に活動している。 OAPENは、単行書のOAにおいて2つの重要なプラットフォームを提供している。1つは、査読付きのOAの単行書の検索サービスであり、フルテキストのリポジトリであるOAPEN Libraryである。OAPEN Libraryは、ERCの研究助成制度HORIZON2020で助成を受けた出版物の登録先としても認められている。もう1つのプラットフォームは、DOABである。DOABは、OAの単行書の検索サービスであり、2017年7月現在、223の出版社から8,520タイトルの図書が登録されている。
いずれのプラットフォームでも、登録する単行書の質の保証に重きが置かれている。出版社から単行書の情報提供を受ける際は、Open Access Scholarly Publishers Association(OASPA)(38)のガイドラインに則って査読プロセスがチェックされる。各出版社の査読プロセスは、OAPENのウェブサイトから参照できるようになっている。
OAPENは、OAの単行書の情報流通にとって欠かせない存在といえる。学術的に質の高い単行書の情報を提供するための選別を実施し、メタデータを集約して図書館にとって扱いやすい形式で提供し、フルテキストを保存するところまで、包括的なサービスを提供している。このようなサービスは他にないため、欧州以外からも多くの出版社が参加している。
その他、OA単行書の流通を促進する取り組みとして、Open Access in the European Research Area through Scholarly Communication (OPERAS)(39) のプロジェクトの一つであるHigh Integration of Research Monographs in the European Open Science (HIRMEOS)(40) があげられる。HIRMEOSは、欧州におけるオープンサイエンス推進の流れの中で学術論文の情報流通やアーカイブ等を促進するために培われた標準技術やプラットフォームを、単行書にも適用しようとする取り組みである。具体的には、ORCIDやDOIといった識別子や、COUNTER(CA1512 [197]参照)などの利用統計の仕組みを単行書の流通促進にも応用するサービスで、OAPEN Library、Ubiquity Press社などが参画している。
以上のように、欧州では単行書のOAに向けてさまざまな取り組みがなされている。各ビジネスモデルの持続可能性や単行書のインパクトを本当に向上できたかどうかなどの効果を検証するにはまだ数年を要するかもしれない。それでもなお、今後日本において日本発の単行書のOAを進めるとなれば、欧州の事例は参考になるであろう。
日本では、現状では単行書のOAを進めるインセンティブが小さく、喫緊の課題として取り組む機運はそれほど高まっていない。学位論文のインターネット公開については義務化されている(E1418 [198]参照)ものの、研究助成機関や政府は、論文を含めた研究成果のOA化に関しては推奨するにとどまっている。また、一般的に日本語の学術書の読者は日本以外の国ではそれほど多くないという誤解がありそうである。
しかしながら、日本の図書館ができることはないであろうか。研究成果を発表したい著者や、成果を自由に読みたい世界中の読者(41)、優れた書を世に送り出したい出版社の声(42)に耳を傾け、図書館が単行書のさらなる流通に貢献できることを考えてもよい時期が来ているのではないか。欧米の図書館による共同出資型のOA事業の恩恵にあずかるばかりで、日本の図書館は何もしないでよいのだろうか。
一般市民や海外の研究者を含めた多様な読者や、研究成果を広めたい著者や大学・研究機関からのニーズに応え、図書館が単行書の出版の変革を牽引してくれることを期待したい。
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DOI:
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Amano Eriko
Trends in Open Access Monographs in Europe
PDFファイル [241]
青山学院大学教育人間科学部:小田光宏(おだ みつひろ)
筆者は、本誌283号(2005年3月)において、レファレンスサービスに関する研究文献を対象にしたレビュー記事(CA1555 [242]参照)を著した。「レファレンスサービスの新しい潮流」と題するこの記事(以下、前稿と記す。)では、標題が示すように、「新しい」動向に着目して、当時の研究動向(潮流)を整理することを意図した。具体的には、2000年から2004年までに発行された文献を対象にした。当時、図書館員養成の教科書や事例集を除くと、図書としてまとめられた論考は極めて少なかったことから、雑誌ならびに紀要に掲載された記事及び報告書が中心となった。ただし、理論的な考究ばかりではなく、個別の図書館における実践報告であっても、単なる紹介に終わらず、著者の見解や提言が明確に示されているものについては、取り上げるよう努力した。また、大学等の紀要に掲載されている記事は、すべて学術文献とみなし、質を問わず取り上げた。その上で、「新しい潮流」という観点を意識し、研究手法ではなく研究テーマ・トピックに基づいて整理した。
この度、同様のレビューに取り組む機会を得たが、執筆に際しては前稿に準じることとした。タイトルを「潮の流れはいま」として、状況の変化に着目したからである。2005年当時の状況がその後どのように展開し、今日に至っているかを確認するには、捉え方をできるだけ共通にしておくほうがよいと認識したのである。対象とする文献は、2004年以降2017年3月までに刊行されたものとし、前稿に接続させるようにした。前稿にも記したことであるが、このようなレビューにおいては、レファレンスサービスとはどのような活動であるのか、また、どこまでの活動がレファレンスサービスとして位置付けられるのか、概念ないし定義が問題となる。本稿では、『図書館情報学用語辞典』(第4版)の解説(1)に基づく理解を行い、関係文献を渉猟した。ただし、利用者教育や情報リテラシー育成支援については、前稿と同じく取り上げていない。
さて、前稿では、4つの研究テーマを掲げて、新しいと考えられる動向を指摘した。その上で、ある程度、状況的あるいは論理的に予測される姿を提示した。 すなわち、研究テーマとして、「サービス実態の考究」「レファレンスサービスのモデル」「ネットワーク環境下でのレファレンスサービス」「レファレンスサービスの歴史・図書館事情」の4つを掲げ、関連する研究文献を位置付けた。その上で、「潮流の方向」と題する最終章において、3点の方向が期待されると指摘した。第一は、公立図書館と大学図書館に関する基礎データの収集が進んだことを踏まえて、これに基づく研究の深化を期待した。第二は、レファレンスサービスのモデルとの関係で、サービスの構造と図書館員の能力に関する研究の展開を求めた。第三は、ネットワーク環境下でのレファレンスサービスに関して、実際的なシステム構築が進み、実践的・実証的な研究や提案型の研究の進展を望んだ。
本稿は、今日のレファレンスサービスに関する研究状況を整理することになるが、その際、こうした4つの研究テーマや3つの方向性が、今日、どのような状況になっているかに関しても、適宜、確認することとしたい。
公立図書館を対象にした基礎データに関しては、2003年の全国公共図書館協議会による公立図書館対象の質問紙調査の結果(2)に対して分析が加えられ、同協議会より報告書が刊行され(3)、さらに発展的な研究の成果も著されている(4)。また、この時期、滋賀県と東京都多摩地域の市町村立図書館を図書館先進地域と捉え、そのレファレンスサービスに関する比較研究が、杉江により行われている(5)。杉江はその後、レファレンスサービスの特定の側面に関して調査を重ね、利用者イメージならびにレファレンスブックに関する論考を著している(6)。さらに、統計データに基づいて、公立図書館のレファレンスサービスの傾向を指摘した、安田の論考も登場している(7)。
基礎データの蓄積という点で特筆すべきは、2012年度の国立国会図書館(NDL)の調査研究「日本の図書館におけるレファレンスサービスの課題と展望」の実施であり、同名の報告書として成果が示されている(8)。このプロジェクトは、二つの大規模な調査から構成されている。一つは、公共図書館、大学図書館、専門図書館、国立図書館を対象に、レファレンスサービスの実態を確認するために実施した質問紙調査である。もう一つは、人々の情報行動とレファレンスサービスに対する認識を明らかにすることを目指して行われた聴取調査である。前者は基礎的な調査であり、後者は発展的な調査と位置付けられる。全国規模の実態調査という意味では、公共図書館に関しては、上述した全国公共図書館協議会の調査の後継として、大学図書館に関しては、1999年に実施された池谷らの調査(9)の後継ということになる。また、専門図書館と国立図書館に関しては、日本初のものとなる。
基礎的研究としては、調査データの採取とともに、実践事例が有用な研究素材となる。事例報告は、質の点で玉石混淆は避けられないが、レファレンスサービスの様相を確認できる記載を拾い出すことができる点で見逃すわけにはいかない。具体的には、東京都立中央図書館(10)、調布市立中央図書館(東京都)(11)、豊田市中央図書館(愛知県)(12)、埼玉県立図書館(13)に関して、実践あるいは実践を基盤にした提言などが確認できる。
インターネットの普及によりレファレンスサービスが変容したという主張を耳にするようになって久しい。レファレンス情報源が印刷メディアから電子メディアへと広がり、あるいは、取って代わられている。また、質問回答サービスにおいて、電子メールやインターネット上の受付サイトが用いられている。したがって、レファレンスサービスは、確かに変化しているのであろう。このことは、レファレンスサービスのモデルが変わりつつあると捉えることに等しい。言い換えれば、レファレンスサービスのあり方を改めて検討し直したり、新たな方法や形態でのレファレンスサービスを模索したりすることになる。実際に、本稿で扱う期間の文献を概観すると、レファレンスサービスに対して省察(振り返り)をしている論考、ネットワーク環境下でのレファレンスサービスの活動を扱った記事を、数多く見出すことができる。
まず、レファレンスサービスの省察、言い換えれば、再考・再検討を行なったものとしては、その意義を論じた渡邊の論文(14)や、理念を改めて検討した薬袋の考察(15)、特集の総論としてまとめられた田村の論考(16) がある。田村の論考は特集の総論としてまとめられたものであるが、その特集の記事(17)は全般的に、レファレンスサービスの捉え直しをするためのヒントとして、位置付けることができる。また、レファレンスライブラリーとして機能する都道府県立図書館のあり方を捉え直した小田の考察(18)も、省察に関係するものと位置付けることができよう。石原は、レファレンスサービスの「質」に関する概念や、「質」に対する認識を論じており(19)、このサービスの役割を捉え直すための基礎となる。さらに、インターネット上のQ&Aサイトと質問回答サービスとを比較した辻らの論文(20)は、現代社会におけるレファレンスサービス、正確には、質問回答サービスの存在意義を問いかけるものとなっている。
次に、新たな姿という意味では、ネットワーク環境下でのレファレンスサービスに関する考察は、数が多く、また、取り上げているトピックと館種の点で広がりがある。要するに、デジタルレファレンスサービスの進展に関する議論が盛んであることになるが、活用する情報源、サービスの仕組みや方法など、多様な観点に基づく主張が登場していることに留意する必要がある。前稿では、「初期には概念や概要を考察することに主眼を置いていたものが、やがて、問題設定を明確にした議論となり、現状分析に至るようになっている。そして、こうした研究を基盤にして、さらなる細分化がなされる。」と説明したが、議論の拡大と深化が進んでいる様相を確認することができる。
デジタルレファレンスサービスの概念と機能に関しては、図書館における実践の可能性や技術面での課題などが指摘されている(21)。また、外国の事例の紹介も続けられている(22)。最新の欧米の動向に関しては、本誌331号(2017年3月)に掲載された「デジタルレファレンスサービスの変化」で知ることができる(23)。『情報の科学と技術』の特集「デジタル・レファレンス・サービス」では、2006年当時の幅広い関心が確認できる(24)。なお、2000年代の専門図書館の動向については、西尾の展望記事が有用である(25)。こうした基礎的な検討に基づき、次第に、特定の側面に焦点を合わせた論考が登場する。具体的には、図書館利用者との関係(26)、特定のデジタル情報源の活用(27)、サービスの制約条件(28)、チャットレファレンスサービス(29)、発展的なシステム開発(30)などである。
デジタルレファレンスサービスの一形態である、NDLのレファレンス協同データベース事業は、実験事業段階を経て、2005年度から本格事業として実施され、今日に至っている。この事業は、館種を超えた全国的取り組み、協同でのデータベース構築、レファレンスサービスの成果共有に加え、研修活動や司書養成教育においてシステムが利用できるなど、他に例を見ない特徴があり、付加価値の高い仕組みである。関係する文献においても、特性に関する指摘(31)、蓄積されたデータの有効な使い方についての検討(32)が、提供側・参加館側双方により数多く発表されている。また、この事業を中心とした、レファレンスサービスの成果を共有する営みに対する分析も示されている(33)。
ビジネス支援、法律情報の提供、行政支援、健康・医療情報の提供は、2000年代の公共図書館の世界で頻繁に用いられるようになったキーワードである。これらの活動は、それぞれの主題に関係する資料・情報の提供が基本と考えられており、主題別レファレンスサービスと理解することができる。前稿の執筆時に、こうした活動はすでに始められていたが、考察として十分な厚みがあるとは言いがたかった。しかし、今日の状況に基づいて振り返ると、萌芽から実りに至る進展があったとみなせよう。一方、このようなサービスのアウトカムを考えれば、課題解決支援という捉え方をすることができる。全国公共図書館協議会は、2014年度と2015年度の調査研究活動のテーマを課題解決支援サービスとし、その実態と様相を調査して分析している(E1711 [243]参照)(34)。また、NDLの2013年度の調査研究は、地域活性化と公共図書館の経営に焦点を合わせているが、実質的には、地域における課題解決の問題を幅広く検討している(35)。二つの調査研究からは、課題解決支援に対するレファレンスサービスの働きが重要であることを読み取ることができる。
課題解決支援という考え方は、文部科学省の委託による「図書館をハブとしたネットワークの在り方に関する研究会」の検討結果において整理されているが、そこにおいても、レファレンスサービスの意義と役割に対する期待が示されている(36)。代表的な活動であり、比較的長く取り組みがなされているビジネス支援に対しては、支援に関する職員の能力(37)、情報源(38)、事例の分析や考察(39)などが著されている。同様に、法律情報や行政情報に関しても、公立図書館が積極的に関与することの意義を強調する文献(40)が散見される。また、行政情報の提供と重なるものとして、地域情報の提供に関する論考(41)があり、さらに、地域の観光情報に特化した事例を論じた文献(42)も登場している。
これらとは別に、健康・医療情報の提供に関する夥しい数の考察や指摘が存在する。しかも、公共図書館関係の専門誌ばかりではなく、医学図書館や病院図書館の専門誌の記事として著されていることに留意する必要がある。具体的には、この活動の必要性や役割を検討したもの(43)、国内外の取り組み事例を紹介したもの(44)が目立つ。また、関連する情報源に関して議論したもの(45)も少なくない。興味深いのは、学術的な検討や実態調査が進展していることである(46)。さらに、この活動に従事する職員の能力開発を意識した論考(47)があることも特徴的である。なお、健康・医療情報の提供を課題解決支援という文脈で理解することに対する石井の異論(48)に代表されるように、健康・医療情報の提供を課題解決のためのサービスと位置付けることに関しては、図書館界で議論の余地があるように見受けられる。
文献で考察の対象となっているレファレンスサービスは、実は、直接サービスとしての性質を有する質問回答サービスに限定されていることが少なくない。言い換えれば、レファレンス情報源の整備、レファレンスツールの作成、マネジメントと環境整備などの側面を扱った文献は多いとは言えない。しかし、この10年ほどの文献を展望すると、パスファインダーに関するものは例外である(49)。その中には、レファレンスサービスとの関係を強く意識したもの(50)も見受けられ、レファレンスサービスの成果をもとにした活動が広がりつつあることが確認できる。中でも鹿島によるパスファインダー作成に関する著作(51)は、図書館において、パスファインダーが受容されたことを明確に示すものと考えられる。なお、パスファインダーは、学校教育における教材として注目されており、それと歩調を合わせるかのように、学校図書館におけるレファレンスサービスの展開もまた、前稿以降に見られる新たな潮の流れと言ってよい。『学校図書館』において特集記事が組まれ(52)、また、多様な考察が著されている(53)。
こうした裾野の広がりと対照的に、レファレンスインタビューに関する考察(54)やレファレンスツールに関する研究(55)は、極めて少ない。歴史研究に関しては、前川の一連の論考(56)はあるものの、潮流とみなせるものにはなっていない。また、レファレンスサービス教育に対する検討(57)も、盛んであるとは言いがたい。
一方、レファレンスサービスに関する応用的、あるいは、実証的な研究が登場しており、新たな研究の萌芽が見られる。まず、レファレンス記録・レファレンス事例に基づく研究が進められている。具体的には、レファレンスサービスに従事する職員に焦点を合わせた論考(58)、レファレンス事例を研究の素材として展開させた取り組み(59)がある。次に、レファレンスサービスの価値は、その質的側面にあることは、誰しも了解するところではあるが、それをどのように測定し評価するかは、これまで十分に取り組まれてこなかった課題である。この点に関して、意欲的な取り組みが見られることは、大きな成果と言うことができる(60)。さらに、レファレンスライブラリアンの知識や技術を対象にした研究が現れていることは興味深い。具体的には、レファレンス担当者の研修プログラムに関する実証研究(61)が行われ、また、その知識や技術の活用につながる高田の一連の著作(62)がある。
レファレンスサービスの潮の流れは、様々なうねりとなって、今日の図書館の活動を取り巻いている。
(1)次のように定義されている。
「何らかの情報あるいは資料を求めている図書館利用者に対して,図書館員が仲介的立場から,求められている情報あるいは資料を提供ないし提示することによって援助すること,およびそれにかかわる諸業務.」
(2)全国公共図書館協議会編. 公立図書館におけるレファレンスサービスに関する実態調査報告書. 2004, 52p.
http://www.library.metro.tokyo.jp/Portals/0/15/pdf/rallchap.pdf [244], (参照 2017-08-10).
(3)全国公共図書館協議会編. 公立図書館におけるレファレンスサービスの実態に関する研究報告書. 2005, 121p.
http://www.library.metro.tokyo.jp/Portals/0/15/pdf/r2allchap.pdf [245], (参照 2017-08-10).
結果の分析は、小田光宏「公立図書館におけるレファレンスサービスの課題」と題する論文に示されている。
(4)全国公共図書館協議会編. 公立図書館におけるレファレンスサービスに関する報告書. 2006, 59p.
http://www.library.metro.tokyo.jp/Portals/0/15/pdf/r05_allchap.pdf [246], (参照 2017-08-10).
発展的な研究成果として、小田光宏「レファレンスサービスの改善と向上に向けてのガイドライン」が収載されており、ガイドライン(案)が提示されている。
(5)杉江典子. 図書館先進地域の市町村立図書館におけるレファレンスサービスの特性:滋賀県と東京都多摩地域の比較をもとに. 日本図書館情報学会誌. 2005, 51(1), p. 25-48.
http://doi.org/10.20651/jslis.51.1_25 [247], (参照 2017-08-10).
なお、この論文は、次の二つの論考が基盤となっている。
杉江典子. 公共図書館におけるレファレンスサービスの現状:滋賀県の事例. Library and Information Science. 2000, (43), p. 1-32.
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http://koara.lib.keio.ac.jp/xoonips/modules/xoonips/detail.php?koara_id=AN00003152-00000046-0037 [249], (参照 2017-08-10).
(6)杉江典子. 公共図書館におけるレファレンスサービスの利用者像:半構造化インタビューによる基礎調査. 三田図書館・情報学会研究大会発表論文集. 2005, p. 25-28.
杉江典子. わが国の市町村立図書館におけるレファレンスサービスの利用者に関する既往調査の傾向. 日本図書館情報学会誌. 2008, 54(2), p. 117-131.
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(17)特集:レファレンス再考. 情報の科学と技術. 2008, 58(7), p. 321-352.
前掲(16)を除く収載記事は、次のとおりである。
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http://doi.org/10.18919/jkg.58.7_329 [259], (参照 2017-08-10).
余野桃子. 図書館のビジネス支援サービスにおける「個人」と「組織」のスキルアップ. 情報の科学と技術. 2008, 58(7), p. 335-340.
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茂出木理子. ラーニング・コモンズの可能性:魅力ある学習空間へのお茶の水女子大学のチャレンジ. 情報の科学と技術. 2008, 58(7), p. 341-346.
http://doi.org/10.18919/jkg.58.7_341 [261], (参照 2017-08-10).
増田英孝ほか. 自動レファレンスサービスにむけて. 情報の科学と技術. 2008, 58(7), p. 347-352.
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鈴木一弘, 高杉幸史, 森田百合子. デジタル環境下におけるレファレンスサービスの諸相. 私立大学図書館協会会報. 2006, (126), p. 116-129.
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http://current.ndl.go.jp/ca1636 [268], (参照 2017-08-10).
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http://current.ndl.go.jp/ca1895 [269], (参照 2017-08-10).
(24)特集 デジタル・レファレンス・サービス. 情報の科学と技術. 2006, 56(3), p. 83-113.
収載記事は、次のとおりである。
小田光宏. 総論:デジタル・レファレンス・サービスの現在. 情報の科学と技術. 2006, 56(3), p. 84-89.
http://doi.org/10.18919/jkg.56.3_84 [270], (参照 2017-08-10).
依田紀久. レファレンス協同データベース事業に見るデジタルレファレンスサービス. 情報の科学と技術. 2006, 56(3), p. 90-95.
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林賢紀ほか. QuestionPoint:導入事例と今後の予定. 情報の科学と技術. 2006, 56(3), p. 96-102.
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兼宗進. デジタル・レファレンス・ツールとしてのWikipedia. 情報の科学と技術. 2006, 56(3), p. 103-107.
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渡邊隆弘. 典拠コントロールの現在:FRARとLCSHの動向. 情報の科学と技術. 2006, 56(3), p. 108-113.
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(51)愛知淑徳大学図書館インターネット情報資源担当編. パスファインダー・LCSH・メタデータの理解と実践:図書館員のための主題検索ツール作成ガイド. 愛知淑徳大学図書館, 2005, 175p.
鹿島みづき. パスファインダー作成法:主題アクセスツールの理念と応用. 樹村房, 2016, 174p.
なお、鹿島には、次の関係著作もある。
愛知淑徳大学図書館編. レファレンスサービスのための主題・主題分析・統制語彙. 勉誠出版, 2009, 203p.
(52)特集・レファレンスツールの整備と活用. 学校図書館. 2005, (657), p. 12-48.
特集・教職員への情報サービス. 学校図書館. 2008, (690), p. 15-48.
(53)江竜珠緒. 学校図書館における情報サービス:明治高等学校中学校図書館の実践. 明治大学図書館情報学研究会紀要. 2010, (1), p. 31-36.
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三澤勝己. 学校図書館における情報サービスの意義と重要性. コミュニケーション文化. 2015, 9, p. 173-180.
島津芳枝. 「レファレンス」を知ってもらうために:宇佐市民図書館の学校業務を支援するレファレンス研修. みんなの図書館. 2016, (474), p. 28-40.
(54)矢崎美香. レファレンス・インタビュー:インタビュースキルと環境. 図書館学. 2007, (91), p. 35-42.
矢崎美香. 図書館情報リテラシー教育とレファレンス・サービス:学生にとってのレファレンス・インタビュー効果. 図書館学. 2011, (99), p. 30-36.
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前川和子. 第二次世界大戦後図書館現職者教育におけるF.チェニーのレファレンス教育. 図書館文化史研究. 2013, (30), p. 55-75.
前川和子. F.チェニーを通してみるアメリカにおけるレファレンスサービス論成立期の検証. 大手前大学論集. 2013, (14), p. 217-228.
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前川和子. 日本図書館学校においてレファレンス教育に使用された渋谷国忠論文の考察. 大手前大学論集. 2014, (15), p. 165-181.
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熊谷紀男. 司書講習科目「レファレンスサービス演習」における指導方法の改善の試みについて. 常葉学園大学研究紀要. 2008, (28), p. 115-122.
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桂まに子. 情報サービス演習と「レファレンスPOP」:発信型情報サービス向上の一助となる新ツールの開発. 京都女子大学図書館情報学研究紀要. 2013, (1), p. 15-27.
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(58)谷本達哉. レファレンス事例データベース協同構築事業における事例データ登録に対する担当者の意識に関する考察. 図書館界. 2015, 67(3), p. 166-181.
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間部豊. レファレンス質問に対応する公共図書館職員の変容に関する質的調査. 図書館雑誌. 2015, 109(5), p. 293-295.
(59)間部豊, 小田光宏. レファレンス質問への回答を可能にしたレファレンスブックの特性に関する研究. 日本図書館情報学会誌. 2011, 57(3), p. 88-102.
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中尾康朗. レファレンス事例とパスファインダーを用いたレファレンスサービス支援システムに関する考察. 図書館学. 2013, (102), p. 9-18.
矢崎美香. 学習スキルの向上に資するポートフォリオ型レファレンス記録の構築と効果. 日本図書館情報学会春季研究集会発表論文集. 2014, p. 11-14.
(60)小池信彦ほか. レファレンスサービスの評価に関する文献展望. 現代の図書館. 2006, 44(1), p. 4-10.
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五十嵐花織, 須賀千絵. レファレンスサービス評価法としての覆面調査の設計と試行:日本の公共図書館を対象とした調査方法の提案. 図書館界. 2011, 63(3), p. 232-246.
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(61)小田光宏. 「レファ協」研修モードを活用した研修活動の実践. 現代の図書館. 2013, 51(1), p. 27-34.
小田光宏. 成果共有型ネットワークを活用したレファレンス研修プログラムの有効性に関する実証的研究. 図書館界. 2013, 64(5), p. 310-326.
http://doi.org/10.20628/toshokankai.64.5_310 [321], (参照 2017-08-10).
(62)高田高史. 図書館が教えてくれた発想法. 柏書房, 2007, 253p.
高田高史. 図書館のプロが伝える調査のツボ. 柏書房, 2009, 310p.
高田高史. 図書館で調べる. 筑摩書房, 2011, 175p.
[受理:2017-08-15]
小田光宏. レファレンスサービスの潮の流れはいま. カレントアウェアネス. 2017, (333), CA1908, p. 17-23.
http://current.ndl.go.jp/ca1908 [322]
DOI:
https://doi.org/10.11501/10955544 [323]
Oda Mitsuhiro
The “Tide” of Reference Services in Current Japanese Libraries
Reviewed here are more than one hundred and sixty items published between 2005 and March 2017, as books and articles in professional/academic journals/proceedings, on the reference services in Japanese libraries. After mentioning the premise and background of the review, the author discusses and explains the current situation and trends of reference services in three topics; the progress of primary research on the reference services, digital reference service as another option, and flowering of subject reference services. Finally, he points out future prorspects of the services.
PDFファイル [327]
大妻女子大学短期大学部:中山愛理(なかやま まなり)
公共図書館における郵送・宅配サービスは、決して新しいサービスではなく、日本では障害者に対するサービスの一環として取り組まれてきた(1)。近年、郵送・宅配サービスの対象者を障害者から高齢者、子育て世代、一般市民へと拡大する公共図書館が増えつつある。本稿では、文献やウェブサイトで確認できた郵送・宅配サービスについて、図書館サービスでの位置づけを踏まえつつ、対象者別に、申込み方法、郵送・宅配方法、費用負担、サービス内容等の点から整理し、紹介していく。
「図書館の設置及び運営上の望ましい基準」(平成24年12月19日文部科学省告示第172号)では、市町村立図書館(都道府県立図書館にも準用)による「利用者に対応したサービス」の1つとして、「(図書館への来館が困難な者に対するサービス)宅配サービスの実施」が例示されている(2)。同基準では、どのような理由で図書館への来館が困難であるかは明示されていないことから、来館困難の理由やそれに基づく対象範囲は各都道府県・市町村立図書館の判断にゆだねられている。
また、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律への対応策を日本図書館協会(JLA)障害者サービス委員会がまとめた「図書館における障害を理由とする差別の解消の推進に関するガイドライン」(E1800 [328]参照)には、合理的配慮の一例として、「自宅に出向いての貸出」や「職員による宅配サービス:来館が困難な人が対象(主に市町村立図書館)」と記されている(3)。
日本の公共図書館の多くは、肢体不自由者や視覚障害者に向けて、何らかの方法で郵送・宅配サービスを実施している。
サービス対象者は、身体障害者手帳、療養手帳、精神障害者福祉手帳の交付を受けている者とし、対象等級は1・2級とする場合が多い。このほか、戦傷病者手帳の交付や介護保険法の要介護5の認定を受けた者を対象に含める図書館もある。対象者の細かな条件は図書館ごとに異なる。サービスの申込み方法は、直接来館のほかに、郵送や代理人による申請を認めることで、来館が困難な対象者に配慮している。郵送・宅配料について、点字郵便物、特定録音物等郵便物は郵送料が無料とされており、重度の身体障害者・知的障害者を念頭におく心身障害者用ゆうメールは基本料金の約半額に減免されている。図書館の費用負担が比較的少ないこともあり、郵送・宅配料を図書館負担とすることが一般的であるが、返送は利用者負担としているさいたま市立図書館(4)や静岡市立図書館(5)のような図書館も存在する。また、ボランティアによる宅配によって利用者の費用負担を生じさせない工夫をしている新宿区立図書館(東京都)(6)や藤沢市図書館(神奈川県)(7)、生駒市図書館(奈良県)(8)のような図書館もある。これらの図書館ボランティアによる宅配は、次節で紹介する高齢者や要介護者もサービス対象に含まれている。
塙町立図書館(福島県)(9)では、2009年4月より「高齢者世帯宅配」を実施している。高齢化率が約32%の塙町において、高齢者の生きがいづくりサポート事業と読書活動の推進を図ることを目的として、町内の70歳以上の1人世帯へ、図書館の資料を月2回、10冊まで図書館員が宅配して貸出しを行っている。
府中市立図書館上下分室(広島県)(10)では、2013年10月より分室周辺の地区に居住する70歳以上の高齢者を対象に1回10冊まで1か月貸出す際に、図書館員が宅配するサービスを実施している。
これらの事例では図書館員が宅配することで利用者に費用負担が生じないような工夫がみられる。
大分県立図書館(11)では、2006年9月より大分県に居住する乳幼児の保護者や妊婦、子育て支援活動者等を対象に「おすすめ絵本・育児書の宅配セット貸出」を実施している。定評のある育児書やおすすめの絵本等を5冊セットにして1回4セットまで、貸出期間30日以内で提供するもので、宅配料はすべて利用者負担となっている。
宝塚市立図書館(兵庫県)(12)では、後述するすべての市民を意識した郵送・宅配サービスを利用者負担で実施しているが、2012年6月より子育て世代に対しては、無料郵送貸出(育児・介護サポートサービス)として月1回5冊程度を無料で郵送するサービスを実施している。
筆者が、各館のウェブサイトで郵送・宅配サービスの実施状況を調査した限りでは、都道府県立図書館のうち、すべての住民を対象として郵送・宅配サービスを実施している図書館は、北海道立図書館「インターネット予約貸出サービス」(13)、秋田県立図書館(14)及び山形県立図書館(15)「図書宅配サービス」、福島県立図書館「資料宅配サービス」(16)、埼玉県立図書館「図書及びCD郵送サービス」(17)、神奈川県立図書館「宅配貸出サービス」(18)、県立長野図書館「宅配による貸出」(19)、宮崎県立図書館「図書館資料宅配サービス」(20)等があり、特に東日本で取り組まれている傾向がみられる。また、県庁所在地及び政令指定都市での実施状況をみると、宇都宮市立図書館(栃木県)「図書宅配サービス」(21)、横浜市山内図書館「有料宅配サービス」(22)、広島市立図書館「有料図書宅配サービス」(23) 、高松市図書館(香川県)「資料郵送貸出サービス」(24)等がある。
さらに、全国の自治体に目を向けると、恵庭市立図書館(北海道)「高齢者等図書宅配サービス」(25)、つくば市立中央図書館(茨城県)「図書送付貸出しサービス」(26)、鎌倉市図書館(神奈川県)(27)及び横須賀市立図書館(神奈川県)「図書宅配便」(28)、宝塚市立図書館「郵送貸出」(29)、筑後市立図書館(福岡県)「だれでも利用できます!宅配サービス」(30)、出水市立図書館(鹿児島県)「宅配サービス『本で見守り隊』」(31)等ですべての市民を対象に郵送・貸出サービスを実施している。
郵送・宅配サービスを利用するためには、事前にサービス申込書を来館・郵送・FAX等で提出し、利用登録を求める図書館が多い。郵送・宅配してもらう資料は、電話や図書館ウェブサイトの資料予約ページから申し込む例が多い。貸出冊数や期間は、各図書館の規程を準用するところが多いが、窓口での通常の貸出期間よりも長く貸出し、郵送期間を考慮して柔軟に対応する図書館もある。
費用負担については、利用者に配送料を着払いで負担してもらい、返送も利用者負担としていることが一般的である。なお、返却は、直接図書館窓口へ持参してもよいとしている図書館が多い。そうしたなかで、筑後市立図書館は、市内の商店街が運営する宅配サービス「ちくごいきいき宅配便」(32)を活用することで、利用者が宅配料を負担することなく利用できるようになっている。
すべての市民を対象に郵送・宅配サービスを実施する背景には、障害をもつ以外にも何らかの要因で来館できない潜在的利用者を取り込もうという意識が窺える。具体的には、来館を困難にさせる要因をどのように想定してサービスを実施しているのだろうか。
恵庭市立図書館では、「子どもが小さいと図書館に行くのが大変。特に冬は、雪が降ると外へ出るのがおっくうだ」という市民の声に対応するためであった(E1742 [329]参照)。宇都宮市立図書館では、遠隔地に居住しているなどの理由により開館時に利用することが困難な場合を想定している(33)。つくば市立中央図書館では、図書館・交流センター・自動車図書館を開館中に利用できない市民や遠隔地の住民による所蔵資料活用促進を意図している(34)。また、鎌倉市図書館では、「図書館が遠い」、「なかなかいけない」と図書館と縁遠くなってしまっている市民(35)、宝塚市立図書館では、読みたい本はいっぱいあるのに、忙しくてなかなか図書館まで行けないという市民(36)、高松市立図書館では、高齢者や身体障害者に加え、遠隔地に住んでいるなどの理由で、図書館を利用しにくい市民(37)、出水市立図書館でも、高齢に加え、交通手段がない等の理由で図書館に行けない市民(38)を想定しており、市民の生活スタイルにあった方法へとサービスの幅を広げている。
本稿でみてきた郵送・宅配サービスは、アウトリーチサービスとしても捉えることができる。そもそも、「外部へなにかを届ける」という意味をもつアウトリーチサービスとは、対象者の潜在的なニーズに基づく、伝統的な図書館サービスに加えて行われる、実験的、試行的、臨時的サービスである。従来の図書館サービスでは、十分にフォローできていなかった子育て世代や開館時間中に来館できない利用者に向けた新たな試みは、まさにアウトリーチサービスの考えに合致するものである(39)。アウトリーチサービスは、人手と費用を要するという特徴があり、その経費の一端である郵送・宅配料の負担を利用者に求めることで、新たな予算の確保をせずともサービスとして成り立たせようとしている。
また、公共図書館における郵送・宅配サービスは、近年注目を集めている「シェアリングエコノミー」の考え方や方法とも親和性をもっている(40)。「シェアリングエコノミー」には、インターネットを通して申し込まれた被服や鞄といったものを申込者へ郵送・宅配により届け、利用後に返送してもらう方法が含まれている。このような商業的サービスが社会に広まりつつあることは、一般市民が公共図書館における郵送・宅配を受け入れる素地が整ってきていることを意味している。
(1) 障害者サービスの一環として、1957年4月、秋田県立秋田図書館で墨字図書の郵送貸出を実施した例がある。
渡辺勲. “日本における図書館の障害者サービス年表”. 図書館と国際障害者年: 情報へのアクセスの平等を求めて: 1981-1990. 河村宏編集日本図書館協会, 1982, p.110.
(2) 文部科学省生涯学習政策局社会教育課. “図書館の設置及び運営上の望ましい基準(平成24年文部科学省告示第172号)について”. 文部科学省. 2012. 76p.
http://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/tosho/001/__icsFiles/afieldfile/2013/01/31/1330295.pdf [330],(参照 2017-04-20).
(3) “図書館における障害を理由とする差別の解消の推進に関するガイドライン”. 日本図書館協会. 2016. 18p.
http://www.jla.or.jp/portals/0/html/lsh/sabekai_guideline.pdf [331],(参照 2017-04-20).
(4) “宅配による貸出サービスについて”. さいたま市図書館.
https://www.lib.city.saitama.jp/contents;jsessionid=CEBA5B8C2F3AB0EEB9732A49F9772F6F?0&pid=771 [332], (参照 2017-04-20).
(5) “郵送等による図書の貸出”. 静岡市立図書館.
http://www.toshokan.city.shizuoka.jp/?page_id=235 [333], (参照 2017-04-20).
(6) “図書館に来ることが困難な方へ”. 新宿区.
https://www.city.shinjuku.lg.jp/library/index12.html [334], (参照 2017-04-20).
(7) “ハンディキャップサービス”. 藤沢市図書館.
https://www.lib.city.fujisawa.kanagawa.jp/guide_30.html [335], (参照 2017-04-20).
(8) “「本の宅配ボランティア」がおもてなし…来館困難者に手渡しサービス 奈良県生駒市”. 産経WEST. 2015-06-19.
http://www.sankei.com/west/news/150619/wst1506190029-n1.html [336], (参照 2017-04-20).
“催し物案内:来館するのが困難な人に本の宅配サービスをしています”. 生駒市図書館.
http://lib.city.ikoma.lg.jp/toshow/moyoosi.html [337], (参照 2017-04-20).
(9) “町立図書館 本を自宅へ配達します”. 塙タイムス. 2010-07-23.
http://blog.livedoor.jp/hanawatimes/archives/51569519.html [338], (参照 2017-04-20).
“本の宅配サービスのご案内”. 図書館だより. 2017. 平成29年2月号.
http://www.town.hanawa.fukushima.jp/data/doc/1486605942_doc_10_1.pdf [339] , (参照 2017-05-01).
(10) 筒井晴信. 市立図書館上下分室 お年寄りに本を配達: 難しい外出 利便性図る. 中国新聞. 2014-06-17, 朝刊, p.23.
(11) “いつでも、どこでも、誰でも 読みたい本をお届けします大分県立図書館の「宅配貸出」のお知らせ”. 大分県立図書館豊の国情報ライブラリー.
http://library.pref.oita.jp/kento/guide/service-guide/posting_service.html [340], (参照 2017-04-20).
要覧(抜粋版). 平成27年度, 大分県立図書館, 39p.
http://kyouiku.oita-ed.jp/syakai/H27大分県立図書館要覧(抜粋版).pdf [341], (参照 2017-05-01).
(12)“郵送貸出”. 宝塚市立図書館.
https://www.library.takarazuka.hyogo.jp/guide/yuusou.html [342], (参照 2017-04-20).
(13) “インターネット予約貸出サービスとは”. 北海道立図書館.
http://www.library.pref.hokkaido.jp/web/service/reserve/ [343], (参照 2017-04-20).
(14) “図書宅配サービスについて”. 秋田県立図書館.
https://www.apl.pref.akita.jp/guide/takuhai.html [344],(参照 2017-04-20).
(15) “図書宅配サービス”. 山形県立図書館.
https://www.lib.pref.yamagata.jp/?page_id=260 [345], (参照 2017-04-20).
(16) “資料宅配サービス”. 福島県立図書館.
https://www.library.fks.ed.jp/ippan/riyoannai/takuhai.html [346], (参照 2017-04-20).
(17) “図書及びCD郵送サービスのご案内”. 埼玉県立図書館.
https://www.lib.pref.saitama.jp/stplib_doc/service/yuso_service/tosho_yuso_service.html [347], (参照 2017-04-20).
(18) “宅配貸出サービスのご案内”. 神奈川県立の図書館.
https://www.klnet.pref.kanagawa.jp/common/takuhaia.htm [348], (参照 2017-04-20).
(19) “利用案内”. 県立長野図書館.
http://www.library.pref.nagano.jp/guidance/usage [349],(参照 2017-04-20).
(20) “宮崎県立図書館 図書館資料宅配サービスについて”. 宮崎県立図書館.
http://www2.lib.pref.miyazaki.lg.jp/?page_id=460 [350], (参照 2017-04-20).
(21) “図書宅配サービス”. 宇都宮市立図書館.
http://www.lib-utsunomiya.jp/?page_id=263 [351], (参照 2017-04-20).
(22) “青葉区における有料宅配サービスのご案内”. 横浜市山内図書館.
http://yamauchi-lib.jp/about/images/takuhai.pdf [352], (参照 2017-04-20).
(23) “利用案内”. 広島市立図書館.
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(28) “図書宅配便の利用案内”. 横須市立図書館.
https://www.yokosuka-lib.jp/contents/ksaku/takuhai.html [358], (参照 2017-04-20).
(29) “郵送貸出”. 宝塚市立図書館.
https://www.library.takarazuka.hyogo.jp/guide/yuusou.html [342], (参照 2017-04-20).
(30) “利用あんない”. 筑後市立図書館.
http://library.city.chikugo.lg.jp/riyou.html [359], (参照 2017-04-20).
(31) “宅配サービス”. 出水市立図書館.
http://www.izumi-library.jp/takuhai.html [360], (参照 2017-04-20).
(32) “図書館の本などを商店街の宅配サービスで配送 【福岡県筑後市・羽犬塚商店街・中央商店街】”. EGAO. 2013-11-26.
http://syoutengai-shien.com/news/201311/26-01.html [361], (参照 2017-04-20).
(33) “図書宅配サービス”. 宇都宮市立図書館.
http://www.lib-utsunomiya.jp/?page_id=263 [351], (参照 2017-04-20).
(34) “図書送付貸出しサービス”. つくば市立中央図書館.
http://www.city.tsukuba.ibaraki.jp/14214/14274/9054/009235.html [356], (参照 2017-04-20).
(35) “図書宅配便内”. 鎌倉市図書館.
https://lib.city.kamakura.kanagawa.jp/riyo_guide01.html [357], (参照 2017-04-20).
(36) “郵送貸出”. 宝塚市立図書館.
https://www.library.takarazuka.hyogo.jp/guide/yuusou.html [342], (参照 2017-04-20).
(37) “図書館サービス”. 高松市図書館.
https://library.city.takamatsu.kagawa.jp/use/service.html [354], (参照 2017-04-20).
(38) “宅配サービス”. 出水市立図書館.
http://www.izumi-library.jp/takuhai.html [360], (参照 2017-04-20).
(40) レイチェル・ボッツマン, ルー・ロジャース. “所有よりもすばらしい”. シェア: <共有>からビジネスを生みだす新戦略.関美和訳. NHK出版, 2010, p.130-157.
[受理:2017-05-15]
中山愛理. 公共図書館における郵送・宅配サービスの動向. カレントアウェアネス. 2017, (332), CA1897, p. 2-4.
http://current.ndl.go.jp/ca1897 [363]
DOI:
http://doi.org/10.11501/10369296 [364]
Nakayama Manari.
Books by Mail Service and Delivery Service in Public Libraries.
PDFファイル [371]
法政大学キャリアデザイン学部:高橋恵美子(たかはし えみこ)
『全国の学校図書館に人を!の夢と運動をつなぐ情報交流紙 ぱっちわーく』(以下『ぱっちわーく』とする)が、2017年3月、286号をもって終刊となった。創刊は1993年5月、全国の学校図書館の充実と「人」の配置を実現する夢と運動をつなぐ情報交流紙として、国の動きや各地の運動、新聞記事などを、原資料の転載も含め、丁寧に伝えてきた。『ぱっちわーく』は、全国各地の学校図書館充実運動を支えるうえでも、また学校図書館研究のための情報源としても、大きな役割を果たしてきた。『ぱっちわーく』発行を支えたのは、事務局を担当する岡山市の小中学校司書(元学校司書を含む)であり、全国に広がる発行同人であった。当事者の視点からの記事には、発行人であった梅本による記事がある(1)が、本稿では、学校図書館研究の情報源としての『ぱっちわーく』の意義や重要性をまとめてみたい。
『ぱっちわーく』は、創刊号から3号まではこの名称だったが、4号(1993年9月8日)からは『全国の学校図書館に人を!の夢と運動をつなぐ情報交流紙 ぱっちわーく』となった。『ぱっちわーく』の名称は、兵庫県の元学校司書土居陽子が名付けたものという。発行当初は隔月刊を考えていたとのことだが、2号から月刊となった(2)。創刊時の1993年は、学校図書館に「専任の専門職員を」という運動が全国各地に広がりつつあった時期で、運動のための情報交流紙が求められていた。1990年代以降の小中学校への学校司書配置実現の背景には、全国の「学校図書館を考える会」といった市民運動の存在があった。そうした運動を結びつけ、必要な情報を提供した『ぱっちわーく』の活動の意義は大きい。
『ぱっちわーく』は情報交流紙であったが、それ自体が、学校図書館充実のための運動体の側面もあった。たとえば、1994年から95年にかけて、創刊1周年記念「全国縦断 学校図書館を考えるつどい」(富山市、鳥取市、札幌市、東京都北区、長崎県時津町、香川県丸亀市)を開催している。学校図書館に関心のある市民、PTA等の保護者、教師、司書などを集め、学校図書館に「人」がいることで何ができるかを伝え、話し合うつどいである。開催地によって内容が異なるが、ビデオ『本があって、人がいて』(1991年制作)の上映が行われたり、岡山市の小中学校の司書による実践報告が行われたりしたつどいもあった。
ビデオ『本があって、人がいて』は、学校司書がいる岡山市の小中学校の学校図書館の姿や子どもたちの様子、司書の活動を具体的に伝える内容だった。当時各地の学校図書館を考える会は、この「ビデオを見る会」から活動を始めるところが多かった。『ぱっちわーく』は1994年6月から、購読者に対してこのビデオの貸し出しを始めている。この活動もまた『ぱっちわーく』の運動体としての側面を伝えるものである。
「全国縦断 学校図書館を考えるつどい」は、2000年から2001年にかけて「Part2」(埼玉県所沢市、横浜市、札幌市)が取り組まれた。
『ぱっちわーく』が伝えてきた情報は、1993年以降の学校司書及び学校図書館をめぐる状況を研究するうえで欠かせない情報となっている。掲載記事の内容は、大きく三つに分けられる。(1)全国各地の運動や動向、(2)国の動向、(3)その他、である。
全国各地の運動や動向を伝えることは、『ぱっちわーく』創刊の目的でもある。具体的には「わたしの街・町・まちから」、「新聞あんな記事こんな記事」「学校図書館の「人」をめぐる動き」などの記事があげられる。「わたしの街・町・まちから」は創刊号から終刊号までほぼ継続した記事で、全国各地の運動や会の活動、イベントのお知らせや報告を伝える記事である。運動を伝える記事では実際の要望書・請願書等も含めて伝えている。
「新聞あんな記事こんな記事」は、折々の学校図書館の動きをコンパクトに伝える記事とともに、通常目にすることのない全国紙の地方版や地方紙の学校図書館関係の記事がとりあげられているのが、貴重である。記事は新聞社の許可を得て転載している。
「学校図書館の「人」をめぐる動き」は、当初は自治体ごとに行われた司書配置の情報を短文で伝える記事だったが、2007年ごろから求人情報の形式に変わっていく。この記事に関して、発行同人の一員でもある大阪教育大学名誉教授の塩見昇は終刊号(286号)に「通覧すると、いまの「学校司書」がいかに多様で、雇用条件に格差が大きいかをリアルに語っており、貴重な動向記事である」(3)と書いている。
また「Piece Quilt 全国で学校図書館づくりにとりくんでいる会一覧」は、『ぱっちわーく』でなければできない記事である。「考える会」同士の情報交流のために、名称、代表者、連絡先、活動内容などをまとめている。32号(1996年1月21日)、63号(1998年8月16日)、114号(2002年11月27日)、161号(2006年10月15日)に掲載されている。掲載後に追加記事(会の追加、訂正等)がある場合もあるが、一覧掲載時の会の数は、それぞれ51(32号)、59(63号)、63(114号)、86(161号)となっている。学校図書館づくりに取り組んでいる会が年々全国に広がっていることがわかる。
各地の動きでは、1990年に全校配置された日野市(東京都)の学校司書(学校図書館事務嘱託員)について、同市の教育委員会が、1997年の学校図書館法改正後に平成15年(2003年)3月31日限りで打ち切ることを決めたことに対して、制度継続を訴えるアピール(日野市の学校図書館をよくする会)を69号(1999年2月21日)に掲載している。学校図書館法改正時の附帯決議で「現に勤務するいわゆる学校司書がその職を失う結果にならないよう配慮する」(4)とあるにもかかわらず、制度を廃止した事例があったことや、それへの反対運動があったことを知ることができる。
また2006年から毎年1回掲載された学校図書館を考える全国連絡会「東京都公立小・中学校の学校図書館職員(学校司書等)配置状況」も貴重な資料である。2006年、東京都で学校図書館職員を配置した自治体(区・市等)の数は28(掲載は158号、2006年7月16日)、2016年では47(掲載は280号、2016年9月18日)であり、職名や配置形態(専任・兼任等)、資格要件などが、表で示されている。
国の動向についても、詳細な資料を含め充実した記事を掲載している。たとえば、学校図書館の機能を読書センター、学習情報センターと位置付けたのは、文部省(当時)が設置した児童生徒の読書に関する調査研究協力者会議が1995年に公表した「児童生徒の読書に関する調査研究協力者会議 報告」である。この報告は28号(1995年9月27日)に、その前段階の「児童生徒の読書に関する調査研究協力者会議 中間まとめ」は18号(1994年11月13日)に、それぞれ全文掲載されている。
また、1997年、2014年の学校図書館法改正の動きについても、国の動き、新聞報道、国会会議録、各関係団体の見解などを伝えている。1997年の法改正に関しては、この改正が「学校司書の制度化」を内容としていないことを説明する自由民主党「学校司書教諭に関する小委員会」調査報告、学校司書を専任の司書教諭とする「社会民主党法案」の二つが、34号(1996年3月17日)に掲載されている。2014年の法改正の際には、230号(2012年7月15日)及び号外(2012年7月16日)において、法改正の動きに関する記事や、関連資料を紹介している。
また近年の文部科学省「学校図書館担当職員の役割及びその資質能力の向上に関する調査研究協力者会議」(2013年度)「学校図書館の整備充実に関する調査研究協力者会議」(2015~2016年度)、それぞれの報告について学校図書館関係者がどう読んだかを伝える特集も組んでいる。前者(5)については252号(2014年5月18日)、後者(6)は283号(2016年12月18日)である。
その他では、折々の連載記事がある。以下にあげる。
上記連載記事のほかには講演録、イベント案内、イベント参加報告等がある。
『ぱっちわーく』には、年1回Scrap Quiltという名称の「記事と新聞記事索引」がある。都道府県ごとにどのような記事と新聞記事があったかを示すもので、特定の地域にしぼって情報を探すことができる。
以上見てきたように、『ぱっちわーく』は、学校図書館の、特に学校司書に焦点を当てて研究する研究者には、貴重な情報源であった。2017年3月をもっての終刊は惜しまれるが、日本の学校図書館の歩みを知る上で、これからも貴重な資料である。
(1) 梅本恵. 特集, トピックスで追う図書館とその周辺: 『ぱっちわーく』終刊:学校図書館の「人」をめぐる情報交流を続けて. 図書館雑誌. 2017, 111(2), p.82-83.
(2) 梅本恵. 編集後記. ぱっちわーく. 1993, (2), p.20
(3) 塩見昇. 『ぱっち』の終刊と学校図書館運動の課題. ぱっちわーく. 2017, (286), p.3-7.
(4) 第百四十回国会衆議院会議録第四十一号. 官報(号外). 1997-06-03. p.16.
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/140/0001/14006030001041.pdf [372], (参照2017-04-19).
(5) 学校図書館担当職員の役割及びその資質の向上に関する調査研究協力者会議. “これからの学校図書館担当職員に求められる役割・職務及びその資質能力の向上方策等について(報告)”. 文部科学省.
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/099/houkoku/1346118.htm [373], (参照:2017-04-19).
(6) 学校図書館の整備充実に関する調査研究協力者会議. “これからの学校図書館の整備充実について(報告)”.
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/115/houkoku/1378458.htm [374], (参照:2017-04-19).
[受理:2017-05-15]
高橋恵美子. 学校図書館の情報交流紙『ぱっちわーく』の24年―学校図書館研究の情報源としての意義―. カレントアウェアネス. 2017, (332), CA1898, p. 5-7.
http://current.ndl.go.jp/ca1898 [375]
DOI:
http://doi.org/10.11501/10369297 [376]
Takahashi Emiko.
24 years of School Library Campaign News Letter “Pacchiwaku” and the Significance of School Library Research.
PDFファイル [383]
同志社大学免許資格課程センター:佐藤翔(さとう しょう)
豊橋技術科学大学情報・知能工学系:吉田光男(よしだ みつお)
レファレンス協同データベース(レファ協)は国立国会図書館(NDL)が全国の図書館等と協同で構築する、調べ物のためのデータベースである。参加する各図書館等におけるレファレンス事例等の調査内容を登録・蓄積し、インターネットを通じて提供することで、図書館等におけるレファレンスサービスはもちろん、一般利用者の調査研究活動をも支援することをその目的としている(1)。
2005年4月の本格運用開始から10年以上を経て、レファ協は参加機関が700館以上、登録事例が18万件以上、一般公開事例に絞っても10万件を超える、大規模なデータベースとなっている。レファ協に関する研究も複数行われており(2) (3) (4)、中でも谷本は、登録データはもちろんのこと、参加館に対する質問紙調査等も実施し、事例登録をめぐる問題点や障害に関する丹念な報告を行っている(5)。一方で、レファ協を通じて公開されているレファレンス事例の中身についての詳細な検討は、必ずしも行われてはいない。谷本の指摘のとおり、多くの図書館は未だ事例を登録していないとは言え、公開されている事例だけでも10万件にのぼるレファ協のデータは、日本の図書館のレファレンスの現況を知る材料としても貴重なものになっていると考えられる。そこで本稿では、レファ協で公開されているデータの内容を分析することで、日本のレファレンスサービスに寄せられる質問とそれに対する回答の傾向を垣間見ることを試みたい。
レファ協には参加機関で行われた質問回答サービスの記録であるレファレンス事例に加え、調べ方マニュアル(特定のテーマ等に関する情報源の調べ方)、特別コレクション(参加機関が所蔵する個人文庫などの特殊コレクションの情報)、参加館プロファイル(参加機関の情報)の計4種類の情報が登録されている。このうち本稿で分析の対象とするのはレファレンス事例の情報である。分析対象データはレファ協のAPI 2.0(6)を用いて取得した、一般に公開されている事例とする。データ取得は2017年2月中旬に実施した。取得時点での参加館のみまたは自館のみが参照できる事例を除く一般公開事例9万6,504件を分析した(7)。分析に使用したデータ及びAPIから最新のデータを生成するプログラムについてはZenodoにて公開している(8)。
図1は登録年ごとの事例数を示したものである。館種別等の詳細は前述の谷本による調査(9)が詳しいのでここでは割愛するが、基本的に登録データは2010年以降、年間8,000から9,000件程度で推移している。2011、2012年の登録数が突出して多いのは、滋賀県立図書館等、この時期にまとめて過去分までデータ登録を行った図書館があるためである。
表1は公開されている登録事例数が多い図書館を上位10位まで示したものである。NDLが最も多いのは当然として、2位の埼玉県立久喜図書館を筆頭に、都府県立図書館が10館中7館を占める。大学図書館では近畿大学、市町村立図書館では豊中市(大阪府)の公開事例数が最多である。また、表には含まれないが、専門図書館では日本貿易振興機構アジア経済研究所図書館(1,016件登録)が最多である。
図書館名 | 登録事例数(件) | 公開事例中の割合(%) |
国立国会図書館 | 14,145 | 14.7 |
埼玉県立久喜図書館 | 7,994 | 8.3 |
近畿大学中央図書館 | 6,954 | 7.2 |
滋賀県立図書館 | 4,569 | 4.7 |
香川県立図書館 | 3,736 | 3.9 |
岡山県立図書館 | 2,565 | 2.7 |
大阪府立中央図書館 | 1,675 | 1.7 |
岐阜県図書館 | 1,626 | 1.7 |
豊中市立図書館 | 1,576 | 1.6 |
東京都立中央図書館 | 1,428 | 1.5 |
レファ協では主題による検索を実現するため、レファレンス事例にその事例に該当する日本十進分類法(NDC)の分類記号を任意で付与することができる(最大3つまで)。本稿で対象とする9万6,504件のうち、なんらかの分類記号が付与されていたのは6万7,936件(約70%)であった。
表2は特に付与件数の多い分類記号上位10位を、表3は0類(総記)から9類(文学)までそれぞれの登録件数と割合を示したものである。レファ協においては付与するNDCは第三次区分(要目)までとすることとされており、4桁以上の記号を付与している例はなかった。表2に示した第三次区分の水準だと、最も多い「210 日本史」を筆頭に、日本の歴史・地理に関わる分類や、日本の文学に関わる分類が付与されている事例が多いことがわかる。一方で、表3に示した通り、第一次区分(類目)の水準で見ると、最も多いのが2類(歴史)に関する事例であることは第三次区分の上位と同様であるが、次に多いのは3類(社会科学)であり、2類(歴史)にひけをとらない事例数が存在する。3類(社会科学)については特定の要目に集中せず、社会に関する様々な質問が寄せられているものと考えられる。逆に事例数が少ないのは0類(総記)、1類(哲学)、8類(言語)などで、特に言語に関する事例は全事例数の3%未満にとどまっている。
分類記号 | 項目名 | 登録事例数(件) |
210 | 日本史 | 6,423 |
289 | 個人伝記 | 2,706 |
291 | 日本(地理. 地誌. 紀行) | 2,592 |
911 | 詩歌(日本文学) | 2,103 |
913 | 小説. 物語(日本文学) | 1,273 |
910 | 日本文学 | 1,137 |
090 | 貴重書. 郷土資料. その他特別コレクション |
1,129 |
213 | 関東地方 | 1,078 |
767 | 声楽 | 1,035 |
386 | 年中行事. 祭礼 | 935 |
類目 | 登録事例数(件) | 公開事例中の 割合(%) |
0類 総記 | 5,671 | 5.9 |
1類 哲学 | 4,276 | 4.4 |
2類 歴史 | 20,051 | 20.8 |
3類 社会科学 | 18,096 | 18.8 |
4類 自然科学 | 6,800 | 7.0 |
5類 技術 | 7,601 | 7.9 |
6類 産業 | 6,223 | 6.4 |
7類 芸術 | 9,176 | 9.5 |
8類 言語 | 2,766 | 2.9 |
9類 文学 | 8,051 | 8.3 |
また、レファ協では分類記号と同じく主題による検索を実現するために、「レファレンス事例の中心的な内容や主要な概念を表現している語」を「キーワード」として付与することができる(付与するか否かは任意で、自由語を複数登録できる)。なんらかのキーワードが付与されていた事例は6万6,486件(公開事例の約69%)で、分類記号と同程度の付与状況であった。
表4は付与件数の多いキーワード上位5位を示したものである。「城跡」、「香川県」、「郷土資料」、「歴史」など、地域や歴史に関するキーワードが多いことがわかるが、最も付与数が多いキーワードでも「城跡」の874件にとどまった。付与されたキーワードは全体でのべ10万4,522件に及び、登録されている事例の内容は多様であることがうかがえる。
キーワード | 登録事例数(件) |
城跡 | 874 |
香川県 | 681 |
郷土資料 | 626 |
歴史 | 569 |
統計 | 503 |
レファ協にはレファレンス質問が解決したのか、未解決のままなのかを任意で付与できる、「解決/未解決」の項目がある。解決状況が登録されていた事例は7万8,229件(公開事例の約81%)で、そのうち解決済みのものは7万2,815件(解決状況登録事例の約93%)、未解決のものは5,414件(同じく約7%)であった。レファ協登録事例のほとんどは解決済みの事例であることがわかる。
若干ではあるが、分類によって解決状況には異なる傾向が見られる。表5は付与されている分類記号(第一次区分)ごとに、解決事例数、未解決事例数、未解決事例の割合を示したものである。なお、分類記号は一事例に複数付与できるため、表5の事例数の合計は全事例数に一致しない。3類(社会科学)の事例で未解決の割合が5.9%と低い一方で、0類(総記)、8類(言語)などでは未解決の割合が約10%に至っている。類ごとに統計的有意差を見ると、3類(社会科学)に属する事例は他の事例より統計的に有意に未解決割合が低く(カイ二乗検定、片側検定、p<0.01)、0類(総記)、6類(産業)、7類(芸術)、8類(言語)、9類(文学)は有意に未解決割合が高かった(カイ二乗検定、片側検定、p<0.01)。レファ協登録事例に限って言えば、3類(社会科学)に属する質問はより解決済みのものが多い一方、0類(総記)、6類(産業)、7類(芸術)、8類(言語)、9類(文学)は未解決のものがより多いと言える。
類目 | 解決数(件) | 未解決数(件) | 未解決数の 割合(%) |
0類 総記 | 4,271 | 489 | 10.3 |
1類 哲学 | 3,143 | 248 | 7.3 |
2類 歴史 | 14,576 | 1,076 | 6.9 |
3類 社会科学 | 12,566 | 785 | 5.9 |
4類 自然科学 | 4,513 | 313 | 6.5 |
5類 技術 | 5,364 | 392 | 6.8 |
6類 産業 | 4,328 | 409 | 8.6 |
7類 芸術 | 6,426 | 576 | 8.2 |
8類 言語 | 1,850 | 205 | 10.0 |
9類 文学 | 5,848 | 559 | 8.7 |
10万件近くにも及ぶ(データ取得時点)レファレンス事例中の質問・回答について、詳細な内容分析を行うには時間がかかるが、単純に質問文と回答文の長さを分析するだけでも、一定の知見を得ることができる。
表6は質問文、回答文それぞれの単純な統計量を見たものである(10)。質問文は平均値約66文字、中央値40文字に対し、回答文は平均値約402文字、中央値220文字で、当然ながら質問文よりも回答文の方が長く、5倍程度になっている。また、これも当然と言えば当然ではあるが、質問の長さと回答の長さには有意な正の相関関係があり、質問が長いほど回答も長い傾向がある。ただし、両者の相関は必ずしも強くはない(スピアマンの順位相関係数。p<0.01、ρ=0.222)。なお、質問文・回答文ともデータの偏りが大きく(一部の極端に長い文が平均値に影響している)、正規分布していないことから、以下の分析では代表値として中央値を、統計的検定にはノンパラメトリック検定(データが正規分布していることを前提としない検定)を用いる。
質問文(文字) | 回答文(文字) | |
平均値 | 65.7 | 401.9 |
中央値 | 40 | 220 |
標準偏差 | 84.77 | 560.43 |
分類によって、質問文・回答文の長さには異なる傾向がある。表7は付与されている分類記号(第一次区分)ごとに、質問文・回答文の長さの中央値をまとめたものである。質問文については1類(哲学)・2類(歴史)に属する事例では短く、0類(総記)・9類(文学)に属する事例で長い傾向がある。一方で回答文については5類(技術)が最も長く、その他6類(産業)・1類(哲学)・4類(自然科学)で長く、8類(言語)や9類(文学)では短い。この分類による傾向の違いは、8類(言語)における質問文の長さを除き、全て統計的に有意である(マン・ホイットニーのU検定、p<0.05)。詳細については文の内容の分析に踏み込む必要があるが、主題によって質問や回答の長さには異なる傾向があるようである。
また、レファレンス事例の解決状況と質問文・回答文の長さにも有意な関係が認められる。表8は解決状況と質問文・回答文の長さの中央値をまとめたものであるが、表のとおり、回答文についてはわずかな差であるが、質問文については未解決事例の方が顕著に長い。この差はいずれも統計的に有意である(マン・ホイットニーのU検定、p<0.05)。より長い質問の方が、解決しない事例が多いことがここからうかがえる。
類目 | 質問文(文字) | 回答文(文字) |
0類 総記 | 45 | 192 |
1類 哲学 | 31 | 265 |
2類 歴史 | 31 | 188 |
3類 社会科学 | 37 | 237 |
4類 自然科学 | 35 | 252 |
5類 技術 | 35 | 279 |
6類 産業 | 36 | 265 |
7類 芸術 | 36 | 207 |
8類 言語 | 37 | 178 |
9類 文学 | 43 | 174 |
解決状況 | 質問文(文字) | 回答文(文字) |
解決 | 42 | 222 |
未解決 | 62 | 227 |
レファ協には回答を作成するにあたって参考にした資料を登録する「参考資料」欄が設けられているが、同欄は主に人間が閲覧することを前提にした、自然言語による情報の登録がなされており、機械的にその内容を分析することは(例えば登録されている資料が図書なのか論文なのか等を特定し、書誌事項を同定することは)必ずしも容易ではない。しかしその中でウェブページのURLについては、機械的に同定し、よく言及されるウェブサイト等を特定することが比較的容易である。そこでなんらかのURLを含むレファレンス事例について、そのURLを抽出し、分析した(なお、ここではあえて参考資料欄に限ることはせず、質問文・回答文中などのURLも分析に加えている)。なんらかのURLに言及していたレファレンス事例は3万3,204件(公開事例の約34%)で、言及されていたURLののべ数は11万2,742件であった。
表9はレファレンス事例からの言及数が多いFQDN(完全修飾ドメイン名。Fully Qualified Domain Name)上位10位までを示したものである。最も多いのは国立国会図書館サーチのURLで、2万5,000件以上と群を抜いている。次いでCiNii(ArticlesとBooks、Dissertationsのすべてを含む)、国立国会図書館デジタルコレクション、レファ協自身と続く。そのほかリサーチ・ナビやWebcat Plus、NDL-OPACなど、NDLをはじめ国立情報学研究所(NII)など、図書館関係のリソースへの言及が多いのは予想の範囲内である。一方で、Yahoo!百科事典、コトバンク、Wikipedia日本語版など、オンライン事典類への言及も一定程度以上、存在する。ここで特徴的なのは一般により広く普及していると考えられるWikipedia日本語版よりも、Yahoo!百科事典(『日本大百科全書』をベースとしたオンライン事典。2013年にサービス終了)やコトバンク(朝日新聞社が主体となって運営するオンライン事典)への言及の方が多いことである。レファ協に事例を登録する図書館において、オンライン事典に言及する場合であっても、編集・運営者の素性が重視されていることがここからうかがえる。
FQDN | ウェブサイト名 | 言及数 |
iss.ndl.go.jp | 国立国会図書館サーチ | 25,745 |
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rnavi.ndl.go.jp | リサーチ・ナビ | 1,722 |
webcatplus.nii.ac.jp | Webcat Plus | 1,104 |
opac.ndl.go.jp | NDL-OPAC | 1,074 |
ja.wikipedia.org | Wikipedia日本語版 | 1,039 |
本稿ではレファ協に登録・公開されているレファレンス事例9万6,504件の分析から、日本のレファレンスサービスにおける質問・回答の概況を示すことを試みた。あくまでレファ協参加機関が、公開しても構わないと考えた事例のみに基づく結果ではあるものの、一定の傾向は垣間見えたと言えよう。分析結果からわかった主な傾向は以下のとおりである。
本稿では扱わなかったが、事例登録館を区別しての分析(例えばNDLと都道府県立図書館、市町村立図書館、大学図書館、専門図書館など)や、質問文・回答文の内容の分析にまで踏み込めば、より有益な知見を見出すこともできるであろう。レファ協のデータはAPIを通じて誰でも利用できる状況にあり(11)、日本のレファレンスサービス研究の共通のデータ基盤としても、レファ協の存在には大きな意義がある。
(1)国立国会図書館. “レファレンス協同データベース事業実施要項”. レファレンス協同データベース.
http://crd.ndl.go.jp/jp/library/documents/collabo-ref_guide.pdf [384], (参照 2017-03-17).
(2)谷本達哉, 兼松芳之. レファレンス事例データベースの協同構築事業におけるデータ登録の現状と問題点: 国立国会図書館「レファレンス協同データベース」を対象として. 図書館情報メディア研究. 2013, 11(1), p.11-21.
http://hdl.handle.net/2241/120075 [385], (参照 2017-03-17).
(3)谷本達哉, 兼松芳之. 図書館の情報サービスが持つ可能性 :国立国会図書館レファレンス協同データベース事業, その軌跡と展開. 図書館界. 2012, 64(2), p.142-153.
http://doi.org/10.20628/toshokankai.64.2_142 [386], (参照 2017-05-24).
(4)谷本達哉. 国立国会図書館レファレンス協同データベース事業に関する研究. 筑波大学, 2016, 博士論文.
http://hdl.handle.net/2241/00145213 [387], (参照2017-03-17).
(5)前掲.
(6)国立国会図書館. “外部提供インタフェース(API1.0,API2.0)”. レファレンス協同データベース.
http://crd.ndl.go.jp/jp/help/crds/api.html [388], (参照 2017-03-17).
(7)“レファレンス協同データベースのインターネット公開件数が10 万件を突破しました!”. 国立国会図書館.
http://www.ndl.go.jp/jp/news/fy2016/__icsFiles/afieldfile/2017/03/01/pr170303.pdf [389], (参照 2017-03-17).
(8)Collabolative Reference Database as of 2017-02-17.
https://doi.org/10.5281/zenodo.573265 [390], (accessed 2017-06-01)
(9)谷本. 前掲.
(10)質問文・回答文の文字数については全角・半角を問わずに集計している。そのため、質問文・回答文中にURLを含む場合などには文字数を見かけの長さよりも多めに計算している場合がありうる。また、回答に至るまでのプロセスについては回答そのものとは別に、「回答プロセス」(ans-proc)項目に記述されている場合があるが、回答プロセスについては回答文の長さの集計には加えていない。
(11)レファ協のAPIの使用にあたっては、以下のマニュアルが用意されている。
国立国会図書館. “レファレンス協同データベース・システム操作マニュアル(一般利用者用)”. レファレンス協同データベース.
http://crd.ndl.go.jp/jp/help/general/api.html [391], (参照 2017-03-17).
[受理:2017-05-15]
佐藤翔, 吉田光男. レファレンス協同データベースの登録事例から垣間見る日本のレファレンスサービス‐. カレントアウェアネス. 2017, (332), CA1898, p. 8-12.
http://current.ndl.go.jp/ca1899 [392]
DOI:
http://doi.org/10.11501/10369298 [393]
Sato Sho, Yoshida Mitsuo.
Current Status of Reference Services in Japanese Libraries Analyzed with the Collaborative Reference Database .
PDFファイル [397]
関西館電子図書館課:渡部淳(わたなべ じゅん)
2013年4月1日に、学位規則の一部を改正する省令(平成25年文部科学省令第5号)が施行され、博士の学位の授与に係る論文(以下「博士論文」という)は、インターネットの利用により公表することとされた(E1418 [198] 参照)。
国立国会図書館(NDL)は、電子形態で公表される博士論文について、学位授与機関からの送信による収集を2014年2月4日に、機関リポジトリからの自動収集を2015年2月1日に開始した。
本稿は、収集開始から3年が経過したのを機に、NDLにおける学位規則改正後の博士論文の収集状況を紹介するとともに、学位授与機関における博士論文のインターネットによる公表状況についての調査結果を報告する。
NDLは、学位規則改正後の博士論文について、公表形態に応じて、以下のように収集している。
第一に、所定の条件(1)を満たした機関リポジトリで公表される博士論文は、国立情報学研究所(NII)の学術機関リポジトリデータベース(IRDB)と連携し、システムにより自動収集する(2)。
第二に、学位授与機関のウェブサイト等で公表される博士論文は、当該学位授与機関からの送信により収集する。
第三に、学位規則で定める「やむを得ない事由」があり、全文がインターネット公表されない博士論文については、電子形態であれば当該学位授与機関からの送信により収集し、冊子形態であれば学位規則改正前と同様、冊子形態のものを学位授与機関からの送付により収集する。
なお、文部科学省では、教育研究成果のオープンアクセス(OA)化を含め知的情報の蓄積・発信のための重要な手段として機関リポジトリを位置付けており、機関リポジトリでの博士論文公表を原則としている(3)。NDLにおいても、学位授与機関からの送信・送付作業が不要となるため、可能な限り機関リポジトリで博士論文が公表されることを期待している。
NDLにおける学位規則改正後の博士論文の収集実績(2017年3月末現在)は表1の通りである。
収集件数(文字) | |
自動収集 | 22,229 |
電子形態の送信 | 9,042 |
冊子形態の送付 | 4,746 |
合計 | 36,017 |
(注)2013年度以降学位授与分
文部科学省によれば、2013年度の学位授与件数は1万5,427件であるが(4)、2014年度以降の学位授与件数については、まだ公表されていない。そこで、NDLが受領した学位授与報告書の写し(5)を利用して、収集率を試算した。
NDLが2017年3月末までに受領した学位授与報告書の写しの件数は4万4,068件である。よって、収集率は81.7%、未収集件数は8,051件であり、18.3%が収集できていないと推測される。
2016年4月に、収集率が20%未満かつ未収集の論文が20件以上ある34大学の2,950件の博士論文について、未収集の原因を調査した。結果は表2の通りである。
原因 | 大学数 | 論文数 |
(1)機関リポジトリで博士論文全文を公表しているが、「著者版フラグ」に「ETD」と入力されていない。 | 7 | 602 |
(2)機関リポジトリで博士論文全文を公表しているが、junii2 ガイドラインで定められた書式と異なった記述をしているため、IRDB へのハーベストがエラーになっている。 | 6 | 445 |
(3)上記(1)(2)の原因が重複している。 | 11 | 1,189 |
(4)機関リポジトリで博士論文全文を公表しているが、機関リポジトリがIRDB へのハーベスト対象外である。 | 2 | 55 |
(5)機関リポジトリで博士論文全文を公表しているが、機関リポジトリの仕様により、PDF ファイルではなくHTML ファイルが収集されてしまう。 | 1 | 159 |
(6)機関リポジトリでも大学のウェブサイトでも博士論文全文を公表していない。 | 7 | 500 |
合計 | 34 | 2,950 |
まず、IRDBとの連携により自動収集の対象となるのは、NIIが策定したメタデータ・フォーマット“junii2”(6)に対応している機関リポジトリに登録されている博士論文のうち、以下の2つの条件を満たすものである。
すなわち、機関リポジトリに博士論文全文を登録していても、「著者版フラグ」の値が「ETD」以外だと、NDLに自動収集されない。
また、junii2ガイドラインで定められた書式と異なった記述をしているため、機関リポジトリのIRDBへのハーベストがエラーになることがある。例えば、junii2バージョン3.1では、学位授与番号は「10100甲第123456号」のように、「科研費機関番号(5桁)+[甲|乙|*]+第*+報告番号+号」(*は0字以上の任意の文字列)の形式で記述するルールとなっている(8)。科研費機関番号を入力せず、「甲第123456号」とのみ記述すると、エラーが発生し、IRDBにハーベストされず、NDLが博士論文を自動収集できない。
NDLでは、未収集の原因を特定後、表2の(1)から(3)の原因を有する大学に対しては、正確なメタデータ処理をするよう依頼している。表2の(4)から(6)の原因を有する大学に対しては、電子形態の博士論文を送信するか、又は郵送により冊子形態の博士論文を送付するよう依頼している。
NDLでは、機関リポジトリから自動収集した博士論文について、メタデータ・全文ファイル等を確認した上で、国立国会図書館デジタルコレクション(9)で公開している。しかし、本来収集対象ではないファイルが誤って収集されているケースがある。2017年3月までに誤って収集されたデータは2,108件に達し、自動収集による収集件数全体の8.7%に相当する。
誤収集の主なケースは以下の通りである。
これら収集対象外のデータについては、国立国会図書館デジタルコレクションでは公開していない。
その他にも、著者名やタイトルに誤字脱字やスペルミスがある、学位授与番号や学位授与年月日が学位授与報告書の記載と一致していない等のメタデータの誤りも散見される。
NDLでは、以上のような状況が判明した場合、学位授与機関に対してメタデータの修正を依頼している。
学位規則の改正によって、博士論文は原則として、その全文がインターネット公表されることになった。しかし、博士論文が立体形状による表現を含む場合や、全文の公表により学位授与者に明らかな不利益が生じる場合など、「やむを得ない事由」があると学位授与機関が承認した場合には、博士論文の全文に代えて、その要約を公表することができると定められている(10)。
機関リポジトリ推進委員会の調査によれば、2013年度学位授与の博士論文について、2014年11月3日時点での全文公表率は約28%であった(E1707 [398] 参照)。
そこでNDLでは、学位規則改正後の博士論文について、2017年3月末時点での学位授与機関におけるインターネット公表の状況を調査した。
博士論文全件の公表状況を調査するのは困難なため、まず以下のように類型化し、「公表」又は「未公表」と判定した。
(2) について、NDLでは学位授与機関に対して、インターネット公表している博士論文を送信する場合、メタデータ項目の「掲載URL」を入力するよう、依頼している。
ただ、「掲載URL」が入力されていても、博士論文全文ではなく、要約のみ公表の場合があるので、「掲載URL」入力ありの博士論文については、サンプル調査を実施し、全文を公表しているかどうかを調べた。一方、「掲載URL」入力なしの博士論文については、「未公表」と判定した。
電子形態の送信により収集した博士論文は9,042件であり、このうち「掲載URL」の入力があるものは327件であった。この327件のうち無作為に抽出した30件を調査したところ、博士論文全文のインターネット公表が確認できたのは、22件(73.3%)であった。よって、327件×73.3%=240件を「公表」と推計した。
(4) について、NDLが未収集の博士論文でも、NDLが収集できていないだけで、インターネット公表している場合がありうる。そこで、「2.3 未収集の原因」の表2で挙げた34大学の博士論文を用いて、サンプル調査を実施した。34大学2,950件のインターネット公表状況は、表3の通りである。
インターネット公表状況 | 大学数 | 論文数 |
機関リポジトリで博士論文全文を公表している。 | 27 | 2,450 |
大学のウェブサイトで博士論文全文を公表している。 | 0 | 0 |
機関リポジトリでも大学のウェブサイトでも博士論文全文を公表していない。 | 7 | 500 |
合計 | 34 | 2,950 |
インターネット公表が確認できたのは、2,450件(83.1%)であった。「2.2 収集状況」で算出した通り、未収集の博士論文は8,051件である。よって、8,051件×83.1%=6,690件を「公表」と推計した。
以上をまとめると、以下の表4の通りである。全体のインターネット公表率は66.2%程度と推測される。
件数 | 公表件数 | 公表率 | |
自動収集 | 22,229 | 22,229 | 100% |
電子形態の送信 | 9,042 | 240 | 2.7% |
冊子形態の送付 | 4,746 | 0 | 0.0% |
未収集 | 8,051 | 6,690 | 83.1% |
合計 | 44,068 | 29,159 | 66.2% |
(注)「電子形態の送信」「未収集」の公表件数については推計値
学位規則の改正によって、原則として、すべての博士論文がインターネット公表されることになった。しかし、インターネット公表の状況は完全とはいえない。個人情報の保護、多重公表を禁止する学術ジャーナルへの掲載等、「やむを得ない事由」がある博士論文が多いためと推測される。博士論文全文をインターネット公表できない場合には、その要約を公表することとされているが、今回の調査の過程で、全文も要約も公表していない学位授与機関が確認された。博士論文は、高い学術的価値を有する貴重な文献資料である。教育研究成果の電子化及びOAの推進という、学位規則改正の趣旨に則り、インターネット公表の徹底が望まれる。
一方で、NDLは資料を広範に収集し、後世に伝えるという使命を持っている。しかし、電子形態の博士論文については、機関リポジトリにおけるメタデータの誤りのため、本来収集すべきものが収集されず、収集すべきでないものが収集されてしまう事態も生じている。機関リポジトリ推進委員会は「博士論文登録時に間違いやすい3項目」を作成し、注意を喚起している(11)。NDLが博士論文を網羅的に収集し、後世に永く保存するために、学位授与機関におかれては、正確なメタデータ処理に協力していただけると幸いである。
(1) NIIの学術機関リポジトリデータベース(IRDB)にメタデータを提供していること、NIIが策定したメタデータ・フォーマット“junii2”の改訂版(バージョン3.0以降)に対応していること、の2つの条件がある。
(2) 自動収集の仕組みは次の通りである。(1)IRDBが学位授与機関の機関リポジトリから博士論文のメタデータをOAI-PMHにより収集する。(2)NDLがIRDBから博士論文のメタデータをOAI-PMHにより収集する。(3)NDLが博士論文のメタデータ内に記述されたURLに基づき博士論文の電子ファイルを収集する。
(3) “学位規則の一部を改正する省令の施行等について(通知)(24文科高第937号 平成25年3月11日)”. 文部科学省.
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/daigakuin/detail/1331796.htm [399], (参照 2017-03-13).
(4) 文部科学省高等教育局大学振興課. “平成25年度博士・修士・専門職学位の学位授与状況”. 文部科学省.
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2017/01/26/1299723_10.pdf [400], (参照 2017-03-13).
(5) NDLでは学位授与機関に対して、学位規則第12条の規定により文部科学大臣に提出する学位授与報告書の写しを、NDLにも電子メールで送付するよう依頼している。
“国内博士論文の収集”. 国立国会図書館.
http://ndl.go.jp/jp/aboutus/hakuron/index.html#chap4 [401], (参照 2017-03-13).
(6) junii2 の詳細は次のウェブページを参照。
“メタデータ・フォーマット junii2”. 国立情報学研究所.
https://www.nii.ac.jp/irp/archive/system/junii2.html [402], (参照 2017-03-13).
(7) 著者版フラグとは、登録されている博士論文のバージョンを示すメタデータ項目である。博士論文の全文ファイルを含む場合は「ETD」と記入し、要約や要旨などの場合は「none」と記入する。
“junii2ガイドラインバージョン3.1”. 国立情報学研究所.
https://www.nii.ac.jp/irp/archive/system/pdf/junii2guide_ver3.1.pdf [403], (参照 2017-03-13).
(8) “国会図書館へ提出するメタデータのフォーマットチェック”. 国立情報学研究所.
http://www.nii.ac.jp/irp/archive/system/irdb_harvest.html#8 [404] , (参照 2017-03-13).
(9) “国立国会図書館デジタルコレクション”. 国立国会図書館.
http://dl.ndl.go.jp/ [405], (参照 2017-03-13).
(10)学位規則第9条第2項の規定による。
“学位規則(文科省令第23号 平成28年4月1日)”. 電子政府の総合窓口 e-Gov.
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S28/S28F03501000009.html [406], (参照 2017-03-13).
(11)‟博士論文登録時に間違いやすい3項目”. 機関リポジトリ推進委員会.
https://ir-suishin.repo.nii.ac.jp/?action=common_download_main&upload_id=879 [407], (参照 2017-03-13).
[受理:2017-05-12]
渡部淳. 国立国会図書館による博士論文収集の現況と課題. カレントアウェアネス. 2017, (332), CA1900, p. 13-15.
http://current.ndl.go.jp/ca1900 [408]
DOI:
http://doi.org10.11501/10369299 [409]
Watanabe Jun.
The Current Status and Problems Concerning the Acquisition of Doctoral Dissertations by the National Diet Library.
PDFファイル [412]
吉備国際大学アニメーション文化学部:大谷卓史(おおたに たくし)
2011年、文部科学省が公表した、2020年に向けての教育の情報化の基本方針である「教育の情報化ビジョン」においては、教育の情報化とは、(1)子どもたちの情報活用能力を育成する「情報教育」、(2)「教科指導における情報通信技術の活用」、(3)「校務の情報化」の3つの側面を通して、教育の質の向上を目指すことだとされている(1)。
(2)「教科指導における情報通信技術の活用」を扱う同ビジョン第3章「学びの場における情報通信技術の活用」によると、情報通信技術の活用によって、従来の「一斉指導による学び(一斉学習)」に加え、「子どもたち一人一人の能力や特性に応じた学び(個別学習)」、「子どもたち同士が教え合い学び合う協働的な学び(協働学習)」の推進を目指すとしている。
同章において、デジタル教科書は、「いわゆるデジタル教科書」として、次のように定義される。
さらに、「いわゆるデジタル教科書」は、教員が電子黒板等により子どもたちに提示して指導するための「指導者用デジタル教科書」と、主に子どもたちが個々の情報端末で学習するための「学習者用デジタル教科書」の2つに大別されるとする。
今後登場が予定される後者の「学習者用デジタル教科書」は、とくに、個別学習や協働学習への寄与が期待されている。
個別学習に関しては、学習履歴の把握・共有による個別指導(3)や、デジタル教材との組み合わせによって、必要な情報や機能を選び抽出して利用することで、子どもたちがその特性や発達の段階、興味・ニーズに応じて学べるなどのことが期待されている。また、弱視や識字・学習の障碍などを持つ子どもが、文字の拡大機能や読み上げ機能などを活用して、効果的な学習を進めることも強く期待される点である。
一方、協働学習においては、ネットワークを介してデジタル教科書を仲立ちとして、教員と子どもたち、または、子どもたち同士が双方向にコミュニケーションすることが想定されている。現在電子書籍で実現されているソーシャルブックマークやネットワークを介する書き込みの共有などが、「いわゆるデジタル教科書」には、基本的な機能として求められることとなりそうである。
2016年12月に公表された「『デジタル教科書』の位置付けに関する検討会議 最終まとめ」(以下、検討会議まとめ)では、「デジタル教科書(教材)」は、ICTを活用する授業を実現する教材の一つとして位置付けられている。ICT活用授業は、児童生徒の資質・能力等をさらに育み、効果的・効率的な授業運営を可能にすることなどから、「主体的・対話的で深い学び」の実現に大きく貢献するものとされる(4)。
ところが、すでにみたように、文部科学省の文書においては、デジタル教科書は「いわゆるデジタル教科書」(または、「いわゆる『デジタル教科書』」)と、一定の留保付きの表記が行われている。このように、留保付きの表現であるのは、その教科書としての位置付けがいわば宙に浮いているからと考えられる。
一般的な認識では、デジタル教科書とは、小・中学校の義務教育課程および高等学校における検定済教科書をデジタル化したものと見なされ、これまで特定の教科や単元、テーマについて制作され、試行的・実験的に活用されてきた。ところが、その一方で、そもそも「検定済教科書をデジタル化したもの」に検定が必要か、それが検定済教科書とどのような関係にあるのかなど、その位置付けが決まっていなかった。つまり、制度上「(検定済)教科書」(5)とはいえない宙に浮いたものだった。それゆえ、「いわゆる」という留保付きの表現で語られてきたと考えられる。
検討会議まとめにおいても、「いわゆる『デジタル教科書』」と表現され、「教科書発行者から補助教材として制作・販売されている『デジタル教科書』を、便宜上、『デジタル教科書(教材)』と呼ぶ」(6)としている。
検討会議まとめにおいては、デジタル教科書は紙の教科書と同一の学習内容(コンテンツ)であって、それゆえにビューワの活用でレイアウトの変更が可能であるとしても(7)、改めて検定を経る必要がないものとする一方、あくまでも紙の教科書と併用する補助教材という位置付けとされている(8)。
本章においては、デジタル教科書にかかわる著作権制度上の課題にはどのようなものがあるか検討する。
検定済教科書等における著作物の利用に関して、「学校教育の目的上必要と認められる限度において」著作権者に許諾の必要がないと定めた著作権法第33条においては、対象となる「教科用図書」は、初中等教育における「児童用又は生徒用の図書であつて、文部科学大臣の検定を経たもの又は文部科学省が著作の名義を有するもの」としている。
ところが、「いわゆるデジタル教科書」は、すでに見たように、検定教科書と同一内容であるものの、検定の必要がないなど制度上の取り扱いが教科書と同一ではない。すなわち、学校教育法上使用義務がある教科用図書ではないことから、著作権法第33条の権利制限規定の対象とはならない可能性が高い(9)。
著作権者に許諾を得たうえで、著作物掲載の(補償金ではなく)著作権使用料を支払うこととなることを考えると、一般的に、報酬が高額になる可能性が考えられる。著作権使用料支払いが高額になることで、「いわゆるデジタル教科書」の制作費も高騰し、価格は高いものとなるかもしれない。
デジタル教科書に関しては無償供与が望ましいとの意見が強いものの、義務教育諸学校の教科用図書の無償供与措置の対象となることは直ちには困難であるとされる(10)。上記の著作権使用料支払いの高騰による高価格化は、家計の教育費負担を増加させるだろうし、無償供与措置対象となる場合にも、価格高騰を許せば財政に負担を及ぼすこととなる。逆に、価格高騰を抑えるため、検定教科書と同様に、デジタル教科書の購入価格(制作費)の上限を定めるならば、著作権使用料が支払えないため、貧しい内容となる可能性がある。また、デジタル教科書の内容は検定教科書と同一内容であるという条件を考えれば、検定教科書の内容も貧しくなる可能性もあるだろう(11)。
著作権法第23条は、著作者がその著作物を公衆送信する権利と受信装置を用いて公に伝達する権利を専有すると定める(12)。
ところで、著作権法第35条第1項においては、授業の過程での使用を目的とする複製(13)、同法第38条第1項においては、著作物の非営利・無料・無報酬での上演・演奏・上映・口述ができるとする。そして、同法第38条第3項においては、放送される著作物は、(営利かつ公衆から視聴料金を取る場合も)通常の家庭用受信装置を用いて公に伝達することができるとされる(14)。
一般的に、インターネット上で提供される著作物を閲覧する場合、その電子データをクライアント(PCやタブレットPC、スマートフォンなど)にダウンロードする。このとき、このダウンロードした著作物はハードディスク等に再び閲覧できる形で保存されていて、インターネットへの接続を切っても、繰り返し閲覧ができる。この場合、著作権法上、サーバーからクライアントに対して複製が行われていることになる。
デジタル教科書においては、本文や写真・図表等にハイパーリンクを埋め込むことができるので、教員や生徒・児童が教室において、電子黒板等にインターネット上の著作物を表示することができる。この著作物がクライアントにダウンロードされる場合、自動公衆送信→受信→ダウンロード(複製)→表示(上映)の手順を経ることから、著作権法第35条第1項・第38条第1項の規定から、無許諾での複製および上映は適法と解釈できる(15)。
ところが、学校教育法上の学校における授業の過程での利用目的であっても、ストリーミング方式(16)の映像(音楽を伴うものも含む。以下同様)に関しては、インターネット上の著作物をスクリーンやディスプレイ等で表示して、学校教育法上の学校において授業を受ける者(学生・生徒・児童等)に視聴・閲覧させることは、著作権法上(少なくとも形式的に)違法となる可能性がある(17)。
なぜならば、教室における電子黒板等によるストリーミング方式の映像の提示は、自動公衆送信→受信→表示(伝達)と解釈する余地があって、このように解釈すると、著作権法第35条第1項・同法第38条第1項による著作権の制限の対象とはならないからである。
まず前提として、次の2点を確認しておこう。
悩ましいのは、ストリーミング方式による映像の提示が、「上映」に当たるか、「伝達」に当たるか解釈に迷う点があることである(ただし、結論としては「伝達」と解釈するしかないと筆者は考える)。
なるほど、ストリーミング方式による映像の提示の過程では、物理的には、メモリ・ハードディスクへの一時的蓄積が生じている。法律上この一時的蓄積=複製が生じていると認めれば、適法に複製・アップロードされた映像をストリーミングによって視聴する場合は、著作権法第47条の8(著作物の情報処理に伴う複製における著作権の制限)から、たとえ一時的蓄積=複製が生じていたとしても、この映像の視聴に伴う複製行為は、無許諾で行っても著作権侵害には当たらない(18)。
ところが、ストリーミング方式の映像の視聴の過程で複製が生じているとしても、これをディスプレイやスクリーンに表示して視聴者に提示する行為は、「伝達」と解するしかない。
まず、自動公衆送信される著作物が受信装置を用いて伝達されるとする条文がある。著作権法第39条第2項においては、時事問題に関する論説について、「自動公衆送信される論説は、受信装置を用いて公に伝達することができる」と規定する。また、第40条第3項においては、政治上の演説等について、「自動公衆送信される演説又は陳述は、受信装置を用いて公に伝達することができる」とする。
さらに、そもそも著作権法第2条第1項第17号において、「上映」を定義して、著作物を「映写幕その他の物に映写すること」とするものの、「(公衆送信されるものを除く。)」としている。したがって、上記の著作権法第47条の8を仲立ちとして、自動公衆送信された著作物をディスプレイやスクリーンに映写する行為を「上映」とする解釈はありえない。
したがって、ストリーミング方式の映像のディスプレイやスクリーンへの映写は、その前段階として一時的蓄積=複製が生じているとしても、「上映」とはいえないから、第23条第2項に規定されているように、自動公衆送信された著作物の受信装置による伝達と解するしかない。
そうすると、授業の過程で使用するとしても、ストリーミング方式の映像を学生・生徒に視聴させる行為は、自動公衆送信された著作物を公衆に向けて(複製物の上映ではなく)「伝達」することとなる。だから、著作権法第35条第1項・同法第38条第1項の著作権の制限の対象とはみなされない。
さらに、同法第38条第3項においては、放送・有線放送された著作物を受信して「受像装置で公衆に視聴させる」行為は、伝達権が制限されるとするものの、自動公衆送信による伝達を著作権の制限対象としていない(放送のインターネットによる同時再送信は、同項による著作権の制限対象である)(19)。
ただし、いったんハードディスク等にストリーミング方式の映像を複製したうえで、電子黒板等に表示するならば、これは、上記の複製→上映の過程を経ることとなるので、著作権法第35条第1項・同法第38条第1項による著作権の制限を受けることとなる。
本稿においては、いわゆるデジタル教科書の制度上の位置付けのあいまいさと現行の著作権法における公衆送信にかかわる著作権の制限規定の不在によって、デジタル教科書の高度かつ効果的な活用が制限される可能性を示した。
検定教科書のオープンアクセス(OA)化がときに話題となるが(20)、その場合にも、本稿で指摘したような問題が考えられる。さらに、オンデマンド方式による授業への対応等も必要である(21)。
デジタル教科書による学修をより高度かつ効果的にするためには、いわゆるデジタル教科書の制度上の位置付けに関してさらに整理を進めるとともに、少なくとも著作権法第47条の8とのかかわりから「上映」「伝達」の定義を見直し、自動公衆送信と伝達にかかわる著作権の制限規定を改正することが必要と考えられる。
(1)“教育の情報化ビジョン ~21 世紀にふさわしい学びと学校の創造を目指して~”. 文部科学省. 2011-04-28. p. 5.
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/23/04/__icsFiles/afieldfile/2011/04/28/1305484_01_1.pdf [413], (参照 2017-04-19).
(2)“教育の情報化ビジョン ~21 世紀にふさわしい学びと学校の創造を目指して~”. 文部科学省. 2011-04-28. p. 10.
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/23/04/__icsFiles/afieldfile/2011/04/28/1305484_01_1.pdf [413], (参照 2017-04-19).
(3)ただし、学習履歴の把握・共有に関しては、個人情報保護・プライバシー保護の課題が生じるものと考えられる。
(4)「デジタル教科書」の位置付けに関する検討会議. “「デジタル教科書」の位置付けに関する検討会議 最終まとめ”. 文部科学省. 2016-12. p. 2-3.
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/110/houkoku/__icsFiles/afieldfile/2017/01/27/1380531_001.pdf [414], (参照 2017-04-19).
(5)「教科書の発行に関する臨時措置法(昭和23年7月10日法律第132 号)」によれば、教科書とは、「小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校及びこれらに準ずる学校において、教育課程の構成に応じて組織排列された教科の主たる教材として、教授の用に供せられる児童又は生徒用図書であつて、文部科学大臣の検定を経たもの又は文部科学省が著作の名義を有するもの」とされる。
“教科書の発行に関する臨時措置法(昭和二十三年七月十日法律第百三十二号)”. 電子政府の総合窓口 e-Gov.
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S23/S23HO132.html [415], (参照 2017-04-19).
(6) 「デジタル教科書」の位置付けに関する検討会議. “「デジタル教科書」の位置付けに関する検討会議 最終まとめ”. 文部科学省. 2016-12. p. 1.
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/110/houkoku/__icsFiles/afieldfile/2017/01/27/1380531_001.pdf [414], (参照 2017-04-19).
(7)現行検定制度においては、レイアウトも教科書検定における検定対象である。
「デジタル教科書」の位置付けに関する検討会議. “「デジタル教科書」の位置付けに関する検討会議 最終まとめ”. 文部科学省. 2016-12. p. 11.
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/110/houkoku/__icsFiles/afieldfile/2017/01/27/1380531_001.pdf [414], (参照 2017-04-19).
(8)また、次期学習指導要領実施との関連における教科書の改善という観点から見た「デジタル教科書」のあり方に関しては、次も参照。
教科用図書検定調査審議会. “教科書の改善について(論点整理)”. 文部科学省. 2017-01-23. p. 12-15.
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/tosho/106/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2017/03/24/1383603_002.pdf [416], (参照 2017-04-19).
(9)「文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会 中間まとめ」においては、デジタル教科書においても、その著作物の利用に当たっては、著作権法第33条に該当するもので、補償金支払いを行うべきとする。しかしながら、本文で述べたように、デジタル教科書が初中等学校で利用される教科用図書であるかどうかに関しては、まだあいまいさが残り、補償金よりも著作権料支払いを受けるべきとする著作権者などの権利者との間で議論が起きる可能性がある。
文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会. “「デジタル教科書」に係る著作権制度に関する論点(案)”. 文化庁.
http://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/hoki/h28_04/pdf/shiryo_6.pdf [417], (参照 2017-04-19).
文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会. “文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会 中間まとめ(案)”. 2017-02, p. 39-40.
http://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/hoki/h28_06/pdf/shiryo_2.pdf [418], (参照 2017-04-19).
(10) 「デジタル教科書」の位置付けに関する検討会議. “「デジタル教科書」の位置付けに関する検討会議 最終まとめ”. 文部科学省. 2016-12. p. 14.
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/110/houkoku/__icsFiles/afieldfile/2017/01/27/1380531_001.pdf [414], (参照 2017-04-19).
(11)著作物を教科用図書(教科書)等に掲載するための補償金額に関しては、文化庁長官から文化審議会に対して毎年諮問が行われ、決定されている。一方で、いわゆる「疑似著作権」の対価を求められることがあると言われる。「疑似著作権」問題とは、神社仏閣等の建築物の外観や書画等の古典的作品の所有者がそれらの撮影や、美術作品が写った写真提供に当たって高額の対価を求める事例があり、これらの請求の根拠として「著作権」が主張されることをいう。実際のところ、こうした主張があっても、建築物の外観は著作権法第46条により著作権が制限されるし、古い建築物や古典的美術作品は著作権保護期間が経過していれば、著作権が消滅している。 ただし、建築物の撮影に際しては、建物所有者の敷地内での撮影が必要であれば、敷地を使用する対価請求は、敷地の所有権を根拠とすることができるだろう。また、著作物が撮影された写真の貸与に当たっても、写真という有体物の貸与の対価請求は、所有権が根拠となる。
このように、所有権を根拠とする報酬・対価の請求による教科書制作費増の問題に関しては、著作権法・制度とは別の枠組みにおいて解決が図られる必要がある。 この問題に関しては、次の文献を参照。
『著作権の世紀』の著者、福井健策弁護士に聞く 「疑似著作権」広がり懸念. 産経新聞. 2011-01-10. 東京朝刊12頁.
“先生!それは疑似著作権とは違うと思います。”. 花水木法律事務所. 2011-01-12.
http://hanamizukilaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/01/post-6cd5.html [419], (参照 2017-04-06).
(12)著作権法において「公衆」とは、特定少数者を除く、不特定多数者・特定多数者・不特定少数者を指す。「公に」とは、公衆に対しての意である。公衆送信においては、電話回線やインターネットなど、特別の資格や結びつき(血縁や深い友人関係など)がなくても加入できるサービスの利用においては、送信先が限定されていても、公衆送信と見なされる。次の判決を参照。
東京地判平成19年5月25日(判時1979号100頁)(MYUTA事件)
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/696/034696_hanrei.pdf [420], (参照 2017-05-13).
最三小判平成23年1月18日(民集第65巻1号121頁)(まねきTV事件上告審)
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/012/081012_hanrei.pdf [421], (参照2017-05-01).
(13)さらに、同法第47条の10により、授業の過程での使用を目的として複製した著作物の複製は、公衆への譲渡が無許諾でできるとされているので、授業の過程において授業を受ける者に配布することができる。
(14)この解釈に関しては、次を参照。
加戸守行. 著作権法逐条講義. 六訂新版, 著作権情報センター, 2013, 1070p.
(15)学校教育法上の学校(非営利組織)の教室における著作物の公の上映(大型ディスプレイやスクリーンへの表示など)は、教員によるものであっても、上映そのものに対する料金支払い・報酬は生じていないとの解釈から、非営利・無料・無報酬の上映と解釈される。
大谷卓史. 情報倫理――技術・著作権・プライバシー. みすず書房, 2017, p. 229.
(16)ストリーミングとは、インターネット上のサーバーから映像・音楽等を受信しながらクライアントで再生する方式のコンテンツ配信を指す。
(17)この論点に関しては、我妻潤子氏(株式会社シュヴァン、知的財産管理技能士)の示唆から着目することとなった。
(18) “平成21年通常国会 著作権法改正等について 4.改正法Q&A 問10”. 文化庁.
http://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/hokaisei/h21_hokaisei/ [422], (参照 2017-04-19).
(19)著作権法第38条第3項括弧書きでは、公衆送信における伝達権が制限される場合に関して、「(放送される著作物が自動公衆送信される場合の当該著作物を含む。)」とする。ところが、この括弧書きは、放送される著作物がそれと「同時に」自動公衆送信される場合を想定しているものであって(いわゆる、「放送のネット同時再送信」)、放送された著作物をオンデマンドで自動公衆送信する場合は含まない。
加戸守行. 著作権法逐条講義. 六訂新版, 著作権情報センター, 2013, p.306-307.
(20)芳賀高洋, 鈴木二正, 大谷卓史. 検定済教科書等のデジタル化に関する課題の検討 ~デジタル(検定済)教科書の無償化やオープンアクセス化の可能性~. 電子情報通信学会技術研究報告. 2014, 114(116), SITE2014-25, p. 221-228.
(21)著作権法第35条第2項において、遠隔地の教室において同時受信される授業における著作物の公衆送信に関しては、著作権の制限対象とされているものの、オンデマンド方式の公衆送信はその対象ではない。
[受理:2017-05-17]
大谷卓史. デジタル教科書の導入と著作権制度. カレントアウェアネス. 2017, (332), CA1901, p. 16-19.
http://current.ndl.go.jp/ca1901 [423]
DOI:
http://doi.org/10.11501/10369300 [424]
Otani Takushi.
“So-calledDigital Textbooks” and Their Copyright Problems.
PDFファイル [427]
現行の学校図書館法では、学校図書館の職務を担う人員として、1953年の成立時から第5条で司書教諭が、そして2014年の改正により第6条で学校司書が規定されている。
本稿では、学校図書館法の歴史的経緯(1)を簡単に振り返ったうえで、2014年の学校司書法制化に関わる動向を中心に概観し、現在の課題を探る。
学校教育法施行規則(1947年)に学校に必置と書き込まれて以後構想された学校図書館は、米国の影響を受けて、担当者として、免許制による専任司書教諭とそれを補佐する事務職員が想定されていた。しかし、これに基づいて1953 年3 月上程予定であった法案(2)は衆議院解散によって幻に終り、8月に成立した学校図書館法(3)では、事務職員の記載は消失し、講習で資格を取得できる司書教諭のみが第5条に「学校図書館の専門的職務を掌る」職務として「教諭をもって充てる」と定められ(充て職)、必置を定める条文にもかかわらず附則に「当分の間」の配置猶予条項が設けられた。
学校図書館業務担当の事務職員は、法成立時既に「数千人という単位」で現場に存在し、法成立後も、担任等をもつ司書教諭が学校図書館の職務を全うするのは困難という現実を受けて、事務職員が学校司書として実質的に学校図書館業務を担う位置に就く場合も少なくなかった(4)。
学校図書館を担当する専門職について、司書教諭とそれを補助する学校司書の二職種制を主張するグループと、学校司書を司書教諭と対等の教育職と位置づけるグループが、1960年代から1970年代にかけて法案提出を試みるなどしたが、法改正には至らなかった。その間も学校司書は活動実践を続け、1980年代頃から集会活動や出版物で広く知られるようになり、それがまた多くの実践者の拠り処となった。個人単位の参加による組織として学校図書館問題研究会(学図研)、各地の学校図書館を考える会とその全国連絡会、情報交流紙『ぱっちわーく』(CA1898 [375]参照)などが挙げられる(5)。
1993年「学校図書館図書整備5か年計画」等の国の学校図書館関連施策が始動し、1997年の学校図書館法改正によって、附則の司書教諭の配置猶予規定に12学級以上の学校には2003年3月末までの期限が設けられた。学校司書については関係者の合意がないことを理由に取り上げられなかった(6)。
法改正後「情報教育推進の一翼を担うメディア専門職」と位置づける司書教諭とボランティアによる学校図書館運営が想定されたが(7)、司書教諭が充て職である規定に改変はなく行き詰まりを見せた(8)。この間も学校図書館活動を実質的に支えた多くは学校司書の活動であった(9)。日本図書館協会(JLA)学校図書館部会の学校図書館問題プロジェクト・チームは、1999年3月、将来的には単一の学校図書館専門職の配置が望ましいとする報告書(10)を出している。2009年3月、文部科学省設置の「子どもの読書サポーターズ会議」はその報告書(11)で「学校司書」の配置を主張した。
2011年6月、子どもの未来を考える議員連盟(当時)、文字・活字文化推進機構、学校図書館整備推進会議で構成される「学校図書館活性化協議会」が、政策課題として学校図書館法の再改正を打ち出し、これに呼応して複数の団体が要請書を提出した(12)。12月発表の新たな「学校図書館図書整備5か年計画」では、学校司書配置として初めて150億円(13)が計上された。
2013年6月、子どもの未来を考える議員連盟(当時)が、学校に「専ら学校図書館の職務に従事する職員(学校司書)」を置くよう努めること、学校司書の資質向上のための研修等の措置を講ずるよう努めることを内容とする学校図書館法改正の骨子案(14)を提示した。これに対して、専任・専門・正規や必置を盛り込むべきとする要望や意見が、さまざまな団体から出された(15)。
文部科学省は学校司書配置への期待の高まりを背景に、「学校図書館担当職員の役割及びその資質の向上に関する調査研究協力者会議」を設置して2013年8月から計7回会議を開催し(16)、その結果を、2014年3月に「これからの学校図書館担当職員に求められる役割・職務及びその資質能力の向上方策等について(報告)」(以下「2014報告」)にまとめた(17)。
「2014報告」に対して、学校司書の職務を整理したことや教育指導への支援を挙げたことは高く評価されたが、高い水準を求める一方で資格要件についての記述がなく正規職員での配置が想定されていないなどの課題も挙げられた(18)。
2014年4月、学校図書館議員連盟は全国学校図書館協議会(全国SLA)、学校図書館整備推進会議、JLA、学図研、学校図書館を考える全国連絡会の5 団体に学校司書の法制化についてヒアリングを実施、審議を行ったのち、6月11日、衆議院文部科学委員会に、骨子案に附則として学校司書の職務内容が専門的知識・技能を必要とするものであること、学校司書の資格や養成の在り方等については今後の検討とすることなどを付加した、学校図書館法改正案(19)を提出。衆議院・参議院とも附帯決議を付して可決され(20)、6月27日公布された(E1597 [428]参照)。
法改正を受けて、JLAは7月、「学校図書館法の一部を改正する法律について(見解及び要望)」(以下「JLA見解」)(21)を公表し、将来望ましい学校図書館職員制度として学校司書と司書教諭が合流して創設する、図書館情報学と教育学の専門教養を習得した単一の学校図書館専門職員制度を掲げた。学校図書館議員連盟、文字・活字文化推進機構、学校図書館整備推進会議は7月、司書教諭と学校司書は対等な関係であり、事業者が雇用し学校図書館に勤務する者は法の規定する「学校司書」には該当しないなどとする「改正学校図書館法Q&A」(22)を作成した。
文部科学省により、2015年8月から「学校図書館の整備充実に関する調査研究協力者会議」が計8回開催された(23)。学校司書の資格・養成等の在り方については、当会議の下に設置された「学校司書の資格・養成等に関する作業部会」で3回審議された。
同会議の審議の進行に併行して、JLA学校図書館職員問題検討会が9月に養成カリキュラム2案を含む報告書(24)をまとめたほか、他団体においても議論がなされ、養成カリキュラムの提案やそれについての論考が発表された(25)。
同会議の審議は、2016年11月に「これからの学校図書館の整備充実について(報告)」(以下「2016報告」)(26)としてまとめられ、文部科学省によって「学校図書館ガイドライン」「学校司書のモデルカリキュラム」とともに教育委員会教育長等宛てに通知された(E1896 [429]参照)。
なお、2015年12月には、中央教育審議会が、答申「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について」(27)を公表、学校司書は「授業等において教員を支援する専門スタッフ」の一つとして記述された。また、学校司書配置に総額約1,100億円(単年度約220億円)を措置する2017年度からの新たな「学校図書館図書整備5か年計画」(28)も発表された。
2014年の法改正ならびに「2016報告」を含む一連の関連施策については様々な立場から評価や論考が公表されている。以下、論点となる項目に分けて、評価と課題を記す。
法改正以前は協力者会議やその報告「2014報告」においても用いられていなかった「学校司書」の名称が、条文に明記されたことを評価する向きはある。しかし、配置が努力義務となったことについては、「JLA見解」が、専任・専門・正規の学校司書実現に課題が残るとし、他からも今後の配置につながるか疑問もあがっている(29)。
「2016報告」は全体的に現状の追認という様相で、「学校図書館ガイドライン」もそれを出るものではなかった。このことは、次に掲げる学校図書館業務の専門性の掘り下げ不足や非正規配置・地域格差拡大への懸念に繋がる。
法の附則にではあるが学校図書館の職務が「専門的」とされたことは、関係団体の要望の反映でもあり、肯定的な評価(30)がある一方、専門性に対する規定・内容の審議が不十分(31)との声もある。
職務を総括する司書教諭と補佐の学校司書という従来の関係を踏襲しその二職種で支えていくことを明示した点に大きな意義がある(32)とする一方、二職種いずれもが専任・正規の条件を満たさず学校の中で専門職としての地位が得られない危惧(33)や、学校司書は、司書教諭の補助と位置付けられ、「極めて限定された「専門的」知識を活かして授業の支援・協働をするだけ」になると懸念する声(34)もあった。専門性や二職並置の議論を深めないまま「二度の改正を行ったツケがここにきて一層鮮明になった」と述べて、学校司書の「専門性を強調しようとすればするほど司書教諭との差別化がつかなくなるという矛盾」があることを指摘した論考(35)もある。
JLAを初めとして単一の学校図書館専門職を理想と掲げる論は少なくない(36)が、今回の法改正がその方向への第一歩となったかといえば、そうではないという見方が大勢のようである。
なお、学校司書の職務を「国民の生命・健康・安全に関わるものではない」とした「2016報告」の記述には、「情けない施策であり、国としての自覚や責任を放棄するもの」(37)「拭いきれない汚点」(38)などの声や「2014報告」において教育的支援を担うとされた職務に対する見解と矛盾するという疑問が挙がった(39)。
法改正にあたり専任・専門・正規での配置に関する条文の記載への要望が複数の団体から出されたが、結果として「正規」は改正法では盛り込まれておらず、財政的根拠も地方財政措置しかない。「JLA見解」は「1人あたりの配置単価年105万円は明らかに非正規職員」であることに危惧を示し、専任で有資格・正規職員での学校司書配置を可能とする財政措置の必要性を訴える。教育職への位置づけ・公立学校の給与の保障の欠落を指摘して、非正規職員の配置拡大を懸念したり、財政措置の算定根拠を非正規職員に置く法改正に落胆を表したりする声(40)もあった。
2016年10月発表の全日本教職員組合学校図書館職員対策部による非正規学校司書の調査結果(41)は低賃金・短時間勤務などの実態を示し、さらに教員との打ち合わせ時間がなく授業での活用ができないなどの影響も示唆している。法改正後の学校司書募集記事の勤務条件調査でも低賃金・短期雇用の傾向が示された(42)。非正規学校司書は大半が女性であり、非正規職と女性労働の問題が重層化している。今後その視点での考察・対策も必要であろう。
事業者雇用で学校に勤務する者は法律上の学校司書には該当しないとする「改正図書館法Q&A」の記述などはあるが、民間委託を否定しているとまではいえず公立図書館等との学校施設の複合化から民間委託拡大の可能性に注意喚起する声(43)もある。自治体担当者の知識が十分ではない場合に民間事業者への採用・研修業務の委託が合理的との見解(44)もあるが、業務委託の進む東京都の公立高等学校からの、図書委員会活動の維持や授業との連携には困難があり、たとえ開館時間が延びても「学校図書館の内容が充実したとは言い難い」(45)という声には耳を傾けたい。
なお、2017年度からの新たな「学校図書館図書整備5か年計画」では、新聞の複数紙配備の対象に高等学校は含まれているが、学校司書配置では含まれていない。小中学校の学校司書(学校図書館担当職員)配置率が増加傾向にあるのに対して(2006年:小学校32.9%/中学校35.2%→2016年:小学校59.2%/中学校58.2%)、高等学校では減少傾向にある(2006年:71.2%→2016年:66.6%)(46)という現実もあり、高等学校への対応にも今後注意が必要だろう。
改正法及び「2014報告」「2016報告」について、「資料提供」に関する理念が読み取れない、知る自由の保障への言及がない、という批判(47)も見られた。
学校図書館での資料提供について、「IFLA/ユネスコ学校図書館宣言」(48)に鑑み、JLAの「図書館の自由に関する宣言」は学校図書館にも妥当する、即ち学校図書館も知的自由の尊重を基本原理とする「図書館」であるとする考え方(49)がある一方で、「教育的配慮」から資料の閲覧制限などを否定しない見方もある。
学校司書法制化が話題となり始めた2013年夏、『はだしのゲン』問題が起こった(50)。教育委員会からの要請で一旦書庫に移された同書は、結局手続き上の問題があったとして開架に戻されたが、「教育的配慮」の考え方が時に権力的に現場を襲うということが露呈した事例ともいえ、これについて複数の見解や論考が発表された(51)。現場ではこのようなとき「図書館」の基本を説くことのできる専門職が必要であるが、非正規の学校司書では、発言の機会が保障されなかったり、校長や教育委員会に対応するだけの権限を持たなかったりする(52)。今回の法改正やガイドラインはその体制に変化をもたらすものではなかった。
学校図書館は、2017年3月に公示された新学習指導要領が掲げる「主体的・対話的で深い学び」に貢献できる機能を有している。「対話」の対象として、インターネットや、データベースへを整備してアクセス可能とする必要があるが、それらも含めた幅広い情報資源について、知る自由の保障を使命の一つとする図書館としての在り方を今一度確認する必要がある。「学校図書館が多様な資料を収集し、子どもたちや教職員一人ひとりの自由な学びを保障することは、学校司書が意識して覚悟しておこなわなくてはなりません」(53)という言葉をかみしめたい。
文部科学省の通知では運営に関して「校長のリーダーシップの下」と記述されたほか、報告書・ガイドラインでもこの文言が度々登場している。これに関して違和感を示す声があった(54)。学校図書館の在り方やその活用は、校長の学校図書館に対する認識の影響を受ける。学校図書館の役割に関して校長への啓発や研修が重要になろう。
学校司書の職員会議や校内研修への参加について、報告書・ガイドラインに明記されたことは、会議参加への後押しになりそうだが、現状では同僚教員とのコミュニケーションの少なさや学校図書館への理解不足を訴える学校司書は少なくない。「チーム学校」としての連帯感、学校内での同僚性をいかに育むか、各学校での取組みのほか、教育界全体としての取組み(55)も必要であろう。
改正法・ガイドラインは、学校司書配置の地域格差の縮小に対して効力を持つものにならなかった(56)。
文部科学省による全国調査のほか、『ぱっちわーく』等でも各地域の学校図書館を考える会等による学校司書配置状況調査が発表されているが、設置者の裁量に委ねられているためか自治体間の格差が大きい。配置ありとなっていても、複数校配置のため1校あたりでは実質週1、2日の勤務というところもある。児童生徒が学校図書館の人的サービスを受けられる時間の調査などの現状把握と、公教育の平等に基づいた国レベルでの対応が必要であろう。
養成については、通知の別添資料として、科目と単位数を示すモデルカリキュラムが付された。
さまざまな提案を受けて提示されたモデルカリキュラムの内容についての論考は今後を待つことになるが、公立図書館司書や図書館員養成の立場からは、司書資格を司書職共通の基礎資格とする提案(57)があった。県立高等学校の学校司書と県立図書館司書の採用を一括し人事交流を実施している自治体もあり、学校司書と図書館司書の資格をいかに扱うか検討が待たれる。
一方、研修については協力者会議では大きな議論はなく、実施主体の工夫に委ねられることになる。日本図書館研究会の学校図書館研究グループが実施した研修内容アンケート(58)で指摘された、学校司書対象研修は、読書活動推進、公立図書館との連携に偏っており個人情報保護の研修がない、一般教諭・管理職対象の研修があまり実施されない、等の問題点に目を向けたい。数年を見通した体系的な研修企画の必要性が提唱される(59)一方、大半が短期契約という現実の雇用条件との矛盾を訴える声(60)もある。訓練を受けていないことを求められ困惑する学校司書の体験談(61)もあり、現場のニーズに沿った研修が必要となろう。
ただし、研修は養成教育の代替にはなり得ない。学校司書採用の事例紹介記事で、採用時に資格要件を求めず研修の充実を強調した例があったが、数日間の研修受講を資格保有と同列に扱うのでは専門性の軽視と言わざるを得ない。自治体には専門職配置の責務を真摯に果たす姿勢が望まれる。
法改正によって、学校図書館現場に非正規・非専門の学校司書が増加しそれで問題が解決したと認識されることを懸念する声(62)に共感すること大だが、この矛盾を含んだ法改正が成立した現状を踏まえ、次を考えていくしかない。
複数の論考(63)にもみられるように、学校図書館が目指すべき在り方の共通理解を深めることの必要性を説く意見を真に受け止め、現場からは専門性をもつ人材による実践についての発信が今後も求められよう。また、専門性向上のため立場を超えてまとまる必要性も指摘されている(64)。集会等に現場の非正規司書の参加が少ないとの声が聞かれる。当事者である学校司書が知識を蓄え生かしていけるよう、雇用形態に関わらず連帯できるような仕組みが必要であろう。
(1) 学校図書館専門職に関する歴史的経緯は、次の文献等でも確認することができる。
塩見昇. 学校図書館職員論: 司書教諭と学校司書の協同による新たな学びの創造. 教育史料料出版会, 2000, 207p.
高橋恵美子. 1950年から2000年にかけての公立高校学校司書の図書館実践:教科との連携と「図書館の自由」の視点から. 東京大学, 2013, 修士論文.
http://hdl.handle.net/2261/53608 [430], (参照2017-03-29).
杉浦良二. 地方自治体における学校図書館政策の動向から見た学校図書館専門職の考察:学校図書館支援センターと民間委託の事例を中心に. 愛知教育大学, 2015, 修士論文.
塩見昇. 特集, 学校図書館法60周年 : 今、求められる学校図書館職員像: 学校図書館法と学校図書館の歩み : 専門職員整備の視点を主に. 図書館雑誌. 2013, 107(11), p.682-685.
(2) 当法案の条項及び解説を次の資料で参照することができる。
松尾弥太郎. 学校図書館法案解説. 学校図書館. 1953,(30), p.8-15.
(3) 「人と金に関するこの間の変化が成立後の学校図書館に苦難の基を残した」と塩見は述べている。
塩見昇. 特集, 学校図書館法60周年 : 今、求められる学校図書館職員像. 学校図書館法と学校図書館の歩み : 専門職員整備の視点を主に. 図書館雑誌. 2013, 107(11), p.682-685.
この他、以下の文献の解説や対照表がある。
塩見昇. 学校図書館職員論: 司書教諭と学校司書の協同による新たな学びの創造. 教育史料出版会, 2000, p.51-56.
塩見昇. 日本学校図書館史. 全国学校図書館協議会, 1986, p.173. (図書館学大系, 5).
(4) 高橋恵美子. 1950年から2000年にかけての公立高校学校司書の図書館実践:教科との連携と「図書館の自由」の視点から. 東京大学, 2013, 修士論文.
http://hdl.handle.net/2261/53608 [430], (参照2017-03-29).
高橋はその後の「学校司書」数を種々の統計からまとめグラフ化しており、また「学校司書」の名称の経緯についても詳細に述べている。「学校司書」は現場では「学校図書館事務職員」、「学校図書館支援員」「学校図書館担当職員」などさまざまな名称で呼ばれてきたが、本稿では、高橋と同様に、学校図書館の専門業務を担う教諭以外の職を「学校司書」として論を進める。
(5) 学図研は、1985年に図書館問題研究会(1955年~)を母体に発足し、研究会報告集を『がくと : 学校図書館問題研究会機関誌』として毎年発行しているほか、『教育を変える学校図書館の可能性:子どもたち一人ひとりが主人公』(教育史料出版会、1998年)を著すなどしている。
1991年から2014年にかけて活動した、学校図書館を考える会・近畿は、学校図書館講座を開催し、塩見はこれを「市民が人を育てる研修講座を企画・実施するというのもきわめてユニーク」と評価し、大阪府・市の学校司書研修がこれを機に開始したという成果を紹介している。
塩見昇. 学校図書館の教育力を活かす:学校を変える可能性.日本図書館協会, 2016, p.40-43.(JLA図書館実践シリーズ, 31).学校図書館を考える会は全国各地で生まれ、その全国連絡会も1997年に発足した。そして実践者間の情報交流に大きな役割を果たしたのが、2017年3月をもって終刊した『ぱっちわーく:全国の学校図書館に人を!の夢と運動をつなぐ情報交流紙』であった。
(6) 塩見昇. 特集, 学校図書館法60周年: 今、求められる学校図書館職員像: 学校図書館法と学校図書館の歩み: 専門職員整備の視点を主に: 図書館雑誌, 2013, 107(11), p.682-685.
(7) “情報教育の実践と学校の情報化~新「情報教育に関する手引」~”. 文部科学省. 2002-06.
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/020706.htm [431], (参照 2017-05-11).
(8) 後藤暢. 特集, 教育の未来をひらく 学校司書のしごと: 学校司書法制化の可能性は?. 図書館雑誌. 2012, 106(12), p.822-825.
(9) 高橋恵美子. 1997年から2015年までの学校司書の職務内容の変化: 文部省・文部科学省の見解及び会議報告と学校図書館現場の実態から. 生涯学習基盤経営研究. 2015, (40), p.19-42.
高橋恵美子. 特集, 学校図書館法60周年 : 今、求められる学校図書館職員像: 1997年学校図書館法改正後の司書教諭・学校司書の職務分担を追う. 図書館雑誌, 2013, 107 (11), p.686-687.
(10) “学校図書館専門職員の整備充実に向けて‐司書教諭と学校司書の関係・協同を考える”. 日本図書館協会学校図書館問題プロジェクト・チーム. 1999-03-29.
http://www.iinan-net.jp/~tosyokan/tosyokan/170303 tosyokan.htm [432], (参照2017-03-29).
(11) 子どもの読書サポーターズ会議. ‟これからの学校図書館の活用の在り方等について(報告)”. 文部科学省.
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/dokusho/meeting/__icsFiles/afieldfile/2009/05/08/1236373_1.pdf [433], (参照2017-03-29).
(12) 『ぱっちわーく』の224号(2012年1月)に、各団体からの要請書が転載されている。
(13) 150億円の算出根拠は、1週当たり30 時間の担当職員を概ね2校に1名程度配置することが可能な規模(直近の学校図書館担当職員の配置実績1万4,300 人〈小学校9,800人、中学校4,500人〉)に、1人当たりの配置単価(105 万円)を乗じたものである。1人当たりの配置単価の考え方は、「1時間1千円×1日6時間×1週5日×1年35 週=105 万円」となっている。
“平成24年度からの学校図書館関係の地方財政措置における考え方について”. 文部科学省.
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2017/03/17/1360321_3.pdf [434], (参照2017-03-29).
(14) 『ぱっちわーく』の242号(2013年7月)に転載されている。
(15)“「学校図書館法の一部を改正する法律案(仮称)骨子案」への要望書”. 学校図書館問題研究会. 2013-08-29.
http://gakutoken.net/opinion/action=cabinet_action_main_download&block_id=305&room_id=1&cabinet_id=2&file_id=28&upload_id=225 [435], (参照2017-03-29).
この他、『ぱっちわーく』の245号(2013年10月)、246号(2013年11月)、252号(2014年5月)に各団体からの要望書が転載されている。
(16) “学校図書館担当職員の役割及びその資質の向上に関する調査研究協力者会議 議事要旨・議事録・配付資料”. 文部科学省.
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/099/giji_list/index.htm [436], (参照2017-03-29).
(17) 学校図書館担当職員の役割及びその資質の向上に関する調査研究協力者会議. “これからの学校図書館担当職員に求められる役割・職務及びその資質能力の向上方策等について(報告)”. 文部科学省. 2014-03-31.
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/099/houkoku/1346118.htm [373], (参照2017-03-29).
(18) 塩見昇. 特集, 学校司書法制化以降: いま「学校司書」に求める専門性・その具体化: 学校司書法制化がもたらしたもの. 図書館雑誌. 2014, 108(11), p.737-739.
田村修. 学校司書法制化論議のなかで思うこと これからの学校図書館担当職員に求められる役割・職務及びその資質能力の向上方策等について(報告)(案)を読んで. 出版ニュース. 2014, (2339), p.4-9.
成田康子. ブック・ストリート 学校図書館 学校司書は非常勤でできるのか. 出版ニュース. 2014, (2339), p.16.
この他、『ぱっちわーく』でも、252号(2014年5月)、253号(2014年6月)において、6名の意見を掲載している。
(19) “学校図書館法の一部を改正する法律(衆議院 第186回)”. 衆議院.
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/houan/g18601033.htm [437], (参照2017-03-29).
(20) “第百八十六回国会衆議院文部科学委員会会議録第二十三号”.国会会議録. 2014-06-11.
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/186/0096/18606110096023.pdf [438], (参照2017-03-29).
“第百八十六回国会参議院文教科学委員会会議録第二十号”.国会会議録. 2014-06-19.
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/186/0061/18606190061020.pdf [439], (参照2017-03-29).
(21) “学校図書館法の一部を改正する法律について(見解及び要望)”. 日本図書館協会. 2014-07-05.
http://www.jla.or.jp/Portals/0/data/kenkai/20140704.pdf [440], (参照2017-03-29).
(22) “改正学校図書館法Q&A:学校司書の法制化にあたって”. 学校図書館整備推進会議.
http://www.gakuto-seibi.jp/pdf/2014leaflet4.pdf [441], (参照2017-03-29).
(23) “学校図書館の整備充実に関する調査研究協力者会議 議事要旨・議事録・配付資料”. 文部科学省.
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/115/giji_list/index.htm [442], (参照2017-03-29).
(24) 日本図書館協会学校図書館職員問題検討会. “学校図書館職員問題検討会報告書”. 日本図書館協会.
http://www.jla.or.jp/Portals/0/data/content/information/gakutohoukoku2016.pdf [443], (参照2017-03-29).
(25) 小川哲男.学校司書の資格と養成・研修. 日本学校図書館学会, 2015, 14p.
小川哲男. 学校図書館の在り方と学校司書制度に関する基本的な考え方. 学校図書館学研究. 2016, (18), p.1-3.
頭師康一郎, 岡田大輔. 特集, 第56回研究大会グループ研究発表: 学校司書カリキュラムについて考える. 図書館界. 2015, 67 (2), p.140-146.
ワークショップ報告 学校図書館専門職員制度化の課題について考える. 図書館界. 2016, 67(5), p.322-324.
(「学校司書養成教育カリキュラム(塩見案)」が掲載)
桑田てるみ. 特集, これからの学校図書館: 新しい学校図書館像の構築と専門職養成に関する一考察: 学校図書館法改正を受けて再考する. 現代の図書館. 2015, 53(3), p.113-11.
川瀬綾子, 北克一. 学校図書館法改正と学校司書養成の課題. 情報学(大阪市立大学). 2015, 12 (1), p.63-78.
川瀬綾子, 北克一. 学校司書養成と学校司書研修についての諸案の検討. 情報学(大阪市立大学). 2015, 12(2), p.124-134.
野口武悟. 特集, 「学校司書法制化」を考える. 大学における学校司書の養成はどうあるべきか. 子どもの本棚. 2014, 43(6), p.28-30.
鎌田和宏. 特集, これからの学校図書館職員の専門性とその養成を考える: 学校図書館法の改正とこれからの学校図書館専門職の役割をめぐって. 現代の図書館. 2015, 53(1), p.3-11.
岡田大輔, 頭師康一郎, 川原 亜希世. 特集, 第57回研究大会グループ発表: 学校司書養成カリキュラムについての各科目の内容の検討. 図書館界. 2016, 68(2), p.116-122.
川瀬綾子, 西尾純子, 森美由紀, 北克一. 「学校図書館職員問題検討会報告書(案)」等の学校司書養成カリキュラムの検討. 情報学(大阪市立大学). 2016, 13(2), p.39-56.
狩野ゆき. 特集,第57回研究大会グループ発表: 学校図書館職員の職務内容及び養成・研修の内容について. 図書館界. 2016, 68(2), p.124-133.
全国学校図書館協議会. 学校司書の資格について. 学校図書館. 2016, (794), p.73-76.
(26) “これからの学校図書館の整備充実について(報告)(28文科初第1172号)”. 文部科学省.
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/dokusho/link/1380597.htm [444], (参照2017-03-29).
(27) 中央教育審議会. “チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について(答申)”. 文部科学省. 2015-12-21.
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/__icsFiles/afieldfile/2016/02/05/1365657_00.pdf [445], (参照2017-03-29).
当答申では、学校図書館業務は「教員以外の職員が連携・分担することが効果的な業務」とされており、担当者についての記述は、学校司書が「授業等において教員を支援する専門スタッフ」として登場する箇所で初出し、司書教諭もその項で記述されている。教員・指導教諭・養護教諭と同列で栄養教諭・学校栄養職員が記述されているのとは異なる趣である。
(28) 学校司書に関しては、小・中学校等の概ね1.5校に1名程度の配置として単年度約220億円(総額約1,100億円)の地方交付税措置がなされている。
“学校図書館を、もっと身近で、使いやすく”. 文部科学省.
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2017/03/22/1360321_4.pdf [446], (参照2017-03-29).
(29) 野口武悟. 学校図書館法は改正されたが・・山積する先送りされた課題. ぱっちわーく. 2014, (255), p.2-4.
加藤暉子. 法改正をふまえ、これから学校図書館をどう構築していくのか. ぱっちわーく. 2014, (255), p.19-20.
(30) 「JLA見解」のほか、以下の文献などがある。
山本宏義. 特集, 学校司書、法制化成る: 学校司書法制化に寄せて. 学校図書館. 2014, (766), p.21-24.
(31) 梅本恵. 学校司書法制化をふまえて:学校図書館づくり運動のこれから. 出版ニュース. 2014, (2351), p.4-7.
平久江祐司. 特集, 司書教諭と学校司書の連携: 司書教諭と学校司書の連携の在り方. 学校図書館. 2014, (766), p.41-44.
森田盛行. 特集, 学校司書法制化以降: いま「学校司書」に求める専門性・その具体化学校司書法制化とこれから. 図書館雑誌. 2014, 108(11), p.742-743.
(32) 森田盛行. 平成26年度(第100回)全国図書館大会(東京大会)報告. 第8分科会学校司書の法制化を考える. (日本図書館協会)学校図書館部会報. 2014, (47), p.4-6.
http://www.jla.or.jp/Portals/0/data/bukai/学校図書館部会/Bukaiho47.pdf [447], (参照 2017-05-11).
平久江. 前掲.
(33) 中山美由紀. 学校司書の法制化をめぐって(第3回)学校図書館の未来を支える職の確保と養成. 図書館雑誌. 2013, 107(6), p.358-359.
(34) 中村崇. 学校図書館法「改正」を受け、我々は何を考えなすべきか. ぱっちわーく. 2014, (255), p.14-18.
(35) 塩見昇. 学校図書館専門職員制度化の課題. 図書館界. 2015, 66(6), p.382-390.
(36) 名称や基礎とする免許・資格等にはバリエーションがあるが、単一の専門職制度確立を目指すとする意見には、2011年以降に限っても「JLA見解」のほか、たとえば以下のようなものがある。
塩見昇. 学校図書館専門職員制度化の課題. 図書館界. 2015, 66(6), p.382-390.
中村百合子. 学校司書の法制化をめぐって(第1回)なにが学校図書館職員「問題」なのか. 図書館雑誌. 2013, 107(2), p.104-105.
桑田. 前掲.
(37) 塩見昇. 特集, この困難な時代にあって図書館は何をすべきか: この困難な時代にあって図書館は何をすべきか. 図書館界. 2017, 68(6), p.336-343.
(38) 須永和之. 『これからの学校図書館の整備充実について(報告)』を読んで. ぱっちわーく. 2016, (283), p.10-11.
(39) 山口真也. 学校司書の「モデルカリキュラム」に関するノート:地方の(沖縄の)私立大学・司書課程担当者の立場から. ぱっちわーく. 2016, (283), p.12-14.
(40) 後藤暢. 学校図書館法改正が示すもの. 子どもと読書. 2014, (407), p.2-5.
江藤裕子. あきらめずに続けてきた運動の未来が絶ち切られた思いです. 子どもと読書. 2014, (407), p.9-11.
東谷めぐみ. 特集, 学校司書法制化以降, いま「学校司書」に求める専門性・その具体化: あらためて学校図書館の教育的意義を考える:「学校図書館の教育力7項目」の検証から. 図書館雑誌. 2014, 108(11), p.746-747.
(41) 出版界スコープ 「公立小中学校の学校図書館において非正規で働く方の勤務実態に関するアンケート」集計結果・分析および主張: 全日本教職員組合(全教)学校図書館職員対策部 2016年10月. 出版ニュース. 2016, (2432), p.42-45.
学校図書館職員対策部. “「公立小中学校の学校図書館において非正規で働く方の勤務実態に関するアンケート」集計結果・分析および主張”. 全日本教職員組合. 2016-06-11.
http://www.zenkyo.biz/modules/senmonbu_torikumi/detail.php?id=546 [448], (参照2017-03-29).
(42) 米谷優子. 「学校司書」の雇用条件の現況と課題. 日本図書館情報学会春季研究集会発表論文集. 2016, p.75-78.
(43) 梅本恵. 特集, いきいき学校図書館: 学校司書をめぐる現状と課題:「改正学校図書館法」をふまえて. こどもの図書館. 2016, 63(2), p.9-11.
(44) 杉浦良二. 学校図書館の民間委託に関する一考察: 三重県内公立小中学校における株式会社リブネットの事例から. 学校図書館学研究. 2015, (17), p.23-31.
(45) 千田つばさ. 特集,「学校司書法制化」を考える: 都立高校図書館と学校司書. 子どもの本棚. 2014, 43(6), p.30-33.
(46) 文部科学省初等中等教育局児童生徒課. “平成28年度学校図書館の現状に関する調査”. 文部科学省. 2016-10-13.
http://www.mext.go.jp./a_menu/shotou/dokusho/link/1378073.htm [449], (参照2017-03-29).
文部科学省初等中等教育局. “学校図書館の現状に関する調査結果について”. 文部科学省. 2007-04-27.
http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1621348/www.mext.go.jp/b_menu/houdou/19/04/07050110.htm [450], (参照 2017 -03-29).
(47) 次のような論考が例として挙げられる。
松井正英. これからの学校図書館を考えるために、法改正をどう見るか. ぱっちわーく. 2014, (255), p.2-4.
後藤敏恵. 学校図書館法「改正」について. ぱっちわーく. 2014, (256), p.6-8.
永井悦重. 学校図書館像学校司書像の再構築を!:学校司書法制化を通して考えたこと. 子どもと読書. 2014, (407), p.6-7.
梅本恵. 学校司書法制化をふまえて 学校図書館づくり運動のこれから. 出版ニュース. 2014, (2351), p.4-7.
宮崎健太郎. この「職員像」に、いかに魂を込めるか:協力者会議報告に思う. ぱっちわーく. 2014, (253), p.26-27.
(48) 「IFLA/ユネスコ学校図書館宣言」(1999年)は学校図書館の使命として「情報がどのような形態あるいは媒体であろうと、学校構成員全員が情報を批判的にとらえ、効果的に利用できるように、学習のためのサービス、図書、情報資源を提供する」と掲げている。
https://www.ifla.org/archive/VII/s8/unesco/japanese.pdf [451], (参照2017-03-29).
(49) 塩見昇. 学校図書館の教育力を活かす:学校を変える可能性.日本図書館協会. 2016, 178p, (JLA実践シリーズ, 31).
松井正英. 学校司書の法制化をめぐって(第2回)「深層」から考える学校図書館職員問題. 図書館雑誌. 2013, 107(4), p.234-235.
永井悦重. 学校図書館はこれでいいのか:文科省の報告を読む. ぱっちわーく. 2014, (253), p.26-27.
(50) 2012年12月に、島根県の松江市教育委員会が『はだしのゲン』の一部描写が過激で悪影響を及ぼすとして同書を学校図書館から除去することを求め児童生徒への提供を制限するよう要請していたことが2013年夏発覚し、子どもの「自主的な読書活動」を尊重する観点から問題になった。
(51) 日本図書館協会図書館の自由委員会. “中沢啓治著「はだしのゲン」の利用制限について(要望)”. 日本図書館協会. 2013-08-22.
http://www.jla.or.jp./portals/0/html/jiyu/hadashinogen.html [452], (参照2017-03-29).
堀岡秀清, 高橋恵美子. 『はだしのゲン』閲覧制限問題をめぐって. 日本図書館協会学校図書館部会報. 2014, (45), p.27-28.
http://www.jla.or.jp/Portals/0/data/bukai/学校図書館部会/JLA_GakutobukaihoNo45.pdf [453], (参照 2017-05-15).
渡邊重夫. 学校図書館の対話力:子供・本・自由. 青弓社, 2014, 241p.
山口真也. 図書館ノート(44)オミットされる「図書館の自由」:「教育再生」のなかの学校司書法制化.みんなの図書館. 2015, (457), p.54-59.
(52) 杉浦良二. 松江市立小中学校図書館における『はだしのゲン』閲覧制限: 地方教育行政と学校図書館専門職の問題.中部図書館情報学会. 2014, (54), p.55-62.
(53) 加藤容子. 特集, 私たちののぞむ学校図書館とは: 学校司書の専門性: 一人ひとりの自由な学びを、資料提供で実現する. 子どもと読書. 2014, (407), p.7-9.
(54) 今野千束. 「これからの学校図書館の整備充実について(報告)」をどう読んだか. ぱっちわーく. 2016, (283), p.21-23.
(55) たとえば、野口は、「教育方法学のテキストにおける学校図書館の扱いを調べたところ8冊のうち5冊には記述がなかった」調査結果を示し、「(略)機能を向上させるためには、学校図書館の側から教員や教員集団への働きかけが重要である」としている。これは学校図書館界、そして教育界全体として求められることであろう。
野口武悟. 特集, 学校図書館から見た「アクティブ・ラーニング: 学校図書館活用を教育方法として明確化するために: アクティブ・ラーニングを見据えて. 学校図書館. 2016, (794), p.29-31.
(56) 杉浦良二. 学校図書館の格差 : 公立学校図書館の条件整備における国の責任. 学校図書館学研究. 2016, (18), p.38-44.
今野. 前掲.
(57) 清水明美. 特集, いま、学校司書をめぐって: 「学校司書の法制化を考える全国の集い」に参加して: 公共図書館員の立場から . みんなの図書館. 2013, (429), p.4-9.
種村エイ子. 学校司書法制化とこれからの図書館員養成. ぱっちわーく. 2014, (255), p.2-4.
(58) 羽深希代子. 特集, 第56回研究大会;グループ研究発表: 学校図書館に関する研修内容の提案. 図書館界. 2015, 67(2), p.128-133.
(59) 森田盛行. 特集, 学校司書法制化以降, いま「学校司書」に求める専門性・その具体化: 学校司書法制化とこれから. 図書館雑誌. 2014, 108(11), p.742-743.
(60) 今野. 前掲.
(61) 岩橋能二. 足立から学校司書を考える. 子どもと読書. 2015, (407), p.11-13.
座談会 学校司書について. 子どもと本. 2015, (141), p.30-38.
(62) 水越規容子. 特集, 「学校司書法制化」を考える. 学校図書館法改正をどう考えるか. 子どもの本棚. 2014, 43(6), p.21-23.
(63) 塩見昇. 特集, 学校司書法制化以降. いま「学校司書」に求める専門性・その具体化: 学校司書法制化がもたらしたもの. 図書館雑誌. 2014, 108(11), p.737-739.
疋田久美子. 図問研のページ 学校司書法制化をめぐる学習会報告: みんなの図書館. 2014, (450), p.72-74. (『ぱっちわーく』事務局長、梅本恵氏の講演記録)
(64) 清水. 前掲.
[受理:2017-05-15]
米谷優子. 学校図書館専門職関連施策の動向と課題―2014年法改正を中心に―. カレントアウェアネス. 2017, (332), CA1902, p. 20-25.
http://current.ndl.go.jp/ca1902 [454]
DOI:
http://doi.org/10.11501/10369301 [455]
Maitani Yuko.
Trends and Issues of School Library Specialists:focusing on revision of the law in 2014.
PDFファイル [458]
神戸大学附属図書館:花﨑佳代子(はなざき かよこ)
英国では近年、RCUK(英国研究会議)やHEFCE(イングランド高等教育助成会議)などの主な研究助成機関により、オープンアクセス(OA)義務化ポリシーが発表されている。本稿では、英国において、これらの研究助成機関のOAポリシーを背景にOAが進展する中で発生している新たな課題と、その課題への大学およびその関連機関による対応について紹介する。
筆者はその課題への対応方法を調査するため、2016年9月に、英国におけるOAに関するサポートの中心的役割を担うJiscおよび研究助成機関のOA義務化へ対応しOAに関するワークフローを改善したインペリアル・カレッジ・ロンドンを訪問しインタビューを行った。本稿の内容は、訪問時およびその後のメールでの確認を含めた2機関へのインタビューおよび文献調査に基づいており、特に注のない記述はインタビューによるものである。
英国における大学などの高等教育機関向けの研究費は、HEFCEによる基盤的経費配分およびRCUKによる競争的資金配分が構成するデュアル・サポート・システムにより実施されている。2014年度は高等教育機関向け研究費78.9億ポンドのうち、HEFCEおよびその他3機関が構成するHEFCs(1)が約23.4億ポンド、RCUKが約21.4億ポンドを助成し、海外の研究助成機関や非営利民間研究助成機関が配分額においてそれらに続いている(2)。
これまで英国では、生物医学分野で英国最大の非営利民間研究助成機関であるウェルカム財団(Wellcome Trust)による2005年のOA義務化ポリシー発表(E338 [459]参照)に続いて、RCUKを構成する各研究会議がそれぞれグリーンOAによるOA義務化ポリシーを発表するなどの動きがあったが、2012年にRIN(英国研究情報ネットワーク)がFinchレポート(3)と呼ばれる報告書を発表したことが、英国のOAに関する方針における大きな転換点となった。この報告書では、グリーンOAでは再利用における権利上の制限やエンバーゴがあることを理由に、ゴールドOAおよびハイブリッドOAによるOAの実現を提唱している。これを受けRCUKは2012年7月に、ゴールドOAおよびハイブリッドOAを優先し、妥当な投稿先がない場合にのみグリーンOAを認めるOAポリシー(4)を発表した。このポリシーは、RCUKの助成により2013年4月以降に投稿される査読ありの雑誌論文および会議発表論文に関し、クリエイティブ・コモンズ(CC)のCC BYライセンスを適用して出版されると同時に論文が公開される雑誌、もしくはこれが不可能なら、非営利での再利用を制限しない条件で出版後6か月(人文社会科学分野は12か月)以内に著者最終稿をリポジトリへ登録することを認める雑誌へ投稿することを要求している。RCUKは、助成する全論文がOAとなるまでに5年間の移行期間を設定し、その期間に発生する論文処理費用(APC)およびその他OAの実現に必要な経費のための補助金を各大学へ配分すると発表した。RCUKはOAポリシー適用状況のレビューを実施すると定め、2014年実施のレビューのために助成を受けた論文のOAポリシー順守状況やOA補助金の使用額についての報告を各大学に課した(5)。その後も各大学は同様の内容について毎年報告を要求されている(6)。
また2014年にはウェルカム財団が他の5つの研究助成機関と共同でCOAFと呼ばれるAPC助成のための基金を設立した。大学はCOAF助成によりAPCを支払った場合、その論文を報告する必要がある(7)。
続いて2014年に発表されたHEFCEのOAポリシー(8)は対象とする論文の範囲が広く、かつ要求する条件が厳しい。このポリシーでは、2016年4月以降に受理されたISSNを持つ雑誌論文および会議発表論文の、受理後3か月以内のリポジトリへの登録およびその後(もしくはエンバーゴ終了後)1か月以内での公開を要求している(9)。対象となる論文は、HEFCEが研究費の傾斜配分のために6-7年ごとに実施しているREF(Research Excellence Framework:研究卓越フレームワーク)と呼ばれる評価の次回実施時(2021年を予定)に提出される論文である。REFにおいて各大学は、教員による論文またはその他の研究成果を、REFの評価対象の一つとして提出する(10)。つまり、HEFCEのOAポリシーを順守していない論文は、次回REFにおいて評価対象として大学から提出することができないため、REFへの提出の可能性がある論文はすべて、受理後3か月以内にリポジトリへ登録しておく必要がある。
では、研究助成機関のOAポリシーはどのような影響をもたらしているのだろうか。
2013年4月から2014年7月までを対象にしたRCUKのOAポリシーに関する第1回目のレビューの結果は、 表1の通り報告されている(11)。
OA率がRCUKが示した2013/2014年度の目標値である45%以上の機関数(*1) | 43機関 |
グリーンOAよりゴールドOAの比率の方が高い機関数(*1) | 39機関 |
RCUK助成による論文数(*2) | 20,580点 |
ゴールドOAの論文数(*3) | 9,297点 |
グリーンOAの論文数(*4) | 3,355点 |
OAポリシーを順守していない論文数(*5) | 5,121点 |
APC支払総額 | 1,040万ポンド |
上記APCにより出版されたゴールドOAの論文数 | 6,504点 |
※(*1)は、比較可能な回答を提示した46機関を対象としている。
※55機関へのOA補助金は英国におけるOA補助金全額の93.5%を占める。
※各機関からの報告において(*2)~(*5)のいずれかの数値が示されていない場合や見積もりに基づく場合があるため、(*3)~(*5)の合計が(*2)と一致しない。
なお、同時期の英国全体のOA率については、2015年8月に発行されたRINの報告書に、2014年から過去2年間を対象に算出された英国と世界のOA率の見積もりがあり、英国は世界の数値を上回っている(表2)(12)。
出版後経過期間(月) | 0 | 6 | 12 | 24 |
世界(%) | 17.9 | 19.9 | 24.9 | 27.3 |
英国(%) | 19.9 | 23.9 | 32.1 | 35.0 |
さらに、HEFCEのOAポリシーは対象とする論文が多いため、今後OA率の向上がみられることも予想される。
このように、主要な研究助成機関によるOAポリシーによってOA義務化の対象となる論文数が増加するとともに、各OAポリシーの定める要求に対応するため、APCの支払状況やOA率の把握・報告などの新たな業務が各大学において発生している。RCUKのレビューでは、OAポリシー順守状況の確認を行うために必要な大学全体の出版物の情報やそれと紐づいた助成金の情報を把握するシステムを、レビュー実施時には多くの大学が保持していなかったことが指摘され、多くの大学でREFも視野に入れてそれらのシステムの導入が進行中であると記されている。そして同レビューでは、RCUKだけではなく他の研究助成機関のOAポリシーへの順守状況確認にも役立つ形で、さらに事務コストを抑制した上でそれらのデータを収集する方法の確立の必要性が提唱されている(13)。
上記の課題に対する、Jiscおよびインペリアル・カレッジ・ロンドンの対応のうち、本章では、JiscによるOA推進のためのプロジェクトを紹介する。Jiscでは、前章で述べた研究助成機関によるOA義務化への対応に関し、様々なツールやサービスの開発・提供を行っている。
Jiscの主導により2014年5月から2016年7月まで実施された Open Access Good Practice Project(14)は、各大学が研究助成機関のOAポリシーを順守する際の負担を軽減するため、グッドプラクティスを創出・共有することを目的としている。
このプロジェクトの実施期間中に、約30機関によって構成された9つのグループが各テーマに基づいて自機関の取り組みをブログやイベントで共有したほか、多数のツールや資料などの成果物を生み出した(15)。参加機関やテーマは、大学の規模や研究分野によってOAに関するニーズが異なることを前提に、その多様なニーズに応えられることを重視して選定され、中には後述するJiscの新しいサービス開発のためのパイロットの役割を果たす場合もあった。
2015年半ばからの開発期間を経て2016年8月に正式にサービスを開始したPublications Router(16)は、論文のメタデータおよびフルテキスト(著者最終稿あるいは出版社版)を出版社などから各大学のCRIS(E1791 [460]参照)や機関リポジトリへ通知・転送するためのシステムである。メタデータおよびフルテキストは、Publications Routerの参加機関があらかじめ設定した、機関名、助成金の課題番号、ORCID(CA1740 [461]参照) iD、著者のメールアドレスなどを条件として判別の上、出版時またはそれ以前のタイミングで各機関に通知・転送される(17)。
2017年3月現在、メタデータおよびフルテキスト(出版社版原稿)の提供者は、eLife、 PLOS社、 Springer Nature社(配信時期:出版時)およびEurope PMC(配信時期:出版30日後)であり、PubMedはメタデータのみを提供している(18)。今後出版社が、受理のタイミングでの著者最終稿の転送へ対応すれば、HEFCEのOAポリシーの順守における大学の負担軽減につながると考えられる。
Jisc Monitor(19)は、APCの管理・記録と研究助成機関のOAポリシーの順守状況確認のためのツール開発を目的として2014年に開始されたプロジェクトである。この成果物として2016年11月にMonitor Local(20)とMonitor UK(21)という2つのクラウドサービスが稼働し始めた。
Monitor Localは、Monitor Localの各参加機関が、グリーンOAとゴールドOA双方を含む自機関の論文情報とAPCの価格情報を記録・管理し、また研究助成機関のOAポリシーの順守状況を確認する機能を持つ。開発時に想定されていた情報源は、出版社の原稿公開許諾ポリシー参照のためのSHERPA RoMEO(22)、OAポリシー順守状況確認のためのツールであるLantern(23)、機関リポジトリアグリゲーターのCORE(24)、雑誌情報を保持するナレッジベースのKB+(CA1860 [462]参照)(25)、書誌情報を持つCrossref(26) などであるが(27)、2017年3月現在は、参加機関の意見を反映の上、実際のデータの流れの確定に向け検討が進んでいる。KB+やCrossrefとの連携はすでに一部実現されている。これらの情報に加え各機関は手入力もしくはCSVファイルからの一括登録によりAPCの情報を入力する。
情報入力については、たとえば投稿時に論文情報を入力して事前にHEFCEのOAポリシーの順守状況の確認を行うなど、そのタイミングを選択可能とすることが想定されている。また投稿後には研究助成機関への報告書作成のためにCSV形式のデータを出力することも可能である。各種情報源との連携の一部は自動化されていないが、Monitor Localを利用することで、たとえば購読費とAPCの二重取り(ダブルディッピング)の可能性を把握し確認できることが重要であると示唆を受けた。
Monitor UKはMonitor Local上の情報を集めてAPCに関するベンチマーキングを可能とする機能を持つ。使用するデータはMonitor Localから集約されるほか、各機関が保持するAPCのデータをCSV形式のファイルを利用して直接入力することも可能とする想定であったが、2017年3月現在はMonitor Localとの連携方法を検討中のためサービス提供を停止している。公開されているプロトタイプ(28)では、出版社別および参加機関別のAPC支払額と件数や、研究助成機関別のゴールドOAとハイブリッドOAのAPC支払額と件数、ゴールドOAとなった論文のうち、グリーンOAでも研究助成機関のOAポリシーを順守できた件数などが自動的に算出・可視化されている。Monitor UK参加機関はこれらのデータを利用し自機関の状況を他機関や国の平均と比較したり、APCの価格やOAポリシー順守に対するサポートの面で出版社を評価したりすることが可能となる。
Monitor LocalとMonitor UKのいずれかのみの参加を選択することも可能である。
インペリアル・カレッジ・ロンドンは、工学、医学、自然科学の3学部およびビジネススクールを有し、年間1万本以上の論文が発表される(29)研究大学である。2016-2017年の世界大学ランキングでは、Quacquarelli Symonds(QS)社により9位、Times Higher Education(THE)社により8位(英国内では3-4位にあたる)と位置づけられている。2015/2016年度にはRCUKからOAのための補助金として154万4,569ポンドの配分を受けた(30)。
インペリアル・カレッジ・ロンドンは2012年1月に大学のOAポリシー(31)を発表し、すべての論文の著者最終稿を機関リポジトリにアップロードすることを義務づけた。またゴールド OA 誌への投稿時に利用可能なAPCファンドも学内に整備されている。
学内では、2012年設立のOpen Access Publishing Working Groupと、2013年設立のOpen Access Implementation Groupという 2つの組織(32)が中心となってOAを推進してきた。前者はAssociate Provostが率い、図書館や研究推進部門を含む複数の部署のメンバーにより構成され、大学のOAに関する戦略を決定する。後者は研究推進部門の学術コミュニケーション担当官(Scholarly Communications Officer)が率い、図書館やICT部門からのメンバーを含み、OAに関する戦略を実践する。
図書館の職員数は約100名であるが、図書館内のOA担当者は、RCUKと学内の助成によるAPC管理のために約1名増員された後、HEFCEのOAポリシー発表をきっかけに機関リポジトリ登録業務のために約2名増員され、2017年3月現在、ゴールドOA担当2名、グリーンOA担当3名、双方を管理するマネージャー1名の計6名である。なお、OA担当者がサブジェクトライブラリアン向けに月に1回、OAに関する情報のアップデートを行っている。
インペリアル・カレッジ・ロンドンでは、HEFCEのOAポリシーへの対応をきっかけとして、教員の負担を減らすシンプルなワークフロー(33)を導入した。教員に要求される行動は、ゴールドOAとグリーンOAのどちらであっても、論文が受理された際、論文情報および著者最終稿の登録をCRIS(Symplectic社のシステムElements(34))から行い、APC助成の希望があれば該当の助成金を選択することのみである。なお、すでに外部のリポジトリに論文の原稿を登録済であればそのリンク先を入力することで原稿の登録に代えられる。この際教員が入力する情報は、掲載誌と論文のタイトル、受理された日付、DOIおよび助成金情報であり、残りの情報は図書館員が確認の上入力する。また人事や助成金に関する情報はあらかじめCRIS上で保持されている。その後、論文情報と原稿は、CRISの機能を使用して機関リポジトリへ転送される。
このワークフローにより、これまで教員がASK OAという学内独自のAPC管理システムを利用して行っていたAPC助成の申請を、論文情報登録と同時に行えるようになった。教員がCRISで論文情報を入力する際、RCUKやCOAFなどの助成金や学内のAPCファンドから該当の助成金を選択し申請すると、ASK OAに情報が転送され、そこで発行された識別番号を教員が出版社に通知することで請求書が大学に送付される仕組みである。教員はこのワークフローに従うことで、助成を受けた研究助成機関やOAの方法(グリーンOAもしくはゴールドOA)によって取るべき手順を変える必要がないということが、重要な点である(35)。
このワークフローの試行期間中には、HEFCEのOAポリシーが定める期限内に機関リポジトリへ登録した論文数が増加したと報告されている(36)。
このワークフローは、教員だけでなく、図書館および研究推進部門の負担軽減にも役立っている。大学はRCUKへOA補助金の使用状況とOA率を、またCOAFへAPC助成を受けた額とその対象論文を報告する必要があるが、このためのデータの収集がこのワークフローによって可能となったためである。
たとえばAPCの価格情報はCRISには保持されていないが、CRIS上の論文情報とASK OA上のAPC価格情報を特定の識別番号で紐づけることが可能となった。また、このワークフローでは助成金の情報の入力を教員へ要求していることから、論文と研究助成機関の情報が紐づくことにより、研究助成機関への報告にも役立つことが期待されている(37)。
またHEFCEのOAポリシーの順守状況の確認には、CRISが保持する機能Open Access Monitorモジュール(38)を使用している。この機能では、各論文情報に対して、本文の有無やエンバーゴ、原稿のバージョンの情報などを入力し、HEFCEのOAポリシーを順守しているか、またこのポリシーにおける例外(39)に該当するかどうかについて図書館が管理できる(40)。CRIS上で管理した情報は、Imperial College Analytics(41)という大学の分析ツールを利用し、学部別のOAポリシーの順守状況をダッシュボードで表示し把握することができる。
インペリアル・カレッジ・ロンドンでは、2015年の英国のORCIDナショナルコンソーシアム発足に先立ち2014年から実施されたJisc-ARMA ORCID pilot project(42)(E1687 [463]参照)の一環として、ORCIDを学内全教員に付与するプロジェクトを2014年11月より行い、以下の事項が報告された(43)。
まず、ORCID iDの作成方法は、ORCIDメンバー機関が利用可能なAPIでの一括付与とした。最終的には全教員4,347名のうち、オプトアウトを選択した教員や作成済の教員などを除く3,226名のORCID iDを作成し、CRIS上の研究成果情報約24万件をORCIDのレジストリへアップロードした。その後学内で周知の結果、2015年10月20日までには2,088名の教員がORCID iDの承認手続きを完了した。
現在、ORCID iDを含む論文情報を外部のデータベースからCRISに自動で取り込む機能の実装を準備中である。
HEFCEのOAポリシーは、論文の受理後3か月以内の機関リポジトリへの原稿の登録を求めているため、インペリアル・カレッジ・ロンドンではそれまでに確立していた出版後の論文情報登録のワークフローが機能しなくなった(44)。CRISが持つ論文情報のアラート機能は、あらかじめ設定したキーワードに合致する論文情報を教員へ通知するが、これは出版後の通知であるためHEFCEのOAポリシーが定める時期に間に合わない場合がある。そのため現在は教員が受理後すぐに論文情報をCRISに手入力する必要があるが、この時点では巻号や出版日の情報が不明であることもあるため、教員や図書館員は出版時に、アラートされた情報と既存の受理時の情報を手動でマージしたり情報を手入力したりしている。さらにHEFCEのOAポリシーを順守しているかどうか確認するのに必要な受理日や出版日などの情報は把握自体が困難である。
これらの問題を解決するため、インペリアル・カレッジ・ロンドンではさらなるワークフローの改善の展望がある(45)。受理後の論文情報が、出版社やCrossrefを通じて、下記のような流れで大学のCRISへ転送されるという仕組みである。
※受理時にDOIが付与されていれば、受理時の入力情報を出版時の情報で自動アップデートすることも可能となる。
このワークフローが実現すれば、論文情報が、論文や著者が識別可能な状態で受け渡され、情報の入力や更新をする教員や図書館の負担が軽減される。このワークフローが機能するためには、Publications Routerへ情報を提供する出版社の増加やCRISによる機能上の対応などいくつかの課題があるが、すでに進展のみられる部分もある。たとえば投稿時にORCID iDの提示を要請する出版社が増加しており(46)、またCrossrefによる受理時のDOI発行も開始される予定(47)である。インペリアル・カレッジ・ロンドンにおける全教員へのORCID iD一括付与も、このワークフローにおいて最終的にCRISや機関リポジトリが論文の情報を受け取るための重要な要素となる。
以上、英国において研究助成機関のOAポリシーを背景にOAへの要請が高まる中で生じている課題と、大学およびその関連機関によるそれへの対応について、Jiscおよびインペリアル・カレッジ・ロンドンの事例を報告した。英国では現在、大学全体の出版物の情報やそれと紐づいた助成金の情報およびAPCの使用額の把握、またそれらの情報をもとにしたOAポリシーの順守状況の確認や研究助成機関への報告が課題となっている。また複数の研究助成機関のOAポリシーへの対応や、これらの業務にかかる事務コスト抑制の必要性も指摘されている。
これらの課題を解決するため、JiscではMonitor Local、Monitor UKやPublications Routerなどのサービスの提供が開始され、またインペリアル・カレッジ・ロンドンでは、CRISや大学独自のAPC管理システムなどを活用し、教員や大学全体の負担を軽減するワークフロー導入の試みがなされてきた(図1)。
※筆者作成
日本は、英国のように主要な研究助成機関がOAを義務化する状況にはないが、今後そのような状況になればこれらの対応が参考になると思われる。
※参照URLの最終確認日は、記載のあるものを除きすべて2017年5月4日である。
(1) HEFCs(Higher Education Funding Councils)は、HEFCEおよび各地域でHEFCEと同様に高等教育機関向け基盤的研究経費配分を行うウェールズのHEFCW(Higher Education Funding Council for Wales)、スコットランドのSFC(Scottish Funding Council)、北アイルランドのDEL(Department for the Economy, Northern Ireland)の総称である。本稿では、HEFCs合同でHEFCEを中心に発表されたOAポリシーにつき、HEFCEのOAポリシーと記述する。
(2) “UK Gross domestic expenditure on research and development: 2014”. Office for National Statistics.
https://www.ons.gov.uk/economy/governmentpublicsectorandtaxes/researchanddevelopmentexpenditure/bulletins/ukgrossdomesticexpenditureonresearchanddevelopment/2014/ [464].
(3) Finch, Dame Janet et al. “Accessibility, sustainability, excellence: how to expand access to research publications: Report of the Working Group on Expanding Access to Published Research Findings”. 2012-06.
https://www.acu.ac.uk/research-information-network/finch-report-final [465].
(4) 移行期間中は、APC支払いにOA補助金を利用できない場合には著者最終稿のリポジトリ登録までに12か月(人文社会科学分野では24か月)のエンバーゴが許可されている。
RCUK. “RCUK Policy on Open Access and Supporting Guidance”. 2013-04-08.
http://www.rcuk.ac.uk/documents/documents/rcukopenaccesspolicy-pdf/ [466].
(5) “Data required by RCUK to support compliance monitoring”. RCUK.
http://www.rcuk.ac.uk/documents/documents/compliancemonitoring-pdf/ [467], (accessed 2017-05-16).
(6) Wright, Andrew; Hicks, Pamela. “Guidance on RCUK open access compliance and financial reporting 2016-17”. RCUK. 2017-04.
http://www.rcuk.ac.uk/documents/documents/oa/rcukoareportingguidance-pdf/ [468].
(7) “COAF information for research organisations”. Wellcome.
https://wellcome.ac.uk/funding/managing-grant/coaf-information-research-organisations [469].
(8) “Policy for open access in Research Excellence Framework 2021”. HEFCE. 2016-11.
http://www.hefce.ac.uk/media/HEFCE,2014/Content/Pubs/2016/201635/HEFCE2016_35.pdf [470].
(9) 2016年4月からは、リポジトリへの登録は受理後ではなく出版後3か月以内とする緩和措置が取られている。受理後3か月以内の登録は2018年4月以降に受理された論文から適用される。
“Open access in the Research Excellence Framework: Extension of flexibility”. HEFCE. 2016-11.
http://www.hefce.ac.uk/pubs/year/2016/CL,322016/ [471].
(10) 2014年に実施されたREFでは、アウトプット(評価割合65%)、インパクト(20%)、研究環境(15%)の3つの基準で5段階(4段階および評価なし)での評価がなされ、アウトプットについては2008年1月から2013年12月に出版された研究成果から教員1人当たり最大4点が提出された。提出された研究成果総数は19万1,150点である。
山田直. “2015年1月号「大学の研究への公的評価:REF2014」<2014年度公的研究評価結果:HEFCE資料より>”. SciencePortal. 2015-01.
http://scienceportal.jst.go.jp/reports/britain/20150105_01.html [472].
“REF2014 Key facts”. HEFCE.
http://www.ref.ac.uk/media/ref/content/pub/REF%20Brief%20Guide%202014.pdf [473].
(11) “Review of the implementation of the RCUK Policy on Open Access”. 2015-03.
http://www.rcuk.ac.uk/documents/documents/openaccessreport-pdf/ [474].
(12) Jubb, Michael et al. “Monitoring the Transition to Open Access: A report for the Universities UK Open Access Co-ordination Group”. 2015-08.
https://www.acu.ac.uk/research-information-network/monitoring-transition-to-open-access [475].
(13) “Review of the implementation of the RCUK Policy on Open Access”. 2015-03.
http://www.rcuk.ac.uk/documents/documents/openaccessreport-pdf/ [474].
(14) “Open access good practice”. Jisc.
https://www.jisc.ac.uk/rd/projects/open-access-good-practice [476].
(15) Blanchett, Helen; DeGroff, Hannah. “Moving open access implementation forward: A handbook for open access good practice based on experiences of UK higher education institutions”. 2016-12.
http://repository.jisc.ac.uk/6565/1/JISC_OAGP_OUTPUTS_HANDBOOK_FINAL.PDF [477].
(16) Publications Routerについては2016年9月にインタビューを実施しておらず、記載の情報は文献調査および2017年4月の担当者へのメールでの確認による。
Publications Router.
https://pubrouter.jisc.ac.uk/ [478].
(17) “Technical information”. Jisc publications router.
https://pubrouter.jisc.ac.uk/about/resources/ [479].
(18)Springer Nature社の場合は出版時もしくは出版前にオンライン版が入手可能になった際に各機関に通知される。
“Current content providers”. Jisc publications router. 2017-01.
https://pubrouter.jisc.ac.uk/about/providerlist/ [480].
(19) “Monitoring open access activity (Jisc Monitor) ”. Jisc.
https://www.jisc.ac.uk/rd/projects/monitoring-open-access-activity [481].
(20) “Monitor Local”. Jisc.
https://monitor.jisc.ac.uk/local/ [482].
(21) “Monitor UK”. Jisc.
https://monitor.jisc.ac.uk/uk/ [483].
(22) SHERPA RoMEO.
http://www.sherpa.ac.uk/romeo/index.php [484].
(23) Lantern.
https://lantern.cottagelabs.com/ [485].
(24) CORE.
https://core.ac.uk/ [486].
(25) Knowledge Base+.
https://www.kbplus.ac.uk/kbplus/ [487].
(26) Crossref.
https://www.crossref.org/ [488].
(27) Manista, Frank C. “Jisc Open Access Services: Jisc Monitor”. PASTEUR4OA. 2016-05-17.
http://www.pasteur4oa.eu/sites/pasteur4oa/files/generic/Frank%20Manista.pdf [489].
(28) “ALL APC”. Cottage Labs.
http://apc.ooz.cottagelabs.com/ [490].
(29) Reimer, Torsten. Your name is not good enough: introducing the ORCID researcher identifier at Imperial College London. Insights. 2015, 28(3), p. 76-82.
http://doi.org/10.1629/uksg.268 [491].
(30) “RCUK announces 2015/16 Block Grant for Open Access”. RCUK. 2015-03-05.
http://www.rcuk.ac.uk/media/news/150305/ [492].
2016/2017年度は、過去の支給額の利用が少ない機関には追加配分が実施されず、インペリアル・カレッジ・ロンドンは配分額のリストに記載がない。
“RCUK announces 2016/17 Block Grant for Open Access”. RCUK. 2016-10-19.
http://www.rcuk.ac.uk/media/news/161019/ [493].
(31) “Imperial's open access policy”. Imperial College London.
http://www.imperial.ac.uk/research-and-innovation/support-for-staff/scholarly-communication/open-access/oa-policy/ [494].
(32) この2つの組織は2016年までで解体され、現在は新しい体制となっている。
“Imperial's open access policy”. Internet Archive.
http://web.archive.org/web/20160205134826/http://www.imperial.ac.uk/research-and-innovation/support-for-staff/scholarly-communication/open-access/oa-policy/ [495], (accessed 2017-05-11).
(33) Reimer, Torsten. “Making Open Access simple – The Imperial College approach to OA”. Open Access and Digital Scholarship Blog. 2015-07-28.
http://wwwf.imperial.ac.uk/blog/openaccess/2015/07/28/making-open-access-simple-the-imperial-college-approach-to-oa/ [496].
Dobson, Helen. “Approaches to Deposit: Imperial College”. opeNWorks. 2016-04-11.
https://blog.openworks.library.manchester.ac.uk/2016/04/11/approaches-to-deposit-imperial-college/ [497].
(34) “Elements”. Symplectic.
http://symplectic.co.uk/products/elements/ [498].
(35) HEFCEのOAポリシーは、ゴールドOAの場合は著者最終稿をリポジトリに登録しないことも認めており、その場合インペリアル・カレッジ・ロンドンではCRISで受理日の登録を行う必要がある。
“Post-2014 REF: open access requirements”. Imperial College London.
https://www.imperial.ac.uk/research-and-innovation/support-for-staff/scholarly-communication/open-access/post-2014-ref/ [499].
インペリアル・カレッジ・ロンドンにおいては、APC助成の申請をする場合は著者最終稿の登録が必須となっている。助成の申請を受けた後に図書館が確認を行った結果、それぞれのAPC助成金が助成対象とする基準に該当しない場合には図書館が助成申請を許可せず、登録された著者最終稿をもってグリーンOAとする場合もあるためである。またHEFCEのOAポリシーに対応して著者最終稿のリポジトリへの登録を教員に習慣づけるためでもある。
(36) Dobson, Helen. “Approaches to Deposit: Imperial College”. opeNWorks. 2016-04-11.
https://blog.openworks.library.manchester.ac.uk/2016/04/11/approaches-to-deposit-imperial-college/ [497].
(37) Reimer, Torsten. “Making Open Access simple – The Imperial College approach to OA”. Open Access and Digital Scholarship Blog. 2015-07-28.
http://wwwf.imperial.ac.uk/blog/openaccess/2015/07/28/making-open-access-simple-the-imperial-college-approach-to-oa/ [496].
(38) “Introducing our latest Elements module – the Open Access Monitor”. Symplectic. 2015-05-01.
http://symplectic.co.uk/elements-updates/introducing-open-access-monitor/ [500].
(39) 例外にあたるケースは、HEFCEのOAポリシーの中の項目“Exceptions” (37-41)に記載されている。
“Policy for open access in Research Excellence Framework 2021”. HEFCE. 2016-11.
http://www.hefce.ac.uk/media/HEFCE,2014/Content/Pubs/2016/201635/HEFCE2016_35.pdf [470].
(40) RCUKやCOAFのOAポリシー順守の確認にはOpen Access Monitorモジュールは使用せず、教員からのAPC助成申請時にSHERPA FACTやSHERPA RoMEOを利用して投稿先の雑誌が該当のOAポリシーを順守しているかの確認が行われる。
(41) “Imperial College Analytics (ICA)”. Imperial College London.
https://www.imperial.ac.uk/admin-services/ict/self-service/research-support/research-support-systems/ica/ [501].
(42) JISC-ARMA ORCID pilot project.
https://orcidpilot.jiscinvolve.org/wp/ [502].
(43) Reimer, Torsten. Your name is not good enough: introducing the ORCID researcher identifier at Imperial College London. Insights. 2015, 28(3), p. 76-82.
http://doi.org/10.1629/uksg.268 [491].
(44) Reimer, Torsten. “Lessons from the Road to 100% Open Access”. 2015-03-18.
http://www.slideshare.net/TorstenReimer/lessons-from-the-road-to-100-open-access [503].
(45) Reimer, Torsten. “Automate it - open access (compliance) as by-product of better workflows”. 2016-05-11.
http://www.slideshare.net/TorstenReimer/automate-it-open-access-compliance-as-byproduct-of-better-workflows [504].
Reimer, Torsten. Your name is not good enough: introducing the ORCID researcher identifier at Imperial College London. Insights. 2015, 28(3), p. 76-82.
http://doi.org/10.1629/uksg.268 [491].
(46)宮入暢子. 研究者識別子ORCID:活動状況と今後の展望. 情報管理. 2016, 59(1), p. 19-31.
http://doi.org/10.1241/johokanri.59.19 [505].
(47) Lammey, Rachael. “Early Content Registration at Crossref”. 2016-06-21.
https://www.slideshare.net/CrossRef/early-content-registration-at-crossref [506].
Ref:
佐藤翔. オープンアクセスの広がりと現在の争点. 情報管理. 2013, 56(7), p. 414-424.
http://doi.org/10.1241/johokanri.56.414 [507], (参照 2017-05-07).
四倉清志. 英国における新世代の研究情報管理. 情報管理. 2013, 56(4), p. 197-207.
http://doi.org/10.1241/johokanri.56.197 [508], (参照 2017-05-07).
[受理:2017-05-17]
花﨑佳代子. 研究助成機関によるオープンアクセス義務化への大学の対応―英国の事例―. カレントアウェアネス. 2017, (332), CA1903, p. 26-32.
http://current.ndl.go.jp/ca1903 [509]
DOI:
http://doi.org/10.11501/10369302 [510]
Hanazaki Kayoko.
Universities’ Effort to be Compliant with Research Funders' Open Access Mandates: The Case of the UK.
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収集書誌部資料保存課:正保五月(しょうぼ さつき)
2015年9月、関東・東北豪雨により鬼怒川の堤防が決壊し、多くの家屋が浸水、流出の被害に遭ったことは記憶に新しい。近年、このような集中豪雨は増加傾向にある。日本全域で1時間降水量が50mmを超えるような短時間強雨の発生が増加しており、大雨の頻度は引き続き増加する可能性が高いと予測されている(1)。このような現況から、図書館や文書館のような大量の資料を抱える施設にとって、「水害」への備えは急務であると言える。そこで本稿では、近年図書館で発生した資料の水損事例や、水濡れ資料への応急処置及び防災対策について紹介することで、その参考に資したい。
図書館資料が水損被害に遭う原因は様々であり、集中豪雨や津波などの天災によるもののほか、それとは 無関係に被害が発生する場合もある。
2011年3月、東日本大震災による大津波は街を破壊し、多くの人命を奪った。広田湾に面した陸前高田市立図書館(岩手県)は津波により壊滅し、約8万冊の蔵書が流出することとなった。貴重な郷土資料や県指定文化財等を中心に救出活動が行われ、全国の図書館や博物館等が協力して修復にあたった。
また、水損が発生する原因として多く挙げられるのが豪雨による浸水である。2013年7月、山口県と島根県の県境で豪雨が発生し、山口大学総合図書館(山口県)では床上浸水のため蔵書約4万冊が水損被害を受けた(2)。この時、電動集密書架の最下段に置かれていた資料や、改修工事のため通路に段ボール詰めで仮置きされていた資料の多くが被害に遭った。そして、2015年9月に発生した関東・東北豪雨により、常総市立図書館(茨城県)では床上40㎝まで浸水し、14万冊の蔵書のうち約3万冊の資料 が水損被害に遭った。失われた蔵書の被害額は5,000万円相当にものぼる(3)。
天災に付随して二次的に水損が発生する場合もある。2016年4月に発生した熊本地震では、県内の公立・大学の少なくとも4つの 図書館でスプリンクラーなどの配管が破損したことによって、合計9,000冊以上の資料が水損の被害に遭い、そのうち約8割の資料が修復困難として廃棄された(4)。そして同年8月、諫早市立森山図書館(長崎県)では落雷による火災に見舞われ、消防活動により鎮火はしたものの資料が水損し、蔵書約12万冊のうち約1万8,000冊を廃棄した(5)。
この他にも、配管設備の故障や雨漏りといった施設の不良によって水損が発生することもあれば、利用者が誤って資料を濡らしてしまうケースもある。こうした事故は日常的に発生するため大きなニュースにはならないものの、ひとたび被害に遭えばその対処に割かれる時間と労力、そして費用は甚大である。
国立国会図書館(NDL)は、「保存協力プログラム」(6)に基づき、国内外の図書館等の資料保存を促進するための活動を行っている。被災地での資料のレスキュー活動や資料保存に関する研修講師の派遣、被災した資料の修復もその一環である(7)。
NDLでは常総市立図書館及び茨城県立図書館からの依頼により、関東・東北豪雨で水損した資料のうち、代替物の入手不可能な郷土資料など、31冊に対し本格的な修復作業を行った(8)。資料は修復完了後、2016年6月に常総市立図書館に返却した。
資料の多くは全体に泥が付着し、湿ってページが波打ち、カビが発生していた。カビの繁殖を抑えるため、1冊ずつポリ袋に入れ冷凍し、以後は作業を行う分の資料を解凍してから処置を行った。資料は一度解体して1枚ずつバラバラの状態にした上で、水やぬるま湯で洗浄し、刷毛でしわを伸ばして、ろ紙に挟んで乾燥させた。破れや欠損があればでんぷん糊と和紙を使用して補修し、元通り製本し直す、という手順で進めた。このように全体が水に浸かった資料を元通りに回復させるには相応の労力と時間を要する。ただし部分的に湿り気がある程度の被害であれば、特別な技術や道具がなくとも対処することができる。
うっかり本を濡らしてしまった経験のある方はご存知だろうが、濡れた本を放置するとページが波打った状態になる。ひどく濡れた状態の本であれば通常48時間から72時間以内にカビが発生し、さらに放置すると紙同士が癒着して開かなくなる場合もあり、汚水や海水に晒された場合には悪臭を放ち始める。資料の素材に応じて乾燥方法は様々であるため(9)、ここでは一般的な書籍に部分的な水濡れや湿り気がある場合について、比較的簡易に行うことのできる応急処置方法を紹介する。
用意するものは、吸水性のあるタオルや吸水紙(無色のペーパータオル、コピー用紙など)、扇風機、板、重しである。
まず、濡れている箇所を確認し、タオルで押さえるようにして大まかに水分を取る。ページのところどころに吸水紙を挟み込み、資料を立てて置いて、中まで風が通るようページを扇状に開いて扇風機などで風を当てて乾かす(図)。水分を吸った吸水紙は適宜取り換え、ページに手で触れても冷たく感じない程度になるまでこの作業を繰り返す。ある程度乾燥したら吸水紙を抜き取り、横置きにして板に挟んで乾くまで置いておく。この時、板の上に重しを載せておくことで、ページの波打ちや変形を防ぐことができる。そして、1日1回程度を目安に資料を板の間から取り出し、ページ同士が貼り付いていないかどうか確認する(10)。
資料を48時間以内に乾燥できない場合は、カビの発生を抑えるため、資料を冷凍させるという方法が有効である。これは家庭用冷凍庫でも行うことができる(11)。
注意すべき点は、写真集などに使用されている塗工紙(コート紙・アート紙等)は、水に濡れて乾燥する際にページ同士が貼り付きやすくなることである。そのため、こちらも直ちに対処できない時は資料を一時的に冷凍するなどの処置が必要である(12)。
こうした個別の被災資料への対応だけでなく、雨漏りや配管トラブル等による小規模な水濡れ被害が起きた場合の対応手順について、NDLでは「小規模水災害対応マニュアル」をウェブサイトで公開している(13)。
水害に限らず地震、火災などの災害の発生を未然に防ぐことは困難であるが、その被害を最小限に抑えるための対策を講じることはできる。蔵書を守るために必要な防災対策について、予防的取り組みから被災後の復旧活動まで、国際図書館連盟(IFLA)のマニュアルに基づき、主要な4つのステップに分けて整理する(14)。機関や蔵書にとって脅威になるようなリスクについて確認し評価したのち、以下のような対策を講じる。
建物や設備、備品に起因する危険性を取り除くことは、災害に対する重要な予防策である。施設点検を実施するとともに、防火扉や消火設備の前に障害物を置いていないか、資料を床に直置きしていないかといったことも確認する。また、優先して救出すべき資料を選別するため、自館で所蔵する資料のうち特に重要な資料は何かを把握し、救出の優先順位をつけ、その排架場所を確認しておく。
非常事態を想定して、災害発生時の対応の流れを記したマニュアル、施設平面図、救出の優先順位を示した書庫内地図、被災時に支援してくれる機関のリスト(15)、緊急時の連絡先一覧(16)などを作成し、資料救出グッズを揃える。整備すべきものは多岐にわたるが、災害発生時にはこのようなマニュアルなどの存在が作業の前提となる。これらを準備するとともに、必要に応じて内容を見直すなど適宜更新したり、関係機関間(17)や組織内で共有し、定期的に災害対応訓練を行ったりすることも重要である。
実際に被害が発生した場合、マニュアルに従って資料の救出にあたる。被害範囲の調査、資料の搬出、物資の調達など状況に合わせて素早く柔軟に対応する必要がある。資料が汚水や海水を被ったか、カビは発生しているか、対処にどの程度の人員を割けるか、被災規模に対して救出グッズがどの程度用意されているかといった条件によっても対応方法は異なる。
被災場所と被災資料の双方を復旧する計画を作成する。水損資料の場合、乾燥後に書架に戻した資料からカビが発生することもあるため、数年にわたるアフターケアが必要になる。また、被災した経験を記録し組織内で共有・継承することによって、その後の防災や減災に活かすことができる。
以上のとおり、国内で発生した水損被害の事例、水濡れ資料に対する応急処置及び防災対策について述べてきた。被災資料のレスキューに関するノウハウやマニュアルは、各地で災害が発生するたびに更新、改善され各機関から発表されている(18)。実際に被災した場合、処置方法は数多あるが、救出できる資料の数を左右する要因は日々の取り組みによるところが大きい。日頃から災害に対する意識を高め、対策を立て十分に備えることが最も基本的かつ重要な取り組みであろう。
(1)“第2章 異常気象と気候変動の将来の見通し”. 異常気象レポート2014 概要編. 気象庁, 2015, p. 25-33.
http://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/climate_change/2014/pdf/2014_summary.pdf [518], (参照 2017-01-04).
(2)“総合図書館における7月28日の大雨による被害について【第2報】”. 山口大学図書館. 2013-08-02.
http://www.lib.yamaguchi-u.ac.jp/news/2013/0802.html [519], (参照 2017-02-01).
“番外編:水害からの復旧”. 山口大学総合図書館改修日記. 2013-08-12.
http://www.lib.yamaguchi-u.ac.jp/repair-blog/index.php?e=47 [520], (参照 2017-02-01).
(3)“市立図書館 平成27年9月関東・東北豪雨水害の記録”. 常総市. 2016-10-05.
http://www.city.joso.lg.jp/jumin/kosodate_kyoiku_sports/kyoiku/oshirase/1457415033260.html [521], (参照 2017-01-04).
(4)“熊本地震 スプリンクラーの配管破損 4図書館9300冊水浸し”. 毎日新聞. 2016-05-21.
http://mainichi.jp/articles/20160521/ddg/041/040/007000c [522],(参照 2017-01-04).
(5)“火災の図書館復旧に支援を”. 長崎新聞. 2017-01-18.
http://www.nagasaki-np.co.jp/news/kennaitopix/2017/01/18094555050150.shtml [523],(参照 2017-01-20).
(6)“保存協力プログラム”. 国立国会図書館. 2016-10-02.
http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/10206601/www.ndl.go.jp/jp/aboutus/preservation/coop/program.html [524], (参照 2017-01-26).
(7)“保存協力”. 国立国会図書館.
http://ndl.go.jp/jp/aboutus/preservation/coop/index.html [525], (参照 2017-01-04).
(8)“常総市立図書館被災資料の修復”. 国立国会図書館.
http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/preservation/coop/Joso.html [526], (参照 2017-01-04).
(9)青木睦. “大量水損被害アーカイブズの救助システムと保存処置技術”. 平成18年7月豪雨災害における水損被害公文書対応報告書. 天草市立天草アーカイブズ, 2010, p. 90-110.
(10)詳しくは以下のページを参照のこと。
“ 水にぬれた資料を乾燥させる”. 国立国会図書館.
http://ndl.go.jp/jp/aboutus/preservation/manual_drying.html [527],(参照 2017-01-04).
(11)“文化財防災ウィール”. 文化庁. p.6.
http://www.bunka.go.jp/earthquake/taio_hoho/pdf/jyoho_03.pdf [528], (参照 2017-01-20).
(12)“資料保存マニュアル 別紙2 トリアージフロー図”. 東京都立中央図書館.
http://www.library.metro.tokyo.jp/Portals/0/about%20us/pdf/bousai2triage.pdf [529], (参照 2017-01-04).
(13)国立国会図書館収集書誌部資料保存課. “小規模水災害対応マニュアル”. 国立国会図書館.
http://ndl.go.jp/jp/aboutus/preservation/pdf/manual_flood.pdf [530],(参照 2017-01-04).
(14)ジョン・マッキンウェル, マリー=テレーズ・バーラモフ監修, “IFLA 災害への準備と計画:簡略マニュアル”. 国立国会図書館訳. 国立国会図書館.
http://ndl.go.jp/jp/aboutus/preservation/pdf/ifla_briefmanual.pdf [531], (参照 2017-01-26).
(15)1.2でも述べたように、NDLでは、代替資料の入手や自館での修復が困難な被災資料についての支援活動も行っている。都道府県立図書館や近隣の図書館等とも相談の上、下記ウェブページ記載の収集書誌部資料保存課の「連絡先」まで問い合わせいただきたい。
“資料の保存”. 国立国会図書館.
http://ndl.go.jp/jp/aboutus/preservation/index.html [532], (参照 2017-01-26).
NDL以外で、災害時に資料保存に関する支援活動を行っている組織としては以下のようなものがある。詳しくは各組織のウェブサイトを参照のこと。
日本図書館協会図書館災害対策委員会.
http://www.jla.or.jp/committees/tabid/600/Default.aspx [533], (参照 2017-01-20).
文化財防災ネットワーク.
http://ch-drm.nich.go.jp/ [534],(参照 2017-01-20).
(16)施設管理者、防災責任者、公立図書館であれば都道府県立図書館等が想定される。
(17)都道府県立図書館、施設管理や警備を委託している場合はその業者、消防署等が想定される。
(18)例えば、以下のような文献があるほか、日本図書館協会資料保存員会が、各機関がインターネット上で公表したマニュアル類を集約したウェブページを公開している。
青木. 前掲.
松下正和ほか編. 水損史料を救う:風水害からの歴史資料保全. 岩田書院, 2009,158p, (岩田書院ブックレットアーカイブズ系, 12).
日本図書館協会資料保存委員会. “被災資料救済・資料防災情報源”.
http://www.jla.or.jp/committees/hozon/tabid/597/Default.aspx [535],(参照 2017-01-20).
[受理:2017-02-07]
正保五月. 水損資料を救うために. カレントアウェアネス. 2017, (331), CA1891, p. 2-4.
http://current.ndl.go.jp/ca1891 [536]
DOI:
http://doi.org/10.11501/10317592 [537]
Shobo Satsuki.
To Save Water Damaged Materials.
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東京都立国分寺高等学校:杉山和芳(すぎやま かずよし)
2014年6月に学校図書館法が一部改正され「学校司書」の配置が努力義務とされた(1)。次期学習指導要領でも学校図書館が果たすべき役割は大きくなると予想されている(2)。また、文部科学省が「学校図書館ガイドライン」を作成するなど(3)、学校図書館の機能強化を目指す動きが現れている。このように学校図書館をめぐる状況は大きく変化しつつある。
このような流れの中で、東京・学校図書館スタンプラリー実行委員会は、学校図書館を一般に公開して理解を深めてもらうことを目的としたイベントを行っている。今年度までに5回を数えた「東京・学校図書館スタンプラリー」(以下、スタンプラリーとする)について報告する。
スタンプラリーは、学校の夏休み期間を利用し、中学・高校の学校図書館を一般に公開するイベントである。小・中学生とその保護者、高校生、教職員、図書館関係者、地域住民や学校図書館に関心を持っている人を対象に公開している。
この活動の目的は、中学・高校の受験を考えている小・中学生とその保護者に対し進路を選択する上での判断材料を提供することにある。「図書館を見ると学校がわかる!?」というキャッチコピーのもと、学校での教育活動全般を支援している学校図書館を見学・体験してもらうことで、進路先への理解を深めると同時に、学校図書館の魅力を知ってもらうことを意図している。
同時に地域住民や教育関係者、図書館関係者、学校図書館に関心のある一般の方にも呼びかけ、広く参加してもらうことにより、学校図書館活動への理解を深めてもらうことも重要な目的の一つである。
第1回の「東京・学校図書館スタンプラリー」を開催したのは2012年であった。
2010年夏、大阪の府立高校を中心に「高等学校図書館フェスタ in 大阪」(4)というイベントが行われた。また、2011年から2013年にかけて、埼玉県の県立高校で「埼玉県高校図書館フェスティバル」(CA1807 [541]参照)(5)が行われるなど、各地で学校図書館活動をアピールするイベントが行われるようになってきていた。
それらの情報に接した東京都内の学校に勤務する学校司書・司書教諭有志の間で、同様のイベントを行おうという機運が高まった。そこで、学校図書館問題研究会(学図研)東京支部に参加する公立・私立の学校司書・専任司書教諭が中心となり、2012年3月に学校図書館スタンプラリー実行委員会を組織した。大阪府の取組を参考にして勤務する学校図書館を公開することを決め、夏休み期間中の開催に向けて準備を始めた。その際、実施期間中になるべく多くの学校図書館を見て欲しいという思いから、スタンプラリーという形式で実施することになった。
当時では先駆的な、複数校の学校図書館をスタンプラリー形式で公開するという活動に対し、メディアで取り上げられるなどの反響があった(6)。初回の2012年は8月の4日間に都立10校、私立3校で開催され、参加者は189名を数えた。
第1回のイベントが多くの参加者に受け入れられ好評だったこともあり、2013年以降も継続して実施することが決まった。東京都立高等学校学校司書会や学図研東京支部等の協力を得て参加する学校を募集した。開催期間も第1回の4日間から7月後半の2週間へと大幅に拡大した。そのため、第2回の参加校は都立14校、私立3校へと増加した。
参加校が増えた理由として、第1回参加校メンバーが他校を勧誘した、実際に見学し自校でも開催してみようと考えた、公式ウェブサイトを見て参加希望を持った、さらに、第1回の実践報告があるため管理職への説明を行いやすかった等の理由があげられる。特に都立の参加校に大きな変化が見られるのは、定期的な異動により勤務校が変更になる学校司書が多いためである。開催期間と参加校が増えたことにより、第2回の参加者数は485名へと倍増した。
その後も参加校と参加者は年を追うごとに増加し、第4回(2015年)には1418名の参加者を得た。直近の第5回(2016年)は前年より減少したとはいえ、865名の参加があった(図1参照)。
直近の第5回参加者の内訳を調べてみると、スタンプラリー本来の対象者である小・中学生が41%を占め、その保護者を含めると72%に達する(図2参照)。学校説明会に日程を合わせて開催している参加校も多い。そのような学校では学校図書館に案内された親子が、館内を熱心に見学する様子が見受けられた。
小・中学生とその保護者に次いで多いのは15%を占める図書館関係者である。小・中・高等学校の学校司書・司書教諭や、公共図書館の児童・青少年サービス等の担当者が参加し、学校図書館の運営について興味・関心を持って見学している。これらの参加者からは、セキュリティ確保のため特別な理由なく見ることができない学校図書館が公開されており、日常業務の参考になるとの意見が多く寄せられている。
これまで学校図書館を一般に公開するという試みはあまりなかったため、スタンプラリーは学校図書館を自由に見学できる貴重な機会として広く知られるようになってきている。特に小・中学校の学校司書にとって研修の機会は必ずしも多くないため、スタンプラリーの果たす役割は大きい。日本図書館協会学校図書館部会の夏季研究集会や学図研、全国学校図書館協議会等の大会で東京に出かけるのに合わせてスタンプラリーに参加する図書館関係者も多くいる。また、リピーターも増えていて、毎年の参加を楽しみにしてくれる方もいる。
スタンプラリーは参加校で構成される実行委員会を中心に運営を行っている。実行委員会がスタンプラリーを企画・管理運営することで、企画の内容と質を充実させると同時に、継続して運営できる態勢を作っている。
実行委員会では参加校の中から役員を選出し、役員が中心となってスタンプラリー全体に関わる業務を行っている。主な内容としては、参加校全体で使用するスタンプラリー・カードや賞品の「しおり」、広報資料であるポスター、チラシ等の作成、「学校司書が選んだ小・中学生におすすめの本」を紹介する小冊子の企画・編集、各種後援団体との連絡調整を行っている。都内全域に散らばる参加校の担当者が集まれる機会は限られるため、参加各校間の連絡には電子メールやオンラインストレージを活用し、効率的な情報交換と共有を行っている。
一方、参加校では独自に行うイベントの準備やチラシ・しおり・ブックカバー等の作成も行っている。また、地域の公民館や公共図書館等への広報や、実施にあたり校内の理解を得るといった調整も大変重要である。
スタンプラリーでは第1回から継続して、単に学校図書館を公開するだけではなく、学校図書館の特色が現れるような各種イベントも行っている。イベントの内容は主に講習系と工作系の2種類に分類される。講習系では東京都立多摩図書館児童青少年係と連携した「小中学生向けブックトーク」実演、書店と連携した「書店員によるPOP作り教室」、英語科の教諭と連携した「英語多読体験」、「ビブリオバトル」、「ブクブク交換」等の多彩なイベントが行われている。工作系のイベントでは、しおり作り、ブックカバー作り、和とじ本作り、英字新聞でのエコバッグ作り、モビール工作、バスボム(入浴剤)工作、豆本工作といった多様な体験活動を行ってきた(7)。
これらのイベントには毎回多くの方が参加していて好評を得ている。特に小学生や同伴の保護者が連れてくる幼児が図書館内で真剣に工作に取り組んでいる姿が印象的である。イベントは学校図書館という場の持つ多様な楽しみ方と可能性を実感できる取組であり、今後も継続して実施していきたい。
このような東京都でのスタンプラリーの活動を受けて、他県でも同様の試みが行われるようになった。兵庫県では2013年から「兵庫 学校図書館スタンプラリー」(8)が実施され、第4回の2016年は私立5校が参加している。
他にも大学で司書課程や司書教諭課程を学んでいる学生や大学教員等の参加が増えてきている。学校図書館について学んでいる人にとって、スタンプラリーは実際の学校図書館運営を学ぶ良い機会となっている。さらに、地域の図書館振興に関わる人や書店員、教育関係者など、学校図書館に関心を持っている多様な人々が参加をしている。
学校図書館を公開することにより、参加校内でも良い影響が現れている。スタンプラリー公開中は多くの参加校で図書委員の生徒が協力して準備や参加者への対応を行っている。生徒たちは普段の学校生活では接することの少ない、小さな子どもから大人までの多様な参加者と接することで、コミュニケーション能力を伸ばし達成感を得ている。さらに、学校図書館をより身近に感じることで、利用も増加する傾向が見られる。
また、職員会議等で学校図書館の活動をアピールすることができ、教職員が学校図書館の役割を再認識し、選書や展示等の図書館活動に協力するようになったり、図書館を利用した授業のきっかけとなったりするなどの反響があった。学校にとってスタンプラリーは、学校図書館に対する姿勢を変えるきっかけとなっている。
現在、スタンプラリーの参加を専任・正規の学校司書か専任司書教諭がいる学校図書館に限定している。
その理由としては、スタンプラリーは学校施設の一般公開という側面があるため、責任を持って運営するためには専任・正規の学校司書か専任司書教諭が携わる必要があるからである。同時に、学校図書館の利活用を担う学校司書の必要性は今後も高まることが予想されるいま、スタンプラリーの実践を通して学校司書の仕事内容と、学校図書館に専任の職員がいる意味を広く知ってもらいたいという願いがあることも理由の一つである。
スタンプラリー参加校の多数を占めている都立高校の学校図書館の業務委託が進行し、正規の学校司書が徐々に減ってきている(9)。今後、都立高校の学校司書がさらに減ることにより、スタンプラリーに参加できる都立高校も減ってしまうと予想される。参加校数を減らすことなくどのようにスタンプラリーの内容を維持し運営していくのかが最大の課題である。
本稿では学校図書館を広く公開するというスタンプラリーの経緯と意義について紹介した。スタンプラリー実行委員会では来年度以降もスタンプラリーを継続して実施する予定である。スタンプラリーは様々な人が自由に学校図書館を体験できる貴重なイベントである。学校図書館を公開していくことにより、われわれ学校司書の仕事を広く見てもらい、幅広い理解を得ていきたい。
同時に、われわれ運営をしている側としても、図書館に来た参加者と対話をする中で、他校の実践の様子を知ることや、図書館運営に関する意見やヒント、気づきを得ることができる。より良い図書館づくりのためにも、スタンプラリーを通して多くの方に図書館を見てもらい、意見を出してもらいたいと思っている。
参加してくれた小・中学生の中には、スタンプラリーをきっかけとして学校図書館や読書に親しみを持つようになり、進学後に図書委員として積極的に学校図書館運営に関わってくれた例もある。さらに、スタンプラリーに関わった図書委員の生徒が、学校内の読書活動や図書館活動を活性化することで、学校全体の読書への意識も変わってくるのではないかと期待している。今後も学校図書館を公開することで、小・中学生にとって学校図書館が身近な存在となるように努力すると同時に、学校図書館の活動を多くの方に理解してもらえるように、スタンプラリーの活動をより充実させていきたい。
(1)学校図書館法の改正については、『図書館雑誌』2014年11月号に特集されている。
特集,学校司書法制化以降 : いま「学校司書」に求める専門性・その具体化. 図書館雑誌. 2014, 108(11), p. 737-752.
(2)次期学習指導要領答申では学校図書館の役割が以下のように指摘されている。「「主体的・対話的な学び」の充実に向けては、(中略)学校図書館の役割に期待が高まっている。」
“幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)(中教審第197号)”. 文部科学省. p. 53.
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1380731.htm [542].
(3)「学校図書館ガイドライン」は2016年11月29日付「学校図書館の整備充実について(通知)」の中で定められている。
“学校図書館の整備充実について(通知)”. 文部科学省.
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/dokusho/link/1380597.htm [444].
(4)「高等学校図書館フェスタ in 大阪」については、以下のページにチラシが掲載されている。
学校図書館部会報. 日本図書館協会. 2010, (35), p. 14.
https://www.jla.or.jp/portals/0/html/school/bukaihou_No35.pdf [543].
(5)「埼玉県高校図書館フェスティバル」(2011年~2013年)については以下のページを参照。現在も「埼玉県の高校司書が選んだ イチオシ本」を毎年選出している。
埼玉県高校図書館フェスティバル.
http://shelf2011.net/ [544].
(6)第1回スタンプラリーについては、以下のメディアに掲載された。なお、第1回は「東京・高校 学校図書館スタンプラリー」として、中学生向けに開催している。
図書室巡れば高校が見える. 東京新聞, 2012-07-04, 朝刊24面.
図書館見て 学校選んで!. 日本教育新聞. 2012-07-23.
“高校選びは図書室が決め手!学校図書館スタンプラリーが開催中”. カーリル. 2012-08-21.
http://blog.calil.jp/2012/08/tokyohslib.html [545].
(7)東京・学校図書館スタンプラリー.
http://tokyohslib.ehoh.net/ [546].
(8)「兵庫 学校図書館スタンプラリー」については以下のページを参照。東京と大きく異なるのは開催期間と参加校である。兵庫県では夏休みを中心に6月から11月と広く設定されており、当初は県立高校も参加していたが、現在は私学が中心となって実施されている。
兵庫 学校図書館スタンプラリー.
http://hlibrary.kgjh.jp/ [547].
(9)東京都では専任・正規職の学校司書を全課程で配置していた。学校司書での新規採用は2002年度から実施していない。欠員が生じた学校については順次業務委託が導入されており、2016年4月現在、97校(188校中)となっている。業務委託に従事する職員の不安定な雇用のあり方や現職の学校司書のスキルの継承ができない等の様々な問題が発生している。
宅間由美子. 東京都立高等学校学校司書会の研修. 学校図書館部会報. 日本図書館協会. 2016, (51), p. 4.
http://www.jla.or.jp/Portals/0/data/bukai/学校図書館部会/部会報No51_OK.pdf [548].
東京都財務局による学校図書館委託についての評価は以下のページに記載されている。
“都立高等学校図書館業務管理事業評価票”. 東京都財務局.
http://www.zaimu.metro.tokyo.jp/syukei1/zaisei/24jigyouhyouka/01_jigo/24jigo161.pdf [549].
埼玉県及び神奈川県では学校司書の採用が一時停止されたが、現在は採用を再開している。
“2012年度 私たちの課題”. 学校図書館問題研究会. p. 8.
http://gakutoken.net/opinion/?action=cabinet_action_main_download&block_id=305&room_id=1&cabinet_id=2&file_id=23&upload_id=220 [550].
“フェスティバルとは?”. 埼玉県高校図書館フェスティバル.
http://shelf2011.net/htdocs/?page_id=127 [551].
文部科学省の見解として「教育委員会は、学校司書として自ら雇用する職員を置くように努める必要がある。」としている。
“これからの学校図書館の整備充実について(報告)”. 文部科学省. p. 26.
http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2016/10/20/1378460_02_2.pdf [552].
[受理:2017-02-14]
杉山和芳. 学校図書館をひらく―東京・学校図書館スタンプラリーの試み―. 2017, (331), CA1892, p. 5-8.
http://current.ndl.go.jp/ca1892 [553]
DOI:
http://doi.org/10.11501/10317593 [554]
Sugiyama Kazuyoshi.
School Library Open House – Tokyo School Library Stamp Rally.
PDFファイルはこちら [558]
関西館電子図書館課:前田直俊(まえだ なおとし)
1990年代半ばにウェブアーカイブが行われ始めてから20年が経過し、その間、技術開発、法整備、運用構築、普及活動など様々な分野で取組が行われてきた。この数年はとりわけ利活用に向けた議論が活発になっている。本稿は、そうした動きと背景について概観するとともに、国立国会図書館インターネット資料収集保存事業(WARP)における利活用の取組を紹介する。
ウェブアーカイブの動向を語る上で欠かせないのは国際インターネット保存コンソーシアム(International Internet Preservation Consortium:IIPC)の存在である。IIPCはウェブアーカイブに関する世界最大の国際的な組織体で、各国の国立図書館、アーカイブ機関、大学、研究機関など52機関が加盟している(1)。常設の運営委員会やワーキンググループからなる体制のもと、技術開発や共通課題の解決、ウェブサイトの共同収集などが行われているほか、年に1回開催されるIIPC総会では、加盟機関の関係者や研究者が一堂に会して課題の検討や情報交換が活発に行われる。そこで取り上げられる話題は、ウェブアーカイブの動向そのものであると言ってよい。
そこで、2011年から2015年までのIIPC総会における約200件のプレゼンテーション(2)を内容により9種類に分類して(表1)、その割合をグラフに示した(図1)。上位3種は「利活用」、「アーカイブ概要」、「技術」となっており、さらにこれら3種の割合について経年での推移を示したのが図2である。過去5年間において、「技術」が10%から20%と一定の割合を占めていること、また「利活用」の割合が15%から30%へと倍増した一方で、「アーカイブ概要」の割合が30%から0%へと大きく減少したことが見て取れる。
分類 | 内容 | 件数 |
利活用 | ウェブアーカイブの利活用に関すること | 43 |
アーカイブ概要 | 各機関におけるアーカイブの概要、収集戦略、収集状況、実践経験など | 37 |
技術 | クローラ、保存フォーマット、閲覧ソフト、長期保存などウェブアーカイブの技術に関すること | 32 |
ワーキンググループ | IIPCに設置されているHarvesting、Access、Preservationなどのワーキンググループのセッション | 30 |
IIPC運営事務 | IIPCの運営や事務に関すること | 25 |
プロジェクト | IIPCが正式に認定して実施するプロジェクトに関すること | 10 |
コレクション構築 | どのようなウェブサイトを収集するかなどコレクションの構築に関すること | 7 |
法制度 | ウェブアーカイブのための法整備に関すること | 1 |
その他 | その他 | 17 |
合計 | 202 |
IIPCが設立された2003年は、世界各国でウェブアーカイブが本格的に実施され始めた時期であるが、技術面や運用面での整備がまだ十分になされていない状態であった。
技術については2000年代の半ばから後半にかけてIIPCの主導で開発が行われた結果、基礎技術の標準化と普及が進んだものの、進展するウェブ技術に対応するために恒常的な取組が必要となっている(3)。「技術」に関するプレゼンテーションが一定の割合を占めているのはそうした状況を反映していると言えよう。運用面については、各国における収集戦略や収集状況、実践経験などの「アーカイブ概要」について情報共有をしながら、課題の解決がなされてきた。
こうして基礎技術の普及と運用の枠組み作りが進み、各国でアーカイブが形成されていく中で、相対的に重みを増してきたのが収集したコンテンツをいかに活用するかという視点である。プレゼンテーションにおける「利活用」と「アーカイブ概要」の割合変化はそうした動きの表れであり、2015年のIIPC総会においても「最近の議論の焦点はウェブアーカイブの利活用に移ってきている」という認識が示された(E1683 [559]参照)。このように、ウェブアーカイブはこれまでの「いかに集めるか」という段階から、「いかに活用するか」という段階へと移行していると言ってよい。
ウェブアーカイブの典型的な使い方は過去のウェブサイトを閲覧することであり、消えてしまったウェブ情報を保存しているウェブアーカイブの価値が顕著に発揮される利用法である。
各アーカイブでは、同一のページを時間軸で遷移して閲覧できる機能を提供したり、URLやメタデータ、全文テキストによる検索機能を用意したりして(4)アクセスの利便を図っている。その他、リンク先のコンテンツが消えるなどしてリンク切れになった場合に、ウェブアーカイブに保存されているコンテンツにリンクすることでアクセスを保障するという使われ方もされている(5)(6)。さらには、複数のウェブアーカイブを統合して閲覧できるようにするサービス(7)や、ウェブアーカイブを使って学術論文の引用文献のリンク切れを解決する取組(8)、利用者自らが必要に応じて特定コンテンツを保存して永続的にアクセス可能にするサービス(9)(10)など、消えやすいウェブ情報へのアクセス手段としてウェブアーカイブは幅広く活用されている。
これらの利用法はアーカイブが自由にアクセスできる状態で公開されていることが前提となるが、ここで留意する必要があるのが、次節で述べるとおり、ウェブアーカイブで保存しているウェブサイトは必ずしもインターネットで公開できるものばかりではないという点である。
ウェブアーカイブがインターネットで公開されるか否かの違いの多くは収集方法の違いに由来する。収集方法のうちの一つはバルク収集(Bulk harvesting)と呼ばれる方法で、国別コードトップレベルドメイン(例えば.ukや.fr)などのドメイン単位で包括的に集めるため、アーカイブの規模は極めて大きくなる。もう一つは選択収集(Selective harvesting)で、主題や出来事などに基づきウェブサイトを個別に選定して集めるため、比較的小規模なものが多い。
図3はIIPC加盟機関のアーカイブのうち収集方法が判明している55件について、バルク収集と選択収集の割合を示したグラフである(11)。アーカイブの件数としては選択収集が上回っているものの、上述のようにバルク収集は規模が大きいため、保存しているコンテンツの量ではバルク収集の方が圧倒的に多くを占めると推測される。収集方法ごとの規模に関する全世界的な統計データは存在しないが、例えばバルク収集、選択収集の両方を実施している英国図書館(BL)のUK Web Archiveでは、2014年の1年間のバルク収集のデータ容量が56テラバイト(12)であったのに対し、選択収集のデータ容量は2004年から2016年までの13年間で28テラバイト(13)であり、年平均にすると2テラバイトとバルク収集の28分の1に過ぎない。
さらに、55件のアーカイブをバルク収集と選択収集に分けて、それぞれの公開範囲を示したのが図4である。バルク収集の多くは国立図書館が法制度に基づいて実施しており、サイト管理者の許諾を得ることなく包括的に収集できる反面、閲覧については著作権やプライバシー保護などの観点から施設内公開や非公開と規定されている場合が多い。一方、選択収集では収集から公開までサイト管理者との間で権利処理を行うため、インターネット公開の割合が高くなっている。
このように、各国においてバルク収集により大規模な量のコンテンツが保存されているにも関わらず、それらの多くはインターネットで公開されない(できない)ため利用が極めて少ない(14)。長期的にはウェブ情報を文化遺産として後世に伝えるウェブアーカイブの意義は広く首肯されるものであるが、投資に見合う成果が短期的に現れにくい事業に対して理解が得られないケースもあり、中には予算の抑制や削減に直面するアーカイブもある(15) 。
こうした背景のもと、実施機関の間では、ウェブアーカイブの利用価値についてより積極的にアピールして、潜在的な需要を掘り起こす必要性が強く認識されるようになった。そこで議論の焦点となってきたのが研究目的での利用促進である。ウェブアーカイブには膨大なウェブ情報が蓄積されており、ウェブ情報の分析で行われているデータ可視化やリンク解析、マッピングなどの手法を使うことで(16)、これまでにない新しい成果を生み出す可能性が秘められている。施設内公開や非公開のコンテンツについても、こうした二次的な使い方であれば著作権やプライバシー保護の観点からも問題はなく、利用対象に加えることができる。
しかしながら、ウェブアーカイブを研究素材として使ってもらうのはそう簡単なことではない。BLが行った研究者からの聞き取り調査(17)によると、漠然と収集された膨大な量のデータの扱いにくさや、研究に適した分析ツールの欠如などから、ウェブアーカイブのコンテンツはそのままでは研究者にとって使いやすいものではないことが浮き彫りとなった。
そのため、アーカイブしたコンテンツからファイルフォーマット情報やリンク情報を抽出してデータセットとして公開したり(18)、コンテンツから分析用メタデータを抽出するための仕様を策定したりするなど(19)、ウェブアーカイブを研究素材として使えるようにするための環境整備が進められている。さらには研究者と共同で利活用の方法を探るプロジェクト(20)や研究者が使いやすい分析ツールの開発(21)、大規模なデータマイニングに適したプラットフォームの研究(22)なども行われている。
このように研究目的での利活用を進めていくためには、Dougherty(23)が指摘するとおり、研究者と積極的な連携を図りコミュニティを形成すること、分析ツールやデータセットなどの環境を整備すること、そして実践を積み重ねることが重要となってくる。
国立国会図書館(NDL)は2002年からインターネット資料収集保存事業(WARP)として日本国内のウェブサイトを対象としたウェブアーカイブを実施している(24)。2010年4月からは国立国会図書館法に基づき国の機関、地方自治体、独立行政法人、国公立大学などの公的機関のウェブサイトを網羅的に収集しているほか(E1046 [560]参照)、民間のウェブサイトについても、私立大学、政党、公益法人、学協会、第三セクター、業界団体、スポーツ団体、文化施設、国際的・文化的イベント、震災に関するものなど、公共性の高いサイトや社会的に有益なサイトを対象に選択収集を行っている。2016年12月現在の保存容量は860テラバイト、保存ファイル数は48億件であり、世界的にも有数の規模のアーカイブとなっている(25)。
WARPで収集したウェブサイトのうち公的機関のサイトについては、国立国会図書館法の規定によりNDLの館内で公開できるものの、公衆送信権に関する権利制限規定が設けられていないため、インターネットで公開するには権利者から許諾を得る必要がある(26)。そのため収集した全てのウェブサイトの管理者に対して個別に働きかけを行い、理解を得られたウェブサイトについてインターネット公開の許諾契約を取り交わしている。また民間のサイトについても、権利処理の際にインターネットでの公開について理解を求めており、その結果、WARPで保存しているコンテンツのうち85%がインターネット経由でアクセスできるようになっている。残りの15%はNDL館内で公開されており、非公開のものは存在しない。
このようにWARPは規模が大きくかつインターネット公開の割合が高いのが特徴であり、前章までに述べた利活用の観点に照らしてみると、閲覧利用から研究利用まで幅広い可能性を有しているアーカイブと言える。
WARPの閲覧利用については、ページビュー数にして月平均30万件のアクセスがあり、インターネットで公開しているコンテンツが多いことから、その90%以上がインターネット経由の利用となっている。
中でもアクセス数が多いのは東京電力福島原子力発電所事故調査委員会(国会事故調)のウェブサイトである。2011年12月に福島第一原子力発電所事故の原因究明のために設置された同委員会は発足と同時にウェブサイトを公開し、事故調査に関する各種情報を発信していたが、2012年10月の事務局閉鎖とともにウェブサイトもインターネット上から消えてしまった。その後も原発事故に対する社会の関心は高く、事故調査をまとめた報告書がウェブサイトで公開されていたこともあって、WARPで保存している同サイトには依然として多数のアクセスがある(27)。消えたウェブ情報に対する需要の高さがうかがえる事例と言えよう。
また、単なる閲覧利用だけでなく、WARPをアーカイブ資源として積極的に活用する例も増えてきている。国の機関や地方自治体のウェブサイトにおいて古いコンテンツを削除する代わりに、WARPに保存されているコンテンツにリンクを張るという使い方である(28)。こうすることでサイト利用者が古い情報に永続的にアクセスできるだけでなく、サイト管理者にとってもサーバ容量や運用コストの削減につながるなど、双方にとって利点が大きい。公的機関のサイトを網羅的に保存しているWARPの特長を生かした使い方であり、多くの潜在的な需要が予想されるため、リンクの方法を紹介するページを設けたり(29)各機関に対して個別に案内をしたりして、積極的な働きかけを行っている。
さらにWARPのアーカイブデータを使った分析や可視化の試みも始まっている。WARPのウェブサイトでは、国の機関のウェブサイトの残存率調査(E1757 [561]参照)や都道府県ウェブサイト間のリンク関係の可視化、保存したウェブサイトの容量による可視化など、WARPを使って何ができるのかを端的にかつ分かりやすく伝えるコンテンツを公開している(図5)(30)。その他、WARPで保存している自治体サイトのデータを使って可視化を行うワークショップを開催するなど(E1840 [562]参照)、より多くの人に利用価値を知ってもらうことで多様な利活用の方法を探る試みも行っている。今後はデータ分析の専門家などの協力を得ながら、分析手法の確立やデータセットの公開に向けた検討を進めて行く予定である。
以上見てきたように、各アーカイブが置かれた状況によって利活用の形態に違いはあるものの、その目指すところは、より多くの人にウェブアーカイブの価値を知ってもらい、使ってもらう、ということに尽きる。そのためには、環境の整備や方法論の確立に向けて引き続き多くの議論と実践を積み重ねていくとともに、ウェブアーカイブを使って何ができるのかを利用者に対して積極的に示していくことが求められる。
(1) 日本からは国立国会図書館が2008年に加盟し、これまでに全文検索エンジンNutchWAXの多言語対応(E995 [563]、E1185 [564]参照)やオリンピック・パラリンピック関連ウェブサイトの共同収集などで貢献を行っている。IIPCが共同収集したウェブサイトはオリンピック・パラリンピック関連も含め以下で公開されている。
International Internet Preservation Consortium.
https://archive-it.org/home/IIPC [565], (accessed 2016-12-12).
(2) “General assembly”. IIPC.
http://netpreserve.org/general-assembly [566], (accessed 2016-12-12).
(3) 前田直俊ほか. ウェブアーカイブを支える技術. 情報の科学と技術. 2017, 67(2), p. 73-78.
(4) Costa, M. et al. The evolution of web archiving. International Journal on Digital Libraries. 2016.
http://doi.org/10.1007/s00799-016-0171-9 [567], (accessed 2016-12-12).
(5) AlNoamany, Yasmin. et al. Who and what links to the Internet Archive. International Journal on Digital Libraries. 2014, 14(3/4), p. 101-115.
http://doi.org/10.1007/s00799-014-0111-5 [568], (accessed 2016-12-12).
(6) Graham, M. “More than 1 million formerly broken links in English Wikipedia updated to archived versions from the Wayback Machine”. Internet Archive. 2016-10-26.
https://blog.archive.org/2016/10/26/more-than-1-million-formerly-broken-links-in-english-wikipedia-updated-to-archived-versions-from-the-wayback-machine/ [569], (accessed 2016-12-12).
(7) Time Travel.
http://timetravel.mementoweb.org/ [570], (accessed 2016-12-12).
ロスアラモス国立研究所(米国)とオールド・ドミニオン大学(米国)が共同で実施しているMementoプロジェクト(前田. 前掲)の一環として提供されている検索・閲覧サービス。
(8) Hiberlink.
http://hiberlink.org/ [571], (accessed 2016-12-12).
エディンバラ大学(英国)とロスアラモス国立研究所(米国)が共同で実施している。
(9) WebCite.
http://webcitation.org/ [572], (accessed 2016-12-12).
雑誌の編集者や出版者などが参加するWebCite Consortiumが運営している。
(10) Perma.cc.
https://perma.cc/ [573], (accessed 2016-12-12).
ハーバード大学(米国)が開発し、米国の約120の法律関係図書館がパートナーとして参加している(E1505 [574]参照)。
(11) 一つの機関でバルク収集と選択収集の両方を行っている場合は各1件として計上した。
(12) UK Web Archive. “2015 UK Domain Crawl has started”. British Library. 2015-09-02.
http://blogs.bl.uk/webarchive/2015/09/2015-uk-domain-crawl-has-started.html [575], (accessed 2016-12-12).
(13)“UK Web Archive statistics”. British Library.
http://www.webarchive.org.uk/ukwa/statistics [576], (accessed 2016-12-12).
(14) Hockx-Yu, H. “Web Archiving at National Libraries: Findings of Stakeholders’ Consultation by the Internet Archive”. Internet Archive. 2016-03.
https://archive.org/details/InternetArchiveStakeholdersConsultationFindingsPublic [577], (accessed 2016-12-12).
(15) Ibid.
(16) Meyer, E. T. et al. “Web archives: the future(s)”. IIPC. 2011-06.
http://www.netpreserve.org/sites/default/files/resources/2011_06_IIPC_WebArchives-TheFutures.pdf [578], (accessed 2016-12-12).
(17) Hockx-Yu, H. “Up close and personal - Researchers and the UK Web Archive Project”. IIPC. 2011-05.
http://gator1355.hostgator.com/~iipc/events/Hague/Presentations/Out%20of%20the%20Box/Researchers_HockxYu.pdf [579], (accessed 2016-12-12).
(18)“UK Web Archive Open Data”. British Library.
http://data.webarchive.org.uk/opendata/ [580], (accessed 2016-12-12).
(19)“Web Archive Transformation (WAT) Specification, Utilities, and Usage Overview”. Internet Archive.
https://webarchive.jira.com/wiki/display/Iresearch/Web+Archive+Transformation+%28WAT%29+Specification%2C+Utilities%2C+and+Usage+Overview [581], (accessed 2016-12-12).
(20)“Big UK Domain Data for the Arts and Humanities”. British Library.
http://buddah.projects.history.ac.uk/ [582], (accessed 2016-12-12).
(21) “SHINE”. British Library.
https://www.webarchive.org.uk/shine [583], (accessed 2016-12-12).
(22) Lin, Jimmy. “Warcbase: Building a Scalable Web Archiving Platform on Hadoop and HBase”. IIPC. 2015-04.
http://netpreserve.org/sites/default/files/attachments/2015_IIPC-GA_Slides_15b_Lin.pptx [584], (accessed 2016-12-12).
(23) Dougherty, M. et al. “Researcher Engagement with Web Archives - State of the Art”. JISC. 2010-08.
http://repository.jisc.ac.uk/544/ [585], (accessed 2016-12-12).
(24) 国立国会図書館インターネット資料収集保存事業(WARP).
http://warp.da.ndl.go.jp/ [586], (参照 2016-12-12).
(25) 2014年時点で、世界の主要なウェブアーカイブのうちデータの保存容量が100テラバイトを超えるものは19%、保存ファイル数が10億件を超えるものは33%となっている(Coasta. Op. cit.)。また、世界のウェブアーカイブ事業のリストによれば、WARPはデータ保存容量で第3位、保存ファイル数で第10位となっている。
“List of Web archiving initiatives”.
https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_Web_archiving_initiatives [587], (accessed 2016-12-12).
(26) 国立国会図書館総務部総務課ほか. インターネット資料の収集に向けて:国等の提供するインターネット資料を収集するための国立国会図書館法の改正について. 国立国会図書館月報. 2009, (581), p. 4-11.
http://doi.org/10.11501/1001142 [588], (参照 2016-12-12).
(27) 国立国会図書館インターネット資料収集保存事業. “月間アクセスランキング”. 国立国会図書館.
http://warp.da.ndl.go.jp/contents/ranking/index.html [589], (参照 2016-12-12).
(28) 例えば以下のページ。
“出版物等”. 財務省.
http://www.mof.go.jp/jgbs/publication/ [590], (参照 2016-12-12).
“埼玉県税務概況”. 埼玉県.
http://www.pref.saitama.lg.jp/a0209/z-kurashiindex/z-gaikyou.html [591], (参照 2016-12-12).
(29) 国立国会図書館インターネット資料収集保存事業. “WARP活用術:古いページはWARPへリンク”. 国立国会図書館.
http://warp.da.ndl.go.jp/contents/reccommend/utilization/warplink.html [592], (参照 2016-12-12).
(30) 国立国会図書館インターネット資料収集保存事業. “特色あるコレクション”. 国立国会図書館.
http://warp.da.ndl.go.jp/contents/reccommend/collection/index.html [593], (参照 2016-12-12).
[受理:2017-02-06]
前田直俊. ウェブアーカイブの利活用に向けた動き-世界の潮流とWARPの取組-. カレントアウェアネス. 2017, (331), CA1893, p. 9-13.
http://current.ndl.go.jp/ca1893 [594]
DOI:
http://doi.org/10.11501/10317594 [595]
Naotoshi Maeda.
The Movement toward Advancing the Use of Web Archives: Global Trends and the Use Cases of WARP.
PDFファイルはこちら [599]
共立女子大学:鴇田拓哉(ときた たくや)
ドイツ国立図書館(DNB)では、オンライン資料、具体的にはインターネット上で入手可能な電子書籍や学位論文などの刊行物を対象に、機械的な分類記号の付与(自動分類)が行われている(1)。
本稿で取り上げるDNBの自動分類に比較的近いと思われる、出版物を対象に自動分類を行う事例に、米国議会図書館(LC)で行われているAutoDeweyがあげられる(2)。AutoDeweyとは、小説・戯曲・物語を対象とした目録データ作成の過程でジャンル(小説・戯曲・物語)と時代(例えば1745-1799)を選択すると、既に付与されている「米国議会図書館分類表(LCC)」の分類記号を手がかりにして「デューイ十進分類法(DDC)」の分類記号が自動的に作成されるものである(3)。AutoDeweyの対象である小説・戯曲・物語においては、LCで使用しているLCCとDDCの分類記号の対応づけが、完全一致とはいかないものの、ある程度確実に行えたことがこのような自動的な分類記号付与の実現につながっている(4)。本稿で扱うDNBの自動分類は、類例が少ない点、オンライン資料を対象として行われている点、さらに、後で述べるように目録作業の機械化を積極的に推し進めている点で珍しい事例といえよう。
本稿では、はじめにDNBが自動分類を導入した背景を述べる。続いて、自動分類によって付与される分類記号について具体例をあげて紹介する。そして、分類記号が自動的に付与されるしくみについて述べる。さらに、自動分類によって付与された分類記号の品質に関する調査結果を紹介する。
DNBが自動分類を導入した背景に、DNBを取り巻く状況をあげることができる。ドイツではドイツ国立図書館法の施行により、2006年からオンライン資料もDNBへの納本対象となった(CA1613 [600]参照)。2012年から2015年における印刷資料とオンライン資料の年間受入点数の推移を表1に示す(5)。この4年の間に、印刷資料が年々減少しているのに対し、オンライン資料は年々増加し、2015年には印刷資料の点数を超えていることがわかる。
2012年 | 2013年 | 2014年 | 2015年 | |
印刷資料(点) | 61万600 | 57万8,950 | 54万6,980 | 52万5,000 |
オンライン資料(点) | 24万7,660 | 36万8,510 | 46万2,290 | 61万2,000 |
加えて、各年の印刷資料とオンライン資料を合わせた資料全体の数、つまり目録作業の対象となる資料数が増加し、特にその中に占めるオンライン資料の割合が高くなっている。目録作業を担当する職員の負担の軽減や作業効率の向上を図るために、主題目録作業を人手による作業から機械による作業へと移行することが検討された(6)。
2010年に、オンライン資料については、人手による主題目録作業の停止を決め、機械による主題目録作業に置き換えていくこととなった(7)。以降で説明する自動分類を含む機械による主題目録作業は、2009年から2011年に実施された機械による目録作業の基盤を構築することを目的としたプロジェクトPETRUS(Process-supporting software for the digital German National Library)の成果が土台となっている(8)。
自動分類のしくみを述べる前に、自動分類によって付与された分類記号が実際の目録データにどのような形で表れているのかを紹介しておく。DNBでは、電子書籍や学位論文を対象に(1)DDCの3桁の区分を参考にしてDNBが独自に作成した「主題カテゴリ(Subject Categories)」、(2)医学分野の論文については、DDCによる分類記号の桁数を短縮した「DDC短縮記号(DDC Short Numbers)」を自動分類によって付与している。それぞれの概要を表2に示す(9)。
区分 | 主題カテゴリ | DDC短縮記号 |
付与の対象 | オンライン資料 (小説を除くすべての分野) | オンライン資料 (医学) |
付与の開始年 | 2012年 | 2015年 |
カテゴリの数 | 102 | 138 |
主題カテゴリは3桁からなり、「560 古生物学」をはじめ、DDCとほぼ類似した内容となっている。DDC短縮記号は、膨大な数の医学分野の論文に対し、DDCによる分類記号の桁数を短縮した形で表したものである。例えば、本来の分類記号が「618.9298…」となるものを「618.92」と桁数を短縮させている。
主題カテゴリとDDC短縮記号が付与された書誌データの事例を図1に示す(10)。図の下方にある“Sachgruppe(n)”が主題カテゴリ、“DDC-Notation”がDDC短縮記号を表している。その記号の後ろに書かれている“maschinell ermittelte Kurznotation”は、「機械によって付与された」ことを意味している。
DDC短縮記号が機械によって自動的に付与されたことが書誌詳細画面上で確認できるのに対し、主題カテゴリが自動的に付与されたものかどうかは、書誌データをMARCXML形式で表示させることで確認できる。
図1の書誌データをMARCXML形式で表示をした内容(一部)を図2に示す(11)。この図の“datafield tag="883"”は、このフィールドが機械により生成されたメタデータの由来に関する情報を記録するフィールド883であることを示している。“subfield code="a"”は、フィールド883のサブフィールドaであることを示す。このサブフィールドaでは、当該メタデータがどのような処理方法によって付与されたかについて記録される。例えば、冒頭で紹介したAutoDeweyもこのサブフィールドの値となりうる。 図2での値“maschinell gebildet”は「機械による付与」を意味している(12)。
DNBの自動分類(13)では、代表的な機械学習のアルゴリズムであるサポートベクターマシーン(SVM)が採用されている。主題カテゴリの自動分類の対象となるオンライン資料は、ドイツ語か英語で書かれたもので、ファイル形式がPDF(2012年から対象)または電子書籍の規格EPUB(2015年から対象)のもの(小説を除く)である。2012年の開始から2016年3月までの間に44万4,586点の資料に対して自動分類が行われた。
DDC短縮記号の対象となるオンライン資料は、ドイツ語か英語で書かれたもので、ファイル形式がPDFまたはEPUB、かつ主題カテゴリが「610 医学」のものである。2015年10月の開始から2016年3月までの間に8,121点の資料に対して自動分類が行われた。
使用するソフトウェアは、Averbis社(ドイツ)の製品Averbis Extraction Platformをカスタマイズしている。この製品が選ばれたのは、当初からDNBで独自に開発せずに外部のソフトウェアを採用する意図で市場調査を行った結果であること、Averbis社がフライブルク医科大学から派生した会社であり、医学分野の文献に対して目録データを作成する技術に長けていたことがあげられる。
自動分類は、(1)実際に自動分類を行うための準備段階である学習フェーズと、(2)実際に運用していく段階の運用フェーズの二つに分かれる。
学習フェーズでは、学習データを選定し、各種パラメータを設定してから、対象データを解析・学習させる(いわゆる「教師あり学習」を行う)。選定される学習データは、ドイツ語または英語で書かれている、オンライン資料のメタデータ・本文データと、紙媒体の資料の目次を電子化した目次データで、件数は45万1,333件(2016年4月時点)となっている。
事前に設定されるパラメータには、対象言語、解析対象とするテキストの長さ、メタデータや本文データの項目間の重みづけなどがある。これらのパラメータは定期的に見直される。なかには、本文の対象を開始から4万文字までとする、本文よりもメタデータのタイトル項目の内容をより重要とみなすなど、実際に運用された経験を踏まえて、原則として見直されず固定化されているパラメータもある(14)。
日々行われる自動分類の処理は、収集されたオンライン資料のIDリストを手がかりに行われる。リストの各IDに紐付けられるメタデータと本文データが、書誌データベースとコンテンツデータベースから抽出され、圧縮データの解凍、ファイル形式の変換、正規化処理などが行われ、自動分類を行うシステムへ転送される。自動分類が終了すると、その結果が書誌データベースの該当書誌レコードに上書きされる構図となっている(図3参照)。
自動的に付与された分類記号の品質を保つために、全件は無理ではあるものの、何件かについて担当者による内容確認を行っている。既に分類記号が付与されている印刷資料が電子化されたのであれば、自動分類の結果と照合できる。間違いを見つけた場合にはその都度自動分類の結果を修正する。自動分類の最終的な判断を人間が行っている点は、人手による作業と機械による作業の位置づけおよび両作業の役割分担の在り方という観点から考えると非常に興味深い。
ここで、自動分類によって付与された分類記号の品質を検討する材料として、自動的に付与された主題カテゴリとDDC短縮記号に関するDNBによる調査結果をあげておく。2012年から2015年までの間に自動的に付与された主題カテゴリ41万3,363件に対し、人手による確認を行った 7万3,509件(全体の18%)の正答率は75%であった。DDC短縮記号は、2015年10月から12月までの間に自動的に付与された4,072件に対し、人手による確認を行った574件(全体の14%)の正答率は74%であった。
本稿では、DNBで行われている自動分類について述べた。自動分類を導入した背景にDNBを取り巻く状況をあげたが、これらの状況はDNBだけでなく、日本を含む各国の国立図書館においてもあてはまるように思われる。
この事例を考えるにあたっては、先ほどあげた自動分類の正答率75%と74%をどのように捉えるのかがポイントとなろう。DNBにおける自動分類はまだ始まったばかりといえる。今後の動きや成果を見つつ、図書館における自動分類というテーマについて長期的な視点で見ていくことが必要であると思われる。
(1) 後でも述べるように、DNBでは、本稿で扱う分類記号の付与だけでなく、件名の付与も含めた主題に関する記録に伴う作業(主題目録作業)が機械化されている。本稿では、機械的に分類記号を付与する作業を「自動分類」として説明を進める。
(2) “AutoDewey. Library of Congress.
https://www.loc.gov/aba/dewey/practices/autodewey.html [601], (accessed 2017-01-13).
(3) Beall, Julianne; Saccucci, Caroline. “AutoDewey”.
https://www.loc.gov/aba/dewey/practices/autodewey-presentation.pdf [602], (accessed 2017-01-13).
(4) LCCとDDCは記号の構成が異なっているため、AutoDeweyで対象としている小説・戯曲・物語においても完全に一致した記号の対応づけとまではいかない。しかし、刊行された年代という観点で両者の対応づけを考えると、AutoDeweyで実現している程度の機械的な変換は可能となる。例えば、LCCのPR6051からPR6076は1961年から2000年の間に特定の著者によって書かれた英語の文学作品に対する記号である。6051から6076は、6051が「A」、6052が「B」、6076が「Z」から始まる著者名の頭文字で分かれている(さらに「A」の中で細分される)。一方、DDCでは、英語で書かれた文学作品は「822 戯曲」、「823 小説」が割り当てられており、さらに刊行された年代に応じて細分化されている。例えば、1945年から1999年に刊行されたのであれば「822」や「823」のうしろに「914」をつけて「822./914」「823./914」のように表す。このことから、LCCのPR6051からPR6076は、ジャンルと刊行された年代からDDCの記号に機械的に変換が可能となる。以上の説明は、下にあげる文献を参考にした。
Beall, Julianne; Saccucci, Caroline. “AutoDewey”.
https://www.loc.gov/aba/dewey/practices/autodewey-presentation.pdf [602], (accessed 2017-01-13).
(5) Busse, Frank. “Machine-based issuing of DNB Subject Categories and DDC Short Numbers for Medicine in the German National Library”.
http://edug.pansoft.de/tiki-download_file.php?fileId=140 [603], (accessed 2017-01-13).
このほかに、下にあげる文献もDNBにおける自動分類について述べている。
Schoning-Walther, Christa; Modden, Elisabeth; Uhlmann, Sandro. “Germany (DNB) Automatic classification and indexing”. IFLA Classification & Indexing Section Newsletter. 2013, (47), p. 10.
http://www.ifla.org/files/assets/classification-and-indexing/newsletters/newsletter_june_13.pdf#page=10 [604], (accessed 2017-01-13).
(6) 検討自体は以前から行われていたと思われるが、実際に動き出したのは、本文の次の段落で述べているPETRUSが最初であると思われる。
(7) Busse, Frank. “Machine-based issuing of DNB Subject Categories and DDC Short Numbers for Medicine in the German National Library”.
http://edug.pansoft.de/tiki-download_file.php?fileId=140 [603], (accessed 2017-01-13).
(8) “PETRUS - Process-supporting software for the digital German National Library”. Deutsche Nationalbibliothek.
http://www.dnb.de/EN/Wir/Projekte/Archiv/petrus.html [605], (accessed 2017-01-13).
(9) 表内の主題カテゴリの付与開始年である2012年は、主題カテゴリが自動的に付与されるようになった年を示している。主題カテゴリは自動的に付与される前(2004年)から付与されていた。DDC短縮記号の付与開始年の2015年も、自動的に付与されるようになった年を示している。DDC短縮記号が開発されたのは2006年から2007年にかけてである。DDC短縮記号の「カテゴリの数」の「138」は次の文献を参照した。
“DDC-Notationen fur medizinische Dissertationen Untergliederung der DDC-Hauptklasse 610 ”. Deutsche Nationalbibliothek.
http://www.dnb.de/Subsites/ddcdeutsch/SharedDocs/Downloads/DE/anwendung/ddcGliederungMedizin.pdf?__blob=publicationFile [606], (accessed 2017-02-15).
(10) “Ergebnis der Suche nach: idn=110052729X”. Deutsche Nationalbibliothek.
http://d-nb.info/110052729X [607], (accessed 2017-01-13).
(11) “MARC21-XML-Reprasentation dieses Datensatzes”. Deutsche Nationalbibliothek.
http://d-nb.info/110052729X/about/marcxml [608], (accessed 2017-01-13).
(12) 主題カテゴリの値は機械によって付与されたことがMARCXML形式で表示させたときに確認できる(別の言い方をすれば、通常の書誌詳細画面上では確認できない)。これに対し、DDC短縮記号はMARCXML形式で表示させても確認できず、通常の書誌詳細画面上でのみ確認できる。
以上の内容と本文の記述は、国立国会図書館の塩崎亮氏がDNBのFrank Busse氏から聞き取った内容を整理したものである。
(13) 本稿の3章および4章の説明は、下にあげる文献をもとにしている。
Busse, Frank. “Machine-based issuing of DNB Subject Categories and DDC Short Numbers for Medicine in the German National Library”.
http://edug.pansoft.de/tiki-download_file.php?fileId=140 [603], (accessed 2017-01-13).
(14) この段落における、パラメータの見直しや固定化されているパラメータなどについての説明は、国立国会図書館の塩崎亮氏がDNBのFrank Busse氏から聞き取った内容をもとにしている。
[受理:2017-02-16]
鴇田拓哉. ドイツ国立図書館(DNB)におけるオンライン資料を対象にした自動分類. カレントアウェアネス. 2017, (331), CA1894, p. 14-17.
http://current.ndl.go.jp/ca1894 [609]
DOI:
http://doi.org/10.11501/10317595 [610]
Tokita Takuya.
Automatic Classification of Online Resources in the German National Library.
PDFファイルはこちら [614]
利用者サービス部サービス企画課:渡辺由利子(わたなべ ゆりこ)
An Answer for Everything: 10 Years of “Ask a Librarian”(あらゆる質問への答え:Ask a Librarianの10年)。2012年6月28日、このようなタイトルのお知らせが、米国議会図書館(LC)のウェブサイトに掲載された。インターネット上でレファレンスを受付けるAsk a Librarianのサービスが始まって10年が経ち、この間に58万件近くの問い合わせに答えてきたという内容であった(1)。Ask a Librarian のサービスを早くも2002年に始めていたこと、また年間平均で6万件近くも処理していたことは、日本の状況とは比較にならず、ただ感嘆するのみである。
インターネットやデジタルツールを使用したレファレンスサービスは、デジタルレファレンスサービスやヴァーチャルレファレンスサービスなどと呼ばれる(2)。1980年代にはすでに電子メールを使ったレファレンスサービスが米国で取り入れられているが、日本でそれらの言葉が広まり論じられるようになったのは、2000年頃からである。その初期のものとして、2001年の田村俊作「デジタルレファレンスの動向」(CA1437 [615]参照)があり、米国で広まりつつあるデジタルレファレンスサービスについての整理が行われている。
筆者は、2013年10月から11月にかけて欧米の図書館を訪問し、職員へのインタビューを通じて、デジタルレファレンスサービスの提供状況についての調査を行った。本稿では、その調査結果に文献から得られた情報を加え、欧米におけるデジタルレファレンスの状況を示すが、近年の活発な事例を紹介するのではなく、ある一定期間での状況の変化を整理したいと考える。これまでに欧米の先進的な事例は日本でもたびたび紹介されてきたが、その中には後で述べるようにうまくいっていない事例もあり、変化に焦点を当てることで、新規性のみにとらわれない長期的な姿をとらえることができると考えるからである。そこで、2001年に田村が挙げた以下の論点と現状を比較することで整理を進めたい。
①レファレンス情報源の変化
②質問回答サービスの発展
田村の整理は、「事態は急速に変化しているため、その全体像を把握し、今後の方向を予測することは非常に難しい」と前置きした上でのものであったが、デジタルレファレンスの重要な要素が押さえられている。なお、本稿の内容は、注を付けた箇所を除き、2013年のインタビューを基にしたものであり、分析に当たる部分はすべて筆者の個人的見解である。
上述の論稿で田村は、インターネットの発達によりレファレンス情報源が変化すると述べているが、その際に、「ウェブによる電子情報源の一元的提供」と「情報源整備の重要性」の2つを変化の方向として示している。それまで館内のみで提供されていたOPAC、CD-ROM、データベースがウェブを通じて公開され、利用者自身が情報を一元的に検索・利用できる環境が整えられつつあること、また利用者自身が調べ物を行う際に有用な情報を図書館が公開し始めていることが指摘されている。以下、それぞれの状況を確認したい。
かつて館外から受けるレファレンスの多くは所蔵調査であったが、多くの図書館がオンラインカタログを提供するようになり、所蔵調査の需要が減っていることは日本でも2001年にすでに指摘されている(3)。その後も記事索引データベースや電子ジャーナルの普及により、利用者自身が文献を調査するための環境は飛躍的に整ってきている。近年では所蔵資料のデジタル化が進み、デジタル資料を収録したデジタルアーカイブの提供によって、一次資料へのアクセス環境も整備されてきている。
2001年時点で予測できなかったこととして、図書館界の外での情報基盤整備の動きがある。Wikipedia(2001年1月~)、Googleブックス(2003年12月~)が図書館に与えた影響は大きかった。これに対しては、抵抗する動きもあったが、現在では抵抗ではなく利用していく方向に向かいつつあるように思われる(4)。
このような動きが刺激となり始められた試みとして、複数の機関のデジタル資料の一元的提供がある。米国では2008年に大学図書館を中心としたデジタル資料のリポジトリHathiTrustが公開された。提供されている資料の大部分は、Googleブックスのプロジェクトによってデジタル化された資料だが、Googleブックスと異なり、長期保存への取り組みが表明されている(CA1760 [616]参照)。同じく2008年にはEuropeana(CA1863 [167]参照)、2013年には米国デジタル公共図書館(DPLA;CA1857 [617]参照)が公開され、それぞれ一定の地域圏に所在する文化機関のデジタル資料のメタデータを収集し、一元的検索を可能とした。
田村は、インターネットの普及により、利用者自身が調べ物を行うための情報源の整備が重要なサービスになることを指摘している。そのような例として米・ミシガン大学情報学部のプロジェクトであるインターネット公共図書館(IPL)を挙げているが、IPLは2015年に終了し、以降ウェブサイトの更新はされていない(5)。その一方で、現在レファレンス情報源の提供は様々な図書館で行われている。
例えば、LCには、Digital Conversation Teamという電子ジャーナルやデジタルコレクションのレファレンスを統括するセクションがあり、Virtual Programs & Servicesのページで、57のWeb guideを作成し、またオンラインで、図書館員、研修者、一般の人向けの研修教材の提供を行っている(6)。フランス国立図書館(BnF)ではPortails et guides thématiques (テーマ別ポータルとガイド)のページがあり、7テーマでの情報源を集めたポータルPortails thématiques(テーマ別ポータル)(7)と、25テーマの調べ方を案内するChercher & trouver(探す・見つける)を提供している(8)。初心者向けのGuide de recherche en bibliothèque(図書館での調査ガイド)というページでは、テーマ設定、文献の探し方、目録の使用方法、所蔵調査、資料の使い方が順を追って説明されている(9)。国立国会図書館(NDL)でもリサーチ・ナビで調べ方案内を提供しており、レファレンス情報源の提供については国内外問わず多数の事例が見つかる。
しかしながら、OCLCが2010年に米国、英国、カナダの14歳以上を対象として行った調査から米国のみの結果を抜き出した報告では、調べ物をする際に図書館のウェブサイトでの検索からスタートするという情報行動がゼロとの結果が報告されている(E1147 [618]参照)(10)。図書館が発信した情報を活用してもらう方策についての検討は十分に進んでいない(11)。
田村は、インターネットという通信手段の普及により、質問回答サービスが発展すると述べている。その際に「電子メールレファレンス」「ライブバーチャルレファレンス(チャット)」「協力レファレンス」の三つに分けて説明している。協力レファレンスとは、複数の機関で共同で提供されるレファレンスサービスで、質問内容により適した機関に回送される仕組みを構築したり、時差を利用して24時間サービスを提供することを試みたりしている。以下、受理方法、回答体制、レファレンスサービスの副次的効果の三つに分けてこれらのレファレンスの状況の変化を確認したい。
LCが電子メールでのレファレンス受付を開始したのは1993年にまでさかのぼる。2002年に上述のAsk a Librarianのウェブページが開設され、以降はそこからレファレンスを受理している。現在ではウェブフォームでのレファレンスの受付は一般的であるが、その際に多くの図書館で使用されているのは、QuestionPointというサービスである。
QuestionPointは、2002年にLCとOCLCが始めたサービスで、これを使用することにより、レファレンスの受理から回答までをウェブ上で行うことができる。現在、英国図書館(BL)、BnFやニューヨーク公共図書館(NYPL)など大規模な図書館の多くがQuestionPointを使用している。QuestionPointにはチャット機能も備わっており、LC、BL、BnF、NYPLではチャットでのレファレンスサービスも提供されている。
近年の新しい動きとしてはSNSを活用した事例がある。フランスのポンピドー情報公共図書館(Bpi)が中心となって行われているフランスの図書館と、ベルギーのフランス語圏の図書館の連携によるEurêkoiという協同レファレンスサービスでは、2011年から多くの人が集まる場所でのレファレンスサービスの提供を目指し、Facebookを利用してデジタルレファレンスサービスを提供している(12)。Facebook上に書き込まれた質問に、参加館の図書館員がFacebook上で回答するというものである。このサービスを始めて2年目には、質問数が前年から25%増えたという報告がされている(13)。
田村は、米・テネシー大学のテノピア(Carol Tenopir)の2000年の調査を引用しながら、利用者自身がインターネット上の情報源を検索してからレファレンスを申込むようになったことでレファレンス件数は減少した一方で、質問内容が高度化したと述べている(14)。このような説については、異論もありながら、現在でも多く聞かれる(15)。この通説の評価は本稿では行わないが、図書館では迅速かつ合理的にレファレンスサービスを提供するための対応策が取られている。
一つはレファレンスの回答までの日数を短くするための受理体制の工夫である。例えばデンマーク王立図書館(DKB)では午後4時までに受付けた質問には、翌日の午後3時までに回答するとしており、かなり短い回答期限を設定している(16)。当時、DKBはデンマーク国立図書館とコペンハーゲン大学図書館によって協同で運営されていた。コペンハーゲン市内にレファレンスセンターがあり、月曜日から金曜日の午前9時から午後4時まで大学図書館の職員が2人ずつローテーションで入り、電話での問い合わせを受けたり、フォームから入力された質問に回答するという体制をとっていた。
調査時間を限定し、その時間内に回答できないものは有料サービスに回すという例も見られる。BLでは、レファレンスサービスはReference Services部に属する各課で提供されているが、そこでのサービスでは、一つの調査にかける時間は30分までとし、それ以上時間のかかる依頼は、Expert Advice部のBusiness & IP Centre(BIPC)の有料サービスを案内している。このセクションは2006年に開設されビジネス支援を中心にサービスを行っているが(E464 [619]参照)、レファレンスサービスに関連するものとしては、1時間90ポンド(約1万3,000円)の有料リサーチサービスがある(17)。実際のところは、無料のレファレンスの範囲を超える調査を希望する利用者に有料リサーチサービスを案内しても、有料サービスを改めて申込む利用者は少なく、大抵はあきらめるか、自分で来館して調査をするに至るとのことであった。またDKBでも、無料のレファレンスサービスのほか、有料の文献調査を提供している(18)。利用者から希望のあったテーマに合致する資料を探し文献リストを作成するというものだが、例えば一つのデータベースで30分調査し、100件の文献を提供した場合、255デンマーククローネ(約4,000円)かかる。
レファレンスサービスでは、通常回答作成は図書館職員の勤務時間内に行われるため、実質的には24時間体制とはなっていない。その限界を超えようとして始められたのが田村が挙げた「協力レファレンス」であり、これまでに数々の事例が紹介された。近年では上述したBpiが中心となって提供しているEurêkoiの例が目新しい。Bpiは2006年から、BiblioSésameの名でフランス国内の図書館と協力してデジタルレファレンスを提供していたが、2015年にベルギーでフランス語が使用されるワロン、ブリュッセルとの連携を始め、より広いフランス語圏域でレファレンスサービスを提供すると同時に、サービス名称をEurêkoiに変更した(19)。現在では47の図書館が加盟している。このように拡大している例がある一方で、縮小傾向にあるもの、終了している例も見られる。
縮小傾向が見られるのは、デンマークのBiblioteksvagtenという1999年に始められたオンラインのレファレンスサービスである(20)。公共図書館と大学図書館が参加し、ローテーションに当たった職員がメールやチャットで寄せられる質問に回答する。回答期限は24時間としているが、大抵の質問には2時間以内に回答しているとのことであった。各図書館は、それぞれレファレンスを受付けている上にBiblioteksvagtenの業務も行うため、二重に負担を抱えることになり、実際、参加館は減少傾向にあるとのことであった。また、デンマーク国立図書館も以前は参加していたが、現在は撤退している。
終了したものには、QuestionPointの機能がある。QuestionPointには、上述した各館でのレファレンス処理機能のほかに、図書館間でのレファレンス事例共有機能(Global Knowledgebase)、参加館での転送機能(Global Reference Network)がある。しかしながら、2007年には、Global Knowledgebaseについては参加館の半数が使用していないとの報告がされている(21)。また、Global Reference Networkの使用も減少しており、2015年にはその機能は停止された(22)。
利用者と直接つながる手段ができたことで、広報的側面を意識しながら質問回答型レファレンスサービスを提供している例も見られる。フランスのリヨン市立中央図書館(BmL)が2004年から始めた「知の窓口(Guichet du savoir)」である。同名のウェブサイトから質問を受付け、72時間以内に回答を行うというものである。このサービスのユニークな点は、利用者が質問を投稿すると即時にインターネット上で公開され、職員がユーモラスな回答作成を心掛けているということである。ウェブサイトは親しみやすいデザインで、寄せられる質問も「米国で食べたエビがフランスのものほどおいしくなかったのはなぜか。(23)」や、「なぜアリはテーブルから落ちても潰れないのか。(24)」など、日常生活から浮かぶ素朴な疑問などの質問が多い。そもそも「知の窓口」というサービスを始めた理由は、これまで図書館を利用したことのない人々へ、情報を収集し、提供するという図書館の仕事を知ってもらい、また、図書館は堅苦しい場所ではないということをアピールするためとのことであった。
このように、15年前の状況からその後のデジタルレファレンスサービスの変化を整理してみると、進展したICT技術やサービスの活用により、電子情報源の提供、レファレンス情報源の発信、レファレンス受理の方法の多様化や体制の工夫で、改善が見られる。しかしながら、協力レファレンスサービスには縮小傾向も見られ、全体として「発展」という言葉でまとめるのは難しい状況である。
その一方で、インターネットが無い時代に比べて、人が図書館に接する機会は飛躍的に増えたであろうし、かつての図書館への来館者の数は、現在の各図書館のウェブサイトのアクセス数には及ばない。情報を整備し、利用者へ情報提供するというサービスについては、以前とは比べ物にならないほど進化していると考えることもできる。
求められていることは、レファレンスサービスという枠組みにとらわれ、その将来を占うことではなく、人と情報をつなぐために何ができるか―それは、館種によっても異なるであろう―を各図書館が考え、そして行動に移していくことであろう。
(1)“An Answer for Everything: 10 Years of “Ask a Librarian””. Library of Congress. 2012-06-28.
http://blogs.loc.gov/loc/2012/06/an-answer-for-everything-10-years-of-ask-a-librarian/ [620], (accessed 2017-01-04).
(2)小田光宏. 特集:デジタル・レファレンス・サービス: 総論:デジタルレファレンスサービスの現在. 情報の科学と技術. 2006, 56(3), p. 84-85.
http://ci.nii.ac.jp/naid/110004668711 [621], (参照 2017-01-04).
(3)池田祥子. 質問事例に見る都立中央図書館レファレンスサービスの変化. 三田図書館・情報学会発表論文集 2001年度. 2001, p.33-36.
http://www.mslis.jp/am2001/ikeda2001.pdf [622], (参照 2017-01-04).
(4)2005年にフランス国立図書館元館長ジャン-ノエル・ジャンヌネーの『Googleとの闘い』岩波書店、2007年(原題は『グーグルがヨーロッパと戦うとき(Quand Google defie l'Europe)』)が出版されたが、国際図書館連盟(IFLA)2013年年次大会のレファレンスサービス分科会のタイトルが”Google is not enough”であったことは象徴的である。また、中野はインターネット上で得た情報をもとにレファレンスを申込むという情報行動が見られることを推察している。
中野真里. 国立国会図書館におけるレファレンスサービスの現状と今後の展開. 図書館雑誌. 2015, 109(5), p. 288.
ウィキペディアを通じて図書館の持つ中立的な情報を提供する試みもみられる(CA1847 [623]参照)。
(5)いくつかのウェブサイトで停止に言及しているが、停止の理由について明確に述べている情報源は見つからなかった。
“RIP, IPL”. American Libraries. 2014-11-13.
https://americanlibrariesmagazine.org/2014/11/13/rip-ipl/ [624], (accessed 2017-01-04).
“Considering the Internet Public Library”. Simmons SLIS. 2015-01-05.
http://slis.simmons.edu/blogs/unbound/2014/12/05/considering-the-internet-public-library/ [625], (accessed 2017-01-04).
以下の記事は、2003年刊行のものだが、IPLの財政上の問題に触れている。
Janes, Joseph. Why is the Internet Public Library Broke? American Libraries. 2003, 34(3), p. 86.
(6)“Virtual Programs & Services”. Library of Congress.
http://www.loc.gov/rr/program/ [626], (accessed 2017-01-04).
(7)“Portails et guides thematiques”. Bibliotheques nationale de France.
http://bnf.libguides.com/portails [627], (accessed 2017-01-04).
(8)“Chercher & trouver”. Bibliotheques nationale de France.
http://bnf.libguides.com/chercher_trouver/ [628], (accessed 2017-01-04).
(9)“Guide de recherche en bibliotheque”. Bibliotheques nationale de France.
http://grebib.bnf.fr [629], (accessed 2017-01-04).
(10)Gauder, Brad. Perceptions of Libraries, 2010: Context and Community. OCLC. 2010, p. 32.
http://www.oclc.org/content/dam/oclc/reports/2010perceptions/2010perceptions_all_singlepage.pdf [630], (accessed 2017-01-04).
(11)QuestionPointのブログには、米国全体の協力レファレンスサービスを開始することが図書館発信情報の活用の一助となるのではないかとの意見が掲載されている。
“A national virtual reference service for the U.S.?”. OCLC.
http://questionpoint.blogs.com/questionpoint_247_referen/2011/01/a-national-virtual-reference-service-for-the-us.html [631], (accessed 2017-01-04).
(12)Facebookの利用を始めた時点ではBiblioSesameの名称であった。
Mercier, Silvere. Etre la ou les internautes sont : BiblioSesame sur Facebook. Paper presented at: IFLA WLIC 2014 - Lyon - Libraries, Citizens, Societies: Confluence for Knowledge in Session 101 - Reference and Information Services. In: IFLA WLIC 2014, 16-22 August 2014, Lyon, France.
http://library.ifla.org/951/1/101-mercier-fr.pdf [632], (accessed 2017-01-04).
“Eurekoi”. Facebook.
https://www.facebook.com/eurekoi/ [633], (accessed 2017-01-04).
(13)Mercier. op. cit. p. 5
(14)Tenopir, Carol et al. Reference services in the new millenium. Online. 2001, 25(4), p. 3.
https://www.researchgate.net/publication/228986029_Reference_Services_in_the_New_Millenium [634], (accessed 2017-01-04).
例えば、LCの近年の統計を確認すると2012年度19万3,737件、2013年度18万2,005件、2014年度16万5,469件となっており、減少傾向は見て取れる。
“Annual Report, FY 2012”. Library of Congress. p. 86.
https://www.loc.gov/portals/static/about/reports-and-budgets/documents/annual-reports/fy2012.pdf [635], (accessed 2017-01-04).
“Annual Report, FY 2013”. Library of Congress. p. 90.
https://www.loc.gov/portals/static/about/reports-and-budgets/documents/annual-reports/fy2013.pdf [636], (accessed 2017-01-04).
“Annual Report, FY 2014”. Library of Congress. p. 90.
https://www.loc.gov/portals/static/about/reports-and-budgets/documents/annual-reports/fy2014.pdf [637], (accessed 2017-01-04).
(15)高度化については、感覚的なもので数値化することが難しい。数値から検証しようとした試みとしては以下がある。
渡邉斉志. 公立図書館におけるレファレンスサービスの意義の再検討. Library and information science. (66), 2011. p.153-165.
http://lis.mslis.jp/pdf/LIS066153.pdf [638], (参照 2017-01-04).
(16)LC、BLで5開館日、BnFで3開館日を回答期限としている。
(17)“Research Service”. British Library.
https://www.bl.uk/business-and-ip-centre/our-research-service [639], (accessed 2017-01-04).
(18)“Literature Searches for a Fee”. The Royal Library.
http://www.kb.dk/en/priser/soegning.html [640], (accessed 2017-01-04).
(19)“BiblioSesame devient Eurekoi, reseau international francophone de reponses a distance”. Bpi.
http://pro.bpi.fr/contents/bibliosesame-devient-eurekoi-reseau-international-francophone-de-repon1/ [641], (accessed 2017-01-04).
Eurekoi.
http://www.eurekoi.org [642], (accessed 2017-01-04).
(20)“Biblioteksvagten”とは、bibliotek=図書館、vagt=守衛、見張りという二つの語を組み合わせた造語である。
(21)“Survey Results”. OCLC.
http://questionpoint.blogs.com/questionpoint_247_referen/2007/01/survey_results.html [643], (accessed 2017-01-04).
(22)Global Reference Networkの中止については大々的に広報されていない。新しいインターフェースを紹介するブログのなかで、当該機能のボタンがなくなったことが記されている。
“Release Notes: June 14, 2015”. OCLC.
http://questionpoint.blogs.com/questionpoint_247_referen/2015/06/release-notes-june-14-2015.html/ [644], (accessed 2017-01-04).
(23)“le gout des crevettes”. Bibliotheque municipale de Lyon.
http://www.guichetdusavoir.org/viewtopic.php?f=2&t=20282&p=37158&hilit=japon+france+culture#p37158/ [645], (accessed 2017-01-04).
(24)“fourmis chute”. Bibliotheque municipale de Lyon.
http://www.guichetdusavoir.org/viewtopic.php?f=2&t=55064&p=104949&hilit=fourmis+table#p104949/ [646], (accessed 2017-01-04).
[受理:2017-02-14]
渡辺由利子. デジタルレファレンスサービスの変化. カレントアウェアネス. 2017, (331), CA1895, p. 18-21.
http://current.ndl.go.jp/ca1895 [269]
DOI:
http://doi.org/10.11501/10317596 [647]
Watanabe Yuriko.
Transformation of the Digital Reference Services.
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電気通信大学学術情報課:上野友稔(うえの ともき)
お茶の水女子大学図書・情報課:香川朋子(かがわ ともこ)
国立情報学研究所:片岡 真(かたおか しん)
日本の学術機関で運用する図書館システムは、冊子資料の書誌ユーティリティであるNACSIS-CATを中心とした構成により30年以上の歴史を持つ。図書館システムは安定、成熟した状態にある一方、急速に進展した電子リソースの管理やサービスの利活用など、学術情報流通の変化に十分に対応できていない。
本稿では、これまでの図書館システム全体が抱える課題を概観し、近年海外で導入が進む図書館サービスプラットフォーム(LSP;CA1861 [656]参照)(1)の共同運用について、上野と香川による米国の地域コンソーシアムOrbis Cascade Alliance(OCA)(2)への訪問調査の報告とともに紹介する。さらに日本の大学図書館における共同運用による図書館システム導入の新たな可能性について、考察する。
現在の図書館システムには次の課題がある。
多くの大学では、図書館システムを自館で調達し、サーバを置いて自館向けにカスタマイズされたものを運用している。そのため、各大学ではシステム調達や運用管理を行うシステム管理者を置くなどの体制を整備してきた。しかし、近年では資料の電子化の進展に対応して、新規サービスの導入やそれらのサービスと図書館システムの連携など、図書館システム機能の高度化が求められている。また電子的なサービスに対するセキュリティ対応や個人情報保護への配慮も必須であり、高い専門性が必要となっている。一方で、各大学の運営費交付金削減に伴い、図書館でも人員や予算の削減が進んでおり、上記システムの高度化等を進めるためには業務やシステムの効率化を行う必要があるが、そのための人員が確保できないというジレンマに陥っている(3)。
現在の大学図書館システムは、海外では1970年代に購入・目録・雑誌受入などの業務をコンピュータ上で処理することを目的に別々のモジュールとして開発され、1980年代後半にコアモジュールとOPAC(資料検索システム)を統合した初期の図書館システム(Integrated Library Systems:ILS)が登場した(4)。その後、1990年代後半以降資料の電子化が進展するにつれて、ILSとは別に、ナレッジベース(CA1860 [462]参照)を中心とした電子リソースを管理・提供するシステム(電子ジャーナルのAtoZリスト、リンクリゾルバ、電子情報資源管理システム(ERMS)、ディスカバリサービス(CA1772 [95]、E1604 [657]参照))が多くの図書館で導入された。さらに、大学構成員の研究成果を公開する機関リポジトリ、歴史的な所蔵資料をデジタル化し公開するデジタルアーカイブなども構築・運用されてきた。日本でも導入数などに違いはあるが、同様の流れで導入が進んできた。このような状況が、システム運用や人的コストの増大を招いており、また、ディスカバリサービスへのアクセスポイントの統合が不十分な状況では、ユーザに資料検索の煩雑さを感じさせている。
ユーザから電子ジャーナルの利用可否を尋ねられた際、適切な回答ができない、ということがサービスの現場でしばしば発生している。これは、各機関が契約している電子リソースのタイトル・アクセス範囲・利用条件が適切に管理されていないことに起因している(5)。
電子リソース管理のために自館で作成したスプレッドシートを更新し、OPACやウェブサイトのAtoZリストに登録している大学も多い。しかし、日々更新される情報をすべて手作業で更新し続けることは現実的に困難なため、適切なユーザサービスが提供できない状況を招いている。その課題を解決するためには、運用可能なワークフローの確立と、共通的な情報をシステムを用いて効率的に共有する方法について、検討する必要がある(6)。
2000 年度 |
「総合目録データベースにおける電子ジャーナルの取扱い(暫定案)」の策定(7) |
2001 年度 |
「電子ジャーナル(ScienceDirect及びIDEAL)書誌レコードの作成」(8) |
2007~2008 年度 |
国立情報学研究所(NII)と複数機関によるERMSの実証実験(9) |
2012~2013 年度 |
学術コンテンツ運営・連携本部図書館連携作業部会および下部ワーキンググループが大学図書館コンソーシアム連合(JUSTICE)(10)と協力して実施した「電子リソース管理データベース(ERDB)の構築プロジェクト」(11) |
日本では、これまで大学図書館とNIIが連携して電子リソース基盤構築に努め(表参照)、NACSIS-CATを通じた一部電子ジャーナルのILLでの活用や、数機関でのERMS導入に繋がった。しかし、電子リソースの契約からライセンス管理、アクセス提供までの一連のワークフローを確立するまでには至らなかった。現在この活動は、「大学図書館と国立情報学研究所との連携・協力推進会議」(12)を母体とする「これからの学術情報システム構築検討委員会」(13)の電子リソースデータ共有作業部会(以下、作業部会とする。)が引き継いでおり、筆者らも参加している(14)。作業部会では、日本で刊行された電子リソースのデータ共有サービス(Electronic Resources Database-JAPAN:ERDB-JP;E1678 [658]参照(15))の運用を行うほか、日本で契約される電子リソースデータの管理及び活用やデータ共有の方法について、検討を進めている(16)。
第2章で見た課題解決の切り札として、海外ではLSPの導入が拡がっている。システムはクラウド上で提供されるため、自機関へのサーバ設置は不要となる。また様々な形態の資料を扱うためのワークフローがサポートされており、ILS、ERMS、ナレッジベースなど複数の現行システムを統一したプラットフォームに置き換えることが可能となる。2015年に米国の252の図書館で導入されたシステムでは、Ex LibrisのAlmaが171機関、Innovative社のSierraが27機関、OCLCのWorldShare Management Services (WMS)が20機関となっており、北米研究図書館協会(ARL) 加盟館の内、新規システムを導入した8機関はいずれもAlmaを選択している (17)。
LSPは、Almaを中心に、コンソーシアムでの導入も加速している。2012年に米国のコンソーシアムOCAでの導入を皮切りに、BIBSYS(ノルウェー)、JULAC(香港)、GSLG(スウェーデン)など25か国31コンソーシアムでAlmaの導入が続いている。コンソーシアムでの導入が進む理由の一つとして、各種データを共有する仕組みを有していることがある。Almaは3つのゾーンと呼ばれるデータ格納の仕組みを持っており、概略は図1のとおりである。
コミュニティゾーンのデータはAlmaの全利用機関向け、ネットワークゾーンはコンソーシアム機関向け、機関ゾーンは各機関向けに提供されるゾーンである。このゾーンの区分けによって、例えばコンソーシアム契約による電子ジャーナルパッケージのタイトル・利用条件などの共有が、システムを通して行える。なお、Almaは2017年初頭から、品質に定評のあるProQuestのナレッジベースを利用することとしており(18)、より品質の高いデータが利用可能となることが期待される。
一方、WMSのコンソーシアムでの導入は、米国ニューメキシコ州の16機関からなるLIBROS academic library consortium(2014年~)及び米国北東部の7機関から構成されるHELIN Library Consortium(2017年~)に留まっており、また、Sierraは2014年に米国ウィスコンシン州のWISPALS Library Consortiumへの導入のみとなっている。これらの状況から、LSPの共同運用においてもAlmaが事実上のスタンダードとなっていることが伺える。
OCAは、米国オレゴン州、ワシントン州、アイダホ州に拠点を置く39大学から構成されるコンソーシアムである。上野と香川は、2016年10月にその構成機関であるワシントン大学、シアトル大学、シアトルパシフィック大学を訪問し、システムの共同運用に関する調査を行なった。本章では、その概要を報告する。
共同運用の決定にあたり、OCAでは詳細な調査及び検討が実施された(19)。例えば、2010年には全参加機関のILS運用費用の調査分析が実施され、共同運用によりシステム経費及び運用にかかる人件費の両面を削減すべきとの方向性が示された(20)。また、2011年には具体的な移行体制やプロセスなどの推奨指針を記した最終報告書(21)及びシステムベンダ向けのRequest for Information(情報提供依頼書)(22)が策定され、10社からの情報提供を受けている。こうした過程を経て、2012年に当時の全構成機関である37大学の館長による投票でAlmaの導入を決定した。選定にあたり、運用実績のあるILSとどちらを選択すべきかが最大の論点となったが、提案のあった4社の内、システムの共同運用という当初の目的を最も達成し得ると判断されたのがAlmaであった。
導入にあたり、37機関を4つのコーホートと呼ばれるグループに分け(23)、1コーホートにつき約半年程度の移行期間を設ける手法を採用した(24)。Almaが先進的かつ前システムと比較して複雑なシステムであったため、第1コーホートのメンバーであるワシントン大学を始め、どの機関も導入に相応の労力を投じていた。
OCAは1993年の設立以来、資料の迅速な相互利用のために総合目録システムを共同構築するなど、20年以上に渡りコンソーシアム内のリソース共有を推進してきた歴史を持つ(25)。Almaの共同運用により、機関を超えた業務の共有化(クロスアクティビティ)の流れが一層加速した点を、OCAでは最も評価している。様々な規模の大学が加盟している中、大規模大学の人的資源も含めたリソースを全体で共有しやすくなっており、リソースの最適化が実現しつつある。
また、書誌レコード、電子リソースの利用条件データの雛型(ライセンステンプレート)、設定した条件に基づき発注などを行う管理用レコードがネットワークゾーンで共有されており、さらに、サーバが1つのクラウドシステムに統合されたことで、コスト削減やシステム管理負担の軽減が図られている。
システムの契約はコンソーシアム事務局が担っており、各機関はOCA年会費とともにシステム経費として40%の固定費に60%の過去3年間の学生FTE(フルタイム換算値)の平均による傾斜を加味した変動費を加えたものを支払うことで、機関間における不平等感の解消に配慮している(26)。
運用事例として、日本でも普及しつつあるPDA(Patron-Driven Acquisitions;CA1874 [659]参照)及びOCAで重視されているILL業務について紹介する。
PDAの実施にあたり、予算や実施期間、分野、購入基準とするアクセス回数などを設定した管理用レコードをネットワークゾーンから取り込んで利用するか、自館で独自に設定する。登録された管理用レコードに基づき、発注や請求書の送付をシステム間で自動送付する機能であるEDI(Electronic Data Interchange)及びEOD(Embedded Order Data)によって、出版社・書店との発注レコードが送受信され、ディスカバリサービスPrimo上でユーザが利用可能となる。ユーザが利用した回数は出版社・書店に蓄積され、PDAが終了すると購入タイトル以外の書誌レコードは自動で削除される仕組みとなっている(図2)。ワークフロー全体がほぼ自動化されており、Almaの特性であるシステムによる業務の効率化の一端が見て取れる。
システムの共同運用によって、各機関で作成したILLレコードやユーザ名、貸借履歴等の共有を行っており、業務の効率化につながっている。より秘匿性の高い個人情報については、OCA内のパスワード管理下にあるウェブサイトにて共有するなどのセキュリティ面での配慮も行っている。OCA内のILLはAlmaで完結しているものの、Alma導入機関以外とはOCLCのILLモジュールILLiad(27)やWorldShare(28)、RapidILL(29)、DOCLINE(30)など複数のシステムを各機関で併用している。ILLiad等とは自動連携を行っており、人的ミスの防止につながっている。
OPACやAtoZリストなど、資料形態によって個別に提供していたサービスをPrimoに一元化したことで、ユーザの利便性が飛躍的に向上したことをどの機関も高く評価していた。書誌レコードをPrimoにインデックスさせるための正規化ルール(31)の一部は、コンソーシアムレベルで設定している。また、Primo Toolkitにより、ユーザインターフェースやファセット、検索窓などは、各機関のコレクションの特性に応じたカスタマイズが可能となっている(32)(33)。一方で、例えば雑誌受入のような伝統的な業務の一部を詳細にカスタマイズしていた機関では、移行前のシステムの方が使いやすかったという意見もあった。
導入にあたってワークフローの分析やポリシーの策定、障害対応など、多大なタスクが発生し、OCAのフルタイム専属スタッフ10名でも十分に対応できず、大学側に大きな負担が生じたという反省があった。そのことから、コンソーシアム機関の間で綿密なコミュニケーションを取ることや導入体制の整備が必要であり、各機関では導入前に貸出期間などの運用ルールの整理を行うべきとのアドバイスが得られた。また、ネットワークゾーンと機関ゾーンを同時に構築した点が最も困難であったため、先に機関ゾーンを導入し、その後ネットワークゾーンと紐づける方が望ましいとの意見もあった。さらに、コーホートモデルは有効であり、大規模大学では様々な課題が抽出されやすいため初期のコーホートに設定するなど、機関規模に応じて工夫すると効果的であるとの意見もあった。契約先であるEx Librisに対しては、機能改善の事項が多い一方、導入の長期化に伴って開発ペースが減速する傾向にあるため、優先事項を明確に伝える交渉も重要とのことであった。一方で、システム面ではデータを共有しやすい環境が整備されたものの、OCA事務局の人的資源の不足により共有すべき対象を拡大できていないという実情もあった。
OCAでは、当初の5年契約終了後もAlmaの共同運用を継続する意向のようである。先行事例が無い中、様々な困難を経ながらも改革を成し遂げ、共通のシステム基盤を手に入れていた。現在もEx Librisに対してネットワークゾーンの機能改善を要求するなど、更なる業務改善やユーザサービスの向上を目指している。
次に、OCA以外のコンソーシアムでの共同運用の事例を紹介する。
Alma共同運用の中でも最大規模となるのがノルウェーのBIBSYS(34)で、100以上の機関から構成される国レベルのコンソーシアムである。BIBSYSは長い間独自構築によって業務のシステム化を行なってきたが、2010年から2012年までに行われたOCLCとWMSのAPIによる独自構築システムとの接続実験を経て、2013年にEx Librisとの契約を交わした(35)。Primoに続き2015年第4四半期からはオペレーションの統一を目的としてAlmaを展開し、コンソーシアム全体で利用されている(36)。
ドイツの3つの主要なコンソーシアムであるBSZ、VZG及びhbzでは、コスト削減を図るために合同コンソーシアムを形成し、ネットワークゾーンを活用した書誌共有システムを構築している(37)。ドイツでは法律により国外のサーバにデータを置くことが禁止されているため、国内にデータセンターを構築して対応している。
英国ウェールズの高等学術機関から構成されるWHELFでは、11機関6つの既存システムからの移行を進めている(38)。WHELFでは、OCLC Numberなどコンソーシアム内で共有された標準的な識別子がなかったため、ネットワークゾーンの構築が難航した。
アイスランドは、国家予算の逼迫のため、アイスランド国立・大学図書館と約290の大学図書館及び公共図書館等でコンソーシアムを形成し、Ex LibrisのILSであるAlephを活用した図書館システムGegnirと、PrimoによるディスカバリサービスLeitir.is(39)を共同運用している。2011年のPrimo導入時は、各図書館のレコードに限定した検索やAlephからの即時反映などが問題となり既存のOPACとの併用が続いていたが、2016年2月からはPrimoによる Leitir.isに一本化している(40)。
このように、各コンソーシアムがLSPの共同運用に移行する目的や過程は様々であるが、上述のWHELFが挙げているように、共通するメリットがある。
コスト削減のメリット
・システムをコンソーシアムで調達することによるベンダからの値引き
・クラウド利用によるハードウェアのコスト削減(41)
・参加機関のコレクション構築や図書館サービスのためのシステムを共有することによる長期的なコスト削減
コスト削減以外のメリット
・データ登録オペレーションの統一による、参加機関のコレクション全体への横断的なアクセス
・保守性の高いクラウド利用による安定運用
・業務のワークフロー改善によるサービス向上
・資料貸出や電子リソースのライセンス管理に関する互恵的な協力機会の増大
・コンソーシアムで共有された統計情報を活用したサービス改善
こうしたメリットを得るために、各コンソーシアムではマネジメント体制を整備し、各図書館では業務フローや人員配置の変更を行っている。また、Ex Librisが月次で提供するシステムアップデートによって、継続的な機能拡充を実現している。その背景には、図書館予算が逼迫する中で、研究データ管理などの新たなニーズへの対応が迫られており、図書館の存続をかけた事業の転換が求められている事情がある。この状況は日本においても同様であるため、次章では日本におけるLSPの共同運用の可能性について、考察したい。
JUSTICEなどのコンソーシアム向け提案の電子ジャーナルタイトルリストや利用条件などをシステムに登録することで、各参加機関とのデータ共有を効率的に実施できる可能性がある。また、各機関では電子ジャーナルのパッケージ購入中止や、電子書籍購入の拡がりによって、利用条件の管理が欠かせなくなってきており、LSPのワークフロー管理機能が有効に機能することが期待される。さらに、発注や受入を出版社との自動通信で実現するEDIや、書誌情報を自動入手するEODの仕組みが進展すれば、これまで手作業で行ってきた業務を自動化できる。
LSPは、コンソーシアムレベルでのデータ共有機能の活用により、NACSIS-CATの代替ともなり得る可能性がある。現在のNACSIS-CATは日本独自で開発したシステムであるため、運用コストが高い。LSPのようなパッケージシステムの利用により、運用コスト削減に加え、国際的な学術情報流通の促進にもつながることが考えられる。
また、これを書誌データ基盤として(42)、各大学の図書館システムをLSPの共同運用に変更出来れば、諸外国の先行事例で見られるように、2章で挙げた課題解決につながる可能性がある。それにより、各機関がシステム管理・データ作成に充てていた人員を、新たなニーズへの対応に充てることも可能となる。
これからの学術情報システム構築検討委員会が提示する「これからの学術情報システムの在り方について」では、進むべき方向性として(1)統合的発見環境の提供、(2)メタデータの標準化、(3)学術情報資源の確保が示されている(43)。一方LSPは、電子情報資源と印刷体を区別することなく統合的に管理する機能を有しており、さらにKBART(CA1784 [660]参照)やONIX-PL(CA1747 [661]参照)、OAI-PMH(CA1513 [662]参照)などの標準化されたデータ交換への対応や豊富なAPI提供など、外部システムとのデータ連携の自動化も強く意識されたシステムである。作業部会では、「これからの学術情報システムの在り方について」が示す方向性の具体化に向け、JUSTICEと協力して電子リソース部分を中心にAlmaの機能検証を開始している。
特定のサービスがデータを囲い込む時代ではなく、コミュニティが協力してユーザの目線に立ったサービスを構築していく時代が到来している。それを実現する基盤として、LSPがさらなる議論を生み、図書館サービスの発展につながるよう、活動を続けて行きたい。
(1)Breeding, Marshall. Library Services Platforms: A Maturing Genre of Products. Library Technology Reports. 2015, 51(4), 38p.
https://journals.ala.org/ltr/issue/download/509/259 [663].
(2)Orbis Cascade Alliance.
https://www.orbiscascade.org [664].
(3)狩野英司, 吉田大祐. 図書館システムを取り巻く課題と今後の展望 : 「図書館システムに係る現状調査」の結果を踏まえて. 三菱総合研究所所報. 2012, (55), p. 208-226.
http://www.mri.co.jp/NEWS/magazine/journal/55/__icsFiles/afieldfile/2012/03/19/jm12031112.pdf [665].
単館運用の行き詰まりの状況は、2010年の日本図書館協会による調査などで指摘されており、システムの共同化、クラウド化などが提言されているが、これまで際立った進展はみられていない。
(4)Kinner, Laura and Rigda, Christine. The Integrated Library System: From Daring to Dinosaur?. Journal of Library Administration. 2009, 49(4), p. 401-417.
https://faculty.washington.edu/rmjost/Readings/ils_from_daring_to_dinosaur.pdf [666].
(5)“電子リソースデータ共有作業部会での検討状況”. 国立情報学研究所.
http://www.nii.ac.jp/userimg/libraryfair2016/2016_LFF_3.pdf [667].
(6)“JUSTICEの目的及び事業”. JUSTICE.
http://www.nii.ac.jp/content/justice/overview/#anc0 [668].
(7)総合目録データベースにおける電子ジャーナルの取扱い(暫定案). NACSIS-CATニュースレター. 2000, (1), p. 4-5.
http://catdoc.nii.ac.jp/PUB/nl2/No1/0103.htm [669].
(8)電子ジャーナル(ScienceDirect及びIDEAL)書誌レコードの作成. NACSIS-CATニュースレター. 2001, (5), p. 9.
http://catdoc.nii.ac.jp/PUB/nl2/No5/0509.htm [670].
(9)“電子情報資源管理システム(ERMS)実証実験平成20年度報告書”. 国立情報学研究所目録所在情報サービス.
https://www.nii.ac.jp/CAT-ILL/about/infocat/pdf/erms_report_h20.pdf [671].
(10)大学図書館コンソーシアム連合:JUSTICE.
http://www.nii.ac.jp/content/justice/ [672].
(11)“学術コンテンツ運営・連携本部 図書館作業部会報告書”. 次世代学術コンテンツ基盤共同構築事業.
http://www.nii.ac.jp/content/archive/pdf/content_report_h23_with_glossary.pdf [673].
(12)大学図書館と国立情報学研究所との連携・協力推進会議.
http://www.nii.ac.jp/content/cpc/ [674].
(13)これからの学術情報システム構築検討委員会.
http://www.nii.ac.jp/content/korekara/ [675].
(14)“電子リソースデータ共有作業部会”. これからの学術情報システム構築検討委員会.
http://www.nii.ac.jp/content/korekara/about/erdbwg/ [676].
(15)ERDB-JP.
https://erdb-jp.nii.ac.jp [677].
(16)“これからの学術情報システム構築検討委員会電子リソースデータ共有作業部会内規”. これからの学術情報システム構築検討委員会.
http://www.nii.ac.jp/content/korekara/about/erdbwg/rule/rule_erdbwg.pdf [678].
(17)Breeding, Marshall. Library Systems Report 2016. American Libraries Magazine. 2016, 47(5).
https://americanlibrariesmagazine.org/2016/05/02/library-systems-report-2016/ [679].
(18)“Content Operations - February 2017 Enhancements”. ExLibris.
https://knowledge.exlibrisgroup.com/Alma/Release_Notes/0099_2017/110_February_2017/Alma_February_2017_Release_Notes/09Content_Operations_-_February_2017_Enhancements [680].
なお、2015年12月にProQuest社はEx Librisの買収を完了している。
(19)“RFP for a Shared Library Management Service”. Orbis Cascade Alliance.
https://oldsite.orbiscascade.org/index/rfp [681].
(20)“Shared Integrated Library System Team (2010)”. Orbis Cascade Alliance.
https://oldsite.orbiscascade.org/index/silst [682].
(21)“Shared Integrated Library System Team (2011)”. Orbis Cascade Alliance.
https://oldsite.orbiscascade.org/index/shared-integrated-library-system-team-2011 [683].
(22)“RFI for a Consortial Library Management Service”. Orbis Cascade Alliance.
https://oldsite.orbiscascade.org/index/rfi [684].
(23)Ping Fu., Carmen, Julie.. Migration to Alma/Primo: A Case Study of Central Washington University. Chinese Librarianship : an International Electronic Journal. 2015, (40).
http://www.iclc.us/cliej/cl40.htm [685].
(24)OCAにおけるAlma導入スケジュールは、以下の通りである。
第1コーホート (2013/6運用開始) |
第2コーホート (2013/12運用開始) |
第3コーホート (2014/6運用開始) |
第4コーホート (2014/12運用開始) |
・Linfield College ・Marylhurst University ・Pacific University ・University of Washington ・Western Washington University ・Willamette University |
・Concordia University ・Eastern Washington University ・Evergreen State College ・Lewis & Clark College ・Portland Community College ・Reed College ・Saint Martin's University ・Seattle Pacific University ・University of Idaho ・Warner Pacific College ・Washington State University |
・Clark College ・Mt Hood Community College ・Oregon Health & Science University ・Oregon Institute of Technology ・Portland State University ・Southern Oregon University ・University of Oregon ・University of Portland ・University of Puget Sound ・Western Oregon University |
・Central Oregon Community College ・Central Washington University ・Chemeketa Community College ・Eastern Oregon University ・George Fox University ・Lane Community College ・Oregon State University ・Seattle University ・Walla Walla University ・Whitman College |
(25)“History of the Orbis Cascade Alliance”. Orbis Cascade Alliance.
https://www.orbiscascade.org/history-of-alliance [687].
(26)Helmer, John F., Bosch, Stephen., Sugnet, Chris., Tucker, Cory. Innovation through Collaboration - The Orbis Cascade Alliance Shared Library Management Services Experience: An Interview with John F. Helmer. Collaborative Librarianship. 2012, 4(4).
http://digitalcommons.du.edu/collaborativelibrarianship/vol4/iss4/6 [688].
(27)“ILLiad”. OCLC.
https://www.oclc.org/illiad.en.html [689].
(28)“WorldShare”. OCLC.
http://www.oclc.org/worldshare.en.html [690].
(29)“RapidILL”. Rapid ILL.
http://rapidill.org/ [691].
(30)“DOCLINE”. U.S. National Library of Medicine.
https://www.nlm.nih.gov/docline/ [692].
(31)“Norm Rules Working Group”. Orbis Cascade Alliance.
https://www.orbiscascade.org/discovery-delivery-wg-norm-rules [693].
(32)“Systems Documentation”. Orbis Cascade Alliance.
https://www.orbiscascade.org/systems-documentation [694].
(33)Moore, Dan., Mealey, Nathan. Consortial-Based Customizations for New Primo UI. Code4Lib Journal. 2016, (34).
http://journal.code4lib.org/articles/11948 [695].
(34)BIBSYS.
http://www.bibsys.no/en/ [696].
(35)Breeding, Marshall. BIBSYS Selects Alma. Smart Libraries Newsletter. 2014, 34(1).
https://librarytechnology.org/repository/item.pl?id=18818 [697].
(36)“Library Services Platform for BIBSYS”. BIBSYS.
http://www.bibsys.no/library-services-platform-for-bibsys/ [698].
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