カレントアウェアネス・ポータル
Published on カレントアウェアネス・ポータル (https://current.ndl.go.jp)

ホーム > カレントアウェアネス-E > 2012年 (通号No.208-No.229 : E1253-E1383) > No.215 (E1290-E1295) 2012.05.24 > E1295 - 2012年IIPC総会及びワーキンググループ<報告>

E1295 - 2012年IIPC総会及びワーキンググループ<報告>

  • 参照(7381)

カレントアウェアネス-E

No.215 2012.05.24

 

 E1295

2012年IIPC総会及びワーキンググループ<報告>

 

 国際インターネット保存コンソーシアム(IIPC)(CA1664 [1]参照)の総会及びワーキンググループ等関連会議(E847 [2],E995 [3],E1185 [4]参照)が,米国議会図書館(LC)を会場として, 2012年4月30日から5月4日にかけて開催された。IIPC非加盟機関も含め約160人が参加し,国立国会図書館(NDL)からは筆者が参加した。

 IIPC総会に先立ち,4月30日に「ウェブアーカイブの広範な価値:実証された利用」と題したオープンセッションが行われた。過去のオープンセッションはIIPC加盟機関のウェブアーカイブ事業を研究者等に広く紹介することに主眼があったが,今回は研究者によるウェブアーカイブの利用に力点が置かれた。これにあわせてサブテーマも,(1)研究者のユースケース,(2)アーカイブ利用のトレンド,(3)ビジネスでの利用,(4)公共分野での利用,に設定され,様々な事例が報告された。例えば,米国ジョージタウン大学のホフマン(Bruce Hoffman)教授からは,テロリストが関係するウェブサイトのほとんどはGoogle検索では発見できないが,ウェブアーカイブを調査することでそれらを割り出し,テロリストの動向を監視しているとの報告がなされた。

 5月1日にIIPCの議長であるLCのアンダーソン(Martha Anderson)氏のスピーチで総会の幕が開いた。アンダーソン氏は,IIPCの新しいロゴを発表した後,ソーシャルネットワーク等で生成されるビッグデータやモバイル端末向けのコンテンツ等の収集をIIPCは強化しなければならないと述べた。その後は,昨年の活動結果と今年の活動計画の報告がなされ,新規にIIPCに加盟したコロンビア大学,ジョージワシントン大学,エストニア国立図書館,ロスアラモス国立研究所からのプレゼンテーションや,Mementoプロジェクト(CA1733 [5]参照)への協力等IIPCのプロジェクトの進捗状況報告が続いた。総会の後半はNDL,LC,英国図書館(BL)等による活動報告であった。NDLからは,東日本大震災の記録にかかる被災自治体サイト等の収集やインターネットアーカイブ(IA)及びハーバード大学エドウィン・O・ライシャワー日本研究所との連携協力,東日本大震災アーカイブ構築の取組について紹介したほか,2012年度に実施するウェブアーカイブの差分収集機能の開発,2011年9月に完了したウェブアーカイブ用全文検索エンジンNutchWAXの多言語対応に続くIIPCへの新たな貢献に向けた検討状況について報告した。

 5月2日には「収集」「保存」「提供」の各ワーキンググループが開催された。NDLが参加する「提供」ワーキンググループでは,2012年7月に開催されるロンドンオリンピック関連サイトの共同収集プロジェクトについて報告があった。4月末現在でNDLを含む23のIIPC加盟機関から700件程度のURLが選定され,4月下旬からIAが対象サイトの収集を開始したとの報告があり,収集後のアーカイブの提供方法については今後の検討課題とされた。

 5月3日及び4日にはワークショップ等が開催された。「未来のウェブの収集」ワークショップでは,最初にIAのカーペンター(Kris Carpenter)氏が,従来のロボットでは収集が困難なコンテンツとして,ストリーミング配信される音声・動画,ユーザ認証を経て利用可能となるソーシャルネットワークの情報,Googleマップのように配信サーバ側で動的に作り出される情報等を挙げた。その後,IAやBL等のウェブアーカイブの技術者によって議論がなされ,収集の困難さが浮き彫りになったが,これらのコンテンツは発信者にセルフアーカイブしてもらい,ウェブアーカイブ実施機関はDropboxのようなクラウド上の格納場所を提供すればよいのではとのアイディアも出された。

 IIPC総会等一連の会議を通じて,約15年前にIAが最初にウェブアーカイブを行った頃は,ウェブサイトが消滅する前に「収集」することに力点が置かれていたが,ウェブアーカイブの蓄積が進んだ今日では,いかに活用されるかに各国の活動の力点が移っていることが認識できた。

 次回のIIPCワーキングはiPRES(E990 [6],E1109 [7]参照)と併せて2012年10月にカナダ・トロントで開催される予定である。2013年の総会の開催地は未定である。

(関西館・柴田昌樹)

Ref:
http://netpreserve.org/events/2012ga.php [8]
http://blogs.loc.gov/digitalpreservation/2012/05/iipc12-a-week-of-web-archiving/ [9]
http://explore.georgetown.edu/people/brh6/ [10]
http://lanlsource.lanl.gov/ [11]
http://jdarchive.org/ [12]
CA1733 [5]
CA1664 [1]
E1185 [4]
E1109 [7]
E995 [3]
E990 [6]
E847 [2]

カレントアウェアネス-E [13]
災害 [14]
ウェブアーカイブ [15]
米国 [16]
国立図書館 [17]
議会図書館 [18]
LC(米国議会図書館) [19]
国立国会図書館 [20]
Internet Archive [21]

Copyright © 2006- National Diet Library. All Rights Reserved.


Source URL: https://current.ndl.go.jp/e1295#comment-0

リンク
[1] http://current.ndl.go.jp/ca1664
[2] http://current.ndl.go.jp/e847
[3] http://current.ndl.go.jp/e995
[4] http://current.ndl.go.jp/e1185
[5] http://current.ndl.go.jp/ca1733
[6] http://current.ndl.go.jp/e990
[7] http://current.ndl.go.jp/e1109
[8] http://netpreserve.org/events/2012ga.php
[9] http://blogs.loc.gov/digitalpreservation/2012/05/iipc12-a-week-of-web-archiving/
[10] http://explore.georgetown.edu/people/brh6/
[11] http://lanlsource.lanl.gov/
[12] http://jdarchive.org/
[13] https://current.ndl.go.jp/taxonomy/term/2
[14] https://current.ndl.go.jp/taxonomy/term/72
[15] https://current.ndl.go.jp/taxonomy/term/326
[16] https://current.ndl.go.jp/taxonomy/term/31
[17] https://current.ndl.go.jp/taxonomy/term/34
[18] https://current.ndl.go.jp/taxonomy/term/357
[19] https://current.ndl.go.jp/taxonomy/term/142
[20] https://current.ndl.go.jp/taxonomy/term/150
[21] https://current.ndl.go.jp/taxonomy/term/169