2007年のノーベル文学賞はイギリスを代表する作家であるレッシング(Doris Lessing)氏に授与された。88歳での受賞は,ノーベル文学賞では最高齢,ノーベル賞全体でも史上2番目の高齢となるという。2007年12月7日に行われた授賞式には,レッシング氏は体調を理由に出席しなかったが,記念講演として氏による,“On not winning the Nobel Prize”と題された原稿が代読された。そこでは自身が幼少期を過ごしたジンバブエでの経験等を基に,教育における読書の重要性,人間にとっての読書の重要性,さらには図書館がいかに貴重なものであるかということが述べられている。
幼少期をジンバブエで過ごし,その後もアフリカと関わって生きてきたレッシング氏は,地図帳も,地球儀も,教科書もなく,図書館には生徒が読めるような本が置いておらず,子どもたち自身が労働力となっているため,必要なときに必要な教育が受けられないというアフリカの劣悪な教育事情について述べている。そこでは教師自身,読書の重要性については知ってはいるものの,読む本がないために読書の経験がなく,本が渇望されているという。一方でレッシング氏は,英国の一流男子校の生徒たちも引き合いに出している。そこでは教育環境や教育機会に十分恵まれているにも関わらず,生徒たちがほとんど本を読まず,本でいっぱいの図書館も半分程度しか利用されていない現状があるという。
レッシング氏は,このどちらの学校からも,ノーベル賞を受賞する生徒は出ないだろうと述べる。自身も含め,かつてのノーベル文学賞受賞者の例を引き合いに出しながら,十分な読書の機会がなければ,「書くこと」や「作家」は生まれてこないのだとし,書くためには,また文学を作るためには,図書館と本と伝承の密接な関連がなくてはならないとしている。レッシング氏によると,誰の心にも「ストーリーテラー(storyteller)」は存在するという。たとえ戦争や天災で世界が破壊されたとしても,私たちが引き裂かれ,傷ついたとしても,「ストーリーテラー」の想像力が私たちを再創造してくれるのだと主張している。誰の心にも存在するという「ストーリーテラー」を呼び覚ます本や伝承と,それらに触れることを可能にする図書館の重要性にレッシング氏は改めて気付かせてくれている。
レッシング氏のこの講演を紹介している,図書館情報に関するブログの一つ“LISNews”では,「これは本当に類まれな講演であり,全ての図書館員が耳を傾けるに値する」と評している。
Ref:
http://nobelprize.org/nobel_prizes/literature/laureates/2007/lessing-lecture_en.html [1]
http://www.lisnews.org/node/28510 [2]
http://www.afpbb.com/article/life-culture/culture-arts/2296443/2232527 [3]
http://www.afpbb.com/article/life-culture/culture-arts/2318541/2406041 [4]
http://www.afpbb.com/article/life-culture/culture-arts/2323938/2437115 [5]
イグノーベル賞(Ig Nobel Prize)は,「まず人々を笑わせ,次いで考えさせる業績」に対して,1991年から毎年授与されている賞であるが,2007年のイグノーベル賞文学賞は,フリーランスの“indexer”,“trainer”,“database consultant”などとして活動している,オーストラリアのブラウン(Glenda Browne)氏に贈られた。表彰式は2007年10月にハーバード大学のサンダース・シアターで行われ,ブラウン氏は大小さまざまな“The”の文字を模様としてあしらったTシャツ姿で登場した。
今回受賞の対象となったのは,ブラウン氏が雑誌“The Indexer”上で2001年に発表した論文,「定冠詞“The”を索引項目として認めることについて(The definite article : acknowledging ‘The’ in index entries)”である。英米目録規則(AACR)や,オーストラリアとニュージーランドで使用されている目録規則AS/NZS(Australian/New Zealand Standard)などで定められているように,英語の資料の索引を作成する際,“The”は省略するというのが基本ルールとなっている。一方で,“The”と一体となって意味をなすような一部の言葉(オランダの行政上の首都である“ハーグ;The Hague”のような地名など)の扱いは例外とするなど,索引が依って立っているルールを知らない人にとっては混乱を招くもととなっている。ブラウン氏はこのような“The”の取り扱い方を問題視し,利用者の使い易さ,簡素さ,一貫性という原則に依って立つなら,もっと“The”に注意を払うべきであり,“The”を入れた索引と,入れない従来の索引の2種類を作成し,情報への入口を2つ準備してはどうか,と提案している。
2007年のイグノーベル賞を受賞した研究にはその他,医学賞として「剣を飲み込むこととその副作用に関する研究」,化学賞として「牛の糞からバニラの香りと味のする物質(バニリン)の抽出に成功した研究」などがあり,いずれも研究者たちが真面目に取り組んだものではあるが,その分野に詳しくない人にとっては一見奇異に映る研究が並んでいる。資料の排列の際に“The”をどのように扱うかという議論も,図書館の専門家以外の人にとってはユニークなものとして映ったようである。
Ref:
http://www.theindexer.org/files/22-3/22-3_119.pdf [8]
http://www.theindexer.org/index.php?option=com_content&task=view&id=101&Itemid=63 [9]
http://www.webindexing.biz/joomla/index.php?option=com_content&task=view&id=458&Itemid=1 [10]
http://www.ignobel.com/ig/ig-pastwinners.html#ig2007 [11]
http://www.ignobel.com/ig/2007/2007-details.html [12]
http://www.ignobel.com/ig/2007/webcast/ [13]
インターネット上の違法・有害情報への対応については,かねてから総務省を中心にさまざまな検討が行われ,対策が講じられているところであるが(E452 [15],E538 [16],E584 [17]参照),出会い系サイトなどの有害サイトに関連する犯罪の被害児童の増加を背景に,更に踏み込んだ対策が必要であるとの認識から,2007年度も集中的な検討が行われている。
2007年4月5日には,内閣のIT戦略本部が決定した「IT新改革戦略政策パッケージ」にて,2010年までにインターネット上の違法・有害情報に起因する被害児童等を大幅に縮小することを目標に集中対策を実施する,という方針が決定された。その決定を受け,関係省庁の連絡会議として内閣官房が設置しているIT安心会議では,2007年10月15日に「インターネット上の違法・有害情報に対する集中対策」を策定した。同対策では,内閣官房が青少年団体,電気通信事業者団体,相談窓口等の外部関係者から行ったヒアリング結果をもとに,各論点につき,関係者の問題意識をまとめ,考え得る対応策を示している。前半は,法令改正に向けて検討すべき対応策,後半では,プロバイダによる自主規制の支援,情報モラル教育の充実,相談窓口等の充実,フィルタリング導入の促進の4方策を強化する対応策が示されている。
とりわけ,出会い系サイトに関しては,多くの被害者が生み出されている現状が指摘され,現行の出会い系サイト事業者への規制についての法令の施行状況について検討し,規制のあり方の方向性を策定することとされた。サイト運営者自身による自主的な取り組みを促進するための仕組みについても,さらに検討する方針が示された。迷惑メールについては,現行のオプトアウト方式の見直し等,法制度のあり方について検討を行い,「特定電子メール法」「特定商取引法」の法改正案の提出を予定している。
プロバイダによる自主規制の支援では,中小のISPにとって負担が困難な,ネット上の有害情報を削除などの対処を行うことで生じる可能性のある損害賠償や訴訟に対する支援,また業界団体との連携のあり方について検討する。情報モラル教育の充実では,学習指導要領の改訂やe-ネットキャラバンの実施など,児童への教育に加えて,保護者及び教職員を対象にした啓発活動の強化が挙げられている。相談窓口等の充実では,警察庁が委託しているインターネットホットラインセンターの体制強化と業務のより効果的な推進の検討が示されている。フィルタリング導入については,携帯電話等におけるさらなるフィルタリングの普及促進への検討の必要性が示された。
この「集中対策」を受けて,総務省は2007年11月26日に「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」の第1回会合を開催した。第1回会合では,総務省の取り組みと論点,インターネット上の違法・有害情報の現状,フィルタリングの普及促進の現状と課題が議題となった。同検討会では,計10回の会合を予定しており,2008年3月頃に中間報告をとりまとめ,2008年秋には,最終報告書のとりまとめが行われることになっている。
Ref:
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kettei/070405honbun.pdf [18]
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kettei/070405gaiyou.pdf [19]
http://www.it-anshin.go.jp/images/it071015.pdf [20]
http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/chousa/internet_illegal/index.html [21]
E452 [15]
E538 [16]
E584 [17]
米国図書館協会(ALA)の米国学校図書館員協会(AASL)は2007年から,学校図書館メディアプログラムについての長期的な調査“School Libraries Count!”を開始した。これは,学校図書館メディアプログラムの状況を全国的に理解すべく毎年実施し,データを集積していくものである。調査対象とする学校は,“K-12”と呼ばれる幼稚園から高等学校までのすべての公立・私立学校で,調査に参加するか否かは学校の判断に委ねている。このほど,この第1回目,2007年の調査結果が報告書として公表された。
今回の調査には4,500を超える学校が回答した。回答校のうちおよそ4,000校が(チャータースクールや職業訓練校,完全にオンラインの学校などを除いた)通常の公立学校,およそ200校が(宗教系ではない)私立学校であった。調査票は,開館時間,スタッフ,スタッフの地位・資格,スタッフの活動,蔵書,コンピュータ,利用,支出の8つの項目,合計20の質問から成り立っており,報告書ではこれらのうち主な質問について,50パーセンタイル値(中央値)および75パーセンタイル値,95パーセンタイル値がグラフで示されるとともに,学校の種別による相違などが分析されている。パーセンタイルで示すことにより,「普通の」学校図書館メディアセンター(LMC)の値(=50パーセンタイル値)と,全体の上位5パーセント,25パーセントに位置する先進的なLMCの値(=95パーセンタイル値,75パーセンタイル値)とが一目で比較できるようになっている。
たとえば,LMCの開館時間,学校図書館メディアスペシャリスト(LMS)の勤務時間,LMCのスタッフ全員を合計した勤務時間を見ると,各々の50パーセンタイル値は標準的な週当たり37時間,37時間,40時間となっており,週37時間フルタイムでLMSが1名勤務しているというのが,「普通の」LMCの姿だといえる。これに対し95パーセンタイル値では,各々45時間,50時間,115時間となっており,先進的なLMCでは標準的なLMCよりも1時間以上開館時間が長く,またLMS以外におよそ1.5名,スタッフが常駐しているという状況がうかがい知れる。また先進的なLMCと標準的なLMCとで開きが大きかった項目としては, LMSが利用指導に費やしている業務時間(95パーセンタイル値で週30時間,50パーセンタイル値では週12時間),同,予算管理に費やしている業務時間(95パーセンタイル値で週15時間,50パーセンタイル値では週2時間),雑誌の購読タイトル数(95パーセンタイル値で65誌,50パーセンタイル値では17誌),LMCのコンピュータの台数(95パーセンタイル値で64台,50パーセンタイル値で16台),週当たりの利用者数(95パーセンタイル値で1,000名,50パーセンタイル値で150名),年間予算(95パーセンタイル値で33,000ドル,50パーセンタイル値で7,000ドル)などが報告されている。
なお2008年の第2回調査は,1月にフィラデルフィアで開催されるALA冬季大会から開始されることが発表されており, AASLでは今後毎年,経年変化も含めて調査結果を報告し,LMC・LMSのアドヴォカシー(CA1646 [25]参照)に努めていくとしている。
Ref:
http://www.ala.org/ala/aasl/slcsurvey.cfm [26]
http://www.ala.org/ala/pressreleases2007/december2007/longitude07.htm [27]
CA1646 [25]
CDNLAO 2007本会議の翌日,2007年5月8日に資料保存に関するセミナーが開催され,4名が報告を行った。これらの報告のうち,シンガポール国家図書館委員会(NLB)プロフェッショナルサービスマネージャーのサリム(Mohamed Bin Salim)氏が行った報告“Preservation Programmes at the National Library Board, Singapore”の資料が,CDNLAO 2007会議のウェブサイト上に掲載されている。
資料保存と修復に関するNLBの取り組みは,2003年までは資料の燻蒸,マイクロ化,修復処置(conservation repair)が必要に応じて行われる程度であったが,2004年以降,資料保存に関する3つの新しいプロジェクトがスタートし,本格的な取り組みが始まった。それは(1)資料修復と資料へのアクセスに関するPCAプロジェクト,(2)約20万点の貴重資料・文化資料の燻蒸,修復,マイクロ化,デジタル化する“Singapore Pages Project”,(3)デジタル資料の収集・保存活動,である。
PCAプロジェクトは,NLBをシンガポールの文化遺産コレクションに関する,洗練された,ワンストップレファレンスサービスを提供する組織として確立するほか,貴重資料や文化遺産により簡便にアクセスできるようにすること,また貴重資料や文化遺産の保存期間の延長,歴史的・社会的な記録や文学的遺産の保存を長期的な目標とするもので,2004年から2007年3月にかけて,約10万点の貴重資料・文化遺産の燻蒸,修復,マイクロ化,デジタル化が進められた。なおこのプロジェクトは,シンガポール国立公文書館に委託して実施された。
“Singapore Pages Project”は政府の資金援助により,2004年から進められているプロジェクトで,さらに多くの文化遺産の保存,修復,利用促進を目指している。具体的な作業は資料の燻蒸,修復,マイクロ化,デジタル化であるが,ほかにも資料保存・修復に関する施設の設立や,デジタルフォーマットによる資料の利用も含まれており,約20万点の貴重資料・文化遺産を対象としている。このプロジェクトは2008年初旬の終了を目指している。また本プロジェクトにはシンガポール国立公文書館のほか,複数の外部機関に委託して実施されている。
デジタル資料の収集・保存活動では,シンガポールのドメイン(.sg)を持つウェブサイト(約7万件)の収集や,オンライン納本インターフェイスを通じた電子出版物,オンライン出版物の納本を計画している。これら電子情報の収集・保存では,国際標準規格であるOAIS参照モデル(CA1489 [32]参照),およびTDR(Trusted Digital Repository)要件を満たしているという。
このほかにも,視聴覚資料の保存への取り組みにも着手しており,現在調査が進められているという。
報告ではさらに,PCAプロジェクト,Singapore Pagesプロジェクトを実施して浮き上がった課題や問題点,その解決手法,得られた実務的な成果についても,詳細な解説を加えている。たとえば資金の獲得,NLB自身の知識・経験不足と外部機関への委託の是非といったプロジェクトの初期段階にかかわるものから,対象となる資料の選定方法,修復範囲や手段の判定,プロジェクトに携わる外部機関の選定,資料の搬送と対象資料の追跡(tracking),外部委託機関とのコミュニケーションのとり方など,プロジェクトの実施期間中にかかわるものまで,きわめて多岐に及ぶ。またその結果得られた結論として,(1)「保存」が現在のコレクションを「救出」するだけにとどまらない,継続的事業であること,(2)予防プログラムの導入が必要不可欠であること,(3)保存戦略には図書館員や利用者を含むものとするべきこと,(4)図書館員が新たな技術や知識を獲得できるようにすること,という4点を掲げている。
Ref:
http://www.nla.gov.au/lap/cdnlao2007.html [33]
http://www.nla.gov.au/lap/nlb07paper_000.rtf [34]
http://www.nla.gov.au/lap/documents/nlbpres07.ppt [35]
CA1489 [32]
国立国会図書館(NDL)はこのほど,2006年度に実施した「地域資料に関する調査研究」の成果をまとめた『図書館調査研究リポート』No.9をウェブサイト「カレントアウェアネス・ポータル」で公表した。
今日,公立図書館を中心に,図書館が所蔵する地域資料に基づいたサービスを展開しようという動きが広がっている。それは,これらの図書館が地域における情報拠点として,その地域を単位とした資料や情報の収集,提供,さらにはインターネットを通じた発信を行っていこうとする動きに連なるものであり,その際に地域資料は中核的な資料として位置付けられるということでもある。また地域資料は,NDLにおける資料の収集や『日本全国書誌』の作成などの業務にも少なからず関係している。本調査研究はこのような問題意識のもと,地域資料の実態について把握しようと行ったものである。
本調査研究では,全国の公立図書館637館および図書館類縁機関(文書館,行政情報センター,博物館等)192館を対象としたアンケート調査と,秋田,沖縄,滋賀の各県の県立図書館等合計16館を対象としたヒアリング調査とを,根本彰・東京大学大学院教授を中心とする研究会を組織して実施した。
なおウェブサイトでは,調査結果を分析・考察した本編に加え,各アンケートのクロス集計表およびマスターデータ(個々の回答機関が特定できないように加工したもの)も,あわせて公開している。
Ref:
http://www.dap.ndl.go.jp/ca/modules/report/category.php?categoryid=9 [38]
http://www.dap.ndl.go.jp/ca/modules/report/item.php?itemid=82 [39]
米国のカーネギーメロン大学が,浙江大学・インド科学研究所など中国・インドの高等教育機関,エジプトのアレクサンドリア図書館と共同で取り組んでいる書籍デジタル化プロジェクト“Million Book Project”(CA1593 [43]参照)がこのほど,150万冊の書籍のデジタル化を終え,ウェブでの無料提供を開始したことを発表した。Million Book Project は,「全ての本をデジタル化し,永久に保存し,全ての人に無料提供すること」を目指す “Universal Library”という壮大なプロジェクトの第一歩目として位置づけられている。なお「Million=100万」と冠しているのは,「100万」冊という冊数が現時点で存在する全ての書籍数の1%に当たるからだという。
今回デジタル化されたコレクションには多くの貴重書,著作権者不明の作品(orphan works)が含まれており,英語と中国語を中心にアラビア語,ヒンディー語,サンスクリット語など20を超える言語の書籍がある。またコレクションのうち少なくとも半数については著作権が切れており,残りの作品は著作権者の許諾の下でデジタル化されているため,現時点ではすべての資料が利用できるわけではないものの,いずれ150万冊すべてが無料で利用可能になる予定であるという。
Million Book Projectはいくつかの組織・企業から資金援助を受けており,その代表的なものとして,米国科学財団(NSF)から装置・設備等のため3,500万ドル(約38億5千万円)の援助を受けている。また米国,中国,インドがそれぞれ1,000万ドル(約1億1千万円)の資金提供を行っているほか,中国とインドはスキャニングに必要な人的資源供給の面でも貢献している。今回のデジタル化作業では,書籍110万冊が中国で,36万冊がインドでスキャニングされた。現在でも,世界中の50のスキャニングセンターで,1日7,000冊の書籍を1,000人が作業してデジタル化しているという。
Million Book Projectが一段落した後も,Universal Libraryの構築を目指すプロジェクトは続行していくが,今後課題となるプロジェクトの「持続可能性」については,米国議会図書館(LC)のデジタル保存事業(CA1502 [44],E525 [45]参照)から助成を受ける,OCLC経由でデータを提供し,OCLC参加館から費用を得る,といった可能性を検討するとともに,QuestiaやNetLibraryなどの電子ブックサービスからも持続可能モデルの示唆を得ているということである。もっともUniversal Libraryでは今のところ,商業ベースの手法は持続可能モデルにはつながらないとの見解を示している。
大規模な書籍デジタル化プロジェクトにはよく知られたものとして,GoogleのGoogleブック検索(CA1564 [46],E676 [47]参照),マイクロソフトの“Live Search Books”(E403 [48]参照),Yahoo!とInternet Archiveが主導する“OpenContent Alliance(OCA)”(E392 [49]参照)があるが,カーネギーメロン大学のニュースリリースによると,Million Book Projectは大学が主導するものとして世界最大規模の電子図書館になるということである。大学が主導する大規模プロジェクトであることのほかに,欧米以外の国が積極的に参加している点でも興味深く,今後の動向に引き続き注意していく必要があるだろう。
Ref:
http://www.cmu.edu/news/archive/2007/November/nov27_ulib.shtml [50]
http://tera-3.ul.cs.cmu.edu/ [51]
http://www.ul.cs.cmu.edu/html/ [52]
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2007/11/28/17660.html [53]
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0711/30/news022.html [54]
CA1502 [44]
CA1564 [46]
CA1593 [43]
E285 [55]
E340 [56]
E392 [49]
E403 [48]
E525 [45]
E543 [57]
E676 [47]
E714 [58]
2007年10月に行われたRDA開発合同運営委員会(JSC;旧称は英米目録規則改訂合同運営委員会)ミーティングにおいて,資料の記述とアクセス(RDA;E372 [61],E614 [62]参照)の構成を大幅に変更することが承認された。
当初RDAは3部構成を取っていた(E372 [61]参照)が,2006年4月のJSCミーティングにおいて,「記述」と「アクセスポイントコントロール」の2部構成に変更された。しかし,この構成に対し,
という疑義が各機関から唱えられた。このため,FRBRの実体(entities)および利用者タスク(user tasks)の両方により密接に関連づけられた,「属性(attributes)の記録」,「関連の記録」の2つのグループ,合計10のセクションからなる新構成が作成された。JSCでは,この新構成には,
という利点があるとしている。
なおJSCは,このようなRDAの構成の大幅な変更にかかわらず,2009年にRDAの初版を発行するという。また,英国図書館(BL),LC,オーストラリア国立図書館(NLA),カナダ国立図書館・文書館(LAC)の4館も,RDAの導入に向けて協力関係を構築するとともに,現段階では2009年末までにRDAを導入する予定であるとしている。
Ref:
http://www.collectionscanada.ca/jsc/rda-new-org.html [65]
http://www.collectionscanada.ca/jsc/0710out.html [66]
http://www.collectionscanada.ca/jsc/0604out.html [67]
http://www.collectionscanada.ca/jsc/rdaimpl.html [68]
CA1480 [63]
E372 [61]
E614 [62]
E640 [64]
カナダ国立図書館・文書館(LAC)は2004年にウェブ・アーカイブを制度化し(E226 [70]参照),その規程に基づいて2005年12月からカナダ連邦政府のウェブサイトの収集に着手した。2006年12月には,政府ウェブサイトのアーカイブがLACの閲覧室で提供されるようになったが,このほど“Government of Canada Web Archive(GCWA)”としてウェブ上でも公開を開始した。現時点でおよそ1億件のデータ(容量は4テラバイト以上)が保管されており,キーワードのほか,日付,ファイルタイプ(画像,ビデオ,PDFなど),省庁名,URLなど複数のパターンで検索を行うことができる。今後も資金が許す限り,年2回のペースでデータ収集が実施されていく予定だという。
なおLACは,英国図書館(BL),米国議会図書館(LC),フランス国立図書館(BNF)など欧米の11の国立図書館とInternet Archiveにより2003年に結成された,国際インターネット保存アーカイブ(International Internet Preservation Consortium:IIPC)の一員であり(CA1537 [71]参照),「ウェブ・アーカイビングのための相互運用可能なツールや技術の開発を通じたコンテンツの収集,保存,長期にわたるアクセスの保障」というコンソーシアムの目標のために尽力している。今回のGCWAのシステム構築の際にも,IIPCが開発した3種類のオープンソースソフトウェア(Heritrix v1.12.1,NUTHCHWAX v0.10.0,WAYBACK v0.8.0)が使用されたという。
LACは2004年のウェブ・アーカイブの法制化に引き続き,法定納本制度を改正し,2007年1月よりオンライン出版物を納本対象としている(E606 [72]参照)。オンライン上の情報源を国が保存していくべき知的財産とみなし,収集・保存していこうという動きが世界中で活発化している中でも,LACの活動は注目に値するだろう。
Ref:
http://www.collectionscanada.ca/whats-new/013-315-e.html [73]
http://www.collectionscanada.gc.ca/webarchives/index-e.html [74]
CA1537 [71]
E226 [70]
E606 [72]
E656 [75]
CDNLAO 2007には,30の加盟国立図書館のうち15館から,館長または代理が参加した。CDNLAOのウェブサイトに国・国立図書館の情勢報告(カントリーレポート)のプレゼンテーション資料が掲載されているのは7か国(本連載で紹介済みの6か国および日本)だけであるが,その他の参加館のカントリーレポートも,その概要をCDNLAOの議事録から知ることができる。
ブルネイには国立図書館が存在せず,言語・文化省図書館がその機能を果たしている。同館は4つの地区図書館,3つの分館を有し,蔵書はおよそ50万点である。もっとも読書用資料のほとんどは,英国,マレーシア等から輸入している。貸出,レファレンス,テクニカルサービスのほか,ストーリーテリング大会,読書月間の設置などのプログラムも定期的に行われている。
インドネシア国立図書館は170万点の資料,682名の職員により運営されている。同館は移動図書館(E539 [79]参照),読書用資料の提供,ICTによって,各地域の図書館を支援している。2007年には副大統領によって“e-mobile library”および“Open Service Library”というデジタル環境下での図書館サービスを拡充するプロジェクトが立ち上げられている。
マレーシア国立図書館はおよそ230万点の資料,1,429名の職員により運営されている。現在,ジャウィ文字(マレー語を表記するのに用いられるアラビア文字)で書かれた資料・文書を国の文化遺産として保護するプロジェクトや,地方の図書館を改善して識字率を向上させるプロジェクトなどを推進している。
今回のCDNLAOには不参加だったネパール国立図書館からも,カントリーレポートが提出されている。8万7千点の資料,25名の職員でサービスが提供されており,OPACの提供,地方への移動図書館サービスなども行われている。
パキスタン国立図書館はおよそ20万点の資料,180名の職員により運営されている。国立図書館の一部門としてイスラマバード公共図書館があり,図書館間貸出はこのイスラマバード公共図書館を通じて行われている。
フィリピン国立図書館はおよそ18万点の資料,172名の職員により運営されている。現在,ICTの進展に対応すべく,“eLib”(E571 [80]参照)をはじめとする電子図書館サービスを推進している。また視覚障害者へのサービスにも力を入れている。
シンガポール国家図書館委員会(NLB)は2006年10月,シンガポールの歴史・文化のさまざまな側面を紹介するウェブサイト1,200サイトを収集したウェブアーカイブ“Web Archive Singapore”を立ち上げた。また2005年1月には,シンガポール人の作家・芸術家の作品を集めたリポジトリ“NLB Online Repository of Artistic Works(NORA)”も立ち上がっている。このほか,アジアフィルムアーカイブ(AFA)と覚書を交わし,シンガポールおよびアジアの映画製作者の未発表の作品を保存していくという。CDNLAOのウェブサイトでは,CDNLAO 2007の本会議の翌日に行われた資料保存に関するセミナーで同館が行った,印刷媒体・デジタル媒体の保存活動について紹介するプレゼンテーション資料が公開されている。
スリランカ国立図書館・文書館は35万点の資料を所蔵している。同館の特徴的な活動として,全国書誌をシンハラ語,タミル語,英語の3言語で刊行していることが挙げられている。また同国では,スマトラ沖地震・津波(E282 [81],E420 [82],E560 [83]参照)で被災した地域で,新しい公共図書館,学校図書館,教会図書館が数多く再建されつつあるという。
タイ国立図書館は261名の職員で運営されている。所蔵する図書資料は280万点を超えており,うち112万点あまりの書誌事項がOPACで検索できる。現在,タイ国内には各館種合計でおよそ4万の図書館が存在している。
Ref:
http://www.nla.gov.au/lap/cdnlao2007.html [33]
http://was.nlb.gov.sg/ [84]
E282 [81]
E420 [82]
E544 [85]
E559 [86]
E560 [83]
E571 [80]
E580 [87]
Jones, Catherine. Institutional Repositories: Content and Culture in an Open Access Environment. Chandos Publishing, 2007, 204p.
本書はその副題にあるように,機関リポジトリ構築におけるコンテンツと文化的側面に関連したトピックを中心に書かれたもので,技術的側面についてはほとんど触れられていないのが特徴的である。
本書の構成は,大きく分けて3部,全8章からなる。最初の1,2章では,リポジトリと学術情報流通の概説を行っている。そもそもリポジトリとは何か,機関という名称がつくことの意味は何かを問うことからはじまり,変化しつつある情報環境においてまず利害関係者(エンドユーザ,情報提供者,情報仲介者,メタ情報利用者)は誰であるかを特定し,その中でも情報提供者が持つニーズを把握することの必要性を説いている。3〜5章では,リポジトリ構築の各段階においてなすべきことを説明し,次にコンテンツについて,メタデータや登録候補となる学術情報の性質をリポジトリへの登録と関連させながら紹介している。6章では事例紹介として,英国研究会議中央研究所会議・クランフィールド大学・オタゴ大学における機関リポジトリの運営・構築の実務事例が紹介されており,リポジトリ成功のための手法なども挙げられている。残りの7,8章では今後の展望を述べている。
著者が述べているように,当然ながら本書に書かれていることが唯一の正解ではない。機関リポジトリを立ち上げようとする機関,最大の情報提供者である教員それぞれが異なる組織形態や規範,すなわち本書でいう「文化」を持ち合わせている。構築側がまず自らの「文化」を理解することが,リポジトリ構築に欠かせない。その意味で本書は,すでに構築が進んでいる機関向けというよりは,計画段階にある機関にとってより有用かもしれない。また,国立情報学研究所編『学術機関リポジトリ構築ソフトウェア実装実験プロジェクト報告書』の第2部(E323 [90]参照),倉田敬子編・著『電子メディアは研究を変えるのか』および『学術情報流通とオープンアクセス』等の概説を読むことで,本書のさらに理解が深まると思われる。
(慶応義塾大学非常勤講師:三根慎二)
Ref:
http://www.e-science.stfc.ac.uk/organisation/staff/catherine_jones/ [91]
http://www.nii.ac.jp/metadata/irp/NII-IRPreport.pdf [92]
E323 [90]
国立国会図書館(NDL)は2007年12月7日,同館ウェブサイトの『電子情報の長期的な保存と利用』をリニューアルし,「電子情報の長期利用保証に関する平成18年度調査報告書」やFAQ等の情報を新たに追加した。
同ウェブサイトでは,パッケージ系電子出版物(CD・DVD及びソフトウェアなど)やインターネット情報など,電子情報の長期的な保存と利用保証に関し,その必要性と克服すべき課題を広く訴えるとともに,NDLの調査研究成果や有益なリンク集などを提供してきた。
今回のリニューアルには,主に次のようなものがある。
Ref:
http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/preservation.html [94]
http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/preservation_01_2006.html [95]
http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/preservation_03.html#3 [96]
http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/preservation_04.html#4 [97]
2007年11月13日,米国議会図書館(LC)が設置した「書誌コントロールの将来ワーキング・グループ」(E634 [99]参照)が,これまでの検討の成果を著した報告書草案のプレゼンテーションを実施した。プレゼンテーションはLC内のクーリッジ講堂にLCの管理職者・スタッフを集めて行われ,その模様はウェブキャストでも中継された。報告書草案の本編は11月30日に公開される予定であるが,それに先んじてプレゼンテーション資料が暫定版として公開されており,ウェブキャストとあわせて見ることで概要を知ることができる。
同ワーキング・グループは(1)書誌コントロール,(2)書誌宇宙(bibliographic universe),(3)LCの役割,の3つを再定義することを原則に置き,2006年11月から10名のメンバーで検討を行ってきた。その間,2007年3月,5月,7月には公開ミーティングも実施し。報告書草案・暫定版では,ワーキング・グループの議論が,次の5つの「全体の結論」にまとめられている。
この5つのまとめのそれぞれに関し,複数の勧告(recommendation)がなされている。例えば1.に関しては,(a)冗長性の縮減,(b)書誌レコード作成の責任の分担促進,(c)典拠レコードの協同作成の3つの勧告がなされている。そしてこの各々に,さらに具体的な勧告がなされている。(a)であれば,サプライチェーンの上流で入手できる書誌的データの活用や出版時目録(CIP;CA1557 [100]参照)プロセスの自動化,(b)であれば協同目録プログラム(PCC)参加館の拡大や書誌レコード共有のインセンティブの拡大,(c)であれば他機関が作成済みの典拠標目の再利用や典拠ファイルの国際化などである。1.と同様,多くの勧告がなされているのは4.で,図書館目録に対し評価の情報や利用者作成のデータを統合することやFRBRのテスト計画の開発,またそれに伴うRDA(E372 [61],E614 [62]参照)関連作業の一時中断などが挙げられている。カルホーン報告書(CA1617 [101]参照)の中で廃棄を促され議論を集めていた米国議会図書館件名標目表(LCSH)に関しては,その意義を認めながらも,件名文字列の結合をやめファセット化(E507 [102]参照)すること,他の統制語彙の利用や相互参照を行うこと,主題分析作業におけるコンピュータによる索引作成の可能性を探ることなど,ウェブでの利用・再利用に向けての最適化・改変が勧告されている。
このほか,2.については,貴重資料や固有資料に重点を置いてアクセシビリティの向上を図るとともにデジタル化を進めること,3.については図書館の標準をウェブ環境に適合させるとともに投資利益率(ROI)を焦点に据えた標準開発を行うこと, 5.についてはエビデンスベース(CA1625 [103]参照)の構築や図書館情報学教育者とのコミュニケーションなどが勧告されている。
ワーキング・グループでは今後の予定として,11月30日に報告書草案の本編を公開し,12月1日から15日までパブリックコメントを受け付け,2008年1月9日までに最終報告書を公開する,としている。
Ref:
http://www.loc.gov/bibliographic-future/meetings/webcast-nov13.html [104]
CA1480 [63]
CA1557 [100]
CA1617 [101]
CA1625 [103]
E372 [61]
E507 [102]
E614 [62]
E634 [99]
毎日新聞社はこのほど,第53回学校読書調査の結果をまとめ,発表した。調査が行われたのは2007年6月で,統計学的な配慮をして抽出された全国の小学生39校3,519人,中学生41校3,866人,高校生37校3,946人,計117校1万1,331人が調査に協力した。
今回の調査から,以下のような点が明らかになった。
今回の学校読書調査は,生徒の読書量の増加,読書をしない生徒の割合の低下など,全国学校図書館協議会が評価したように,もはや「本離れ」とはいえない結果となっている。文部科学省等が中心となって取り組んできた「子どもの読書活動推進」(CA1638 [107]参照)が一定の成果を見せているという見方ができるかもしれない。
また,子ども向け教材開発等を手がけるベネッセはこのほど,小中高の生徒の保護者約500人に対して実施した家庭での読書活動,読書推進についてのアンケート調査(調査期間:2007年9月18日から9月20日)の結果を発表した。それによると,回答した保護者の9割以上が読書に対し,肯定的な評価をしていることが分かった。一方で読書量が年齢を重ねるにつれ,減少するという傾向がみられた。家庭で子どもの読書推進のために行っていることをランキングにまとめると,(1)図書館に連れて行く,(2)本のことについて話をする,(3)本を買い与える,という結果になったという。
今回の一連の調査結果を見ると,子どもに読書の楽しみを伝える機関として,図書館への期待は小さくない。図書館は今後,調査結果から分かった「ケータイ小説」の人気に見られるような読む媒体の多様化や,年齢とともに減る読書量といった傾向に留意点とヒントを見出しながら,時代の動向に配慮したサービスを考案・提供していく必要があるのではないだろうか。
Ref:
http://mainichi.jp/enta/book/news/20071027ddm010040175000c.html [108]
http://mainichi.jp/enta/book/news/20071027ddm010040174000c.html [109]
http://mainichi.jp/enta/book/news/20071027ddm010040173000c.html [110]
http://benesse.jp/blog/20071031/p1.html [111]
http://www.mext.go.jp/a_menu/sports/dokusyo/index.htm [112]
CA1638 [107]
高等教育は貧困から抜け出す手がかりとして重要なものであるが,特に発展途上国の人々は高価な教材を購入することができないために,高等教育を受ける機会を逃してしまうことがある。こうした現状を打開する一つのやり方として,発展途上国の人々がウェブサイトを通じて無料で利用できるオープンコンテンツの電子教材を作成し,公開しようというプロジェクト“Global Text Project(GTP)”が進行している。
これは米国のジョージア大学テリー・ビジネス・カレッジとデンバー大学ダニエル・ビジネス・カレッジの共同プロジェクトで,両大学からそれぞれワトソン(Richard Watson)氏とマッカバリー(Don McCubbrey)氏が共同プロジェクトリーダーとして参加している。英語から他言語への翻訳を視野に入れているため,彼らのほかプロジェクトの管理チームには,中国系,アラビア系,スペイン系の人々が含まれており,また国際諮問委員会として,アフリカや南米,アジアなど全14か国の代表者が関わるなど,事務局は国際色豊かなものとなっている。これはプロジェクトが“global”な展開を目指していることを明確に示しているといえるだろう。
GTPは2007年にスイスのJacobs財団から立上げ資金の援助を受けて開始した。今後の運営資金には大企業からの援助を想定しており,Business Week誌が毎年選ぶ世界の大企業1,000社(Global 1000)へスポンサーの依頼をする予定で,1社につき1冊の本のスポンサーになってもらい,最終的に1,000冊の教材を提供する電子図書館を作ることを計画しているという。なお,1冊の教材を作るために必要な資金は5万ドル(約550万円)で,その後の維持費用として毎年2万5千ドル(約275万円)が必要となるという。
GTPでは,大学の学部課程1,2年目レベルの内容の教材を順次作成する予定で,現在は「情報システム(Information Systems)」,「ビジネスの基礎(Business Fundamentals)」の2冊がそれぞれ公開中・作業中である。教材の執筆には,コンテンツマネジメントシステム(CMS;CA1584 [114]参照)が使用されており,担当編集者や品質保証委員会,学生といった関係者が内容の修正や変更,アドバイスをウェブ上で行えるようになっている。GTPではこのように,集合知を教材の質を担保する仕組みとして利用している。また,教材はクリエイティブコモンズのライセンスに基づき,頒布・複製・内容の変更が自由に行える。GTPでは,教材の利用者たちが自分たちの国の事例を教材に付け加え,内容を豊かにしていくことを期待している。
GTPが提示する教材の新しいモデルは,スタートしたばかりである。今後は関係者が期待するように,多くの企業がスポンサーとして参加し,さらには国連など国際的な機関との連携にまで発展していくのか,その動向が注目される。
Ref:
http://www.globaltext.org/ [115]
http://creativecommons.org/licenses/by/3.0/ [116]
CA1510 [117]
CA1584 [114]
2007年11月13日,米国ブッシュ大統領は,米国国立衛生研究所(NIH)の助成による研究のパブリックアクセス化を求める条項や,図書館関連の歳出が盛り込まれた「2008年9月30日に終了する歳出年度における米国連邦労働省,保健社会福祉省,教育省および関係機関に対する予算措置,ならびにその他の目的に関する法律(FY08 Labor-HHS Bill)」案(E712 [120]参照)に対する拒否権を行使した。同法案は10月23日の上院可決後,修正点に関する下院とのすり合わせを経て,11月8日,ブッシュ大統領に送付されていた。
ブッシュ大統領は拒否権行使の理由として,同法案に示された支出金額が,予算教書よりもおよそ100億ドル(約1,1兆円)多くなっており,健全な支出をもたらす歳出法案と考えるには不十分であることを挙げている。ブッシュ大統領は同法案の議会上程以来,予算教書から超過した歳出法案であるとして,拒否権行使の方針を示していた。
ブッシュ大統領の拒否権行使をうけて11月15日,同法案を発議した下院において再議決が行われたが,賛成277票に対し反対141票と,拒否権行使を覆すために必要な議院の3分の2の賛成にわずか2票足りなかった。
オープンアクセスに関するニュースサイト“Open Access News”を運営する米アラハム大学のズーバー(Peter Suber)氏は,今後,歳出法案について歳出額を削減する方向での修正が行われるだろうとしながら,NIHの研究助成成果のパブリックアクセス化条項は歳出法案のごく一部に過ぎず,既に上下両院の超党派の合意や行政部門に属する共和党員の支持を受けていること,ブッシュ大統領の反応がマイルドであること,政策変更に関する条項であることを挙げ,成立に楽観的な見方を示している。一方,米国図書館協会(ALA)は,図書館関連の歳出額削減阻止にむけたアドヴォカシーを展開している。感謝祭休暇明けにも再上程される歳出法案の行方が注目される。
Ref:
http://thomas.loc.gov/cgi-bin/bdquery/z?d110:HR03043: [121]
http://www.whitehouse.gov/news/releases/2007/11/20071113-6.html [122]
http://www.the-scientist.com/news/display/53858/ [123]
http://www.earlham.edu/~peters/fos/2007/11/house-fails-to-override-bush-veto-of.html [124]
http://www.wo.ala.org/districtdispatch/?p=290 [125]
E712 [120]
とある夕方,ホットなバンドの激しいライブ・パフォーマンスに,大勢の若者が熱狂する。この光景がライブハウスではなく,公共図書館で展開されたなら・・・。これをきっかけに,若者の図書館利用が増加したら・・・。
英国博物館・図書館・文書館国家評議会(MLA),文化・メディア・スポーツ省(DCMS),読書協会(Reading Agency),図書館長協会(Society of Chief Librarians)などが推進する,図書館振興のための取り組み“Love Libraries”キャンペーン(E471 [126]参照)が新たな活動として,ティーンや25歳以下の青年層向けに実施した,図書館利用の促進につながる図書館サービスを表彰する“Love Libraries Award”を開始した。第1回Love Libraries Awardには,図書館内で新人有名ロックバンドのライブを開催した,イングランド中部のランカスター(Lancaster)図書館のプロジェクト“Get it loud in Libraries”が選ばれ,10月3日,英国図書館(BL)で開催された授賞式で,トロフィーと賞金2千ポンド(約45万円)が贈られた。
Love Libraries Awardへのエントリーは6月29日まで行われ,全イングランドの公共図書館当局の約3分の1を超える,48機関から応募があった。MLA,読書協会などの代表者4名からなる審査委員会は,最終候補として5機関を選定し,8月13日から9月14日まで開催された一般投票により,受賞館が選ばれた。
Get it loud in Librariesのライブ・パフォーマンスに参加したとある若者は,「図書館でお気に入りのバンドを目にするとは思ってもいなかった。
音楽の力なのか,翌日も休日に読む小説を借りるために,図書館へ足を運んだ」と語っている。「ミュージックライブラリアン」のパーソンズ(Stewart Parsons)氏は,「Get it loud in Librariesの核心は,若者,とりわけ音楽を愛するティーンに,図書館という空間の中でわくわくした時間を過ごしてもらい,小説・音楽・インターネット・静寂な時間など,とにかく図書館をもう一度利用することを心に留めてもらうところにある。また有名なバンドを独特な雰囲気をもつ,伝統的な図書館の環境に引き入れ,あらゆる年齢層を対象に,音楽を楽しんでもらうことは,閉館時間後の図書館スぺースを有効活用する最善の利用法だ。そしてこのプロジェクトは,(図書館という)安全で快適な環境を活用して,ティーンたちに最新の興奮感を与えるものである」と述べている。
図書館利用の少ないティーンやヤング・アダルト層に対しては,ダンスパーティーなどのイベントや,SNSなどを利用した図書館サービスの提供(CA1618 [127]参照)を通じた,図書館への注目度や利用度を高める取り組みがなされている。若者の目を図書館に向けるための取り組みに加え,その手法の共有や評価についても今後の研究や実践が期待されよう。
Ref:
http://www.lovelibraries.co.uk/ [128]
http://www.lovelibraries.co.uk/lovelibrariesaward/index.php [129]
http://www.lovelibraries.co.uk/lovelibrariesaward/lancaster_library.php [130]
http://www.lovelibraries.co.uk/files/Love_Libraries_Award.doc [131]
http://www.lovelibraries.co.uk/files/Love_Libraries_award.doc [132]
http://www.lovelibraries.co.uk/files/Love_Libraries_Award_winner.doc [133]
http://www.mla.gov.uk/website/news/press_releases/libraries_winner2 [134]
http://www.lancashire.gov.uk/libraries/index.asp [135]
E471 [126]
CA1618 [127]
ニュージーランド
ニュージーランド国立図書館からは,同館の近年の動向を中心に報告がなされている。同館は2005年5月の,ニュージーランド政府による「デジタル戦略」の制定に大きく貢献するとともに,この戦略のもとで「国民のネットワーク(People's Network)」と「デジタルコンテンツ戦略」の2つのプロジェクトを指揮している。
前者は,英国の博物館・文書館・図書館国家評議会(MLA)による同名のプロジェクト(CA1382 [136],CA1394 [137],E054 [138]参照)に倣ったもので,公共図書館を地域のICTハブと位置づけ,ブロードバンドのインターネットサービスやコンピュータの研修,図書館へのコンテンツの登録・利用などを無料で人々に提供するものである。第1フェーズとして2008年3月までに,35の公共図書館・13の自治体が参加するとのことである。また公共図書館に関しては,2006年に発表された「戦略的枠組み」(E402 [139],E551 [140]参照)を受け,2007年2月に初めての「公共図書館サミット」を開催するとともに,サミットの成果をも とに行動計画を立案しているところである。
後者は,「デジタルニュージーランドの構築(Creating a Digital New Zealand)」を合言葉に,国民が積極的にデジタル形態のコンテンツの創作,探索,共有,利用に関わることができる国家を目指すというものである。このプログラムのもと,同館はデジタルコンテンツのためのリポジトリ「国家デジタル遺産アーカイブ(NDHA)」(E565 [141]参照)の構築,公的助成研究の成果に対するアクセシビリティを向上させるための,大学・研究機関と連携した機関リポジトリ内情報検索サービスの構築,博物館や文書館と協同して組織を超えてデジタル資源に関し連携するフォーラムの結成,デジタル化に関する政策フレームワークの構築などを進めている。また電子的ドキュメントも納本の対象に含めた新納本制度(CA1612 [142]参照)の施行,19世紀から20世紀初期にかけての新聞をマイクロフィルム化する「国家新聞保存プログラム(NNP)」の成果物のデジタル化なども紹介されており,同館がデジタルコンテンツに関する事業に積極的に取り組んでいることがよく分かるレポートとなっている。
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ベトナム
ベトナム国立図書館は2006年から2007年にかけて,1954年以前のフランス植民地時代にベトナムで刊行されたフランス語の資料618タイトル(7万ページ以上)のデジタル化を完了させた。これは,ベトナム・ラオス・カンボジアの3国の国立図書館や他の図書館のフランス語資料をデジタル化し,アクセシビリティの向上と資料保存の両方を図るという“VALEASE”プロジェクト(フランス政府が助成)の一部として行われたものである。このほかにも,中国から伝わった漢字やベトナム固有の文字(字喃)で書かれた資料のデジタル化が計画されている。また海外在住のベトナム人向けの電子図書館サービスを,2010年にオンラインで提供開始する予定とのことである。
公共図書館のニュースとしては,ベトナム南部で最大の公共図書館であるホーチミン市一般科学図書館が,「マルチメディア子ども図書館」と「移動インターネット図書館」の2つのサービスを2007年に開始したことが挙げられている。前者は,VALEASEプロジェクトやシンガポール国家図書館委員会などの助成を受け,児童書,インターネットアクセス,マルチメディア資料などを提供する空間を図書館内に設置したというものである。ストーリーテリングなどの活動も行われているという。後者は,図書・雑誌に加えインターネットにアクセスできるPC8台,DVDプレイヤー2台などを備えたブックモ ービルを整備し,インターネットサービスが行き渡っていない郊外や遠隔地にサービスを届けるというものである。この種のサービスは,いずれもベトナムでは初めてのものである。
2006年10月には長年待望されていた図書館員の全国組織として,ベトナム図書館協会が設立された。また同時期に,英米目録規則第2版(AACR2)が,MARC21,デューイ十進分類法(DDC)に続いてベトナム語訳され,書誌に関する国際標準の国家レベルでの導入が完了した。そして2007年には,第10回のアジア電子図書館国際会議(ICADL;E587 [143]参照)がハノイで開催される。これらの取り組みに代表されるように,ベトナムの図書館界は世界の図書館コミュニティの仲間入りに向けて,発展を続けている。
Ref:
http://www.nla.gov.au/lap/cdnlao2007.html [33]
http://www.digitalstrategy.govt.nz/ [144]
http://www.natlib.govt.nz/about-us/current-initiatives/nz-digital-content-strategy [145]
http://www.natlib.govt.nz/about-us/current-initiatives/national-research-discovery-service [146]
http://www.peoplesnetworknz.org.nz/ [147]
http://www.digitalcontent.govt.nz/ [148]
http://www.valease.org/ [149]
CA1382 [136]
CA1394 [137]
CA1612 [142]
CA1615 [150]
E054 [138]
E402 [139]
E551 [140]
E565 [141]
E586 [151]
E587 [143]
Rowlands, Ian. Electronic journals and user behavior: a review of recent research. Library & Information Science Research, 2007, 29(3), p.369-396.
電子ジャーナルの利用について研究する場合,テネシー大学のテノピア(Carol Tenopir)による電子ジャーナルの1995年から2003年までの研究の概観と分析は,その出発点となるものである(E129 [153]参照)。最近,ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン図書館・文書館・情報研究大学院出版センター(Centre for Publishing, School of Library, Archive and Information Studies, University College of London)のローランズ(Ian Rowlands)が,この10年ほどの雑誌システムの重要な変化の側面,特に電子ジャーナルの利用の動向をとらえるためにレビューをまとめた。ローランズはSocial Science Citation Indexに収録されている,1995年から2006年までに出版された文献の体系的な検索に基づき,テノピア以降(post-Tenopir)の文献の分析を行っている。
レビューに収録された文献は87で,内訳は図書2,レビュー6,研究論文75,会議資料1,レポート3であり,英語の研究論文が大半を占めている。収録文献の年代は1994年以前が3,1995年から1999年までが2,2000年から2003年までが46,2004年から2006年が36であり,大半の文献は電子ジャーナルの利用が定着した2000年以降の刊行である。収録点数の多い著者は,ニコラス(David Nicholas)をリーダーとし,ローランズも所属するCiberのグループが10,テノピアやピッツバーグ大学のキング(David King)のグループが10であり,この2つのグループが電子ジャーナルの利用研究を牽引したことが伺える。レビューは4つの部分から構成され,「学術生産物と利用の変化しつつある状況」では22,「デジタルへの移行」では31,「主題分野と情報利用」では9,「変化しつつある利用者行動」では40の文献を扱っている。ここからは,主題分野と情報利用の関連についての研究が余り進展していないことがわかる。
ローランズのレビューは,主要な研究について知見を表や要約の形で列挙し,全体のまとめと今後の研究課題も提示しており,テノピアのレビュー以降の欠落を埋めるとともに現時点における電子ジャーナルの利用研究についての到達状況を示すものといえよう。(東北大学附属図書館:加藤信哉)
Ref:
http://www.clir.org/pubs/reports/pub120/pub120.pdf [154]
E129 [153]
Googleによる書籍検索サービス「Googleブック検索」,またその対抗馬としてMicrosoftが展開している“Live Search Books”のいずれかと提携して,蔵書を大規模にデジタル化する図書館が増えている中,誰もが自由に利用できるという「オープン」の考え方を尊重し,Internet ArchiveとYahoo!が主導するデジタル図書館プロジェクト“Open Content Alliance(OCA)”(E392 [49]参照)に参加して大規模なデジタル化を進める図書館も出てきている。2007年10月22日付けのNew York Times紙が,米国の図書館における蔵書デジタル化のパートナー選びの戦略について紹介する記事を掲載している。
この記事によると,Googleと提携してデジタル化する場合,デジタル化費用はGoogleが負担してくれるが,デジタル化された資料はGoogle以外の商用検索サービスに提供してはならないという条件に合意しなくてはならないという。OCAに“MSN”として名前を連ねているMicrosoftも,OCAに参加した当初は自由利用を認めていたものの,“Live Search Books”を開始した以後は,同様の制限を設けているという。これに対しOCAの場合は,1冊あたり,およそ30ドルのデジタル化費用を図書館が供出しなければならないが,デジタル化された資料はいかなる検索サービスからも利用できる。Internet Archiveの設立者で,OCAの産みの親でもあるケール(Brewster Kahle)氏は,この記事やLibrary Journal誌2007年8月15日号に掲載されたインタビューにおいて,GoogleやMicrosoftが著作権の保護期間が切れているデジタル化済み資料を無償でダウンロードできるようにしている点を評価しながらも,一営利企業がパブリックドメイン=公の所有物であるはずの資料のデジタル化・流通を独占することになりかねないことを危惧し,「皆が様々な方法で利用できる共同のコレクションを作るコミュニティプロジェクト」から端を発したOCAの「オープン」という理念の重要さを強調している。
このケール氏の見解のとおり,2007年9月にボストン図書館コンソーシアムの一員としてOCAに参加することを発表したボストン公共図書館は,GoogleおよびMicrosoftと交渉を行い,各々の商業的な価値を理解した上で,すべての人が利益を得られる方法での配布を認めているOCAを選択した,としている。2007年11月12日の段階でウェブサイトで公開されている情報によれば,ボストン公共図書館のようにOCAに参加している図書館は80強(ただし分館等も含む)と,Googleの29,Microsoftの6を上回っている。もっともこの数字には,より早くデジタル化できる,リスクを分散させることができるといった理由で複数に参加している図書館(カリフォルニア大学図書館など)も含まれている。
費用負担の少なさを重視する,理念を重視する,リスク分散を重視するなど,いくつか選択肢が存在する状況において,各々の図書館がどのような理由でどのようなデジタル化戦略を取るのか,またそれによって各プロジェクトはどのように進展していくのか,今後の展開が大変興味深い。
Ref:
http://www.nytimes.com/2007/10/22/technology/22library.html [156]
http://www.nytimes.com/2007/10/22/technology/22library.html?pagewanted=2 [157]
http://www.blc.org/news/blc_oca_release.html [158]
http://ia350616.us.archive.org/1/items/bostonpubliclibrary/BLPagreementnosignatures.pdf [159]
http://www.libraryjournal.com/article/CA6466634.html [160]
http://www.opencontentalliance.org/contributors.html [161]
http://books.google.com/googlebooks/partners.html [162]
http://help.live.com/Help.aspx?market=en-US&project=BookSearchHelp&querytype=topic&query=BookSearchHelp_CONC_ObtainBooks.htm [163]
E392 [164]
青空文庫は,著作権の消滅した作品と著作権者が公開に同意した作品を電子化してウェブ上で無償提供している電子図書館である。このほど開設10周年を迎えたことを記念し,青空文庫と日本図書館協会との協賛事業として,公共図書館および大学・短大・高専付属図書館計3,000館,高校図書館約5,000館に対し,これまでに蓄積された著作権切れの全作品6,612点を収めたDVD-ROM付きの冊子『青空文庫 全 もう一つの読む自由』(以下,『青空文庫 全』)を寄贈することが, 2007年10月26日に発表された。寄贈に要する費用約300万円は,貯蓄していた広告収入で賄うという。
今回の寄贈計画は,青空文庫をより多くの人に知ってもらうこと,インターネットを利用できる環境にない人にも青空文庫を利用できる機会を設けること,著作権保護期間について考えるきっかけを作ることなどを目指して,有志により企画されたという。冊子『青空文庫 全』には,DVDの使い方や青空文庫のこれまでの歴史に加えて,著作権保護期間延長に反対するという青空文庫の立場とその理由も記されている(E594 [165]参照)。
なお『青空文庫 全』は,10月27日から11月9日までの読書週間にあわせて,公共図書館等には2007年10月末に,高校図書館には2007年11月20日頃に届けられる予定だという。DVDに収められたファイルはウェブ版と同様,複製,頒布等も自由に行える。寄贈された『青空文庫 全』が,各図書館においてどのように提供され,利用されるのか,今後の展開も注目される。
Ref:
http://www.aozora.gr.jp/kizokeikaku/ [166]
http://www.aozora.gr.jp/ [167]
E594 [165]
“Secure Rural Schools and Community Self-Determination act”の期限切れによる財政難から,2007年4月以来全公共図書館が閉鎖されていた米国オレゴン州ジャクソン郡において(E649 [170]参照),全公共図書館が再開館されることになった。まず10月24日からメドフォード(Medford),アシュランド(Ashland)の両図書館が,10月29日からは残る13の公共図書館が再オープンし,新たなスタートを切った。
再開館のきっかけは,連邦政府からの補助金を延長する規定を盛り込んだ“U.S. Troop Readiness, Veterans' Care, Katrina Recovery, and Iraq Accountability Appropriations Act, 2007”が5月25日,ブッシュ大統領の署名により発効したことにある。この法律によりジャクソン郡には2008会計年度まで,連邦政府から補助金が支給されることになった。2007会計年度は2,300万ドル(約26億円)の補助金が支給されることになっており,同郡はこのうち230万ドル(約2.6億円)を公共図書館運営に宛てることとし,委託により公共図書館の再開館を決定した。委託先候補として,民間企業Library Systems & Services(LSSI)”と,米国・カナダ・プエルトリコの労働者が結成している労働組合の国際団体“Service Employees International Union(SEIU)”から提案があり,提示価格のより低いLSSI(提示価格は年間430万ドル(約5億円))を委託先とする案が同郡の郡政委員会で承認され,10月1日に5年間の委託契約が締結された。ちなみに2006会計年度におけるジャクソン郡図書館運営費用は,年間875万ドル(約10億円)であった。
委託先であるLSSIは運営コストを削減するために,開館時間の大幅な短縮を実施し,開館時間は概して閉館以前の約半分となっている。13館のうち9館では週あたりの開館時間が16時間以下となっている。休館日も大幅に増加しており,アシュランド図書館を除き日曜日は休館となり,2館では開館が週1回となっている。なおアシュランド地区は9月に実施した住民投票により,新たな税負担を受け入れ,開館時間を他地区よりも多く確保し,日曜開館を実現することになった。このように一部の地域は図書館の運営コストを住民が負担することでサービス水準を維持する意思を示しており,地域差が生じている。
職員の雇用については,閉館に際して一時解雇となっていた図書館職員115名の中から,50〜60名程度を採用するとしており,地元新聞紙のインタビューに応じた元分館長ビルター(Anne Billeter)氏によると,元図書館職員の多くも,図書館や利用者のことをたいへん気に掛けていて,図書館勤務に戻ることを希望しているという。そして15館すべてに,再雇用した元職員が勤務していると,報じられている。
連邦政府からの補助金支給と図書館運営コスト削減により,ジャクソン郡公共図書館は今後3年程度の運営資金の目処がついたとしているが,それ以降の運営予算の見通しは,現時点では明確ではない。ジャクソン郡図書館財団代表のオルニー(Jim Olney)氏は,住民投票の結果から,住民は既成概念にとらわれない図書館運営を求めていると述べ,住民との対話を進める必要性を指摘している。公共図書館の運営・維持にあたり,地域住民とのコミュニケーションを図りながら,図書館の重要性と必要性をどのようにして住民に訴え,理解を得てゆくのか,ジャクソン郡公共図書館の今後の取り組みが注目される。
Ref:
http://www.jcls.org/ [171]
http://wwwnotes.fs.fed.us:81/r4/payments_to_states.nsf [172]
http://frwebgate.access.gpo.gov/cgi-bin/getdoc.cgi?dbname=110_cong_public_laws&docid=f:publ028.110 [173]
http://www.lssi.com/articles/LSSI%20Jackson%20County%20Release.pdf [174]
http://www.schoollibraryjournal.com/article/CA6473002.html [175]
http://www.libraryjournal.com/article/CA6495202.html [176]
http://www.mailtribune.com/apps/pbcs.dll/section?category=LIBRARIES [177]
http://www.mailtribune.com/apps/pbcs.dll/section?category=SPECIAL06 [178]
http://www.mailtribune.com/apps/pbcs.dll/article?AID=/20070920/NEWS/709200319/ [179]
http://www.oregonlive.com/news/oregonian/index.ssf?/base/news/11915547028600.xml&coll=7 [180]
http://www.mailtribune.com/apps/pbcs.dll/article?AID=/20070919/NEWS/709190317/ [181]
http://www.mailtribune.com/apps/pbcs.dll/article?AID=/20071009/NEWS/710090312/ [182]
http://www.mailtribune.com/apps/pbcs.dll/article?AID=/20071018/NEWS/710180321/ [183]
http://www.mailtribune.com/apps/pbcs.dll/article?AID=/20071025/NEWS/710250341/ [184]
http://www.mailtribune.com/apps/pbcs.dll/article?AID=/20071025/NEWS/710250342/ [185]
http://www.mailtribune.com/apps/pbcs.dll/article?AID=/99999999/NEWS/710160335/ [186]
E649 [170]
欧州連合(EU)が進めている「i2010:欧州情報社会2010:成長と雇用のための欧州情報社会(i2010:A European Information Society for growth and employment)」において,欧州デジタル図書館(European digital library:EDL)の設立は最重要プロジェクトの一つとされている(E390 [190],E461 [191],CA1632 [192]参照)。すでにフランス国立図書館がEDLのプロトタイプとなるシステム“Europeana”を試作・公開しているが,EDLはいまだ構想・模索の段階にある。このような状況の下,欧州議会はEUの行政機関である欧州委員会(European Commission),欧州評議会(Council of Europe),およびEDL参加各国の政府と議会に対し,EDL構築に向けた取り組みの加速を求める決議「i2010:デジタル図書館に向けて(i2010:towards a European digital library)」を,2007年9月27日に全会一致で採択した。
決議では前文で,学術情報流通・蓄積・保存や著作権の取り扱いなど,これまでにEUが出した通知(Communication),勧告(Recommendation),指令(Directive)(E541 [193],E611 [194],E646 [195]参照)を列挙するとともに,EDLを構築する理由について,EU市民の関係強化,欧州の文化的遺産の豊かさや多様性の推進・保護・普及など,17項目にわたって列挙している。
さらにこれを受けて(1)多様性を内包して統合した,欧州の顔(face)としてのEDL,(2)欧州の文化遺産に対する,共通の,多言語によるアクセスポイントとしてのEDLの構造とコンテンツ,(3)運営と監督,という点から,今後EBLの構築に向けて取り組むべき課題を,35の項目にわたり言及している。
欧州デジタル図書館計画に対しては2006年8月に,欧州委員会からプロジェクト参加国に向けて,取り組みへの推進を求める勧告が出されている(E541 [193]参照)。この決議は,EDL実現に向けた,欧州議会の強力な意思を示すものであるといえよう。今後の欧州委員会や参加各国の動向が注目される。
Ref:
http://www.europarl.europa.eu/sides/getDoc.do?pubRef=-//EP//TEXT%20TA%20P6-TA-2007-0416%200%20DOC%20XML%20V0//EN [196]
http://www.euractiv.com/en/culture/parliamentarians-call-books-put-online/article-167157 [197]
http://www.europeana.eu/ [198]
http://www.edlproject.eu/ [199]
CA1632 [192]
E390 [190]
E461 [191]
E541 [193]
E611 [194]
E646 [195]
米国図書館協会(ALA)の1組織である米国学校図書館員協会(AASL)は2006年から,学校図書館メディアプログラム(CA1361 [202]参照)のための新しい学習基準の作成に取り組んでいたが,2007年10月25日にネバダ州リノで開催された第13回AASL年次大会の場で,その内容が発表された。
新基準ではまず最初に,以下のような土台を成す9つの信念を明示している。
これらの信念を押さえた上で新基準では,「尋ね,批判的に考え,知識を得る」,「結論を導き,根拠に基づいた決定をし,新しい状況に知識を応用し,新しい知識を生み出す」,「民主主義社会の一員として,知識を共有し,倫理的かつ生産的に参加する」,「人間的,審美的成長を目指す」という4つの学習目標を定義している。さらに目標の下には各目標の達成度を測るための「スキル」,「行動傾向」,「義務」,「自己評価戦略」という4つの指標が定義されている。各指標では具体的で詳細な能力が記述されているため,メディアスペシャリストたちが生徒たちが身につけるべき知識や行動とは何かを把握し,それらを身につけるための授業設計を考える上で役立つよう工夫されている。例えば,「尋ね,批判的に考え,知識を得る」という目標における「スキル」として,「カリキュラムのテーマにおける知識探索において質問に基づいたプロセスをたどる,さらに自分自身の生活でこのプロセスを利用するため,現実世界との結びつきを作る」,「新しい学習のためのコンテクストとして,既に有している知識及びバックグラウンドにある知識を利用する」等をはじめ,全9項目を挙げている。
学校図書館のメディアプログラムの充実度と生徒の学習達成度の間に相関関係があることは複数の研究成果によって指摘されている。このような中2007年6月には,連邦議会の超党派の議員が各公立学校に少なくとも1人以上の学校図書館メディアスペシャリストを置くことを求める法案“SKILLs Act”を提出し,現在審議中である(E680 [203]参照)。今回の新学習基準の導入の効果とともに,法改正の動きも含めて,米国の学校図書館を取り巻く動向を引き続き追っていく必要があるだろう。
Ref:
http://www.ala.org/ala/aasl/aaslproftools/learningstandards/standards.cfm [204]
http://www.ala.org/ala/pressreleases2007/october2007/standards07.htm [205]
CA1361 [202]
CA1487 [206]
E680 [203]
中国
中国では2006年,情報ネットワーク環境下における著作権者の公衆送信権を保護するとともに,優れた作品の流通を促進することを目的とした「情報ネットワーク送信権保護条例(Regulations on the Protection of the Right of Communication through Information Network)」が成立した。同条例の第7条では,非営利かつ当事者間での別の約定が存在しない場合において,(1)市場において購入することが困難な資料や破損した資料などを,図書館・文書館・博物館等が著作権者の許諾なくデジタル化できること,(2)またそのように作成した複製物や出版されているデジタル資料を,著作権者の許諾なく図書館・文書館・博物館等が館内の利用者に提供できることが定められており,図書館におけるデジタルサービスに法的根拠が与えられた。また公共図書館の設置基準の法制化,大学図書館がコンソーシアムを結成して情報資源を契約するためのガイドラインの策定,地方自治体の図書館に資料保存の専門家を養成するためのボランティア活動,世界読書の日(4月23日)に読書および図書館の利用を推進するキャンペーンの実施などが行われた。
中国国家図書館は2006年に,ウェブサイトをリニューアルして農村・企業・図書館界の各業界向けサービスのための特設ページを新設するとともに,デジタル資料提供サービスの強化,オンラインレファレンスサービスの提供(CA1636 [207]参照)などを行った。図書館界に対するサービスとしては,国内外の図書館に関するニュース,国際図書館連盟(IFLA)の年次大会ニューズレター“IFLA Express”中国語版,図書館情報学関係のデータベース・雑誌へのリンク集に加え,図書館情報学に関する文献を無料で登録・利用できる主題リポジトリ「図書情報学開放文庫」も提供されている。
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韓国
韓国国立中央図書館からは,同館の2006年の動きを中心に報告がなされている。国立子ども青少年図書館の開館(E506 [208]参照),小さな図書館活性化事業の拡大(CA1578 [209],E540 [210]参照),公共図書館の協同レファレンスサービスネットワークプロジェクトの開始(E572 [211],E626 [212]参照),国民読書実態調査の実施(E635 [213]参照)および全国で行われた読書推進キャンペーンの支援など,本誌でも紹介した事業のほか,2006年12月8日から一部閲覧室の開館時間を23時まで延長するとともに土日も開館するようにしたこと,2006年に新規開館した50の公共図書館の建設費として総額308億ウォン(約38億円)を助成したことなどが紹介されている。また従来からの事業を継続したものとして,人々から寄贈を受けた図書を兵営図書館や福祉施設等に再度寄贈するプログラム「日差したっぷりの屋根裏部屋」(2004年に開始)の実施,各種図書館が直面している課題や図書館の発展のための課題に関する「開かれた政策セミナー」(2005年に開始)の開催(計6回)なども紹介されている。
また全国規模のできごととしては,国際図書館連盟(IFLA)ソウル大会の開催(E546 [214],CA1609 [215],CA1610 [216],CA1611 [217]参照),図書館法と読書文化振興法の制定(CA1635 [218]参照)などが挙がっている。
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なお,中国国立図書館,韓国国立中央図書館はともに,2008年にデジタル図書館を新規開館させる予定である。これらについては,『カレントアウェアネス』第294号(平成19年12月20日刊行予定)に各々の紹介記事を掲載する。
Ref:
http://www.nla.gov.au/lap/china07_000.rtf [219]
http://www.gov.cn/zwgk/2006-05/29/content_294000.htm [220]
http://www.lsc.org.cn/CN/hyyhd.html [221]
http://www.nlc.gov.cn/GB/channel55/58/200710/12/4246.html [222]
http://www.lsc.org.cn/CN/2006reading.html [223]
http://www.nlc.gov.cn/service/fuwudaohang/xuejie.htm [224]
http://www.nla.gov.au/lap/documents/korea07.pdf [225]
CA1578 [209]
CA1609 [215]
CA1610 [216]
CA1611 [217]
CA1635 [218]
CA1636 [207]
E506 [208]
E533 [226]
E540 [210]
E546 [214]
E572 [211]
E626 [212]
E635 [213]
国立情報学研究所(NII)による「学術機関リポジトリ構築連携支援事業」(E654参照)により,日本でもすでに60以上の大学・研究機関で学術機関リポジトリ(IR)が開設されている。一方,IRの構築・導入から,教育研究成果の確実な収集・発信と効果的な利用へと,IRの活動は新たな段階を迎えている(CA1628参照)。このような状況下におけるIRのコンテンツ利用について,コンテンツ作成者・利用者双方の立場から意見交換を行うシンポジウム「大学のたわわな果実がどれほど甘く熟しているのかをじっくり味わうには:機関リポジトリによる教育研究成果の発信と効果的利用」が,京都大学図書館機構公開事業として,2007年10月24日に開催された。
まず文部科学省研究振興局情報研究推進専門官の膝舘俊広氏と,名古屋大学附属図書館長の伊藤義人氏による講演が行われた。
膝舘氏はIRに関するこれまでの動向を大学図書館に対する各種審議会報告書などから敷延するとともに,各大学で行われている新たな取り組みの紹介と現在直面している課題,IRに対する文部科学省担当部局の考え方,IRを利用した新たな事業の紹介,および各関係者(文部科学省,NII,大学)の今後の役割について報告した。
伊藤氏は,大学にとってのIRの役割,名古屋大学学術機関リポジトリの特徴,およびIRに立ちはだかる課題について報告するとともに,IRの新たな展開例として,電子出版プラットフォームとしての利用を提案した。
次にコンテンツ作成および提供者の立場から,京都大学人文科学研究所教授の武田時昌氏と同数理解析研究所教授の長谷川真人氏が発表を行った。
武田氏は人文科学研究所が,共同研究の成果,国際シンポジウム報告書,刊行物,および教育活動の記録をIRを通じて発信する決断を下したことを紹介し,情報発信が現在ばかりでなく,同時に未来に対する活動として永続性を有することについて,「学者の不死願望」というキーワードを用いて説明した。また,研究所が公開している各種データベースによって資料の可視性が向上し,図書館利用の活性化につながっていることを指摘した。
一方長谷川氏は,研究に占めるオンライン情報の比重の高まりを前提とした上で,英語インターフェイス環境の欠落,コンテンツやメタデータの品質といった観点から,現在のIRは研究に耐えられないものであると指摘し,海外を含めた学外者に対する配慮,コンテンツ提供者によるメタデータ情報の提供強化を提言した。
続いて京都大学附属図書館情報管理課の村上健治氏による,京都大学学術情報リポジトリの実務と拡充方針に関する報告があり,最後にパネルディスカッションが行われた。会場からはIRの哲学やアイデンティティ,著作権処理に関する課題,「学術機関リポジトリ構築連携支援事業」終了後の費用負担の問題といった質問が,各パネリストに寄せられ,活発な意見交換が行われた。とりわけIRの哲学やアイデンティティを問う声に対しては,研究成果をオンライン上に浮遊させることが重要であり,そのためにもIRをゆるやかなコンセプトで運営していくこと,最先端の研究成果の公開とより幅広い内容の研究成果公開という2つの方向性が存在していること,などの見解がパネリストから披露された。大学が生み出した「甘い果実」である教育研究成果の収集・保存・発信の在り方が示されるなど,充実した議論が展開された。
なお資料の一部は,京都大学学術情報リポジトリで公開されている。
(国立国会図書館:上山卓也)
Ref:
http://www.kulib.kyoto-u.ac.jp/modules/news/article.php?storyid=220 [229]
http://www.kulib.kyoto-u.ac.jp/modules/tinyd5/content/H19koukai_poster.pdf [230]
http://hdl.handle.net/2433/48908 [231]
http://hdl.handle.net/2433/48909 [232]
http://hdl.handle.net/2433/48910 [233]
CA1628 [234]
E654 [235]
OCLCは2007年10月,『ネットワーク化された世界における共有,プライバシーと信頼』と題するレポートを公開した。これは,2005年のレポート『図書館と情報資源についての認知度』(E422 [237]参照)および2006年の『大学生の図書館と情報資源についての認知度』の後の情報世界,とりわけ人々が作成したコンテンツを共有し,協同してコミュニティを築き上げていく「ソーシャルネットワーキング」の世界に対する人々の意識を調査し,図書館の果たすべき役割について考察したものである。
2006年12月〜2007年2月に行われたこの調査は,米・英・独・仏・カナダおよび日本に在住する14歳以上の人々に対するオンラインアンケートと,米国の各館種の図書館長に対するオンラインアンケート,先駆的な図書館サービスを展開している図書館司書など14名の情報サービス専門家に対するインタビュー,の3種類からなり,オンラインアンケートには各々6,163名(日本からは804名),382名が回答している。
この調査の主要な論点として,以下が挙げられる。
この調査からは,人々がウェブサイトを読む側から作る側になり,情報をより共有するようになってきている中,従来の図書館ウェブサイトの存在感は相対的に低下していることがうかがい知れる。図書館もいま流行のSNSを提供すべきである,と考える人はまだ多くなかったものの,図書館が立ち上げているブログが1万以上あり,SNSを提供し好評を博している図書館も存在するなど,すでにソーシャルネットワーキングの世界に足を踏み入れている図書館も出始めている。報告書は最後に,利用者と協同してコンテンツと,プライバシーに関する新しいルールを作っていく図書館ウェブサイトを構築すべきであると結論付けている。
Ref:
http://www.oclc.org/reports/sharing/ [238]
http://www.oclc.org/reports/2005perceptions.htm [239]
http://www.oclc.org/reports/perceptionscollege.htm [240]
CA1624 [241]
E422 [237]
E616 [242]
英国図書館(BL)は2005年6月に,2005年から2008年までの戦略『図書館を再定義する(Redefining the Library)』を公表し,デジタル情報資源の収集・保存・提供活動を強化していくことを明確にした(E349 [246]参照)。この戦略の実行については,マイクロソフト社の書籍デジタル化・検索サービス“Live Search Books”(E581 [247]参照)への参加など,その手法にも注目が集まっている。
このような中,マイクロソフト社が開発に協力している貴重資料のオンライン・ギャラリー“Turning the Pages 2.0”が2007年1月にオープンしたことを記念し,BL・マイクロソフト社等がスポンサーとなって,デジタル化すべき「国の宝」を全国の公共図書館から募集するコンテストが開催され,その結果が2007年9月に発表された。応募のあった82件から,イングランドのドーセット州婦人会による第二次世界大戦の記録や,宗教改革期を生き延びたスコットランドのミサ典書など5件が選ばれた。これらはデジタル化されて,今後3年間“Turning the Pages 2.0”で公開されることになっている。
また2007年10月には,英国情報システム合同委員会(JISC)と図書館向けレファレンスツールの大手出版社であるGale社と共同で,デジタル化した19世紀の新聞100万ページを提供するウェブサイトをスタートすることを発表した(E322 [248],CA1577 [249]参照)。このプロジェクトは英国の継続教育機関(FE)と高等教育機関(HE)をターゲットとしており,JISCからの助成金により,全てのFEとHEは無料でサービスを利用できるようになる。デジタル化の対象となったのは全国紙に加え,スコットランド,ウェールズ,北アイルランドの地方紙等をあわせて46紙であるが,これにより現在まで歴史の陰に隠れてきた資料の存在が明らかになり,19世紀の研究に資するという。
このような所蔵資料のデジタル化・保存・提供のほか,所蔵する豊富な雑誌のバックナンバーを利用して,出版社のバックナンバーデジタル化を代行するサービスも2007年1月より開始している(E590 [250]参照)。このサービスを利用することで,出版社はデジタル化の対象となる雑誌を収集するコストを節約できる上,BLの専門スタッフの技術を借りたデジタル化作業が可能になる。このサービスを利用した出版社の1つ,Emerald社は2007年9月,商学,経営学,図書館情報学,材料化学,工学分野の雑誌のバックナンバーのデジ タル化を完了したことを発表した。全120誌から5万件を超える論文がPDF形式でデジタル化され,古いものでは1800年代の雑誌も含まれているという。Emerald社は,今回作業を終えた資料を2008年初頭から提供する予定であると発表している。
『図書館を再定義する』で掲げられたBLのミッションは,「人々が知識を高めて,人生を豊かにする手助けをすること(Helping people advance knowledge to enrich live)」である。資料のデジタル化はミッションを実現するための重要な手段の一つであるが,戦略の公表から2年,BLは着実に成果を積み上げている。
Ref:
http://www.bl.uk/news/2005/pressrelease20051104.html [251]
http://www.bl.uk/news/2007/pressrelease20070103.html [252]
http://www.bl.uk/news/2007/pressrelease20070813.html [253]
http://www.bl.uk/news/2007/pressrelease20070905.html [254]
http://www.bl.uk/news/2007/pressrelease20071005.html [255]
http://www.bl.uk/news/2007/pressrelease20071022a.html [256]
http://www.bl.uk/collections/britishnewspapers1800to1900.html [257]
CA1577 [249]
E322 [248]
E349 [246]
E403 [48]
E581 [247]
E590 [250]
国立教育政策研究所は2006年度の調査研究事業として,社会教育施設におけるITの活用状況などについて,都道府県立図書館を含む社会教育施設を対象に実態調査を行い,その結果を『インターネットを活用した研究セミナー等に関する調査研究報告書』としてまとめ,ウェブサイト上で公表している。この報告書の第2章「社会教育施設におけるITの活用状況等に関する調査」の概要では,(1)コンピュータの設置状況等,(2)ITを活用した生涯学習に関する指導体制,(3)ITを活用した生涯学習に関する講座等の実施,(4)コンピュータの設置に関する意識(希望),について都道府県立図書館,都道府県立博物館,都道府県立生涯学習センター,市町村立公民館,政令市立公民館に尋ねた結果を詳しく紹介している。なお都道府県立図書館では,対象となった59館中58館から回答があったという。
(1)に対する回答によると,回答した全ての都道府県立図書館に「利用者の情報検索・閲覧用」のコンピュータがあり,さらに全体の82.8%の館に,施設利用者が利用できるインターネットに接続されているコンピュータが設置されている。また,(2)への回答によると,回答した都道府県立図書館の全職員数に占める,IT活用における指導・助言が可能な職員数の割合は26.1%であった。また,ITの活用における講師・助言者等に外部人材を活用している館は全体の29.3%であるという。(3)への回答によると,ITを活用した生涯学習に関する講座を実施している都道府県立図書館は全体の50%で,講座の内容で最も多かったのが,インターネットや電子メールの使い方などの基本操作となっている。図書館に特徴的な講座として,「図書館資料の検索方法」や「音訳・点訳のための講座」等を設けているところもあった。ITを活用した生涯学習に関する講座等が「ない」と答えた都道府県立図書館で,その理由としてもっとも多く挙げられたのが設備の古さで,これが全ての回答の44.8%を占めた。そのほか講師等の人材不足(27.6%),予算不足 (17.2%)と続いている。
「社会教育施設におけるITの活用状況等に関する調査」は,「IT改革戦略」(平成18年1月IT戦略本部決定)に準じた施策の参考とする目的で実施されているが,「IT改革戦略」では,「生涯を通じた豊かな生活」を実現するための方策の1つとして,「図書館を始めとする様々な公共施設の情報化」,「ITを活用した学習等をサポートする人材の配置」,「ITに通じた図書館司書の育成」を挙げている。全ての人に平等に開かれた,情報拠点としての図書館の役割への期待は小さくなく,日本における「図書館とIT」の今後に引き続き注意していく必要があるだろう。
Ref:
http://www.nier.go.jp/jissen/chosa/houkokusyomokuji18.htm [259]
E353 [260]
E692 [261]
E699 [262]
2007年10月23日,米国連邦議会上院において,「2008年9月30日に終了する歳出年度における米国連邦労働省,保健社会福祉省,教育省および関係機関に対する予算措置,ならびにその他の目的に関する法律(FY08 Labor- HHS Bill)」が,賛成多数により可決された。本法案は2007年7月13日に下院に提出され,7月19日には賛成多数で可決され,引き続き上院歳出委員会で審議が進められていたものである。
本法案では,国立衛生研究所(NIH)の助成を受けた全ての研究者を対象に,「査読を経て出版社に受理された著者最終稿の電子版を,米国国立医学図書館(NLM)が運営する“PubMed Central”(E096 [263]参照)に登録し,掲載誌の公式刊行期日から12か月以内に一般公開すること」をNIHの所長に求める条項が盛り込まれた。
公的助成研究のパブリックアクセス化への動きは2003年ごろから表面化している。2004年7月には下院歳出委員会から勧告(CA1544 [264]参照)があり,NIHは2005年5月に「パブリックアクセス方針」を示し,NIHの研究助成を受けた研究者に対し,PubMed Centralへの自発的な研究成果の登録と公開を呼びかけている。だが実際に登録された論文の割合は,2005年の段階で約3.8%にとどまり(CA1600 [265]参照),NIHのパブリックアクセスワーキンググループ,NLMの評議会や下院歳出委員会からは,研究成果の登録や公開の義務化を推進する声が高まっていた。
一方,パブリックアクセス方針に反対する出版社側も,学術情報流通への政府の干渉に反対する団体“PRISM”を2007年8月に結成し,ロビー活動などを通じて,パブリックアクセス方針の義務化を阻止する運動を展開していた。歳出委員会での議決を前にした10月19日には,強力なロビー活動を受けた上院議員から,研究成果の登録義務化条項を削除する修正案が提出された。このような動きに対し,米国図書館協会(ALA)や納税者アクセス同盟(ATA)などから,修正案を反映しないように上院議員に請願するよう呼びかけが行われた。
本法案は今後,修正点に関する下院とのすり合わせ,大統領の署名を経て,法律としての効力が発生するが,本法案には拒否権発動の可能性が取りざたされており,実際に法律化されるかどうか不透明な情勢である。法律化の可否を含め,今後の動向が注目される。
Ref:
http://thomas.loc.gov/cgi-bin/bdquery/z?d110:HR03043: [121]
http://www.senate.gov/legislative/LIS/roll_call_lists/roll_call_vote_cfm.cfm?congress=110&session=1&vote=00391 [266]
http://frwebgate.access.gpo.gov/cgi-bin/getpage.cgi?position=all&page=S13161&dbname=2007_record [267]
http://blogs.openaccesscentral.com/blogs/bmcblog/entry/mandate_for_open_access_to [268]
http://www.taxpayeraccess.org/nih/2007senatecalltoaction.html [269]
http://blogs.ala.org/districtdispatch.php?title=fight_continues_for_public_access_to_nih [270]
http://digital-scholarship.org/digitalkoans/2007/10/21/text-of-the-inhofe-amendments-that-affect-the-nih-open-access-mandate/ [271]
http://www.earlham.edu/~peters/fos/2007/10/urgent-action-need-to-support-nih-bill.html [272]
http://www.taxpayeraccess.org/media/release07-1024.html [273]
http://acrlblog.org/2007/10/27/open-access-passes-in-the-senate/ [274]
http://www.earlham.edu/~peters/fos/2007/10/oa-mandate-at-nih-passes-senate.html [275]
http://www.libraryjournal.com/info/CA6494533.html#news1 [276]
CA1544 [264]
CA1600 [265]
E096 [263]
2007年5月7日,インドネシアのバリで,第15回アジア・オセアニア国立図書館長会議(CDNLAO)が開催された。この会議では,CDNLAOの将来戦略などに関して討論が行われたほか,各国の国立図書館の動向および自国の最新の図書館事情についての報告(カントリーレポート)がなされた。『カレントアウェアネス-E』では2006年7月から12月にかけて,2006年のCDNLAOで報告されたカントリーレポートを国別に紹介しているが,その後の1年間の主な変化について,今号から数回に分けて紹介していきたい。
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オーストラリア
オーストラリア国立図書館は2006年末,新しい書庫に大規模な資料移転を行った。また電子情報資源について,全国の図書館が同一の契約内容で利用できるナショナルライセンス(CA1438 [277]参照)の取り組み“Electronic Resources Australia(ERA)”を進めており,2007年10月現在で9つのデータベースが対象となっている。2007年には情報技術アーキテクチャに関するレポートを作成し,今後のデジタルサービスの方向性を定めている。このほか,著作権の消滅した新聞のデジタル化を開始したこと,音楽資料提供サービス“MusicAustralia”(CA1575 [278]参照)で民間企業と連携して視聴・購入も可能としたこと,バーチャルレファレンスサービス“AskNow” (E519 [279],E565 [141]参照)でインスタントメッセージング(IM)を試行し好評を博したこと,などが報告されている。
また全国的には,オンラインでの資料・サービスの提供が拡大していることにより,多数の研究図書館で,来館利用者が近年減少していると報告されている。一方で,公共図書館の来館利用者は,人口増加率と同水準で増加しており,依然として多いという。
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カンボジア
カンボジア国立図書館が編纂を進めていたカンボジア関連資料“Cambodiana”(E526 [280]参照)の目録が2006年末に刊行され,同館のウェブサイトでも検索できるようになった。“Cambodiana”については,フランス政府やシンガポール国家図書館委員会などの支援を受け,原資料の保存やデジタル化の取り組みも行われている。また出版業界との協同による出版目録“Books in Print”が初めて刊行されるなど,書誌情報の整備・提供も進展してきている。
また同館は各図書館や関連団体と連携しての読書推進プログラム,情報リテラシープログラムなども積極的に実施している。ユネスコが無償で提供している図書館システム“WINISIS”を利用した資料の貸出も始まっている。資金不足の中,利用者に評価されるサービス,国立図書館としての十全な役割の遂行を目指し,たゆまぬ努力が続けられている。
なお,逐次刊行物へのISSN付与の仕組みと法定納本制度については,2007年中に法制化される見通しであるという。
Ref:
http://www.nla.gov.au/lap/cdnlao2007.html [33]
http://www.ndl.go.jp/jp/publication/geppo/pdf/geppo0708.pdf [281]
http://www.nla.gov.au/lap/documents/cdnlao2007aust.doc [282]
http://www.nla.gov.au/pressrel/2006/humewarehouse.html [283]
http://www.nla.gov.au/nlp/index.html [284]
http://era.nla.gov.au/ [285]
http://www.nla.gov.au/dsp/documents/itag.pdf [286]
http://www.musicaustralia.org/ [287]
http://www.asknow.gov.au/about-us.html#IM [288]
http://www.nla.gov.au/lap/cambodia07_000.rtf [289]
http://carnetsdasie-pp.com/ [290]
CA1438 [277]
CA1575 [278]
E519 [279]
E526 [280]
E565 [141]
共有のネットワーク越しに,高性能コンピュータを使って行われる新しい形態の学術・研究―コンピュータを利用した大量のデータ解析,主題別リポジトリやWiki,ブログなどでの最新の研究成果・アイデアの交換など―が,近年注目を集めている。デジタルコンテンツの入手可能性の拡大が産み出した,このような新しい学術・研究は「サイバースカラシップ(cyberscholarship)」あるいは“e-scholarship”などと呼ばれ,米国では全米科学財団(NSF)や米国学術団体評議会(ACLS)などが,また英国では情報システム合同委員会(JISC)が中心となって,自然科学,人文科学,社会科学など各分野でどのような貢献を果たすのか,またその課題は何か,などについて調査・研究を行っている。
このような中,2007年4月に米国アリゾナ州フェニックスで,NSFとJISCの共催によるワークショップ「学術コミュニケーションの将来:サイバースカラシップのためのインフラ構築」が開催された。このほど公開された報告書によると,このワークショップは,2006年12月にACLSが,また2007年3月にNSFが刊行した「サイバーインフラストラクチャ(cyberinfrastructure)」に関するレポートを基盤とし,サイバースカラシップを促進するためのインフラ構築のための目標とその課題を抽出し,また今後のロードマップについて議論するものであった。
このワークショップでは「データが主導する科学・学術(data-drivenscience and scholarship)」「技術」「組織」「変わりゆく学術コミュニケーションの世界」の4つがテーマとして掲げられた。デジタルコンテンツを可及的速やかに収集・管理・保存する必要性を改めて共通認識とするとともに,その技術的な基盤として標準やアプローチを共通化すること,国内のレベル・国際的なレベル双方で協同を進めること,科学者・技術者・人文科学研究者などが協同して学際的にインフラ構築に取り組むことなどの必要性が提起された。そして,2015年までにインフラ構築を終えるべく,向こう7年間のロードマップが提案され,最初の3年間は一連のプロトタイプの開発・テストに焦点を当て,残りの4年間で協調的なシステム・サービスの導入を行うという計画が示された。
またワークショップでは,英国におけるJISC,オランダにおけるSURFのように,サイバーインフラに関する国内の協同を進める単一の組織が存在していない米国に対し,NSF,博物館・図書館情報サービス機構(IMLS),全米人文科学基金(NEH),米国衛生研究所(NIH),米国議会図書館(LC)といった政府系機関による協同委員会の構築が推奨された。これらの諸機関が,今後どのように活動を展開していくのか注目される。
Ref:
http://www.sis.pitt.edu/~repwkshop/ [292]
http://www.sis.pitt.edu/~repwkshop/NSF-JISC-report.pdf [293]
http://www.nsf.gov/dir/index.jsp?org=OCI [294]
http://www.nsf.gov/pubs/2007/nsf0728/nsf0728.pdf [295]
http://www.acls.org/cyberinfrastructure/ [296]
http://www.acls.org/cyberinfrastructure/OurCulturalCommonwealth.pdf [297]
http://www.jisc.ac.uk/whatwedo/programmes/programme_einfrastructure.aspx [298]
英国図書館・情報専門家協会(CILIP)の機関誌“UPDATE”の2007年10月号に,ハダースフィールド大学図書館のシステム管理者であるパターン(Dave Pattern)氏による“Are you happy with your Opac?(あなたのOPACに満足していますか?)”という記事が掲載された。パターン氏は,本のカバーの色で検索するOPACをブログで発表するなど,次世代のOPACシステムの考案に熱心に取り組んでいる1人であるが(E602 [299]参照),このほど自身が運営しているブログ“Self-plagiarism is style”を利用して,図書館員に対し自館のOPACへの満足度調査を行った。“UPDATE”に掲載された記事の内容は,ブログ内で行われたこの調査の結果を元にしている。なお,調査は2007年3月25日から2007年4月13日にかけて,ブログ内での私的な調査として実施され,英米をはじめ,レバノンや中国など世界中から全729件の回答が寄せられたという。
今回の調査から,図書館員たちが自館・他館のOPACに対して抱いている感想の一端を垣間見ることができる。例えば,
といったことである。
いくつもの検索エンジンやウェブサイトがその機能を洗練し,利便性や新規性を競っている昨今,OPACの質を向上させることは,図書館が時代についていくためにも,また図書館の存在をアピールしていくためにも必要なことだと言えよう(CA1622 [300]参照)。今回の調査のようにOPACの自己評価といった取り組みが草の根の図書館員によって行われ,世界中の図書館員が個人としてそれに協力したことは注目に値するのではないだろうか。
Ref:
http://www.cilip.org.uk/NR/exeres/CC89E0D5-77DF-44E2-989E-98D76B809B77 [301]
http://www.daveyp.com/blog/index.php/archives/category/opac-survey/ [302]
E602 [299]
CA1622 [300]
文部科学省に設置されている「これからの博物館の在り方に関する検討協力者会議」が,報告書『新しい時代の博物館制度の在り方について』をまとめ,2007年6月に公表した。
「博物館」とは教育基本法(平成18年12月22日法律第120号)および社会教育法(昭和24年6月10日法律第207号)の精神に基づき,博物館法(昭和26年12月1日法律第285号)に従って設置される施設で,図書館や公民館とともに,教育基本法第12条で「社会教育施設」として位置づけられている。報告書では,博物館の置かれている現状とその課題を分析するとともに,改善の方向性について,教育基本法第3条でうたわれている「生涯学習」理念との関連を含め,その方向性を模索し,基本指針を明確化している。
今日の博物館においては,いわゆる博物館(登録博物館・博物館類似施設・博物館相当施設)の数,入場者数とも増加し,学芸員資格の取得者数も毎年約1万人以上に達するとしている。しかし報告書では,公立博物館における資料費の減少や少ない学芸員配置,指定管理者への移行などの経営環境の厳しさ,博物館の形態・ニーズの多様化に伴う博物館類似施設・博物館相当施設の増加と博物館登録制度の形骸化,取得が容易な学芸員の養成課程に関する改善・充実の必要性,生涯学習社会の実現に向けた博物館制度の再構築の必要性,といった課題を指摘している。
これらの現状や課題を踏まえ,今後の博物館制度について,『「伝えて,集める」博物館の基本的な活動に加えて,市民とともに「資料を探求」し,知の楽しみを「分かちあう」博物館文化の創造』をキーフレーズに,基本指針の明確化を図っている。具体的には「資料」の範囲の見直しと連動した博物館の範囲の再定義,登録基準や登録申請資格の拡大など博物館登録制度の見直し,登録後の第三者機関による審査制度の導入検討,学芸員養成制度の見直しなどが取り上げられている。とりわけ学芸員養成制度については,
の4項目が検討課題として掲げられている。さらに今後の検討項目として,現職学芸員に対する研修制度の充実,上級学芸員資格の導入が取り上げられている。
現在,中央教育審議会生涯学習分科会制度問題小委員会において,生涯学習法制に関する見直しが進められており,博物館法については本報告書を基に議論が進められている。同様に図書館法も,2006年3月に公表された「これからの図書館像」(E478 [304]参照)を基に同小委員会で議論が進められており,2007年9月3日には小委員会における各委員の意見をまとめた「制度問題小委員会における検討状況について(案)」が公表されている。教育基本法にうたわれている「生涯学習」概念の具体化に向けた,今後の「社会教育」像のありかたがどのように示されるのか,今後の議論が注目されよう。
Ref:
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shougai/014/toushin/07061901.pdf [305]
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shougai/014/index.htm [306]
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S26/S26HO285.html [307]
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H18/H18HO120.html [308]
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo2/siryou/006/07070410/004.htm [309]
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo2/index.htm [310]
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo2/siryou/006/07090313/001.htm [311]
E478 [304]
米国,EUなどでは近年,「ネットワークの中立性」をめぐる議論が盛んになっている。特に米国では,米国図書館協会(ALA)が積極的に擁護活動を行うなど,図書館界にも関わりのあるテーマとして認識されている。日本でも,総務省が「ネットワークの中立性に関する懇談会」を設置し,2006年11月から2007年9月まで8回に渡って会合を開き,議論を重ねてきた。この懇談会には「新しい競争ルールの在り方に関する作業部会」と「P2Pネットワークの在り方に関する作業部会」の2つの作業部会が置かれており,より具体的な議論が交わされてきた。このほど,これらの一連の会合での議論が報告書としてまとめられ,公表された。
本報告書ではまず,海外における議論も踏まえ,ネットワークの中立性を論じるための基本的な視点についてまとめている。ネットワークの中立性が保持されているとは,(1)消費者がネットワーク(IP網)を柔軟に利用して,コンテンツ・アプリケーションレイヤーに自由にアクセス可能であること,(2)消費者が法令に定める技術基準に合致した端末をネットワーク(IP網)に自由に接続し,端末間の通信を柔軟に行うことが可能であること,(3)消費者が通信レイヤー及びプラットフォームレイヤーを適正な対価で公平に利用可能であることという3つの要件を満たしたネットワークが,関係する事業者により維持・運営されている状態であるとし,この状態の確保のためには,「ネットワークのコスト負担の公平性」と「ネットワーク利用の公平性」の2つの視点から課題の検討を行う必要があることを確認している。さらに,検討の際には,依然としてボトルネック設備(あるサービスを供給するのに不可欠だが,投資額が大きいなどの理由で,整備が一部の事業者に限られてしまうような設備)を有するドミナント事業者が存在しているという市場特性を十分意識する必要があるとしている。
以上のようにネットワークの中立性を論じるに当たっての基本を押さえたうえで,報告書は各論の論点をまとめている。まず,ネットワークのコスト負担の公平性が取り上げられている。具体的には,インターネットサービスプロバイダ等による帯域制御のあり方や,リッチコンテンツを配信するコンテンツプロバイダ・帯域を占有しているヘビーユーザー等への追加課金の是非について課題を整理している。次に,ネットワーク利用の公平性に関する論点を取り上げている。特に,ドミナント事業者が次世代ネットワークの構築を推進している現状において,こうした事業者等による市場支配力の濫用を防止するためのドミナント規制(指定電気通信設備制度)は,どのようなあり方が望ましいのか検討を加えている。なおドミナント規制に関わる議論については,補論を設けてさらに具体的に検討を加えている。最後にこれまでの論点を踏まえ,ネットワークの中立性を確保するための検討ロードマップを提示し,望ましい政策展開の方向性についてまとめている。
ネットワークの中立性についての議論は,日本では諸についたばかりである。本報告書でも,活動の第2フェーズへの速やかな移行が必要であると述べられている。今後の展開に引き続き注目していく必要があるだろう。
Ref:
http://www.soumu.go.jp/s-news/2007/070920_6.html [312]
http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/chousa/network_churitsu/index.html [313]
日本政府は2007年9月28日,閣議決定を経て,「障害者の権利に関する条約(Convention on the Rights of Persons with Disabilities)」に署名を行った。
同条約は,「すべての障害者によるあらゆる人権及び基本的自由の完全かつ平等な享有を促進し,保護し,及び確保すること並びに障害者の固有の尊厳の尊重を促進する」(第1条)ことを目的としており,2006年12月に第61回国際連合総会において採択されたものである。2007年10月1日時点で,日本を含む117か国が署名を行っている。
同条約では,「障害者がすべての人権及び基本的自由を完全に享有することを可能とするに当たっては,物理的,社会的,経済的及び文化的な環境,健康及び教育並びに情報及び通信についての機会が提供されることが重要である」(前文(v))として,個人の尊厳・自律・自立の尊重,差別の禁止,多様性の尊重,社会への完全・効果的な参加と受け入れ,機会の均等などとともに,施設及びサービスの利用を可能にすることにも力点が置かれている。とりわけ情報サービスの利用可能性の保障については,ユニバーサルデザインや障害者に適した新たな技術の研究・開発及び促進(第4条の1(f)(g)),情報,通信その他のサービスの利用可能性の確保と利用の促進(第9条の1,2),様々な種類の障害に相応した様式及び技術による,一般公衆向けの情報の,適時で追加費用を伴わない提供(第21条(a)),民間の団体やマスメディアに対する,障害者にとって利用可能な情報及びサービス(インターネットによるものを含む)の要請・奨励(第21条(c)(d))など,数多くの条項で触れられており,その重要性が強調されている。さらに図書館は,障害者のアクセスを確保するために条約締約国がすべての適当な措置をとる「文化的な公演又はサービスが行われる場所」(第30条の1(c))の例に挙げられている。
同条約に関してはこの後,国会による承認,関連する国内法規の整備等のプロセスに進むことになる。図書館界においても,このプロセスを注視しつつ,障害者について改めて考えることが求められよう。
Ref:
http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/h19/9/1175621_812.html [314]
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinken/index_shogaisha.html [315]
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/treaty/shomei_32.html [316]
http://www.un.org/disabilities/ [317]
http://www.un.org/disabilities/default.asp?id=61 [318]
国立国会図書館(NDL)は2007年10月15日,日本国内の複数のデジタルアーカイブを統合的に検索できるポータルサイト“PORTA”を一般公開した。
NDLでは2005年度から,国内のデジタル情報資源に対する総合的なポータルサイトとして,デジタルアーカイブポータル・プロトタイプシステムを構築・提供してきた。このプロトタイプシステムの検証成果をもとに,本格システムとして構築されたのがPORTAである。2007年10月現在で,近代デジタルライブラリー,NDL蔵書目録(和図書・和雑誌)・雑誌記事索引(2003年以降分),『カレントアウェアネス』などNDLのアーカイブやデジタルコンテンツ12種類に加え,青空文庫,国立公文書館デジタルアーカイブ,府省等デジタルアーカイブ,秋田県立図書館デジタルライブラリー,デジタル岡山大百科(岡山県立図書館)など協力機関のアーカイブ8種類,合計約800万件のデータが検索対象となっている。
PORTAでは,通常のキーワード検索に加え,フレーズや自然文から連想される語による連想検索,日本十進分類法(NDC)や国立国会図書館分類表(NDLC)のカテゴリーをたどって検索する分類検索といった検索機能を備えている。またキーワード検索時には,NDLの典拠データの検索結果とともに,オンライン百科事典“Wikipedia”のリンクが表示されるようになっている。このほか,検索結果からさらに関連するウェブサイトを検索できる機能や,当該のデータを閲覧した他の利用者が閲覧した他のデータを紹介する推薦機能も備わっている。
また無料のユーザ登録を行うことで,検索オプションの初期値やデザインなどを選択・設定・保存できるパーソナライズ機能,お気に入りのデータにコメントをつけて保存できるブックマーク機能などが利用できるようになる。NDLでは今後,外部システムへの検索機能提供などさらなる機能拡張や,検索対象の拡充を予定している。
Ref:
http://porta.ndl.go.jp/ [320]
国立国会図書館(NDL)は2007年10月17日,蔵書検索・申込システムである「NDL-OPAC」と,同館が所蔵する明治・大正期図書の本文画像をインターネット上で閲覧できるデータベース「近代デジタルライブラリー」との連携を開始した。
NDL-OPACで検索した資料の本文を近代デジタルライブラリーで閲覧できる場合,NDL-OPACの検索結果画面(書誌詳細表示画面)に近代デジタルライブラリーへのリンクが,新たに表示されるようになった。リンクをクリックすると,近代デジタルライブラリーの書誌情報画面が開き,そこから当該資料の目次や本文画像を確認することができる。
近代デジタルライブラリーは現在,約97,000タイトル(約143,000冊)を収載しており,今後も順次タイトル数を拡大していく予定である。
Ref:
http://opac.ndl.go.jp/ [323]
http://kindai.ndl.go.jp/ [324]
国際図書館連盟(IFLA)書誌分科会は2004年から,当該年の世界図書館情報会議(WLIC)開催国が含まれる地域の全国書誌編纂状況について調査を行い,その報告書を刊行している。2007年は南アフリカ共和国を含むアフリカ諸国を対象に調査が行われたが,このほど,その結果が報告書として刊行された。
今回の調査では,連絡先を確認できた44か国の機関に協力が依頼されたが,回答があったのはベニン,ボツワナ,ブルキナファソ,コートジボワール,ガボン,ガーナ,マダガスカル,セイシェル,タンザニア,チュニジアの10か国からであった。なお回答率の低さは,全国書誌を編纂していない国があること,質問書式が英語か仏語であったため,言葉が理解できないケースがあったこと,協力依頼の電子メールが届かなかったケースがあったこと等に起因するという。
回答を得た10か国の現状分析により,主に以下のような点が明らかになった。
各国による全国書誌の整備と国際的な連携をより推進していくためにも,世界各地の全国書誌の整備状況の実態を把握し,その情報を更新していくことは重要である。今回の調査は全国書誌の整備が比較的遅れている地域を対象としたものであり,改めて各国間の全国書誌整備状況の違いを確認することができたといえよう。
Ref:
http://www.ifla.org/VII/s12/pubs/Survey-Africa-report.pdf [325]
http://www.ifla.org/VII/s12/annual/sp12.htm [326]
韓国では2007年9月12日から13日まで,文化観光部と国立中央図書館が主催する第1回の「大韓民国図書館フェスティバル」が,ソウルで開催された。これは,2007年を図書館発展の一大転機となる元年と位置付け,21世紀の知識情報社会を牽引する図書館の意義と役割とを国民に伝えることを目的に開催されたものであり,2007年で第44回となる韓国図書館大会(10月,済州で開催)とは別個のものである。
このフェスティバルのテーマは「全世界に小さな図書館」であった。「小さな図書館」とは地域密着型の小規模読書施設(文庫なども含む)のことで,国立中央図書館では2004年から,全国の邑・面・洞(日本で言えば郡・市・特別市の区の下位にある町・村・大字などに相当する行政区分)に最低1か所以上作るべく,民間とも協同して政策を推進している。開幕式で,クォン・ヤンスク大統領夫人が祝辞とともに,身近にあり誰もが気軽に行ける小さな図書館を増やし,知識と情報にアクセスできるようにすることの重要性を訴えかけたほか,会場には小さな図書館のモデルハウスも設置された。またこのフェスティバルと連動して,小さな図書館を利用した子どもとボランティアメンバー向けの「小さな図書館文化・体育探訪プログラム」や,有識者・政策関係者が小さな図書館の持続可能な発展方法について討論する「小さな図書館ワークショップ」も開催されている。
このフェスティバルには,国立中央図書館のほか16の市・道の代表図書館,すでに設立された小さな図書館,各地の子ども図書館や民間のプロジェクトによる「奇跡の図書館」(CA1504 [330]参照),政府機関の資料室,外国の大使館,障害者図書館・障害者関連団体,デジタル化関連団体,出版社など合計86機関が参加し,あわせて108の室内展示ブース,53の屋外展示テントが設けられた。会場では,国立中央図書館が所蔵する古書・貴重書の影印本の展示や,韓国点字図書館による点字図書の紹介,書籍の即売会や作家のサイン会・講演会,野外での舞踊・アンサンブルなども行われた。
なお,このフェスティバルは継続して開催される予定であり,来年度の第2回は「未来のデジタル図書館」がテーマとされている。
Ref:
http://event.naver.com/2007/09/libraryevent/ [331]
http://www.nl.go.kr/notice/board_info/view.php?bbs=board_info_clob&no=418 [332]
http://www.nl.go.kr/notice/board_info/view.php?bbs=board_info_clob&no=419 [333]
http://www.nl.go.kr/notice/board_info/view.php?bbs=board_info_clob&no=420 [334]
http://www.president.go.kr/cwd/kr/archive/archive_view.php?meta_id=report_data&id=0155ef6463dafe62bff8b3cd [335]
CA1504 [330]
大手学術出版社のElsevier社は2007年9月7日,がん情報・治療情報に関するポータルサイト“OncologySTAT”の開設を発表した。OncologySTATは根拠に基づく(evidence-based)最新のがん情報や関連ニュースを,がん研究者やがん医療従事者などの専門家に統合的な形で無償で伝達し,世界のがん治療・がん予防に貢献することを目的として掲げている。
OncologySTATでは,以下のコンテンツがテキストファイルやポッドキャスト,動画により提供される。
OncologySTATの運営にはスポンサーからの広告収入や資金提供のほか,教育助成金が充てられる。ただし各スポンサーや学協会からは独立して運営すると明記されている。利用にあたっては事前登録を要し,各コンテンツへのアクセスにはIDとパスワードの入力が求められる。また利用条件には,各コンテンツの著作権をElsevier社が保有すると明記されており,著作権法の範囲内での利用が求められている。私的利用以外の複製,ロボットによるコンテンツの自動ダウンロードやインデクシング,商業利用などは禁止されている。
このOncologySTATについては,複数のメディアやブログがオープンアクセスや電子ジャーナルの講読契約との係わりから論評している。またNew York Times紙はElsevier社幹部の話として,将来的には神経学,精神医学,心臓病学,感染症学などの分野に特化した同様のポータルサイトを開設する可能性がある,と伝えており,今後の動向や展開が注目されている。
Ref:
http://www.oncologystat.com/ [337]
http://www.oncologystat.com/about/oncologystat/index.html [338]
http://www.oncologystat.com/about/terms/index.html [339]
http://www.elsevier.com/wps/find/authored_newsitem.cws_home/companynews05_00727 [340]
http://digital-scholarship.org/digitalkoans/2007/09/10/elsevier-experiments-with-free-ad-sponsored-access-for-oncologists/ [341]
http://digital-scholarship.org/digitalkoans/2007/09/10/a-closer-look-at-oncologystat-elseviers-version-of-open-access/ [342]
http://www.earlham.edu/~peters/fos/2007/09/elsevier-provides-free-online-access-to.html [343]
http://www.nytimes.com/2007/09/10/business/media/10journal.html [344]
CA1213 [336]
Googleは2007年9月6日,書籍検索サービス“Googleブック検索”に,情報の整理・検索に役立つ新機能を追加したと発表した。
その第一は,ウェブ上に自分の「図書館」を作成し,そこにGoogleブック検索で提供されている,自分のお気に入りの書籍を登録することができる「マイライブラリ」機能である。各々の書籍には,ラベルをつけたり,星印(最大星5つ)で評価したり,レビューを書いたりすることができ,他の利用者もこれを見ることができる。また,マイライブラリに登録されている書籍だけを対象とした全文検索も可能である。このほか,ISBNを指定してのマイライブラリへのインポートや,XML形式でのエクスポート機能,RSSでの配信機能も備わっている。なお,このマイライブラリの利用には,利用者登録が必要となっている。
第二に,「人気のある引用」として,当該の書籍のどのフレーズがよく引用されているか,またそのフレーズをどのような書籍が引用しているかを見ることができる機能が追加されている。
そして第三に,全文が公開されているパブリックドメインの資料について,枠線つきで画像をクリップできる機能が追加されている。クリップした部分に対しては一意に特定できるURLが生成され,Googleが提供している個人用のオンラインブックマークサービス“Google Notebook”に保存したり,同じくGoogleが提供しているブログサービス“Blogger”の記事で参照したりすることができるようになっている。これらを使って,どの書籍のどの部分に関心を持ったかということを共有することができる。
なお2007年9月18日時点では英語版のみであるが,検索結果の一覧表示を,検索語と関連する語(“Japan”の場合, “Geology/Societies, etc”“East Asia”“China”“History”などが候補とされている)でさらに絞り込む機能も追加されている。
Ref:
http://books.google.co.jp/ [345]
http://www.google.com/intl/en/press/annc/booksearchlibrary.html [346]
http://books.google.com/googlebooks/mylibrary/ [347]
http://booksearch.blogspot.com/2007/09/my-own-library-on-book-search.html [348]
http://booksearch.blogspot.com/2007/09/dive-into-meme-pool-with-google-book.html [349]
http://booksearch.blogspot.com/2007/08/share-and-enjoy.html [350]
OCLCが運営している図書館職員向けオンライン学習コミュニティ“WebJunction”(E557 [351] ,E644 [352]参照)は2005年から,ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団の助成を受け,米国内の州立図書館と協同で「地方の図書館の持続可能性(Rural Library Sustainability:RLS)プロジェクト」と題する地方の小さな図書館のスタッフ向けのワークショップを各地で開催している。2007年6月,このワークショップの内容をオンラインで無料で受講できるコースをWebJunctionが開発し,プロジェクトを進展させている。
RLSは,地方の小さな図書館に特有の課題,とりわけ利用者向けのコンピュータ事業(E692 [353]参照)を運営・維持管理していくことについて,有益な情報,リソースを提供し持続可能性戦略を構築できるようにするとともに,フォーラムを開催して参加者同士が情報を共有したり交流したりできるようにするというプロジェクトである。
このうち,利用者向けのコンピュータ事業を持続可能なものとして運営していくための戦略としては,
の7つが不可欠であるとして,各々の領域でアクションプランを開発・遂行していけるよう,ワークショップやオンラインで講習が行われている。
またワークショップの参加者は,参加後にWebJunctionのウェブサイトで教材や他の図書館の優良事例を参照したり,他の参加者と意見交換を行うよう推奨されている。WebJunctionは,ウェブ上にこのような場所を提供することで,参加者の間に継続的なつながり・ネットワークを作り,孤独感を減らすことを企図しているという。さらに,州立図書館側でも,独自にブログや参加者用メーリングリストを作ってWebJunctionの新着情報を通知したり,1か月に1回,ウェブ上で情報共有・討議プログラムを開催したりしている,カンザス州立図書館のような例もある。
2007年9月12日に米国図書館協会(ALA)とフロリダ州立大学が公表した,2006/2007年度の公共図書館における利用者向けコンピュータ事業に関する調査報告“Libraries Connect Communities: Public Library Funding & Technology Access Study”では,73%の図書館が,コミュニティで唯一の,無料で利用者向けコンピュータを提供している場所であるという。地方の小さな図書館が,引き続きコミュニティの情報拠点であり続けるための活動に,WebJunctionは力を注いでいる。
Ref:
http://webjunction.org/rural [354]
http://data.webjunction.org/wj/documents/11147.pdf [355]
http://webjunction.org/do/DisplayContent?id=11132 [356]
http://webjunction.org/do/DisplayContent?id=16846 [357]
http://webjunction.org/do/DisplayContent?id=17662 [358]
http://www.ala.org/ala/ors/publiclibraryfundingtechnologyaccessstudy/finalreport.pdf [359]
E557 [351]
E644 [352]
E692 [353]
文部科学省はこのほど,公立図書館に勤務する司書有資格者の勤務実態や,司書・図書館職員の研修事例を収集・分析し,司書に求められる資質を育成するために望ましい研修や司書資格制度のあり方についてまとめた報告書『図書館職員の資格取得及び研修に関する調査研究報告書』を公表した。この報告書は,全5章で構成されており,巻末には参考資料として実際の調査で使用した各種アンケートフォームがついている。
第1章では調査の概要が簡潔にまとめられ,第2章以降が実態調査の報告となっている。第2章では公立図書館の運営形態や事業内容,図書館関連法制の動向,司書資格制度の現状等について,国や日本図書館協会(JLA)がこれまでにまとめた資料を収集・整理し,分析している。第3章では,公立図書館で働く司書有資格者を対象にしたアンケートの実施結果をまとめており,勤務形態,司書資格の取得経緯,業務内容の実態が分かる。また,司書資格が今の仕事に役立っていると思う点・役立っていないと思う点,今後の研修に望む科目等について現場の職員の意見が整理されている。第4章では公立図書館の設置主体である都道府県・市区町村の教育委員会に対し実施したアンケートをもとに,図書館の運営方針,人員配置方針,職員の資質向上に向けた行政の取り組み等について実態が報告されている。第5章では,都道府県・市区町村の教育委員会,都道府県立図書館,都道府県図書館協会,関連団体等に対して行ったアンケート調査の結果をもとに,全国で実施されている図書館職員・司書向けの研修事例を収集・分析している。特に先進的な研修事例についてはヒアリング調査も行い,研修の概要やプログラム,ねらい等を各研修事例ごとに整理している。これらの結果をもとに,今後の研修実施に向けての課題や工夫の凝らし方をまとめている。
文部科学省が設置している「これからの図書館の在り方検討協力者会議」(CA1621 [361]参照)では、2006年度は「時代の要請に応え得る司書の育成」をテーマに議論が交わされてきた。今回の報告書はこの議論を踏まえ,実際に研修や司書課程カリキュラムを見直すための基礎資料として作成されたものである。今後これをもとにして,どのように司書課程カリキュラムの再編等が具体化していくか,引き続き注目していく必要があるだろう。
Ref:
http://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/tosho/houkoku/07090599.htm [362]
http://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/tosho/index.htm [363]
CA1621 [361]
2007年8月19日から23日まで,世界図書館情報会議(WLIC):第73回国際図書館連盟(IFLA)年次大会が「未来のための図書館:進歩・発展・協力」をテーマとして,南アフリカ共和国ダーバンのインターナショナル・コンベンション・センター(ICC)で開催された。参加者は110か国以上から3,000名以上,そのうち1,400名近くが地元アフリカからの参加であった。日本からは,長尾真国立国会図書館(NDL)館長を団長とするNDLからの代表団6名を含む27名が参加した。中国からは100名,また昨年大会が開催された韓国からは80名の参加があった。
19日の開会式は,南アフリカの著名なストーリーテラーで作家・詩人のチーナ・ムショーペさんと子どもたちの司会により進められ,命がけでアパルトヘイトと戦ったオールビー・サックス憲法裁判所判事の基調講演は多くの参加者に感動をもたらした。
開会式の後,IFLAの機構改革に関するヒアリングが開かれ,事務の合理化と財政難のため部会の統廃合等をしたいとの提案について討論が行われた。
大会会期中は,90に近い公開セッションに加え,97機関が出展した展示会,80のポスターセッション等が行われ,大会前後には常任委員会等の役員会が開催された。また,15のサテライトミーティングも南アフリカや近隣の国で行われている。南アフリカ在住の日本人が中心のNPOによるブックモービルプロジェクトの紹介もあった。今回の大会参加者には,南アフリカの図書館に寄贈するため,児童書を持参することが呼びかけられ,多くの参加者が寄贈を行っている。アフリカンダンスなど民族性豊かな出し物が用意されたビーチ・パーティーや文化行事への送迎には,警備が立てられていた。
閉会式では,功労者,ニューズレターやポスターセッションの優秀者等が表彰され,2010年の世界大会は,オーストラリア・ブリスベンで開催されることが発表された。(2008年はカナダ・ケベック,2009年はイタリア・ミラノで開催予定)
閉会式後に開かれた評議会では,会費の値上げとIFLAが資金援助を受ける際の方針が提案されたが,出席者が定足数に足らず,後日郵送投票が行われることになった。今大会で,IFLA会長がアレックス・バーン氏(オーストラリア)からクラウディア・ラックス氏(ドイツ)に交代し,新旧の会長の挨拶が行われた。
22日には約60か国の参加による国立図書館長会議(CDNL)がICCで開催され長尾NDL館長が出席した。地域別の図書館長会議として新たにアラビア語圏の図書館長会議が発足したことなどが報告され,CDNLの将来計画について議論された。また同日,オランダ王立図書館及びオーストラリア国立図書館主催による「デジタルアーカイブと保存に関するアップデートセッション」というインフォーマルセッションも開催され,中井万知子NDL書誌部副部長がNDLの動向について発表した。
(報告:佐藤尚子)
Ref:
http://www.ifla.org/IV/ifla73/index.htm [365]
E671 [366]
図書館職員によるコンサート,人形劇の上演,俳句大会,詩人や作家による朗読会・・・,いずれも図書館ではしばしば見ることのできる光景かもしれない。だが,すべてストライキのパフォーマンスだとしたら・・・。
2007年7月26日,カナダ・バンクーバー公共図書館の職員組合“CUPE391”はストライキに突入し,バンクーバー公共図書館の本館と分館あわせて22館が閉鎖される事態となった。ストライキの主な争点は,賃金格差の解消,パートタイム職員・補助職員に対する雇用保障,業務の外部委託の是非であるが,バンクーバー市側との交渉は決裂し,8月17日に提出されたCUPE391の要求に対し,現在のところ市側からの回答はないという。
CUPE391は各図書館でピケを張っているが,現場では組合員による人形劇の上演,俳句大会,演奏会,おはなし会などのイベントが定期的に催され,携帯電話やノートパソコンによるレファレンスサービス,活動を支援する作家や詩人による講演会,バーベキュー大会,特別ゲストを招いた図書館職員によるチャリティコンサートなども開催されている。またピケの現場を綴った歌“Back on the Picketline”を作る,市側との交渉を望む心情を“Let’s talk(話し合おう)”という人文字で表現する,また閉鎖されている各分館を自転車で巡回するツアーを行うなど,自らの主張をアピールし,市民に理解を求めるための多種多様な活動が積極的に行われている。CUPE391は市長や図書館評議会向けの署名をウェブサイトに掲載し,市民に協力を呼びかけているほか,ブログばかりでなく,YouTubeやFlickrをも活用し,活動の様子を広く公開し,人々の目に幅広く触れるための試みも行っている。
なお,9月7日にCUPE391は市側から交渉再開に向けた書簡を受け取り,事態は打開へと動き出している。また閉鎖中の図書館のうち,学校図書館を併設している5館については,毎週火曜日に限り開館するとの合意を,バンクーバー市教育委員会と結んだとのことである。
Ref:
http://www.vpl.ca/ [367]
http://www.cupe391.ca/ [368]
http://web1.ala.org/ala/alonline/currentnews/newsarchive/2007/august2007/morevancouverstrike.cfm [369]
http://web1.ala.org/ala/alonline/currentnews/newsarchive/2007/july2007/vancouverstrike.cfm [370]
http://cupe391.ca/blog2/ [371]
http://cupe391.ca/blog2/?p=88 [372]
http://cupe391.ca/blog2/?p=100 [373]
http://cupe391.ca/blog2/?p=105 [374]
http://cupe391.ca/blog2/?p=108 [375]
http://www.fairnessforcivicworkers.ca/news [376]
http://www.fairnessforcivicworkers.ca/www/news/Youre_invited_to_a_b [377]
http://www.fairnessforcivicworkers.ca/www/news/Lets_talk_in_black_a [378]
http://www.fairnessforcivicworkers.ca/www/news/CUPE_picketers_relea [379]
http://www.flickr.com/photos/53803790 [380]@N00/sets
http://www.youtube.com/watch?v=e7LkxkQf7Yc [381]
http://www.fairnessforcivicworkers.ca/www/news/CUPE_Locals_and_Vanc [382]
「学習へのアクセス賞」は,ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団が,情報への自由で平等なアクセスを実現するための革新的な活動を行っている図書館や類縁機関に対し授与している,賞金100万ドル(約1.1億円)の賞である。例年,国際図書館連盟(IFLA)の年次大会でその年の受賞者が発表されているが,先日閉幕したIFLAダーバン大会で,2007年の同賞をオーストラリアのノーザンテリトリー図書館(Northern Territory Library;NTL)が受賞したと発表された。
オーストラリアの準州の1つノーザンテリトリーには,先住民が多く住み,人口のほぼ30%を占めている。彼らの居住区域は他地域から極端に孤立しており,インフラの整備が行き届いていないほか,医療,教育,就職率の水準が全国平均を下回っているという。こうしたギャップを埋めていく活動の1つとして,今回ゲイツ財団に高く評価された,遠隔地に住む人々に向けたNTLの取り組みがある。
NTLは,先住民の芸術や歌,オーラルヒストリーをデジタル化して保存しているデータベース“Our Story”を運営している。このデータベース構築には地域の人々が深く関わっており,彼らのICTスキルやICTリテラシーの向上に一役買っている。NTLは「図書館・知識センター(Libraries and Knowledge Centres;LKC)」という地域センターを22か所運営しているが,地域の人々はLKCのコンピュータを使って,Our Storyに自分たちの文化遺産を保存していく作業を通じ,ICTスキルを身につけている。ICTスキルを身につけた人は,LKCにスタッフとして雇用されるチャンスを得,そのようにして雇用されたスタッフが,新たに先住民の人々を教育するという循環ができている。
またOur Storyは,先住民の人々がICTスキルやICTリテラシーを身につける一助となっているだけでなく,彼らの誇りの源泉となり,さらには,Our Story目当てで図書館に足を運ぶことが,インターネットを通じた情報収集や読書など,他の教育機会に触れるきっかけともなっているという。
NTLはこうした活動が評価され,今回100万ドルの賞金を得たが,この賞金はLKCの図書館スタッフや図書館利用者の教育機会を拡大するために使うという。さらに,図書館の300台のコンピュータをアップグレードするため,マイクロソフト社がNTLに22万4千ドルを寄付する予定である。
Ref:
http://www.gatesfoundation.org/GlobalDevelopment/GlobalLibraries/Announcements/Announce-070820.htm [383]
http://www.ntl.nt.gov.au/ntl_home [384]
E210 [385]
E245 [386]
E366 [387]
E374 [388]
E559 [86]
2007年5月,OCLCが運営している図書館職員向けオンライン学習コミュニティ“Web Junction”(E557 [390],E644 [352]参照)が,図書館において,利用者向けのコンピュータ事業を運営・維持管理していくうえで必要とされる能力をリストアップし,刊行した。こうした能力を定義することで,図書館員が各々に足りないスキルを認識し,能力を獲得するための学習機会につなげることが目的である。
Web Junctionは能力を,次の3つのセクションに分類している。(1)「利用者支援のためのテクノロジー能力」は,公共のコンピュータを使用している利用者を,現場で直接支援するために必要となる能力,(2)「システム管理者のためのテクノロジー能力」は,コンピュータネットワークを構築し維持・管理するための能力,そして(3)「マネジメント能力」は,コンピュータ事業の運営に関する基本計画の策定,必要な資金の調達,広報活動などを行う能力である。さらに各セクションでは,3つの能力をそれぞれ構成している,より具体的な能力と,それが身に付いているかの指標となる知識・スキルを網羅的にリストアップしている。例えば(1)では,「インターネットとWWWの理解」・「URLの扱い方の理解」という能力に対し,それを実証するための指標として「WWWの歴史や発展についてよく知っている」・「利用可能なブラウザの種類とその使用方法を知っている」・「URLの構成パートを見分けられる」・「URLをコピー&ペーストしてブラウザに入力できる」・「必要な情報だけをウェブサイトからプリントアウトできる」など全部で9つの具体的な知識とスキルを挙げている。
現代の図書館サービスでは,あらゆる段階でコンピュータに関するスキルと知識が要求されている。とりわけ利用者向けコンピュータ事業に関して,利用者のニーズと新しいテクノロジーに遅れずに対応する能力と事業を確実に遂行していく能力が,図書館員には期待されている。
Ref:
http://www.webjunction.org/do/DisplayContent?id=15659 [391]
http://data.webjunction.org/wj/documents/16963.pdf [392]
E557 [390]
E644 [352]
2007年7月22日から24日にかけて,米国図書館協会(ALA)の出版部門の1つALA TechSourceと大学研究図書館協会(ACRL)の共催による「ゲームと学習と図書館に関するシンポジウム(Gaming, Learning, and Libraries Symposium)」がシカゴで開催された。テレビゲームとライブラリアンシップに関する第一線の研究者や図書館員たちが一堂に会し,図書館はテレビゲームを使って学習や教育をどのように支援できるかということについて議論を交わした。
アリゾナ州立大学のギー教授(James Paul Gee)による基調講演を皮切りにシンポジウムは開幕した。ギー教授は,貧富の差が読み書き能力に影響を与えるという古くからのリテラシー危機に加え,近年では,デジタルテクノロジーに触れる機会の差が,新しいメディアの製作,科学技術への精通,学術用語の学習などに影響を与えるという新しい形のリテラシー危機が起きているという指摘をした。そして,この危機にあって,テレビゲームが果たすことのできる役割や,図書館に求められている変化について講演を行っている。
3日間の期間中には,ギー教授のほか3名が基調講演を行い,さらに2人の特別ゲストスピーカーが講演を行っている。特別ゲストスピーカーの1人,ネイバーガー氏(Eli Neiburger)は先ごろ,図書館でテレビゲームのトーナメント戦やイベントを行えば利用者を増やせるのではないかというアイディアと実践の仕方を示した“Gamers…in the Library?! The Why, What, and How of Videogame Tournament for All Ages”と題された書籍をALAから出版しており,講演でも自身が技術管理者を務めるアナーバー(Ann Arbor)地域図書館で実際に行われているテレビゲームイベントを引き合いに出しながら,図書館でこのようなイベントを行う有効性について紹介した。
また,このシンポジウムでは全部で29のセッションが開かれた。セッションのテーマはテレビゲームを通じて児童に情報リテラシーを身につけさせる取り組みや,テレビゲームを通じて化学の面白さを児童に伝える取り組みなど,図書館によるテレビゲームを利用した学習支援に関するものが大半である。またそのうちの5セッションがオンライン上の仮想都市コミュニティ“Second Life”を利用した学習や教育方法を取り上げており,図書館の“Second Life”への注目ぶりが窺える。なお,すべての講演とセッションの概要が分かる資料や発表に使用された資料がシンポジウムのウェブサイトで公開されているほか,講演とセッションの様子はすべてデジタル録音され,これもウェブサイトで公開されている。
シンポジウムの終了後には,新しく“Gaming, Learning, and Libraries Symposium Network”というウェブサイトが立ち上げられ,テレビゲームと図書館に関わる様々な情報が共有できるようになっている。このテーマに対する関心と取り組みは継続しており,今後の展開が注目される。
Ref:
http://gaming.techsource.ala.org/index.php/Main_Page [395]
http://gaminglearningandlibraries.ning.com/ [396]
E636 [397]
国際図書館連盟(IFLA)は,児童・ヤングアダルト図書館分科会の調整により,一般大衆にサービスする図書館部会の全分科会の協同プロジェクトとして,「乳幼児への図書館サービスのガイドライン(Guidelines for Library Services to Babies and Toddlers)」を作成し,2007年8月にウェブサイト(IFLANET)で公開した。
このガイドラインは,乳幼児(満1歳までの“Babies”および1歳から3歳までの“Toddlers”)とその家族,さらには保育士などの介護者,教育者,医療専門家といった乳幼児に関わる専門家に対し,公共図書館が提供すべき図書館サービスについて指針を示すものである。全体は4つのセクションから構成されており,第1セクションではガイドライン制定の背景,目的,対象読者について,第2セクションでは児童図書館の使命,ニーズ,サービスの対象利用者,目標,資料と選書基準,環境,人的ネットワーク形成,広報, スタッフの育成,サービスの管理と評価,財源の獲得について,となっている。また第3セクションは乳幼児サービスの進捗状況を評価するためのチェックリスト,第4セクションは世界19か国の合計30以上の優良事例の紹介となっている。日本からは,浦安市立図書館,大阪府立中央図書館の事例が紹介されている。
全体を通じて,乳幼児の言語習得にとって,話しかけ,歌いかけ,読み聞かせることが重要であると家族や乳幼児に関わる大人たちすべてに訴えかけること,また図書館がそのような場所・環境を醸成していくことの必要性が繰り返し提示されている。そして,実施すべきサービスとして,乳幼児との対話を促進するような歌・絵本・ICTツールの提供,大人や専門家向けのワークショップ,他の専門家との連携,病院の待合室や家族教育センターなどへ出向いての読書・音読プログラムの実施などが挙げられている。また,障害を持つ乳幼児や,バイリンガル家庭など多言語環境にある乳幼児に配慮した図書館サービスの必要性に加え,図書館サービス基盤が脆弱な地方や,貧困・識字率が低い・親が多忙・核家族化といった問題を抱えている大都市部など,居住環境についても配慮する必要性が提起されている。
なお,IFLA児童・ヤングアダルト図書館分科会では過去に,「ヤングアダルト向け図書館サービスのガイドライン」および「児童図書館サービスのガイドライン」(E200 [399]参照)も作成,公開している。これらについては,井上靖代獨協大学准教授による日本語訳が,IFLANETに掲載されている。
Ref:
http://www.ifla.org/VII/d3/pub/Profrep100.pdf [400]
http://www.ifla.org/VII/s10/pubs/ChildrensGuidelines-jp.pdf [401]
http://www.ifla.org/VII/s10/pubs/guidelines-jp.pdf [402]
http://www.ifla.org/VII/s10/index.htm [403]
E200 [399]
2007年8月3日,イェール大学のカッシング・ホイットニー医学図書館(Harvey Cushing/John Hay Whitney Medical Library)とクライン科学図書館(Kline Science Library)が,BioMed Centralへのオープンアクセス・メンバーシップを打ち切ることを発表した。
BioMed Centralはピアレビューされた生物学・医学論文をオープンアクセス(OA)で刊行しており,出版費用は主に論文を投稿した研究者からの投稿料により賄われている。だがこのような刊行形態は研究者に金銭的負担を強いることから,研究者に代わり所属する学術・研究機関がBioMed Centralに会員登録することにより,研究者に代わり出版費用を拠出する「会員資格」(Open Access Membership)制度が設けられている。
イェール大学の発表によると,この制度に基づきイェール大学図書館は2005年度に4,658ドル(約55万円)を負担したが, 2006年度には請求金額が31,625ドル(約365万円)に跳ね上がったという。2007年度もすでに7月の時点で,29,635ドル(約345万円)の請求を受けており,さらに年度内に34,965ドル(約405万円)の追加負担が必要になる見込みであるという。この負担増を背景に,BioMed CentralのOAモデルは技術的には受け入れられるものであるが,長期的な収益をもたらすビジネスモデルの構築には失敗しており,持続可能でないと,イェール大学側は指摘している。一方で利害関係者が平等にコストを負担する,新たなビジネスモデルをBioMed Centralが提示すれば,出版費用の負担を再検討することにも言及している。
この発表に対しBioMed Centralは8月7日,同社が運営するブログ“BioMed Central Blog”で,イェール大学側の批判に対する反論を展開している。記事では,イェール大学に対する請求金額の増大は,同大学の研究者からの投稿論文数,および掲載論文数がともに年々増加しているからであり,BioMed Centralの成功を意味しているとする。また全体として論文数の増加によりOA出版のコストが増大していることを認めつつも,英国ウェルカム財団の調査報告書『科学研究出版の費用とビジネスモデル』(E196 [404],CA1543 [405]参照)を引用して,1論文あたりの出版コストは,商業出版よりもOA出版の方が低廉であることを指摘している。一方で現在のOA出版のコスト構造にも言及し,出版費用を全て図書館の負担とすると,OA出版に対する重大な障害となりうるものの,現在のところ他の資金源が存在しており,OA出版活動を進めてゆく一助となっていると述べている。またBioMed Centralに掲載している論文の約半数で,研究者自身が出版費用を負担している現状にも触れて,「会員資格」制度は学術・研究機関によるOA出版活動の普及支援であり,出版費用の負担が不要である商業出版誌と,公平な条件で競争できる機会をもたらすものでもあると指摘している。その上でOA出版に対する資金源を,多様なルートから持続的に確保していくために,各種研究助成ファンド,研究者,学術図書館などが協力して,長期的な収益をもたらすビジネスモデルの構築を目指していることを表明している。
Ref:
http://elibrary.med.yale.edu/blog/?p=495 [406]
http://www.library.yale.edu/science/news.html [407]
http://blogs.openaccesscentral.com/blogs/bmcblog/entry/yale_and_open_access_publishing [408]
http://www.biomedcentral.com/info/about/membership_jp [409]
E196 [404]
CA1543 [405]
「こんにちは!僕は世界中を旅してるんだよ!さあ僕を読んで!そしてどこかへリリースしてよ!」。こんなメッセージが添えられた本と,日本各地の喫茶店で,公園で,駅で,いたるところで出会える日が来るかもしれない。
2007年8月1日,本に世界を旅させる活動“Book Crossing”の日本公式サイト,ブッククロッシング・ジャパンが誕生した。Book Crossingは,Ron Hornbaker・かおり夫妻が,世界を旅するカメラの活動についてのウェブサイト“PhotoTag.org”にヒントを得て,2001年に米国でスタートさせた。いまや会員数は全世界で58万人弱,世界中を40万冊の本が旅している。なお,2007年8月28日現在,日本で会員登録している人の数は1,181人,61冊の本が日本国内を旅している。
本が旅をするとはどういうことだろうか。Book Crossingには“3R(Register:登録する・Release:リリースする・Read:読む)”という原則がある。本の最初の持ち主が,Book Crossingのウェブサイトへ会員登録・本の登録をしてID番号(BCID)を取得し,BCIDや冒頭のメッセージなどが記されたステッカーをダウンロード後,プリントアウトして本へ貼る。その後,その本を知人へ手渡したり,町のどこかへ置いてくるなどしてリリースする。次に本を手にした人はその本を読む。そしてその人は最初の“R”に戻って,登録作業をし,ステッカーのBCIDをBook Crossingのウェブサイトで検索して,その本の旅歴を知るとともに,自分の感想や本の現在位置を書き込んだりできる。そしてまた本はリリースされる。この3Rが循環するプロセスのなかで,本が人から人へ,場所から場所へ旅を続けていくのである。
現在のところ,ブッククロッシング・ジャパンからの会員登録が準備中であることもあって,同ウェブサイトから参加できる活動は限られているが,米国の本家Book Crossingでは以下のようなことが可能である。
ウェブサイト上で会員たちはさまざまな情報を共有でき,LibraryThingに代表されるような愛書家向けソーシャルネットワーキングサービス(E616 [242] 参照)の要素も,Book Crossingは備えている。また,リリース中の本を集めて置いておくBook Crossing Zoneと呼ばれる場所を設ける活動もあり,ブッククロッシング・ジャパンでも,書店や飲食店等に協力を呼びかけている。
Book Crossingの目標は,「世界全体を1つの図書館に(to make the whole world a library)」である。今後どれだけ活動が浸透し,その目標へと近づいていくのか注目される。
Ref:
http://www.bookcrossing.jp/ [410]
http://www.bookcrossing.com/ [411]
E616 [242]
米国議会図書館(LC)と全米人文科学基金(NEH)とが協同で実施している全米電子新聞プログラム(NDNP;CA1577 [249]参照)が,順調に進展している。
2007年3月,NDNPの成果を提供するウェブサイト“Chronicling America”のベータ版が,LCのウェブサイトで公開された。NDNPの目的は(1)歴史的価値のある新聞のデジタル化支援,(2)ウェブサイトを通じた成果物へのパブリックアクセスの促進,(3)デジタルリポジトリの構築による成果物の長期保存の3点であり,Chronicling Americaはこのうちの(2)(3)を実現するものである。
Chronicling Americaのウェブサイトでは,2005〜2007年のNDNP第一期の助成対象として選定された6機関がデジタル化した,1900〜1910年刊行の歴史的な新聞(2007年8月時点で約31万ページ分)を画像で見ることができる。また,同様にNEHの助成のもと,1982年から行われている全米新聞プログラム(USNP;CA1577 [249]参照)の助成で作成された,1690年から現在までの新聞のダイレクトリ(2007年8月時点で書誌情報14万件,所蔵情報90万件)も提供されている。
またChronicling Americaはウェブサイトに加え,OAIS参照モデルに基づく長期保存・データ提供を実現するためのデジタルリポジトリ機能も有している。D-Lib Magazine誌の2007年7/8月号には,このデジタルリポジトリ構築にあたりLCの担当チームが経験した,長期保存の脅威になりかねなかった4領域(メディア,ハードウェア,ソフトウェア,オペレータ)の欠陥・エラーについて考察した論考が掲載されており,失敗を乗り越えながら着実に開発を続けている様子がうかがい知れる。
なお2007年6月には,NEHからNDNP第二期(2007〜2009年)の助成対象として,カリフォルニア大学リバーサイド校など8機関を選定したことが発表されている。各機関は1880〜1910年に刊行された新聞をデジタル化事業を行うことになっており,このための助成金として合計約258万ドル(約3億円)が拠出されている。また2007年8月には,第三期(2008〜2010年)の助成対象として,1880〜1922年に刊行された新聞のデジタル化事業を行う機関の公募も始まっている。
NDNPによる新聞のデジタル化事業は,今後およそ20年をかけて段階的に拡大し,最終的には1836年から1922年までの間に各州・準州(territory)で刊行された歴史的価値のある新聞のデジタル情報源を構築することが目標とされている。この目標に向かって,NDNPは第二期,第三期と着実に歩みを進めている。
Ref:
http://www.loc.gov/ndnp/ [412]
http://www.neh.gov/projects/ndnp.html [413]
http://www.loc.gov/chroniclingamerica/ [414]
http://www.loc.gov/chroniclingamerica/about.html [415]
http://www.loc.gov/today/pr/2007/07-057.html [416]
http://www.loc.gov/today/pr/2007/07-132.html [417]
http://www.neh.gov/grants/guidelines/ndnp.html [418]
http://www.dlib.org/dlib/july07/littman/07littman.html [419]
CA1577 [249]
DAISY(Digital Accessible Information SYstem)は,視覚障害者や普通の印刷物を読むことが困難な人々のためのデジタル録音図書の国際標準規格として普及しているが,DAISYコンソーシアムは日本財団からの助成のもと,この普及の範囲をアジア・太平洋地域の発展途上国にまで広げようという“DAISY for All Project”に2003年から5か年計画で取り組んでいる。
DAISY for All Projectの主な活動は以下の4つである。
中でもオープンソースソフトウェア開発には特に力を入れており,DAISY開発ツール“SDK”や,録音図書再生用ソフトウェア“AMIS”等の開発に積極的に関わり,DAISYコンソーシアムのツール開発プロジェクトに貢献している。また,プロジェクトを持続可能なものとしていくためのマーケティング活動として,2003年と2005年の2度に渡って実施されたWSIS(国連世界情報社会サミット;E159 [421],E410 [422] 参照)に関係者を派遣し,障害者に配慮したICTの開発を訴えた。その結果,ユニバーサルデザインの概念や障害者に配慮した支援技術の開発に関する文言が,サミットの公式文書に組み込まれることになった。その他にも国連が実施しているイベントに積極的に参加するなど,プロジェクトへの理解と協力を呼びかけている。
DAISYについてはこれまでも,国による資料・再生機器の整備の差といったデジタルデバイドの問題が指摘されていた(CA1611 [217]参照)。DAISY for All Projectにより,アジア・太平洋地域でDAISY製作に取り組む国が着実に増え,障害を持つ人にとってのICTの重要性が訴えられていることは,デジタルデバイド解消に向けての重要な一歩と言えよう。
Ref:
http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/resource/daisy/dfa.html [423]
http://www.daisy-for-all.org/ [424]
CA1611 [217]
E159 [421]
E410 [422]
Carr, Leslie ; Brody, Tim. Size Isn't Everything: Sustainable Repositories as Evidenced by Sustainable Deposit Profiles. D-Lib Magazine. July/August 2007, 13(7/8). http://www.dlib.org/dlib/july07/carr/07carr.html [426], (参照2007-08-28).
現時点では,機関リポジトリの評価指標として,登録されているアイテム数が最も一般的に用いられている。しかしながら,「リポジトリとは大学がそのコミュニティの構成員に提供するものである」という立場に立ち,「コミュニティの構成員にどれだけ受け入れられているのか」を指標とすべきであるという考えもある。
サウサンプトン大学のカー(Leslie Carr)とブロディ(Tim Brody)はこの立場から,「継続してリポジトリにアイテムが登録されていれば,そのリポジトリはうまくコミュニティに受け入れられている」とする。そして,リポジトリにアイテムが登録された総日数(登録日数)および分野の広がりを指標として,ROAR(Registry of Open Access Repositories)に登録されている登録アイテム数が上位の20リポジトリを対象に,2006年分のデータの分 析を行った。
この分析によると,登録アイテム数が18万と世界最多のケンブリッジ大学のリポジトリは,ごく短期間に大量に登録されたものであり,分野も偏っている。したがって継続的な登録の成果とはいえない。一方,サウサンプトン大学のリポジトリは日常的に継続して多分野にわたってアイテムが登録されており,その数も順調に増えている。興味深いことに,ROARに登録されているリポジトリを登録日数を基準にして再ランク化すると,登録アイテム数上位20に入っていたリポジトリのうち12がランク外になり,より小規模なリポジトリがランクインするという。
継続的な運営と成長による持続可能なリポジトリが望ましいと考えるならば,単に登録アイテム数だけではなく,登録日数の多さも重要な指標となろう。また総合大学と単科大学,文科系の大学と理科系の大学では,生産される研究成果の種類や量は当然異なるため,設置された機関リポジトリを単純に登録アイテム数だけで比較してもそれほど意味はなかろう。このような観点から見ると,「単に登録レコード件数の増加だけではなく,リポジトリ構築,利用にかかる諸活動を総合的に評価する」として,「リポジトリ構築運用に係る整備状況」,「コンテンツ収集・利用の促進に関する活動」,「インプット」,「アウトプット」を評価項目とした機関リポジトリの評価システムを開発している日本の千葉大学と三重大学の取り組みは,大いに注目される。
(慶應義塾大学非常勤講師:三根慎二)
Ref:
http://roar.eprints.org/ [427]
http://www.dspace.cam.ac.uk/ [428]
http://eprints.soton.ac.uk/ [429]
http://www.nii.ac.jp/irp/info/2006/debrief/4-5chibadai.pdf [430]
国立大学図書館協会学術委員会図書館システム検討ワーキンググループ. 今後の図書館システムの方向性について. 2007, 61p. http://wwwsoc.nii.ac.jp/anul/j/projects/si/systemwg_report.pdf [432],(参照2007-08-28).
国立大学図書館協会は2006年12月,学術情報委員会の下に図書館システム検討ワーキンググループを設置し,デジタル情報環境下に相応した将来の図書館システムの方向性について,2007年3月まで議論を行ってきた。このほど,この議論を踏まえ,ワーキンググループ委員が各々独自の視点・問題意識から記述した各章からなる報告書『今後の図書館システムの方向性について』が公表された。
本報告書ではまず,現在のパッケージ化された図書館システムの課題を提示している。現在の図書館システムは,紙媒体の資料を対象とし,その管理と利用を主たる目的としているが,今後は対象を電子ジャーナルやデータベース等の電子媒体の資料まで広げ,その利用権限なども含めて,包括的に管理する必要があると指摘されている。そして,複雑化・肥大化した現状のシステムの問題点を踏まえて,再構築の方法を提案している。
続いて,「管理からサービスへ」と題し,図書館資料の物流「管理」からユーザへの「サービス」提供へと志向を転換する必要があると指摘している。このような視点の転換にあたっては,Web 2.0の考え方や手法である「集合知の活用」や「ユーザの参加の重視」が示唆されている(CA1624 [241] 参照)。たとえば,OPACが情報発見のツールとなるよう,利用者情報の蓄積・分析などをもとにユーザの関心を予測して提案するようなユーザ支援機能,ユーザが能動的に評価やコメントなどを行う参加型のOPAC,CiNiiやGoogle Scholar,Amazonなど外部のWebサービスとの連携を目指す開放型のOPAC等,従来の検索文字列とのマッチングだけにとどまらない,多様な機能の提案がなされている。
そして,このような機能を満たすシステムの開発・運用の手法としてオープンソース化,またパッケージ型からWebサービス型への移行が提案されている。ただし,図書館システムベンダーからは,オープンソース型の開発においては,図書館側の開発体制をいかにして築くかが重要であり,またWebサービス化にあたっては,外部サービスとの連携や,さまざまな面の標準化・共通化が必要であると指摘されている。
最後に,NACSIS-CAT/ILLシステムの現状を踏まえ,今後の大学図書館を支援する全国的なシステムのあり方が考察されている。全国的なシステムの第一義の目的を「メタデータの提供基盤」に置き,図書・雑誌の所蔵情報だけでなく,電子情報資源のライセンスやリンク,利用統計などの情報も管理できるような仕組みが必要であるとしている。また,サービスの迅速化,共同分担目録業務の省力化のために,一般に流通している情報はより発生源に近いところでメタデータを作成する「川上方式」を基本とすべきであることや,中小規模の大学にとってのホスティングサービスの有効性,利用者のアクセシビリティを考慮したFRBRモデルに基づくメタデータ再構築の可能性も指摘されている。
本報告書では図書館システムの現状に対する危機感から,具体的な機能の提案が目指されており,これをもとにした今後の議論や,具体化の動きがどのように進展していくかが注目される。
Ref:
CA1605 [433]
CA1624 [241]
CA1629 [434]
E448 [435]
E566 [436]
Koch, Corine[tr]. ブルーシールド―危険に瀕する文化遺産の保護のために. 国立国会図書館訳. 日本図書館協会, 2007, 103p.
ブルーシールドとは,まだまだ一般にはなじみがないかもしれないが,戦争や災害から文化財を保護する,いわば「文化財のための赤十字」に相当するものである。武力紛争に際して,攻撃を差し控えるべき文化遺産を示すために,「武力紛争の際の文化財の保護に関する条約(1954年ハーグ条約)」で指定された標章の通称であり,青色と白色からなる盾の形をしている。また,武力紛争だけでなく,自然災害も含めた災害から文化遺産を保護するために設立されたブルーシールド国際委員会(International Committee of the Blue Shield:ICBS)の名称でもある。ブルーシールド国際委員会(ICBS)は文化財保護に関する5つの非政府組織―設立時のメンバーである国際図書館連盟(IFLA),国際文書館評議会(ICA),国際博物館会議(ICOM),国際記念物遺跡会議(ICOMOS)および,2005年に加わった視聴覚アーカイヴ組織調整協議会(CCAAA)―で構成されている。
本書は,このブルーシールドの周知を目的に開催されたセミナーの報告集の日本語訳である。セミナーはIFLAの2002年年次大会において開催され,翌年,英仏2か国語による報告集がIFLA資料保存コアプログラム(IFLA/PAC)の刊行物“International Preservation Issues No.4”として刊行された。
本書に収められた最初の報告は,1954年ハーグ条約とその議定書,および1999年に採択された第二議定書の作成背景や目的を解説したものである。著者のボイラン(Patrick Boylan)氏はICOMの副会長を務め,第二議定書策定において重要な役割を担った人物である。2番目の報告は,2001年までICBSのICA代表を務めたマッケンジー(George Mackenzie)氏によるICBSの紹介である。3番目は,同じくICBSのIFLA代表であり,2006年までPAC国際センター長を務めたバーラモフ(Marie-Therese Valamoff)氏による報告で,資料防災計画の必要性を訴えるものである。残りの2つは,国際社会を襲った災害に関する報告である。1966年にイタリア・フィレンツェを襲った洪水と2001年9月11日に米国で起こった同時多発テロ事件であり,それぞれ,実際の災害を通して得られた教訓が述べられている。
このほか本書には,参考資料としてハーグ条約の日本語訳が全文収録されている。これは2007年の第166回国会においてハーグ条約締結が承認され,関連国内法「武力紛争の際の文化財保護法」(平成19年4月27日法律第32号)が成立したのを受けて定まったもので,日本語訳の報告集にのみ収録されている。
Ref:
http://www.ifla.org/blueshield.htm [438]
http://www.ifla.org/VI/4/news/ipi4-e.pdf [439]
http://jlakc.seesaa.net/article/47591292.html [440]
2007年7月16日,新潟県中越沖を震源とする大規模な地震が発生し,図書館も大きな被害を受けた。新潟県立図書館のまとめによると,最も被害が大きかったと思われるのは,柏崎市立図書館,刈羽村立図書館,新潟工科大学附属図書館で,前二者は地震発生翌日の17日に,新潟工科大学も18日に,開館の目処が立たないとして当面の休館を発表した。
柏崎市立図書館は,蔵書27万冊の約9割が落下・散乱,書架にもゆがみや傾斜が生じた。建物自体にも損傷が見られ,玄関引き戸がゆがみのために開かなくなったり,ブックポスト部の雪よけ屋根には落下の恐れがみられるという。その後,職員やボランティアスタッフによる復旧作業の甲斐あって,1階開架部分と2階メディアホールに限ってはいるが,8月1日より開館している。刈羽村立図書館も蔵書の散乱や建物の損傷がひどかったものの,その後の復旧作業により,子ども図書館は8月3日から開館しており,一般図書館も8月10日の開館を予定している。新潟工科大学附属図書館は,蔵書5万冊の約9割が落下,AV機器や建物の損傷という被害を受けた。時期が大学の休講期間と重なっていることもあり,9月30日まで臨時休館し,復旧作業を進めていくとのことである。
図書館が今回の地震のような大規模な災害に見舞われたとき,その後の復旧作業や資料の保全活動を円滑に行うためには,各地の被災状況の把握と共有が重要になる。今回の地震において,大きな被害に遭いながらも,発生直後にウェブサイトから休館情報を発信した各図書館の対応と,県下の各館の被災状況を迅速・詳細にとりまとめ,過去分も含めて情報提供した新潟県立図書館の対応は高く評価できよう。
また,他の動きとしては,7月20日,新潟県教育庁と新潟県立文書館が連名で,各市町村に被災した文書等の歴史資料の取扱いに留意するよう依頼する通達「被災「文書等」の取扱いについて(お願い)」を出している。被災した文書等は復旧可能な場合が多いため,容易に廃棄しないよう求めるとともに,雨や水にぬれてしまったものの対応方法などを示している。この通達にあわせ,柏崎市立図書館,長岡市立中央図書館も,被災した文書を簡単に捨てず,扱いを館へ相談するよう,ウェブやお知らせのチラシを通じて呼びか けている。これらは,行政が被災した資料の救援(CA1630 [441]参照)にいち早く乗り出したものとして注目される。
Ref:
http://www.pref-lib.niigata.niigata.jp/ [442]
http://hysed.human.niigata-u.ac.jp/rescue/modules/news/article.php?storyid=1 [443]
http://lib.city.kashiwazaki.niigata.jp/ [444]
http://www.lib.city.nagaoka.niigata.jp/monjo/index.htm [445]
http://www.rapika.or.jp/Contents/ePage.asp?CONTENTNO=280&PNO=103 [446]
http://www.niit.ac.jp/lib/ [447]
CA1630 [441]
2007年7月,Google Book Search(E340 [56],E543 [57]参照)に日本語版「Googleブック検索」が登場した。日本語版の開発は2006年5月から取り組まれており,国内の出版社へ協力を呼びかけるなど,準備が進んでいた。Googleブック検索の登場により,日本語を母語とする利用者は今後増えていくと思われる。
さらに,Googleブック検索登場から間もない2007年7月6日,慶応義塾の創立150年記念事業の一環として,慶応義塾図書館がGoogleブック検索に参加し,協同で蔵書のデジタル化,公開を行う旨を表明した。日本はもちろんのこと,北米・ヨーロッパ以外からの参加は,公式には今回が初めてである。発表によると,蔵書のうち和装本を含む,著作権保護期間が満了した約12万冊をデジタル化し,随時公開していくとのことである。Googleブック検索への参加は,慶応義塾にとっては,近年力を入れている「デジタル時代の知の構築」を促進し,慶応義塾図書館にとっては,来館型/非来館型の双方を視野に入れたハイブリッド型図書館サービスと,インターネットとの融合性を高めた次世代図書館システムの構築に資するものとして期待されている。
また,Googleブック検索で全文提供しているパブリックドメインの書籍について,テキスト形式でも表示する機能が取り入れられた。これにより,画面読み上げソフト(スクリーンリーダー)や点字ディスプレイでも書籍を利用することが可能となった。「世界中の情報を組織し,それを普遍的にアクセス可能にして役立てること」という自らのミッションに従い,Googleは日々利用者を増やす試みを続けている。
Ref:
http://ci.nii.ac.jp/naid/110006242735/ [449]
http://books.google.co.jp/ [345]
http://www.keio.ac.jp/pressrelease/070706.pdf [450]
http://www.google.co.jp/press/pressrel/20070706.html [451]
CA1564 [46]
E340 [56]
E543 [57]
デューイ十進分類法(DDC)を管理しているOCLCによると,米国では,公共図書館と学校図書館の95%,大学図書館の25%,専門図書館の20%が,DDCによる書架分類を行っているという。このほど,これほどまでに普及しているDDCを採用せず,書店で多く用いられている件名標目表“BISAC(Book Industry Standards and Communications)”で書架分類を行うという図書館が新規開館し,図書館員の間に議論を巻き起こしている。
2007年6月に開館したアリゾナ州マリコパ郡図書館区ペリー分館は,同じく新規に設立された隣接するペリー高校の学校図書館と公共図書館を兼ねた,協同利用(joint-use)図書館である。平日の朝7時から10時までは,高校の生徒だけが利用できるようになっており,学校図書館メディアスペシャリストを兼ねているスタッフがいる。蔵書数は2万4千冊で,収蔵能力は3万冊強という。
郡内の図書館を運営しているマリコパ郡図書館システムでは,数年間行ってきたフォーカスグループインタビューにおいて,80%の利用者が一般書の読書のために図書館を訪れると回答を得た。この結果や,他館への利用者からの苦情をもとに,DDCによる分類は利用者のニーズを満たさないと判断し,ペリー分館を開館するにあたり,書店のように分類することとしたという。ペリー分館は新規に開館する図書館ということで,利用者が特定の排架に慣れ親しんでおらず,また過去の蔵書を並べ替える必要もないことから,DDCに拠らない排架を行う理想的なテストケースだとしたのである。
BISACは「コンピュータ」「歴史」「実際に起きた犯罪」など主要件名が50あり,それぞれに「コンピュータ/情報理論」「コンピュータ/暗号」といった下位の件名もある。ペリー分館では,この主要件名50を書架分類として用い,その中を著者の姓のアルファベット順に並べている。資料の背に貼る排架用ラベルにも,基本的にはこの件名が表示されている。ただし,ノンフィクションのうちヤングアダルト向けには「Y」,ジュブナイル向けには「J」という記号が付与されているほか,小説の場合には著者の姓,また「歴史」など特定の件名の場合には下位件名(「歴史/ヨーロッパ」など)といった,より詳細な情報が付与されているものもある。ペリー分館では目録作業をベンダーに委託し,MARCデータのDDCに対応するBISACを付与させているという。
マリコパ郡図書館システムでは当初,利用者の反応を見て,不満が多い場合にはDDCに変更することも考えていたというが,開館して以来利用者からの不満はなく,利用数も他館に比べて多いという。この結果を受けて,マリコパ郡に来年,新規開館する分館でも,DDCは採用しないことにしたという。また同郡は州都フェニックス市の近隣で急成長を遂げており,向こう10年間で15の分館を新規開館させる予定であるが,来年の分館もうまく行った場合,今後の分館でもDDCを採用しないことにするという。
このニュースを地元のArizona Republic紙やLibrary Journal誌が報じたところ,インターネット上で活動する図書館員たちの間で瞬く間に論争が巻き起こった。ペリー図書館の試みを,「利用者にとってよりわかりやすく,より使いやすい図書館を目ざすサービス」として評価する者もいれば,「図書館の業界標準となっており実績が十分なシステムを破棄するもの」「図書館が培ってきた分類システムが書店やGoogleのような単純なものに屈した」として批判する者もおり,ある評者はこの様子を「宗教論争さながら」と評している。Wall Street Journal紙やNew York Times紙,米国議会図書館(LC)のブログなどでも,この論争が取り上げられているほどであり,議論はアリゾナから全米レベルに広がっている。
Ref:
http://www.oclc.org/dewey/ [452]
http://www.bisg.org/standards/bisac_subject/index.html [453]
http://www.mcldaz.org/library/userdef/branches/ud_mcld_branch_GI.aspx [454]
http://www.azcentral.com/arizonarepublic/local/articles/0530nodewey0530.html [455]
http://www.libraryjournal.com/article/CA6448055.html [456]
http://www.schoollibraryjournal.com/article/CA6456387.html [457]
http://www.techsource.ala.org/blog/2007/07/raising-arizona.html [458]
http://www.nytimes.com/2007/07/14/us/14dewey.html?ex=1342065600&en=0939f7224039e2d3&ei=5088 [459]
http://online.wsj.com/article/SB118340075827155554.html [460]
http://www.loc.gov/blog/?p=161 [461]
http://gathernodust.blogspot.com/2007/07/doing-it-without-dewey-perry-branch.html [462]
日本の出版業界では,書籍や雑誌の個別管理を可能にし,多様な販売/取引条件による流通を実現するものとして,また,物流や在庫管理,マーケティングの効率化,不正流通や万引きの防止・抑止などにも効果が期待できるものとして,電子タグが注目されている。電子タグを出版業界に導入した場合の効果について,日本書店商業組合連合会,日本書籍出版協会,日本図書館協会など5団体が設立した有限責任中間法人日本出版インフラセンター(JPO)が,2003年度から経済産業省の委託事業として実証実験を行っているところであるが,このほど,2005,2006年度の実験の成果が公表された。
JPOは,2003年度に電子タグの読み取り精度などの基礎実験を行い,2004年度には実際の製本ラインで新刊書に電子タグを装着し,流通プロセスおよび図書館での各種業務(図書館の場合は蔵書点検,貸出および帯出管理の3業務)における有効性を検証する実証実験を行っている(E389 [464]参照)。
2005年度は,これらの成果をもとに,書籍と音楽・映像ソフトの両方を扱っている「複合型店舗」での業務処理および消費者への新しい付加価値提供サービスの実証実験を,音楽・映像ソフト業界と協同して行った。その結果,業務処理のスピードが短縮されることや,消費者が電子タグを介した情報提供サービスを肯定的に捉えていることなどが明らかになった。
そして2006年度には,低価格な電子タグを実現するための経済産業省の技術開発プロジェクト「響プロジェクト」(2004年8月から2006年7月まで,日立製作所が実施)を受け,同プロジェクトで開発された「響タグ」を現状の製本ラインを通じて装着できるかどうか,またこれを活用して流通の効率化ができるかどうか,について実証実験を行った。実験の結果として,装着については2004年度の実証実験よりも向上したが依然として作業方法の検討が必要な部分があること,現状の電子タグの仕様や古紙パルプ化の処理システムではリサイクルに影響があること,プライバシー保護に関しては電子タグへ書き込む情報の運用方法を検討するとともに消費者との合意形成を図る必要があること,といった課題が判明したという。
これらの実証実験は,主に出版業界の物流効率化の観点から行われているものであるが,図書館での利用も視野に入れた電子タグのコード体系の整備や,読み取り実験なども行われている。図書館も,今後の動向について注視していく必要があろう。
Ref:
http://www.meti.go.jp/policy/it_policy/tag/index.html [465]
http://www.meti.go.jp/policy/it_policy/tag/book.pdf [466]
http://www.meti.go.jp/policy/it_policy/tag/file/media.pdf [467]
http://www.meti.go.jp/policy/it_policy/tag/hibiki1.pdf [468]
http://www.meti.go.jp/policy/it_policy/tag/hibiki2.pdf [469]
http://www.jpo.or.jp/topics/20070523-jpoinfo.pdf [470]
E389 [464]
高等教育に関する先進的な調査研究や戦略の構築をおこなっている非営利法人Ithakaが2007年7月23日,米国の高等教育機関における学術情報のデジタル化と大学出版会に与える影響,およびそれに対する新たな戦略を提言したレポート“University Publishing In A Digital Age”を作成し,公表した。
このレポートは,学術情報流通の急速なデジタル化や,デジタル環境下における出版モデルの急速な変化,大規模な商業出版社の台頭といった現在の学術情報流通の潮流に大学出版会は乗り遅れているという現状把握をもとに,デジタル時代に大学出版会が果たす役割について論じている。作成にあたっては,全米の大学出版会の責任者に対するアンケート,大学学長・大学出版会の責任者・図書館長へのインタビューが行われた。
レポートでは現在の学術情報流通について,媒体のデジタル化,利用者のデジタル情報志向の増大,動画などフォーマットの多様化,経済モデルの変革といった変化が生じていると指摘するとともに,大学図書館がこのような変革に対応して,利用者のニーズに応じた形態での情報提供や新たなサービスの展開など,その姿を変えつつある状況を報告している。一方,大学出版会は,大学のミッションとのミスマッチや学術情報流通のデジタル化が遅れているなど,利用者のニーズの変化に対応できていないと指摘している。
これらの現状分析をもとに,学内で大学出版会が重要な役割を引き続き担い続けるために必要なものは,今後の学術情報の主流となるデジタルフォーマットに対応していくこと,学術情報流通のためのプラットフォームを作成して,大学が生み出した研究活動や成果を発信していくこと,大学図書館との協同である,と指摘している。以上を踏まえ,学内の出版活動で積極的な役割を果たし,学術情報流通に対する戦略を構築し,さらに戦略を実行するために必要な組織基盤を備え,学内横断的な協同モデルを構築し,デジタル出版活動に必要な能力を備える必要があると提言している。
大学図書館は機関リポジトリなどの事業を通じて,学内の知的資源を収集・保存・提供する活動を展開している。同じく学術情報の流通に関わっている大学出版会と,今後どのような関係を築いてゆくのか,考えることも重要かもしれない。
Ref:
http://www.ithaka.org/strategic-services/Ithaka%20University%20Publishing%20Report.pdf [472]
http://www.ithaka.org/strategic-services/university-publishing [473]
複数の研究成果から米国では,学校図書館がおこなうメディア教育と生徒・児童の学習達成度の間には相関関係が存在し,各州の認定を受けた学校図書館メディアスペシャリストが配置されている学校では,配置されていない学校と比較して学習達成度が高いとの分析が,明らかにされている。だが学校図書館メディアスペシャリストが配置されている公立学校は,全体の約60%に過ぎないのが現状である。
2007年6月26日,米国連邦議会に「子どもの学習と図書館に対する関心を強化する法律案(Strengthening Kids’ Interest in Learning and Libraries Act;SKILLs Act)」が提出された。この法律案は,2002年に制定された「1965年初等中等教育法改正法(NCLB法)」を改正するものである。
具体的には2011年度を目処に,各公立学校に,各州が認定した学校図書館メディアスペシャリストを配置するとともに,教員や校長と同様の職員研修,専門能力開発,採用方式の対象とすることを明記している。またNCLB法と同様に,各公立学校への財政支援の実施が定められているほか,学校図書館の資料について,学年や,必要とされる特別な学習支援(英語を母語としない子どもへの英語学習支援など)に対応し,かつ学習への興味をひきつけるようなものを整備することが要求されている。
この法律案の提出が明らかにされたのは,ALAのバーガー(Leslie Burger)会長と数名の図書館員が,リード(Jack Reed)上院議員,およびグリハルバ(Raul Grijalva),エラーズ(Vernon Ehlers)下院議員のもとに,2007年度米国図書館協会(ALA)年次大会(E669 [475]参照)の一環として陳情に訪れた際であった。ALAおよび傘下の米国学校図書館協会(AASL)は法律案の成立に向けて,会員に連邦議会議員への陳情活動を呼びかけている。
Ref:
http://thomas.loc.gov/home/gpoxmlc110/h2864_ih.xml [476]
http://www.ala.org/ala/washoff/washevents/woannual/annualconfwo.cfm [477]
http://www.ala.org/ala/pressreleases2007/june2007/skillsactpr.htm [478]
http://www.ala.org/ala/alonline/currentnews/newsarchive/2007/june2007/skillsact.cfm [479]
http://www.capwiz.com/ala/issues/alert/?alertid=9951101 [480]
http://www.ala.org/ala/aasl/aaslissues/SKILLS_Act.cfm [481]
E669 [475]
国立国会図書館(NDL)は2007年7月,開発中のデジタルアーカイブで用いる保存用メタデータのスキーマとして「NDLデジタルアーカイブシステム・メタデータスキーマ」を作成,公表するとともに,2007年12月までの意見募集を開始した。
NDLが開発しているデジタルアーカイブは,OAIS参照モデル(CA1489 [32]参照)に準拠し,インターネット情報やNDLが作成したデジタル資料等をメタデータと関連付けた情報パッケージの単位で長期保存するものである。このメタデータスキーマは, NDLのデジタルアーカイブで用いるとともに,国内のデジタルアーカイブ機関での長期保存用メタデータスキーマの標準となることも企図されている。
メタデータスキーマは,(1)情報パッケージのメタデータ,(2)記述メタデータ,(3)技術メタデータ,(4)権利メタデータ,(5)保存メタデータ,(6)管理メタデータの6つのサブセットから構成され,(1)のスキーマとしてはMETS,(2)はMODS(ともにCA1552 [482]参照)を,また(3)〜(5)はPREMIS(E258 [483],CA1561 [484]参照)が策定したメタデータに独自要素を追加したもの,(6)は独自に設計したものをそれぞれ採用している。各スキーマとともに,メタデータの要素の定義や使用方法等を規定したガイドラインも同時に公開されている。
また,これに先立つ2007年5月には,NDLと各図書館・関係機関とのメタデータ交換に用いることを意図した「国立国会図書館ダブリンコアメタデータ記述要素(DC-NDL)」を作成した。NDLは,2001年3月にNDLがネットワーク系電子出版物を収集組織化する際のメタデータ基準を意図した「国立国会図書館メタデータ記述要素(NDLメタデータ)」を定めているが,DC-NDLはこれを改訂したものである。国内の図書館・関係機関でのダブリンコアを用いたメタデータ付与の実践を視野に入れ,記述要素・エンコーディングスキームを定めている。
Ref:
http://www.ndl.go.jp/jp/standards/index.html [485]
http://www.ndl.go.jp/jp/standards/da/index.html [486]
http://www.ndl.go.jp/jp/standards/dcndl/index.html [487]
CA1489 [32]
CA1552 [482]
CA1561 [484]
E258 [483]
Google,Microsoftなど,大手インターネットサービス企業による図書館蔵書のデジタル化事業が大々的に展開されている中,米Amazon.com社も,この分野で事業を展開することを発表した。
同社は2007年6月21日,オンデマンド出版を手がける子会社・BookSurge社と,書籍デジタル化機器・システムの大手Kirtas Technologies社とが提携して,大学・公共図書館の貴重書などをデジタル化し,Amazon.comほかのウェブサイトで公開するとともにオンデマンドで購入できるようにもするプロジェクトを行うと発表した。このプロジェクトは,(1)参加する各図書館がデジタル化する対象の書籍を選び,(2)Kirtas Technologies社が特別の割引価格で非破壊スキャニングを行い,(3)Amazon.comほかの販売ルートで検索・販売できるようにし,(4)購入の注文に応じてBookSurge社が印刷・発送する,という流れで,図書館の蔵書の長期保存・複製・利用を可能とするものである。
このプロジェクトの参加館の第一弾としては,エモリー大学図書館,メイン大学図書館,トロント公共図書館,シンシナティ・ハミルトン郡公共図書館の4館が参加すると発表されている。なお,エモリー大学図書館とメイン大学図書館はともに,1923年以前に刊行されたパブリックドメインの資料とともに,大学が著作権を所有している刊行物や,教員・学生の学術出版を対象とする予定だという。
Amazon.comはこれまで,出版社の協力を得て書籍の本文データを全文検索できるサービス“Search Inside the Book”(日本語版では「なか見!検索」)や,ページ単位や章単位での書籍データ販売サービスを提供し,注目を集めてきた(E146 [489],E403 [48]参照)。今回の連携により,図書館の蔵書も同社のサービス対象,すなわち「商品」に加わることになる。各図書館は,このオンデマンド出版から収益を得られることになるが,エモリー大学図書館は収益をさらなる書籍のデジタル化に費やす予定であるとしている。このように,デジタル化事業に係る費用を自己創出できる点は,先行する各種プロジェクトとは一線を画す,新たなビジネスモデルとして注目されよう。
Ref:
http://phx.corporate-ir.net/phoenix.zhtml?c=176060&p=irol-newsArticle&ID=1018605 [490]
http://news.emory.edu/Releases/KirtasPartnership1181162558.html [491]
http://www.kirtastech.com/uploads/other/Emory_Spotlight.pdf [492]
http://www.umaine.edu/news/article.asp?id_no=1809 [493]
http://www.kirtastech.com/uploads/other/Maine_Fogler.pdf [494]
http://www.insidehighered.com/news/2007/06/22/digitize [495]
E146 [489]
E403 [48]
2007年6月21日から27日までの1週間,ワシントン・コンベンションセンターにおいて,第128回米国図書館協会(ALA)年次大会が開催された。全米から,ALA史上最大となる28,635人が集い,科学技術,プライバシー,リテラシー等の図書館の重要課題について討議が行われた。ワシントンD.C.観光局によれば,この会議により,1,560万ドル(約19億円)の利益が,地域経済にもたらされたという。
大会終了翌日の6月28日に発表されたALAのプレスリリースでは,特に以下のようなイベントが紹介されている。
中でも,ジュリー・アンドリュースの講演には,何千人もの参加者が会場につめかけ,別会場も設けられたとのことである。また,初上映された“The Hollywood Librarian”も会場から温かく受け入れられた。この映画は,図書館員のステレオタイプ,検閲,知的自由,そして図書館員の文化・社会に対する総合的な影響をドキュメンタリー調に描き出そうとするものであり,正式公開は2007年9月29日に予定されている。
このほか,並行して行われた展示会においても,図書館関連企業950社が展示を行い,大会を盛り上げた。大会の模様は,大会期間中・終了後に配布された“Cognotes”に写真とともに比較的詳しく紹介されているほか,各種の画像共有サイトやブログなどからも大会の盛況ぶりを窺い知ることができる。
Ref:
http://www.ala.org/ala/pressreleases2007/june2007/acwrap07.htm [496]
http://www.ala.org/ala/eventsandconferencesb/annual/2007a/home.htm [497]
http://www.hollywoodlibrarian.com/ [498]
http://www.ala.org/ala/eventsandconferencesb/annual/2007a/cognotes.htm [499]
http://wikis.ala.org/annual2007/ [500]
http://www.flickr.com/groups/ala_annual_2007/ [501]
2007年6月19日,ロシアのプーチン大統領が,同年4月23日に亡くなったエリツィン前大統領の名を冠した大統領図書館をサンクトペテルブルクに建設する指令に署名した。
この指令は,2007年2月に同様に署名された「大統領図書館を建設する指令」に続くものであり,ロシア連邦の全域に支部を設けること,建設のための委員会および専門家によるワーキンググループを設けること,建設のための予算を2007〜2008年に確保することなどが規定されている。なお,この委員会のメンバーには,2つの国立図書館(モスクワのRussian State Library,サンクトペテルブルクのRussian National Library)およびロシア国立歴史文書館の館長も含まれている。
この大統領図書館は,ロシアの歴史に資することが建設目的とされており,詳細は検討中であるが,2008年中の開館と,文書館等の歴史的資料をデジタル化したものが蔵書の重要な部分を占めることが報じられている。
Ref:
http://www.kommersant.com/p775952/r_530/Yeltsin,_Russian_presidential_library/ [502]
http://www.yeltsin.ru/archive/news/detail.php?ID=4246 [503]
http://www.newsru.com/russia/14feb2007/library.html [504]
http://www.newsru.com/cinema/26apr2007/library.html [505]
http://www.newsru.com/cinema/15may2007/biblioteka.html [506]
http://www.newsru.com/cinema/19jun2007/library.html [507]
隣国韓国で行われた国際図書館連盟(IFLA)年次大会(E546 [214],CA1609 [215], CA1610 [216], CA1611 [217]参照)から1年のときが流れようとしているが,日本から遠く14,000キロ離れた地で,次の大会の準備が着々と進んでいる。2007年の第73回年次大会は,8月19日から23日までの日程で,南アフリカ共和国・ダーバンで開催される。
今回のテーマは「未来への図書館:進歩,発展,そしてパートナーシップ」である。IFLAでは既にウェブサイトでプログラムを公開しているが,機関誌“IFLA Journal”2007年6月号でも特集を組み,南アフリカを含むアフリカ中南部の図書館事情の紹介を行っている。この特集は,ダーバン大会で論議される主要な議題を網羅的に扱うよう企画されており,南アフリカのほか,ジンバブエ,ナミビア,ナイジェリアなど,各国の動向・事例を紹介する7本の論文が掲載されている。
Christine Stilwell氏の“Library and Information Services in South Africa: an overview(南アフリカにおける図書館・情報サービス: 概況)”は,今回のホスト国である南アフリカの図書館・情報サービス事情の紹介となっている。図書館や情報に関わる諸制度全体を踏まえた上で,政策,情報資源,サービスを整理しているほか,研修,専門職制などについても言及している。
またKarin de Jager氏の“Towards Establishing an Integrated System of Quality Assurance in South African Higher Education Libraries(南アフリカ高等教育図書館における品質保証統合システム)”では,南アフリカ高等教育委員会(CHELSA)が進めている,大学図書館における品質保証のための基準,規格,モデルの策定作業の進捗状況を紹介している。
このほか,ジンバブエにおける先住民の伝統的知識を保存する取り組み,スワジランド大学における情報サービスの改善に向けての戦略的計画,ナミビアにおける中小企業へのビジネス情報サービスの展開,南アフリカの学術コミュニケーションにおける電子媒体の影響,ナイジェリアにおける女性の政治参加促進のための図書館の役割に関する記事が掲載されている。このIFLA Journal誌の特集は,E603,E627で紹介した情報・文献などとともに,南アフリカおよびその近隣の図書館事情を知る,格好の情報源であると言え よう。
Ref:
http://www.ifla.org/V/iflaj/IFLA-Journal-2-2007.pdf [509]
http://www.ifla.org/IV/ifla73/Programme2007.htm [510]
CA1609 [215]
CA1610 [216]
CA1611 [217]
E546 [214]
E603 [511]
E627 [512]
米国の著作権集中管理団体であるコピーライト・クリアランス・センター(CCC)は高等教育機関向けに,1ライセンスで著作物を広範に利用できる年間契約サービス“Annual Copyright License”を開始すると発表した。
対象となる資料は図書や学術雑誌のほか,業界専門ニュース雑誌,新聞が含まれる。また図書や雑誌のタイトル, ISBN,ISSN,出版社名から利用対象であるか確認できるデータベースも整備されている。このサービスにはSpringer社, Sage社,Nature社,Wiley社など有力な学術出版社を含む,約200社近い出版社が参加している。またCCCによると,すでに1,000機関を超える高等教育機関と契約を交わしており,参加出版社も増え続けているという。
契約対象は高等教育機関で,対象となる利用者は研究者や学生など高等教育機関の構成員である。構成員は著作物の複写,授業での複製・配布,講義録への転載ばかりではなく,電子リザーブ(E341 [513]参照)の共有,電子化された授業教材への転載,また学内限定ではあるが電子メールでの著作物配布やサーバ保存による共同利用を行うことができる。さらに学外の事業者による著作物の複写や教材集(Coursepack)への転載も認められており,著作物を利用できる仕組みとなっている。このライセンスは複数のキャンパスを持つ大学にも対応しており,米国に本拠地を置く高等教育機関の海外キャンパスに対しても,ライセンスの適用が可能であるという。
研究・調査や授業における著作物の複製・頒布は,米国著作権法第107条の「フェア・ユース」に該当する限り,法的に認められる。だが「フェア・ユース」に該当するかどうかは,個々の具体的事例に即して裁判所が判断するため,著作権法違反のリスクを抱えているのが現状である。もちろん個々の著作物単位で権利処理手続きを行えば,法的なリスクは回避できるが,膨大な手間と時間がかかり,運営コストと時間の損失につながっていた。
高等教育機関における授業教材作成を目的とするコピーとスキャニングについては,すでに英国において包括ライセンスの実例が存在する(E373 [514]参照)が,Annual Copyright Licenseは,より広範な利用を認めており,今後の展開を注視していく必要があろう。
Ref:
http://www.copyright.com/ccc/viewPage.do?pageCode=au143 [515]
http://www.copyright.com/ccc/viewPage.do?pageCode=ac12 [516]
http://www.copyright.com/ccc/search.do?operation=show&page=academic [517]
http://www.copyright.com/media/pdfs/AACLProductSheet.pdf [518]
E341 [513]
E373 [514]
eラーニング等のITを活用した教育に関する実態調査. メディア教育開発センター. 2007. 122p. http://www.nime.ac.jp/reports/001/main/eLearning-jp.pdf [519] (参照2007-07-11).
独立行政法人メディア教育開発センター(NIME)は,2005年度から「eラーニング等のITを活用した教育に関する実態調査」を実施している。このほどその第2年目となる2006年度版の調査報告書が公表された。
本年度は(1)IT活用教育,(2)IT活用による授業改善,(3)eラーニング,(4)インターネット等を用いた遠隔教育,(5)ラーニング・マネジメント・システム,の5項目について,アンケート調査が行われた。調査対象は全国の高等教育機関(大学・短期大学・高等専門学校)1,276機関で,有効回答率は約72%であった。
調査の結果,IT活用教育は約75%の機関ですでに導入され,未導入機関でも約半数が今後の導入を予定・検討していることが明らかになった。またeラーニングは全機関のうち約33%で導入されており,これは5年前の約3倍に達している。今後も堅調な増加が見込まれると報告書は分析している。
またIT活用教育の導入により効果的な教育が実施できた,と導入機関の過半数が回答しており,IT活用教育は教育内容や手法の改善に資すると分析している。一方でシステム維持やコンテンツ作成の人員不足,教員のIT活用スキルの不足,IT活用教育に対する組織的な対応や教員の負担軽減といった,IT活用教育を実施していくにあたって必要となる改善点も明らかにされている。さらに報告書では,IT活用教育の質を向上させるための取り組みや支援が不可欠であることも指摘している。
報告書には実態調査の結果・分析のほか,共同プロジェクトを含む全国15機関の高等教育機関で取り組まれている先進的なIT活用教育事例に関する,各プロジェクト推進担当者が執筆による事例紹介が掲載されている。
筑波大学. 今後の「大学像」の在り方に関する調査研究(図書館)報告書:教育と情報の基盤としての図書館. 2007. 139p. http://www.kc.tsukuba.ac.jp/div-comm/spons_report/future-library.pdf [521](参照2007-07-11).
2007年3月,筑波大学が先導的大学改革推進委託事業『今後の「大学像」の在り方に関する調査研究(図書館)報告書−教育と情報の基盤としての図書館−』を公表した。この報告書は,2005年から2006年にかけて実施した調査に基づき,大学コミュニティに価値をもたらす図書館,情報基盤のあり方を論じたものである。
第1章では,大学図書館をめぐる状況を把握した上で,大学の中で図書館が教育基盤,情報基盤の役割を果たす位置にあることを再確認し,それを踏まえて,いかに新しいサービスを創出するかについて論点を整理している。
第2章では,教育基盤としての図書館を,教育プログラムに対応したコレクション構築,学習環境の構築,情報リテラシー教育の支援という3つの視点から論じている。いずれの視点からのアプローチにとっても,大学の教育プログラム,教員,図書館員の効果的な連携が不可欠であることが強調されている。
第3章では,情報産業との比較から,図書館の使命を知の多様性を支援するサービス機関であると位置づけるとともに,基盤となる情報資源管理システムの方向性を,(1)短期的には国内外を問わず,情報資源をシームレスに接続する仕組みを整備すること,(2)中期的には情報資源を仲介するモジュールを増やし,アウトプットを起点として知的環境を構築すること,(3)長期的にはネットワーク・ライブラリーに移行し,知の伝達を図書館の集合体で 司ることの3点にまとめている。
第4章では,時間,場所,空間の側面から図書館のサービス展開の方向性を模索している。場所の問題では,図書館へと利用者を導く導線として,ポータル(玄関)を取り上げ,ウェブポータルが各種図書館サービスへと誘導する窓口機能を果たしていることを指摘するとともに,スチューデントポータルから直接図書館サービスへとたどり着ける「通り道」の設定を提言している。また,空間の問題では「場としての図書館」(CA1580 [522]参照)を利用者が期待していると分析し,図書館機能,コンピュータやネットワーク資源,学習や研究のために長時間滞在できる空間という3つの機能を統合した,インフォーメーション/ラーニング・コモンズ(CA1603 [523]参照)導入の有効性が指摘されている。
第5章では,図書館の組織と人的資源管理の問題が取り上げられている。財政の逼迫という状況の下で,図書館が求められた機能を効率的に発揮するためにはどのような組織体制と人材が必要か,また,今持っている人材のキャリア・ディベロップメントはどのような研修体系によって実現可能かについて,述べられている。
巻末には付録として,「大学図書館の経営に関する調査」の集計結果と米国大学図書館協会(ACRL)の2つの基準文書がつけられている。ただしACRLの基準文書については,著作権許諾を得るまでの間,ウェブ上での公開が留保されている。
各章には,論説に加え,実例や最近のトレンドを豊富に含んだ資料がついており,昨今の大学図書館の実情をよく理解できる報告書となっている。
米国で,図書館への「愛」をテーマとしたビデオコンテスト“I Love My Library !”が開催された。賞金総額は10,000ドル。図書館をどれだけ大切に想っているか,図書館員であることをどれだけ楽しんでいるかを2分以内の動画で表現する。全米から175作品以上がエントリーされ,2007年6月24日,ワシントンD.C.で開催された米国図書館協会(ALA)年次大会で最優秀作品が発表された。
応募作品は,2007年5月25日までに動画共有サイトのYouTubeに登録された。6月1日には,創造性に富んでいるか,図書館やその資料への愛情を個性的に表現しているか,そして好感度のある作品に仕上がっているかなどの基準により優秀作品5作品が選定された。この一次審査は,主催者であるThomson Gale社の審査員によって行われたが,その後,6月11日までの期間,一般の人が審査員となり,優秀作品5作品の中から投票により最優秀作品が決定された。
9,000票近い投票の中で最高得票を獲得し最優秀作品に選ばれたのは,“The Library Code”。ヴァージニア州ニューポートニュースのDozier Middle School and Main Street図書館の作品であり,2人の生徒が宿題に必要な情報を,図書館の様々な資料・設備を駆使して探し出すというストーリーになっている。
Thomson Gale社は今回のコンテストの成功を受けて,7月16日から,画像共有サイトのFrickrを舞台にフォトコンテストを行うことを公表している。
Ref:
http://www.gale.com/librareo/ [524]
http://www.libraryjournal.com/blog/1010000101/post/1120011112.html [525]
http://www.youtube.com/watch?v=KBJcZOgPEFw [526]
http://www.gale.com/librareo/vote.html [527]
http://www.youtube.com/watch?v=Hwlt9og5KJY [528]
http://www.youtube.com/watch?v=HUxp3E3YUdQ [529]
http://www.youtube.com/watch?v=sSEbdW7Pvnc [530]
http://www.youtube.com/watch?v=s-oBHCsFbkk [531]
近年,書籍をデジタル化する大規模なプロジェクトが,図書館,出版社,データベース提供事業者,インターネット検索サービス提供事業者など,多くの主体によって展開されている。これらのデジタル化プロジェクトの中には,書籍をスキャナーで読み取って画像化した上で,光学式文字認識(Optical Character Recognition: OCR)技術を用いてテキストデータを作成し,全文を検索可能としているものも多い。
しかしながら,OCRが常に完全に文字を識別できるとは限らない。印刷の不鮮明さ,スキャニング時のページのゆがみ, OCRがサポートしていない言語の単語の出現など,さまざまな原因によって正しく識別できないことが起こり得る。誤って識別された文字があることは,スペルチェックや構文チェックによって単語単位で特定できるものの,その修正には相応の時間が必要となる。
この問題を効率的に解決しようという試みが,米国カーネギーメロン大学のコンピュータ科学スクールで行われている。その名は“reCAPTCHA”。同大学が2000年に開発した“CAPTCHA(Completely Automated Public Turing test to tell Computers and Humans Apart)”と呼ばれる画像認証技術を利用するもので,CAPTCHA開発メンバーも参加している。
CAPTCHAは,ウェブ上のブログや電子掲示板,投票サイトなどにおいて,嫌がらせや宣伝目的で行われる機械による大量書き込みを防止するために用いられる。書き込み時に,無作為に選ばれた文字・数字などが複数含まれている画像を表示し,その中の文字列を読み取って入力するよう求める。そして,正しく入力されたものだけを受け付ける。画像中の文字・数字は意図的にゆがめられたりしており,機械が読み取ることは困難なため,機械による書き込みを排除できるのである。
reCAPTCHAは,デジタル化した書籍データの中から,OCRで正しく識別されなかった単語を切り取り,CAPTCHA用の画像データとして提供する。OCR=機械が読み取れなかったものを人間によって読み取ってもらうのである。ただし,CAPTCHAは機械と人間を区別することが主目的であり,正しく入力されたか判定するための「正解」が必要となる。そこで,OCRで正しく識別されなかった単語に加え,正しく識別された単語も用いる。1つの画像には2つの単語が含まれており,一方は正しく識別されており正解が存在する。他方は正しく識別されておらず,人間に読み取ってもらう必要のあるものである。
これらは画像上では明示されておらず,2語とも入力してもらう。そして,正しく識別されていた方の単語に対する入力語が正解であれば,人間による書き込みであると判定されるとともに,他方の入力語は「OCRで読み取れなかったものを人間が読み取ったもの」として,テキストデータの修正に用いられるのである。なおreCAPTHCAの画像データには,OCA(E392 [49]参照)プロジェクトによって書籍のデジタル化を進めているInternet Archiveのデータが用いられている。
CAPTCHAは現在,全世界で毎日6千万回も使われているという。画像の解読および入力に必要な時間が1回当たり約10秒だとすると,少なくとものべ16万時間以上の人力が毎日使われていることになる。この膨大な人力を,書籍のテキストデータの質の向上につなげるべく,reCAPTCHAはプロジェクトへの参加を積極的に呼びかけている。ウェブサイト設置者は登録することで,無料でreCAPTCHAの仕組みを利用できるようになっており,今後の拡大が期待される。
Ref:
http://recaptcha.net/ [532]
http://www.cnn.com/2007/TECH/05/29/blather.to.books.ap/index.html [533]
http://arstechnica.com/news.ars/post/20070525-anew-twist-on-anti-spam-tech-can-help-digitize-books.html [534]
E392 [49]
カナダのゲルフ大学は,学生数17,000人,遠隔教育の受講生16,000人の大学であり,2001年からDocutek VR(SirsiDynix社)という専用ソフトを使用して同期型のバーチャルレファレンスサービス(VRS)を提供している。ここに2005年9月から2006年2月までに蓄積された記録約600件を分析した研究が,Evidence Based Library and Information Practice(EBLIP)誌(>CA1625 [103]参照)に掲載された。ゲルフ大学の図書館員による研究である。
記録分析により,VRSがどのように使われているかを明らかにしようとした研究はこれまでも数多く行われているが,利用者が図書館とコミュニケーションするためにどのような言葉を使用しているのかという観点で記録を分析した研究は少なく,またよりユーザ・フレンドリーなサービスにするために記録をどう生かすのかという点について言及している研究は,あまり存在しない。EBLIPに掲載されたこの研究は,内容や言葉遣いの観点で分析したものであり,この課題に切り込んでいくものである。
言葉遣いについては,利用者がほとんど使用しないのにもかかわらず図書館員が好んで使用する用語として, “periodical”,“faculty”,“catalogue”,“resources”,“interlibrary loan”などを指摘している。学生は,例えば, “catalogue”についてはTRELLIS(ゲルフ大学の目録システム)の方を好んで使用し,“resources”については“books”や“articles”など一般的な言葉を使用する傾向が顕著であるという。
また,実際の利用者の属性については,図書館の外から質問してくる学生が30%以下であるのに対し,実際に図書館の中にいる学生からの質問が60%以上をしめることなども明らかにしている。これらの結果は,単純に学生の嗜好を示すだけでなく,図書館のサインなどのわかりにくさなど,様々な改善すべき点を示唆している可能性があるという。
このような記録の総合的な分析の結果に基づいて,図書館のオンラインサービス,蔵書,関係性,職員のスキル,場所としての機能の5つの領域について,サービスを改善すべき点を検証している。図書館員にとって当たり前と思われることも当然ながら含まれるが,FAQをよりわかりやすくするための工夫など,示唆に富む改善点が示されている。
無機質なバーチャルレファレンスの記録の分析から,根拠(エビデンス)を導き出し,そしてそれを図書館サービス全般への“人のぬくもり”(personal touch)の付加に結び付けているこの研究は,現場の図書館員ならではの研究という意味で,興味深い。
Ref:
http://ejournals.library.ualberta.ca/index.php/EBLIP/article/view/236/ [535]
http://www.docutek.com/products/vrlplus/index.html [536]
CA1625 [103]
米国議会図書館(LC)は約1億3千万点の資料を所蔵する,世界を代表する図書館のひとつである。所蔵資料には図書や雑誌をはじめ,希覯書,文書類,映画フィルムなどの貴重なものが多数含まれている。
この貴重な資料の保存に関する研究については「保存研究・試験部門(Preservation Research and Testing Division)」が重要な役割を果たしている。保存研究・試験部門は酸性紙の「脱酸化処理」(CA1152 [538],CA1252 [539]参照)やデジタル資料の保存など,資料保存に関する科学的観点からの調査研究を行うとともに,修復部門などと連携して,資料の修復・保護・保管に関する機材や技術に関する基準・標準を策定している。このほど保存研究・試験部門は,フロリダ州立大学の分析化学の助教授で,セルロースをはじめとする多糖類の研究者であるシュトリーゲル(Andre Striegel)を招聘した。
図書や雑誌,文書類からフィルムに至るまで,図書館の所蔵資料の多くは,セルロースを主成分とする素材からできている。そのため,資料の劣化や保存,修復などの研究を進めていく上で,主要な素材であるセルロースに着目することは不可欠である。シュトリーゲルは2007年夏の約2か月間,セルロースで構成された資料の劣化と,負荷軽減に向けた方法論の研究をおこなう。シュトリーゲルによると,原材料を加工しセルロースを生成する過程で,セルロース分子にはストレスとなる様々な加工が加えられ,分子レベルで損傷が発生する。この過程で生じた損傷が,最終加工品である紙やフィルムにも影響を及ぼす。そこで加工過程でセルロースに加わった損傷を研究することにより,より耐久性のある製品を生み出すための製造過程の再検討を実施する。この研究は,LCが所蔵する劣化が進行している資料の保存にも有益な知見を与えることができる,とシュトリーゲルは指摘している。
具体的な研究方法は,セルロースを主成分とする劣化の進んだ資料を,超音波測定による非破壊的手法で調査し,データの収集・分析を実施するというものである。
シュトリーゲルは,LCに招聘されている期間内に,セルロースの研究のほか,録音磁気テープの劣化など資料劣化に関する助言活動や講演会などの活動もおこなう予定である。
Ref:
http://www.fsu.com/pages/2007/06/04/LOCTreasures.html [540]
http://www.loc.gov/preserv/ [541]
http://www.loc.gov/preserv/rt/PRTDinstruments.pdf [542]
CA1152 [538]
CA1252 [539]
英国バーミンガム大学図書館は,2004年から“Evidence Base”というプロジェクトを実施している。これは,根拠(エビデンス)に基づいた図書館業務の設計(EBLIP;E583 [543],CA1625 [103]参照)を推進するための活動であり,
を目的として,エビデンスの収集・共有をはじめ,会議・ワークショップの開催,コンサルティングの実施,各館種ごとの調査研究・評価・エビデンス蓄積の実態調査などを行っている。
このバーミンガム大学図書館が2007年5月,ティーンエイジャー向けの図書館サービスのエビデンスを共有することを目的としたワークショップを開催した。このワークショップでは,
など,ティーンエイジャーを取り込んだ図書館サービスに関して,あわせて7つの図書館から事例報告がなされた。これらの報告では,各々のプロジェクトの背景や目的,そのプロジェクトを選択した理由,かかった費用,プロジェクトの進め方,成果と課題,今後の展望など,プロジェクトの企画・運営・管理に関する事項がわかりやすく紹介された。また最後に,全国青少年機関(National Youth Agency)から,図書館サービスにティーンエイジャーを取り込み,その声を反映していくことの意義について総括が行われた。
このワークショップは,単なる事例紹介にとどまらず,次に同様のプロジェクトを行おうとする人が参照し,参考にできるような情報が盛り込まれており,ティーンエイジャー向け図書館サービスの優良事例を学びつつ,エビデンスとして蓄積・共有することの意義も実感できるものとなっている。
なお“Evidence Base”では,同様のワークショップや会議を,読書と健康,図書館の評価など他のテーマでも開催しており,発表資料も公開している。
Ref:
http://www.ebase.uce.ac.uk/events/engaging-teenagers-programme.html [544]
http://www.ebase.uce.ac.uk/publications.htm [545]
http://www.ebase.uce.ac.uk/ [546]
E583 [543]
CA1625 [103]
国立国会図書館(NDL)は,書誌情報の主題アクセスツールである『国立国会図書館件名標目表』(NDL Subject Headings:NDLSH)を更新し,2006年度版としてホームページ上に公開した。今回公開した2006年度版は,2007年3月末までに行われた標目の新設・訂正・削除を反映したものである。
NDLでは,2004年度からNDLSH全体の改善を図ってきた(E262 [548]参照)。その内容は「を見よ」参照・「をも見よ」参照・スコープノート(限定注記)の充実,細目運用基準の明確化,日本十進分類法(NDC)新訂9版分類記号の付与などで,2006年9月をもって作業を終了している。また同じ2006年9月には,研究目的での利用希望者に対し,テキストデータ(TSV形式)の実験的提供も開始した(E553 [549]参照)。これに対しては,セマンティックウェブのオントロジーとしての利用,語彙研究,図書館目録・検索サービスへの適用など,様々な研究のための利用申請が寄せられており,既に成果が公開されているものとしては,(1)HANAVI(永森光晴氏),(2)シソーラスとクラス階層とRDF/OWL(神崎正英氏)などがある。
今回公開した2006年度版のテキストデータについても同様に,研究目的での利用申請を受け付けている。条件や問合せ先等詳細についてはウェブサイトで確認していただきたい。
(書誌調整課データ標準係)
Ref:
http://www.ndl.go.jp/jp/library/data/ndl_ndlsh.html [550]
http://raus.slis.tsukuba.ac.jp/subjects/graph [551]
http://www.kanzaki.com/works/2006/pub/0923nal.html [552]
E262 [548]
E553 [549]
2007年7月3日,国立国会図書館の「近代デジタルライブラリー」が,大正時代の図書約15,700冊の提供を開始する。「近代デジタルライブラリー」はインターネットを通じて利用可能な,図書の画像データベースである。これまでは明治時代の図書のみが対象だったが,大正時代の図書が初めて加わる。
今回公開するのは,主に著作権保護期間の満了が確認された資料であり,当館が所蔵する大正時代の図書約90,000冊の約17%にあたる。この中には,2008年に100周年を迎える日本からのブラジル移民に関連して当時の広報資料『ブラジル移植民地写真帖』や,南満州鉄道株式会社の調査機関による各種レポート『満鉄調査資料』,大正時代の旅行ガイド『京都遊覧案内』といった資料が含まれる。分野別の冊数の内訳は,社会科学分野が最も多く約37%を占め,産業分野の約19%,自然科学分野の約14%がこれに続く。
また,今回の追加公開からは256階調のグレースケール画像を採用する。グレースケール画像は従来の2階調のモノクロ画像と比べ,白黒の濃淡をより細かく表現することが可能であり,従来よりも鮮明な画像で閲覧することができる。これに併せて明治時代の写真帖327冊をグレースケール画像に更新する。
近代デジタルライブラリーでは,2002年10月の公開以来,順次提供冊数を拡大してきた。今回の追加によりあわせて約143,000冊の資料が閲覧可能となる。利用件数も順調に伸びており,2006年度は1日当たり約17,000コマの画像が利用された。今後は,大正時代に刊行された図書を順次追加し,より広く利用されることを目指していく。
(電子図書館課)
Ref:
http://kindai.ndl.go.jp/ [324]
図書館の価値を,わかりやすく説明することは難しい。一方で,設置母体の自治体や資金の提供者は,図書館の「事実」および「数字」と,地域の発展あるいは社会・経済の繁栄との結びつきを示す説得力のある論拠を示すよう,求めている。図書館はこの要望に応えるよう,多様なアプローチで図書館評価の研究と実践を試みている(CA1627参照)。
5月5日,この動向を概説する研究レポートが,米国のNPO法人・図書館のための米国人協会(ACL: Americans for Libraries Council)から公表された。「重さに等しい価値がある: 進化する図書館評価領域の査定(Worth Their Weight: An Assessment of the Evolving Field of Library Valuation)」と題するこのレポートは,価値をドル(貨幣)で示すことが重要であるとのスタンスに立ちつつ,近年実践されてきた経済的,社会的効果に関する分析方法を紹介している。
具体的には,投資対効果(ROI: Return on Investment),費用便益分析(CBA: Cost Benefit Analysis),仮想評価法(CVM: Contingent Valuation Method),あるいは近年営利企業やNPO法人などで使われいる「社会的な投資効果」(SROI: Social Return on Investment)などの方法を,実践事例を交えて解説している。紹介されている実践事例はシアトル公共図書館,ピッツバーグ・カーネギー図書館,ニューヨーク州サフォーク郡図書館などの17件であり,多様性に富んだセレクトになっている。いずれの報告書もオンラインで入手可能であり,成果と手法を詳細に確認することが可能である。
研究レポートでは,これらの研究と実践の現状を分析したうえで,調査研究によって導かれた論拠を介して図書館を支える関係者とコミュニケーションをとるべきであることや,このような調査研究を手軽に行えるよう計算プログラムなどのツールを開発すべきであることなどを提言している。
なお,この研究レポートは,ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団の支援のもとで進められているプロジェクト“Building Knowledge for Library Advocacy”の一環としてまとめられたものである。このプロジェクトは,図書館のアドヴォカシーに関する知を構築することを目的とするものであり,併せて構築されているウェブサイト“Act for Libraries”において,この調査研究を補完する情報が掲載されている。
Ref:
http://www.actforlibraries.org/pdf/WorthTheirWeight.pdf [553]
http://www.libraryjournal.com/article/CA6444813.html [554]
http://www.actforlibraries.org/ [555]
CA1627 [556]
カナダでは,主にカナダ国立図書館・文書館(LAC)および各州・準州の議会図書館において,ウェブ上で公開された自治体の刊行物の収集が行われている。2007年春,カナダ研究図書館協会(CARL)がこの収集状況に関する第2回の調査(第1回は2005年1月に実施)を行い,その結果をウェブサイトで刊行した。
カナダでは各州ごとに納本規定が異なっている。ケベック州では,ウェブ上の刊行物も含めた納本規定があり,ケベック州立図書館・文書館(BanQ)がすべての州政府部局の刊行物を収集している。BanQはアクセス性と長期保存の両方を考慮し,収集したコンテンツはそのままのフォーマットで保存するとともに,PDFフォーマットに変換して提供する措置を取っている。ただし,議会の刊行物はBanQに収集・提供の権利がないため集めておらず,また法令関係資料も,コンテンツのサイズと収集の複雑さから集められていない。
ケベック州に続く規模で収集を行っているのはオンタリオ州,ブリティッシュコロンビア州である。両州とも,各図書館および一般からのアクセスが可能であり,特に前者はリポジトリ管理ソフト“DSpace”を利用して,州の大学図書館協会が運営している学術ポータルサイトにメタデータを提供している。ただし,両州とも議員向けのコレクションとしてコレクション構築をはじめた経緯から,前者では一過性資料,後者では学校のカリキュラム,学術出版物,ポスターなどが対象外になっている。
このほか,納本規定がない中で収集を実施しているマニトバ州,システムの制約によりコンテンツを一般公開できていなかったアルバータ州では,それぞれ質・量の増加,一般公開可能なシステムの導入と,2005年の調査時点から進歩が見られた。また2005年時点では収集を実施していなかったノバスコシア州,ヌナブット準州など4州でも収集が開始された。しかし,プリンスエドワードアイランド州,ユーコン準州など4州では,依然として収集が行われていない。
なお,2005年の調査時点では,ウェブ上の刊行物としては連邦政府のものだけを収集対象としていたLACが,2006年から各州・準州のウェブサイトも対象に収集ロボットによる年2回程度のクロール収集を開始している。この方法で収集したコンテンツには,書誌コントロールがなされておらず,またLAC館内からしか見ることができないが,一般公開に向けて関係機関との交渉を準備しているところであるという。
2005年からこの調査を担当しているハバーツ(Andrew Hubbertz)は,各州ごとに取り得る戦略が異なることに留保しながらも,全体の総括として,
などの共通の課題を指摘している。もっとも,2005年に比べ収集コンテンツが質・量ともに充実してきており,そのほとんどが一般公開されている点について,ハバーツは高く評価している。LACの取り組みも含め,政府や自治体の刊行物のアーカイビングのさらなる進展が期待される。
Ref:
http://www.carl-abrc.ca/projects/preservation/pdf/ah_report_update.pdf [557]
http://www.carl-abrc.ca/projects/preservation/pdf/provincial_web-pubs_report.pdf [558]
http://www.carl-abrc.ca/projects/preservation/pdf/Cookbook.pdf [559]
http://www.carl-abrc.ca/projects/preservation/pdf/e-docs_report2.pdf [560]
中国・上海図書館では,世界各国の図書館に中国関係図書を寄贈するプロジェクト「上海ウィンドウ(Window of Shanghai)」を2003年から実施している。2007年5月9日,このプロジェクトの専用ウェブサイトがオープンした。
この「上海ウィンドウ」は,海外の図書館における中国語蔵書の不十分さを憂い,最新の中国の出版物を寄贈し,中国の歴史・文化や最新の民主化・発展状況を海外の読者に提供することを目的としている。2007年6月時点で22か国,30の国立・公共・研究図書館に合計1万冊の図書が寄贈されており,日本でも2006年12月に長崎県立長崎図書館が対象となっている。
「上海ウィンドウ」では通常,上海図書館と対象館とが3年の契約を結び,1年目には300〜500冊程度の図書が,2年目,3年目には各100冊の図書が上海図書館から寄贈される。寄贈を受けた館では,「上海ウィンドウ」と書かれたプレートとともに図書を専用閲覧室または専用書架に開架すること,また寄贈を受けたことを周知し,図書を適切に保存,整理,貸出することが求められている。さらに,貸出数,開架・貸出方法,人気の高い分野,利用の多い読者層などについての統計・レポートなどでのフィードバックも求められている。上海図書館によれば,この寄贈図書によって現地在住の中国出身者が母国との紐帯を深めたり,寄贈を受けた各館が異文化プログラムを実施する際に寄贈図書を利用したりするなどの活用事例が,このようなフィードバックから明らかになったという。
なおオランダのハーグ公共図書館とは,2005年からの3年の契約が切れた後も,さらに3年の協力契約を締結している。両館の間では,「上海ウィンドウ」とは逆にハーグ公共図書館から上海図書館にハーグやオランダに関する図書を寄贈する「ハーグ・ウィンドウ」が実施されているほか,業務交流も予定されている。一方向の情報提供から双方向の文化交流へと,その取り組みは拡大している。
Ref:
http://www.library.sh.cn/windowofshanghai/index.aspx [561]
http://www.library.sh.cn/japanese/news/list.asp?id=886 [562]
http://www.library.sh.cn/japanese/news/list.asp?id=912 [563]
http://www.library.sh.cn/japanese/news/list.asp?id=915 [564]
http://www.lib.pref.nagasaki.jp/news/pdf/pref/ishi153.pdf [565]
国際標準化機構/情報とドキュメンテーション技術委員会(ISO/TC46)の国際会議が2007年5月7日から11日までスペインのサンチアゴ・デ・コンポステーラで開催された。2003年ローマ大会以来の大規模なTC46会議となった今回のスペイン大会では,TC46の運営にかかわる決議を行うTC46全体総会,新規の規格作成や既存の規格の改定内容について決議するSC(Subcommittee)総会,規格の原案を作成・検討するWG(Working group)が数多く開かれた。WGだけの出席者も含めると,総勢25か国100名を超える参加があった。日本からはISO加盟機関である日本工業標準調査会(JISC)の代表として,国立国会図書館をはじめ5機関5名が参加した。
TC46に属するSCには,SC4(技術的な相互運用性),SC8(品質−統計と評価),SC9(情報源の識別と記述),SC11(アーカイブと記録管理)があり,今回の会議の主なトピックはそれぞれ次のようなものであった。
スペイン大会の最後を締めくくるTC46全体総会では,20か国約50名の出席があり,TC46のビジネスプランの検討,TC46事務局からの報告,各SCの報告等があった。次回のTC46大会は,2008年5月12日から16日までストックホルム(スウェーデン)で開催予定である。
(国立国会図書館 徳原直子)
(注)国際規格となるまでの道のりは,次のとおりである。ただし,改定内容や投票の状況(全員賛成など)によってスキップ可能な段階もある。
新規作業項目の提案(NP: new work item proposal)の投票
⇒ワーキングドラフト(WD: working draft)の作成
⇒委員会原案(CD: committee draft)の投票
⇒国際標準原案(DIS : draft international standard)の投票
⇒国際標準最終案(FDIS : final draft international standard)の投票
⇒ISOとして出版
Ref:
http://ci.nii.ac.jp/vol_issue/nels/AN10005857/ISS0000347980_jp.html [567]
http://www.iso.org/iso/en/CatalogueListPage.CatalogueList?COMMID=1757 [568]
E652 [566]
土屋俊・千葉大学教授を代表とする研究グループにより,2004〜2006年度の3か年にわたり進められてきた研究プロジェクト“REFORM”(電子情報環境下における大学図書館機能の再検討;E558 [570] 参照)の報告書がこのほど公開された。
“REFORM”は,メディア情報通信技術の進歩など,大学図書館を取り巻く環境の変化を,大学図書館機能に変革をもたらすものであるとの前提に立つ。その上で,電子化された学術情報システムにおける大学図書館機能の概念的検討,国際比較を含めた大学図書館機能の実態の解明,学術情報のマネジメント・サービス・発信の観点からの大学図書館将来像の具体的提案,の3点を目的に研究を進めてきた。その結果,大学図書館に関する政策動向,図書館支援体制,学術情報の電子化と大学図書館の関係について,(1)1970年代以降の,日本の大学図書館の政策動向とその成果,(2)1980年代以降整備された「学術情報システム」の成果と,NACSIS-ILLを中心とした現状分析,(3)2000年以降顕著になった,学術情報の電子的生産・流通体制の変貌と大学図書館に対する影響,の3点を明らかにした。
これらの研究成果をもとに“REFORM”研究チームが行った提言は,大学図書館の実務と研究の双方に及んでいる。実務について,以下の4点を指摘している。
また大学図書館研究について,以下の2点を提言している。
この研究は“REFORM2”(電子情報環境下において大学の教育研究を革新する大学図書館機能の研究)として,2007年度からさらに3か年,継続されることになっており,「2016年の大学図書館像」を描き出すべく,活動を強化しつつある。大学図書館が大学外からの学術情報のゲートウェイだけではなく,大学内で生産される情報の発信・普及機能を担う組織に変革することが求められている現在,“REFORM2”がどのような提案をするか,大いに注目される。
Ref:
http://cogsci.l.chiba-u.ac.jp/REFORM/Final_Report/reform_final_report.html [571]
http://cogsci.l.chiba-u.ac.jp/REFORM/ [572]
E558 [570]
2003年から内閣に設置されている知的財産戦略本部が,2007年5月31日に開催された第17回会合で「知的財産推進計画2007」を決定した。
「知的財産推進計画2007」では,知的財産創造の活性化,適切な保護,有効な活用,の好循環が自立的に起こる経済社会を目指すべき「知財立国」であると定義する。その上で基本的な考え方として,2006年に決定した「知的財産基本法の施行の状況及び今後の方針について」に盛り込まれた「重点項目の1つである「国際的な展開」をこれまで以上に意識し,我が国が世界に開かれた最先端の知財立国になるために,施策の一層の絞り込みと深掘りを行」い,「また,これまでに改革が実現した知財に係る制度や体制を的確に運用するとともに,新たな課題に機敏に対応することにより,具体的な成果を上げることを主眼」(「知的財産推進計画2007」5頁,以下頁数は同様)としている。
計画は,(1)知的財産の創造,(2)知的財産の保護,(3)知的財産の活用,(4)コンテンツをいかした文化国家づくり,(5)人材の育成と国民意識の向上,の5章で構成されている。具体的に提言されている施策は多岐に及ぶが,過去の同様の計画に比べ,図書館に関わりの深いテーマが取り上げられている。図書館や著作権法に関係が深い施策では,たとえば,
などが取り上げられている。なお著作権保護期間の在り方については,「保護と利用のバランスに留意した検討を行い,2007年度中に一定の結論を得る」(94頁)としている。
Ref:
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/kettei/070531keikaku.pdf [574]
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/index.html [575]
4月7日,米国オレゴン州ジャクソン郡で,財政難を理由に15の公共図書館すべてが閉鎖される事態が発生した。米国図書館協会(ALA)によると,これは近年で最大の図書館閉鎖だという。
連邦政府所有の林業地区を抱える米国各州の郡は,これまで林業地区から得られた政府収入の一定割合を公共事業用の補償金として受け取ってきた。折からの林業の衰退に伴いこの補償金が減少した2000年からは,セーフティ・ネットとして公共事業への補助金を追加提供する“Secure Rural Schoolsand Community Self Determination Act”が施行された。ジャクソン郡では同法により,毎年2,300万ドル(約28億円)を受けていた。
ところが同法は2006年9月までの時限立法であり,連邦議会で同法は更新されなかった。これによりジャクソン郡は財政難に陥り,図書館の運営予算800万ドル(約9.7億円)についても、その80%近くが不足することになった。これを受けて,15図書館の閉鎖,司書17名を含む職員115名の解雇に至った。
ジャクソン郡では5月15日に,新たに図書館目的税(固定資産税評価額の0.066%分の増税)を課して図書館を再開館することの是非を問う住民投票が行われたが,反対が58.3%と過半数を占めたことにより,再開館はならなかった。オレゴン州にはジャクソン郡と同様に財政難に陥った郡がほかにもあり,いずれも住民投票で図書館目的税の導入が否決されている。これらの郡でも,図書館の閉鎖や開館時間・人員の削減が行われる見通しである。
ALAはウェブサイトで図書館財政のページを構築し,同様に財政難による閉鎖・縮減を強いられた図書館の事例を紹介している。これらの事例から,米国にも厳しい状況に直面している図書館が少なからず存在しているという状況を知ることができる。
Ref:
http://www.jcls.org/ [171]
http://purl.access.gpo.gov/GPO/LPS10925 [576]
http://www.ala.org/ala/pressreleases2007/march2007/jplstatement.htm [577]
http://www.ala.org/template.cfm?section=libraryfunding&template=/cfapps/pio/state.cfm&state=or [578]
http://www.ala.org/ala/news/libraryfunding/libraryfunding.htm [579]
International Tracing Service(ITS)の保管しているナチスのホロコースト関係資料が,この秋にも公開される見通しとなった。
ITSは,第二次世界大戦時の戦争犠牲者に関する資料を保管している機関であり,1933年にナチス政権下で強制収容所が建設されてから戦争終結に至るまでの逮捕,移送,投獄,強制労働,そして死亡の記録など,3,000万点以上を保管している。しかしながらその利用については,1955年6月6日のボン協定に基づき,個人情報等に配慮し犠牲者の家族・親族等に限定されてきた。これに対して,ホロコースト研究者等からは,資料を早急に公開するよう要望が寄せられていた。1995年には個人情報を含まない一部の資料が,研究者にも利用可能となったが,これは全体のわずか2%ほどの資料であった。
歴史的に重要なこれらの資料を研究者に公開するため,また原本の恒久的保存のため,ITS,およびITSの運営管理に決定権を持つ11か国(ベルギー,フランス,ドイツ,ギリシア,イスラエル,イタリア,ルクセンブルク,オランダ,ポーランド,英国,米国)の間で,ボン協定の修正に関する調整が行われてきた。2006年5月に研究者への公開について合意に達し、さらに2007年5月には、大戦中に作成されたホロコースト関係資料のほか,戦後にITS,各国政府および個人との間でやり取りされてきた往復書簡の取り扱いについてもルールが定められ,25年以上経過したものについて公開されることになった。現在,各国が批准のための手続きを進めており,既に7か国が批准しており,残りの4か国についても,秋には手続きが完了する見込みとなっている。
この法的手続きと並行して,ITSはすべての資料のデジタル化を進めてきた。書架総延長25キロにも及ぶ膨大な資料のデジタル化は,スタッフにより手作業で進められてきたが,予定よりも早く進行し既に完了している。7テラバイトに及ぶこの大規模なデジタルファイルは,11か国のうち希望する国に複製が置かれる見込みであり,既に米国(ホロコースト記念博物館),イスラエル(ヤドバシェム博物館)などが要望し準備を進めている。
11か国すべての手続きが完了すると,ホロコースト関係資料が,戦後半世紀以上の時を経て初めて研究者に公開されることとなる。
Ref.
http://www.its-arolsen.org/english/index.html [580]
http://www.its-arolsen.org/english/aktuell/2007/02-15-2007_EN.htm [581]
http://www.its-arolsen.org/english/aktuell/2007/03-09-2007_EN.htm [582]
http://www.its-arolsen.org/english/aktuell/2007/05-10-2007_EN.htm [583]
http://www.its-arolsen.org/english/aktuell/2007/05-15-2007_EN.htm [584]
英国研究情報ネットワーク(RIN)と研究図書館コンソーシアム(CURL)は,2006年9月から共同で,研究者の研究図書館の利用について,調査を進めてきた。その成果を報告書『研究図書館とそのサービスの研究者の利用(Researchers' Use of Academic Libraries and their Services)』としてまとめ,2007年4月に公表した。
本調査は,研究者が研究図書館をどのように利用し,認識しているかを把握し,研究図書館の政策を議論する際の根拠(エビデンス)として利用していくことを目的としている。調査手法としては,アンケート調査をおこない2,250名以上の研究者と300名以上の図書館員から回答を得たほか,質的調査として,(1)図書館員30名に対する電話インタビュー,(2)アンケートの際寄せられた自由意見の分析,(3)図書館員3名,研究者7名に対するインタビュー,を行うなど,複合的なアプローチをとっている。
その結果によれば,研究を進めてゆく上で必要となる情報を得る際に,研究機関の図書館が有効もしくはやや有効と回答した研究者は,あわせて約72%に上っている。また総じて,図書館が研究サービスにおいて効果的な業務を行っていると認識されていることを明らかにしている。しかしながら研究サイクルにおける研究者や図書館等の役割・責任について考察すべき時であるとし,下記の7つのテーマについて,現状を分析している。
4月30日には,本研究の成果報告を兼ねたワークショップ“Who needs libraries anyway?”が開催され,研究図書館員,人文科学研究者,自然科学研究者から1名ずつパネリストが参加し,それぞれの立場から本報告書に対するコメントを発表した。この調査結果をもとに,英国は研究図書館の将来像をどのように描いていくのか,議論の進展が期待される。
Ref:
http://www.rin.ac.uk/files/libraries-report-2007.pdf [586]
http://www.rin.ac.uk/files/programme.pdf [587]
http://www.rin.ac.uk/register [588]
2007年2月,日本工業規格JIS X 0812「図書館パフォーマンス指標」が改定された。これは,2003年に国際標準規格ISO 11620“Library performance indicators”に追補版(Amd 1: 2003“Additional performance indicators for libraries”)が制定されたのを受け,これを反映させたものである。
この改定と同時に,図書館パフォーマンス指標の基礎となるデータの規定を含むISO 2789: 2003 “International library statistics”に対応した,JIS X 0814「図書館統計」が新たに制定された。図書館間での比較が可能となるよう,図書館が採取するべき統計データの定義や集計方法について規定されている。ただし,ISO 2789については既に2006年に改訂版が出版されている。
これらISO 11620やISO 2789を担当する国際標準化機構/情報とドキュメンテーション技術委員会(ISO/TC46)の統計・評価分科委員会(SC8)では,パフォーマンス指標をめぐるISOの改定作業が進められている。
SC8に設置されているパフォーマンス指標のための作業グループ(WG4)では,ISO 11620とISO/TR 20983「電子図書館パフォーマンス指標」(CA1497 [591]参照)を統合するための改定作業が進められている。既に2回にわたる国際規格原案への投票が終了し,現時点で44の指標が候補にあがっている。2007年10月には最終国際規格案の投票が行われる予定である。
また,SC8のもと2006年10月に新たに設置された国立図書館のためのパフォーマンス指標の作業グループ(WG7)では,テクニカルリポート(ISO/TR 28118)の取りまとめ作業が進められている。このテクニカルリポート(TR)化は,2005年IFLAオスロ大会の国立図書館分科会で提案されたもので,WG7には国立国会図書館も参加している。
あらゆる図書館の評価を対象とするISO 11620には,「人口当たり来館回数」「人口当たり貸出数」など,全国民を対象とする国立図書館には有効ではない項目が多い。また,国立図書館の重要な業務である納本制度,国際協力業務などについての指標が存在しない。これらを踏まえ,ISO/TR28118には「国内出版物の納本率」,「特定コレクションにおける電子化済み資料の割合」,「国際協力業務に従事する職員の割合」などの指標が選定されている。WG7ではTR制定までを担当する。TR制定後は各国立図書館による試行が行われ,有効性が認められた指標については国際規格(ISO)化することとなっている。
(国立国会図書館: 徳原直子)
Ref.
http://www.jla.or.jp/archives/343.txt [592]
http://ci.nii.ac.jp/naid/110004759541/ [593]
http://www.iso.org/iso/en/CatalogueDetailPage.CatalogueDetail?CSNUMBER=34358 [594]
http://www.iso.org/iso/en/CatalogueDetailPage.CatalogueDetail?CSNUMBER=39181 [595]
http://www.iso.org/iso/en/CatalogueDetailPage.CatalogueDetail?CSNUMBER=34359 [596]
CA1497 [591]
2007年5月7日から3日間にわたり,米国ノースカロライナ州ダーラムで,EBLIP(E583 [543],CA1625 [103] 参照)の第4回国際会議が開催された。総合テーマ「EBLIPを通して専門性を変容する」のもと,分科会3会場での口頭発表38本が行われたほか,会場ロビーに設けられたポスター展示のコーナーでは20本以上のポスター発表も行われた。また講演も前回が2本であったのに対して今回は5本が行われ,いずれも充実したものであった。
EBLIP国際会議は,2001年英国で開催された第1回の会議以降,カナダ,オーストラリアで開催されてきたが,米国で開催されるのは今回が初めてである。米国をはじめ,英国,カナダ,オーストラリア,ニュージーランドなどの英語文化圏のほか,デンマーク,トリニダード・トバゴ,スウェーデンなどからあわせて200名以上の参加もあり,活発な議論が行われた。
初日の基調講演では,2004年に図書館・情報専門家協会(CILIP)会長を務めたヘインズ(Margaret Haines)が,これまでEBLIPのコンセプトのプロモーションと実践を積み重ねてきたことを踏まえ,問題自体にフォーカスしてきた段階から,その問題の具体的解決にフォーカスする段階にあるとして,これからEBLIPが成熟期に入るとの認識を示した。
口頭およびポスター発表の内容は,図書館業務の多様な局面でエビデンスをどのように導き出し,適用するのかを基本にすえつつも,図書館業務の設計,アウトカム評価,蔵書構築,利用者のニーズ理解,レファレンスサービスの質的向上など,バラエティに富んだものであった。日本からも,永田治樹(筑波大学)が口頭発表を,酒井由紀子(慶應義塾大学信濃町メディアセンター),小田光宏(青山学院大学)および筆者がポスター発表を行った。
最終日には,ディベート“EBLIP: Clear, simple,- and wrong? A friendly debate”が行われた。EBLIPは,明確で,単純で,そして間違っているとして批判する立場にプルーチャック(T. Scott Plutchak)に対して,EBLIPの中心的推進者の1人であるブース(Andrew Booth)が,『不思議の国のアリス』などを引用しつつ,ユーモアたっぷりに持論を繰り広げた。これまでのEBLIPに対するストレートな批判と,それに対するEBLIPの理論と実践の変遷をたどる内容となっており,興味深いディベートであった。
EBLIP国際会議は,2年後の2009年にストックホルム(スウェーデン)で開催される予定である。英語文化圏を中心に成長してきたEBLIPがはじめて非英語圏の国で国際会議を行うことになる。今後2年間で議論がどのように深まり,実践が展開されていくのか,また実践を支える環境がどのように整備されるのか,今後の動向が期待される。
(国立国会図書館: 依田紀久)
Ref.
http://www.eblip4.unc.edu/ [597]
http://www.eblip4.unc.edu/downloads/eblip4_final_smaller.pdf [598]
http://www.kaken-evidence.jp/ [599]
E583 [543]
CA1625 [103]
国立情報学研究所.次世代学術コンテンツ基盤共同構築事業中間まとめ.2007.17p.(オンライン), 入手先, (参照2007-05-30).
国立情報学研究所(NII)は各大学のコンピュータ設備やソフトウェア,学術コンテンツ及びデータベースをネットワーク上で共有し,人材育成や推進体制の整備を図る最先端学術情報基盤(Cyber Science Infrastructure:CSI)の構築を進めている。その一環として行われている次世代学術コンテンツ基盤共同構築事業は,機関リポジトリ(Institutional Repository:IR)の構築と各大学間における連携支援を目的としたものである。
この事業は2004年度に国立6大学と共同で実施したIR構築ソフトウェア実装実験プロジェクト(E323 [90] 参照)に端を発し, 2005年度には19大学のIR構築・運用事業を支援した。そしてこれらの成果を踏まえ,2006年度には「IRの構築・運用事業」に加え,それを発展させた「先駆的な研究開発事業」にも支援を拡大し,各事業の公募を行った。
2006年度の「IRの構築・運用事業」は,IRの全国的な展開を目的とし,57大学を対象として実施された。各大学で生産された学術情報や研究成果の蓄積・発信基盤を強化するため,大学の独自性を生かしたIRの構築・運用を推進している。本報告書では,各大学のシステムの導入状況,コンテンツの蓄積状況,運用体制と優良実践例8件を紹介している。
また「先駆的な研究開発事業」では,多様なメタデータの相互変換システムの開発やIRコミュニティの活性化等,IRの更なる活用を図る22のプロジェクトが実施された。本報告書では,そのうち,「AIRway」(北海道大学等)(E622 [600]参照),「機関内学術情報資源の統合検索」(九州大学),「XooNIps Libraryモジュールの開発」(慶應義塾大学)等,高い評価を受けた6件が紹介されている。
学術コンテンツの保存とアクセスの保証は喫緊の課題となっている。本報告書により,大学等の学術機関が連携してコンテンツを共有,確保し,広く発信していくための情報基盤としてのIRの有効性と可能性,そして,今後も継続的にIR運用を支援していくという,NIIの方針とその成果を確認することができる。
OCLCは2007年4月11日,インターネットで提供している総合目録データベース“WorldCat.org”を参加館向けにカスタマイズして提供するサービス“WorldCat Local”を試行すると発表した。WorldCat.orgが提供しているデータ,備えている機能はそのままに,当該の図書館の利用に特化した検索結果の排列,当該の図書館が導入している図書館システム(貸出管理システム,相互貸借システム,全文データベースなど)と連携した資料へのナビゲーションなどを実現するものである。
4月末,このWorldCat Localの試行版が,ワシントン大学図書館で最初に公開された。検索語を入れて検索を行うと,(1)同館の所蔵資料/同館から提供できる資料(オンラインの資料など),(2)同館が所属するコンソーシアムの参加館の所蔵資料,(3)その他の館の所蔵資料,の順に検索結果が排列される。この検索結果の一覧表示から詳細表示を参照すると,資料の配置場所・利用状況が表示されており,すぐに資料の請求(同館から利用できない資料は相互貸借の請求)を行うことができるようになっている。またWorldCat.orgには4月19日,4つの雑誌記事索引データベース(ArticleFirst,GPO,ERIC,MEDLINE)が追加されており,これらもWorldCat Localの検索対象になっている。同館が印刷媒体または全文データベースで購読契約している資料について,資料請求または全文データへのリンクが表示されるようになっている。
なお今後も,RLGが提供していた総合目録のデータや,別の索引データベースの追加が予定されているほか,WorldCat Localと連動するOpenURL対応のリンクリゾルバ“WorldCat Resolver”や,ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)の提供も予定されているという。正式なサービスの開始は,2007年の夏〜秋頃とされている。
この試行版第一弾では,主にOCLCが提供している図書館システム,全文データベースとだけ連携しているとのことであるが,今後,カリフォルニア州やイリノイ州の各種図書館で試験運用を行う過程で,他社の図書館システムとの互換性も検証していくことになっている。WorldCat LocalをOPACとして採用する図書館がどの程度増加していくのか,また図書館システム業界の動向(E641 [601]参照)にどのような影響が及ぶのか,今後の展開が大いに注目される。
Ref:
http://www.oclc.org/news/releases/200659.htm [602]
http://www.wils.wisc.edu/events/04_25_07/ [603]
http://www.lib.washington.edu/about/worldcatlocal/what.html [604]
http://newsbreaks.infotoday.com/nbReader.asp?ArticleId=35939 [605]
http://www.rlg.org/en/page.php?Page_ID=21014 [606]
http://www.oclc.org/news/announcements/announcement217.htm [607]
E354 [608]
E588 [609]
E641 [601]
図書館職員向けオンライン学習コミュニティの開発・運営を手がけるWebJunctionが,ブレンディド・ラーニング(blended learning)の枠組みを整理する報告書を公開した。
米国では図書館員の研修として,e-ラーニングがトレンドになっている。WebJunctionでは,2006年に,この状況を確認するとともに,未だ利用者のニーズとのずれがあるなどの課題を明らかにし(E557参照),同時にコンテンツの充実を進めている。この報告書は,対面式も含むあらゆる形態の研修をどのようにブレンド(混和)すればより高い研修効果が得られるかを総合的に検討するため,技術の進化とともに多様化したe-ラーニングの状況を整理するものとなっている。
具体的には,e-ラーニングを含む多様な研修方式を,対面式,同期型バーチャル協同式,非同期型バーチャル協同式,非同期型マイペース式の4つのカテゴリーにわけている。そして特に注目される電子掲示板,インスタントメッセージ(チャット),ポッドキャスティング,e-ラーニングソフトウェア・ツール,ウェブ・コンフェレンスの5つについて,それぞれ2ページ程度で特徴や利用可能なソフトウェアを紹介している。
また併せて,ブレンディド・ラーニングの事例として以下の7つの研修の紹介されている。
新しいツールとブレンディド・ラーニングの考え方により,今まで不可能だった革新的な研修モデルが成果を挙げつつあることが端的に見て取れる。新しい研修モデルは今後も登場するものと思われるが,WebJunctionでは,引き続き新しい実践事例の情報収集と共有に努めるとし,情報提供を求めている。
Ref:
http://www.oclc.org/news/releases/200661.htm [611]
http://data.webjunction.org/wj/documents/13893.pdf [612]
http://webjunction.org/blendedlearning [613]
http://techessence.info/node/88 [614]
http://learning.libraryu.org/home/ [615]
http://www.librarybytes.com/2006/11/nine-seven-best-practices-on-learning.html [616]
http://web2.unt.edu/cmp_lead/ [617]
E557 [390]
2007年4月,国際図書館連盟・情報への自由なアクセスと表現の自由に関する委員会(IFLA/FAIFE)が,2002〜2006年に刊行した“World ReportSeries”の報告書5冊の電子版をウェブサイトで公開した。
このシリーズは,世界の知的自由と図書館の状況を紹介するもので,2001年から毎年,IFLA年次大会にあわせて刊行されている。奇数年には,IFLA会員各国に対して情報アクセス・知的自由の現況を聞くアンケートを実施し,その結果を分析・紹介した“World Report”が,また偶数年には,情報アクセス・知的自由に関する特定のテーマについて論じた“Summary Report”が刊行されることになっている。これまでのSummary Reportのテーマは,2002年が「図書館,コンフリクトとインターネット」,2004年が「生涯リテラシーのための図書館−生涯学習とエンパワメント(empowerment)の基盤としての制限なき情報アクセス」,2006年が「HIV/AIDS,貧困,汚職との戦いと図書館」であった。World Report,Summary Reportのいずれの号とも充実した内容で,各国の図書館・情報サービスが直面する情報アクセス・知的自由に関する課題をつぶさに知ることのできる,重要な情報源となっている。
2007年はWorld Reportの刊行年であり,各国への質問調査の実施について,IFLA/FAIFEから第一報が出されている。それによれば,(1)反テロ法制と図書館,(2)女性の情報アクセスの自由,(3)HIV/AIDSに関する啓蒙と図書館,の3つの主題について,重点的に調査を行うとされている。調査結果は,IFLAダーバン大会で公表される予定である。
Ref:
http://www.ifla.org/faife/report/intro.htm [618]
http://www.ifla.org/faife/report/data-colletionWR2007.htm [619]
欧州デジタル図書館(E390 [190],E461 [191],E541 [193]参照)の著作権問題は,図書館界,出版業界,大学・学術機関,Google社の代表が参加する「デジタル図書館に関する高次専門家グループ著作権サブグループ(Copyright Subgroup, High Level Expert Group on Digital Libraries)」によって検討がなされてきた。同サブグループでは2006年10月にはデジタル資料の長期保存と著作権,“Orphan Works(E550 [140]参照)”や「絶版資料(Out-of-Print)」の利用と著作権について中間報告を公表し,議論を続けてきたが,このほど,著作権問題の解決に向けた提言をまとめ,2007年4月18日に公表した。
この提言では,(1)長期保存を目的としたデジタル資料の複製やマイグレーションの実施,(2)“Orphan Works”利用に際する,合理的な事前調査の実施,(3)「絶版資料」に対するデジタル化と館内利用を認めるライセンスの導入,の3点を示している。とりわけ(3)では,「絶版資料」を「すでに商業的価値を喪失していたり,権利者により絶版であると宣言されている資料」と定義し,権利者と締結する契約のモデルを提示している。このモデルでは,図書館のデジタル利用権をいつでも撤回できるといった権利者が保持する権利にも,具体的に言及されている。
「高次専門家グループ」では今後,欧州の文化的資源のデジタル化に関する官民共同事業や民間資金の活用について議論していくほか,公的資金の助成を受けた研究成果のオープンアクセス化への取り組みも予定している。
Ref:
http://ec.europa.eu/information_society/newsroom/cf/document.cfm?action=display&doc_id=295 [621]
http://europa.eu/rapid/pressReleasesAction.do?reference=IP/07/508&format=HTML&language=EN [622]
http://ec.europa.eu/information_society/newsroom/cf/itemlongdetail.cfm?item_id=3366 [623]
http://ec.europa.eu/information_society/newsroom/cf/document.cfm?action=display&doc_id=296 [624]
http://www.ala.org/ala/alonline/currentnews/newsarchive/2007/april2007/eurodiglib.cfm [625]
E390 [190]
E461 [191]
E541 [193]
E550 [626]
全国公共図書館協議会は2007年3月,図書館職員の研修に関して全国の公立図書館を対象に実施した電子メールによるアンケート調査結果を「2006年度(平成18年度)公立図書館における図書館職員の研修に関する実態調査報告書」として公表した。この調査には,全都道府県立図書館と96%の市区町村立図書館が回答している。
本報告書は,(1)研修の実施状況,(2)研修への参加状況,(3)研修の問題点,(4)全国7ブロックの研修の4章からなり,全28項目の調査データをとりまとめたものである。第1章では主催した研修の内容が分析されており,第2章では開催地別研修参加者数などが都道府県別に比較できる。第3章では,研修を企画・実施する際も,研修に参加する上でも,いずれも予算と時間と人手の確保が難しいという実態を確認できる。しかしながら「研修は研修テーマの習得以外に,参加者間のコミュニケーションも大切な要素である」といった意見が調査回答にあるように,研修参加は他館の情報を生の声で収集でき,かつ自館をアピールできる貴重な機会であるといえよう。第4章は,全国公共図書館協議会の全国7ブロック(北日本,関東,東海・北陸,近畿,中国,四国,九州)が2005年度に主催した研修の実態を表している。
地域の学習・情報拠点としての役割を果たすべき公共図書館にとって,図書館職員の資質向上が不可欠であるという認識のもと,どのように研修の充実を図っていくかは各館共通の課題である。全国公共図書館協議会は,2006,2007年度の2か年で「図書館職員の研修」についての調査研究に取り組むとしている。本調査データの特色ある研修事例をはじめ,詳細な分析や提言等は2007年度に分析を行うとしており,成果が期待される。
Ref:
http://www.library.metro.tokyo.jp/15/15h2006.html [627]
米国における電子ブック−出版点数,発展状況およびドイツとの比較 Just, Peter. Electronic books in the USA ? their numbers and development and a comparison to Germany. Library Hi Tech. 25(1), 2007, 157-164.
電子ブックの販売統計は,業界団体である国際デジタル出版フォーラム(IDPF: International Digital Publishing Forum)から定期的に発表されているが,一方で,電子ブックの出版点数についての信頼できる統計データは公表されていない。
このような中,ドイツのユスト(Just, Peter)は英語圏の英語図書の販売図書目録データベースである“Global Books In Print Online(GBIPO)”のデータを分析し,米国で市販されている英語の電子ブックの出版点数を推計する試みを行った。ユストの調査の結論は次のとおりである。
更に,ユストはドイツ圏で出版されているドイツ語の電子ブックについて独自に調査を行い,2006年8月現在の電子ブックの出版点数を約9,000タイトルと推計し,これがハードカバー版の総タイトル数の1.7%に当たると述べている。
ユストの調査は,電子ブックの出版点数とその推移に焦点を当てたもので,分野別,出版社別の電子ブックのデータはない。また,GBIPOに収録されるまでのタイムラグや,出版社がGBIPOに登録しないタイトルの存在もあり,135,000点というのは控え目に見積もられたものである。このような制約はあるにせよ,ユストが米国における電子ブックの出版点数と最近20年間の推移について統計を提供したことは評価できよう。
(東北大学附属図書館:加藤信哉)
Ref:
http://www.idpf.org/ [628]
http://www.globalbooksinprint.com/bip/ [629]
“ライブラリーマン”を名乗る男が,こんなことを言い出した。
「1年間,毎日1日1枚の写真をウェブにアップするのは,かなりシンドイことかもしれない。けれども,365日で365枚の写真をアップするのであれば,できるかもしれない。もしそれをあなたの図書館がやったら,それはとても魅力的なコンテンツになるのではないか?図書館の活動を地元のみんなに紹介することもできるし,1年分の写真が集まればもしかしたら地元の新聞社もニュースとして紹介してくれるかもしれない。すばらしいアドヴォカシーだよね!」
ライブラリーマンは,その名も“Libraryman”というウェブサイトを運営している人物であり,ポーター(Michael Porter)という実在の図書館員である。彼は,Yahoo!系列の画像共有サイト“flickr”に,“ 365 Library Days Project”というコーナーを作り,プロジェクトへの参加を呼びかけた。すると,多くの図書館員が反応し,じわじわと,世界の図書館の写真が集まりはじめた。
ビルの谷間にそびえ立つガラス張りの公共図書館,本の読み聞かせをする図書館員とそれを聞く子どもたち,閲覧室で本に埋もれる利用者,本を積んで一心不乱に勉強する学生,フォーラムで熱弁をふるう図書館員,図書館友の会の勧誘パンフレットの展示コーナー。こういった写真は,どこかで目にしたことがあるだろう。けれども,世界中の図書館を見てきた人でも,図書館の閲覧室でハープを奏でる女性,図書館の庭と思しき場所で行われているイベントで犬にマイクを向ける図書館員, “Second Life”というオンライン上の仮想都市コミュニティサイトに作られた図書館などは,あまりお目にかかったことはないかもしれない。もちろん,奇をてらった写真ばかりではない。建物概観の写真,書棚の写真,児童室の写真,職員用の喫茶コーナーの写真,図書館員の集合写真など,ごく普通のものも数多く登録されている。被写体は様々だが,どの写真も図書館の現在を映し出している。
“flickr”には,1日1枚,自分の写真を投稿するという“365 Days”プロジェクトがあり,なかなかの人気を誇っている。また,米国の図書館の中には,ソーシャルネットワークサイトの1つとして,その活用に熱心なところも多い(CA1624 [241]参照)。そのような中,ライブラリーマンの音頭ではじまったこの企画。1年後にどこまで成長するだろう。2007年4月8日のスタートからまだ17日。日本の図書館はまだ登録していないようだが,米国,英国,カナダなどの図書館から,4月24日時点で既に662枚の写真が登録されている。“flickr”のスライドショーで,覗いてみてはいかがだろうか。
Ref:
http://www.flickr.com/groups/365libs/ [630]
http://www.flickr.com/groups/365libs/pool/show/ [631]
http://www.libraryman.com/blog/2007/04/08/365-library-days-project-the-beginning/ [632]
CA1624 [241]
国際図書館連盟(IFLA)は2007年4月11日,第5回の国際マーケティング賞を発表した。これは,IFLAの管理・マーケティング分科会が実施しているもので,毎年,「創造性に富み,成果指向的なマーケティングプロジェクトまたはキャンペーンを実施した組織」を募集し,表彰している。
今回は米国,英国,シンガポール,アルゼンチンなど世界12か国から24の図書館・機関が応募した。この中から,マーケティングの戦略的アプローチ,創造性・オリジナリティ・革新性や社会的価値,人々の注目を集め図書館活動を支援する可能性などの基準に従い,受賞館が選ばれた。
第1位に選ばれたのは「子どもがいる学生に配慮した図書館サービス」を実施したエストニアのタルトゥ大学図書館である。大学の試験期間中,安心して勉強に専念できるよう,開館時間を増やすとともに,保育園が閉まる時間以後に図書館がベビーシッティングを行うというサービスを提供したものである。多様な学生のニーズに応えるサービスであることが,授賞理由として挙げられている。
第2位は,「ブックモービル巡回」プロジェクトを実施したクロアチアのザダール公共図書館に授与された。これは,ザダール郡内の戦争被災地域に住む児童・生徒,障害者,高齢者のために,同館がCDやDVDのコレクションを収載し,無線インターネット接続機能を備えたブックモービルを巡回させたものである。第3位は,「市場で読書」キャンペーンを実施したペルーのリマ公共図書館である。これは,図書館資料をカートに積み,市場を押して回るもので,リマの市場に子ども連れで来ている商人に読書を勧めるものである。ただ資料を提供するだけでなく,図書館の利用者登録も促したという。
なお,第1位の図書館は,2007年IFLAダーバン大会(南アフリカ)に招待されるほか,1,000ドル(約11万9千円)のマーケティング資金も提供される。IFLAはこの表彰により,図書館のマーケティング事業を奨励するとともに,優れた事例を共有できるようにすることを目的として掲げている。
Ref:
http://www.ifla.org/III/grants/ima-award.htm [633]
http://www.ifla.org/III/grants/marketing-award.htm [634]
http://www.ifla.org/III/grants/3m-award.htm [635]
国立情報学研究所(NII)は2007年4月9日,学術論文データベースサービス“CiNii”で提供している日本の主要学術雑誌の約300万件の論文データを,Googleによるクロール(ロボットによるデータ収集)の対象としたことを発表した。
これにより,Googleが提供している学術論文専用検索エンジン“Google Scholar”(E273 [636],CA1606 [637] 参照)から,CiNiiが提供している論文の論題,著者名,抄録等が検索できるようになった。検索結果からは,CiNiiの各論文情報の画面に遷移し,本文が電子化されているものについては直接本文データ(一部は有料)にアクセスすることができる。
なお,Google Scholarは2006年から,科学技術振興機構(JST)の「科学技術情報発信・流通総合システム」(J-STAGE) で提供されている電子ジャーナルを検索対象としているほか,日本の各大学の機関リポジトリ収録文献も検索対象に続々加えている。成長著しいGoogle Scholarの動向から目が離せない。
Ref:
http://www.nii.ac.jp/news_jp/2007/04/300niigoogle.shtml [638]
http://ci.nii.ac.jp/ [639]
http://scholar.google.com/intl/ja/ [640]
http://info.jstage.jst.go.jp/society/announcement/index.html#03 [641]
E273 [636]
CA1606 [637]
バットマン,スパイダーマン,シン・シティ。米国では「グラフィックノベル」(graphic novel)をベースにメディアミックスで人気を博す作品が,近年数多く現れている。グラフィックノベルとは,イラストと文章で綴られ,一定の連続性のある作品のことであり,「右開き」という特有のフォーマットを持つ日本のマンガも,“manga”として,グラフィックノベルの一角で存在感を増しつつある。
グラフィックノベルのこのような展開を受けて,米国の図書館界でも,グラフィックノベルに対する理解が深まりつつある。例えば,図書館員の選書ツールとなっているLibrary Journal誌やSchool Library Journal誌などにグラフィックノベルの多くの書評が掲載されており,また米国図書館協会(ALA)のレファレンス・利用者サービス部会(RUSA)の分科会が示した書評についての手引き(a href="http://current.ndl.go.jp/e567 [642]">E567参照)の中でも,グラフィックノベルについて独立した項目が立てられている。また,ALAのヤングアダルト図書館サービス部会(YALSA)でも,優れたグラフィックノベルの情報を集めている。
ALA/RUSAが刊行するReference & User Service Quaterly誌2007年1月号に 掲載されたコラム「グラフィックノベル事始め」(Getting Started with Graphic Novels)では,グラフィックノベルを知るための入門書・専門書,選書担当者のためのツール,蔵書構築の核となる作品などが紹介されている。このうち選書ツールとしては,上述の雑誌のほか,ウェブサイトとして,ティーン向けの作品の書評を掲載している“No Flying, No Tights”,日本の作品にも数多く言及している“Recommended Graphic Novels for Public Libraries”,図書館員用メーリングリストも併せて運営している“Graphic Novels for Libraries”,そして日本のアニメ・マンガに特化した“A Librarians's Guide to Anime and Manga”を紹介している。選書ツールの充実ぶりとともに,マンガの影響の大きさが覗える。
このコラムの執筆者であり,ペンシルベニア州立大学のレファレンスライブラリアンであるベーラー(Anne Behler)は,グラフィックノベルが「嫌々本を読んでいる読者(reluctant reader)を本の世界に誘う効果的なツール」であり,また「蔵書を豊かで深いものにし読書への愛をより一層育むもの」であると,その重要性に対する認識を示している。
Ref:
http://www.rusq.org/wp-content/uploads/2007/winter06/alert_collector.pdf [643]
http://www.ala.org/ala/yalsa/booklistsawards/greatgraphicnovelsforteens/gn.htm [644]
http://www.libraryjournal.com/ [645]
http://www.schoollibraryjournal.com/community/Graphic+Novels/47069.html [646]
http://www.noflyingnotights.com/lair/index.html [647]
http://my.voyager.net/~sraiteri/graphicnovels.htm [648]
http://www.angelfire.com/comics/gnlib/index.html [649]
http://www.koyagi.com/Libguide.html [650]
E567 [642]
E615 [651]
国際図書館連盟(IFLA)は2007年4月11日,「典拠データの機能要件(Functional Requirements for Authority Data: FRAD):概念モデル」の草案を発表し,同時に7月15日までの約3か月間の意見募集を開始した。このFRADの目的は,典拠コントロールを支えるため,また典拠データの国際共有(図書館外部との共有も含む)を行うため,典拠データの要件の分析枠組みを作ることにある。
このFRADは,これまでは「典拠レコードの機能要件(FRAR)」と呼ばれていた(E363 [652]参照)。2005年7月に発表されたFRAR草案に対し行われた意見募集では,12個人・13機関から意見が寄せられたが,FRARの概念モデルの対象が典拠「データ」であるのか,それとも典拠「レコード」であるのか,相当の混同が見られたという。モデルを作成し概念化する対象はあくまでも典拠データであり,図書館界で用いられている典拠レコードは,典拠データをひとまとめにし具現化したものである。このような関係をより明確に表すために,タイトルを「典拠データの機能要件」に変更したのである。
また,FRAR草案に対し「このようなデータモデル化にはなじみが無く,もっと明確に説明してもらわないとわかりづらい」という意見が続出したということで,FRAD草案では説明文を変えたり,新しい図式も用意した。特に,FRAR草案に比べ,実体-関連図(Entity-Relationship Diagram: E-R図)の説明にページ数を割いている。
このFRAD草案は意見募集の後,寄せられた意見を検討して最終案を作成し,常任委員会に諮られた後,IFLAから正式に刊行されることになっている。
Ref:
http://www.ifla.org/VII/d4/wg-franar.htm [653]
http://www.frbr.org/2007/04/12/frad-draft-2-available-for-review [654]
http://ci.nii.ac.jp/naid/110004668715/ [655]
E363 [652]
米国のLibrary Journal誌の報じるところによると,図書館システム関連の市場は,2005年度には5億3,500万ドルであったが,2006年には5億7,000万ドルとなり,総じて順調な成長傾向にある。電子コンテンツを取り扱うためのウェブ・インターフェースやツール,RFID(Radio Frequency IDentification)関連の収益が拡大し,一方で,収集,整理,閲覧・貸出等の図書館の基本的な業務を管理する統合図書館システム(ILS)による収益は,現在も売上の大きな部分を占めているのは間違いないが,減少傾向にある。
ILSの売上の63%は旧来のレガシーシステムからの移行である。大規模な大学図書館・公共図書館の移行が段階的に縮小しているが,現状でスタンドアロンシステムが多く残る小規模公共図書館,学校図書館での移行が活発であり,これに対して企業も製品及びサービスを良心的な価格で提供している。
ILSの新システムの導入実績については,Innovative Interfaces社が“Millennium”を67館に導入,SirsiDynix社が“Horizon”を48館に,“Unicorn”を45館に導入している。またAuto-Graphics社,Polaris社が,サーズ(SaaS: Software as a Service)モデルにより,小規模図書館をターゲットにした良心的な価格帯でのソリューションを提供し,ともに54館に導入している。一方,オープンソースのILSの導入も,数値的にも存在感を示しはじめた。ジョージア州図書館庁が開発した“Evergreen”が,同州の公共図書館255館に導入され,またオープンソースのILSの先駆的存在である“Koha”は,“Koha Zoom”などのアップグレード版が開発され,2006年末までに世界各国311館に導入されている。(CA1529 [657],CA1605 [433]参照)
2006年の特徴として,M&A等により企業の勢力分布が変化したことが挙げられる。これについてはOCLCの動きが見逃せない。欧州のシステムベンダーであるSisis Informationssysteme社,Fretwell-Downing社,Openly Informatics社を買収するなど,欧州への地固めを行っている。また,デジタルコンテンツ管理システム“CONTENTdm”を開発したDiMeMaを買収し,さらに,書誌ユーティリティのRLGを買収している(E486 [658]参照)。OCLCは導入実績や売上データを公開していないが,Open WorldCatの実績(E354 [608]参照)なども勘案すると,図書館のバックエンドの業務全体にわたって新たな戦略を張り巡らせていると考えられる。この他,トップメーカー同士の合併として,Endeavor Information System社がEx Libris社に吸収合併され,Sagebrush社はFollett Software社に買収されるなどの動きがあった。
機能面の特徴としては,各社がユーザインターフェースの改善にしのぎを削った年であったことがあげられる。検索結果をファセット化して表示するファセット・ブラウジング機能(E507 [102]参照),検索結果のランキング表示機能,ソーシャルネットワークの流れに乗ったレーティング機能やタギング機能(E595 [659]参照),そしてより視覚的に分かりやすいビジュアルナビゲーション機能を追及する例が多くみられた。オランダのMedialab社が開発した“Aquabrowser Library”はタグクラウドやファセット・ブラウジングを実装し,同社と契約するThe Library Corporation(TLC)社を通じて67館に導入されている。また,図書館側の開発への関与も活発であり,Ex Libris社の“Primo”,Innovative Interfaces社の“Encore”は,大学図書館等と協同で開発が進められいる。
Library Journal誌でブリーディング(Marshall Breeding)が結論づけているように,2006年の市場動向は,電子コンテンツへの対応,オープンソース,M&Aなど,図書館システムにおける戦略の変更を示唆する重要な要素が散見され,注目する必要があろう。より詳しくはブリーディングが運営するウェブサイト“Library Technology Guides”が参考になると思われる。
Ref:
http://www.libraryjournal.com/article/CA6429251.html [660]
http://www.librarytechnology.org/ [661]
http://www.iii.com/ [662]
http://www.sirsidynix.com/ [663]
http://www.auto-graphics.com/ [664]
http://www.polarislibrary.com/ [665]
http://www.exlibrisgroup.com/ [666]
http://www.fsc.follett.com/ [667]
http://www.tlcdelivers.com/ [668]
E354 [608]
E486 [658]
E507 [102]
E595 [659]
CA1529 [657]
CA1605 [433]
CA1623 [669]
デジタル情報の長期保存に関する技術的な調査・研究が,世界各国で進められている(E258 [483] 参照)。ドイツでも2003年から,ドイツ国立図書館,ゲッチンゲン州立大学図書館,IBM社が協力して,デジタル情報長期保存協同プロジェクト“kopal(Kooperativer Aufbau eines Langzeitarchivs digitaler Informationen)”が推進されている。その概要がLibrary Hi Tech誌の24巻4号に掲載されるとともに,図書館情報学の主題リポジトリ“E-LIS”において,全文が公開されている。
そもそもドイツ国立図書館は10年ほど前から,デジタル出版物の長期保存について,主導的な活動を実施している。1997年には,図書館関係者や情報学の研究者,政府機関,出版関係業界からの意見聴取により,「オンライン出版物の収集」に関する定義づけを行い,ドイツ出版協会の審議を経て,政策文書としてまとめた。そこでは,すべてのオンライン出版物について,求めに応じてネットワークもしくは物理的媒体経由で提出すること,複数のフォーマットで出版されているオンライン出版物は,図書館の求めるフォーマットで提出すること,オンライン出版物と物理的媒体による出版物が刊行されていれば,両方を提出すること,などが盛り込まれた。この政策文書に基づき数年間にわたり,出版社などの協力をうけて,オンライン出版物の収集方法や長期保存に関する調査を実施した。また1998年〜2000年には,欧州納本図書館の実現を目指すNEDLIB(CA1401 [670] 参照)が実施した調査・研究活動に参加し,デジタル出版物の長期保存・長期利用に対する課題の解決に取り組んだ。
これらの調査・研究事業と平行して,1998年からは大学図書館を通じた学術論文のオンライン収集(CA1613 [671] 参照)を, 2000年からは電子ジャーナルの収集を開始するとともに,2001年にはオンライン出版物納本のためのインターフェイス提供を開始している。一方でデジタル情報の長期保存に必要となる諸条件について検討をおこない,NEDLIBが採用する,長期保存のためのメタデータ「OAIS参照モデル」(CA1489 [32] 参照)の導入や,永続的識別子としてURN(Uniformed Resource Name)の採用を決定するとともに,画像ファイル,アプリケーションインストールファイル,プレゼンテーションファイルなど,さまざまなファイル形式を再生可能とするシステムの構築などを実施している。
このようにドイツ国立図書館は,オンライン出版物の長期保存戦略とインフラ整備を模索しつづけた結果,2003年から2つの取り組みを開始した。kopalはその取り組みの1つであり,デジタルデータを利用可能な状態で保存する技術的なソリューションの開発を目指している。オランダ王立図書館(KB)やIBMが開発した,OAIS準拠の電子情報保存システム“DIAS(E189 [672]参照)”をベースとして,協同事業の参加者からのリモートアクセス機能や,多種多様なフォーマットで作成されたデータや,複数のメタデータ・スキーマを利用できるようにするなど,様々なカスタマイズが行われている。また図書館ばかりではなく,大学,産業界,行政部門における利用をも想定した,ビジネスモデルの開発をも視野に入れて活動を行っており,組織的な協力関係やソリューションの提供を目指している。長期保存されているデジタル情報は,もう1つの取り組みである“nestor(Network of Expertise in long-term STOrage and long-term availability of digital Resources in Germany)”を通じて提供される。“nestor”は「ドイツの記憶(Germany’s digital memory)」構築への第一歩として位置づけられている。
kopalウェブサイトによると,2007年4月現在,多種多様なフォーマットの資料が実際に利用可能などうかを検証するために,ドイツ国立図書館やゲッチンゲン州立大学図書館の所蔵する電子資料をkopalに投入して実際にテスト運用する段階に入っている。
Ref:
http://eprints.rclis.org/archive/00009149/ [673]
http://kopal.langzeitarchivierung.de/index.php.en [674]
http://kopal.langzeitarchivierung.de/index_projektverlauf.php.en [675]
http://kopal.langzeitarchivierung.de/index_arbeitspakete.php.en [676]
http://info-deposit.d-nb.de/eng/entwicklung/entwick_technik.htm [677]
E189 [672]
E258 [483]
CA1401 [670]
CA1489 [32]
CA1613 [671]
米国図書館協会(ALA)が,2006年に批判を受けた図書トップ10(10 most challenged books)を発表した。これは,内容が不適切であるとして,親や教師から図書館や学校から取り除いてほしいと文書で申し出があったものを集計したものである。申し出を受けた公共図書館,学校,学校図書館からALAの知的自由委員会に報告された件数は,1年間で合計546回であった。
批判を受けたという報告が最も多かったのは,2羽のオスのペンギンがカップルとなり,別の異性愛カップルの卵を与えられ子育てをした実話に基づく“And Tango Makes Three”(Justin Richardson, Peter Parnell著, Simon & Schuster Children's Publishing, 2005)であった。この作品はALAの2006年「注目すべき児童書」に選ばれているほか,数々の賞を受賞しているが,同性愛を扱っている,伝統的な家族像に背いているなどとして多くの批判を受けた。このニュースは米国のみならず日本の新聞でも報道され,注目を集めた。
なおこの作品を含め,トップ10のうち5点が,同性愛を扱っている,伝統的な家族像に背いているという理由で批判されたものである。そのほか,不快感を与える言葉を用いている(8点),性的な内容を含んでいる(7点)といった理由で批判されたものが多かった。なお例年,トップ10に挙げられる古典「ライ麦畑でつかまえて」「はつかねずみと人間」「ハックルベリー・フィンの冒険」などは,2006年はトップ10には入らなかったという。
なお米国では毎年,図書館や書店が読書の自由を訴えるイベント「禁書週間(Banned Books Week)」が行われており,最も批判を受けた図書も,このイベントの核として大々的に紹介されている。2006年度はこれにGoogleも協力し,書籍デジタル化・検索サービス“Google Book Search”に特設ページを作り,批判を受けた古典の作品42点を紹介している。
Ref:
http://www.ala.org/ala/pressreleases2007/march2007/mc06.htm [678]
http://www.ala.org/ala/alonline/currentnews/newsarchive/2006abc/march2006ab/tango.htm [679]
http://www.msnbc.msn.com/id/15764474/ [680]
http://www.allheadlinenews.com/articles/7005550079 [681]
http://www.boston.com/news/nation/articles/2006/12/20/schools_chief_bans_book_on_penguins/ [682]
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/world/america/29217 [683]
http://www.ala.org/bbooks [684]
http://books.google.com/googlebooks/banned/ [685]
E342 [686]
都市はどうすればより「強く」なるのか?その目標において,公共図書館はどのような位置づけにあり,どのような役割を果たすべきなのか?都市図書館協議会(ULC: Urban Libraries Council)が,2007年1月,研究レポート「都市を強化する: 公共図書館は地域経済発展に貢献する」(Making Cities Stronger: Public Library Contributions To Local Economic Development)を発表した。
ULCは,1971年に設立され,30年以上にわたり都市の公共図書館の強化に努めてきた図書館関係団体である。全米の約140の大規模・中規模都市の図書館,図書館関連企業,州の図書館協会などが参加する。研修や出版活動の他,21世紀における都市の図書館のあり方に関する様々な調査を手がけている(CA914 [687]参照)。イリノイ州エバンストンを本拠地にして活動を続けてきたが,この春にはシカゴにオフィスを移転し,さらに機能強化を図っている。
このULCが発表した本報告書は,都市経済が製造・サービス産業を中心とするものから情報・知識産業を中心とするものへと変容し,都市が新しい経済競争の中で発展していくため戦略を再構築する中で,公共図書館がその中で果たすべき役割を改めて問い直す内容となっている。具体的には4つの事項について,実践事例を挙げつつ重要性を浮き彫りにしている。
このレポートからは,米国の都市の公共図書館が21世紀の社会経済の仕組みの中で作り上げてきた,あるいはこれから作り上げようとしている図書館の姿が垣間見られる。ビジネス支援,起業支援等のサービスの展開を考える上で参考になるレポートであろう。
Ref:
http://www.urbanlibraries.org/files/making_cities_stronger.pdf [688]
http://www.urbanlibraries.org/jan1006makingcitiesstronger.html [689]
http://www.urbanlibraries.org/ [690]
CA914 [687]
レファレンスサービスは,狭義にいえば質問・回答サービスのことだが,広義に捉えれば,利用者のニーズを先読みして,情報ファイルを用意したり,調べ方に関する情報を提供したりすることも含まれるものであり,様々なサービスの形態が考えられる。Library Journal誌で,“先取りレファレンス”(preemptive reference)と名づけられた,興味深い実践事例が紹介されている。
この“先取りレファレンス”は,カンザス州ジョンソン郡図書館が,地元の新聞Kansas City Star紙と協同して実施しているものである。Kansas City Star紙が掲載しているビジネス関連の記事に,読者の質問を“先取り”して,ジョンソン郡図書館が情報を提供している。
ジョンソン郡図書館のビジネス・レファレンス・チームは,ウェブサイト,データベース,そして書籍の情報から構成される“ウェブべース・情報パッケージ”を,毎週Kansas City Star紙に提供する。この情報は,毎週同紙が掲載するビジネスと起業に関連する特集記事を補強するものとなる。同紙にはオンライン版もあり,ワン・クリックで,多様な情報へアクセスすることが可能である。逆に図書館のウェブサイトでも,同じ情報を掲載し,さらに記事へのリンクも張っている。図書館は5日から7日前に情報パッケージを作成し,新聞社に提供しているという。
両者の正式な契約はつい先日行われたが,実際には昨年夏から開始されている。実際,例えばゴルフコースでのビジネス,電子タグによるサービスの向上,カンザスシティ国際空港の成長など,多様な記事でこのタイアップが実現している。
利用者が必要とする前に,さらには利用者が質問を思い浮かべる前に,先取りして参考情報を提供する“先取りレファレンス”。図書館という枠にとらわれず,利用者が普段使っている情報源を入り口にして,より豊かな情報の世界へと誘うものであり,地域の住民にとっては,確かに便利なサービスであろう。
Ref:
http://www.libraryjournal.com/article/CA6424133.html [691]
http://www.jocobusiness.net/templates/JCL_NewsList.aspx?id=882 [692]
http://www.kansascity.com/ [693]
http://www.jocobusiness.net/ [694]
米国の公共図書館では,州立図書館が中心となって公共図書館の認知・利用を促進するキャンペーンを行っている。“スーパーライブラリアン”というキャラクターを産み出し盛況を博したニュージャージー州立図書館,“世界をワイオミングへ”と題するキャンペーンを展開するワイオミング州立図書館など,手間隙をかけたものがある。このたび,本土最東北部に位置するメイン州でも,新たなマスコット・キャラクターが作られ,話題となっている。
モチーフになっているのは,同州原産のメインクーン種のネコで,名前は「バクスター(Baxter)」。1月から3月にかけて,州立図書館はこのキャラクターのネーミング・コンテストを大々的に行い,1,200もの候補の中からこの名前に決定した。ネーミングの理由は様々とのことだが,バクスター州立公園やバクスター元メイン州知事の名前を連想させる。
ネーミング・コンテストの開始にあたり,ウォータービル図書館長のサグデン(Sarah Sugden)は,メイン州の図書館週間のイベントの中で,このネコの設定を披露している。それによれば,吹雪吹き荒れる,メイン州のある寒い冬の夜,図書館の前のサマンサ・スミスの銅像の下で図書館員の男に拾われた。男は,州内の図書館協力の担当で,ネコを連れて毎日毎日いろいろな図書館を回った。どこの図書館員も優しく,爪を研いでも良い場所を教えてくれた。男は毎晩ネコを家に連れて帰ったが,その道すがら,いろいろな図書館の話を聞かせた。このネコが,“バクスター”になったのだという。
メイン州立図書館のウェブサイトには,キャラクターの利用規定,着ぐるみの巡回スケジュール,オンライン予約などが掲載されているほか,バクスターをあしらったポスターの雛形や写真画像もダウンロードできるようになっている。メイン州の公共図書館は,このマスコット・キャラクターを図書館のキャンペーン活動などに使うことができる。予約状況も確認できるが,9月までに15件以上の予約が入っており,既に人気者となっているようだ。
Ref:
http://www.maine.gov/msl/libs/pr/mascot/ [695]
http://www.maine.gov/msl/libs/pr/mascot/catstory.htm [696]
http://www.reference.com/browse/wiki/Percival_P._Baxter [697]
http://business.mainetoday.com/newsdirect/release.html?id=4099 [698]
http://www.njlibraries.org/ [699]
http://www.wyominglibraries.org/campaign.html [700]
学術情報流通の変化に伴い,図書館の役割も,物理的資料の収集から,あらゆる情報の組織化,保存および提供へと広がっている。またウェブによる情報提供の進展は,これまでの学術・研究図書館が担っていた,情報の独占的な提供主体という地位を脅かしつづけている。
このような状況の中で,今後学術・研究図書館はどのように変革し,どのような役割を果たしていくべきか。米国大学・研究図書館協会(ACRL)は2006年11月,研究者,大学の学長,図書館団体関係者,出版社やベンダーなどから29名を招聘し,「技術や教育,学習,研究環境の変化に対し,学術図書館の役割,責任,資源を今後10年間,どのように再配分するか」をテーマに,円卓会議を開催した。そしてこの議論の結果を,エッセイ「学術図書館における技術と変化」にまとめ,2007年2月13日に公開した。
「学術図書館における技術と変化」は,学術・研究図書館自身の変革,図書館や図書館員の役割の再構成,それらに向けたACRLの役割,の3本柱で構成されている。
まず,「1.図書館が引き続き研究機関内で重要な位置を占めるために必要な変革」では,研究機関の図書館が今後数年間で取り組むべき活動として,
を挙げている。
次に,「2.研究機関における図書館や図書館員の役割の再構成」では,研究機関の図書館や図書館員が果たしていくべき役割について,再定義を促している。具体的には,
の4点である。
最後に,「3.今後,ACRLが果たすべき役割」では,1や2を実現してゆくためのACRLの役割として,
といった活動を展開していくことを提言している。
ACRLは2007年3月15日付けで,ブログ“ACRLog”にこのエッセイを取り上げ,コメントを募集している。
Ref:
http://www.ala.org/ala/acrl/acrlissues/future/changingroles.htm [701]
http://acrlblog.org/2007/03/15/acrl-summit-report-on-changing-role-of-academic-libraries-now-available/ [702]
http://www.ala.org/ala/pressreleases2007/march2007/ACRLessaytechnology.htm [703]
インターネットや検索エンジンの普及,電子資料の増加は,図書館業務に大きな変革をもたらしている。とりわけ検索エンジンの普及は,図書館の伝統的な目録業務に対する大きな脅威となっていることもあり(CA1617 [101]参照),目録と他の情報検索手段との関係を批判的に比較検討していく必要性が,図書館運営者の共通認識となっている。
米国議会図書館(LC)は2006年11月,書誌コントロールの将来像を議論するワーキング・グループを発足させた。このワーキング・グループは,書誌コントロールや目録業務が,図書館資料の管理や利用者からの資料へのアクセスに効果的であるかどうか,また図書館コミュニティ全体で書誌コントロールに関するビジョンを共有できる方法について調査を実施し,LCが果たすべき役割や優先事項について,助言を得ることを目的としている。メンバーはノースカロライナ大学図書館情報学科のグリフィス(Jose-Marie Griffiths)ら10名で,米国図書館協会(ALA)やOCLC,マイクロソフト,Googleからも代表者が参加している。
このワーキング・グループでは2007年7月の提言公表までに,3回に分けてテーマごとに地方での公開ミーティングを開催する予定である。第1回公開ミーティングは「目録ユーザーと利用行動」をテーマに,2007年3月8日,カリフォルニア州のGoogle本社で行われた。ミーティングでは図書館利用者および図書館の管理者の視点から,図書館目録に対する問題点や要望が発表され,現在提供されている書誌は双方の要求を満たしていないという結論で一致した。
第2回公開ミーティングは5月に,「書誌データの構造と標準化」をテーマとしてシカゴで,また第3回公開ミーティングは7月に,「書誌データの経済性と組織」をテーマとして,バージニア州で開催が予定されている。これら公開ミーティングにおける議論をもとに,9月を目処にレポートと諮問案の公開がおこなわれ,パブリックコメントの公募が予定されている。その結果をもとに,2007年11月に最終報告書が作成される予定である。
Ref:
http://www.loc.gov/bibliographic-future/ [704]
http://www.loc.gov/today/pr/2006/06-222.html [705]
http://www.loc.gov/bibliographic-future/meetings/ [706]
http://www.loc.gov/bibliographic-future/meetings/invitation.html [707]
http://www.loc.gov/bibliographic-future/meetings/2007_mar08.html [708]
http://www.libraryjournal.com/article/CA6426593.html [709]
CA1617 [101]
韓国の読書振興政策を担っている国立中央図書館は2006年9月,「国民読書実態調査」を行った。これは21世紀の知識基盤社会の発展のための,望ましい読書振興政策の樹立に必要な基礎資料を収集することを目的としており,2004年以来2年ぶりに行われたものである。
この調査は,18歳以上の成人1,000人と,小学校4〜6年生,中学生,高校生合わせて3,000人の学生を対象に行われた。読書率に関する質問では,「昨年1年間に1冊以上の一般図書を読んだことがある」と回答した成人は75.9%,「前学期に1冊以上の一般図書を読んだことがある」と回答した学生は89.6%で,前回の調査結果(それぞれ76.3%,89.0%)から大きくは変わっていない。ただし,1994年の86.8%,97.6%からは緩やかに減少傾向にある。また読書量に関する質問では,成人が年間11.9冊,学生が1学期に14.0冊と,前回に比べてそれぞれ0.9冊,2.2冊増加している。特に小学生の読書冊数は4.6冊も増加しており,これは「朝の10分間読書」運動などの施策が功を奏した結果であるとされている。とはいえ,読書時間は54分(学生全体では45分)と,10年前よりも20%近く減少している。成人は平日37分,週末34分と,これまでと大きな変化はなかった。
このほか,マンガ,雑誌の読書率・読書量,書籍以外のメディアの利用時間,余暇全体の中で読書が占める比重,よく読む図書のジャンル,図書購入費・購入冊数,書店・インターネット書店・レンタル店の利用実態,読書関連のインターネットサービス(図書情報の検索,本文の検索,電子ブック)の利用実態,読書目的,読書場所,読書を阻害する要因,家庭・社会・学校での読書実態,公共図書館の利用実態など,多様な項目について質問がなされている。このうち,図書館に関する質問では,昨年1年間に公共図書館を利用したことがあると回答した成人が31.2%と,1995年の13.2%,2004年の24.7%から着実に増加している。もっとも,図書館利用の満足度は47.1%,蔵書の満足度は50.3%,また読書を奨励するために必要な施策についての質問に対する回答の第1位が図書館の拡充で35.0%など,図書館のさらなる向上も求められているようである。
Ref:
http://www.nl.go.kr/FRBR/2006_book.hwp [710]
http://www.nl.go.kr/notice/board_info/view.php?no=408 [711]
舘野■. 2006年,国民読書実態調査. 出版ニュース. 2007.3/下, p.26 (※■は析の下に日)
E387 [712]
北海道大学など国立大学5大学と国立情報学研究所が共同で,リンクリゾルバ(CA1482 [713]参照)を利用して,機関リポジトリ(E323 [90]参照)に収録された学術文献にナビゲーションするシステムの構築を進めている。このプロジェクト“AIRway(Access path to Institutional Resources via link resolvers)”はオープンアクセス(OA)電子ジャーナルのAriadne誌,D-Lib Magazine誌,OCLC Abstract誌で紹介されている。
機関リポジトリ内の文献はこれまで,機関リポジトリのシステムに搭載されている検索機能,“Google Scholar”(CA1606 [637]参照)などの学術文献用の検索エンジン,“OAIster”(CA1513 [714]参照)などの機関リポジトリの統合検索を可能としているサイトから検索できた。AIRwayプロジェクトではさらに見つけやすくするため,大学や学術機関が契約している学術文献データベースからリンクリゾルバを経由して,機関リポジトリに収録された学術文献へのアクセスを目指している。これにより,利用者の所属機関が購読していない電子ジャーナルの文献も,AIRway参加機関の機関リポジトリで公開されていれば,学術文献データベースからリンクリゾルバを経由してOAの文献にたどり着くことが可能となる。なお具体的な仕組みは,D-Lib Magazine.13(3/4)で詳解されている。
本プロジェクトのウェブサイトによると,3月24日現在,AIRwayによるリンク解決対象とされている機関リポジトリは,北海道大学の“HUSCAP”や英国クランフィールド大学“Cranfield QUEprints”など4機関にとどまる。だが機関リポジトリ運営機関やリンクリゾルバ開発者向けのウェブサイトを通じて,システム連携に必要となる仕様の概略を公開し,協力機関を募っている。またAIRwayが収集したメタデータを,リンクリゾルバ内部で蓄積するシステムの構築も目ざしている。
このような取り組みを通じて,機関リポジトリ収録文献の検索・利用・引用が拡大し,機関リポジトリそのものの認知度の向上や,登録文献数の拡大につながることが期待される。
Ref:
http://airway.lib.hokudai.ac.jp/index_ja.html [715]
http://www.dlib.org/dlib/march07/sugita/03sugita.html [716]
https://dspace.gla.ac.uk/bitstream/1905/659/1/sugita-hellman.pdf [717]
http://www5.oclc.org/downloads/design/abstracts/03192007/AIRWAY.htm [718]
http://airway.lib.hokudai.ac.jp/announcement_ja.html [719]
http://www.ariadne.ac.uk/issue49/suzuki-sugita/ [720]
http://blog.livedoor.jp/x822gaz/archives/51382873.html [721]
http://drf.lib.hokudai.ac.jp/drf/index.php?plugin=attach&refer=DRF1&openfile=hokudai.pdf [722]
CA1482 [713]
CA1513 [714]
CA1606 [637]
E323 [90]
欧州連合(EU)内では,研究助成成果のオープンアクセスを求める運動(E604 [723]参照)や欧州委員会(EC)による学術情報のアクセス,提供,保存に関する通知(E611 [194]参照)など,学術情報の流通に関係した各機関の動きが活発化している。このような中,「これまでは沈黙を守ってきた」とする出版界から2007年2月13日,学術研究における出版社の役割を改めて説明・主張する10か条の「ブリュッセル宣言(Brussels Declaration)」が発表された。
この宣言ではまず,出版社の使命は「経済的に持続可能なビジネスモデルによって知識を最大限に普及させることである」として,出版社が学術研究および学術界の支援を行ってきたことが強調されている。その上で,どのような媒体で出版するにしても費用がかかること,特に査読(peer review)のための費用は必要不可欠であること,そしてそのための費用を賄うために,研究成果のオープンアクセス化に対しては十分な公開猶予(embargo)期間が必要であるとする。学術雑誌の記事の相当部分が無料で見られるようになると,購読契約のキャンセルが増え,結果として査読システムが崩壊するのではないかとしているのである。
一方で,ECの通知の中でも課題として挙げられていた「研究に使用した生のデータのオープンアクセス化」については,賛成する意が示されている。
この宣言は当初,35の出版社と8つの出版協会の署名で発表されたが,その後に賛同する出版社・出版協会も増えている。同時に出されたプレスリリースでは,ECの通知に対して「対話の場を開くものである」と評価しつつも,「なぜ政府の介入が必要なのか」「特定のビジネスモデルを推奨するものではないか」と疑義も呈しており,このような出版界の意見に対するオープンアクセス推進派,ECの対応が注目される。
Ref:
http://www.stm-assoc.org/documents-statements-public-co /2007%20-%2003-12-07%20Brussels%20Declaration.pdf [724]
http://www.stm-assoc.org/press-releases/2007.02%20Brussels %20Declaration%20Press%20Release%20130207.pdf [725]
http://www.stm-assoc.org/press-releases/2007.02 %20STM%20Press%20Release%20EC%20Communication%20on%20Scientific%20Information.pdf [726]
http://www.stm-assoc.org/
[727]http://www.iwr.co.uk/information-world-review/news/ 2184595/stm-manifesto-rubbishes-open [728]
E604 [723]
E611 [194]
2006年11月17日,ワイリー(Wiley)社はブラックウェル(Blackwell)社の買収を発表した。
ワイリー社は主にSTM(理学,工学,医学)分野や法律分野に関する学術雑誌を約500タイトル,ブラックウェル社は約750タイトル刊行しており,合併後はあわせて約1,250タイトルの学術雑誌を刊行することになる。これはエルゼビア(Elsevier)社の約2,200タイトル,シュプリンガー(Springer)社の約1,500タイトルに次ぐ地位を占めることになる。この数字は同時に,現在刊行されている査読付き学術雑誌のおよそ4分の1を,上位3社が刊行していることも意味する。
このワイリー社とブラックウェル社の合併に対し,北米の図書館団体7団体(北米研究図書館協会,米国図書館協会,研究・大学図書館協会,米国法律図書館協会,医学図書館協会,SPARC,専門図書館協会)からなる情報アクセス連合(Information Access Alliance)は2006年11月29日に,合併に伴い学術出版市場の寡占が高まり学術雑誌の高騰傾向が強まるとして,調査を求める公開書簡を米国司法省反トラスト局へ提出した,と発表した。またヨーロッパの図書館団体5団体(英国研究図書館コンソーシアム,欧州図書館・情報・ドキュメンテーション協会連合,欧州研究図書館協会,英国図書館,大学図書館協会,SPARC Europe)も2007年1月19日に,欧州委員会競争総局(Competition DG)に調査を求める公開書簡を提出したことを発表した。
両者の主張の骨子はほぼ共通している。すなわち,大規模出版社の買収や合併により,とりわけSTM分野における学術雑誌の寡占率が上昇し,学術雑誌の刊行に市場競争原理が働かなくなる。そのため学術雑誌の価格高騰や電子ジャーナルの一括購読契約(CA1586 [729]参照)・複数年契約・購読契約解除の禁止といった不公正な取引を引き起こしている。とりわけ価格高騰は購読タイトル数の減少をもたらし,研究者や研究機関の情報アクセス力を弱め,新たな知識の創造や技術革新に悪影響を及ぼす。以上の問題点を指摘した上で,大規模出版社の合併に際しては,学術出版市場における独占的地位とその及ぼす影響を調査する必要性があると指摘している。
また北米研究図書館協会は今回の合併問題について,独自に解説文書“John Wiley and Son's Acquisition of Blackwell Publishing”を公表している。ここでは反競争的活動と学術雑誌市場の寡占による結果が明確になれば,反トラスト法当局は市場と大規模学術出版社の動向により注意を払うようになると指摘している。そして一旦当局の審査と介入が開始されれば,学術雑誌刊行の寡占状態の解消や大規模出版社による不公正な取引の禁止といった利益を,顧客は享受すると指摘している。
ワイリー社は2007年2月5日のプレスリリースで,ブラックウェル社の買収を完了したことを発表している。
Ref:
http://as.wiley.com/WileyCDA/Section/id-301452,newsId-2292.html [730]
https://mx2.arl.org/Lists/SPARC-OAForum/Message/3561.html [731]
http://informationaccess.org/wiley.blackwell.pdf [732]
http://www.arl.org/bm~doc/issue_brief_wiley_blackwell.pdf [733]
http://www.libraryjournal.com/article/CA6417305.html [734]
CA1586 [729]
2005年には「Library2.0」という業界用語が登場するなど,図書館界でもWeb2.0の急速な広がりに対応しようとする動きが活発化している(CA1624 [241] 参照)。中でも,ブログを活用したオンライン読書会(E194 [735]参照),フォークソノミーを取り入れたOPACの提供(E595 [659]参照)など,Web2.0のツールを活用した図書館サービスの展開が徐々に根付きつつある。このような活動は,図書館サービスをマーケティングするという観点からも、有効性が指摘されている。
Web2.0時代のマーケティングとは,これまでと何が違うのだろうか。2007年3月,Marketing Library Services誌に「Web2.0世界の7ステップのマーケティング戦略」と題する記事が掲載された。「Web2.0では,広報主体がメッセージをコントロールするのではなく,みんながメッセージを形作るのである」,「図書館サービスのマーケティングにあたっては,Web2.0を“エンジン”(動力)とみなし,メッセージを強める手段として活用すべきである」と述べるなど,興味深い内容となっている。
Web2.0を象徴する現象として,利用者の参加がある。ウェブ上には賞賛も非難も入り混じった多数のコメントが残され,それらは瞬く間に多数の他の利用者に共有される。こうして商品やブランドに関する広報のメッセージは利用者の評価に大きく作用されることから,広報主体がコントロールすることは困難である。この状況は,人々の意思決定のあり方にも影響を及ぼしていると言われる。例えばEdelman's Trust Barometer社の調査によれば,ある会社に関する情報のソースとしてもっとも信頼しているものは“自分のような人(a person like me)”であり,その比率は2003年時点の調査では20%であったが,2006年には68%にも増大している。この調査の対象には,日本も含まれている。
記事では,このような実際の情報の伝達のあり方を踏まえて,的確にメッセージを利用してもらえるよう工夫し,また積極的に利用者との会話に参加していくことが重要であるとする。そして,以下のような7ステップのマーケティング戦略を示している。
例えば(3)では,ブログへのコメントやWikiの編集を利用者にも開放し,またソーシャルネットワークやウェブフォーラムなど,オンラインで行われている会話に参加することを勧めている。(5)では,ウェブコンテンツの利用者がブックマークしたり,タグ付けをしたりすることがしやすいようにするべきであり,ページごとに永続的URL(Permanent URL)が付与されるような適切なCMSを使用することを勧めている。そして(6)では,1日100万回以上もの動画がダウンロードされる現状を踏まえ,短い動画を配信することを勧めている。
記事に示されている内容は,あくまで汎用的・初歩的なアイデアである。安価で使いやすいツールが多数登場している現在,図書館のマーケティングは,まだまだ工夫の余地が残されているのかもしれない。
Ref:
http://www.infotoday.com/mls/mar07/Fichter.shtml [736]
http://www.infotoday.com/mls/default.shtml [737]
E194 [735]
E595 [659]
CA1624 [241]
韓国国立中央図書館は2006年9月,同館が計画する協力型デジタルレファレンスを実現するための基礎調査として,公共図書館のレファレンスサービスに関する実態調査を実施した(E572 [211]参照)。この結果が同館のウェブサイトで公開されている。
この調査はインターネットで行われ,全国514の公共図書館(私立の図書館も含む)のうち,73%に当たる375館から回答を得た。回答館の91.2%にあたる342館が自館のウェブサイトを運用しており,そこで提供しているサービスは蔵書検索(98.2%),掲示板(96.2%),電子ブック(77.8%)が上位を占めた。ブロードバンドの普及,電子ブック市場の増大(E404 [738]参照)などを背景に,これらのサービスが浸透している一方で,レファレンスサービスへの取り組みは進んでおらず,
といった結果となった。また,ウェブサイトのレファレンス用メニューや掲示板から受け付けた質問の数は週3件未満(79.8%),7件未満(17.3%)が大半で,その質問もレファレンスの質問よりも,資料検索・貸出に関する質問や,利用に関する質問の方が多かった。
他の図書館と協力関係を形成して行っている事業についての質問でも,協力型レファレンスのための協力関係を形成していると回答したのは14.9%であり,相互貸借(41.3%),行政業務(33.1%),協同収集(26.1%),協同目録(24.8%)といった事業に比べ低かった。その阻害要因を聞いたところ,担当職員数の不足,業務量の増加,トレーニング不足など人員の問題のほか,資料の不足,利用者の需要がない,PCなどの設備が不足しているといった回答が寄せられた。
このような調査結果を受け,国立中央図書館がどのように協同型デジタルレファレンスサービスを主導していくのか,今後が注目される。
Ref:
http://www.nl.go.kr/book_year/book_2006_7.pdf [739]
E572 [211]
E404 [738]
南アフリカでは,富裕層/貧困層間もしくは就業者/未就業者間の情報格差,図書館サービスの分断や資料の配置の不均衡,あるいは図書館情報専門職の分断など,かつてのアパルトヘイトが残した負の遺産の解決が課題となってきた。このような分断されたコミュニティの架け橋として,図書館協力のあり方が改めてクローズアップされている。2007年南アフリカで開催されるIFLA大会でも,図書館間のパートナーシップの構築がテーマの1つとなっている。
南アフリカの図書館協力は,1990年代後半から大きく変わりつつある。1997年に南アフリカ図書館協会,1999年には南アフリカ図書館コンソーシアム連合(COSALC: Coalition of South African Library Consortia)及び南アフリカ国立図書館があいついで設立され,図書館協力を担う組織的基盤が整備された。このうちCOSALCは,1980年代から存在してきた5つの地域的学術図書館コンソーシアムを統合して設立されたものであり,そのプロジェクトであるSASLI(South African Site Licensing Initiative)では,出版社,コンテンツアグリゲータ,情報ベンダーとライセンス条件に関する交渉を進めるなど,資源共有の効率化・適正化に向けて実質的な活動を行っている。
電子図書館の構築への取り組みも始まっている。クワズール・ナタール大学をベースに活動するDISA(Digital Imaging South Africa project)では,歴史的に重要な資料のデジタル化を進めている。すでに“Southern Africa's Struggle for Democracy: Anti Apartheid Periodicals, 1960-1994”では,約40誌の逐次刊行物のデジタルイメージをオンラインで見ることができるようになっている。このプロジェクトには,南アフリカ国立図書館のほか,南アフリカ大学,ローズ大学,ウィットウォータースランド大学,ケープタウン大学などが協力している。
また,学術情報流通のための取り組みとして,電子出版物のアーカイブについても取り組みも始まっており,プレトリア大学,ヨハネスブルグ大学がオープンアクセス(OA)の機関リポジトリを構築し,南アフリカ大学,ローズ大学,ウィットウォータースランド大学,フリーステート大学が,非OAの機関リポジトリを構築している。
南アフリカの図書館協力は,数多くの課題を抱えながらも,技術の発展を取り入れつつ,新しい方法で展開され始めている。
Ref:
Tsebe,J.; Drijfhout,D. Libraries Without Walls: Linking Libraries in South Africa. Alexandria. Vol.18(2006)no.2, p.97-102.
http://www.liasa.org.za/ [740]
http://www.nlsa.ac.za/NLSA/ [741]
http://www.cosalc.ac.za/ [742]
http://www.library.unp.ac.za/ [743]
http://aboutdisa.ukzn.ac.za/ [744]
http://www.unisa.ac.za/Default.asp?Cmd=ViewContent&ContentID=17 [745]
http://www.ru.ac.za/library/ [746]
http://www.lib.uct.ac.za/ [747]
http://www.wits.ac.za/library/index.htm [748]
http://www.ais.up.ac.za/ [749]
http://general.uj.ac.za/library/lidi/ujlic/home.htm [750]
http://www.uovs.ac.za/faculties/index.php?FCode=12&DCode=431 [751]
2007年3月5日,“政府機関図書館のためのガイドライン”(Guideines for Libraries of Government Departments)の草案(Version1.0)が公開された。このガイドラインは,国際図書館連盟(IFLA)の政府機関図書館分科会,政府情報と官庁出版物分科会,議会のための調査サービス分科会が,2004年から2年以上かけて作成を進めてきているものであり,4月ウェールズ(英国)での会議での審議を経て,8月ダーバン(南アフリカ)で開催されるIFLA大会での承認を予定している。
政府機関図書館は,政策立案者,政府職員等政府関係者を主たる奉仕対象とする図書館であり,必要とされる情報の収集・提供を行うものである。中央の立法・行政・司法機関に設置された図書館のほか,国立図書館や地方議会に設置された図書館等も含まれる。しかし国・地域によっては,整備が遅れていたり,また政府関係者からその役割に関する認識を十分に得られていない場合もある。このガイドラインは,政府機関図書館の組織編成,責務,評価に関する世界の優良事例を集約し,政府関係者がその重要性に対する認識を深めるための,またサービス対象者のニーズに効果的に対応するための方策を共有するための指針となることを目指している。
草案は,序文と結論を含む17章から構成されており,各種の機能と役割をもつ政府機関図書館を包括的に取り扱うものとなっている。収集,保存,提供等の章では,特に電子情報の登場により新たな課題が登場していることに言及し,変わり続ける環境に対応する重要性を指摘している。また13章は,政府機関図書館の役割に関するアドヴォカシーに割り当てられており,政府情報の保存とアクセスの保証,政府図書館の継続的支援,政府情報の法定納本の政策と実践等に関するアドヴォカシーの重要性に言及している。
なお現時点でレファレンスサービスや予算,人事に関する章など計6章が未稿であり,完成が待たれるところである。
Ref:
http://www.ifla.org/VII/s4/pubs/Guidelines-Gov-Lib_Draft.pdf [753]
http://www.ifla.org/VII/s4/index.htm [754]
http://www.ifla.org/VII/s4/conf/s4_2007Wales-Programme.htm [755]
http://www.ifla.org/VII/s4/annual/s4-AnnualReport2004.pdf [756]
http://www.ifla.org/VII/s4/news/glmin04b.pdf [757]
米国では,日本のマンガに対する認識が深まりつつあり,図書館での所蔵・提供を行う図書館が増加しているという。これに伴い,マンガの暴力的な言葉・表現や,性的な内容が,特に児童・ヤングアダルトサービスを担当する図書館員の間で議論になっており,対象年齢がわかりやすいようレイティングシステムを求める声も多い。近年では表紙に対象年齢を明示している出版社もあるものの,映画やゲーム業界とは異なり判断基準が標準化されているわけではなく,またその指標も明示されていないなど,利用する上では不十分であると指摘されていた。
この現状を打開するために,米国で日本のマンガを翻訳・販売しているTOKYOPOP社は,2007年2月20日,マンガの対象年齢をより詳細に記述するレイティングシステムを整備し,2007年9月から同社の出版物に導入すると発表した。同社はこのレイティングシステムを,マンガ業界共通の判断基準として業界内の標準化を図っていく意向のようだ。
同社は北米に「右開き」のマンガ市場を開拓したパイオニアで,北米でのシェアは40%を占める。またこのレイティングシステムの整備にあたっては,ノースカロライナ州シャーロット・メックレンバーグ郡公共図書館でティーン向けサービスの主任を務める司書であり,マンガを使って若者の読み書き能力向上の支援を呼びかける“Getting Graphic!”の著者としても知られゴーマン(Michele Gorman)を顧問に迎え,専門家の意見を反映しようとしている。このことは米国図書館協会(ALA)ヤングアダルト図書館サービス協会(YALSA)のブログでも早速取り上げられており,好意的に評価されている。
同社のレイティングシステムは,マンガで使われている言葉や暴力・性的表現,肌の露出度などについて43の指標を定め,それをもとに,対象年齢を(All Age; 6歳以上),Y(Youth; 10歳以上),T(Teens; 13歳以上),OT(Older Teen; 16歳以上),M(Mature; 18歳以上)の5段階で分類するというものである。対象年齢の判断に当たっては,担当編集者がまず,指標と照らし合わせてマンガをチェックした上で,同社と外部の編集者からなるレイティング委員会に諮り,決定するという。このレイティングシステムは,図書館職員や教師,子どもを持つ親やマンガ業界関係者も参照できるよう同社のウェブサイトで公開されており,注目を集めている。
Ref:
http://www.tokyopop.com/618.html [758]
http://www.tokyopop.com/news/rating_flyer.pdf [759]
http://www.comixlibrarian.com/ [760]
http://www.publishersweekly.com/article/CA6417362.html [761]
http://blogs.ala.org/yalsa.php?title=new_rating_system_by_tokyopop [762]
http://www.schoollibraryjournal.com/article/CA6419837.html [763]
http://www.esrb.org/ [764]
愛書家のためのソーシャルネットワークサービス(SNS)が,米国を中心に活況を見せている。ユーザは,ウェブ上に自分の「本棚」を作成し,そこに自分のお気に入りの本を「カタログ」(登録)していく。そしてそれぞれの本に対してタグ付けしたり(E595 [659]参照),書評を書いたり,5段階で評価(レイティング)したりしていく。こうすることで,ユーザは,このバーチャルな本棚を介して他の愛書家とつながったり,また次に読む本の推薦を受けることができる,というものだ。
このような「ソーシャルブックサイト」(social book site)の草分け的存在であり,なおかつ現在最大のコミュニティを誇るのは,米国のポートランド(メイン州)に本拠地を置く“LibraryThing”である。ウェブ開発者のスポールディング(Tim Spalding)と司書のブラックリー(Abby Blachly)により,2005年8月に開設された。
新しい本を登録するにあたっては,Amazon系の6つのサイト(Amazon.com,Amazon.co.jp等)のほか,Z39.50プロトコルを介して米国議会図書館(LC)をはじめとする国立図書館や,公共図書館,大学図書館など世界各国約80機関の所蔵データを検索することができ,そのデータがそのまま自分の「カタログ」となるような仕組みとなっている。また,Amazonの表紙画像データも自動的に取り込まれるようになっており,視覚的にも美しくわかりやすいバーチャル本棚を作ることができる。
さらにユーザは,同一の著作であるが異なる版の本をまとめたり,著者名に表記のゆれがある場合には曖昧さをなくしたりすることができる。これらによってより的確に自分の趣味にあった本の推薦を受けたり,同じ関心を持つ他のユーザとつながることができるようになっている。このような仕組みが愛書家の心を捉え,現在登録ユーザ数は約16万人,登録された書籍は1,100万冊,付与されているタグは1,400万件,記述された書評は13万6千件にまで成長している。
この急成長ぶりは,豊富な登録ユーザを抱えるAmazonですら追いついていない。Amazonは自社サイトに,LibraryThing開設の3か月後,タグ付け,コメント付与などの類似の機能を追加したが,タグの量だけを比較しても10分の1にとどまるなど,現時点では両社の間には決定的な差が開いている。スポールディングはAmazonとLibraryThingを比較分析し,「人は自分のためにタグ付けする。他人のためにタグ付けすることを求めれば失敗する。」と,LibraryThing成功の理由に言及している。つまり,ユーザは,あくまで自分が利用するためにタグ付けし本を組織化するのであり,企業の商品陳列に貢献するためにタグ付けをするのではないというのである。実際LibraryThingのタグは,数が豊富なだけでなく,無関係なタグが少なく良質である。
急速な成長を遂げたLibraryThingの後を追うサービスは,Amazon以外にも数多くある。例えば,Amazonと同じシアトル(ワシントン州)に本拠地を置く“Shelfari”は,AmazonのAPIを利用しアフィリエイト料がユーザにも配当される仕組みを整え, LibraryThingを追う。このShelfariにはAmazonも最近出資し始めたと伝えられている。この他にも“What's on My Bookshelf”,“What Should I Read Next”,“Delicious Monster”,そして日本でも“ブクログ”,“本棚.org”などが,それぞれ個性を打ち出しユーザを集めている。
Amazonが書籍の購入行動を大きく変えたように,今,LibraryThingをはじめとするソーシャルブックサイトが,愛書家たちの行動を大きく変えようとしているのかもしれない。
Ref:
http://www.librarything.com/ [766]
http://www.librarything.com/users.php [767]
http://www.librarything.com/thingology/2007/02/when-tags-works-and-when-they-dont.php [768]
http://www.librarything.com/log_helpers.php [769]
http://runningwithfoxes.com/2006/10/19/social-sites-for-book-worms/ [770]
http://www.amazon.com/ [771]
http://jp.techcrunch.com/archives/keep-an-eye-on-shelfari/ [772]
http://seattlepi.nwsource.com/business/288229_shelfari11.html [773]
http://www.teleread.org/blog/?p=6245 [774]
http://www.whatsonmybookshelf.com/ [775]
http://www.whatshouldireadnext.com/ [776]
http://www.delicious-monster.com/ [777]
http://booklog.jp/ [778]
http://pitecan.com/Bookshelf/ [779]
E595 [659]
英国博物館・図書館・文書館国家評議会(MLA)は,今後数年間で,英国の公共図書館をどのような方向に進化させていこうと考えているのだろうか?
2007年2月23日,MLAは,「優れたものとなるための青写真(A blueprint for excellence: Public Libraries 2008-2011)」と題する文書を提示した。これは今後の方向性に関して公共図書館,政策決定者等の関係者間の意識の共通化を図ろうとするものであり,あわせてMLA自身がどのようなコンサルティングを行っていくのかを明らかにするものでもある。
英国の図書館界は,2003年に長期的な公共図書館政策として「将来への枠組み」(E056 [780]参照)が示されて以降,「実行計画2003-2006」(E131 [781]参照)にしたがって図書館サービスの向上に努めてきた。その成果は2007年1月に示された「実行計画2003-2006に対する評価報告書(Evaluation of the Framework for the Future Action Plan 2003-2006)」の中で評価されている。今回の文書は,これらの文脈を総括した上で,さらなる進化を目指す必要性があると説いている。
その具体的な方向として,現代の図書館の重要な役割を以下の3点にまとめて提言している。すなわち,
である。その上で,これを達成し現状を改善するための課題,成功への重要な要素,市民や出資者が何を優れているとみなすのか,そして,2008年から2011年の期間内の具体的行動とアウトカムがどのようなものであるべきなのかを,それぞれ簡潔にまとめている。さらに,今後のこの文書の内容の普及を図っていくとし,文書内で,2007年秋までの意見募集やキャンペーン活動等のスケジュールを具体的に示している。
MLAが,このように,まず「青写真」という形で戦略の手の内をわかりやすく提示し,それを核にして公共図書館,政策決定者,関係団体等の利害関係者の合意形成を図っていることは,興味深い。既にCILIP等の関係団体はこの文書に示された内容を歓迎しているとのことであり,まずは順調な滑り出しを見せている模様である。
Ref:
http://www.mla.gov.uk/resources/assets//B/blueprint_11126.pdf [782]
http://www.mla.gov.uk/webdav/harmonise?Page/@id=82&Document/ [783]@id=27266
http://www.mla.gov.uk/resources/assets//E/evaluation_of_framework_for_the_future_action_plan_2003_2006_10651.pdf [784]
http://www.mla.gov.uk/webdav/harmonise?Page/@id=73&Document/ [785]@id=18382
E056 [780]
E131 [781]
大切なコレクションを災害で駄目にしてしまうことなど,誰も考えたくはない。しかし現実に毎年各地で自然災害がおこり,多くの人が大切なコレクションを失う悲しみを味わっている。“家宝”ともいえる貴重なコレクションを守るための知識を,多くの人が必要としている。
2007年2月,米国議会図書館(LC)が,家宝を守るために必要な知識とコツを市民に伝授するウェブサイト“Preparing, Protecting, Preserving, Family Treasures”を公開した。平常時の保管方法,資料を痛めないような展示方法,そして悲しくも被災してしまったコレクションの修復方法のノウハウをわかりやすく教えてくれる。
例えば,書籍が冠水してしまったときにはどうすればよいのだろう?いくつか方法はあるが,まず紹介されているのが,吸水性のよい白紙を1ページごとに挟み込んで水を吸水していく方法である。この方法の場合,ブロックなどの重しを載せて,書籍の歪曲をできる限り防ぐのがコツだ。あるいは,冷凍するという方法もある。冷凍したものを長時間氷点下で放置すると水分が徐々に昇華する性質を利用して,資料をパラフィン紙などに包み冷凍する方法である。もともと極寒のグリーンランドの図書館が火災にあったときに偶然発見された方法であるだけに,寒冷な地域に住む人は知っておく価値があるだろう。これらの方法は,「吸水乾燥法」あるいは「凍結乾燥法」として,図書館員・文書館員等の専門家には比較的よく知られている方法であるが,一般に広く知られているとは言えず,インターネットを通じて広報していくことは,それだけでも意義がある。書籍以外にも,地図資料,写真,レコード,テープ,さらにはCDやDVDなど,様々なメディアそれぞれの対処方法も広く取り上げている。
さらにこのサイトでは,資料修復に経験のない人に役立つような工夫が見られる。デモンストレーションビデオが掲載されており,理解を助けてくれる。また,より専門的な情報へのリンクや,資料修復の専門家を紹介するサービスへの案内も掲載されている。
2005年,2006年と,米国では大きな洪水が続き深刻な被害を受けた図書館,また被害は受けなかったものの災害対策に多くの時間を割いた図書館が数多くあった(E369 [786], E396 [787], E516 [788] 参照)。このような経験を通じて米国の図書館界では,所有者自身が資料の修復を行えるようにしていく必要があること,そのために図書館が資料修復の知識とコツを市民に伝えていく必要があることについて,認識が深まったようである。資料保存に豊富な経験を有するLCが,一般市民へ知識とコツの共有化に努めていることは,高く評価できよう。
Ref:
http://www.loc.gov/preserv/familytreasures/familytreasuresmain.html [789]
http://unesdoc.unesco.org/images/0007/000750/075091eo.pdf [790]
http://www.jsai.jp/file/bosaitebiki.html [791]
E369 [786]
E396 [787]
E516 [788]
中国では,2006年からの第11次五か年計画の中で,国内の古典籍の一層の保護を図ることを目的とした「全国古典籍保護プロジェクト」が位置づけられている。2007年2月28日,中国政府文化部の主催によりの第1回会議が開催され,このプロジェクトが本格的に始動した。具体的には,以下のような事業が実施される予定である。
今回の会議では,文化部の責任者や国家図書館館長,全国各省・自治区・直轄市の文化庁・局の責任者,省立図書館の館長などが参加し,各事業の実施計画案について議論を交わしたという。これらの案は意見募集に付される予定である。なお,調査・研修・保存などの実務を行うための「国家古典籍保存センター」が国家図書館に置かれる予定であり,このプロジェクトについての資料も同館のウェブサイトで公開されている。
今回の会議に先立ち,政府の執務機関である国務院官房からは,国家の重大プロジェクトであるとして推進を指示する意見書が出されている。国を挙げてのプロジェクトとして,今後の動向が大いに注目される。
Ref:
http://www.nlc.gov.cn/service/jiangzuozhanlan/zhanlan/baohu/html/index_cn.htm [792]
http://www.nlc.gov.cn/GB/channel55/59/200703/01/2326.html [793]
http://www.nlc.gov.cn/GB/channel55/58/200703/01/2333.html [794]
American Libraries誌の2006年12月号に,2006年における米国図書館界10大ニュースが掲載されている。
本誌で取り上げていないものを挙げると,(7)はネットワークの通信量が多い利用者に対し通信料を多く支払うよう(=通信料を多く支払った利用者に対し優先的にネットワーク通信帯域を割り当てるよう)求める通信業界に対し,支払う金額に関わらず誰もが平等にネットワークを利用できるようにすべきという「ネットワークの中立性」の原則を堅持するよう求める法制化の動きがあり,GoogleやYahoo!などとともに,図書館界もこれに賛同する活動を行った件である。また(10)は,ネイティブ・アメリカン,アフリカ系,ラテン系など,5つの少数派人種に属する図書館員のグループ(いずれもALA内のグループ)による合同会議が初めて開催されたことについて,のものである。
これらのうち(3)〜(5),(7),(8)は,アドヴォカシーにより図書館に不利な法制化・政策を阻止しようとした点で共通している。米国図書館協会(ALA)の年次大会の開催や2,000万ドル(約23.5億円)を超える義援金の提供などが大きくマスメディアで報じられ,高く評価された(1)も含め,図書館界から政治や社会に積極的に働きかける活動が目立つ1年であったと総括することができよう。
Ref:
Top 10 Library Stories of 2006. American Libraries. 37(11), 2006, 33-37.
E428 [798]
E462 [799]
E486 [658]
E521 [795]
E531 [800]
E543 [57]
E588 [609]
E597 [796]
E609 [801]
CA1171 [797]
CA1618 [127]
韓国図書館協会(KLA)の機関紙『図書館文化』2007年1月号に,2006年における韓国図書館界10大ニュース(順不同)が掲載されている。
本誌で紹介していないものを挙げると,(2)は,2002年からの「図書館および読書振興法」改正の議論(CA1018,CA1578,E376,E429参照)の結果,「図書館法」と「読書文化振興法」が制定された件である。なお,両法とも2007年4月5日から施行されることになっている。
(5)は自治体による学校図書館支援が拡大している一方で,司書教師の拡充が十分に進まず,司書教師がいないため図書館運営が困難な生じている学校があることについて,(6)は文化観光部の政策により,11月20日から国立中央図書館と全国16の地域代表図書館(日本の都道府県立・政令指定都市立レベルに相当)の資料室が22時まで,閲覧室が23時まで開館するようになったことについて,(7)は韓国医学図書館協議会が独自に,希望者対象の認証資格として医学司書資格を創設し,第1回の審査・試験を実施したことについて,である。
また(9)では,新しい目録規則(韓国目録規則第4版)に準拠したMARCフォーマットを制定したことについて,(10)では政府が推進しているFTAに関連して,現行の著作権法が認めている図書館に関する例外規定が損なわれる内容となるのであれば反対するという声明をKLAが出したことについて,である。
司書教師不足,夜間開館時間の増大による負担増,FTAによる図書館業務への影響の恐れなどの課題もあるものの,IFLA大会の成功,待望の法制の成立,図書館の活性化など,総じて明るい話題が目立ち,韓国図書館界にとって大きな実りがあった1年であると言えよう。
Ref:
http://www.korla.or.kr/business/publication/paper/tblPaper/view.asp?pkid=29&BBSCode=P0002 [803]
E376 [804]
E429 [805]
E468 [802]
E506 [208]
E540 [210]
E546 [214]
CA1018 [806]
CA1578 [209]
CA1609 [215]
CA1610 [216]
CA1611 [217]
2月1日。図書館から200メートルほど離れたal-Maidanエリアで爆弾が爆発。死傷者多数。
2月3日。al-Sadriyaエリアで大型トラックが爆発。死者150人,負傷者250人以上。当館の職員も1名が重傷。また別の職員のいとこが死亡。al-Sadriyaは図書館から1キロほど離れたところで,多くの職員が住んでいる。
2月4日。11時15分ごろ,大きな爆発で建物が揺れた。テロリストが,先週と同じ場所を攻撃。再び多数の市民が死傷。
2月6日。爆発も砲撃も銃撃戦もなかった。オフィスに著名な俳優が訪ねてきた。演劇の撮影についての協力要請だった。劇場を無料で使用すること,必要な機材を提供することを約束した。このような厳しいときこそ,文化的活動・行事を継続することは重要だと,意見が一致した。
これは,英国図書館(BL)のウェブサイトに公開されている,イラク国立図書館・文書館(INLA)の館長Saad Eskanderの日記の一部である。INLAは爆破による被害のために2006年11月21日から一時期休館した。その後12月上旬に再び開館したものの,治安状態は以前にも増して厳しい状況に陥った。日記は,この苛烈な状況におかれた2006年11月から,2007年2月上旬までのものが公開されている。交通網の閉鎖。電力供給の制限。建物の爆破。同僚の拉致,殺害。INLAの職員や関係者が日々どのような現実に直面しているのか,逐次記されている。
INLAは,放火などにより,図書館資料の25%,文書館資料の60%もが失われたと試算されている。2003年以降(CA1522 [807]参照),BLなど諸外国の機関との関係の再構築を進めてきたが,復興への道のりは依然険しく,支援も極めて難しい状況にある。
Ref:
http://www.bl.uk/iraqdiary.html [808]
http://www.libraryjournal.com/article/CA6406810.html [809]
http://www.iraqnla.org/fp/News/news3.htm [810]
CA1522 [807]
1970年に設立された米国環境保護局(EPA)は,人々の健康と環境の保護を職務とする連邦政府機関である。このEPAに勤務する職員や研究者18,000人をはじめ,広く一般に対して環境に関する情報を提供してきたのが,ワシントンD.C.の中央館以下,全米に計28館を展開するEPA図書館ネットワークである。
このEPA図書館ネットワークが存続の危機に瀕している。2006年2月,ブッシュ大統領が議会に提示した2007会計年度の予算教書で,EPA図書館ネットワークの運営予算の80%に当たる200万ドル(約2.5億円)を削減する提案がなされた。これを受けてEPAは,2006年中に図書館サービスの縮小を断行した。具体的には,
といった措置が行われた。
この措置に対し,EPAに所属する研究者や職員,さらに環境保護団体などが抗議の声を上げた。米国図書館協会(ALA)をはじめとする図書館界も,「デジタル化するからといって図書館の来館サービスを止めて良いわけではない」「EPAが所蔵している,EPA以外が作成した資料が散逸してしまう」「環境に関する情報が入手しにくくなるのは人々にとって大きな逸失である」などと一斉に反発し,予算の復活,図書館の再開館を求めた。EPAを監督する米国下院の4委員会も立ち上がり,2007年2月6日,EPAに対する監査公聴会(oversight hearing)が行われるに至った。これにはALAのバーガー(Leslie Burger)会長も出席し,図書館界の意見を代弁している。
2008会計年度の予算教書では,EPA本体の予算を4億ドル(約485億円)削減する提案がなされており,EPA図書館ネットワークにとってさらに厳しい事態が予想される。ALAはウェブサイトを特設し,最新の情報を提供するとともに,EPA図書館ネットワークを守るアドヴォカシーを呼びかけている。
Ref:
http://www.epa.gov/natlibra/ [812]
http://www.epa.gov/natlibra/Library_Plan_National_Framework081506final.pdf [813]
http://www.ala.org/epalibraries [814]
http://www.peer.org/news/news_id.php?row_id=731 [815]
https://www.sla.org/PDFs/022406EPAletter.pdf [816]
米国政府印刷局(GPO)が,政府刊行物の網羅的収集の自動化を進めている。
GPOは,連邦政府刊行物寄託図書館制度(FDLP)により政府刊行物の電子コレクション(EC; Electronic Collection)の構築を進めている。このFDLP ECの構築にあたっては,非デジタルの有形出版物をデジタル化して蓄積するアーカイブと,ウェブ上にデジタル形態で公開されている“ボーン・デジタル資料”を収集して蓄積するアーカイブとの両面から網羅性を追求している。(CA1548 [817],CA1569 [818]参照)
このうちボーン・デジタル資料の収集については,これまで人手による収集を行っていたが,作業の効率化を図るため自動的なハーベスティングも模索し,パイロットプロジェクトを行っていた。GPOは2007年2月,『ウェブ・ハーベスティング白書』と題する報告書を公開し,プロジェクトの成果を明らかにした。
プロジェクトでは,環境保護局(EPA)(E609 [819]参照)の膨大なウェブサイト及びデータベースを対象に,刊行物を機械的に収集する実験が行われた。ベンダー2社の協力を得て,6か月間に3度のクローリング(収集ロボットによる探査)を行い,各クローリングごとに,発見・収集されたものがGPOの配布プログラムに合致する刊行物であるか評価し,クローリング方法の修正を重ねた。
その結果,最終的に2社の収集の精度について,ロボットが刊行物とした資料のうち約85%が実際に刊行物であり,またロボットが刊行物としなかった資料のうち約70%が実際刊行物ではないという結果であった。2社はハーベスティングにあたり技術・方法論とも異なるアプローチを採用しており,GPOはそれを比較することで次に解決すべき課題を分析している。具体的には,今後はこの調査結果の分析をさらに進めより精度の高いルール・指示を考案するととしている。さらにそれを踏まえて最適な業務フローや収集された刊行物の目録作成を行っていくとしている。
現状の精度では,機械的にハーベスティングされた資料を完全な刊行物となるようにグルーピングする作業や,人手による点検と目録・分類作業のボリュームが大きくなってしまうため,更なる自動化が求められよう。新システムのリリース予定を2008年と定め,GPOは次の一歩を踏み出している。
Ref:
http://www.access.gpo.gov/su_docs/fdlp/harvesting/index.html [820]
E609 [819]
CA1548 [817]
CA1569 [818]
欧州委員会(EC)は2007年2月15日,通知(Communication)を発し,欧州議会,欧州理事会および欧州経済社会評議会に対して学術情報の現状と課題についての情報提供を行った。
「デジタル時代の学術情報: アクセス,提供,保存(Scientific Information in the Digital Age: Access, Dissemination and Preservation)」と題するこの通知は,学術情報の現状・課題を整理するとともに,学術情報に関するECの考え方と2007年以後に執り行う施策を示しており,一種の政策文書であるといえる。
ECはまず,学術情報の流通を促進することともに,研究論文およびその元となった研究データを蓄積し将来にわたって利用可能とすることの重要性を説いている。その上で,電子ジャーナル,オープンアクセス(OA),機関/主題別リポジトリ,公的助成を受けた研究のパブリックアクセス方針の策定,デジタル資源の法定納本といった近年の動向を簡潔・明瞭に整理している。また,研究者・研究機関・助成機関・図書館と出版社の立場・論点の相違,組織・法・技術・財政の各側面から見た課題もまとめている。
次いで,学術情報の流通・蓄積に関するECの立場が表明されている。ECは学術情報の広範なアクセスと提供を導くイニシアチブの必要性を提起し,公的な助成によってなされた研究の成果およびデータは,原則としてすべての人がアクセスできるようにすべきであるとする。また学術情報のデジタル保存についても,明確な戦略を立てて推進していくとしている。そしてこれらの遂行に際しては,出版社も含めたすべての関係者による議論が必要であると一貫して主張している。このためか,欧州研究諮問委員会(EURAB)などが義務化を勧告していたOA(E604 [723]参照)については,「観察・考慮していく」と述べるに留まっている。
そして最後に,ECが近々行う施策として,以下の4つを示している。
この通知を受け取った欧州議会・欧州理事会がどのように対応していくのか,また各加盟国がどのように欧州レベルでの協同を実現していくのか,利害関係者間の調整はどのように進むのかなど,今後が大いに注目される。
Ref:
http://ec.europa.eu/information_society/activities/digital_libraries/doc/scientific_information/communication_en.pdf [821]
http://ec.europa.eu/information_society/activities/digital_libraries/doc/scientific_information/swp_en.pdf [822]
http://europa.eu/rapid/pressReleasesAction.do?reference=MEMO/07/57 [823]
http://europa.eu/rapid/pressReleasesAction.do?reference=IP/07/190 [824]
http://ec.europa.eu/research/science-society/page_en.cfm?id=3459 [825]
http://www.jisc.ac.uk/news/stories/2007/02/news_ecconf.aspx [826]
E604 [723]
世界1,700以上の機関が参加する協同型デジタルレファレンスサービス(DRS)として発展を続けているQuestionPoint(QP)(CA1476 [827],E234 [828]参照)。そのDRSの副産物であるデジタルレコードの一部は,編集・加工され,“Global Knowledge Base”(GKB)とよばれるデータベースに蓄積・公開されている。公開されているデータは約15,000件である。
QPはこのGKBの認知度と利用状況を確認するためアンケート調査を行い,2007年1月に結果を公表した。調査対象はQPを利用する図書館の職員であり,回答数は267名(公共図書館36%,大学図書館35%)であった。特に米国以外の利用者が21%,利用経験1年以下が41%含まれていることが特徴的である。
GKBをどのように利用しているかという問いに対する回答は以下のとおりであった。
調査結果によると,特にQP利用経験1年以下の利用者は,GKBの存在すら知らない比率が高くなっている。さらに,その理由については,「同じレファレンスサービスが繰り返されることはないから」,「回答を見つけるまでがあまりにも冗漫だから」,「検索する場所が1つふえるだけだから」と,QP側の説明するGKB構築の意図が十分に伝わっていないことがうかがえる。
一方,GKBを利用する人の内訳を見ると,65%がQP利用経験1年以上であり,また75%が質問回答の共有を好意的に評価している。また,利用の利点に関する自由記述回答でも,「図書館員の継続教育に役立つレファレンスツール」,「アイデアの共有,情報源の蓄積,集合知の構築」,「一般に公開することで繰り返されるレファレンス調査に対するニーズを減らすことができる」などが挙がり,一定の認識は定着しているようである。
GKBがその名のとおり「世界の知識基盤」として機能するのか,真価を問われるのはこれからであろう。現在のところ,GKBは意図的にか一般利用者からは目につきにくいところに置かれ,またQPのサービスの柱としても位置づけは低いようだ。QP側は今回の調査結果を建設的にとらえており,今後どのような戦略をとっていくのか注目される。
Ref:
http://questionpoint.blogs.com/questionpoint_247_referen/2007/01/survey_results.html [829]
http://www.questionpoint.org/crs/html/help/en/ask/ask_publish_globalkb.html [830]
http://questionpoint.org/crs/servlet/org.oclc.home.BuildPage?show=searchkb [831]
http://questionpoint.org/ [832]
E234 [828]
CA1476 [827]
文化庁はこのほど,2005年度に実施した委託調査の成果として,海外における著作権関連法制度に関する報告書「知的財産立国に向けた著作権制度の改善に関する調査研究」を公表した。「デジタル化・ネットワーク化時代に対応し」,「権利の適切な保護と利用者の利益とのバランス」に意を払った著作権制度構築に向けた情報の収集を目的としている。
本報告書では,(1)権利制限規定,(2)私的録音録画補償金,(3)著作権等侵害物品関連,(4)その他(ファイル交換ソフト,ブロードバンド送信)の4項目に関する,英・仏・独・米の4か国を中心とする各国の法制度や運用状況について,政府系機関や公益団体のウェブサイト,報告書等の文献に基づく調査が報告されている。たとえば(1)権利制限規定は,(a)図書館関係,(b)障害者福祉,(c)学校教育関係,(d)行政手続関係,の4項目から構成されている。
(a)図書館関係では,
の6項目について,可否に関する法律上の明文規定の有無,対象となる著作物,利用者,条件,認められる行為などが一覧にまとめられている。また必要に応じて条文の邦訳や解釈,実際の運用状況の解説も加えられている。ほかにも(b)障害者福祉では,聴覚障害者向け手話・字幕付番組の複製,公衆送信,知的障害者や発達障害者向けの翻案など,(c)学校教育関係では,教育機関による遠隔地授業の公衆送信など,といったテーマが取り上げられている。
諸外国の著作権法制度や運用はこれまで,国ごと,あるいは対象となる制度ごとに紹介されてはいる。しかしこれらの紹介は断片的であったり,自らの主張に適合する制度の紹介にとどまるなど,問題点も少なくなかった。これに対し本報告書は,各国の著作権制度について,テーマごとに一覧で比較できる貴重なものである。日本の著作権法の今後について議論を深めて行く上で,欠かすことのできない資料となるであろう。
Ref:
http://www.bunka.go.jp/1tyosaku/pdf/chitekizaisan_chousakenkyu.pdf [833]
Coyle, Karen et al. “Resource Description and Access(RDA): Cataloging Rules for the 20th Century”. D-Lib Magazine. 13(1/2), January/February, 2007. (online), available from < http://www.dlib.org/dlib/january07/coyle/01coyle.html [835] >(accessed 2007-02-22).
英米目録規則(AACR)改訂合同運営委員会(JSC)による『資料の記述とアクセス(RDA: Resource Description and Access)』(E372 [61]参照)の検討が迷走を続ける中,「なぜRDAは図書館の役に立たないか(Why RDA is Failing Libraries)?」というショッキングな問いが投げかけられている。論者は,コーネル大学図書館員にしてダブリンコア・メタデータ・イニシアチブ(DCMI)のメンバーであるヒルマン(Diane Hillmann)と,デジタル図書館で30年以上のキャリアを持つコイル(Karen Coyle)である。2人が執筆した本論文は,RDAをあくまでAACRの延長線上に描こうとする図書館界の姿勢を,メタデータ・コミュニティの側から痛烈に批判する。その論調からは,図書館目録の伝統を主張する者と,デジタル時代への参入を求めて大胆な変革を唱える者との衝突の構図が鮮明に浮かび上がってこよう。
論者はまず,デジタル・フォーマットとインターネットの爆発的な増加がもたらした変化の諸相を描き出しながら,図書館目録とその慣行には変化に対応する手段がない,と厳しく指弾する。RDAはこうしたデジタル時代のための新しい基準であり,そのためには根本的な変革が不可避であるはずだが,JSCは今なおAACRの伝統を継続することに固執している。そのように説く論者は,主として次の2点からRDA批判を展開している。
なお,ALA目録委員会(CC:DA)は,論者の抱くこうした不満を共有している模様であり,2006年9月,JSCに対して,(1)トップダウン的アプローチを採用すること,(2)スケジュールを改訂してRDA全体をレビューすること,(3)AACR2にだけアイディアと情報の源泉を求めないこと,を提案した。これを受け,JSCは2006年12月,『RDA−資源の記述とアクセス: スコープおよび構造』を公表した。RDAのスコープと構造がFRBRやDCMIと関連づけて定義されたこの文書は,RDAのモデルをなすものと見られるが,ヒルマンはこの成果も「互換性を後ろ向きにサポートするものだ」と批判している。
Ref:
http://www.frbr.org/2007/01/23/hillmann-midwinter [836]
E372 [61]
学位取得を目指す人のための情報提供サイト“DegreeTutor.com”に発表された一篇のエッセイが話題となっている。「図書館および図書館員が極めて重要である33の理由」と題されたそのエッセイは,シャーマン(Will Sherman)が,これから図書館情報学を学び図書館員を目指す人のために書き下ろしたものである。「図書館員は時代遅れ」という考えに問いを発し,デジタル時代において図書館および図書館員が取って代わられるものではないと断言する。そして,図書館を取り囲む現在の社会的状況と,それに対応する図書館の営みと変革を,33項目に切り分けて解説している。
主なメッセージを見ていこう。まずは「社会は図書館を廃止する段階にはなく,これから先も廃止しないだろう」ということである。インターネット上にすべての情報があるという言説が流布しているが,間違いである。Google Book Searchは人類の知のデジタル化に成果を挙げているが,著作権の制約のため,現在の資料を見られるのは70年後である(E543 [57]参照)。プロジェクト・グーテンベルクは,20,000件もの無料電子書籍を誇るが,もちろんこれは氷山の一角にすぎず,重要な多くの情報源は決して無料で利用できるようにはなっていない。Googleが1億冊もの書籍のデジタル化を終えるのは今世紀末である。インターネットは図書館を補うかもしれないが,決して取って代わるものではない。
むしろ図書館は「社会と技術の変化を取り入れることができるものである」という。例えば,図書館の利用者数の表面的減少については,実は図書館自身が利用者の行動の変化に合わせて進めてきた資料のデジタル化などのサービスの進化によりもたらされているものであり,実質的な利用は決して減少しているものではない。物理的な図書館空間は,“倉庫”(warehouse)ではなく“知の交差点”(intellectual crossroad)としての機能へと変質することができる。実際,図書館はグループ研究室や展示室やカフェなどを設け,物理的な図書館空間の社会的・相互作用的性質の最大化を図っているが,これは図書館が時代に合わせて,自ら変化しているのである(CA1603 [523]参照)。
そこで働く図書館員は,「学者や市民の,オンライン上の価値ある情報を発見する方法の理解を進めるのに適任の専門家」として認識されており,「図書館及び図書館員は,文化の保存と向上のために,以前にも増して極めて重要な存在である」と結論付けている。インターネットは,DIY(自分でやること)を進めるものと認識され,媒介役となる図書館員のような存在は疑問視されている。しかし現在のインターネットの世界は異なる様相を呈している。実際のWeb2.0(E473 [837]参照)の技術動向は,インターネットに人間の知の介在を取り込む方向性を示しており,社会は,ウェブ経済における机上の利害に導かれてデジタル時代を盲目に歩くのではなく,デジタル時代のガイド,道標たる図書館員を育むべきである。
このエッセイで言及されている個々の言説は,決して目新しいものではない。しかし,近年図書館が行ってきた多様な営みを,一度立ち止まって,その意味を省みさせるものとなっている。専門図書館協議会(SLA)次期会長のエイブラム(Stephen Abram)は,いち早く反応し,自身のブログで,「この掲載記事に走れ!」と簡潔明瞭にこのエッセイを読むよう薦めている。多くの図書館員が,この未来の図書館員へのメッセージを手に取り,思いをめぐらせている。
Ref:
http://www.degreetutor.com/library/adult-continued-education/librarians-needed [838]
http://stephenslighthouse.sirsidynix.com/archives/2007/01/33_reasons_why.html [839]
http://tailrank.com/1182555/33-reasons-librarians-are-still-extremely-important [840]
E473 [837]
E543 [57]
CA1603 [523]
「表紙がこういう色で・・・」という表現で,図書の検索を依頼された経験を持つ図書館員は,少なくないだろう。このような問いかけに答え得る,図書館員必見のOPACが,英国のシステムライブラリアンのブログから生まれようとしている。
2007年1月30日,英国中部にあるハダースフィールド大学図書館でシステム管理者を務めるパターン(Dave Pattern)は,敬愛するヒッチコック監督の映画から,数カットごとに画面の平均的な色調を割り出し,それらを時系列順に並べたグラフを,自ら運営するブログ“Self-plagiarism is style”に公開した。当初パターンは,色調を平均化するというアイデアを本に適用し,カバーの色によってヴァーチャルに図書を排列・グルーピングすることを考えていたが,「本のカバーの色が検索に使えるとよいのでは」と,翌1月31日の早朝,ブログにコメントが寄せられた。そこでパターンはさっそく同日夕刻に,「カバーの平均的な色調から,正確に図書が検索できるかどうかわからない」ため,あくまで「急ごしらえの,洗練されていない試作システムである」と前置きした上で,カバーの色から本を検索するOPAC“cover finder!”を公開した。
“cover finder!”では検索したいカバーのカバー画像を,16進数のRGB値に変換して入力し,“find covers”ボタンをクリックすると,該当する図書のカバーの写真が表示される。表示された写真をクリックすると,ハダーズフィールド大学図書館のOPACシステムに移動し,該当する図書の書誌と同大学内の所蔵状況が表示される。カバー写真のデータは,ハダーズフィールド大学図書館のOPACシステムに搭載されているものを加工して用いている。また検索画面からは特定の色を指定せず,ランダムに色を選び,同時に同じ色の図書のカバーを表示する“pick random colour”機能も装備している。
パターンはさらに,手書きイメージから画像共有サイト“flickr”の画像を検索するソフト“retrievr”を利用して,手書きのイメージから類似したカバーをもつ図書を検索するシステムも試作している。カバーを縦・横それぞれ8分割して,全64画素の色調データをデータベース化して利用しているが,検索に時間がかかることや,入力画像から意図する本に正確にたどり着けないという技術的課題が存在することを,2月1日の記事で明らかにしている。この記事にも複数のコメントが寄せられており,技術のことはよくわからないがすばらしい,といった感想ばかりでなく,画像を縦・横それぞれ16分割すればよいのでは,といった提案も含まれている。パターンも同じアイデアにたどり着き,現在作成中であるという。
カバーの色から本を探し出すOPACは魅力的であり,今後の発展が期待される。それとともに,ブログ上で展開される世界中の図書館関係者の会話から,このような新たな検索システムが生み出されていることも,注目に値するのではないだろうか。
Ref:
http://www.daveyp.com/blog/index.php/archives/169/ [841]
http://www.daveyp.com/blog/index.php/archives/170/ [842]
http://webcat.hud.ac.uk/perl/colour.pl [843]
http://labs.systemone.at/retrievr/about [844]
http://www.daveyp.com/blog/index.php/archives/172/ [845]
http://acrlblog.org/2007/02/03/i-know-it-was-red/ [846]
2007年の第73回国際図書館連盟(IFLA)大会の開催国・南アフリカ共和国の図書館界では現在,何がトピックとなっているのだろうか?2006年9月25日から29日まで,行政首都・プレトリアで開催された第9回南アフリカ図書館情報協会(LIASA)年次大会から,その一端をうかがい知ることができる。
大会そのものの開催は9月26日からであり,9月25日はプレコンファレンスとして,(1)子どもや若年者の学習の場としての図書館,(2)図書館情報学の研究・知識の共有,(3)ブログを作る,(4)非専門職の英語リテラシー,(5)南アフリカの発展への専門図書館の寄与,の5つのワークショップが行われた。このうちの(2)では,ICTと情報化社会,ナレッジマネジメント,情報検索の3つのセッションで,合計12本の研究発表が行われた。
9月26日の全体会議では,国家レベルでの図書館政策に関する基調講演が国立公文書館長(芸術文化大臣の代理)から,同じく状況報告が国立図書館長から行われた。図書館行政を司る芸術文化省では,南アフリカの読書文化の育成を目指しており,2006年からの3年で,総額10億ランド(約167億円)を投じて全国の公共図書館,コミュニティ図書館を振興・更新する。また図書館に関する法制として「図書館変革憲章」を制定する予定であり,その準備をしているところであるという。
また翌9月27日の午前には収集,高等教育,書誌標準,ICT,相互貸借,公共・コミュニティ図書館,研究・研修,学校・若年者サービス,専門図書館,職員支援の各分科会が同時並行で行われた。また午後には,合計17本の研究発表が同時並行で行われた。午後の発表には,情報リテラシーの普及や研究図書館における図書館司書・情報専門職の役割に関するものが多く見られ,教育・学習・研究の支援が課題であると察することができる。
9月28日にはIFLA大会に関するセッションが行われ,IFLAやIFLAアフリカ地域分科会の説明がなされた。また9月29日の最終日には,図書館と社会・コミュニティに関する発表・ディスカッションが行われている。社会の統合やコミュニティの振興に資するために,図書館ができること・すべきことについて,ガーナ・ケニアからのゲストスピーカーによる事例紹介も含めて,5つの報告がなされている。
IFLA南アフリカ大会は「未来,進歩,発展,パートナーシップのための図書館」をテーマとして掲げている。南アフリカの進歩・発展を担う社会の知識基盤として,図書館が果たすべき役割は大きく,重要である。
Ref:
http://www.liasa.org.za/conferences/conferences.php [847]
http://www.liasa.org.za/conferences/conference2006/LIASA_Conference06_programme.pdf [848]
http://liasacon06.pbwiki.com/ [849]
http://www.liasa.org.za/branches/wcape/WC_newsletter_Dec2006.pdf [850]
http://www.liasa.org.za/branches/gautengn/LIASA_Gauteng_N_Newsletter_Nov2006.pdf [851]
http://www.dac.gov.za/speeches/minister/Speech2June06.htm [852]
米国のFRPAA(Federal Research Public Access Act)法案(E503 [853]参照)や英国ウェルカム財団(E338 [854]参照)など,助成を受けた研究をオープンアクセスとするよう求める動きが進んでいる。このような動きのなか,欧州研究諮問委員会(EURAB)も2007年1月に,欧州委員会(EC)の研究開発プログラム“Seventh Framework Programme(FP7)”で助成を受けた研究成果のオープンアクセス化を義務付けるよう,欧州委員会に勧告した。
EURABの勧告“Scientific Publication: Policy on Open Access”によると,FP7の成果物を,出版後速やかに,もしくはアクセスできる状態になってから6か月以内に,各機関または主題別リポジトリに登録,公開することを求めている。このほかにも,
ことなどを提言している。
EURAPの動きを受けて,英国情報システム合同委員会(JISC)をはじめとする欧州の教育研究助成4機関とSPARC Europeは合同で,欧州委員会に「公的助成を受けた研究成果を,公表後速やかに一般公開することを保障する」ことを求める署名活動を,1月17日から開始した。この署名活動は研究者個人のみを対象とするものではなく,大学や研究機関,学術団体,図書館,出版社などからも広く募集しており,2月13日現在,署名はすでに2万件を突破している。
Ref:
http://jpn.cec.eu.int/relation/showpage_jp_relations.science.fp7.php [855]
http://cordis.europa.eu/fetch?CALLER=EN_NEWS&ACTION=D&RCN=26924 [856]
http://ec.europa.eu/research/eurab/pdf/eurab_scipub_report_recomm_dec06_en.pdf [857]
http://www.earlham.edu/~peters/fos/2007_01_07_fosblogarchive.html#116845221537275857 [858]
http://www.ec-petition.eu/index.php?p=signatories [859]
http://www.ec-petition.eu/ [860]
E338 [854]
E503 [853]
オーストラリア国立図書館(NLA)が,学協会のオンラインジャーナル出版を支援するパイロットプロジェクトとして,オープンアクセス(OA)誌出版サービス“Open Publish”を開始した。現在までにオーストラリア文学研究協会(ASAL)の学会誌“Journal of the Association for the Study of Australian Literature”(JASAL)など4誌の提供を開始している。
ASALとの協同は2005年10月からはじめられた。ASALは,これまでも学会誌の発行を行ってきたが,その発行部数は小さく読者が限られていた。またその出版モデルが持続可能ではないという問題を抱え,新しい出版の形態を模索していた。一方NLAも,国立図書館としてオーストラリアのOA誌をホスティングする役割の意義を認識していた。同館の目的は,「知識の収集,共有,記録,普及,保存の新しい方法を確立すること」であり,「新たなるオンラインコミュニティに参画し,急速に変化する世界において関係性を確実なものにしたい」と考えていた。両者は合意し,このプロジェクトを協同で進めることになった。
その後両者は,システムの導入と持続可能な出版モデルの確立という課題に取り組んできた。システムには“Open Journal Systems” (OJS)という,査読付き電子ジャーナルの出版・管理を支援するソフトウェアを採用した。OJSは,カナダのブリティッシュ・コロンビア大学が進めている“Public Knowledge Project”で開発され,2002年からオープンソースソフトウェアとして無料配布されている。既に800誌以上のオンラインジャーナルに導入された実績を持つ。このシステム上で,OA誌としてJASALを刊行することにこぎつけ,新しい持続可能な出版モデルを示すことに成功したのである。
事業の責任者であるグラハム(Bobby Graham)は,このパイロットプロジェクトの意義について,「NLAが,オンラインジャーナルの管理システムをホスティングすることに関する理解を深めたことだ」と述べている。実際,大学教授をはじめ様々な利用者から歓迎するコメントが寄せられている。
Ref:
http://www.nla.gov.au/nla/staffpaper/2006/documents/BGraham_Info-online-2007.pdf [861]
http://www.nla.gov.au/openpublish/ [862]
http://www.nla.gov.au/openpublish/index.php/jasal [863]
http://pkp.sfu.ca/?q=ojs [864]
近年,ネットワーク系電子出版物は増加の一途をたどっており,各国でこれを納本対象とするための法制度の整備が進んでいる(CA1612 [142],CA1613 [671],CA1614 [865]参照)。このような中,カナダ政府も法定納本制度を改正し,2007年1月1日より,出版社に対し,オンライン電子出版物をカナダ国立文書館・図書館(LAC)に納本することを義務づけた。
カナダの法定納本は,1953年,LACの前身であるカナダ国立図書館の時代に導入された。以降54年の間に徐々に対象を拡大し,1965年に逐次刊行物,1969件に録音テープ,そして1995年にパッケージ系電子出版物を追加するなど,メディアの多様化に対応してきた。オンライン出版物については,政府は2004年LACに対し,価値あるカナダのウェブサイトを保存するため選択的にウェブサイトを収集することを認めていた(E226 [70]参照)。今回の改正は,この延長線上にあるものである。
今回,納本の対象となったオンライン電子出版物は,タイトル,著者,出版日を特定できるものであり,これには,書籍,雑誌,年鑑,リサーチペーパー,学術雑誌などが含まれる。また掲示板,電子メール,個人サイト,イントラネット上の情報,動的データベース等については,LACが必要性を認める場合には,館長が出版者に対し自主的な納本を求めることができるとされている。
また,デジタル著作権管理(DRM)により,未来の世代がデジタル形式の出版物にアクセスできなくなってしまう問題についても解決を図っている。すなわち,納本の際に暗号の解除やアクセス制限機能の解除を行うよう義務付けられている。さらに,アクセスに必要となるソフトウェアやマニュアル,メタデータの提供も規定されている。
なお,納本される資料の扱いについては,出版社は,自身がオープンアクセスか限定的アクセス(LAC本館に設置されたコンピュータ端末でのみ閲覧することができる)を選択することができる。LACは,可能な限りオープンアクセスとすることを求めている。
国の知的財産を現在および将来の世代のために収集・保存し継承するという法定納本制度の目的は,導入以来変わっていない。その目的は,今日の情報環境においても達成されることが期待されるものであり,今回の法改正でカナダは確実にその歩を進めたと言えよう。
Ref:
http://www.collectionscanada.ca/6/25/index-e.html [866]
http://www.cla.ca/caslis/CASLISOttawa_2007-01-16-e.pdf [867]
http://news.bbc.co.uk/2/hi/technology/6287181.stm [868]
http://www.collectioncanada.ca/electroniccollection/003008-1000-e.html [869]
E226 [70]
CA1612 [142]
CA1613 [671]
CA1614 [865]
2006年12月26日,韓国国会の本会議で「国会法一部改正法律案」および「国会立法調査処法案」が可決された。これにより,国会議長直属の機関として「立法調査処」が新設されることとなった。
この立法調査処は2005年6月,当時の国会議長が,専門的な政策情報を生産し,国会議員の立法政策提案力を向上させるための機関として必要性を訴えて以来,1年半あまり検討が続けられてきたものである。その位置付けは米国議会図書館(LC)の議会調査局(Congressional Research Servicecenter: CRS)をモデルとしており,独立性・中立性を保ちながら,立法活動を支援するものとされている。その職務は,(1)国会の委員会または国会議員が要求する事項の調査・分析および回答,(2)立法・政策関連の調査研究および情報の提供,(3)立法・政策関連資料の収集・管理および普及,(4)国会議員研究団体に対する情報の提供,(5)外国の立法動向の分析および情報の提供,の5つと規定されており,これらを処長以下90名程度の立法専門の職員が担うことになる。国会ホームページ内のニュースによれば,実際の活動開始は,2007年8月末の予定とされている。
このような国会改革の動きに対し,韓国国会図書館も2006年12月,職制を改正し立法情報サービス機能を拡大している。具体的には,立法情報に関するレファレンス,立法情報に関するデータベースの構築,海外資料の調査・翻訳などの業務を担える専門家を,契約職公務員として配置できるようにし,人員を拡大した。また同時に,電子図書館政策を担う電子情報政策課と,民間ポータルサイトや海外の図書館との協力業務を担う広報協力課の2課が新たに設置されるとともに,資料の収集・整理・閲覧などを担う部門では機能統合も行われた。
立法情報サービスに関して国会図書館を取り巻く環境は,立法調査処の設置,またその他の競合機関の存在により,今までとはまったく違ったものとなった。国会図書館も絶えず変化していかなければならず,今回の職制改正はそのための第一歩である,とノ・ウジン国会図書館広報協力課長は述べている。立法調査処がどのように組織され,活動していくのか,また国会図書館はどのような形で存在意義を示し,進んでいくのか,今後の動向が注目される。
Ref:
http://search.assembly.go.kr/bill/doc_10/17/pdf/175861_100.HWP.PDF [871]
http://www.assembly.go.kr/brd/news/news_vw.jsp?newsId=4530 [872]
http://www.assembly.go.kr/brd/news/news_vw.jsp?newsId=4602 [873]
http://www.nanet.go.kr/libinfo/data/pdf/rule1.pdf [874]
http://www.nanet.go.kr/libinfo/data/new_library/200701_04_nal.pdf [875]
日本でも,“はてなブックマーク”などのフォークソノミー(folksonomy)を取り入れたソーシャルブックマーク・サービスが普及し,ウェブ上のコンテンツにタギング(タグ付け)して情報整理を行う人が増えている。「folksonomy」とは「folks」(民衆)と「taxsonomy」(分類)を併せた造語であり,利用者自身がコンテンツを分類し,索引の付与を行う仕組みである。利用者の付けたタグが共有されることにより,いわば民意により分類体系が構築され,有効な情報探索支援ツールとなりうる。
海外では,Yahoo!が買収したソーシャルブックマークサイト“del.icio.us”や画像共有サイト“Flickr”,Googleが買収した動画共有サイト“YouTube”,さらにはウェブページ・アーカイビングサービスの“Furl”,nature.comの医・科学の参考文献共有サイト“Connotea”などが,人気のサービスとなっている。
タグは,情報を分類するためだけに使われるのではない。誰が,どのようなコンテンツに,どのようなタグを付けたのかが共有されているため,タグを介して同じ関心を持った他の利用者とつながることができる。また他者の利用しているサイトやその利用しているタグを学ぶことで,情報探索を効率的に行うこともできるようになる。さらにタグには,“to read”,“to do”など,コンテンツに対して事後的に行う行動を印付けておいたり,“cool”など,感覚的な表現で印付けるような使い方もされている。このような時間・感情の要素は,もちろん従来の分類法にはない要素である。
米国の図書館では,フォークソノミーを,公共図書館の目録システムを補強する手段として取り入れようとする提案や実践が始まっている。「公共図書館目録における協同タギングの利用」と題する発表では,書誌データに対する利用者のタグ付けを取り入れることで,利用者のオンラインコミュニティを構築したり,タグの情報から読書リストを作成したりすることを提案している。また,先日リリースされたミシガン州アナーバー(Ann Arbor)地域図書館の蔵書検索システム“SOPAC”(Social OPAC)では,アカウントを持った図書館利用者が,書誌データにタグをつけることができるようになっており,それを活用したタグクラウドなどの表示方法などを実装してみせている。
従来図書館が主に依拠してきた統制語彙による分類・索引を補うものとして,フォークソノミーの可能性は注目される。
Ref:
http://b.hatena.ne.jp/ [876]
http://del.icio.us/ [877]
http://www.flickr.com/ [878]
http://www.youtube.com/ [879]
http://www.furl.net/ [880]
http://www.connotea.org/ [881]
http://eprints.rclis.org/archive/00008315/ [882]
http://www.ala.org/ala/lita/litamembership/litaigs/authorityalcts/Spiteri-AN2006.ppt [883]
http://www.aadl.org/catalog [884]
http://www.aadl.org/sopac/tagcloud [885]
米国図書館協会(ALA)は2007年冬季大会を前にした1月19日,21世紀の図 書館サービスのための「全米図書館行動計画(National Library Agenda)」のドラフト版を公開した。
「全米図書館行動計画」草案は,2006年12月にワシントンで開催された“National Library Agenda Summit”における議論をもとに作成された。行動計画では冒頭で,情報技術の革新と情報へのアクセス性の向上を背景に,図書館はその存在意義が問われていると指摘する。そして図書館という組織の存在そのものに対する危機感を表明し,「21世紀の図書館サービス」を提供するために,今がまさに行動計画作成の好機であるとする。この行動計画は,(a)連邦,州,地域レベルそれぞれの図書館サービス構築に向けた,議論や合意形成に役立つ枠組みの構築,(b)社会と連携した図書館行動計画の明確化,(c)方針制定やアドヴォカシー活動に向けた,積極的なメッセージの発信,(d)今後のアドヴォカシー活動を主導する視点の提供,という目的のもと,図書館の行うべき行動を以下の6つのテーマごとにまとめ,それぞれ具体的な計画を挙げている。
この行動計画の作成には,2006年7月にALA会長に就任したバーガー(Leslie Burger)の意向が反映されている。これまでALAでは,必要に応じて行動計画を策定・実行してきたが,対象領域ごとに計画や取り組みが分散し,モザイク状になる傾向が生じていた。バーガーは「図書館がコミュニティを変える」(Libraries Transform Communities)をテーマとして掲げており,これを実現するために国家レベルの行動計画作成が必要であるとして,政策立案者,財政支援者,図書館職員,図書館友の会関係者,ALA役員,利用者などと約1年間にわたり協議を重ねてきた。バーガーは行動計画の公表にあたり,このような計画は前例がないものであるとして,図書館職員ばかりではなく,広く意見を求めるとのコメントを出している。
この行動計画は2月15日までパブリックコメントを募集しており,5月1日の「全米図書館立法の日(National Library Legislative Day)」までに取りまとめられる予定である。また策定後も毎年,レビューと改訂が予定されている。
Ref:
http://wikis.ala.org/nationallibraryagenda/images/f/f4/Discussion_Draft_MW_2007_final_1-11-07.pdf [886]
http://www.ala.org/ala/pressreleases2007/january2007/NationalLibraryAgenda.htm [887]
http://wikis.ala.org/nationallibraryagenda/ [888]
http://www.ala.org/Template.cfm?Section=News&template=/ContentManagement/ContentDisplay.cfm&ContentID=144870 [889]
http://lb.princetonlibrary.org/nla.html [890]
2007年1月,ニューオーリンズ市と市の公共図書館委員会が,市の全図書館を統括する館長の公募を開始した。
2005年8月のハリケーン「カトリーナ」被災(E369 [786],E396 [787]参照)から約1年半。ニューオーリンズでは政府の援助を元に,住宅の再建や被災地の清掃,また堤防の増強や水門の設置といった防災対策が進められており,復旧は着実に進んでいる。比較的被害の少なかった歴史地区「フレンチ・クォーター」などには観光客が戻り,市の名物であるジャズやレストランが活況を呈している。米国図書館協会(ALA)も,2006年の年次大会をニューオーリンズで開催し,雇用と税収という形で復興を支援したところである(E472 [891],E521 [795]参照)。
一方で,被害の大きかった新興住宅地区には,まだ大きな傷跡が残っている。2005年7月の人口はおよそ45万5,000人であったが,2006年8月時点では18万7,500人と,大きく減少している。転居を余儀なくされた住民の多くは,元の場所に戻り,住居・生活を再建したいと考えているといい,そのための都市計画が住民参加のもと,進められている。
今回公募された館長の主たる任務も,市の公共図書館の再興である。中央館は被災後の10月に開館したものの,全部で12館あった分館は,まだ5館しか開館できていない。被災前は216人いた職員も,ようやく85人にまで回復したところである。分館再建のほか,リーダーシップの発揮,戦略計画の立案,サービスの優先順位付けとそれに合わせた資源の効率的配分,ニーズを満たす効率的なサービスの提供,市・財団・友の会といった関係者との連携,資金提供と協力を呼びかけるアドヴォカシーなど,新しい館長に課されている課題は多い。
館長の給料は10万ドル(約1,200万円)〜13万ドル(約1,570万円)。応募資格は,図書館学の修士号取得・管理職業務経験5年以上であることのみ。ただし,募集要項に掲げられている「理想の候補者」の資質は高い。企画力,コミュニケーション力,マネジメント力,リーダーシップ,寄付・助成金を獲得するファンドレイジングのスキル,スタッフの育成力,新しい技術に関する知識など,さまざまなスキルが求められている。そして,「大きなことをやってのけたい」という意欲と「ニューオーリンズでしか得られない生活を楽しめる」こと。この2つも,館長には欠かせない資質とされている。
Ref:
http://www.dubberlygarcia.com/NewOrleans_CityLibrarian_Ad.pdf [892]
http://www.dubberlygarcia.com/NewOrleans_CityLibrarian_Brochure.pdf [893]
http://lisnews.org/articles/07/01/12/1523242.shtml [894]
E369 [786]
E396 [787]
E472 [891]
E521 [795]
予算1ポンドあたり,9ポンドに相当するサービスを産み出している−英国情報システム合同委員会(Joint Information Systems Committee: JISC)が2007年1月に発表した自己評価報告書“JISC's value to UK education and research”に示されている1つの数値である。同報告書は,JISCのサービスが「費用に見合った価値」(Value for Money: VFM)を達成しているかどうかを説明する資料である。サービスに要した費用とそれが産み出した便益を数値化して比較し,そのサービスの経済性・効率性・有効性を説明している。
JISCは,高等・継続教育機関に対し,情報通信技術を活用する基盤を提供するとともに,豊富な電子コンテンツの提供や,必要な指導・助言の提供を行っており,そのサービスは多岐にわたっている(CA1620 [895]参照)。ネットワークの費用やコンサルタント料など,国内の商用サービスの価格や他国の同様のサービスと比較可能なものもあるが,多くのサービスのVFMは,客観的説明が難しい。しかしJISCは,サービスの品質,資源利用,合目的性,適時性,利便性等を複合的に考慮して価値を金額化することにより,説得力のある説明を提示している。
例えば電子コンテンツの提供サービスの価値については,JISCの22の情報資源を分析し,教育コミュニティが節約できた金額を算出している。これらの情報資源の構築に要する年間費用は約100万ポンドであるが,価値としては実に26倍,2,600万ポンドを超えるサービスを提供している,としている。
また,電子コンテンツを使用することによって節約される時間についても,紙媒体・相互貸借・来館等と比較して分析している。大学で教育や研究に携わっているスタッフの情報収集に要する時間の節約分は合計140万人日分になり,平均賃金でその金額を算出すると,1億5,600万ポンドもの費用を節約したことになるという。
もちろん,サービスの価値のすべてを数値化することには限界はあるが,この報告書は,先駆的な知識情報基盤を提供する組織へと発展を遂げているJISCの“隠れた”価値を数値化してみせている。
Ref:
http://www.jisc.ac.uk/valueformoney [896]
CA1620 [895]
「メガネ・お団子髪・ミドルエイジ・女性」という典型的な図書館職員像が米国では存在しているといわれており,メガネをかけたミドルエイジの白人女性をモデルにした“Librarian Action Figure”も販売されている。実際,1990年と2000年に行った図書館職員の全数調査をもとに,米国図書館協会(ALA)が性別・人種・年齢などの属性を分析した調査“diversity counts”によると,図書館に勤務する有資格者は,45〜54歳の白人女性が多数を占める。一方で全人口の約14%,約12%を占めているヒスパニック系,アフリカ系米国人の図書館に勤務する有資格者の割合はそれぞれ3.2%,8%に過ぎず,特にアフリカ系米国人の有資格者の図書館職員には減少傾向がみられるという。
このような中,AP通信社は図書館情報学修士課程で学ぶアフリカ系・ヒスパニック系米国人を取材し,2007年1月7日付け記事で伝えている。
アフリカ系米国人の図書館司書が少ない理由として,伝統的にアフリカ系米国人が多く通う大学の中で,ALAが認定する図書館情報学大学院がわずか1校しかないことが指摘されている。米国では大学院進学がその後の職業に大きな影響を与えるが,専門職大学院が身近に存在しない学生が,職業選択の選択肢として図書館を選ばないのは当然のことであろう。記事に登場する大学図書館司書を目指すアフリカ系米国人の女性は,ALAの奨学金“Spectrum”の支給を受けて,アラバマ州立大学の図書館情報学修士課程で学んでいる。“Spectrum”はマイノリティの図書館職員数を実際の人口比と同程度まで拡大し,図書館職員の人種的多様性をもたらそうとするALAの取り組みの一つで,ALAが認定する図書館情報学修士課程で学ぶマイノリティの学生に対し支給される奨学金である。
同じく大学図書館司書を目指すヒスパニック系の女性は,博物館・図書館サービス機構(IMLS)の奨学金を受けて図書館情報学修士課程を取得したという。彼女は異なる文化的な背景をもつマイノリティの存在は,異なる観点を利用者に提供できるのではないか,と語っている。
価値観の多様性(diversity)の尊重を追求する米国。図書館職員の人種構成を,利用者である米国市民の構成に合わせて多様性を確保していくことは,米国図書館界に課せられた課題となっている。
Ref:
http://www.mcphee.com/laf/ [897]
http://www.ala.org/Template.cfm?Section=diversity [898]
http://www.ala.org/ala/diversity/spectrum/spectrum.htm [899]
http://www.ala.org/ala/ors/diversitycounts/DiversityCounts_rev07.pdf [900]
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2007/01/05/AR2007010502187_pf.html [901]
http://www.imls.gov/ [902]
Mann, T. What is going on at the Library of Congress?. 2006. (online), available from http://guild2910.org/AFSCMEWhatIsGoingOn.pdf [903] (accessed 2007-01-30).
米国議会図書館(LC)と,LCに勤務する1,600名以上の専門職員が加入している組合“Library of Congress Professional Guild”の対立が表面化している。人員削減や勤務時間中の組合活動に関する論争といった他の労使関係にも見られる対立もあるものの,主に注目を集めているのは,LCのビジョンや政策に対する組合からの批判である。組合のウェブサイトには,目録政策の将来に関する論考を集めた特設ページ“The Future of Cataloging”があるが,本文書はその中核をなすものである。
CA1617 [101]で紹介しているとおり,LCの委託によりコーネル大学図書館のカルホーン(Karen Calhoun)が作成した「カルホーン報告書」(Calhoun Report)に対しては,組合側のマン(Thomas Mann)が批判を展開している。さらにマンは,LCのビジョンや政策における目録業務の位置付けについて批判する本文書を2006年6月に公開した。この中でマンは,LCが最近行った悪しき決定として,(1)カルホーン報告書の作成,(2)シリーズ典拠レコード・シリーズタイトルコントロールの廃止,(3)従来は紙媒体やマイクロフィルムで受け入れていたEmerald社の出版物や博士論文を(原資料がデジタル形態でないのに)デジタル媒体でのみ受け入れるとしたこと,(4)著作権局の目録の廃止,(5)著作権の制限がない特別コレクションのデジタル化を目録業務より優先するビジョンを掲げたこと,の5点を挙げ,それらを仔細に論証している。
マンの批判の槍玉に挙がっているのは,主にLCの図書館サービス担当副館長・マーカム(Deanna Marcum)である。マンによれば,マーカムをはじめとするLCの上層部が,「“Google Book Search”などの企業による図書館蔵書のデジタル化が進むことにより,何百万もの資料に対し簡単で正確な検索ができるようになると,LCは特別コレクションのデジタル化に注力するくらいしかやることがなくなる」といった認識に立っているとする。そして,マーカムらの議論は「図書館に行くことなくインターネットで何もかもを済ませようとする怠け者の学生」のような利用者を前提としており,そのために,Googleのような「関連性」,Amazonのような「フォークソノミー」(E595 [659]参照)で検索結果の妥当性を判断することで十分だと結論付けていると批判する。マンは,実際のLCの利用者は研究者や図書館員であり,LCの件名標目による検索,LC分類表に基づき主題別に排架された書架のブラウジングは,研究図書館にとって不可欠なものだとする。そして,Googleの時代において,図書館がなすべきことは,Googleに追従するのではなく代替(alternative)として機能することだとし,目録業務の重要性を説いている。
2006年7月に行われたLCのWorld Digital Library構想(E416 [904]参照)に関する下院の公聴会においても,組合はマンの見解に基づき,同構想に懸念を示す意見表明を行っている。また2007年1月には,マンによる続編“More on What is Going on at the Library of Congress?”のほか,シリーズ典拠レコードに関する批判文書が公開され,図書館界からのさらなる注目を集めている。
Ref:
http://www.guild2910.org/ [905]
http://www.guild2910.org/future.htm [906]
http://www.libraryjournal.com/article/CA6357471.html [907]
http://www.guild2910.org/LC%20Guild%20World%20Digital%20Library%2027%20July%202006.pdf [908]
http://www.guild2910.org/AFSCMEMoreOnWhatIsGoing.pdf [909]
http://www.guild2910.org/SARS%20PAPER.pdf [910]
CA1617 [101]
E595 [659]
E416 [904]
米国のOCLCが構築・運用するWorldCatは,世界中の10,000館以上の図書館の目録データを取り込み,所蔵資料10億点分,7,600万件以上の書誌レコードを有する巨大なデータベースである。この巨大な総合目録を,FRBR(『書誌レコードの機能要件』; CA1480 [63]参照)に準拠させる壮大なプロジェクトが進められている。この変換は“FRBR化”(FRBRization)と呼ばれ, OCLCはその実現可能性や実現に伴う課題の検証を行っている。具体的には,既存の膨大な書誌データを機械的に変換させるためのアルゴリズムの研究や,プロトタイプシステムの開発などの複数の研究を並行的に進めている。
このプロトタイプシステム『FictionFinder』のベータ版が,2006年12月に公開された。このシステムでは,WorldCatから抽出された小説の書誌レコードを,“FRBR風”(FRBResque)に検索・表示することができる。
検索対象は,FRBRの著作(Work)レベルのデータ,約280万件である。これはヒッキー(Thomas B. Hickey)らが, WorldCatに登録された書誌レコードを機械的にFRBR化し,著作単位で束ねたものである。このデータセットを用い, FictionFinderでは,FRBRモデルの階層構造に従い,同一の著作に属する体現形(Manifestation),さらに,最終的には各館の所蔵する個別資料(Item)にたどり着けるようになっている。また,複数のデータが著作単位で束ねられたことで,所蔵機関数によるランキング表示や,相互補完された登場人物,ジャンル,作品の設定などの記述要素を活用した検索やブラウジングのインターフェースも提供している。
さらに,主題によるブラウジングには,LCSHを単純化したFAST(Faceted Application of Subject Terminology)での件名表現や,館種別の所蔵館数から算出した対象読者(Audience)レベルの表示など,同時並行で進められてきたOCLCの他のFRBR関連の研究成果を取り込んだものとなっている。これらにより,総じて,FictionFiderはFRBR化による効果をある程度顕示することに成功したといえよう。
FRBRが1998年に国際図書館連盟(IFLA)により勧告されて以来,OCLCは着実に研究を積み重ねている。今後,WorldCatのような巨大な書誌データベースでのFRBR化の実現方法と課題が整理され,他の総合目録あるいは各機関の目録データベースの機能性向上にフィードバックされていくことが期待される。
Ref:
http://fictionfinder.oclc.org/ [911]
http://www.worldcat.org/ [912]
http://www.oclc.org/research/projects/frbr/fictionfinder.htm [913]
http://www.oclc.org/research/projects/frbr/default.htm [914]
http://www.oclc.org/research/presentations/vizine-goetz/webwise2006.ppt [915]
http://orweblog.oclc.org/archives/001225.html [916]
http://www.oclc.org/research/projects/fast/default.htm [917]
http://www.oclc.org/research/researchworks/audience/default.htm [918]
CA1480 [63]
英国の情報システム合同委員会(JISC)は2006年7月13日,1993年に設立されたサブジェクト・ゲートウェイ“Resource Discovery Network”(RDN)を“Intute”にリニューアルした。このIntuteが2006年12月6日から提供している,研究者向けの主題別ウェブ情報資源のトレーニングツール“Virtual Training Suite”が注目を集めている。
Intuteは,各主題ごとの研究者グループによって評価・選定された,教育・研究用の「最良のウェブ情報資源」を集め,これらの情報資源へのアクセスを促進することで,教育・研究の質の向上を図ることを使命としている。2007年1月現在,科学技術,芸術・人文科学,社会科学,健康・生命科学の4分野,計11万点を超えるウェブ情報資源のデータベースが構築されており,一般に公開されている。
Virtual Training Suiteは,このデータベースに基づき,教育・研究者がインターネットを用いて情報検索・研究を行う際に把握しておくべきことをチュートリアル形式で学ぶことができるようにした無料トレーニングツールである。化学,考古学,人類学,園芸学など,65以上の主題分野別に,(1)最上のウェブ情報資源を紹介する“tour”,(2)効果的な検索ツール・スキルを教える“discover”,(3)ウェブ情報資源の内容・質を評価する方法を教える“judge”(または“review”など。主題分野により相違がある。),(4)全体のまとめと,教育・研究への効果的なインターネット活用法・活用事例を紹介する“success”(または“reflect”“plan”など。)の4部からなるチュートリアルが提供されている。有用な情報資源へのリンクを保存できるバスケットや,プリントアウト可能な利用案内,学生向けの案内パンフレット,インターネット関連の用語集も用意されており,インターネットの初心者,主題分野の初学者,さらには研究者や学生ではないが当該の主題分野に関心を持つ一般市民でも利用しやすいように配慮されている。
このVirtual Training Suiteは「Googleが検索結果として提供するような大量の,評価されていないリストでは決して得られない」リストやスキルを得られるものである,と担当者は語っている。
Ref:
http://www.vts.intute.ac.uk/ [919]
http://www.vts.intute.ac.uk/about/ [920]
http://www.intute.ac.uk/ [921]
http://www.intute.ac.uk/history.html [922]
http://www.jisc.ac.uk/news/stories/2006/07/intute_launch.aspx [923]
http://www.jisc.ac.uk/Home/news/stories/2006/12/news_virtual_training.aspx [924]
http://education.guardian.co.uk/elearning/story/0,,1969795,00.html [925]
近年,学術系出版社を中心に,雑誌のバックナンバーを遡及的にデジタル化して,オンラインで提供するという動きが広まっている。しかし,多くの出版社にとっては,デジタル化対象のバックナンバーを入手することが最初の大きな難関となってしまっている。休廃刊した雑誌はもとより,刊行中の雑誌についても,バックナンバーを完全に保管している出版社は多くはない。
このような出版社を支援するため,英国図書館(BL)は2007年1月3日,所蔵する雑誌のバックナンバーを館内でスキャニングし出版社に送付する“Publisher Digitisation Service”を開始すると発表した。
このサービスを利用する出版社の一つに,SAGE社の名が挙がっている。SAGE社は,2006年1月からバックナンバーのデジタル化プロジェクトを独自に開始していた。当初の見積もりでは,およそ2万冊,合計200万ページがデジタル化対象であり,これを1年でデジタル化する予定であった。ところが,雑誌の刊行を他から引き継いだりするなどして,プロジェクトが進むにつれて対象が増えていき,280万ページを超えるに至った。そして結局のところ,SAGE社が持っていたスキャン可能な資料は,全体の4分の1にも達していなかった。そこで,このBLの新サービスを利用することにしたという。
SAGE社は,サービスの便利さに加え,BLのスタッフの雰囲気・責任感・手際の良さ・専門技術の高さや,デジタル画像の品質の高さも評価している。BLのフレガー(Mat Pfleger)セールス・マーケティング部長は,このサービスは「出版社のデジタル化プログラムには付き物の,時間・コスト・悩みを削減できる」ものである,と語っている。
Ref:
http://www.bl.uk/news/2007/pressrelease20070103.html [252]
http://www.sagepub.com/repository/binaries/press/SageAnnouncesBackfileDigitization.pdf [926]
国際図書館連盟(IFLA)はこのほど,今後3年間の活動方針「戦略計画2006-2009(Strategic Plan 2006-2009)」を理事会で承認し,2006年12月20日に公表した。
IFLAは図書館界が社会に対して果たす役割に即して,活動対象を社会,図書館界,IFLA会員に分類しているが,今回の「戦略計画」も,それぞれの活動対象ごとに必要とされる目標と戦略を12項目にまとめている。
まず図書館界向け目標として,(1)国際的な情報交換を可能とする規格や基準の策定,(2)図書館サービスの質的向上を図る活動の実施,(3)経営,運営やサービス改善に資する出版物の刊行,(4)世界各国,とりわけ発展途上国における図書館協会活動の後援,(5)自然災害や取り扱いの不備,紛争等が原因の資料損壊の回避・および修復活動,の5点を挙げている。これらの目標に対する活動計画は多岐にわたっており,たとえば(1)の規格・基準の策定ではメタデータ,資源コントロール,文献提供に関するガイドラインや規格の提供といった事項(E283 [927],E324 [928],E363 [652]参照)が挙げられている。
次に社会向け目標として,(6)各国図書館協会との協力によるアドヴォカシー・プログラムの開発,(7)図書館サービスに影響を及ぼす分野における,国際政治や実践活動への関与,の2点を挙げている。これらに対応する活動計画のひとつとしては,フェア・ユースのもとで利用者に情報を提供できるように,著作権法や知的財産権法の国際的な動向に関与する(E253 [929],E318 [930]参照)などの事項が挙げられている。
最後にIFLA会員向けの目標として,(8)プロフェッショナル・グループとの組織的かつ効果的な意思疎通,(9)能力開発を支援するための機会(フォーラムなど)の設定,(10)組織や事務局の効率的な運営,(11)財政源の強化と多様化,(12)これらの戦略をサポートする,IFLA内の組織整備,の4点を挙げている。
この「戦略計画」ではグローバリゼーション,情報の電子化,図書館と社会との関係性など,図書館が世界的に直面している課題とその解決に向けての方向性について,簡潔にまとめられている。今後どのような活動を通じて「戦略計画」が実行に移されるのか,IFLAの取り組みが注目される。
Ref:
http://www.ifla.org/V/cdoc/IFLA-StrategicPlan.htm [931]
http://www.ifla.org/III/IFLA3Pillars.htm [932]
E253 [929]
E283 [927]
E318 [930]
E324 [928]
E363 [652]
英国の図書館・情報専門家協会(CILIP)は,前会長であったショーレー氏(Debby Shorley)を主査とするワーキンググループ“New Business Model Working Group”を設置し,同ワーキンググループによる報告書「新たなビジネスモデルに向けて(Towards a New Business Model)」を,2006年12月7日に公表した。
本報告書ではCILIPの主要な活動を,(1)社会に対する図書館情報学専門職の価値の紹介・宣伝,(2)図書館情報学専門職の調整,(3)図書館情報学専門職の養成支援,の3点であると定義する。そして,CILIPが英国全土を対象に,効率的な活動を実施する機関であると評価している。だがCILIPの提供するサービスについては,すべて原価回収の原理で運営されるべきであり,そのような自己採算が取れない事業については,縮小あるいは廃止するべきだとしている。
この基本方針に沿って,本報告書はCILIPが展開する活動について現状評価を加えるとともに,2007年および2008年の活動に対して,予算の配分を含む広範な提言を行っている。たとえば「資格の新しい枠組み(The New Framework of Qualification)」(CA1491 [933],E201 [934]参照)について,2007年には現在の枠組みを維持しつつも,各地域に置かれた継続的専門能力開発(Continuing Professional Development: CPD)事業の廃止や外部評価の実施することを,また,2008年以降は活動資金の自己調達制度の導入することを,それぞれ提言している。本報告書について,CILIPは2007年の活動に関する提言はただちに取り入れ,さらに2008年の活動に対する提言に対しても,さらに議論を重ねてゆくことを表明している。
報告書ではまた,2007年中に複数の外部組織と比較した評価も実施すると述べられており,会員からのコメントも募集している。この報告書が以後の評価コメントを受けて,今後のCILIPの活動がどのように展開されるか注目される。
Ref:
http://www.cilip.org.uk/NR/rdonlyres/90CD20F5-27A1-4E82-AC0C-7198742B0310/0/nbmwg.pdf [935]
http://www.cilip.org.uk/aboutcilip/newbusinessmodel [936]
http://www.cilip.org.uk/aboutcilip/newbusinessmodel/1streport.htm [937]
E201 [934]
CA1491 [933]
2006年末の米国第109議会の会期終了により,上院での審議がストップしていた「学校や図書館から子どもがソーシャルネットワーキングサイト(SNS)にアクセスすることを禁止する法案」(DOPA: CA1618 [127] 参照)は廃案になった。
だが,実際,米国の10代の子どもたちは,どの程度SNSを利用しているのだろうか?米国におけるインターネットの社会的影響について調査を行っているPew Internet & American Life Projectが,インターネットを利用している12〜17歳のティーン935名を対象に行った2006年の調査結果によれば,55%がSNSを使っていることが明らかになった。利用頻度については,全体の48%,また特に利用率が高い15歳から17歳の女子の70%が,1日1回以上アクセスしていると回答している。
利用しているサービスについてはMySpace(85%),Facebook(7%)となっている。また,利用目的については,頻繁にあう友人との連絡(91%),あまり会えない友人との連絡(82%)が主となっており,多くの子どもは,既存の人間関係内のコミュニケーションツールとしてSNSを利用している。この傾向は女子のほうが強い。一方,新しい友人を作る(49%),新しい「出会い」を求める(17%)との回答も一定率存在しており,年齢の高い男子にこの傾向が強い。
このようにSNSの利用が広まる中,米国図書館協会(ALA)のヤングアダルト図書館サービス協会(Young Adult Library Services Association:YALSA)は,ブログ,Wiki,Flickrなどの人気のツールの活用に加え,SNS最大手のMySpaceにページを開設し,利用制限ではなく,利用方法を教えるという姿勢を鮮明にしている。
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CA1618 [127]
著作権の保護期間は,著作権法第51条に基づき,原則として著作者の死後50年と定められている。しかし近年,米国や欧州連合加盟国などと同様に,著作権の保護期間を死後70年へと延長するかどうかについて,盛んに議論が行われている。
著作権保護期間の延長は主に,著作者およびその関連団体から要望されている。平成16年度の文化審議会著作権分科会法制問題小委員会に関連して,2004年8月に著作権が特に関係する団体に対し,文化庁が改正の要望点を募集したところ,著作権の保護期間の延長問題について,23団体から要望書が提出され,そのほとんどが著作権(および著作隣接権)保護期間の延長を要請するものであった。また著作者団体16団体からなる「著作権問題を考える創作者団体協議会」は2006年9月22日,著作権の保護期間の延長を求める要望書をまとめ,文部科学省に提出・説明するとともに,記者会見を行った。この要望書によると,(1)創作者の創造性や創造意欲の鼓舞,(2)保護期間の国際的な調和,(3)真の知財立国の実現,(4)第二次世界大戦の連合国民に対する保護期間の戦時加算問題の解決,(5)著作者・作品データベースなど著作物の円滑な利用を促進する制度の構築の必要性,といった理由を挙げ,著作権の保護期間を「国際的なレベルである『著作者の死後70年まで』に延長することを要請」している。
一方,著作権保護期間の延長に反対する運動も行われている。先に取り上げた2004年8月の意見募集を受けて,同年10月に文化庁が実施した国民全般からの意見募集では,保護期間の延長に関連して73件の意見が寄せられた。その大半が著作権保護期間の延長に反対する個人によるものであった。また多くのブログで反対の意見表明がなされているほか,インターネット上で著作権保護期間が経過した著作物を電子化して無償公開している青空文庫も,2007年1月1日から著作権保護期間の延長に反対する署名活動を展開している。青空文庫の「請願趣旨」によると,(1)著作物は保護を終えた時点で,積極的な利用により文化の発展を促している,(2)現在の保護期間でも創作水準を保つことが可能,(3)現行の保護期間を維持すれば,作品の電子化や録音,翻案,翻訳,上演など,作品の利用を促し,文化を分かち合う仕組みができる,(4)著作権保護期間を延長すると自由な利用が制約され,死蔵作品が増えかねない,といった理由を挙げ,「著作権保護期間を延ばさない」ことを要請している。
だがこのような賛成・反対の立場を超えて,著作権保護期間の延長によるメリット・デメリットを把握し,議論を重ねて問題点を整理してゆこうとする動きも現れている。この立場に立つ著作者64名を発起人とする「著作権保護期間の延長問題を考える国民会議」は,2006年11月8日に記者会見をおこなうとともに,文化庁に要望書を提出した。要望書によると,(1)保護期間延長を求める要望とともに,延長による影響を危惧する声がある,(2)著作権は表現活動や文化産業に決定的な影響を与えるもので,保護期間の延長は日本の文化と「知財立国」のゆくえを決める大問題である,(3)保護期間が延長されると,既得権の関係で短縮することが困難,(4)国民的な議論がなされておらず,権利者団体と利用者団体だけの問題に矮小化されかねない,といった理由を挙げ,多様な関係者の意見や,延長された場合の文化的・経済的影響に関する実証的なデータや予測に基づく慎重な議論を尽くすことを求めている。また同年12月11日には著作者,事業者,図書館員,研究者や法律家などをパネリストとする公開シンポジウムを実施し,その模様を同国民会議のウェブサイトで公開している。ほかにも同ウェブサイトでは,公開シンポジウムにおける保護期間延長賛成派,反対派の主張の紹介や,保護期間延長問題に関する参考記事や情報が整備されている。日本弁護士連合会も2006年12月,同様に保護期間の延長に慎重な議論を求める意見書を,文化庁などに対し提出している。
保護期間の延長問題は,複写やILLサービス,蔵書デジタル化といった図書館業務に直接影響の及ぶ領域でもある。今後の議論の方向や,文化庁,知的財産戦略本部といった政府の動向に関心を払う必要があろう。
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