カレントアウェアネス・ポータル
Published on カレントアウェアネス・ポータル (https://current.ndl.go.jp)

ホーム > カレントアウェアネス-E > 2013年 (通号No.230-No.251 : E1384-E1520) > No.235 (E1416-E1421) 2013.04.11 > E1419 - 2013年CEAL年次大会・NCC公開会議・AAS年次大会<報告>

E1419 - 2013年CEAL年次大会・NCC公開会議・AAS年次大会<報告>

  • 参照(7323)

カレントアウェアネス-E

No.235 2013.04.11

 

 E1419

2013年CEAL年次大会・NCC公開会議・AAS年次大会<報告>

 

 2013年3月18日から3月21日にかけて,米国サンディエゴにおいて東亜図書館協会(CEAL)年次大会と北米日本研究資料調整協議会(NCC)公開会議が開催され(E775 [1],E1181 [2]参照),続いて3月22日から3月24日まで,アジア学会(AAS)の年次大会が開催された。

 今回のCEAL年次大会の特徴は,学術分野におけるオープンアクセスを共通のテーマとして,東アジア研究と図書館の発展に向け,多様な視点から問題提起を行ったことにある。

 CEAL年次大会では,総会に先立ち,日中韓(CJK)資料の書誌・典拠作成についてのRDAの適用,中国の地方誌についての各ワークショップが行われ,続いて,二部構成の総会が行われた。

 総会の第一部のオープンセッションでは,まず,インターネットアーカイブ(Internet Arhicve;IA)の創始者であるケール(Brewster Kahle)氏がIAのウェブサイト,音声やビデオなどの多様なメディアのアーカイブ事例を紹介しながら,資料へのユニバーサルなアクセス整備を実現していくことの必要性を訴えた。次いで,知的財産権についての権威であるカリフォルニア大学バークレー校のサミュエルソン(Pamela Samuelson)氏から,オープンアクセスに関わる著作権の現状と課題が示された。ネットワーク情報連合(Coalition for Networked Information)の事務局長であるリンチ(Clifford Lynch)氏は,資料のデジタル化のメリットを挙げ,その可能性を示す一方で,ボーンデジタル資料の課題についても指摘した。次いで,日本,中国,韓国の各国におけるオープンアクセスの状況を紹介するセッションが開催された。第一部の最後のセッションではオープンアクセスの多面性を切り口に,公開オンライン講座,コロンビア大学の牧野コレクション(映画史に関する資料),中国の学術機関の機関リポジトリについての報告があった。

 総会の第二部では,CJKの各資料,公共サービス,整理技術の各委員会によるセッションが行われた。そのうちの日本資料委員会はNCCとの共催による公開会議を行い,会議の前半では,日本の学術情報へのアクセスをテーマに,ワシントン大学東アジア図書館から古典籍の目録作成,国立情報学研究所から日本の機関リポジトリの現状が報告された。そして筆者も国立国会図書館(NDL)のオンライン資料収集,学位規則の改正に伴う博士論文の収集とアーカイブ(E1418 [3]参照),電子化資料の提供状況について報告した。会議後半では,佐藤翔氏が日本の機関リポジトリについての質問調査やアクセス分析に基づくこれからの電子図書館や図書館員の役割についての提案を行い,次いで大向一輝氏がCiNii Books,電子リソース管理データベース(ERDB),ジャパンリンクセンターの最新動向の紹介を行った。その後,土屋俊氏を加えた3名をパネリストとしてディスカッションが行われ,著作権への認識の違いやILLのあり方について活発な議論が行われた。

 AASの年次大会では400弱ものパネルが開催されたが,著者は図書館員向けの研修事業を担当していることから,日本を学べるオープンアクセスの情報が紹介された“Open Source,Open Book,Open Classroom”(PANEL158)を興味深く拝聴した。ここでは,NDLの堀内寛雄司書監が報告した戦前期東アジア関係の憲政資料のほか,日本研究の入門者向けの教材,青空文庫,国立国会図書館サーチ,東日本大震災デジタルアーカイブが取り上げられた。一部はNCCのウェブサイト内の,“A Quick Introduction to the NCC”でも,簡単な解説付きで紹介されている。

 日本から参加した筆者に対し,米国の多くの司書から,中韓と比較して日本の学術コンテンツの電子化が遅れていること,また,閉鎖的であることに対し,厳しい意見をいただいた。一方で,博士論文がインターネット公開されることについては,これを評価する声が多く寄せられ,日本の発信する学術コンテンツへの期待の高さを改めて感じた。著作権やコスト負担など難しい課題も多いが,海外も含め可能な限り「オープン」に学術コンテンツが利用できるよう関係者が取り組んでいくことが求められよう。

(関西館図書館協力課・篠田麻美)

Ref:
http://www.eastasianlib.org/CEAL/AnnualMeeting/CEALMeetingSchedule/CEAL2013.htm [4]
http://www.eastasianlib.org/CEAL/AnnualMeeting/plenary/Presentations/2013/Plenary2013.pdf [5]
http://www.eastasianlib.org/cjm/2013_CJM_NCC_Program.htm [6]
http://www.nccjapan.org/ [7]
http://guides.nccjapan.org/quickIntro [8]
http://www.asian-studies.org/Conference/index.htm [9]
E775 [1]
E1181 [2]
E1418 [3]

カレントアウェアネス-E [10]
学術情報流通 [11]
オープンアクセス [12]
日本情報 [13]
機関リポジトリ [14]
日本 [15]
米国 [16]
国立図書館 [17]
大学図書館 [18]
議会図書館 [19]
国立国会図書館 [20]

Copyright © 2006- National Diet Library. All Rights Reserved.


Source URL: https://current.ndl.go.jp/e1419#comment-0

リンク
[1] http://current.ndl.go.jp/e775
[2] http://current.ndl.go.jp/e1181
[3] http://current.ndl.go.jp/e1418
[4] http://www.eastasianlib.org/CEAL/AnnualMeeting/CEALMeetingSchedule/CEAL2013.htm
[5] http://www.eastasianlib.org/CEAL/AnnualMeeting/plenary/Presentations/2013/Plenary2013.pdf
[6] http://www.eastasianlib.org/cjm/2013_CJM_NCC_Program.htm
[7] http://www.nccjapan.org/
[8] http://guides.nccjapan.org/quickIntro
[9] http://www.asian-studies.org/Conference/index.htm
[10] https://current.ndl.go.jp/taxonomy/term/2
[11] https://current.ndl.go.jp/taxonomy/term/183
[12] https://current.ndl.go.jp/taxonomy/term/42
[13] https://current.ndl.go.jp/taxonomy/term/97
[14] https://current.ndl.go.jp/taxonomy/term/160
[15] https://current.ndl.go.jp/taxonomy/term/29
[16] https://current.ndl.go.jp/taxonomy/term/31
[17] https://current.ndl.go.jp/taxonomy/term/34
[18] https://current.ndl.go.jp/taxonomy/term/37
[19] https://current.ndl.go.jp/taxonomy/term/357
[20] https://current.ndl.go.jp/taxonomy/term/150