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大阪府立中央図書館:日置将之(ひおき まさゆき)
2001年に制定された「子どもの読書活動の推進に関する法律」(1)は、読書活動の推進を主目的にした日本では初めての法律である。その後、2005年には「文字・活字文化振興法」(2)も制定され、読書も含めた文字・活字文化という大きな枠組みの中で、その振興がうたわれている。
このような国による法律制定の動きを受けて、地方自治体でも読書活動の推進を主目的にした条例(読書条例)が生まれてきている。これまで、宮崎県高千穂町の「高千穂町家族読書条例」(2004年)(3)を嚆矢として散発的に制定されていたが、2013年以降には複数の自治体で条例が制定され始めており、その動きがにわかに活発化している。
そこで本稿では、読書活動推進に関わる法律の内容等を概観し、これまでに制定された読書条例について紹介する。
「子どもの読書活動の推進に関する法律」は、子どもが自主的に読書をすることができるように読書環境の整備を進めることを目的としており、2001年12月に公布・施行された(4)。
同法では子どもの読書活動の推進に関する基本理念を定め、国は「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」を策定・公表すること(5)、地方公共団体は国の基本計画を受けて、地域の状況に応じた推進計画を策定・公表すること(6)、4月23日を「子ども読書の日」にすること等を定めている。
同法の成立を受けて、国や地方公共団体では子どもの読書活動の推進に関する様々な施策が進められている(7)。
「文字・活字文化振興法」は、文字・活字文化(8)の振興に関する施策の総合的な推進を図ることで、知的で心豊かな国民生活及び活力ある社会の実現に寄与することを目的とした法律で、2005年7月に公布・施行された。
同法では、文字・活字文化の振興に関する基本理念を定めて国や地方公共団体等の責務を明らかにし、地域における文字・活字文化の振興や学校教育における言語力の涵養、財政上の措置等を求めている。また、国には文字・活字文化の国際交流や学術出版物の普及等も求めており、10月27日を「文字・活字文化の日」にすること等も定めている。
同法の成立を受けて、国では地域における文字・活字文化の振興や学校教育における言語力の涵養等の施策を実施している(9)。また、民間レベルでも2007年に設立された「公益財団法人文字・活字文化推進機構」を中心に様々な取組みがなされている(10)。
都道府県では、秋田県が2010年3月に「秋田県民の読書活動の推進に関する条例」を制定している(11)。
同条例では、すべての県民が読書活動を行えるよう環境整備を進めなければならないとし、県の責務として読書推進に関する基本計画の策定や施策実現のための予算措置のほか、学校や図書館等の関連機関や民間団体等と連携すること等を定めている(全7条)。予算措置を努力義務ではなく、義務としている点は特徴的である。
同条例に基づき、2011年3月には「秋田県読書活動推進基本計画」が策定されているが、計画策定時の県議会では、条例制定も含めた経緯について、「子どもの読書活動の推進に関する法律」や「文字・活字文化振興法」が背景としてある旨の説明がなされている(12)。
その他、2014年には11月1日を「県民読書の日」に定める等の施策も実施されている(13)。
現在のところ、他の都道府県では読書活動の推進を中心に据えた内容の条例は確認できていない。
市町村による読書条例は、2014年12月までに7市町での制定が確認できている(表参照)。
条例名 | 都道府県 | 制定年月 (施行年月) | 概要(目的等) |
高千穂町家族読書条例 | 宮崎県 | 2004年3月 (2004年4月) | 読書の意義と教育的効果を再認識し、行政、学校、町内の各家庭が一体となって家族ぐるみの読書運動に取組むことで、家族間の望ましい人間関係の醸成と次代を担う子どもたちの心豊かな成長に寄与する。(全7条) |
仙北市市民読書条例 | 秋田県 | 2011年6月 (2011年7月) | 市民の読書に関する基本理念を定め、市の責務を明らかにするとともに、市民の読書を促進するための措置に関する基本的な事項を定めることで、心豊かな人々の多い元気なまちを目指している。(全5条) |
恵庭市人とまちを育む読書条例 | 北海道 | 2012年12月 (2013年4月) | 読書活動を通じて故郷を愛する人を育てるとともに、人と地域の繋がりを深め、心豊かで思いやりにあふれ、活力あるまちづくりを目指し、市民、家庭、地域、学校及び市が進めていく取組みを明らかにしている。(全10条) |
横浜市民の読書活動の推進に関する条例 | 神奈川県 | 2013年6月 (2014年4月) | 市民の読書活動推進に関する基本理念を定め、市の責務並びに家庭、学校、地域における取組み等を定めることで市民の読書活動の推進に関する施策を総合的・計画的に推進し、市民の心豊かな生活や活力ある社会の実現に資する。(全10条) |
中津川市民読書基本条例 | 岐阜県 | 2013年9月 (2013年10月) | 市民の読書推進に関する基本的な考え方を定め、各市民の心豊かな生活と活力ある社会の実現を目指すことを目的として市の役割を明示し、家庭、学校、地域等の取組みについて定めている。(全6条) |
有田川町こころとまちを育む読書活動条例 | 和歌山県 | 2014年3月 (2014年4月) | 町民の読書活動の推進に関する基本理念を定め、町の責務並びに町民、家庭、学校及び地域における取組み等を定めている。(全11条) |
野木町民の読書活動の推進に関する条例 | 栃木県 | 2014年9月 (2014年10月) | 町民の読書活動の推進に関する基本理念を定め、町の責務並びに家庭、町内の小・中学校、保育園、幼稚園及び地域における取組み等を定めている。(全9条) |
これらの条例のなかで、最も早期に制定されたのは2004年の「高千穂町家族読書条例」である。この条例では、教育委員会と学校の役割を定め、学校にはPTAや家庭との連携を図りながら家族読書計画を策定することを義務付けている。また、家庭に対しては家族読書計画に積極的に参加し、協力することを求めている。家族ぐるみの読書運動(家族読書)に焦点を当てている点は、他の条例にはない特徴である。
2011年に策定された「仙北市市民読書条例」(14)は、高千穂町の条例とは異なり、市の責務(市立図書館等の蔵書充実、市立図書館・小中学校図書館・公民館等のネットワーク構築、児童生徒の読書の促進等)のみを定めている。また、秋田県の条例と同様、財政上の措置を義務規定として設けている。
2012年に「恵庭市人とまちを育む読書条例」(15)を制定した恵庭市は、条例の制定以前から活発に読書活動を推進していたが、条例施行後には喫茶店や美容室等の市内各所に本を置いて小さな図書館にする「恵庭まちじゅう図書館」(CA1812 [4]参照)をはじめとした、新たな取組みを展開している(16)。
2013年には「横浜市民の読書活動の推進に関する条例」(17)と「中津川市民読書基本条例」(18)が制定されている。横浜市の条例は政令指定都市では初めてのもので、2014年3月には同条例に基づき「横浜市民読書活動推進計画」も策定されている。中津川市は図書館の新館建設が選挙の争点となり、最終的に建設中止となった自治体であるが(CA1834 [5]参照)、条例の中には市立図書館の取組みも明記されている。
2014年にも二つの自治体で条例が制定されている。「有田川町こころとまちを育む読書活動条例」(19)と「野木町民の読書活動の推進に関する条例」(20)である。この二つの条例には、施策の実施に際して「子どもの読書活動の推進に関する法律」等に基づく計画等との整合性を求めている点や、11月を町民の読書活動推進月間に指定している点等、共通点が多い。なお、野木町では、条例と同時に家読・朝読・楽読等の様々な読書を掲げた「キラリと光る読書のまち野木宣言」(21)も議決されている。読書に関する条例と宣言の同時議決は珍しいものである。
市町による条例の共通点としては、条文数が5条から11条程度までと少ない点が挙げられる。また、読書活動の推進に関わる基本理念や関連組織等の責務、役割等が明示されている点も共通している。
一方、具体的な責務や役割等の内容には、各条例で異なっている部分がある。例えば、責務や役割等を定めている範囲については、学校、家庭、地域等まで含めた幅広い条例がほとんどだが、市町(行政)のみを対象としている条例もある。また、条例に基づく施策の実効性を高めると考えられる財政上の措置についても、明文化している条例(横浜市、仙北市、有田川町、野木町)と、そうでない条例がある。
読書条例を最初に制定した高千穂町には、近年でも他の自治体からの問い合わせがあるという(22)。今後も、同様の条例を制定する自治体が増えていく可能性は高いと考えられる。一方で、条例の制定までは行わず、「読書のまち」を宣言することで読書活動の推進を図る自治体も増えてきている(23)。
条例、宣言の違いはあれど、いずれの自治体もまちづくりの重要な要素として「読書」をとらえている点では共通していると考えられる。条例と宣言のどちらを選択するかによって、実際の読書活動の推進にどのような差異が生じてくるのか、気になるところである。現時点では、条例や宣言に基づいた施策の実効性や課題等を客観的にとらえた論文等は見受けられないが、今後の研究の進展に期待したい。
(1) 文部科学省. "子どもの読書活動の推進に関する法律".
http://www.mext.go.jp/a_menu/sports/dokusyo/hourei/cont_001/001.htm [6], (参照 2015-01-07).
(2) "文字・活字文化振興法".
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H17/H17HO091.html [7], (参照 2015-01-07).
(3) "高千穂町家族読書条例".
http://www.town-takachiho.jp/administration/reiki/reiki_honbun/q643RG00000239.html [8],(参照 2015-01-07).
(4) 同法について論じた文献等はCA1638で多数紹介されている。
(5) 2014年までに国による「基本的な計画」は第三次まで策定されている。
文部科学省. “「第三次子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」について”.
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/25/05/1335078.htm [9], (参照 2015-01-07).
(6) 2014年3月の時点では、全ての都道府県で計画が策定されており、多くの自治体が第三次計画を策定または策定予定の状況である。市町村では、64.2%の自治体で策定済となっている。
文部科学省. “ 都道府県及び市町村における子ども読書活動推進計画の策定状況について(平成26年3月31日現在)”.
http://www.kodomodokusyo.go.jp/happyou/datas_download_data.asp?id=22 [10], (参照 2015-01-07).
(7) 岩崎れい. “5.2.子どもの読書活動推進”. 子どもの情報行動に関する調査研究. 国立国会図書館関西館図書館協力課編. 2008, p. 121-128, (図書館調査研究リポート, 10).
http://current.ndl.go.jp/node/8478 [11], (参照 2015-01-07).
(8) 同法の第二条では、文字・活字文化を「活字その他の文字を用いて表現されたものを読み、及び書くことを中心として行われる精神的な活動、出版活動その他の文章を人に提供するための活動並びに出版物その他のこれらの活動の文化的所産」と定義している。
(9) 文化庁ニュース:「文字・活字文化振興法」成立. 文化庁月報. 2006, 448, p. 39-41.
(10) 文字・活字文化推進機構では、「子どもの読書活動の推進に関する法律」と「文字・活字文化振興法」の具現化を目的として、様々な事業を展開している。
公益財団法人文字・活字文化推進機構. “ 事業内容”.
http://www.mojikatsuji.or.jp/jigyou.html [12], (参照 2015-01-07).
(11) "秋田県民の読書活動の推進に関する条例".
http://www1.g-reiki.net/pref_akita/reiki_honbun/u600RG00001360.html [13], (参照 2015-01-07).
(12) 秋田県議会:会議録検索.“平成22年9月定例会 教育公安委員会 第5日(10月1日)”.
http://gikai.pref.akita.lg.jp/index2.phtml [14], (参照 2015-01-07).
(13) 秋田県企画振興部総合政策課県民読書推進班. “県の取り組み”. あきたブックネット.
http://common.pref.akita.lg.jp/akita-booknet/torikumi.html [15], (参照 2015-01-25).
(14) "仙北市市民読書条例".
http://www.city.semboku.akita.jp/reiki/423901010021000000MH/423901010021000000MH/423901010021000000MH.html [16], (参照 2015-01-07).
(15) "恵庭市人とまちを育む読書条例".
http://www1.g-reiki.net/eniwa/reiki_honbun/a032RG00000938.html [17], (参照 2015-01-07).
(16) 内藤和代. 報告「恵庭市人とまちを育む読書条例について」. 第55回北海道図書館大会 大会記録 2013, p. 36-41.
http://www.library.pref.hokkaido.jp/web/relation/hts/qulnh00000000ew3-att/qulnh0000000470m.pdf [18], (参照 2015-01-25).
(17)"横浜市民の読書活動の推進に関する条例".
http://www.city.yokohama.jp/me/reiki/honbun/ag20218051.html [19], (参照 2015-01-07).
(18) "中津川市民読書基本条例".
http://www3.e-reikinet.jp/nakatsugawa/d1w_reiki/425901010025000000MH/425901010025000000MH/425901010025000000MH.html [20], (参照 2015-01-07).
(19) 同条例については、インターネットで条文が公開されていないため、有田川町役場から直接入手した。なお、条例制定の情報は以下の広報で示されている。
有田川町こころとまちを育む読書活動条例が制定!. 有田川町広報. 2014, 101, p. 13.
http://www.town.aridagawa.lg.jp/wp/wp-content/uploads/2014/04/No_101-13.pdf [21], (参照 2015-01-07).
(20) "野木町民の読書活動の推進に関する条例".
http://www.town.nogi.lg.jp/reiki/426901010021000000MH/426901010021000000MH/426901010021000000MH.html [22], (参照 2015-01-07).
(21) "キラリと光る読書のまち野木宣言".
http://www.nogilib.jp/library/docs/kiraritohikarudokushonomachisengen.pdf [23], (参照 2015-01-07).
(22)以下の新聞記事には、高千穂町の担当者によるコメントが掲載されている。
読書のまちスクスク 恵庭市、道内で初の「条例」.朝日新聞. 2013-10-7. 朝刊,p. 24.
(23) 例えば、以下の自治体で宣言がなされている。これらの宣言は、自治体の目指すべき方向や重点目標等を示したもので、基本的に議会を通過していることが多いが、法的な強制力は生じないとされている。
・青森県東北町「子ども読書推進のまち宣言」(2006年)
・茨城県大子町「読書のまち宣言」(2007年)
・福島県矢祭町「読書の町矢祭宣言」(2007年)
・熊本県水俣市「日本一の読書まちづくり宣言」(2007年)
・青森県板柳町「読書のまち板柳宣言」(2008年)
・山形県村山市「読書シティむらやま宣言」(2010年)
・佐賀県伊万里市「こども読書のまち・いまり宣言」(2010年)
・高知県土佐町「読書のまち宣言」(2011年)
・埼玉県三郷市「日本一の読書のまち宣言」(2013年)
・福井県越前市「読書のまち宣言」(2013年)
・愛知県一宮市「子ども読書のまち宣言」(2013年)
・栃木県野木町「キラリと光る読書のまち野木宣言」(2014年)
[受理:2015-02-08]
日置将之. 読書条例制定の動きについて. カレントアウェアネス. 2015, (323), CA1840, p. 1-4.
http://current.ndl.go.jp/ca1840 [24]
Hioki Masayuki.
About a Movement to Enact an Ordinance on Reading.
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郡山女子大学図書館:和知剛(わち つよし)
ここ数年、公共図書館で「読書通帳」(1)が静かなブームになっている。どこかで導入するたびに、全国紙の地域面や地方紙などの報道に取り上げられている。しかし、図書館業界の外における注目度に比べて、図書館業界ではカレントアウェアネス・ポータル(2)以外の主要な媒体において、読書通帳単独では記事として取り上げられてこなかった(3)。それ故、「静かなブーム」と筆者は受け止めている。
確認できた報道および読書通帳を導入している図書館をまとめているウェブページ(4)によれば、公共図書館では2003年に導入した南丹市立図書館(旧園部町立園部中央図書館、京都府南丹市)を嚆矢とする。その後、読書通帳は公共図書館において導入が進んでいる。本稿では読書通帳について、筆者が行った取材に基づき公共図書館における導入事例を報告するとともに、考察を加える。
管見の限りでは、読書通帳には記録の方法が異なる、次の3つのタイプが存在する。
1)自書タイプ:利用者が自分で貸出記録を読書通帳に書き込む
2)お薬手帳タイプ:貸出記録が印字されたシールを読書通帳に貼り付ける
3)預金通帳タイプ:専用の機械で貸出記録を読書通帳に印字する
3つのタイプに共通しているのは、次の2点である。
1)図書館が専用の読書通帳を希望する利用者に配布している
2)図書館ではなく、利用者が貸出記録を読書通帳に記録する
読書通帳に記録するのは主に書誌事項だが、中には貸し出した書籍の金額を読書通帳に記録できることを、利用者にアピールしている公共図書館もある(5)。
よって読書通帳は、利用者自身による、貸出記録の管理と活用を図るためのツールである、と言うことができる。
本稿を執筆するにあたり、報道以外の情報が乏しいため、読書通帳を導入した公共図書館に詳細を取材できればと考え、自書タイプを導入した小山市立中央図書館(栃木県小山市、以下図書館を指すときは「小山」、自治体を指すときは「小山市」とする)(6)、お薬手帳タイプを導入した岩沼市民図書館(宮城県岩沼市、以下図書館を指すときは「岩沼」、自治体を指すときは「岩沼市」とする)(7)を、2014年9月および10月にそれぞれ現地に赴いて取材した。また、本稿執筆時には訪問調査が困難であった預金通帳タイプについては、読書通帳機の納入実績がある株式会社内田洋行(8)の営業担当者にお話を伺った。以下本稿では、小山と岩沼への取材で得た成果に基づき、読書通帳の導入とその利用について報告する。
小山では2014年2月の小山市議会にて市会議員から、読書通帳の導入について質問があったことがきっかけになっている。2月の質問を受け、4月23日の「子ども読書の日」に併せて導入した。栃木県内では初めての自書タイプになる(9)。通帳は小山ロータリークラブから寄贈されたものを使用している。
岩沼では図書館の移転新築にあわせた新たな図書館システムの調達にあたって、プロポーザル方式を採用した。その際、図書館システムを納品する企業の提案の中に読書通帳の企画があり、新館の開館時に導入したとのことである。岩沼が日本で最初のお薬手帳タイプの導入館となる(10)。こちらの読書通帳は、地元の印刷所に図書館が発注したものを使用している(11)。
自書タイプは、読書通帳の印刷が間に合えばすみやかに導入できるものであり(小山では2月の質問を受け4月23日より導入している)、お薬手帳タイプは図書館システムの更新等に合わせて導入すれば、あとから読書通帳のシステムを単独で導入するよりも、比較的容易に導入できるものであると考えられる。
小山市、岩沼市ともに「子ども読書活動推進計画」(12)を策定している。読書通帳の導入はこの計画の精神に合致したものであると筆者には考えられた。特に小山では、2014年4月23日の「子ども読書の日」に合わせて運用を開始するとともに、市内の小中学校を通じて小中学生に読書通帳を配布している(13)。「こころにちょきん」というキャッチフレーズを採用したこととあわせて、報道を読んだ限りでは、読書通帳が対象とする年齢層は児童生徒ではないか、との印象があった。
しかし取材にて伺った話では、小山、岩沼ともに、読書通帳は必ずしも児童生徒の読書振興を図ることのみが目的ではなく、すべての年齢層を対象に配布しているという回答であった。以前より、利用者から貸出記録を記録するための何らかの手段がほしいという要望が、図書館に寄せられていたという。なるほど、と思った次第である。
小山では読書通帳を配布している旨、館内にポスターを張り出してPRしている。通帳への記帳(通帳1冊につき貸出記録を100冊分記録できる)が1冊終わるごとに、最終ページに記念スタンプを押印しているが、取材した2014年9月時点で記念スタンプに到達したのは6名とのことである。小山では、親が子供の読書記録(あるいは読み聞かせの記録)を作成することによる記念品的な効果、あるいは家庭内での読書を通じたコミュニケーションのツールとして活用してほしい、という図書館側の思いがあると取材で伺った。
岩沼では読書通帳を特別にPRしてはいないが、シールを印字するシステムは操作が簡単で、すみやかに印字できるため、子供がよろこんで操作しているという。貸出記録を印刷し読書通帳に貼るシールは、薬局で使用されている「お薬手帳」と同じ材質のものを使用している。レシートと同じ材質では、長期間保存している間に色落ちして、印刷面が読めなくなり記録としての用を成さなくなるおそれがあるから、とのことである。
読書通帳を導入した公共図書館では、八尾市立図書館(大阪府八尾市)のように、読書通帳の導入により図書館の利用に大きな変化が見られるという報道もある(14)。そこで、読書通帳を導入したことにより図書館の利用に何か変化があるか、と取材の際に質問した。小山も岩沼も読書通帳の導入が、目に見えるような形で図書館の利用の増加につながったわけではないとのことである。
『日本の図書館:名簿と統計』2013(15)によれば、小山は人口15万人以上の市立図書館のうち、関東地方では貸出数が4位であり、岩沼は人口4万人以上の市立図書館のうち、東北地方では貸出数が1位であることから、小山市も岩沼市も以前からその活動によって公共図書館が広く住民に親しまれてきた自治体であり、読書通帳の導入をきっかけとした、顕著な利用の増加が認められることはなかった、ということではないかと考えられる。
これまで図書館では「思想信条の自由」にも配慮して、ニューアーク式からブラウン式・逆ブラウン式、そして図書館システムによる貸出方式を採用してきた。これは「貸出履歴を残さない」アーキテクチャを一貫して追求してきたと言える。図書館側が「貸出履歴を残さない」こと、また貸出履歴をデータ化して第三者に提供しないことについては、社会のコンセンサスが得られているものと筆者は理解している(16)。
ところで、以前より図書館業界では貸出履歴の利活用について、「図書館の自由に関する宣言」(17)に抵触し、日本国憲法が保障する「思想信条の自由」を侵害するものだとして否定的な声がある(18)。読書通帳を図書館が利用者に提供することは、貸出履歴の利活用を否定する論者が主張するのと同様に、「図書館の自由に関する宣言」に抵触し、利用者の「思想信条の自由」を脅かすことにつながるだろうか。
このことを図書館の現場ではどのように考えているのか確認するため、どのような認識であるのか取材時に質問した。小山、岩沼ともに、読書通帳は基本的に利用者の自己管理用のツールという認識であり、その利用は利用者の自己管理に委ねられているので、「図書館の自由に関する宣言」には抵触しないと認識しているとの回答であった。本稿で取り上げた読書通帳は、希望する利用者が自らの貸出記録を通帳に記録していくものであり、この認識は概ね妥当なものであると筆者は考える。
本稿の冒頭にて、報道が読書通帳をたびたび取り上げていることに触れた。読書通帳に社会的な関心が寄せられていることからも、読書記録を「記録すること」「残すこと」について興味・関心を持っている人びとが、この社会に存在することは明らかであろう。
数年前にICT業界で「ライフログ」(19)が脚光を浴びたことがある。読書通帳を「ライフログ」作成のための手段として捉えることも可能であろう。図書館が、希望する利用者に読書記録を作成できるように環境を整えることによって、図書館サービスの中で今後、読書通帳が定番のひとつとなる可能性があるのではないだろうか(20)。
読書通帳はいずれのタイプにおいても、利用者自身による貸出記録の管理と活用を図るツールである。読書通帳が静かに広まっていくことは、利用者のプライバシーを利用者自身がどのように活用したいのか、という利用者の「自己決定権」、貸出記録を個々人がコントロールできる範疇で活用したいことの現れ、と受け止める必要があると筆者は考える。
最後になるが、取材に応じていただいた小山市立中央図書館、岩沼市民図書館、株式会社内田洋行の関係者のみなさま、本稿執筆に協力していただいた多くの友人に御礼申し上げる。
(1) 「読書通帳」「読書手帳」「読書ちょきん通帳」など様々な名称が用いられているが、本稿では「読書通帳」に統一する。
(2) カレントアウェアネス・ポータルでは2014年12月18日現在、読書通帳を取り上げた記事として以下の記事が参照できる。
1)図書館で借りた本の書名を記録していく「読書通帳」 (2011年7月11日掲載)
http://current.ndl.go.jp/node/18658 [32], (参照 2015-01-19).
2)静岡県島田市立島田図書館が「読書通帳」導入、公共図書館として全国4例目 (2012年9月7日掲載)
http://current.ndl.go.jp/node/21780 [33], (参照 2015-01-19).
3)読書履歴を残す「うちどく10通帳」 可児市立図書館で無料配布 こどもの読書週間で (2013年4月25日掲載)
http://current.ndl.go.jp/node/23413 [34], (参照 2015-01-19).
4)岐阜県海津市の図書館が「読書通帳」導入、全国6例目(2014年4月3日掲載)
http://current.ndl.go.jp/node/25843 [35], (参照 2015-01-19).
(3) 2014年12月18日現在、CiNii Articlesで「読書通帳」「読書手帳」を検索しても文献がヒットしない。
なお、カレントアウェアネス編集事務局から、以下の雑誌記事で読書通帳について記載がある、との指摘があったが、この文献は公共図書館の数あるサービスを説明する中で読書通帳にも触れたものであり、筆者がここで指摘する、これまでカレントアウェアネス以外の主要な媒体では読書通帳のみを単独で取り上げた文献が存在しない、という筆者の認識に変更はない。
大西敏之. 特集, 図書館のPR作戦: 南丹市立図書館のブランディング戦略について. みんなの図書館. 2013, (440), p. 14-22.
(4) 本を借りて「貯金」しよう 借りた本の価格に応じ通帳記入 子らの利用増狙う 園部中央図書館. 京都新聞. 2003-10-17.
リブヨ. "「読書手帳」実施の図書館". 2014-12-07.
http://libyo.web.fc2.com/dokusyotetyo.html [36], (参照 2015-01-19).
(5) 注(4)で取り上げた南丹市立図書館の読書通帳も本代の記録ができる読書通帳だが、最近のものとして次の記事を挙げておく。
岐阜)本読むきっかけに「読書通帳発行」 海津市図書館. 朝日新聞デジタル. 2014-04-07.
http://www.asahi.com/articles/ASG434WF0G43OHGB00H.html [37], (参照 2015-01-19).
(6) 小山市立中央図書館.
http://library.city.oyama.tochigi.jp/ [38], (参照 2015-01-19).
小山市は栃木県の南部に位置する人口約16万人の自治体。中央図書館は1993年4月に移転開館した。蔵書冊数は約38万冊。
読書通帳は2014年4月より導入。
(7) 岩沼市民図書館.
http://www.iwanumashilib.jp/ [39], (参照 2015-01-19).
岩沼市は宮城県の南部に位置する人口約4万4千人の自治体。市民図書館は2011年5月に移転開館した。蔵書冊数は約14万冊。
読書通帳は2011年5月より導入。
(8) "読書通帳機で図書館利用を活性化 ― 製品・サービス:IT図書館システム「ULiUS(ユリウス)」". 内田洋行.
http://www.uchida.co.jp/ulius/service/readbook.html [40], (参照 2015-01-19).
(9) 「心に貯金」読書通帳を作製 全小中学校に配布 小山. 下野新聞「SOON」. 2014-04-23.
http://www.shimotsuke.co.jp/news/tochigi/top/news/20140423/1572289 [41], (参照 2015-01-19).
(10) 「広報いわぬま」平成24年5月号.
http://www.city.iwanuma.miyagi.jp/kakuka/010600/010603/documents/iwa12.5.p20.pdf [42], (参照 2015-01-19).
(11) 本文には記載しなかったが、読書通帳に関わるランニングコスト(印刷費など)は小山、岩沼とも取材の中で話題に上った。今後、他の図書館でもサービスの継続を検討する上で問題点として浮上することがあると考えられる。
(12) "小山市子ども読書推進計画(第二期)". 小山市ホームページ. 2012-02-16.
https://www.city.oyama.tochigi.jp/kyoikuiinkai/shougaigakusyu/kodomonodokusho.html [43], (参照 2015-01-19).
"岩沼市子ども読書活動推進計画". 岩沼市.
http://www.city.iwanuma.miyagi.jp/kakuka/050300/050301/kodomodokusho.html [44], (参照 2015-01-19).
(13) 「心に貯金」読書通帳を作製 全小中学校に配布 小山. 下野新聞「SOON」. 2014-04-23.
http://www.shimotsuke.co.jp/news/tochigi/top/news/20140423/1572289 [41], (参照 2015-01-19).
(14) 夏休みの子供、続々と図書館に… 人気の秘密は読書履歴を記入する「読書通帳機」、〝満期〟にプレゼントも 子供には達成感、図書館は貸出冊数の急増効果. 産経WEST. 2014-08-12.
http://www.sankei.com/west/news/140812/wst1408120030-n1.html [45], (参照 2015-01-19).
(15) 日本図書館協会図書館調査事業委員会編. 日本の図書館: 統計と名簿. 2013, 日本図書館協会, 2014.1, 512p.
(16) コンセンサスを得られていると考えられる例として次の文献を挙げておく。
総務省. 「パーソナルデータの利用・流通に関する研究会」報告書. 総務省, 2013, p. 25.
http://www.soumu.go.jp/main_content/000231357.pdf [46], (参照 2015-01-19).
以下に当該箇所を引用する。
「また、継続的に収集される購買・貸出履歴、視聴履歴、位置情報等については、仮に氏名等の他の実質的個人識別性の要件を満たす情報と連結しない形で取得・利用される場合であったとしても、特定の個人を識別することができるようになる蓋然性が高く、プライバシーの保護という基本理念を踏まえて判断すると、実質的個人識別性の要件を満たし、保護されるパーソナルデータの範囲に含まれると考えられる。」
(17) 図書館の自由に関する宣言.
http://www.jla.or.jp/library/gudeline/tabid/232/Default.aspx [47], (参照 2015-01-19).
(18) 例として次の論文を挙げる
1)田中敦司. 図書館は利用者の秘密を守る-カウンターで感じた素朴な疑問から (特集:図書館の自由,いまとこれから-新たな図問研自由委員会のスタートにあたって). みんなの図書館. 2008, 370, p. 21-26.
2)山口真也. 個人情報保護制度における「貸出記録」の位置付け-タイトル情報と思想信条との関係を中心に. 図書館学. 2009, 95, p. 18-29
(19) 「ライフログ」については以下の文献。
1)特集, 「日経コンピュータ」700号記念特集 創る:信頼できる社会を求めて: 無限革新, テクノロジは人間中心に変わる. 日経コンピュータ. 2008, (700), p. 172-177.
2)安岡寛道編. ビッグデータ時代のライフログ: ICT社会の“人の記憶”. 東洋経済新報社, 2012, 229p.
(20) なお読書記録の記録方法として、この数年で普及したウェブサービスに書籍の購入や読了を記録する、いわゆる「読書管理ツール」がある。現在、かなりの数の人びとが「読書管理ツール」を利用して、ウェブ上にて他者に自ら読書記録を公開している。代表的なものを以下に挙げる。
1)ブクログ - web本棚サービス.
http://booklog.jp/ [48].
2)読書メーター - あなたの読書量をグラフで記録・管理.
http://bookmeter.com/ [49].
3)メディアマーカー.
http://mediamarker.net/ [50].
[受理:2015-02-08]
和知剛. 読書通帳の静かなブーム. カレントアウェアネス. 2015, (323), CA1841, p. 5-7.
http://current.ndl.go.jp/ca1841 [51]
Wachi Tsuyoshi.
“Reading Diaries” in the Form of a Passbook Enjoy Moderate Boom.
PDFファイルはこちら [52]
名古屋大学附属図書館:中井えり子(なかい えりこ)
日本国内の大学図書館に文庫やコレクションがいくつ、どこに存在し、それらがどのようなものであるのか、文献をさがしてみた。国立国会図書館刊行の『全国特殊コレクション要覧』(1)は、所蔵機関やコレクションの種別・テーマを問わず調査されたもので、これを更新して、オンライン化して公開したものが「全国特殊コレクションリスト」(2)である。このサイトに、2015年1月28日現在6,272件とある。また、関係リンクとしてり、日本国内の大学図書館関係個人文庫(3)と日本の大学所蔵特殊文庫データベース(4)が紹介されている。後者は『日本の大学所蔵特殊文庫解題目録』(5)をオンライン化したものである。そのほか、少し古いが大学図書館の情報を含む文献があり(6)、これらの文献やデータベースで、大学図書館が所蔵するだいたいの特殊コレクションを知ることができる。
このような特殊コレクションを図書館が入手する手段は、寄贈、購入、寄託、移管が考えられる。その所蔵に至る経緯については、受入手段の如何を問わず、小樽商科大学のシェル文庫、東京大学のアダム・スミス文庫、一橋大学のメンガー文庫やフランクリン文庫、京都大学のビュッヒャー文庫やマイヤー文庫、名古屋大学のホッブズ・コレクション Iなど、国立大学が所蔵する外国図書の文庫・コレクションに限ってみても、興味深いものが少なくない。
国立大学の場合、文部科学省の予算で購入した通称「大型コレクション」を所蔵していることが多い。大型コレクションは、旧文部省が1978年から、文部科学省となった翌年の2002年まで、主として人文社会科学系の外国図書購入のために行った予算措置である(7)。
本稿では、大学図書館における西洋古典籍(概ね1850年以前に刊行されたり、書写された西欧の資料)の特殊コレクションの現状と課題について、名古屋大学中央図書館の事例をもとに話を進める。なお、ここでいう特殊コレクションとは、図書館が収集したコレクションのうち、特定の主題、資料の種類で構成されたひとまとまりの資料群や、歴史的人物や著名な人物が収集した資料からなる文庫を指す。
名古屋大学の西洋古典籍のコレクションは、1949年に経済学部に赴任した水田洋名古屋大学名誉教授(1919生、日本学士院会員)の収集活動に負うところが多大である。以下に水田名誉教授の文章を引用する。
「名古屋大学には文系学部がなかったし、新設文学部の教官たちは図書館に関心がなかった。空白地帯(歴史的地理的)の出版物と研究資料の収集。気がついてみるとこれは大変なことで、古い図書館が当然のこととして持っている同時代文献が、ここにはないのである。」(8)
水田名誉教授の専門分野は、西洋近代社会思想史であるが、引用文のように、研究に必要な資料が名古屋大学にはなく、研究費等で購入するほか、個人でも買い集める必要があった。60年以上におよぶ研究生活のなかで、私費で収集された蔵書を、名古屋大学が2009年度と2011年度に購入したのが「水田文庫」(9)である。自然法思想から啓蒙思想を経て、ロマン主義に至るまでの原典2,100冊以上の西洋古典籍からなる。現在も研究活動中のため、残りの資料は遺贈されることになっている。西洋古典籍の個人文庫には、貴重書約850冊を含む「永井文庫」もある。「永井文庫」は、水田名誉教授に師事した永井義雄名古屋大学名誉教授の旧蔵書で、2007年度に寄贈された。
前述した「大型コレクション」経費で購入した原典からなる特殊コレクションには、「ホッブズ・コレクション I, II」「18世紀フランス自由思想家コレクション」「ヨーロッパ教育史・教育理論研究コレクション」「言語哲学コレクション」「英国貴族院上訴事件判例集」などがある(10)。「ホッブズ・コレクション I, II」は、水田名誉教授の推薦により購入されたコレクションで、その購入にあたり、「集書のたのしみは、だれでもしっている一流品を手にいれることよりも、研究者のうでのみせどころになる二流三流品を、あつめることにあるのかもしれない」(11)といっているが、名古屋大学の特殊コレクション全体にその精神が現れている。例えば、ジョナサン・スウィフトの著作は、『ドレイピア書簡集』の異なる版本を2点(1725年と1730年)所蔵しているが、『ガリバー旅行記』は、1850年までの刊本は所蔵していない。すなわち、これらはすべて研究の必要上収集されたもので、稀少本はあるが、俗に言うお宝本はほとんどない。しかし、個々の文庫やコレクションが互いに関連性を持って補完しあっており、西洋近代社会に関わる政治、法律、経済、思想、哲学、教育、言語等の広い分野の研究に応えることができる内容を形成している。
特殊コレクション以外の一般貴重書にあてはまることも含まれるが、以下に課題を掲げる。
前述のように、名古屋大学なりの収集方針で形成してきた特殊コレクション群であるが、これらの中には補完するべきものもあり、そのために必要な資料が少なからずある。個々のコレクションが単独で完結している場合を除いて、コレクションの内容を補強させていくことで、はじめて研究に耐えられるコレクションになるのではないかと思う。
通常、教員組織のある学部とは異なり、国立大学図書館での研究用図書の選定と予算の確保は困難を極める。しかし、西洋近代社会思想史の場合、所蔵する著作のほかの版や同時代の各国語訳は、ある著作が他国でどのように受容されたかを知るためには重要な版本である。そして、このような版本であれば、図書館員でも探すことができ、また、高額でないことも多いため通常経費で購入でき得る。
一方、大学図書館には、学習・教育支援機能や地域貢献機能がある。学生への啓蒙活動として、さらに地域貢献の一環として図書館資料の公開が求められており、普段見ることのない古典籍を、授業も含め、展示する機会が多くなっている。特殊コレクションを補強し、かつ中学や高校の教科書に載っているような馴染みのある原典を展示すれば、啓蒙活動の効果を高めることができる。ただし、著名な著作は比較的高価であるうえ、古書の場合、予算があっても、必要な出物があるとは限らないため、現実的にはなかなか難しいものがある。
図書館には、コレクションを閲覧や展示に耐えられる状態に保つ義務がある。劣化させないための書庫環境整備のほか、表紙、特に背表紙の破損や、製本の綴じ糸の切れなどがある場合は、専門の修復家による適切な修復が必要となる。修復の必要性の見極め、予算確保、修復本の記録方法などの課題がある。
貴重な資料とはいえ、利用されなければ存在しないに等しい。利用しやすいように閲覧手続きも可能な限り簡略化する一方で、利用の目的によっては資料のマイクロ化や画像データベース化も有効である。
また、研究者向けの展示会も利用者を増やす機会となる。ガラス越しではなく、実際に手にとって見せる工夫も必要であろう。名古屋大学では、日本18世紀学会が学内で開催された折に、その参加者に、館内展示室で展示品の半分以上を3時間限定で直接手に触れることができるようにしたり、他の学会では学会会場に特殊コレクションの一部を貸し出したりして好評であった。開催条件が限定されるが、学会と図書館との連携を図ることも一考である。
さらに、本学では水田名誉教授の寄付金により、2012年度に、若手研究者奨励のための名古屋大学水田賞が創設された。水田賞の事務担当部署と連携することで、特殊コレクションの利用拡大につなげることができそうである。
その前提として、目録の質の問題がある。個々の文庫やコレクションには、そのまとまりが重要であることも多いため、オンライン検索でもコレクションを特定して検索できるようにすること、また目録上で版本の違いが識別同定できるような目録記述の整備が必要で、NACSIS-CAT(国立情報学研究所総合目録データベース)の現行の運用では限界がある。稀覯書の目録規則適用の徹底とカタロガーの育成が課題となる。
大学図書館の研究機能として、資料の収集と学術情報へのアクセスの観点から電子ジャーナルと機関リポジトリがよく論じられるが、人文・社会科学系の研究支援として、リプリント版やオンラインで利用できないような古典籍のオリジナルを収集することも重要であろう。日頃から古書店カタログを見て、コツコツと買い集める地道な活動ではあるが、人数そのものが自然科学系と比べて少ない研究者のために、現時点では価値判断の難しい資料でも、将来の利用を見越して収集し、既存の特殊コレクションを補完して提供することも大学図書館の使命の一つと考える。
(1) 国立国会図書館参考書誌部編. 全国特殊コレクション要覧. 改訂版,国立国会図書館, 出版ニュース社(発売), 1977, 15, 217, 46p.
(2) 国立国会図書館. “全国特殊コレクションリスト”. レファレンス協同データベース.
http://crd.ndl.go.jp/jp/library/collistall.html [53], (参照2015-01-05).
(3) “日本国内の大学図書館関係個人文庫”.
http://www.fitweb.or.jp/~taka/pcollect.html [54], (参照2015-01-05).
(4) Koch, Matthias. Universitare Sondersammlungen in Japan : eine deutsch-japanische annotierte BiblIographie = 日本の大学所蔵特殊文庫解題目録 : ドイツ語・日本語併記. Munchen : Iudicium, 2004, li, 854p, ISBN3-89129-400-X.
(5) “ドイツ-日本研究所 = Deutsches Institut fur Japanstudien.日本の大学所蔵特殊文庫データベース”.
http://tksosa.dijtokyo.org/?menu=xx&lang=ja [55], (参照2015-01-05).
(6) 刊行順に次の4点を挙げる。
・細谷新治. 全国経済学書コレクション:日本にある経済学関係洋書の特殊文庫. 経済セミナー. 1980.1, No. 300, p. 86-107.
・第一出版センター編集 ; 神作光一監修. 全国『文庫・記念館』ガイド. 講談社, 1986, 263p, ISBN4-06-201000-0.
・書誌研究懇話会編. 全国図書館案内 : (付) 地方史主要文献一覧. 上, 下. 改訂新版, 三一書房, 1990, 2冊, ISBN 4-380-90234-X, 4-380-90235-8.
・日外アソシエーツ編. 個人文庫事典. 1 : 北海道・東北・関東編, 2 : 中部・西日本編. 日外アソシエーツ, 紀伊国屋書店(発売), 2005, 2冊,ISBN4-8169-1883-3, 4-8169-1884-1.
(7) 印刷物としては、東京大学附属図書館編. 全国国立大学所蔵大型コレクション総合目録: 昭和53年度-平成2年度. 東京大学附属図書館, 1991, v, 498p, ISBN4-88659-015-2、があるが、オンラインの次のサイトで検索できる。
国立情報学研究所. “学術研究データベース・リポジトリ. 大型コレクションディレクトリー (東京大学附属図書館)”.
https://dbr.nii.ac.jp/infolib/meta_pub/G0000025OGATA [56], (参照 2015-01-05).
また、名古屋大学情報・言語合同図書室で独自に編集した次のサイトがある。
名古屋大学附属図書館. “国立大学大型コレクション : 1978(昭和53)-2002(平成14)年度”.
http://www.nul.nagoya-u.ac.jp/db/ogata/univ.html [57], (参照2015-01-05).
(8) 水田洋. ぼくの思想形成と蔵書形成. 名古屋大学附属図書館研究年報. 2011, v.9, p. 45-59.
(9) 水田文庫の概要については、次の資料を参照のこと。中井えり子. 水田文庫概要. 名古屋大学附属図書館・附属図書館研究開発室, 2013, 83p. ISBN 978-4-903893-12-9.
http://hdl.handle.net/2237/17738 [58], (参照2015-01-05).
(10) 名古屋大学の文庫、大型コレクションについては、次のサイトで概略がわかる。
名古屋大学附属図書館. “貴重書・コレクション”.
http://www.nul.nagoya-u.ac.jp/guide/collection/collection.html [59], (参照2015-01-05).
「ホッブズ・コレクション I, II」と「水田文庫」の冊子体目録として、次の図書がある。
名古屋大学附属図書館編. イギリス近代思想史原典コレクション目録 = Catalogue of a collection of the printed materials for the history of English thought. 第I期:ホッブズとその時代 = Hobbes & his age、第II期:イギリス近代思想の諸潮流 = Mainly after Hobbes. 名古屋, 名古屋大学附属図書館, 1982-1983. 2冊.
Eriko Nakai, ed. The Mizuta library of rare books in the history of European social thought : a catalogue of the collection held at Nagoya University Library. Tokyo, Edition Synapse; Abingdon, Routledge, 2014, xxxv, 315 p., [2]p.of plates, ISBN978-4-86166-191-4, 978-1-138-84712-5.なお、ホッブズ・コレクションは、IIIがあるが、これは、IとIIを補完するために、別途予算で購入したものをまとめたもので、冊子体目録は存在しない。
(11) 引用部分は、水田洋. “ホッブズ・コレクションの購入”. 思想史の森の小径で. 横浜, 秋山書房, 1985, p.80からである。なお、p.76-80にホッブズ・コレクションが名古屋大学に納入された経緯が書かれている。
[受理:2015-02-03]
中井えり子. 大学図書館と特殊コレクション -名古屋大学の西洋古典籍特殊コレクション. カレントアウェアネス. 2015, (323), CA1842, p. 8-10.
http://current.ndl.go.jp/ca1842 [60]
Nakai Eriko.
Nagoya University Library and Western Rare Books Collections.
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慶應義塾大学大学院:木村麻衣子(きむら まいこ)
ベトナムの図書館に関して、日本語ではGiem Trinh(1)、黒古(2)、Nguyen Hoa Binh(CA1615 [63]参照)、松村(3)などにより散発的に短い報告がなされてきたものの、依然としてよく知られていないのが実情である。特に、目録作成に際してどのような目録規則や分類表が用いられているのか、現状を報告する文献はほとんど見当たらない。筆者は、漢字文化圏の典拠コントロールについて研究を進めていることから、2014年4月に、ベトナム国家図書館(The National Library of Vietnam: NLV)および国立科学技術図書館(National Library for Science & Technology)に対して、目録作成の状況に関する訪問調査を行い、通訳を介してそれぞれ3時間程度のインタビューを行った(4)。さらに2014年10月に、ホーチミン市総合科学図書館に対して質問紙調査を行い、回答を得た。その概要を、ベトナムの図書館における目録作成ツールに関するいくつかの先行研究とともにここに報告する。
1954年から1975年にかけて、ベトナムは、社会主義政府と共産党が支配する北ベトナムと、非共産主義政府に統治され、米国の影響下におかれた南ベトナムの2つに分断されていた。ソビエト連邦からの支援を受けていた北ベトナムの図書館では、ソビエトの分類体系である図書館図書分類法(BBK)を採用していたのに対し、米国の支援を受けていた南ベトナムの図書館はデューイ十進分類法(DDC)または国際十進分類法(UDC)のいずれかを採用していた(CA1615 [63]参照)。
旧北ベトナムに位置するNLVでは1964年に、ソビエトの『統一規則』(5)をベースに冊子体のための記述規則を編纂した。この規則は1976年に改訂されている。一方南ベトナムでは、1975年までには英米目録規則が翻訳され、いくつかの図書館で適用されていたという(6)。
1976年の南北統一後、1978年に発行された英米目録規則第2版(以下、AACR2)が国際標準書誌記述(以下、ISBD)に準拠したものであったことを受けて、1980年に、NLVと科学技術中央図書館はISBDに従った目録規則の研究と適用を開始した(7)。NLVは1985年にTài liệu hướng dẫn mô tả ấn phẩm theo tiêu chuẩn qoốc tế ISBD: dùng cho mục lục thư viện. Phần I: Mô tả sách (『ISBD国際標準に沿った印刷物の記述に向けたマニュアル:図書館目録用.第I部. 図書の記述』)を出版し、1987年には科学技術中央図書館もISBDに沿ったQuy tắc mô tả thư mục xuất bản phẩm: dùng cho các thư viện khoa học và kỹ thuật T.1: Mô tả sách và xuất bản phẩm tiếp tục(『科学技術図書館のための出版物の目録記述規則 第1巻:図書と逐次刊行物の記述』)を出版した。1994年、NLVは、ISBD、AACR2、ソビエトの記述規則等とベトナム国内の目録作成の実践を踏まえてTài liệu hướng dẫn mô tả ấn phẩm: Dùng cho mục lục thư viện(『印刷物の記述に向けたマニュアル:図書館目録のために』)を出版し、現在も使用している。これらとは別に、国家科学技術委員会が1989年にISBDやソビエトの目録規則に基づいた一般的な資料の書誌記述の標準としてTCVN 4743:1989を発行したが、広く使用されるには至らなかった(8)。以上のように、1980年代から90年代前半にかけて、ベトナムの図書館が適用してきた目録規則はISBDに基づき独自に作成されたものであり、AACR2を直接受容したわけではなかった。
1990年代後半からは、AACR2の翻訳および適用が活発になされるようになった。最初にベトナム語に翻訳されたのは、1998年にMichael Gormanによって編纂されたThe Concise AACR2, 1988 Revision であり、これは在米ベトナム人図書館員が設立したNPOであるThe Library and Education Assistance Foundation for Vietnam(LEAF-VN)によって翻訳され、2002年に出版された(9)。その後、国立科学技術情報局(National Agency for Science and Technology Information: NASATI)が2009年にAACR2 (update 2005)のベトナム語翻訳版を出版した(10)。
ベトナムの図書館におけるMARC21フォーマットの適用は2000年頃に始まった(11)。NASATIの前身である国立科学技術情報センター(National Center for Scientific and Technological Information: NACESTI)はMARC21の普及に指導的な役割を果たしており、2004年にMARC21フォーマットのベトナム語版マニュアル、2005年にその簡略版を出版した(12)他、図書館職員を対象としたMARC21の講習会を各地で開催した(13)。
ベトナムでは2007年5月に、文化情報部(現在の文化スポーツ観光部)が、図書館の標準的な目録作成ツールとしてDDC、 AACR2、 MARC21フォーマットを推奨する旨の公文書を発表した(14) (15)。ただし後述するTrầnの調査によれば、2011年の時点でこの公文書の存在を知らない図書館も全体の38.3%存在した(16)。
2011年にTrầnは、公共図書館、研究機関の図書館、大学・高等専門学校図書館、省庁の情報機関の図書館、の4つの図書館システムに属する130の図書館に対し、目録作成の状況に関する質問紙調査を行った。その結果、目録規則の適用状況は、AACR2が48.9%、 ISBDが46.8%、TCVN 4743:1989が2.1%であった。書誌フォーマットでは、MARC21が全体の72.7%の図書館で採用されており、他はDublin coreが13.6%、 独自フォーマットが15.9%、 UNIMARCが2.3%、その他のフォーマットが9.1%という結果であった。特に公共図書館ではMARC21の採用率が81.1%と最も高かった。分類表については、全体の60.9%の図書館がDDCを採用していた。次いで、NLVが公共図書館システムのために編纂した(17)19階層分類表を採用している図書館が23.9%、BBKを採用している図書館が8.7%であった。UDCを採用している図書館はなかった(18)。
TCVN 4743:1989のような図書館関連の規格は1980年代から発行されるようになり、更新も行われている。例えば、MARC21フォーマットを規格化したTCVN 7539:2005、書誌記述中の略語を定めたTCVN 5697:2009、ISO5127:2001(Information and documentation – Vocabulary)をベトナム規格化したTCVN 5453:2009などがある。しかし、Vũの調査によれば、これらの規格のほとんどは各図書館に適用されていないばかりか認知もされていない(19)。唯一、TCVN 7539:2005 だけは、調査対象の600館中、70館が適用していた。一方、MARC21フォーマットを適用している図書館であっても、TCVN 7539:2005を知らないというケースもあった(20)。
NLVは、フランス植民地時代の1919年にハノイに設置されたインドシナ中央図書館が前身であり、1958年に現在の名称となった(21)。
NLVでは1986年に最初のコンピュータを導入し、1989年にUNESCOが開発したデータベースソフトウェアCDS/ISISを使用して、電算化された書誌レコードを作成するようになった。2003年以前はカード目録も作成していたが、現在は全て遡及入力済みである。インタビュー時点でのNLVが保有する書誌レコードは55万件以上、うち10万件以上は雑誌記事(新聞記事も少数含まれる)のレコードである。典拠レコードは作成していない。ベトナム語の図書に限ると、年間2万冊程度の受入がある。雑誌記事、新聞記事の書誌も含め、編目分類課の20名の職員が書誌レコード作成作業に当たっている(22)。
使用している目録規則は前述のTài liệu hướng dẫn mô tả ấn phẩm: Dùng cho mục lục thư việnであり、稀に2009年に出版されたAACR2ベトナム語版を参照することもある。書誌フォーマットとしてMARC21を採用しており、NACESTIから2004年に出版されたMARC21ベトナム語版のマニュアルを使用している。分類表は、2007年以降2013年まではDDC14版ベトナム語縮約版を使用、2014年以降はDDC23版ベトナム語版を使用している。1961年以降1983年まではNLVの独自分類を採用していたが、後にBBKに付け替えが行われた。1983年以降2006年まではBBKを採用していたが、2004年以降のものはDDC14版への付け替えが行われている。従って、現在は2003年以前受入の資料はBBKによる分類となっている。
件名標目については、NLVが刊行するBộ Từ khóa(『キーワードリスト』)に従って1998年頃からベトナム語の統制語彙(主題、個人、団体、地名)を入力するようになった。Bộ Từ khóaは1997年に初めて刊行され、2005年、2012年に更新版が刊行されている(23)。2000年以前は非統制語彙の入力は職員の裁量に任されており、現在も、MARC21のフィールド653に非統制語彙が任意に入力されている。NLVとしては、ベトナム語版LCSHのような、より体系的な件名標目表を開発したいと考えているが、予算不足によりできていないとのことであった。Bộ Từ khóaは著者名の統制にも使用されているが、著者標目として使用する場合には、生没年は除いて記述する。なお、Bộ Từ khóaは他の一部の公共図書館にも採用されているとのことであった。
1998年から2011年までは、全ての外国語資料の書誌レコードに対し、ベトナム語に訳したタイトルと抄録(文学作品は除く)を記述していた。しかし翻訳が必ずしも正しいとは限らないため、現在はこの取り扱いを中止している。
1960年設立の科学技術中央図書館と1972年設立の科学技術情報中央研究所を統合する形で、1990年にベトナム科学技術省直属の組織として国立科学技術情報ドキュメンテーションセンター(National Centre for Scientific and Technological Information and Documentation: NACESTID)が設立された。その後2003年にNACESTI、2009年にNASATIへと改名された(24)。現在、ハノイに位置する国立科学技術図書館はNASATIの一部門であり、ベトナムで最も大きな科学技術分野の専門図書館である。
図書の所蔵は30万冊以上あり、うち25万冊分程度の書誌レコードを作成済みである。雑誌は7千タイトル程度の所蔵があり6千タイトル分の書誌レコードを作成済みである。編目部の職員4名が書誌レコード作成作業を行っている。これまでに1万タイトル程度の電子ブックを購入したため、2014年は電子ブックの書誌レコード作成作業に着手する予定とのことであった。電子ジャーナルの書誌レコードは作成していない。ほかにレポート類1万2千件程度、ベトナム語の科学技術系雑誌記事15万件程度の書誌レコードを保有しており、これらのレコードは図書館ではなくNASATI内部の他部署が作成している。典拠レコードは作成していない。
目録規則は2000年以降、1987年に出版した目録規則に代えてAACR2を採用している。現在は2009年に出版されたAACR2ベトナム語版を使用しており、書誌フォーマットについても2000年以降、MARC21を採用している。マニュアルとしてはNACESTIが2005年に出版したMARC21ベトナム語簡略版を使用している。分類表はBBKを採用している。ただしレポート類、雑誌記事に関しては、未だにNACESTI時代の独自の目録規則と書誌フォーマット、分類表を使用して書誌が作成されている。
件名標目(普通件名、生物名、地名、団体名を含む)は2001年に独自に制定した語彙集(25)に基づいて、図書、雑誌、レポート類、雑誌記事の全ての書誌に付与している。著者標目は統制していない。
南北分断時代には南ベトナムの国家図書館であり(26)、約137万冊の蔵書(27)を有する大規模な図書館である。2014年10月現在、50万件以上の書誌レコードを保有し、このうち図書の書誌レコードは23万件強である。書誌フォーマットは2002年以降MARC21を採用しており、目録規則は2007年以降、AACR2ベトナム語版を採用している。分類表は、2014年以降、DDC23版ベトナム語版と、DDC14版ベトナム語縮約版とを組み合わせて用いている(2013年以前はDDC22版との組み合わせであった)(28)。件名標目については1973年からLCSHを採用しており、現在は2010年に独自に編纂したベトナム語の件名標目リスト(件名約1万5千件を収録)と組み合わせて用いている。典拠レコードは作成していないが、著名な著者に限り、標目を揃えている場合がある。
ホーチミン市総合科学図書館に対する調査は、同館の書誌コントロールの概要について簡単な質問票を作成し、回答を得たものであるので、今後さらに詳細な調査を要する。
2007年にDDC、AACR2、MARC21フォーマットという3つの目録作成ツールの使用が推奨されたことで、ベトナムの図書館では独自規則を制定するのではなく、米国方式の書誌コントロールを遂行するという方向性が示されたと言えよう。AACR2に代わる目録規則であるResource Description & Access(以下、RDA)の適用についても、訪問調査を行った2機関は前向きに進めていく意向であった。ベトナムは漢字文化圏に属するが、1945年9月、ベトナム民主共和国によってローマ字に声調記号を付したクォック・グーがベトナム語の公式表記法と定められ、現在では漢字が一般に使用されることはなくなっている(29)。文字表記がローマ字ベースであり、古典籍を除いて漢字の併記も不要のため、他の漢字文化圏の国々と比べてRDAやMARC21をそのまま受け入れやすいと考えられる。ただ、3機関とも著者名典拠データを作成していないことは問題で、ベトナム国内には著者標目の形式に関する統一的な基準がないことも指摘されている(30)。近年増加した4音節や5音節の姓名の中には、姓(多くは父親の姓)に続けて母親の姓を付すものもあり、個人著者名は多様化・複雑化している(31)。今後、RDAの適用に向けた検討の中で、著者標目および典拠データに関しても注意の払われることが望ましい。
本調査は、平成26年度笹川科学研究助成(研究課題:ベトナム語資料の目録データベースに関する基礎的研究)を受けて遂行したものです。一部の先行文献の読解に当たっては、慶應義塾大学言語文化研究所嶋尾稔教授のご指導を受けました。ここに記して感謝申し上げます。ただし、本稿における誤りは全て筆者の責に帰するものです。
(1) Giem Trinh. ベトナムの図書館事情: 戦時下と戦後. 加藤 典洋訳. 図書館雑誌. 1983, 77(8), p. 484-486.
(2) 黒古一夫. ベトナム・図書館事情. 図書館雑誌. 2005, 99(3), p. 176-179.
(3) 松村多美子. ベトナムの図書館・情報サービス. 図書館情報大学附属図書館報. 1996, 12(2).
https://www.tulips.tsukuba.ac.jp/pub/tojo/archive/Kanpo/Vol12No2/matsumura.html [64], (参照 2014-10-20).
(4) ベトナム国家図書館では編目分類課のDoãn Anh Đức氏,国家科学技術図書館では国家科学技術情報局(NASATI)副局長Cao Minh Kiểm氏ほか2名の職員の方にご対応いただいた。
(5) 『統一規則』とは,書名から,1949年から1958年にかけて刊行された『Единые правила по описанию произведений печати для библиотечных каталогов』(NDLに一部所蔵あり,請求記号025.3-Rk96e)を指すと考えられる。
(6) Nguyễn Văn Hành. Một số vấn đề về áp dụng AACR2 trong biên mục mô tả tại các thư viện Việt Nam. Tạp chí Thông tin và Tư liệu. 2009, 1, p. 25-30.
(7) Ibid.
(8) Ibid.
(9) Ibid.
(10) Trần Thị Hải Yến. Thực trạng và định hướng phát triển hoạt động biên mục tại các cơ quan thông tin - thư viện Việt Nam. Tạp chí Thư viện. 2012, 4, p. 8-13.
(11) Nguyễn Thị Xuân Bình. Áp dụng MARC21 ở một số cơ quan thông tin, thư viện tại Hà Nội. Tạp chí Thông tin và Tư liệu. 2006, 2, p. 16-19.
(12) Ibid.
(13) Nguyễn Thị Xuân Bình; Nguyễn Thị Đào. Công tác tổ chức tập huấn và giảng dạy MARC 21 ở Trung tâm Thông tin KHCN Quốc gia. Tạp chí Thông tin và Tư liệu. 2005, 3, p. 17-21.
(14) Nguyễn Văn Hành. op. cit.
(15) Trần Thị Hải Yến. op. cit.
(16) Trần Thị Hải Yến. op. cit.
(17) Nguyễn Thị Thanh Vân. “Ứng dụng MARC21 tại Thư viện Quốc gia Việt Nam”. Thư viện Quốc gia Việt Nam.
http://nlv.gov.vn/tai-lieu-nghiep-vu/ung-dung-marc21-tai-thu-vien-quoc-gia-viet-nam.html [65], (accessed 2014-10-20).
(18) Trần Thị Hải Yến. op. cit.
(19) Vũ Dương Thúy Ngà. Thực trạng việc áp dụng các tiêu chuẩn Việt Nam về biên mục và xử lý tài liệu trong các thư viện Việt Nam. Tạp chí thư viện. 2011, 4(30), p. 15-20.
(20) Ibid.
(21) “Biên niên các sự kiện chủ yếu”. Thư viện Quốc gia Việt Nam.
http://nlv.gov.vn/gioi-thieu-chung/bien-nien-cac-su-kien-chu-yeu.html [66], (accessed 2014-10-20).
(22) “National Library of Viet Nam Annual Report”. The 22nd Conference of Directors of National Libraries in Asia and Oceania 25-28 February 2014.
http://www.ndl.go.jp/en/cdnlao/meetings/pdf/AR2014_Vietnam.pdf [67], (accessed 2014-10-20).
によれば,これまで納本制度によって収集した資料の総数は158万件とのことであるので,一部の資料には書誌データが作成されていないものと思われる。
(23) Thư viện Quốc gia Việt Nam. Bộ Từ khóa. Thư viện Quốc gia Việt Nam, 2012, 804p.
(24) “History of National Agency on Science and Technology Information (NASATI)”. National Agency on Science and Technology Information.
http://www.vista.vn/Default.aspx?tabid=71&IntroId=95&temidclicked=95&language=en-US [68], (accessed 2014-10-20).
(25) Trung tâm thông tin tư liệu khoa học và công nghệ quốc gia. Từ điển từ khoá khoa học và công nghệ: tập I bảng tra chính. Trung tâm thông tin tư liệu khoa học và công nghệ quốc gia. 2001, 567p.
(26) “Lịch sử hình thành”. Thư Viện Khoa Học Tổng Hợp Thành phố Hồ Chí Minh.
http://www.gslhcm.org.vn/index.php?option=com_content&view=article&id=290&Itemid=1002&lang=vi [69], (accessed 2015-02-04).
(27) World guide to libraries 2014. 28th ed., Berlin, Walter de Gruyter, 2014, 2 vols.
(28) Huỳnh Trung Nghĩa. “Công tác chuyển đổi khung phân loại DDC rút gọn ấn bản 14 tiếng Việt ở Thư Viện Khoa Học Tổng Hợp Tp.HCM”. Thư viện Khoa học Tổng hợp TP.HCM.
http://www.gslhcm.org.vn/contents/nghe_thu_vien/hoat_dong_nghiep_vu/mldocument.2009-08-27.6599684877 [70], (accessed 2014-11-05).
(29) 田中恭子. “東南アジアの漢字”. 朝倉漢字講座5: 漢字の未来. 朝倉書店. 2004. p. 161-180
(30) Nguyễn Văn Hành. Vẫn đề lập tiêu đề mô tả cho tên tác giả cá nhân người Việt Nam. Tạp chí Thư viện. 2006, 4.
http://nlv.gov.vn/nghiep-vu-thu-vien/van-de-lap-tieu-de-mo-ta-cho-ten-tac-gia-ca-nhan-nguoi-viet-nam.html [71], (accessed 2014-10-20).
(31) 出井富美. "ベトナム: 少ない姓と多様化する名". 第三世界の姓名: 人の名前と文化. 明石書店. 1994. p. 148-159.
[受理:2015-02-06]
木村麻衣子. ベトナムの図書館における目録作成ツール. カレントアウェアネス. 2015, (323), CA1843, p. 10-13.
http://current.ndl.go.jp/ca1843 [72]
Kimura Maiko.
Cataloging Standards Used by Libraries in Vietnam.
PDFファイルはこちら [77]
調査及び立法考査局海外立法情報課:服部有希(はっとり ゆうき)
フランスは、文化・通信省の主導の下、フランス国立図書館(BnF)が中心となり、書籍等のデジタル化を推進している。その対象は、パブリック・ドメインの資料から始まり、著作権保護期間内にある著作物へと拡大しつつある。
本稿では、フランスにおける書籍等のデジタル化の進展を概観した上で、最新の動向である絶版書籍及び孤児著作物のデジタル化について紹介する。
BnFが書籍等のデジタル化を本格化させたのは、1997年の電子図書館Gallicaの公開からである。そのコンテンツ数は、現在、約290万点に達している(1)。
Gallicaの当初の構想は、主要作家の作品等を厳選した百科全書的なカタログの構築であった。しかし、2005年頃になると、方針が変更され、網羅的なデータベースの実現に向けた試みが始まる。その背景には、前年にGoogleが発表したGoogleブックス図書館プロジェクトに対する危惧があった(2)。
BnFは、2007年に初めて大規模デジタル化の委託契約を企業(Safig社、Banctec社、Spigraph社、Isako 社及びDiadéis社)と締結した。これにより約10万点の資料のデジタル化が進められた(3)。
このような中で、大きな話題となったのは、2012年に文化・通信省の支援の下にBnFによって設立された企業「BnFパートナーシップ」(BnF-Partenariats)である。その目的は、企業との共同出資により、BnFが所蔵するパブリック・ドメインの資料をデジタル化することである。提携企業は、BnFが指定する資料のデジタル化を行う。対象資料は、1470年から1700年の図書のほか、新聞、手稿資料、レコード、楽譜、写真、映画等である(4)。
この事業の特徴は、出資の見返りとして、デジタル化資料の最長10年間の排他的な商業利用権が提携企業に付与される点である。この期間は、デジタル化資料をインターネット上のGallicaで閲覧することができない。ただし、BnFの館内であれば、この期間内でも閲覧することができる(5)。
例えば、2012年10月には、1470年から1700年までの7万点の資料のデジタル化をProQuest社に委託することが決定され、10年の排他的な商業利用権が付与された。デジタル化された資料は、ProQuest社のデータベースであるEarly European Booksにおいて提供されている。これらの資料のGallicaでの公開は、Early European Booksでの公開から10年後となる。
このように、パブリック・ドメインの資料のデジタル化が進展する一方で、現在、著作権保護期間内の資料のデジタル化に関する計画が進められている。それがReLIRE計画である。ReLIRE計画は、2012年に制定された「入手不可能な20世紀の書籍の電子的利用に関する2012年3月1日の法律第2012-287号」(6)による知的所有権法典(Code de la propriété intellectuelle)の改正により実現した。
ReLIREとは、Registre des Livres Indisponibles en Réédition Éléctroniqueの頭文字であり、「電子的再版のための入手不可能な書籍の登録リスト」を意味する。このリストには、採算性の問題等により再版されず、入手不可能となっている著作権保護期間内の書籍が記載される。ReLIRE計画の目的は、これらの書籍をデジタル化し、再版することにある(7)。
ReLIRE計画の対象となる「入手不可能な書籍」(livres indisponibles)は、厳密には絶版書籍(livres épuisé)と区別され、次の要件を全て満たすものとされている(知的所有権法典L.第134-1条)。
このような入手不可能な書籍がデジタル形態で再版されるまでには、次の3段階を経ることになる。
(1)リスト(ReLIRE)の公開(毎年3月21日)
(2)共同管理への移行(毎年9月21日)
(3)デジタル形態での再版
それぞれの段階を具体的に見ると、まず、出版者、著作権者及びBnFの代表者から成る「専門委員会」(comité scientifique)がリストを作成する。このリストは、BnFにより、毎年3月21日に公開される(同L.第134-2条及びR.第134-1条)。掲載された書籍の著作権者及び発行元の出版者は、リストの公開から6か月間、当該書籍をリストから除外するよう請求することができる(同L.第134-4条)。
次に、6か月以内に除外請求がなかった書籍は、共同管理状態(gestion collective)に置かれる。管理を行うのは、著作権料の徴収と分配に関する団体(société de perception et de répartition des droits:SPRD)のうち、文化・通信省が認可する団体である(同L.第134-3条)。実際には、Sofia(Société française des intérêts des auteurs de l’écrit)という団体が指名され、管理に当たっている(8)。
書籍が共同管理下に置かれると、Sofiaにより、再版へ向けた手続きが進められる。まず、Sofiaは、共同管理下の書籍の発行元の出版者に対して、当該書籍のデジタル形態での10年間の排他的な商業利用権の付与を提案する。これを受諾した出版者は、3年以内にデジタル形態での商業利用を開始しなければならない(同L.第134-5条)。
この提案が拒否された場合には、Sofiaは、当該書籍のデジタル形態での5年間の非排他的な商業利用権を、希望するその他の出版者に付与することができる(同L.第134-3条)。
このようにして、実際にデジタル形態での再版が行われた場合、Sofiaは、その出版者から使用料を徴収し、著作権者等に分配する。その額は、10年の排他的な商業利用の場合には、販売価格の15%(ただし1冊につき最低1ユーロ)となり、全額が著作権者に支払われる。一方、5年の非排他的な商業利用の場合には、販売価格の20%(最低1ユーロ)が徴収され、著作権者と元々の印刷物の発行元である出版者に50%ずつ支払われる(ただし1ユーロの場合には著作権者に0.75ユーロ、発行元の出版者に0.25ユーロが支払われる)(9)。
Sofiaによれば、ReLIRE計画による書籍の販売が開始されるのは、2015年末である(10)。
おわりに代えて、最新の動向として、2015年2月20日に成立した孤児著作物(œuvres orphelines)のデジタル化に関する法律(11)について紹介しておく。この法律は、2012年10月25日に制定されたEU孤児著作物指令(2012/28/EU)(12)(CA1771 [78]参照)を国内法化するためのものである。
この指令の趣旨は、その前文によれば、EU加盟国におけるデジタル化の促進と、孤児著作物の取扱いに関するEU加盟国間共通の方針の確立である。このような趣旨に従い、同指令及び法律は、図書館等が孤児著作物をデジタル化し、インターネット上で公開するための制度の整備を目的とする。
孤児著作物とは、同指令及びフランスの知的所有権法典によれば、詳細な調査にもかかわらず、著作権者が不明であるか、その所在が不明な著作物を指す(同指令第2条及び知的所有権法典L.第113-10条)。このうち、同指令及び法律が対象とするのは、著作権保護期間内にあり、EU加盟国において最初に出版された孤児著作物である。具体的には、本、雑誌、新聞及びその他の活字の資料のほか、視聴覚資料なども含まれる。
デジタル化の権利が与えられる機関は、一般利用が可能な図書館、博物館、美術館、文書館、視聴覚資料の収蔵機関、教育機関等である。これらの機関は、デジタル化にあたり、まず、著作権者やその所在について調査しなければならない。
孤児著作物のデジタル化及び公開は、あくまで文化的、教育的な目的に限られ、経済的、商業的利益を追求してはならない。ただし、デジタル化及び利用提供にかかる費用を補償する目的であれば、最長7年間、料金を徴収することができる。
(1)“Rapport d’activité 2013”. Bibliothèque nationale de France. 2014-8-19.
http://webapp.bnf.fr/rapport/pdf/rapport_2013.pdf [79], (accessed 2015-01-07).
(2)Tessier, Marc. “La numérisation du patrimoine écrit”. Ministère de la culture et de la communication. 2010-01-12.
http://www.ladocumentationfrancaise.fr/var/storage/rapports-publics/104000016/0000.pdf [80], (accessed 2015-01-07).
(3)Bruckmann, Denis et al. La numérisation à la Bibliothèque nationale de France et les investissements d’avenir. Bulletin des bibliothèques de France. 2012, 57(4), p. 49-53.
http://bbf.enssib.fr/consulter/bbf-2012-04-0049-010.pdf [81], (accessed 2015-01-07).
(4)Appel à partenariat pour la numérisation et la valorisation des collections de la Bibliothéque nationale de France (BnF). Bibliothèque nationale de France. 2011-07-06.
http://www.bnf.fr/documents/appel_partenariat_numerisation_2011.pdf [82], (accessed 2015-01-07).
(5)“Charte des partenariats”. Bibliothèque nationale de France.
http://www.bnf.fr/documents/charte_partenariats.pdf [83], (accessed 2015-01-07).
(6)Loi n° 2012-287 du 1er mars 2012 relative à l’exploitation numérique des livres indisponibles du XXe siècle.
http://www.legifrance.gouv.fr/affichTexte.do?cidTexte=JORFTEXT000025422700&categorieLien=id [84], (accessed 2015-01-07).
(7)Khiari, Bariza. “Rapport n°151 (2011-2012) fait au nom de la commission de la culture, de l’éducation et de la communication, déposé le 30 novembre 2011”. Sénat. 2011-11-30.
http://www.senat.fr/rap/l11-151/l11-1511.pdf [85], (accessed 2015-01-07).
(8)2013年3月21日の文化・通信省のアレテ(省令)(Arrêté du 21 mars 2013 portant agrément de la Société française des intérêts des auteurs de l’écrit)により指名された。
(9)Gary, Nicolas. Registre ReLIRE : la rémunération des auteurs enfin envisagée. ActuaLitté - Les univers du livre. 2013-09-13.
https://www.actualitte.com/acteurs-numeriques/registre-relire-la-remuneration-des-auteurs-enfin-envisagee-45045.htm [86], (accessed 2015-01-07).
(10)“Comprendre le projet ReLIRE”. Sofia Livres Indisponibles.
http://www.la-sofialivresindisponibles.org/comprendre_auteur.php?lg=fr [87], (accessed 2015-01-07).
(11) Loi n° 2015-195 du 20 février 2015 portant diverses dispositions d'adaptation au droit de l'Union européenne dans les domaines de la propriété littéraire et artistique et du patrimoine culturel.
http://legifrance.gouv.fr/affichTexte.do?cidTexte=JORFTEXT000030262934&dateTexte=&categorieLien=id [88], (accessed 2015-03-02).
(12)Directive 2012/28/EU of the European Parliament and of the Council of 25 October 2012 on certain permitted uses of orphan works.
http://eur-lex.europa.eu/LexUriServ/LexUriServ.do?uri=OJ:L:2012:299:0005:0012:EN:PDF [89], (accessed 2015-01-07).
[受理:2015-03-02]
服部有希. フランスにおける書籍デジタル化の動向 . カレントアウェアネス. 2015, (323), CA1844, p. 14-16.
http://current.ndl.go.jp/ca1844 [90]
Hattori Yuki.
Trends of Book Digitization in France.
PDFファイルはこちら [95]
九州大学附属図書館eリソースサービス室:林豊(はやし ゆたか)
本稿では、米国情報標準化機構(NISO)とOpen Archives Initiative(OAI)によって策定が進められているResourceSync(1)の概要を紹介する。
ResourceSyncは、2つのウェブサーバの間でコンテンツの同期(2)を行うためのプロトコルである。2011年にOAI-PMH(CA1513 [96]参照)の後継規格として検討が始まった。ワーキンググループにはOAI-PMHの策定に深く関わったロスアラモス国立研究所のソンペル(Herbert van de Sompel)も名を連ねている。一連の規格のなかでコアとなるResourceSync Framework Specification(ANSI/NISO Z39.99-2014)(3)のバージョン1.0が2014年4月にリリースされた。
OAI-PMHは、機関リポジトリなどで使われているメタデータハーベスティング(収集)のためのプロトコルである。その歴史は1999年まで遡り、2001年にバージョン1.0が、2002年に現時点でも最新版となるバージョン2.0がリリースされている。図書館ではデジタルコンテンツの露出機会を増やすために外部のサービスにメタデータを提供することがしばしばある。外部との連携方法は一般に様々であり、何らかの標準的な方法が存在すれば連携が容易になる。OAI-PMHは現在でも国際標準規格にはなってないが、図書館界ではメタデータ収集の方法としてデファクトスタンダードであり、成功していると評価できるだろう。
それではなぜResourceSyncという新しい規格が必要となったのだろうか。
その問いに答えるために、まず、OAI-PMHの問題点について説明したい。
OAI-PMHでは、「サービスプロバイダ」が「データプロバイダ」のメタデータを収集するための方法を定めている(4)。サービスプロバイダがデータプロバイダ上の特定のURLにアクセスし、それに対してデータプロバイダがXML形式でメタデータを返す、というのが基本的なしくみである。
例えば、九州大学の機関リポジトリのメタデータを収集する際のURLは以下のようになる。
このうち「?」以前の部分はベースURLと呼ばれ、データプロバイダによって異なる。サービスプロバイダは収集したいデータプロバイダのベースURLを何らかの方法で事前に知っておく必要がある。
「?」以後の部分の書式はOAI-PMHの仕様で標準化されている。verbはデータプロバイダへの要求内容を指示するもので、ListRecords(指定した条件に合致するレコードを全て取得する)のほか、Identify、ListMetadataFormats、ListSets、ListIdentifiers、ListRecords、GetRecordの全6種類が用意されている。fromとuntilによって、特定の期間に作成・更新されたメタデータのみを抽出できる。
また、応答時のXMLでは、削除されたメタデータについてstatus=“deleted”という情報が出力される(5)。
例えば、現在OAI-PMHは次のようなシーンで活用されている。
(1)デジタルリポジトリ
OAI-PMHは、DSpaceなどの主要なリポジトリソフトウェアで実装されている。機関リポジトリのメタデータを収集するサービスには、国立情報学研究所(NII)の学術機関リポジトリデータベース(IRDB)(6)、OAIster、RePEcなどがある。数物系のプレプリントサーバarXivはOAI-PMHによるメタデータ提供を行っている(7)。
(2)デジタルアーカイブ
国立国会図書館(NDL)東日本大震災アーカイブ「ひなぎく」、Europeana、米国デジタル公共図書館(DPLA)、米国議会図書館(LC)のAmerican Memoryなどのデジタルアーカイブが、メタデータの収集や提供の方法としてOAI-PMHを採用している(8) (9)。特にこのケースでは図書館界以外の機関・企業のサービスも収集対象になることがある点を注意しておきたい。
(3)ディスカバリーサービス
国立国会図書館サーチ(CA1762 [98]参照)では、メタデータの収集・提供の方法としてOAI-PMHが採用されている(10)。また、ウェブスケールディスカバリーサービス(CA1772 [99]参照)では図書館のOPACや出版社のデータベースからセントラルインデクスにメタデータを取り込む方法として使われている(E1604 [100]参照)。
OAI-PMHは仕様の簡潔さもあって、図書館界で広く普及してきた。しかし、以下のようにいくつかの課題を抱えていることも事実である。
(1)収集対象がメタデータのみである
OAI-PMHはメタデータの記述対象であるコンテンツ自身の収集に対応していない。多様なアクセスポイントを提供するだけならば問題ないが、長期保存のためのバックアップや全文検索機能の提供を目的とする場合にはコンテンツ自身の収集が必要となる(11)。また、アクセス負荷分散のためにミラーサイトを設置したい場合にもOAI-PMHでは不十分である(12) (13)。
(2)図書館界以外では普及していない
例えば、Googleは利用の少なさを理由として2008年にGoogle SitemapsにおけるOAI-PMHのサポートを終了している(14)。図書館界に閉じた範囲で収集している分には問題ないが、震災アーカイブのように広く一般のサービスを対象とする場合には課題を感じることもあるだろう。策定から12年以上が経過したOAI-PMHは、現在のウェブでは標準的なスタイルといえない。
(3)収集がリアルタイムではない
OAI-PMHはプル型のしくみであり、収集の主導権はサービスプロバイダにある。データプロバイダ側でコンテンツが生成されたことをサービスプロバイダに通知(プッシュ)する手段を設けていないため、収集までにタイムラグが生じがちである。メタデータだけでなくコンテンツの収集をも行うならば、リアルタイム性は重要になるだろう。
このようなOAI-PMHの限界を乗り越えるべく、ResourceSyncの開発が始まった(15)。本節では、そのコアであるResourceSync Framework Specification(バージョン1.0)の要点を紹介したい。
ResourceSyncの同期の対象は、URIを持つあらゆるウェブ上のリソース(16)であり、OAI-PMHのようにメタデータには限定されない。
その仕様は、Googleなどの検索エンジンに対してクロールすべきURLを知らせるための標準的な仕様であるSitemapプロトコル(17)をベースにしている。つまり、検索エンジン最適化(SEO)として既にSitemapファイルを公開していれば、そこに多少の変更を加えることでResourceSyncによる同期が実現できる(18)。
ResourceSyncのコアの仕様は、OAI-PMHと同様にプル型である。ただし、関連規格のResourceSync Notificationがコンテンツの生成などを通知するプッシュ型のしくみを定めており、これによって同期のタイムラグを減らすことが可能になる。
ResourceSyncは、コンテンツ数が数百万件を超える大規模環境や、秒単位で頻繁に更新されるようなコンテンツを想定し、スケーラビリティに配慮した設計を目指している(19)。
次にResourceSyncによる同期の基本的なプロセスを説明したい。詳しくは「仕様書」(20)の§5を参照いただきたい。
まず、同期の対象となるリソースを持つサーバは「ソース(Source)」、同期を行うシステムは「デスティネーション(Destination)」と呼ばれる。
同期を行うために必要なソースの機能(capability)として、Resource List、Resource Dump、Change List、Change Dumpの4種類が定められている(21)。いずれも何らかのXMLファイルを出力するもので、それらのファイルも同様の名称で呼ばれる。例えば、Resource Listは、ある時点におけるソースのリソースを全て列挙するものである。Resource Dumpは、ある時点におけるリソース全体をパッケージングしたZIPファイル(22)の場所を示すものである。Change ListおよびChange Dumpは、それぞれResource ListおよびResource Dumpに対応するもので、ある時点からの変化を記述するものである。
デスティネーションの取りうるプロセスには、ベースライン同期(Baseline Synchronization)、増分同期(Incremental Synchronization)、監査(Audit)の3種類がある。ベースライン同期は、初回同期時などに行われるもので、Resource ListやResource Dumpによって実現される。増分同期は、前回同期時から変化したリソースのみを収集するもので、Change ListやChange Dumpによって実現される。監査は、同期が正しく行われているかをチェックするもので、ソースが各機能にリソースのハッシュ値などの固定化情報(fixity)を含めることで可能となる。
実際に同期を開始する前に、ソースはこれらの機能が出力するXMLファイルのURIをデスティネーションに発見(discovery)してもらう必要がある。その方法として、ソースのrobots.txtに記述するなどの3種類が定められている(23)。
ResourceSyncのXMLはSitemapプロトコルをベースに独自要素を追加したものである(24)。Resource List、Resource Dump、Change List、Change DumpはそれぞれSitemapファイルとして記述される。
以下、いくつかの記述例を紹介する。説明を簡単にするために<rs:ln>など一部の必須要素を省略している。詳しくは仕様書の§7、§10~§13を参照いただきたい。
●Resource List
Sitemapプロトコルと同様、<urlset>と<url>を基本構造とする。独自要素<rs:md>のcapability属性で機能の種類を、at属性でいつの時点の状態かを示している。リソースの数だけ<url>が繰り返され、<loc>でそのURI、<lastmod>で最終更新日時、<rs:md>でハッシュ値やファイル形式を記述している。
<?xml version="1.0" encoding="UTF-8"?>
<urlset
xmlns="http://www.sitemaps.org/schemas/sitemap/0.9 [101]"
xmlns:rs="http://www.openarchives.org/rs/terms/ [102]">
<rs:md capability="resourcelist"
at="2015-01-03T09:00:00Z"/>
<url>
<loc>http://ex.com/content.pdf</loc> [103]
<lastmod>2015-01-02T13:00:00Z</lastmod>
<rs:md hash="md5:1584abdf8ebdc9802ac0c6a7402c03b6"
type="application/pdf"/>
</url>
<url>
......
</url>
......
</urlset>
●Resource Dump
<loc>でリソースをまとめたパッケージのURIを示している。独自要素<rs:ln>ではパッケージに含まれるファイルの一覧(Resource Dump Manifestと呼ばれる)の所在を表している。パッケージは複数に分割することもでき、必要ならば<url>を繰り返す。
<rs:md capability="resourcedump"
at="2015-01-03T09:00:00Z"/>
<url>
<loc>http://ex.com/package-1.zip</loc> [104]
<rs:md type="application/zip" length="4765"
at="2013-01-03T09:00:00Z"/>
<rs:ln rel="contents"
href="http://ex.com/manifest-1.xml [105]"
type="application/xml"/>
</url>
●Change List
<rs:md>のfrom属性で、いつの時点からの変化なのかを示している。変化のあったリソースを<url>で列挙し、それぞれの<rs:md>のchange属性で変化の種類(新規作成・更新・削除)を表している。
<rs:md capability="changelist"
from="2015-01-03T00:00:00Z"/>
<url>
<loc>http://ex.com/content1.html</loc> [106]
<lastmod>2015-01-03T11:00:00Z</lastmod>
<rs:md change="created"/>
</url>
<url>
<loc>http://ex.com/content2.pdf</loc> [107]
<lastmod>2015-01-03T13:00:00Z</lastmod>
<rs:md change="updated"/>
</url>
<url>
<loc>http://ex.com/content3.tiff</loc> [108]
<lastmod>2015-01-03T18:00:00Z</lastmod>
<rs:md change="deleted"/>
</url>
なお、Sitemapプロトコルでは、1つのSitemapファイルのサイズは5万URLまたは10MBまでという制限があり、それを超える場合は、複数のSitemapファイルに分割し、別途作成したSitemap indexファイルからリンクすることになっている(25)。このような階層構造によって1つのSitemap indexファイルで最大で25億URLのリソースを記述できる。ResourceSyncもこの方法に従っており、Resource ListやChange Listに対するSitemap indexファイルをResource List IndexやChange List Indexと呼んでいる(26)。
もちろんResourceSyncはメタデータのみの収集にも対応している(27)。一般のリソースの同期と同様、Resource Listなどの機能で実現されるが、コンテンツと同じようにメタデータもURIを持ったひとつのリソースでなければならない点に注意が必要である。
コンテンツとメタデータの関係はrel属性で記述できる。コンテンツに対してはrel=“describedby”で、メタデータに対してはrel=“describes”で相手との関係を表現できる。
<url>
<loc>http://ex.com/content.pdf</loc> [103]
<rs:ln rel="describedby"
href="http://ex.com/metadata.xml [109]">
</url>
現在、ResourceSync Framework Specificationの関連規格として、ResourceSync Archives(28)、Relation Types used in the ResourceSync Framework(29)、ResourceSync Notification(30)がドラフト段階にある。このうちResourceSync ArchivesとResourceSync Notificationはコアの拡張という位置づけである。
ResourceSync Archivesは、ソースから過去の時点におけるリソースのスナップショットを取得するためのしくみで、Resource Dump Archive、Change List Archive、Change Dump Archiveという3つの機能について定めている。この規格はソンペルらのウェブアーカイビングプロジェクトMemento(CA1733 [110]、E1573 [111]参照)と関わりが深い。
ResourceSync Notificationは、ソースにおけるリソースの生成などをデスティネーションに対して通知するプッシュ型のしくみについて定めている。一般にウェブでプッシュ通知を実現する方法はいくつかあるが、ここではPubSubHubbub(31)が採用されている。
管見のかぎりでは今のところResourceSyncを実運用として実装したサービスは見られないが、いくつかの実験は行われてきている。
例えば、コーネル大学図書館のワーナー(Simeon Warner)(32)によってarXivのデータを用いたシミュレーションが行われ、Resource ListやChange Listが公開されている。
ロスアラモス国立研究所のクライン(Martin Klein)ら(33)は、更新の激しいソースとしてWikipediaのLinked Data版サイトであるDBpedia Live(34)を取り上げ、プッシュ通知の実験を行っている。
また、ソンペルは、プッシュ通知を使ってリソース同期を行うデモ動画を公開している(35)。
ResourceSyncの普及のためには、DSpaceのような代表的ソフトウェアで実装されることが有効である。例えばCottage Labsは、ResourceSyncでメタデータハーベスティングを行うためのJavaライブラリとDSpaceモジュールを公開している(36)。現在はメタデータに留まり、Resource DumpやChange Dumpによるコンテンツの同期は今後の課題となっている。
また、resyncという、Pythonで開発されたクライアント(デスティネーション側)とライブラリ(ソース側、デスティネーション側)が公開されている(37)。合わせて動作するResourceSync Simulatorというソース側のシミュレータも公開されている(38)。
ResourceSync PuSHという、PythonによるResourceSync Notificationの実装も存在する(39)。
以上、メタデータハーベスティングの規格として成功したOAI-PMHにもいくつかの課題があること、そして、それを乗り越えるために登場した標準規格ResourceSyncの概要について紹介してきた。
コア以外の仕様も固まりつつあるResourceSyncだが、実装は現時点では実験段階に留まり、今後実際に広く活用されていくかは未知数という印象である。しかしながら、電子コンテンツの長期的な保存など、リソース同期の標準的な方法が必要となる場面が存在することは疑いがないだろう。図書館界を超えて広く採用されるかどうか、注目したい。
(※参照URLの最終確認日はすべて2015年2月13日)
(1) ResourceSyncには関連規格も含めて現在4つの仕様が存在する。本稿ではそれらの総称として“ResourceSync”という表現を用いる。
"ResourceSync Framework Specification - Table of Contents". NISO. 2014-07-02.
http://www.openarchives.org/rs/toc [112].
(2) 原語を尊重して「同期」と表現するが、ResourceSyncはOAI-PMHと同様に双方向的な同期を実現するものではない。
(3) "ResourceSync Framework Specification (ANSI/NISO Z39.99-2014)". NISO. 2014-04-21.
http://www.openarchives.org/rs/resourcesync [113].
(4) 正確にはサービスプロバイダのハーベスタが、データプロバイダのリポジトリからメタデータを収集する。
(5) 仕様上は“may”とされ、出力は必須ではない。
(6) 国立情報学研究所. “IRDBハーベストについて”. 学術機関リポジトリ構築連携支援事業. 2015-01-23.
http://www.nii.ac.jp/irp/archive/system/irdb_harvest.html [114].
(7) "Open Archives Initiative (OAI)". ArXiv.
http://arxiv.org/help/oa/index [115].
(8) “5 国立国会図書館東日本大震災アーカイブとの連携について”. 国立国会図書館東日本大震災アーカイブ.
http://kn.ndl.go.jp/static/renkei [116].
"Technical requirements". Europeana.
http://pro.europeana.eu/technical-requirements [117].
"DPLA Participation Instructions". DigitalNC.
http://www.digitalnc.org/about/dpla/dpla-instructions/ [118].
"OAI-harvestable records for digitized historical collections". Library of Congress. 2008-05-23.
http://memory.loc.gov/ammem/oamh/index.html [119].
(9) 国内公共図書館でも例がある。
“大阪府立図書館 Web-API 情報”. 大阪府立図書館. 2014-02-21.
http://www.library.pref.osaka.jp/site/e-service/webapi.html [120].
(10) “国立国会図書館サーチが提供するOAI-PMH”. 国立国会図書館サーチ.
http://iss.ndl.go.jp/information/api/oai-pmh_info/ [121].
(11) Van de Sompel ,Herbert.et al. Resource Harvesting within the OAI-PMH Framework. D-Lib Magazine. 2004, 10(12).
http://www.dlib.org/dlib/december04/vandesompel/12vandesompel.html [122].
(12) arXivは1990年代から独自の方法でミラーリングを行っている。
Van de Sompel,Herbert. "ResourceSync: A Web-Based Resource Synchronization Framework". 2013-06-19.
http://www.slideshare.net/hvdsomp/resourcesync-tutorial-oai8 [123].
(13) OAI-PMHを用いてコンテンツを同期させる方法が2004年に提案されている。後年、普及には至らなかったと振り返られている。
Van de Sompel ,Herbert.et al. Resource Harvesting within the OAI-PMH Framework. D-Lib Magazine. 2004, 10(12).
http://www.dlib.org/dlib/december04/vandesompel/12vandesompel.html [122].
Van de Sompel ,Herbert.et al. A Perspective on Resource Synchronization. D-Lib Magazine. 2012, 18(9-10).
http://www.dlib.org/dlib/september12/vandesompel/09vandesompel.html [124].
(14) Mueller, John. "Retiring support for OAI-PMH in Sitemaps". Google Webmaster Central Blog. 2008-04-23.
http://googlewebmastercentral.blogspot.jp/2008/04/retiring-support-for-oai-pmh-in.html [125].
(15) Van de Sompel,Herbert.et al. A Perspective on Resource Synchronization. D-Lib Magazine. 2012, 18(9-10).
http://www.dlib.org/dlib/september12/vandesompel/09vandesompel.html [124].
(16) Van de Sompel,Herbert. "ResourceSync: A Web-Based Resource Synchronization Framework". 2014-01-24.
http://www.slideshare.net/OpenArchivesInitiative/resourcesync-tutorial [126].
(17) "What are Sitemaps?" Sitemaps.org.
http://www.sitemaps.org/ [127].
なお、Sitemapの最初のバージョンである0.84が登場したのは2005年であり、OAI-PMHの策定後である。
Shivakumar, Shiva. "Webmaster-friendly". Official Google Blog. 2005-06-25.
http://googleblog.blogspot.jp/2005/06/webmaster-friendly.html [128].
(18) 以下の論文は、Sitemapプロトコルを拡張することの懸念を3つ挙げ、実際にGoogleに処理させて問題が起こらないかを実験している。
Klein, Martin.et al. "Extending Sitemaps for ResourceSync". 2013-05-21.
http://arxiv.org/abs/1305.4890 [129].
(19) Van de Sompel, Herbert. "ResourceSync: A Web-Based Resource Synchronization Framework". p. 10-11. 2013-06-19.
http://www.slideshare.net/hvdsomp/resourcesync-tutorial-oai8 [123].
(20) "ResourceSync Framework Specification (ANSI/NISO Z39.99-2014)". NISO. 2014-04-21.
http://www.openarchives.org/rs/resourcesync [113].
(21) ResourceSyncの仕様はモジュラー(modular)な設計になっており、例えばベースライン同期を行うだけであれば、Change ListやChange Dumpの実装は必要ない。
Van de Sompel,Herbert. "ResourceSync A Quick Overview". 2014-09-30.
http://www.slideshare.net/hvdsomp/resourcesync-quick-overview [130].
(22) 仕様書ではZIP形式が使われているが、他の形式でも良いとされている。
(23) 仕様書§6.3を参照。デスティネーションがソースの機能を発見する方法には、Source Description、Capability List、Resource Listなど、の3種類がある。
(24) 記述方法としてSitemap、Atom、独自仕様を検討し、最終的にSitemapが採用された。§4に理由が述べられている。
Klein, Martin. et al. Technical Framework for Resource Synchronization. D-Lib Magazine. 2013, 19 (1-2).
http://www.dlib.org/dlib/january13/klein/01klein.html [131].
(25) "Frequently asked questions". Sitemaps.org. 2008-02-27.
http://www.sitemaps.org/faq.html#faq_sitemap_size [132].
(26) 仕様書Figure 4を参照。
(27) 仕様書§14.5を参照。他にも§14ではリソース間の関係を記述する方法が定められており、OAI-PMHのセット(set)や、OAI-ORE(CA1690 [133]参照)の集合体(aggregation)についても言及されている。
(28) Klein, Martin. et al. "ResourceSync Framework Specification - Archives - Beta Draft". 2013-08-21.
http://www.openarchives.org/rs/0.9.1/archives [134].
(29) Klein, Martin. et al. "Relation Types used in the ResourceSync Framework - Beta Draft". NISO. 2013-09-27.
http://www.openarchives.org/rs/0.9.1/relationtypes [135].
(30) Klein, Martin. et al. "ResourceSync Framework Specification - Notification - Beta Draft". NISO. 2014-03-24.
http://www.openarchives.org/rs/notification/0.9/notification [136].
(31) Fitzpatrick, Brad. et al. "PubSubHubbub Core 0.4 -- Working Draft".
https://pubsubhubbub.googlecode.com/git/pubsubhubbub-core-0.4.html [137].
(32) "ResourceSync experiments on resync.library.cornell.edu".
http://resync.library.cornell.edu/ [138].
(33) Klein, Martin. et al. "Real-Time Notification for Resource Synchronization". 2014-02-11.
http://arxiv.org/abs/1402.3305 [139].
(34) "DBpedia Live".
http://live.dbpedia.org/ [140].
"DBpedia Live". DBpedia. 2015-01-08.
http://wiki.dbpedia.org/DBpediaLive [141].
(35) "ResourceSync Change Notification Demo". 2014-04-07.
https://www.youtube.com/watch?v=H2Le9_Bbkdw [142].
(36) "ResourceSync Module for DSpace". Cottage labs.
http://cottagelabs.com/news/resourcesync-module-for-dspace [143].
"ResourceSync". Cottage labs.
http://cottagelabs.com/projects/resourcesync [144].
(37) "resync 1.0.0". Python.org.
https://pypi.python.org/pypi/resync/1.0.0 [145].
(38) "resync/resync-simulator". GitHub.
https://github.com/resync/resync-simulator [146].
(39) "resync/resourcesync_push". GitHub.
https://github.com/resync/resourcesync_push [147].
[受理:2015-02-13]
林豊. ResourceSync:OAI-PMH の後継規格. カレントアウェアネス. 2015, (323), CA1845, p. 17-21.
http://current.ndl.go.jp/ca1845 [148]
DOI:
http://doi.org/10.11501/9107589 [149]
Hayashi Yutaka.
ResourceSync: A successor of OAI-PMH.
本著作(CA1845)はクリエイティブ・コモンズ 表示 2.1 日本 ライセンスの下に提供されています。ライセンスの内容を知りたい方はhttp://creativecommons.org/licenses/ by/2.1/jp/ [150] でご確認ください。
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堺市立中央図書館:竹田芳則(たけだ よしのり)
本レビューは、公立図書館における地域資料サービスに関する文献を主な対象とする。従来、地域資料、郷土資料、(地方)行政資料といった用語の定義があいまいであったものが、1999年に日本図書館協会の図書館員選書として出版された『地域資料入門』(1)において、後述のとおり、概念が明確化され、以降「地域資料サービス」といった用語が定着化してきたと考えられる。同書の巻末には、地域資料に関する先行文献の一覧が掲載されていることから、本レビューでは1999年以降に国内で発表されたものを対象とした。
また、本レビューでは、地域資料サービスのあり方について論点を紹介した上で、同サービスに関する調査研究の動向、同サービスをめぐる課題について記述し、地域資料のデジタルアーカイブ化など近年の取組の紹介を行うこととした。
なお、本テーマと密接な関係を持つ、紙資料の保存・修復ならびにMLA連携については、本誌において先行して研究文献レビューが掲載されているので(CA1680 [156]、CA1749 [157]、CA1791 [158])、重複を避けた。また、各図書館で発行されている地域資料(郷土資料)の個別の目録類、資料紹介のウェブサイトなどは、対象外とした。
地域資料サービスの理論について、研究者として最も多くの発言を行っているのが根本彰である。根本は前掲『地域資料入門』において、第1章「地域資料サービスの意義」の執筆を担当し、図書館法第3条の「郷土資料、地方行政資料」の用語について整理した上で、地域資料を、「当該地域を総合的かつ相対的に把握するための資料群と捉え、発行者として行政体と民間(出版社や団体、個人)を問わず、また主題として歴史、行財政、文学その他を問わず、地域で発生するすべての資料および地域に関するすべての資料」と定義し、地域資料サービスを行う目的は、「当該地域に居住する住民の生活を情報や資料の面から支援すること」とした(2)。根本はさらに自著において、地域資料サービスの課題と可能性について、論点を展開している(3)(4)。
文部科学省生涯学習政策局に設置された「これからの図書館の在り方検討協力者会議」の提言『これからの図書館像』(2006年)においては、「これからの図書館サービスに求められる新たな視点」として「地域資料や、地域の機関や団体が発行しているパンフレットやちらしを提供することも、地域の課題解決や地域文化の保存の観点から重要となってくる」とされた(5)。
また、戸室幸治は「地域資料とは、当該地域に関するあらゆる資料の総称である」と定義し、「地方行政資料は、扱っている対象領域によって、郷土資料は歴史的な視点によって、民間資料は作成主体によって主に区別されるが、それぞれの資料は主題と刊行主体の両側面をもち、一方の側面だけでも地域資料の対象となる」として、例として当該地域出身の作家の作品も対象となるとした(6)。
国立国会図書館は2006年に、地域資料が、地域(都道府県レベルあるいは市町村レベル)の図書館を中心とした資料収集保存提供機関において整理、利用、資料保存、出版・電子化等、どのように扱われているかについて明らかにするために、日本で最初の全国調査を行った。調査結果は『地域資料に関する調査研究』(図書館調査研究リポートNo.9)としてまとめられている(7)。
当リポートでは、単に調査結果をまとめるだけでなく、なぜ地域資料を問題にするのかについて、調査を行う前の問題意識を明確にし、そのポイントが論じられている。そうした観点から、調査結果では「歴史の古い図書館では、印刷資料以外にも一定の歴史的資料の蓄積があるが、それを生かすための経営資源が不足していた。同時代的に発生する資料についても、これを地域の活性化や市民の課題解決に生かすために積極的に取り組んでいるところは、少なかった」といった課題が指摘されている(8)。
その後に実施された全国調査としては、成城大学研究機構グローカル研究センター研究資料室の、都道府県立図書館所蔵「郷土資料」に関する基礎的調査がある(9)。ただし、これについては、研究機関の「ローカル社会・文化研究のための基礎的調査」を目的とするもので、調査対象の資料も「民間団体刊行地域社会資料」と極めて限定的であり、先の国立国会図書館調査を補完するものとは言えない。
ここでは、調査結果が冊子で公表されているものについて筆者の把握している範囲で紹介する。
東京都では多摩地区において、1986年以来およそ10年ごとに地域資料の業務実態についての幅広い調査が行われており、直近では、2005年の調査について報告書がまとめられている(10)。
大阪府では2005年に、大阪公共図書館協会の研究委員会に「地域資料研究グループ」が設置され、2006年の大阪公共図書館大会において、府内公共図書館の地域資料所蔵状況等アンケート調査のまとめが発表された(11)。さらに同グループにより、アンケート調査は継続され、2008年には「大阪の人物調査」について(12)、2010年には「地域資料の収集・保管・情報共有」について(13)、2012年には「地域資料のPR」について(14)、同大会において報告が行われている。また、2013年には大阪府立中央図書館により、「大阪府域児童サービスにおける地域資料実態調査」が行われている(15)。
福岡県においては、2008年に、福岡県公共図書館等協議会「資料収集・保存委員会」が、県内公共図書館・公民館図書室(分館等を含む)等に対し、「地域(郷土)資料についてアンケート調査」を実施し、調査結果の詳細について、福岡県立図書館ホームページ上で公開している(16)。
日本図書館協会の資料保存委員会は、前掲『地域資料入門』の出版にあわせ、『ネットワーク資料保存』に地域資料についての記事を掲載するとともに(17)(18)、1999年度に滋賀県で開催された、全国図書館大会の資料保存分科会のテーマを「地域資料の保存と利用をめぐって—地方分権の時代の図書館サービスのために」として、研究の深化をはかった(19)(20)。
『図書館雑誌』2001年12月号では、「地域資料と図書館」を特集し、合計5本の論文を掲載している(21) (22) (23) (24) (25)。
また、2002年度の全国公共図書館整理部門研究集会は、「地域資料再発見—新しい時代における資料のあり方を考える」を研究主題とし、基調講演および3本の事例発表および全体協議が行われた(26) (27) (28) (29)。
その後の全国図書館大会では、2003年度に「地域資料と資料保存—時間、空間を超えた資料提供のために—」(30)、2006年度に「地域資料のこれから—電子情報の保存を考える—」(31)、2007年度に「地域で資料をどう残すか」(32)をテーマに、資料保存分科会が開かれている。
さらに、2010年度に奈良県で開催された、全国図書館大会の資料保存分科会では「地域資料をめぐる図書館とアーカイブズ—その現状と未来」をテーマとし、MLA連携、とりわけ前年の「公文書管理法」成立時の衆参両院での附帯決議にも盛り込まれた、図書館とアーカイブズ機関の連携を視野に入れた報告が行われた(33) (34)。
前掲『地域資料に関する調査研究』は、図書館を主な対象としつつ、博物館、文書館、行政情報センターも合わせて対象とし、地域の歴史資料を扱う機関の全体像を明らかにしようとした点でも画期的なものであるとされている。
当調査の研究委員の主査として参加した根本は、全国で250館を超える公立図書館が古文書・古記録を所蔵していると推測し、図書館法、博物館法、公文書館法に示されているそれぞれの機関が扱う資料の範囲と機関の目的、そして資料をどのように扱うのかについて整理を行っている。その上で、図書館は資料の範囲がもっとも汎用的であり、図書以外の「記録」があるように、歴史資料も含んでいるが、サービスのレベルは浅く、学術的な専門性に欠ける部分があるとした。一方で、歴史資料を系統的に受け入れることができる施設は文書館しかないが、その設置はきわめて不十分であり、文書館をつくる前の段階としても、図書館に歴史資料を扱える職員を配置するべきとした(35)。
このことについて、歴史博物館学芸員の立場から長谷川伸は、地域資料をめぐる厳しい状況下で、地域の現場レベルでのMLA連携こそが必要であり、図書館司書・博物館学芸員・文書館アーキビストが、それぞれの専門性を尊重しながら、いかに連携して、真の意味での「地域の情報拠点」の担い手となるかが問われていると問題提起している(36)。
こうした課題を乗り越え、自治体史編さん事業後の、収集した歴史資料の保存、整備、活用を図書館の地域資料サービスの延長として位置づけた先進的な事例として、東京都北区立中央図書館の取り組みがあげられる(37) (38)。
津田恵子は、地域資料の網羅的収集と公開・永久保存体制の確立には、収集方針の重要性と公開の意義、司書の専門性が不可欠であることを、事例を踏まえて具体的に明らかにし、「公立図書館の管理運営を、継続性のない民間へのアウトソーシングに委ねる流れの中では、難しいと考える」とした(39)。
さらに、戸室は「地域についての資料・情報の市民への開放を推し進めていく過程においては、今後『図書館の自由』の真価が問われる様々な場面が待ち受けることになる」と述べ、また地域資料サービスを安定的に運営していく際に、収集方針とどう向き合うかが問われることになるとしている(40)。
また、「図書館の自由」に関し、「資料提供の自由」の原則に沿って、被差別身分や賎称語等の記載を含む歴史資料について、資料を封印し隠ぺいするのではなく、資料の正しい利用を啓発し促進していくという到達点が示されている(41) (42)。
前掲『地域資料入門』の編集主体である三多摩郷土資料研究会は、1999年の同書の出版を契機に三多摩地域資料研究会と改称した(43)。同研究会は、東京多摩地区の30の市町村立図書館の地域資料担当者で組織され、1975年の発足以来、現在に至るまで地域資料に関する研修・研究活動を継続している。
発足から改称までの時期の活動について、同研究会を戦後公共図書館史と郷土資料の文脈において位置づけたものとして、桂まに子の論考があり(44)、庄司明由は、同研究会の実践を通じた、地域史研究と図書館との連携の事例を報告している(45)。
一方で戸室は、同研究会の改称以降の多摩地区の図書館の地域資料サービスの取り組みについて、本格的な地域資料サービスの展開を実施しているのは、日野市立図書館市政図書室のみであるとして、広がりを見せていないことに疑問を呈している(46)。
この他、多摩地区の地域資料サービスの個別の実践 にふれたものとしては、前述のものを除いては、日野市の市政図書室や(47) (48) (49)、小平市における地域資料サービス(50) (51) (52)、および地域資料と地域史編纂(53)についてなどがある。
2000年12月、文部省(当時)の地域電子図書館構 想検討協力者会議は『2005年の図書館像〜地域電子図書館の実現に向けて〜』と題する報告書をとりまとめた。報告書の第3章において、図書館資料のデジタル化の指針を提示し、公立図書館として優先してデジタル化(データベース化)し、ホームページ等で公開するべき資料として、(1)当該図書館にしか所蔵されておらず、現状のままでは消失の可能性のある資料、(2)当該自治体に固有の情報を扱っており、消失の危険性のある資料、(3)当該図書館に所蔵されている資料のうち当該自治体に固有の情報を扱っている著作権の消滅したものなどとし、公立図書館所蔵の地域資料のデジタルアーカイブ化が推奨された(54)。
この後、2006年の前掲『これからの図書館像』を経て、2012年の文部科学省告示「図書館の設置及び運営上の望ましい基準」においては、市町村立図書館の図書館資料の収集に関して、「郷土資料及び地方行政資料の電子化に努める」ことが求められ、都道府県立図書館においても、当該都道府県内の図書館の求めに応じて、それらの図書館への支援に努める事項の一つとして「郷土資料及び地方行政資料の電子化に関すること」が位置づけられた(55)。
このように、国の図書館政策において位置づけが明確化されてきたことにも対応して、各地の図書館において、地域資料のデジタルアーカイブ化の取り組みが進み、その事例が報告されている(56) (57) (58) (59) (60) (61) (62) (63) (64)。
一方で、2009年度に国立国会図書館が行った調査によれば、デジタルアーカイブを運営している公共図書館はわずか10.7%であった(65)。2010年度には、先進的な取り組みを行っている公共図書館の事例をより詳しく調査し、同館の主催する「公共図書館におけるデジタルアーカイブ推進会議」において発表された(66) (67) (68)。さらに国立国会図書館は、資料デジタル化の手引を作成し(69)、図書館の担当者向けに資料デジタル化研修を実施するなど、公共図書館所蔵の資料デジタル化を支援する取り組みを進めている。
また、図書館員がさらに、デジタルアーカイブの知識・技能を身につけるために、新たな人材養成の仕組みが求められている。デジタルアーキビストなどといった新たな人材養成の理論や実践が示される一方(70) (71) (72) (73)、そもそもデジタルアーキビストという独立した身分は必要なく、司書や学芸員というすでに確立した身分のなかにデジタルアーキビストとしての素養を求めていくことになるとの意見もある(74)。
地域住民が自ら参加して、地域の情報を図書館に集約し、地域資料として保存、活用していくという実践は、滋賀県愛荘町立愛知川図書館での「町のこしカード」の実践(75) (76)、東京都日野市立日野図書館の「日野宿発見隊」の活動(77) (78)、大阪市立図書館の「思い出のこし」事業(79)などが知られている。
こうした取り組みは、最近では住民参加による地域情報のデジタルアーカイブ構築という活動に展開している。大阪府豊中・箕面地域における「北摂アーカイブス」(80) (81)、長野県小布施町立図書館(まちとしょテラソ)の活動(82) (83) (84)などがその例となろう。
住民参加によるデジタルアーカイブ推進の事例はこの他にもあるが(85)、上述した事例は、図書館の地域資料としての蓄積を目的にしていること、図書館を拠点とし、地域資料・情報を媒介にして、住民がまちづくりや地域コミュティ再生などを意識して活動していることに特徴があると考えられる。
&;
この他、各図書館におけるレファレンス事例(86) (87)、地域資料サービスの概要を紹介したものがある(88) (89) (90) (91) (92)。なお、『図書館雑誌』で毎号連載の「ウチの図書館お宝紹介!」では、各図書館の地域資料のコレクションが様々紹介されているが、ここでは割愛させていただいた。
この15年で、図書館の地域資料を取り巻く環境も様変わりしているが、担当職員に求められることは、地域のことをよく知り、資料の内容、取り扱いについての知識を身につけ、利用者の視点に立ったサービスを行うことであり、そのことは今後も変わらないであろう。
平山惠三は、利用者の立場で、全国各地の図書館を訪問し、それぞれの地域資料サービスについて感想を述べている。最後にその中の言葉を紹介し、本レビューを終えたい。
「地域資料の収集・保存は、公共図書館の必須の仕事というか、使命、責任だろうと思います。それはやればやっただけ結果が出ます。『一人ひとりがみんなのために、みんなが一人ひとりのために』と、今から二百年近く前にヨーロッパのあちこちで言われたようですが、これをラグビーや協同組合だけでなく、図書館でもいかがでしょうか。」(93)
(1) 三多摩郷土資料研究会編. 根本彰[ほか]. 地域資料入門. 日本図書館協会, 1999, 287p.
(2) 前掲. p. 18.
(3) 根本彰. 地域資料・情報論:図書館でどう扱うか. 図書館雑誌. 2001, 95(12), p. 922-924.(根本彰. 続・情報基盤としての図書館. 勁草書房, 2004, 199p. に所収)
(4) 根本彰. 情報基盤としての図書館. 勁草書房, 2002, p. 53-57.
(5) これからの図書館像 : 地域を支える情報拠点をめざして(報告). これからの図書館の在り方検討協力者会議, 2006, p. 19.
http://warp.da.ndl.go.jp/collections/NDL_WA_po_print/info:ndljp/pid/286184/www.mext.go.jp/b_menu/houdou/18/04/06032701/NDL_WA_po_009.pdf [159], (参照 2015-01-03
(6) 戸室幸治. 地域資料・情報サービスの本格的な展開を(上)公共図書館の中核的サービスに位置付けるために. みんなの図書館. 2010, (401), p. 35.
(7) 国立国会図書館関西館図書館協力課編.地域資料に関する調査研究.国立国会図書館, 2008, 201p. (図書館調査研究リポート, 9).
http://current.ndl.go.jp/report/no9 [160], (参照 2015-01-03).
(8) 前掲.p.8-13.およびp.1.
(9) 調査報告書:都道府県立図書館所蔵「郷土資料」に関する基礎的調査.2011年度, 成城大学研究機構グローカル研究センター研究資料室, 2013, 140p.
(10) 三多摩地域資料研究会編. 多摩地区公立図書館地域資料業務実態調査報告書:平成17年7月調査. 三多摩地域資料研究会, 2006, 174p.
(11) 地域資料(郷土資料・行政資料)所蔵状況等アンケート調査とそのまとめ. 大阪公共図書館協会研究委員会地域資料研究グループ, 2006. [19p].
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(13) 地域資料研究グループ. 「地域資料の収集・保管・提供に関するアンケート」による現状報告と情報共有の可能性について. 大阪公共図書館大会記録集. 2011, (第58回), p. 16-32.
(14) 地域資料研究グループ. 「地域資料のPR収集に関するアンケート」による現状報告と情報共有の可能性について. 大阪公共図書館大会記録集. 2013, (第60回), p. 60-86.
(15) 大阪府域児童サービスにおける地域資料実態調査報告. はらっぱ. 2013, (26), p. 5-12.
http://www.library.pref.osaka.jp/central/harappa/26p5.html [161] (参照2015-01-03).
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http://www.lib.pref.fukuoka.jp/hp/tosho/renkei/anketo/index.htm [162],(参照 2015-01-03).
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(18) 山田久. 資料紹介「地域資料入門(図書館員選書・14)」. ネットワーク資料保存. 1999, (57), p. 10.
(19) 山形敏貴. 平成11年度全国図書館大会報告:第11分科会「地域資料の保存と利用をめぐって?地方分権時代の図書館サービスのために」. ネットワーク資料保存. 2000, (58), p. 4-5.
(20) 全国図書館大会記録:第85回(平成11年度):テーマ図書館ルネサンス・滋賀. 全国図書館大会実行委員会. 2000, p. 243-254.
(21) 根本彰. 地域資料・情報論:図書館でどう扱うか. 図書館雑誌. 2001, 95(12), p. 922-924.
(22) 船木喜夫. インターネットによる地域資料の公開?秋田県立図書館の取り組み.図書館雑誌. 2001, 95(12), p. 925-927.
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(27) 蛭田廣一. 事例発表1:地域資料の時代?『地域資料入門』の編集と小平市立図書館の実践を通して見えてきたもの?. 全国公共図書館研究集会報告書. 2003, p. 10-12.
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(33) 宮原みゆき. 第9分科会:資料保存:地域資料をめぐる図書館とアーカイブズ?その現状と未?. 図書館雑誌. 2010, 104(12), p. 790.
(34) 平成22年度第96回全国図書館大会奈良大会記録:温故創新?平城遷都千三百年からの発信. 平成22年度第96回全国図書館大会奈良大会実行委員会事務局. 2011, p. 151-157.
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(36) 長谷川伸. 現場レベルで考えるMLA連携の課題?全国歴史資料保存利用機関連絡協議会関東部会総会講演 根本彰氏「地域資料とは何か?国立国会図書館調査に基づいて?」参加記. ネットワーク資料保存. 2008, (88), p. 5-6.
(37) 保垣孝幸. 自治体史編さん事業後の動向と自治体史の再検証:北区立中央図書館における地域資料の保存・活用.地方史研究. 2011, 61(6), p. 66-69.
(38) 松本宙子. 第267回定例研究会報告:北区図書館における地域資料の保存と活用. アーキビスト:全国歴史資料保存利用機関連絡協議会関東部会会報. 2013, (80), p. 7-9.
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(40) 戸室幸治. 地域資料・情報サービスの本格的な展開を(下)公共図書館の中核的サービスに位置付けるために. みんなの図書館. 2010, (402), p. 52-53.
(41) 白根一夫. こらむ図書館の自由:「市町村史」差別的記述の対応. 図書館雑誌. 2001, 95(12), p. 915.
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(43) 三多摩郷土資料研究会編. 根本彰[ほか]. 地域資料入門. 日本図書館協会, 1999, はしがき.
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(50) 蛭田廣一. 図書館は地域史研究の宝庫?地域資料の組織化と情報発信?. 地方史研究. 2010, 60(3), p .92-94.
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(52) 蛭田廣一. 公立図書館におけるアーキビスト的役割?小平市立図書館を事例として?. これからのアーキビスト. 知的資源イニシアティブ編. 勉誠出版, 2014, p. 69-80.
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(90) 竹田芳則. 事例発表:堺市立図書館における地域資料サービスについて. 大阪公共図書館大会記録集. 2011, p. 55-81.
(91) 大阪府立中央図書館における子どもへの地域資料サービスについて. はらっぱ. 2013, (26), p. 13-17.
(92) 長田瑞穂. 展示を用いた地域資料のPRについて. 図書館雑誌. 2013, 107(3), p. 700-701.
(93) 平山惠三. 公共図書館・地域資料供覧の空気?全国の図書館を訪ねながらの感想と希望?. 現在(いま)を生きる地域資料. 共同保存図書館・多摩. 2010, p. 27-28.
講演で「一人は万民のために、万人は一人のために」とのべている部分について、平山の後日追記で訂正している。
[受理:2015-02-16]
竹田芳則. 地域資料サービス. カレントアウェアネス. 2015, (323), CA1846, p. 22-26.
http://current.ndl.go.jp/ca1846 [165]
Takeda Yoshinori.
Local Collection Services.
This paper focuses on articles about local collection services in public libraries reported in Japan since 1999 when the Japan Library Association published “Chiiki Shiryo Nyumon” (lit. Introduction to Local Collections). Here I overview points of discussion over local collection services, examine research trends and challenges of the services, and introduce recent efforts for improving the services such as digital archiving of local collections.
リンク
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[2] http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_9107591_po_ca323colophon.pdf?contentNo=1&alternativeNo=
[3] http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_9107584_po_ca1840.pdf?contentNo=1&alternativeNo=
[4] http://current.ndl.go.jp/ca1812
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