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現在,日本の公共図書館においても,メールやウェブフォームを中心とするデジタルレファレンスサービス(DRS)の提供が進んでおり,2004年9月時点で,実に7割以上の都道府県立図書館がそのウェブページ上にアクセスポイントを開設している(1)。しかし,DRSを提供することの社会的・歴史的意義や,提供によってもたらされる効果については,必ずしも大局的に捉えられてはいない。個々のサービスの品質や実質的規模も明らかではなく,また組織の枠組みを超えた協同型のDRSは実施されていない。
このような現状認識を踏まえ,本稿では,英国公共図書館の協同DRSであるAsk a Librarian (UK)(2)について,その業務モデルと経緯を紹介するとともに,特に協同事業としての課題を紹介する。
Ask a Librarian (UK)の業務モデルは,協同型のDRSとして,シンプルで一般的なものである。質問は,ウェブフォームから受け付けられ,主題に関わらず当番の図書館に送付される。約80の参加館の規模は大小様々であるが,日替わりで順番に当番館となる。当番館は,基本的にすべての質問を自館の責任において処理する。しかし,蔵書の限界などの理由により回答が困難な場合には,参加館職員が参加しているディスカッション用のメーリングリストに質問を回送し,協力を仰ぐことができる。また,資料と専門性の範囲を広げるため,例えば国立電子健康図書館(NeLH;CA1536 [3]参照)のような他の館種の図書館とも協力提携している。質問応答のすべての交信記録は,アーカイブされ,事後の参照と,評価分析用に活用される。
この業務モデルにより,24時間365日送付されてくる質問すべてに対し,48時間以内の応答を保証し,実際にはほとんどが12時間以内の応答を実現している。
Ask a Librarian(UK)は,1997年にEARL(Electronic Access to Resources in Libraries)コンソーシアム(3)のプロジェクトの1つとして立ち上げられた。
1997年は英国の教育・文化政策において重要な年である。図書館を管轄する省庁は文化・メディア・スポーツ省へと改組され,図書館行政は,他の資料保存機関である文書館や博物館と同一の部門で扱われることとなった。7月には『学習社会における高等教育』(4),通称デアリング報告が発表され,その後の生涯学習社会創設を目指す政策の拠り所となった。また10月には図書館情報委員会により公共図書館の情報ネットワーク構想についての報告書『新しい図書館−市民のネットワーク』(5)が発表された。この後,本格的にネットワークインフラの整備,図書館の通信回線料の割引,図書館職員の情報技術活用のための再教育,資料の電子化促進など,一連の施策が実現することとなる。
Ask a Librarian (UK)は,ほとんどの図書館員が個人用のメールアドレスを保有していない時代に,従来の紙メディアの情報源とウェブ情報資源の双方に通じた図書館員へのアクセス手段をウェブ上に提供することを目指して始められた先駆的な事業である。
サービス開始当初は,急激な業務負担の増加を懸念し,利用促進等の広報活動には慎重であった。一方で,英国の公共図書館はこの時期に,上述の施策の下,信頼ある情報源を自らの手で構築し,またそれ以外の情報源に関する知見も蓄積し,職員の中に必要な理解とスキルを醸成していった。その結果,2年後の1999年には,Virtual Reference Deskにより優秀なDRSの実例として表彰された(6)。大学教授から児童生徒,ビジネスパーソンからアマチュア歴史研究家に至るまで,幅広い層から多くの利用を獲得し,昨今の検索エンジンの向上やGoogle Answers(E128 [4]参照)のような質問回答コミュニティーの拡大の中にあっても,図書館員による人的支援が市民の必要とする重要なサービスであることを示したのである。
2001年にEARLが「市民のネットワーク」プロジェクトに道を譲る形で解散した後は,東部イングランド地域の図書館コンソーシアムであるCo-Eastが,博物館・図書館・文書館国家評議会のバックアップのもと,このサービスのホスティングと運営管理を行うこととなった。Co-Eastを構成する主要な図書館行政庁は,Ask a Librarian (UK)の立ち上げ当初からのメンバーである。
2002年春から,非同期型では賄いきれない情報ニーズに対応し,サービスの利用方法の選択肢を広げるため,同期型DRSの提供の検討を開始した。そして翌2003年3月から9月にかけて,Tutor’s.comのVirtual Reference Toolkit(VRT)を使用して,試験的にAsk Live!としてサービスの提供を行った(7)。VRTは,チャット機能はもちろんのこと,応答待ちのユーザを管理する機能,相手のブラウザを操作する機能,各種フォーマットのファイルを共有する機能,セッション中のすべての交信記録がアーカイブされ,セッション切断後には電子メールでそれらが自動配信される機能など,ウェブベースで十分なレファレンスサービスを行うための多様な機能を備えた,同期型DRS用のミドルウェアである(8)。
英国では,労働党政権が,教育を重要な柱に据え,社会的包含政策を進めている。また情報技術の発達,普及に牽引されつつ,市民からの情報ニーズも多様化,高度化している。公共図書館にとって,図書館サービスの対象から排除されていた人々を包含し,すべての人の図書館になることは重要な課題であり,また既存の利用者層に対しても,地域情報,行政情報,健康・医療情報,法律情報,ビジネス情報など,どの主題においてもより高度な情報サービスを提供することが課題となっている。
この文脈において,Ask a Librarian(UK)のように,的確な情報技術を援用し,協同でレファレンスサービスを提供することの意義は大きいはずだ。予算等の最適な配分,主題の網羅性とそれぞれの主題に対する専門性の確保,経験と情報の共有による個々の職員の能力向上と職能集団全体としての向上,規模の確保による安定的なサービスの提供と利用促進のためのアピール度の強化など,協同でこその効果がある。また,図書館サービス全体の高度化,さらにはより高いレベルでの政策の策定においても,実際に協同で1つのサービスを実施していることの効果は小さくないだろう。
協同の効果を享受し推進力へと変換するためには,相応の運営管理が必要である。Co-Eastの地域統括マネージャーを務め,この事業を指揮するベルービー(Linda Berube)は,Ask a Librarian (UK)の紹介文(9)の中で,その運営管理の多様な構成要素を指摘した上で,新規事業,とりわけ大規模な事業に共通する課題について整理している。すなわち,職員のトレーニング,利用者オリエンテーション,評価と影響分析,プライバシーや法的な問題,利用促進活動を列挙している。特に職員養成と評価の問題は,粘り強い取組みを要する重要なテーマであろう。
職員のトレーニングについては,日常業務において必ずしも標準的なレファレンスサービスのあり方に通じていない職員や新規参加者に対し,質問に回答する最低限のスキルとマナーの訓練を施すことが不可欠なこととしている。ウェブフォーム型のサービスは,文書レファレンス等と同様,利用者から調査プロセスを監視されることはなく心理的プレッシャーは少ないものだが,それでもサービスの提供にとまどいを持つ職員も少なくない。一方で,オンラインであっても良質なレファレンスサービスは従来と本質的に異なるものではないと捉え,Ask a Librarian (UK)を職員の研修機会として積極的に捉える図書館もある。そのため運営主体による研修へのサポートは重要な要素となる。
また,評価や影響分析については,利用者評価や利用者への影響のみではなく,他のサービスへの影響,職員の業務時間への影響なども考えられなければならないとしている。新しいサービス領域であるDRSが根幹的業務として定着するためには,比較可能で信頼できる統計や妥当な評価手法,品質規準の策定が必要であり,英米諸機関の協力のもと,大規模な調査研究が進んでいる(10)。特に大規模事業には,単なる成果の享受ではなく,標準化に向けての積極的な関与も期待される。
様々な協同事業の実績を持つ英国の図書館界が取り組むAsk a Librarian(UK)において、このような課題認識が示されていることは,示唆に富む。
本稿では,2003年度末までのAsk a Librarian (UK)の動向と協同事業としての課題について紹介した。
英国の公共図書館は,ニーズを先取りし新しいサービスの準備を着実に進め,その過程で技術的な経験を共有知として蓄積してきた。ベルービーは,この公共図書館の現状に対し,図書館が情報の発見や新しいコミュニケーション手段の利用において,リーダーシップを取り,指導的役割を果たすべき立場にあるとの認識を示している。
Ask a Librarian (UK)の参加館を中心とする英国の公共図書館は,2005年には同期型の協同DRSである「市民のネットワーク質問サービス」を開始する予定である(11)。情報ニーズを持つ市民が,いつでも,どこからでも質の高い人的資源,情報資源にアクセスできるよう,さらなる改善を図っていくだろう。今後の展開が楽しみである。
関西館事業部電子図書館課:依田 紀久(よだ のりひさ)
(1) 日本図書館協会. “参考: 公共図書館のWebサービス”. (online), available from < http://www.jla.or.jp/link/public2.html [5] >, (accessed 2004-10-29).
(2) Ask a Librarian. (online), available from < http://www.ask-a-librarian.org.uk/index.html [6] >, (accessed 2004-10-29).
(3) EARLは,電子的な参考資料の整備や蔵書の抄録データベースの協同構築を精力的に進め,また研究開発や技術情報の提供などの活動を実施した。
(4) National Committee of Inquiry into Higher Education. Higher education in the learning society: report of the national committee. London, 1997. (online), available from < http://www.leeds.ac.uk/educol/ncihe [7] >, (accessed 2004-11-11).
(5) 英国図書館情報委員会情報技術ワーキング・グループ. (永田治樹ほか訳) 新しい図書館-市民のネットワーク-. 東京, 日本図書館協会, 2001, 131p.
(6) VRD Exemplary Services. (online), available from < http://www.vrd.org/AskA/exemplary_services.shtml [8] >, (accessed 2004-10-29).
(7) Berube, Linda. Ask Live! UK public libraries and virtual collaboration. Library and Infromation Research. 27(86), 2003, 43-50.
(8) VRTの製品情報は以下のサイトを参照;Virtual Reference TOOLKIT. (online), available from < http://www.vrtoolkit.net/Virtual_prod_serv.htm [9] >, (accessed 2004-10-29).
(9) Berube, Linda. Collaborative digital reference: an Ask a Librarian (UK) overview. Program: electronic library and information systems. 38(1), 2004, 29-41.
(10) 品質評価に関しては,シラキューズ大学のランケス(R.David Lankes),フロリダ州立大学のマクルーア(Charles R. McClure)らにより,調査研究プロジェクトが行われている。Assessing Quality in Digital Reference. (online), available from < http://quartz.syr.edu/quality/ [10] >, (accessed 2004-10-29).
(11) 'Can We Help You?' - 24/7 Librarians. The People’s Network. 2004-10-04. (online), available from < http://www.peoplesnetwork.gov.uk/news/pressreleasearticle.asp?id=345 [11] >, (accessed 2004-10-29).
依田紀久. Ask a Librarian(UK)の概要と協同事業としての課題. カレントアウェアネス. 2005, (282), p.2-4.
http://current.ndl.go.jp/ca1538 [12]
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2000年5月,デンマーク議会で図書館法改正案が可決され,名称も「図書館サービス法」へと変更された(CA1390 [17]参照)。この改正では,一般的な図書館サービスの無料原則を再確認しつつも,一方では,すぐれた価値をもつ特別なサービスに対して,図書館が利用者に料金を請求できるという内容が加えられた。デンマークでは,すでに資料の延滞やビデオ貸し出し等に対しての課徴金は認められていたが,この改正により,公共図書館が新たに有料の特別サービスを提供することが認められたのである。
この図書館サービス法は,公共図書館が新たな分野の様々な有料サービスを提供する道を開いた。本稿では,2003年にC. G. ヨハンセン(Carl Gustav Johannsen)氏によって行われた調査を参考に,デンマークの公共図書館で導入された有料サービスの内容とその成果を紹介する。
新たに認められた有料の特別サービスに関して,新法の中では,具体例のようなものは特に提示されてはいない。そのため,この新たな有料サービスを導入する場合は,各々の図書館が市場のニーズに即した独自のサービスを考案する必要がある。
こうした事情を反映して,デンマークの公共図書館で新たに想定・実施された有料サービスは多岐にわたる。提供されるサービスは,たとえば,コンサルタント,ウェブデザイン,データベース開発支援,ビジネス情報調査,ナレッジマネジメント,チェンジマネジメント,マーケティング,教育カリキュラムの開発,遠隔研修,施設の貸与,専門図書館機能の代行,貸出期限の早期お知らせサービス(期限が過ぎると延滞料金が発生する理由から),資料配達サービス,などである。いままで公共図書館で扱われてきたようなサービスと比べると,サービスの多様性や対象範囲の広さがうかがえ,また,必要とされるサービスレベルが高度なものも多い。
また,これらの有料サービスの顧客層については,他の図書館や公的機関が主なターゲットとして浮上してきている点に新たな傾向がある。そして,今まで有料サービス業務の主要顧客と考えられてきた民間会社や個人利用者の比重は相対的に低下しているようである。
その背景には,図書館が公的機関の事情や特殊なニーズに精通していることや,自らが調査,実施してきた経験を反映した実践的なコンサルタントができるという事情がある。これは,図書館の有料サービス業務におけるコアコンピタンスであり,したがって,図書館・公的機関の顧客層に対しての有料サービスは,民間コンサルタント会社が提供するようなサービスとは必ずしも競合しないとヨハンセン氏は指摘している。
以上をまとめると,デンマークで導入された有料サービスは,各図書館が独自に考案できるためにサービスの内容が多岐にわたる,図書館・公的機関を主なターゲットとしている,という点に大きな特徴がある。
2000年から2003年の間にデンマークの公共図書館で実際に行われた有料サービスの結果を見ると,財政的にはまだ目立った成果が現れていない。デンマーク王立図書館の推計によれば,2002年にデンマークの全公共図書館で有料サービスから生み出された収入の合計は,約300〜400万DKK(デンマーク・クローネ:約5,460万〜7,280万円)であった。これは,1999年から2003年の間に6千万DKK(約11億円)の図書館収入増加を目指すという国家方針から考えれば,期待はずれの結果といえる。
また,新しい有料サービスを提供する図書館を支援する目的で設立された組織である有料図書館サービスセンター(Center for betalbare ydelser:CBY)が行ったアンケート調査(回答館:90)によれば,現実に有料サービスから収入を生み出しているのは,回答中のわずか3分の1であり,83パーセントもの回答館が,この有料サービスの市場を「困難」「見込みがない」と否定的にとらえている。
財政結果から見ると,新しい有料サービスが図書館経営に有用な成果をもたらしているとはいいがたい。しかし,実際に有料サービスを提供している図書館員たちは,低迷する収支結果にも関わらず,有料サービスの提供を続けたいと主張する。彼らは,個人の能力開発,モチベーションの維持,やりがいなどの点から,有料サービスが図書館員にとって重要な意味を持つと認識しているのである。
実際,コンサルタントやウェブデザイン,高度なビジネス情報調査といった業務が,従事する図書館員の能力を高め,モチベーションの増加や高い責任感の創出といった効果を生むことは十分理解できる。そして,図書館員個々の成長は,サービス品質の向上,人材開発,チェンジマネジメントの進展といった図書館組織全体の成長へとつながる。これは,有料サービス業務を行っていく上での,収入以外の大きな価値であるといえる。
有料サービス導入による組織全体への好影響を考えると,デンマークでの試みはまずは一定の成果を上げているといえる。しかし一方では,課題も残されている。
ヨハンセン氏の調査では,現在,公共図書館で有料サービスに従事している図書館員について,有料サービス業務に意欲的に取り組んでいる反面,コスト意識と利益指向が欠如している点が指摘されている。さらに,公共図書館の経営者の間では,有料サービス業務の推進は,必ずしも優先度が高い事業とはなっていない。こうした収入形成への無関心な態度は,有料サービスに関しての現在の乏しい財政結果にも結びついているといえよう。加えて,有料サービス事業の今後に関しては,民間企業のサービス参入による競合や,図書館同士の競合による図書館組織の盛衰といったネガティブな見通しも考えられる。
新法では,有料サービス業務について,3年以上にわたって赤字を計上してはならないと規定されている。貧弱な収支報告が継続すれば,この種の有料サービスへの否定的な意見も生まれるだろう。組織力向上や図書館員のやりがいなどのためだけに有料サービスを継続させることに,世論のコンセンサスが得られるかは疑問が残る。そのため,今後は,収入向上のためのコスト意識改革,ニーズの適切な把握やサービス品質の向上等の経営努力を行い,財政的な成果を積み上げていくことも必要となる。
とはいえ,デンマークにおける事例は,有料サービス業務がもたらす,収入確保以外の注目すべき効果を新たに示している。こうした効果から醸成されていく組織の人的資源の多様性は,図書館が通常のサービスを行う上でも有益であり,また,図書館が今後新たな戦略を生み出していく際の素地にもなりえる。有料サービスイコール収入目的という単純な構図は,今後変化していく可能性があり,そして将来,組織の発展を主眼とした戦略的な有料サービス,という新たな定義のサービスを図書館が導入していく光景も想像できるのではないだろうか。
収集部外国資料課:岡田 悟(おかだ さとる)
Ref.
Johannsen, Carl Gustav. "Money makes the world go around" - fee-based services in Danish public libraries 2000-2003. New Library World. (1196/1197), 2004, 21-32.
Johannsen, Carl Gustav. Managing fee-based public library services: values and practices. Library Management. 25(6/7), 2004, 307-315.
Centre for Marketable Library Services. (online), available from < http://www.cby.dk/marketablelibrary.htm [18] >, (accessed 2004-09-17).
Nielsen, Lotte Duwe. Marketable Library Services (CBY). PULMAN Training Workshops, 2002.9. (online), available from < http://www.cby.dk/PULMANseptember2002.pdf [19] >, (accessed 2004-09-17).
岡田悟. デンマークの公共図書館における新たな有料サービス. カレントアウェアネス. 2004, (282), p.4-5.
http://current.ndl.go.jp/ca1539 [20]
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フィリピンでは,1990年9月の共和国法第6966号によって,司書が専門職として定義され,司書の職務内容が法制化された。その結果,新規採用の司書は,図書館情報学分野の学位取得と国家試験合格が義務になり,司書職は他の専門職と同列に扱われるようになった。通称フィリピン・ライブラリアンシップ法で知られる同法は,フィリピンにおける司書の専門性に対する認識を確固たるものにした。法制化までの背景には,第2次世界大戦以前の宗主国であった米国の影響と,政界へ多大な影響力を持つフィリピン大学を中心とした司書教育制度,そして専門職団体の力がある。
本稿では,アジアで他に例を見ない司書の専門職性を定義したフィリピン・ライブラリアンシップ法を中心に,フィリピンにおける司書教育と司書制度について紹介する。
フィリピンにおける司書教育は,1914年にフィリピン大学で2人の米国人司書によって開講された図書館学(library economy)に関する講義が始まりである。初期の受講生たちはその後米国に渡り,帰国後フィリピンにおける司書教育に貢献する。1916年には同じくフィリピン大学に図書館学の理学士コースが開講され,1922年に学部として独立する。1932年に,サント・トーマス大学教育学部の選択科目として図書館学が導入されたのを皮切りに,フィリピン大学以外の大学でも司書教育が開始される。第2次世界大戦後は,1962年にフィリピン大学において図書館学修士課程が開始され,その後他大学でも同修士課程が始まる。1978年にはフィリピン大学において,東南アジア諸国内で初めて情報専門職養成の大学卒業者対象の講座が開始された。このようにフィリピンにおける司書教育は一貫して,フィリピン大学の主導のもとに行われている。またフィリピン大学においては,1962年にすでに司書に教員の地位が保証されている。
フィリピンで最も古い図書館関係専門職団体は,1923年に設立されたフィリピン図書館協会(Philippine Library Association)である。同協会は,軍人・駐在員夫人などの米国人女性達が1900年に結成した在マニラ米国貸出図書館協会(American Circulating Library Association of Manila)を前身とする。フィリピン図書館協会は1925年以降年次総会を開いているが,それらの会議の主賓として,ケソン大統領(1935〜1942年)や,オスメニャ副大統領(1935〜1942年)が招かれており,司書職に対する賛辞を述べている点を見ると,設立当初から同団体の政治性の高さがうかがわれる。日本占領期は活動を中止していたが,第2次世界大戦後活動を再開する。戦後は1954年にフィリピン専門図書館協会(Association of Special Libraries in the Philippines)が設立され,フィリピン公立図書館協会(Public Libraries Association of the Philippines;1959年),フィリピン図書館学教諭協会(Philippine Association of Teachers of Library Science;1964年)など各種専門職団体が次々と設立される。1966年,フィリピン図書館協会はエバ・エストラーダ・カラウ上院議員が提出したフィリピン国内におけるライブラリアンシップ実務規定に関する法案916を支持したが,成立しなかった。そのため,フィリピン図書館協会のメンバーを中心に1990年のフィリピン・ライブラリアンシップ法成立まで24年間,フィリピンにおける専門職としての司書の確立を目指したロビー活動が展開された。
フィリピン・ライブラリアンシップ法では職業規制委員会(Professional Regulation Commission)下に司書評議会(Board of Librarians)を設立することを規定しており,司書職は他の専門職と同列に扱われている。司書評議会は,司書教育および司書のレベル保持に対して全面的な責任を負う。同法ではまた,司書を国家試験合格者であると定義し,司書の専門分野の内容として,(1)記録情報の組織,普及,保存,修復,(2)図書館やそれに類する機関の組織と管理に関する助言を与えるなど専門的サービスの供給を有料もしくは無料にて行うこと,(3)図書館情報学分野の教授,(4)顧客用の書類や報告書の契約や検証,を挙げている。
司書資格を得るためには,以下の基準を満たした上,試験に合格する必要があると定められている:(1)フィリピン共和国民である,(2)20歳以上である,(3)心身ともに健全である,(4)政府に認められた高等教育機関から図書館情報学士または図書館情報学修士を取得している。
試験内容と比重は以下の通りで,全体の正答率75%以上,かつすべての科目の正答率が60%以上であることが合格の条件である。
試験合格者は3年期限の免許を授与される。
フィリピン・ライブラリアンシップ法は,2003年12月に共和国法第9246号をもって改正された。新法の最大の特徴は,司書の職務としてマルチメディア形式で提供される情報の選択・収集・レファレンスが追加された点である。これに合わせて,試験内容にもマルチメディア情報資料の収集・受入や,情報サービスの運営管理など,こうした資料の取り扱いに必要な知識を問う科目が設けられるなどの変化があった。同時に,各科目の正答率の条件は50%に下げられた。
本稿では,フィリピンにおける司書の専門性を定義した共和国法第6966号成立の背景と同法の内容を見てきた。同法成立後,現在までに3,000人が司書免許を取得した。大学図書館に比べると,公立図書館・学校図書館での専門司書の割合はまだまだ不十分であるが,長い目でみればゆるやかであっても確実に浸透していくだろう。司書の専門性の法的な位置づけを勝ち取ったフィリピンのケースが,今後この国での司書職と図書館の発展にどう寄与していくのか見据えたい。
京都大学東南アジア研究所:北村 由美(きたむら ゆみ)
Ref.
Arlante, Salvacion M. et al. The professionalization of librarians: A unique Philippine experience. Asian Libraries. 3(2), 1993, 13-22.
Cruz, Prudenciana C. Developments in libraries of the Philippines: A country report. Country Report Submitted to CONSAL 2003 in Brunei, 2003. (online), available from < http://www.consal.org.sg/webupload/forums/attachments/2478.pdf [25] >, (accessed 2004-10-26).
“Board for Librarians Resolutions No. 06 Series of 2004: Percentage Weights for the Subjects Coverd in the Licensure Examination for Librarianship”. Librarylink. (online), available from < http://www.librarylink.org.ph/talakayan/topic.asp?TOPIC_ID=126 [26] >, (accessed 2004-10-26).
Saniel, Isidoro. History: Half a century of the Philippine Library Association. (online), available from < http://www.dlsu.edu.ph/library/plai/plai%20history.htm [27] >, (accessed 2004-10-08).
北村由美. フィリピン・ライブラリアンシップ法−専門職の法による確立−. カレントアウェアネス. 2004, (282), p.5-7.
http://current.ndl.go.jp/ca1540 [28]
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著作権や特許権等のいわゆる知的財産権に対する社会的認識が深まりを見せている。最高裁判所は,2004年9月28日,ダンス教室が指導のために契約を結ぶことなく音楽を無断で使用し,著作権を侵害したとする日本音楽著作権協会の訴えを認め,約3,646万円の支払いを命じた名古屋高等裁判所判決を支持した。これまでであれば見過ごされてきたような程度の著作権利用に対しても,厳しい制裁が加えられるという状況が到来している。
しかしその一方で,知的財産に対する過度な商業主義的囲い込み(enclosure)が,知の「公共性」を危うくするという議論も台頭してきている。科学的知見,特に社会科学のそれは,全く無の状態から創造されるものではなく,先人の業績,あるいは他者との対話(dialogue)の積み重ねから生み出される部分が多い。また,共同体(community)の存続と個人の自律的「生」にとって,ある種の情報の共有化が不可欠でもある。社会の存続にとって不可欠な情報の共有とフェア・ユース(fair use)の推進を説く「情報コモンズ(information commons)」の動きは,近年,猛烈な勢いで進む過度な「情報基盤の私事化」への危惧から生まれたものである(1)。
だが,資本主義社会においては,J.ロック等の古典的な所有権概念を持ち出すまでもなく,個人の労働の産物(property)は,それを生み出した者に排他的に帰属することが自明の理とされてきた。情報コモンズの動きは,一見,この資本主義の公理と矛盾するかにも映る。しかし,情報コモンズが投射するこの矛盾は,人類の新たなフロンティアとでもいうべきデジタル社会において,「知」の在り方を巡って展開される「公共性」と「私事性」の衝突の一断面に他ならない。議論が絶えたことのない「公共性」と「私事性」の調和の在り方が,新たな地平においても問われ続けているともいえよう。
では,公共性とは何を意味するのか。この問いに一義的に答えることは困難である。周知のごとく,公共性の概念は,論者によってその意味づけが微妙に異なるばかりか,そもそも両者は,厳然と峻別可能なものではなく,多分に相対的なものにすぎないという考え方すら有力である。だが本稿では,その最大公約数的存在として齋藤純一の分類に注目したい。齋藤は,公共性が語られる文脈毎に,(1)国家に関係する公的な(official)もの,(2)全ての人々に関係する共通の(common)もの,(3)誰に対しても開かれている(open)もの,という3つの意味合いが存在すると指摘している(2)。そして,(1)の国家的公共性には公共事業や公教育が,(2)の共通項としての公共性には公益,公共の福祉等が,(3)の公開としての公共性には公園や情報公開等の概念がそれぞれ密接に関わっているとする。情報コモンズを巡る議論に齋藤の分類をあてはめるならば,(2)全ての人々に関係する共通の(common)情報を,一定のルールの下に,(3)誰に対しても開く(open)べきであるという主張として位置づけることが可能であろう。
情報コモンズは,民主主義と関わって論じられることが多い。その理由は,民主主義の健全性が,自由で開かれた情報の流れに依存している点にある。民主主義社会においては,主権を有する個人が主体的に活動し,積極的に政治過程にコミットメントしていくことが前提となっている。そして,真の主体的意思決定は,正確な情報に基づき熟考を重ねた上で,初めて可能となる。それ故に,主権者が判断材料とする情報を獲得可能にする環境を構築し,それを維持することは,民主主義社会の存続要件であり,情報コモンズを巡る言説の多くもこの点に関わってくる。
情報技術の発展,特にインターネットの普及は,時間,場所,コストといったこれまで情報獲得の制約要因となってきたものを除去し,情報の流れを活性化させる契機として機能している。と同時に,マス・メディアの発達の影で,情報の「受け手」としてのみ行動することを余儀なくされていた人々に,再び「送り手」としての地位を獲得する可能性を付与することにもなった。その意味においては,情報技術の発展は,民主主義の発展に寄与する可能性があるし,また実際に多くの影響を及ぼしてもいる。
しかしその一方で,インターネットの普及をもたらした同じ技術革新が,自由な情報の流れを阻害し,コントロールする技術をも生み出していることに留意する必要がある。フェア・ユース,ファースト・セール(first sale)(3),公共所有(public domain)等,情報の共有を可能とする従来の仕組みが,私的利益の最大化を追求する企業や個人が進める情報基盤の「囲い込み」によって,危機に瀕するという事態が顕在化しはじめている。その象徴的存在が,米国に見られる著作権に関する法制度の強化である。
米国は,日本とは異なり,連邦憲法の中に著作権に関わる基本条項を包含している(4)。そこでは,一定期間,著作権者に著作物に関わる排他的権利を容認するとともに,期限経過後は著作物は公共の所有になるものとされ,著作権者の権利保護(私的利益)と一般の利用(公益)の調整に関する基本原理が明示されている。米国は,この規定を基軸に,新たなメディアが登場する度に,連邦法その他の下位規範を改変することで対応してきた。その最たる例が,電話や電波メディア規制の基本法としての性格を有する1934年制定の「コミュニケーション法」である(5)。
しかし,デジタル社会を推し進める技術革新のスピードは,法制度のみならず,それを支える立法者,裁判官その他の法実務家の理解を遙かに超えるものであった。その結果として,現代社会において情報が有する価値に一早く気づきその確保に乗り出したメディア産業のロビイングによって,情報の公共性に関する本格的な議論を経ないままに,私的利益の保護に傾倒する考え方が,議会によって公式化されていくことになる。その典型が,1998年の「著作権期限拡張法(SOCTEA)」(6)と「デジタル・ミレニアム著作権法(DMCA)」(7)(CA1232 [31],1478 [32]参照)であった。
著作権期限拡張法によって著作権の保護期間が20年延長され,デジタル・ミレニアム著作権法の下で著作権保護を回避する手段に刑事制裁が科されることになった。何れも,情報の公共性に根ざしたフェア・ユースを制限し萎縮させる効果(chilling effect)を有し,情報の自由な流れを阻害する要因となることは多言を要しない(8)。ここに,国家的「公共(official)」としての「法」が,私的セクターに取り込まれ,誰に対しても開かれているという意味の「公共(open)」を浸食し,「情報基盤の私事化」を後押しするという構図が浮上してくる(9)。その中で,民主主義の健全性を示すバロメーターというべき情報の自由な流れは脅威に晒され,創造性や文化がメディア産業によってコントロールされるという事態が着実に進んでいることを見逃してはならない(10)。
最後に,図書館界と情報コモンズの関わりについて若干のコメントを附しておくことにしたい。英米を中心とする欧米諸国は,公園や道路,それに類する多くの共有地(commons)を,市民が情報交換や討論を行う重要な場と見なし,民主主義に不可欠な存在と位置づけ,パブリック・フォーラム(public forum)論の下でその保護を図ってきた(11)。時代が下るに連れて,プリント・メディアの発達,マス・メディアによる情報発信手段の寡占化が強まる中,情報の受け手としての個人を支える新たな場が模索されていく。その重要な拠点の一つが公共図書館であったことはいうまでもない。公共図書館には,利用者が必要とする情報を主体的に選択することが可能な場として,多様な情報を保存し,それに誰もが平等にアクセスできる開かれた存在であることが期待された。ここに全ての人々に関係する(common)情報を,誰に対しても開く(open)という公共性を体現しているという意味において,「情報コモンズ」の原型を見ることができる。
そして現在,情報技術の発展に支えられた新たな地平は,公共図書館を凌駕する可能性を有する新たなコモンズ,パブリック・フォーラムへの可能性を開いた。だがここでも同様の技術が情報コモンズとしての公共図書館を脅かすヤヌス的存在として機能することになる(12)。現在の状況が続く限り,現代型公共図書館が情報社会への対応として指向するネットワーク化が,機能不全に陥る可能性がある。情報基盤の私事化,囲い込みの進行は,ネットワークを通じて情報をやり取りし「群」として機能する公共図書館に対し,ネットワークにおける情報の自由な流通を拒否し,経済的負担を要求する傾向がより強まっていくと予測されるからである。
早晩,図書館界は,情報化社会における自らの役割を再同定することが求められることになろう。そこには,情報基盤私事化の流れを所与の前提として,誰に対しても開く(open)という意味の公共性を後退させる道と,過度な情報基盤の私事化に戦いを挑み,情報のフェア・ユースを維持すべく努力を重ねる道の2つの選択肢が存在している。そしてこの選択は,図書館界が,民主主義の活性化,個人の自己実現に果たしてきた役割を,どの程度重視するかによって決せられることになる。
図書館界は,これまでの経緯から,当然,第二の道を模索することになろう。だが,本質的問題は,その最終評価が,図書館界ではなく,社会を構成する全ての人々によって下されることになるという点にこそある(13)。民主主義社会は,治者と被治者の自同性が確保された社会であり,「公共(official)」としての「法」を支える正統性の源は,主権者である構成員をおいて他にない。それ故に,第二の選択肢,すなわち情報コモンズ確立の成否は,そのガイド役としての図書館界と社会との対話如何にかかっているといっても過言ではない。この点について,米国図書館協会情報技術政策部(ALA/OITP)は,図書館司書を情報コモンズのガイドとして位置づけ,その発展可能性を共同体の構成員に向かって説明していくことの重要性を説いている(E166 [33]参照)(14)。
社会との対話を前に,図書館関係者は,自らの職務の社会的使命に関する自己認識を改めて問い直す作業を余儀なくされる。この作業を通じて,民主主義を支える施設という図書館界のこれまでの主張が,単なるスローガンに過ぎなかったのか,それとも内実の伴う存在であったのかという点が試されることになろう。果たして図書館界は,真に全ての人々に関係する(common)情報を提供してきたといえるのか。その多くがこれまで潜在的利用者に過ぎなかった構成員によってその公共性が計られるというアイロニーの中,図書館界は評価の時を迎えようとしている。
日本女子大学家政学部:坂田 仰(さかた たかし)
(1) 例えば,代表的な組織として「情報コモンズ」< http://www.info-commons.org/ [34] >や,「クリエィティブコモンズ」< http://www.creativecommons.org [35] >がある。 (accessed 2004-11-15).
(2) 齋藤純一. 公共性. 東京, 岩波書店, 2000, viii-ix.
(3) 著作権を有する者が,製品等を売却することによって,著作権が消費し尽くされる(exhaust)とする考え方。デジタル分野に適用されるかは,消極説が通説といわれる。しかし,近年,適用対象への取り込みを目指す法改正の動きも一部に存在する。
ファースト・セールに関わる米国連邦最高裁判所の先例としては,Quality King Distributors, Inc. v. L’Anza Research International, Inc., 523 U.S.135(1998)がある。
(4) U.S.Const. Art.1, §8, cl.8.
(5) 47 U.S.C. §151.
(6) 著作権と深い関わりを持つミュージシャン出身の議員,ソニー・ボノ(Sonny Bono)の名を冠する法律。Sonny Bono Copyright Term Act,17 U.S.C. §301.
(7) Digital Millennium Copyright Act,17 U.S.C. §1201.
(8) 萎縮効果は,法律だけではなく,言説の空間を支配する様々な規制によってももたらされる。サイバー空間を統制するコード(CODE)の重要性については,ローレンス・レッシグ(Lawrence Lessig)の指摘がある。
Lessig, Lawrence. (山形浩生,柏木亮二訳) “第1章 コードは法である”. CODE - インターネットの合法・違法・プライバシー. 東京, 翔泳社, 2001, 3-13.
(9) もっとも「市場」主義経済は,時に誰もが出入り自由な平等に開かれた制度として論じられることがある。しかしながら,本稿の文脈からは,その公開性が「経済的豊かさ」に依存する制度と措定されることはいうまでもない。
(10) ローレンス・レッシグは,巨大メディアによる法を手段とする創造性,文化の統制を問題視し,メディア産業の行動を批判する。
Lessig, Lawrence. (山形浩生,守岡桜訳) FREE CULTURE. 東京, 翔泳社, 2004, 371p.
(11) 紙谷雅子. パブリック・フォーラム. 公法研究. (50), 1988, 103-119.
(12) 但し,パブリック・フォーラムの範囲を巡っては,学説上見解が分かれており,インターネットがその範疇に含まれるか否かについては現在も議論の対立が続いている。この点が争点とされた事件としては,例えば,U.S.v. American Library Association,Inc.,539 U.S.194(2003)等がある。
(13) 第一次的評価は,図書館界に関わる人々によって下されるという点はいうまでもない。
(14) “Libraries and the Information Commons”, A Discussion Paper Prepared for The ALA Office of Information Technology Policy. (online), available from < http://www.ala.org/ala/washoff/oitp/icprins.pdf [36] >, (accessed 2004-10-25).
坂田仰. 情報コモンズ:情報基盤の私事化と民主主義の健全性. カレントアウェアネス. 2004, (282), p.7-10.
http://current.ndl.go.jp/ca1541 [37]
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21世紀に入って欧米では,学術情報のポータル的提供の試みが行なわれるほか,各大学図書館でもMyLibraryなどのポータル的機能の試みが実施されている。「ポータル」というくくりで同列に論じられることの多いこれらの試みであるが,そのサービス内容や方向性には大きな違いがあるように思われる。
本稿では,学術的なポータルを,不特定多数の利用者向けの「学術情報ポータル」と特定機関の構成員向けの「図書館ポータル」に区別するという視点から,内外の学術的ポータルの動向を紹介することにより,各種ポータルの今後の企画・運営の参考にしていただきたいと考える。
まず最初に,不特定多数の利用者を対象に,様々な学術情報を総合的に提供する「学術情報ポータル」の動向について紹介する。
Vascoda(E102 [42]参照)は,ドイツ連邦教育学術省とドイツ研究協会の出資により,約30の研究機関の協力のもとに提供されている学術情報ポータルである。
情報を理工学,生命科学,社会科学,人文科学の4分野に分けて,書籍,雑誌論文,インターネット情報資源というドイツ国内の質の高い学術情報を統合的に検索できるようにしている。通常の検索エンジンでは検索不可能な,2次情報データベースや図書館OPACなどの「見えないウェブ資源」の検索を実現しているのが特徴である。
インターネット情報資源については,各分野のサブジェクトゲートウェイを統合的に検索し,各分野毎の検索結果を表示する。例えば経済学ではEconDoc,心理学ではinfoconnexなどのデータベース,政治学ではpolitics and peace guide,数学ではMathGuideなどのサブジェクトゲートウェイを参照している。また,電子ジャーナルとなっているものには,後述の電子ジャーナルポータルEZBと連携して電子ジャーナル本文へのアクセスを容易にしている。
レーゲンスブルグ大学図書館がミュンヘン工科大学図書館と協力して開発したEZBは,複数機関による共同構築型電子ジャーナル目録データベースとして注目すべきものである。2004年10月現在277の図書館・研究機関が,共同収集と書誌データのメンテナンスを行っている。米国議会図書館(LC)も,このデータベースに参加している。
収録している約20,000タイトルは,分類毎のブラウズ,タイトル順のブラウズが可能なほか,タイトルでの検索もできる。ライセンス情報は各参加機関固有の情報として個別に管理され,ジャーナルリスト表示の際にはその固有情報に基づいて信号機をイメージしたサインでアクセス可否を表示している。自由にアクセスできる約7,700タイトルには「青信号」,契約によりその機関が利用可能なものには「黄信号」,契約をしていないため利用不可能なものには「赤信号」が付されており,簡明な画面全体のレイアウトとともに,利用者に非常に分りやすいインターフェイスとなっている。
書誌情報の維持についても配慮しており,ドイツ雑誌総合目録データベース(Zeitschriftendatenbank:ZDB)との間で目録作成手順を共有したり,ZDBの書誌データとの連携(リンク)も実現している。
技術的には,データベースにMySQL,ウェブサーバーにはApache,インターフェイスにはPHPという,パブリック・ドメインまたはオープンソースで構築されている。リストが要求された時点でデータベースからデータを採取し,それを編集加工してジャーナルリストを表示するという動的なシステム構造となっている。
わが国の大学図書館などが,それぞれの自主努力により電子ジャーナル集を維持・管理している現状を見ると,EZBでの共同構築の取組みは模範となるべきものであろう。1997年からこのプロジェクトを推進し,共同構築事業を成功に導いたフッツル(Evelinde Hutzle)氏の企画力には,大いに学ぶべきものがある。
ドイツのVascodaに相当する学術情報ポータルとして,国立情報学研究所(NII)の学術コンテンツ・ポータルGeNiiがある。これは,従来から行ってきた総合目録データベースWebcat,情報検索サービスNACSIS-IR,電子図書館サービスNACSIS-ELSに加えて,論文情報ナビゲータCiNii,電子ジャーナルリポジトリNII-REO,図書情報ナビゲータWebcatPlus,大学Webサイト資源検索JuNiiなどの多彩なコンテンツを擁するものである。これらのコンテンツが完全に統合され,コンテンツ自体もさらに充実すれば,日本を代表する学術情報ポータルになるものと期待される。
特定主題分野のポータルの試みとして,東京学芸大学のE-TOPIAに注目したい。このサイトでは,同大学が作成した教育情報の総合的データベースやオンライン・チュートリアルとして有用な独自に作成したパスファインダーが利用できるほか,ネットワーク上に分散する複数データベースの統合検索機能も備えている。
単一の大学として提供するポータルとしては,非常に豊富な機能が取り揃えられているものであり,今後は,同様の教育系大学による共同コンテンツ作成が望まれるところである。
次に,主にその機関内の利用者を対象として,その機関の構成員に見合った学術情報を提供する「図書館ポータル」の動向について紹介する。
MyLibraryとは,図書館利用者が自分の利用傾向にあったポータルページにカスタマイズできるというサービスで,Yahoo!などにも類似の機能を見ることができる。米国では,様々な図書館・研究機関でこのパーソナライズ機能を実現している。ノースカロライナ州立大学NCSUはオープンソースとしてMyLibrary@NCSU [43]を公開・提供しており,欧米の多くの大学がこのオープンソースを利用してMyLibraryサービスを実現している。
日本でも,このオープンソースを再利用した図書館システムが登場しつつある。京都大学のiLiswave MyLibrary,立命館大学のRUNNERS MyLibraryなどがそれであり,電子ジャーナル,リンク集,図書館OPACなどを自由に組み合わせて,自分の好みの色づかいのページを作成できるとともに,自分の貸出状況なども確認できるサービスを実現している。
ほかに,コーネル大学,ロスアラモス国立研究所などでも,独自にMyLibraryサービスを開発している。
米国研究図書館協会(ARL)では,2002年から3年計画でARL学術ポータルプロジェクト(ARL Scholars Portal Project)を開始し,英国Fretwell-Downing社をパートナーとした製品開発を行っている。開発されたMyLibrary製品ZPORTALは,図書館OPAC,電子ジャーナル,検索エンジンなどを統合検索できるもので,検索結果の重複処理・ソート機能,検索式・検索結果の保存機能などを有する。
統合検索の対象としては,Z39.50ターゲットのほかに非Z39.50(通常のウェブ)データベースも選択できるようになっている。また,Open-URL(CA1482 [44]参照)により検索結果の文献にアクセスが可能となっている。このほかに,利用者のプロファイルを登録するなどのMyLibrary機能も備えている。
また,トムソンISI社では,Web of Knowledgeの機能拡張としてWebfeatという統合検索機能を用意している。この機能により,従来Web of Knowledgeで検索可能であったWeb of ScienceやCurrent Contentsなどのほかに,他社のデータベース製品やアクセスフリーのデータベース,Z39.50の図書館OPACなどを統合検索できるようになる。Webfeatはソフトウェアパッケージとして提供されるのではなく,Web of Knowledgeの1サービスとして提供されている。
上記ARLでの図書館ポータルプロジェクトのほか,ポータルのあり方を考える上で,2003年8月に公表されたOCLC研究部門長のデンプシー(Lorcan Dempsey)氏の論考『図書館の再構築:ポータルと利用者(The recombinant library : portal and people)』が有益である。この論考では,これまでの図書館ポータルの試みについてレビューを行った上で,図書館ポータルを(1)固定的な情報提示 → (2)カスタマイズ可能な情報提示(MyLibrary)と固定的な統合検索(統合検索機能)→ (3)カスタマイズ可能な統合検索という図式で分析している。
また,図書館ポータルの機能的要件についても論じ,図書館ポータルは単にMyLibrary機能と統合検索機能にとどまらないという重要な指摘をしている。さらに,図書館資源を場所・資料・サービスの3要素とする観点から,今後図書館ポータルが果たす役割と意義について論じている。図書館ポータルが果たすべき理念を考える上で,必読の文献であろう。
またLCとしては,LCPAIG(Library of Congress Portals Applications Issues Group)が米国議会図書館のためのポータルアプリケーションの機能リストを2003年7月に公表した(E109 [45]参照)。このグループでは,ZPORTAL,MetaLib/SFX,ENCompass/LinkFinderPlusといった製品の比較検討を通じて,LCが実現すべき図書館ポータルの機能要件約240項目を,一般的事項,クライアント,検索機能,ヘルプ機能等,知識データベース,認証機能,管理機能等に分けて提示している。図書館ポータルの方向性を把握するためには向かないが,技術的な詳細要件を検討するための材料として利用することができるであろう。
日本では,国立大学図書館協議会の図書館高度情報化特別委員会ワーキンググループが,2003年5月に図書館ポータルの検討および提言を行なっている。これがわが国における図書館ポータルのあり方についての最もよくまとまった検討資料であろう。総合的ポータル,図書館ポータル,パーソナライズポータルという観点で論述し,わが国での実現可能性について提言しているところは,現時点でも通用するものである。
また,図書館ポータルだけではなく,機関リポジトリ,資料の電子化,サブジェクトゲートウェイ,デジタルレファレンス,オンライン・チュートリアルについての提言も,将来的な企画の指針となるところであろう。
本稿では,様々な学術的ポータルの取組みについて,注目すべき動向を中心に紹介した。日本においても,MyLibraryの実現など図書館ポータル普及の兆しがみられる。利用者志向のサービスを目指した図書館ポータル機能の充実は,今後ますます望まれるところであろう。
東北大学附属図書館:米澤 誠(よねざわ まこと)
Ref.
Vascoda. (online), available from < http://www.vascoda.de/ [46] >, (accessed 2004-10-10).
Universitaetsbibliothek Regensburg. EZB : Elektronische Zeitschriftenbibliothek. (online), available from < http://rzblx1.uni-regensburg.de/ezeit/ [47] >, (accessed 2004-10-10).
国立情報学研究所. GeNii: NII学術コンテンツ・ポータル. (オンライン), 入手先< http://ge.nii.ac.jp/ [48] >, (参照2004-10-10).
東京学芸大学附属図書館. E-TOPIA: 教育系電子情報ナビゲーションシステム. (オンライン), 入手先< http://library.u-gakugei.ac.jp/etopia/ [49] >, (参照2004-10-10).
Morgan, Eric Lease. MyLibrary. (online), available from < http://dewey.library.nd.edu/mylibrary/ [50] >, (accessed 2004-10-10).
Dempsey, Lorcan. The recombinant library: portals and people. Journal of Library Administration. 39(4), 2003, 103-136.
Library of Congress Portals Applications Issues Group. List of Portal Application Functionalities for the Library of Congress. 2003. (online), available from < http://www.loc.gov/catdir/lcpaig/portalfunctionalitieslist4publiccomment1st7-22-03revcomp.pdf [51] >, (accessed 2004-10-10).
国立大学図書館協議会図書館高度情報化特別委員会ワーキンググループ. 電子図書館の新たな潮流.2003. (オンライン), 入手先< http://wwwsoc.nii.ac.jp/janul/j/publications/reports/73.pdf [52] >, (参照2004-10-10).
米澤誠. 学術的ポータルをめぐる動向. カレントアウェアネス. 2004, (282), p.10-12.
http://current.ndl.go.jp/ca1542 [53]
学術研究,とりわけ科学技術分野の研究活動において,学術情報のオープンアクセス化に向けた運動が近年活発になっている。最近では,英国・ウェルカム財団,英国下院科学技術委員会,米国国立衛生研究所などからオープンアクセスの推進に向けた調査報告書の発行が続いており,この動きは注目に値する。
本号では,これらの機関が発行した報告書を中心に,英米におけるオープンアクセスの動向を取り上げる。
CA1543 [動向レビュー]科学研究出版の費用分析とビジネスモデル [55]
CA1544 [動向レビュー]英米両国議会における学術情報のオープンアクセス化勧告 [56]
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科学研究コミュニケーション,特に自然科学分野のコミュニケーションにおいて,学術雑誌を通した知識の頒布・蓄積の果たす役割は大きい。研究活動という社会的営みを支える基盤的システムであるピアレビューも,もともとは学術雑誌への投稿論文の掲載可否を判断するために生じたシステムであり(1),ピアレビューが制度化された17世紀以降,研究活動の学術雑誌への依存は非常に大きなものとなっている。
本稿では,学術雑誌の出版をめぐる今日的状況を概観したうえで,その経済的な側面,特に新たなビジネスモデルについての整理を行う。
科学研究出版に関わる近年の動向として一般に言われていることは,電子出版の普及と学術雑誌の価格高騰であり,これらの2つの動きが,科学研究出版の新たなビジネスモデルである後述の「オープンアクセス出版」が出現した背景にある。学術雑誌の価格が高騰し,大学図書館の予算では雑誌の購読を切りつめざるを得なくなる,いわゆる「シリアルズ・クライシス(Serials Crisis)」は,それにより「科学に再投資するための購読料は消え去り,よってその学協会,ひいては科学プロセス全体が弱体化する事態を引き起こす」ものという指摘もあり(2),科学研究コミュニケーションの根幹に関わる問題として認識されるようになってきている。
一方,1990年代以降のインターネットの普及に伴い,急速に増加していった雑誌の電子出版,つまり電子ジャーナルは,学術雑誌の価格高騰に関連して,2つの側面を持つ。1つは,ビッグ・ディール(Big Deal)と呼ばれる雑誌購読のパッケージ化の促進であり,結果として図書館の購読誌の選択が制限されてしまうという問題も指摘されている。もう1つは,シリアルズ・クライシスに抗しうる出版形態を支えるメディアとしての側面である。以下に述べる「オープンアクセス運動」は,インターネットを介した電子出版が基盤となっている。
シリアルズ・クライシスに象徴されるように,科学研究コミュニケーションが商業出版社の支配的な影響下にある現状を変革するため,科学研究出版に適正な競争を求めて,研究成果の生産者であり利用者である研究者自身の手に,科学研究コミュニケーションを取り戻そうとする様々な動きが,1990年代末から起きてきている。その代表的な試みの1つがSPARC(3)である。SPARCは,米国の研究図書館協会(ARL)によって創設された組織であり,提携機関との協力による低価格の代替誌の出版などを推進して成果をあげている(CA1469 [59]参照)。
そして世紀が改まり,ここ数年,特に注目されているのが,「オープンアクセス」という理念である。オープンアクセスとは,「インターネット上で自由に入手でき,その際,いかなる読者に対しても,論文の閲覧,ダウンロード,コピー,配布,印刷,検索,全文へのリンク付け,索引付け,データとしてソフトウェアに転送すること,その他,合法的な用途で利用することを許可し,財政的,法的,技術的障壁を設けない」ことを意味するものとされる。オープンアクセスの上記の定義は,2002年にOpen Society Institute (OSI)が母体となって創設されたブダペスト・オープンアクセス運動(Budapest Open Access Initiative:BOAI)(4)によるものである。オープンアクセス運動を推進するBOAIは,研究者のセルフアーカイビングとともに,オープンアクセス雑誌の出版を推奨している。
BOAIの宣言以降も,2003年6月のBethesda Statement on Open Access Publishing(5),同年10月のベルリン宣言(6)(E144 [60]参照)および英国ウェルカム財団(Wellcome Trust)の声明(7),同年12月の国際図書館連盟(IFLA)の声明(8)(E185 [61]参照)など,オープンアクセスを支援する動きは続いており,また,前述のSPARCも支援運動に加わっている(E111 [62]参照)。
オープンアクセス雑誌の出版に積極的に取り組んでいる組織として挙げられるのが,BioMed Central,そしてPublic Library of Science (PLoS)である(CA1433 [63],E046 [64]参照)。両者とも,雑誌購読者ではなく,論文投稿者に課金することで成り立たせる,従来とは異なるビジネスモデル(E237 [65]参照)を導入しており,利用者は,これらの組織が出版するオープンアクセス雑誌を無料で閲覧することができる。この新しいビジネスモデルは,科学研究の成果への自由なアクセスの保障をもたらすものであるが,一方で,実現性・継続性が疑問視されるなど,問題点の指摘も多い(9)。
既に述べたように,オープンアクセス出版が可能になった背景の1つに電子技術の発達がある。Openly Informaticsが提供するeFirst XML(10),サウサンプトン大学(University of Southampton)の開発によるEPrints(11),英国のデジタル図書館プログラムeLib(UK electronic Libraries Programme;CA1333 [66]参照)の一環として始まったESPERE(12),ICAAP (International Consortium for the Advancement of Academic Publications)のMyICAAP(13),ノッティンガム大学(University of Nottingham)のSHERPA(14)などのような,アーカイビング,出版プロセス電子化のシステム・サービスが利用可能になっている。そのような電子技術は,出版に要する時間を短縮するだけでなく,出版費用の削減により,出版マーケットへの新規参入を(ある程度は)容易にするものである。
ウェルカム財団は,2004年4月発表の報告書『科学研究出版の費用とビジネスモデル』(E196 [67]参照)で,電子出版を前提としたうえで,購読料によって支える伝統的なモデルと比較しつつ,著者への課金によって支えるオープンアクセス出版という新しいビジネスモデルに関する分析を行っている(15)。その要点を以下に紹介する。
質の高い雑誌 | 中程度の雑誌 | |||
購読者負担 | 著者負担 | 購読者負担 | 著者負担 | |
固定費用 | $1,650 ( 183,150) | $1,850 (205,350) | $825 ( 91,575) | $925 (102,675) |
可変費用 | 1,100 ( 122,100) | 100 ( 11,100) | 600 (66,600) | 100 ( 11,100) |
総費用 | 2,750 ( 305,250) | 1,950 (216,450) | 1,425 (158,175) | 1,025 (113,775) |
出版費用の点から見て,著者負担のオープンアクセス出版は実行可能な選択肢であり,購読者負担の雑誌の価格設定に重大な影響を与えうる。報告書は,オープンアクセス出版は研究者コミュニティに貢献しうるものと結論付けている。
出版費用とともに,論文を投稿する研究者にとって問題となるのが,業績としての評価である。前述の宣言や声明でも,オープンアクセス雑誌の論文を適正に評価すべきというような提言が盛り込まれている。研究評価の原則から言えば,論文採択においてピアレビューが適正に行われている限り,オープンアクセスか非オープンアクセスかを区別する理由はない(16)。研究者コミュニティに与えるインパクトは,むしろ,アクセスを制限しないオープンアクセス雑誌の方が,より大きいと考えられる。実際に被引用回数を分析した結果,両者にほとんど差はない,あるいはオープンアクセスの方が,引用インパクトが大きいという報告もある(17)。
オープンアクセス出版が科学研究出版マーケットに与えた「インパクト」を持続させるうえでは,やはり経済的な側面の問題が大きいだろう。研究者にとって投稿料の負担は必ずしも小さくないといった指摘も多く(18),研究機関・助成団体の協力,商業出版社との協調など,多面的な取り組みが必要とされる。
大学評価・学位授与機構評価研究部:芳鐘 冬樹(よしかね ふゆき)
(1) 林隆之. ビブリオメトリクスによるピアレビューの支援可能性の検討:理学系研究評価の事例分析から. 大学評価. (3), 2003, 167-187.
(2) バックホルツ, アリソン. (高木和子訳) SPARC:学術出版および学術情報資源共同に関するイニシアチブ. 情報管理. 45(5), 2002, 336-347.
(3) SPARC: The Scholarly Publishing and Academic Resources Coalition. (online), available from < http://www.arl.org/sparc/ [68] >, (accessed 2004-09-26).
(4) Budapest Open Access Initiative. (online), available from < http://www.soros.org/openaccess/ [69] >, (accessed 2004-09-26).
ウェルカム財団が定義するオープンアクセスも,ほぼ同様のものである。
Wellcome Trust. “Wellcome Trust Position Statement in Support of Open Access Publishing”. (online), available from < http://www.wellcome.ac.uk/doc%5Fwtd002766.html [70] >, (accessed 2004-10-23).
(5) ハワード・ヒューズ医学研究所の呼びかけによる。
Bethesda Statement on Open Access Publishing. (online), available from < http://www.earlham.edu/~peters/fos/bethesda.htm [71] >, (accessed 2004-09-26).
(6) Max-Planck-Gesellschaft. “Berlin Declaration on Open Access to Knowledge in the Sciences and Humanities”. (online), available from < http://www.zim.mpg.de/openaccess-berlin/berlindeclaration.html [72] >, (accessed 2004-09-26).
(7) Wellcome Trust, op. cit.
(8) International Federation of Library Associations and Institutions. “IFLA Statement on Open Access to Scholarly Literature and Research Documentation”. IFLANET. (online), available from < http://www.ifla.org/V/cdoc/open-access04.html [73] >, (accessed 2004-09-26).
(9) 熊谷玲美. オープンアクセス出版. 情報管理. 47(1), 2004, 33-37.
(10) eFirst XML. (online), available from < http://www.openly.com/efirst/ [74] >, (accessed 2004-09-26).
(11) EPrints.org. (online), available from < http://www.eprints.org/ [75] >, (accessed 2004-09-26).
例えば,図書館情報学分野では,EPrintsを利用したE-LISというオープンアーカイブが存在する。2004年9月26日現在で,1,470件の論文が登録されている。
ELIS: E-prints in Library and Information Science. (online), available from < http://eprints.rclis.org/ [76] >, (accessed 2004-09-26).
(12) ESPERE. (online), available from < http://www.espere.org/ [77] >, (accessed 2004-09-26).
(13) MyICAAP. (online), available from < http://www.icaap.org/database/icaap_en.shtml [78] >, (accessed 2004-09-26).
(14) SHERPA (Securing a Hybrid Environment for Research Preservation and Access). (online), available from < http://www.sherpa.ac.uk/ [79] >, (accessed 2004-09-26).
(15) 費用の見積もりは,出版関係者との議論,および出版費用を扱った既往研究の調査に基づいている。
(16) 無論,査読を終えていないプレプリントは事情が異なる。
(17) 雑誌単位の分析の報告としては,
Thomson ISI. The Impact of Open Access Journals: A Citation Study from Thomson ISI. 2004. (online), available from < http://www.isinet.com/media/presentrep/acropdf/impact-oa-journals.pdf [80] >, (accessed 2004-09-26).
論文単位の分析の報告としては,
Harnad, S. et al. Comparing the impact of Open Access (OA) vs. non-OA articles in the same journals. D-Lib Magazine. 10(6), 2004. (online), available from < http://www.dlib.org/dlib/june04/harnad/06harnad.html [81] >, (accessed 2004-09-26).
などがある。
(18) 例えば,土屋俊. 学術コミュニケーションの動向と著作権:学術情報資源の電子化の中で. こだま:金沢大学附属図書館報. (152), 2004, 2-5.
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オープンアクセス(Open Access)の流れが加速している。オープンアクセスとは,インターネットなどを通して情報を誰にでも無料で利用可能にするという理念であり,近年,欧米の学術コミュニティを中心に,研究論文など学術情報をオープンアクセス化しようとする動きが急速に広がりつつある。学術雑誌価格の高騰によるいわゆるシリアルズ・クライシス(Serials Crisis)(1)と,インターネットの普及など電子的環境の広がりを受けて,研究成果の流通を学術コミュニティの手に取り戻そうとする研究者や図書館界により主導されている。特に,研究にスピードを求める科学・技術・医学といったいわゆるSTM分野において関心が高い。
学術情報のオープンアクセス化には,オープンアクセス雑誌を創刊することと,研究成果のセルフ・アーカイビングを促進することのふたつの戦略があるといわれている。オープンアクセス雑誌は,査読を経た研究論文をインターネット上で発表し,読者に無料で提供する学術雑誌であり,例えばPublic Library of Science(PLoS;CA1433 [63],E046 [85]参照参照)やBioMed Central(BMC)といった機関が提供を始めている(2)。これらの機関では,雑誌を無料で提供しながら採算事業として成り立たせるために,従来の機関購読などに代わって著者支払い型(author pays)モデルと呼ばれる新しいビジネスモデルを提唱している(E237 [65]参照)。
セルフ・アーカイビングについては,著者が自らのウェブサイトに雑誌掲載論文を再掲載する方法とともに,機関リポジトリ(Institutional Repository)という仕組みが普及しつつある。機関リポジトリとは,大学など学術機関が自機関で生産された知的生産物を収集し,保存し,配信するためのデジタル・アーカイブのことである。欧米で主に図書館の事業として広がりつつあり,代表的な事例としてはマサチューセッツ工科大学図書館のDSpace@MIT [86](CA1527 [87]参照)などがある。研究成果の長期保存とアクセスを保証するとともに,機関における情報発信ポータルとして社会的機能を果たす。また,OAI-PMH(CA1513 [88]参照)など相互運用性を高める技術を活用することで,リポジトリのネットワークを構築し,学術情報へのアクセシビリティを高める試みも進められている(3)。
一方,国際政治の場でもオープンアクセスの理念に関心が示されるようになっている。2003年12月,国連世界情報社会サミット(WSIS)で採択された基本宣言(4)には,科学技術情報へのユニバーサルアクセスを促進するよう努力すると明記された(E159 [89]参照)。2004年1月,経済協力開発機構(OECD)科学技術政策委員会の閣僚級会合においても,日本を含む34か国が「公的資金による研究データのアクセスに関する宣言」(5)を採択し,OECDは公的資金の助成による調査研究データへのアクセスを拡大するための原則とガイドラインの作成に入っている(E173 [90]参照)。こうした流れの中で,2004年7月,英米両国の議会が学術情報のオープンアクセス化を勧告するという局面が訪れた(E222 [91]参照)。
2004年7月20日,英国下院科学技術委員会(House of Commons Science and Technology Committee)は『科学研究出版物:全てのひとに無料で?(Scientific Publications: Free for all?)』(6)と題する報告書を公刊し,政府に対して科学技術情報のオープンアクセス化を推進するよう勧告した。雑誌価格の高騰と図書館予算の逼迫により,研究に必要な科学雑誌(電子ジャーナルを含む)の提供が不十分なものになっていることを指摘した上で,研究成果へのアクセスを改善するため,全ての高等教育機関に機関リポジトリを設置して,公的資金で助成された研究成果を収録し無料で提供すること,著者支払い型の出版モデルを実験的に推進することなどを柱とした勧告を行った。
前述のような国際的な機運の中でも,特に英国では情報システム合同委員会(JISC)の助成による機関リポジトリ推進プログラムSHERPA(Securing a Hybrid Environment for Research, Preservation and Access)(7)などが2002年から始まっており,また独立系研究助成機関であるウェルカム財団もオープンアクセスを支持する活動を行っている(CA1543 [55]参照)など,オープンアクセスへの関心が高い。
こうした流れの中で,下院科学技術委員会は,2003年12月,科学研究出版物のアクセス,価格,利用可能性について調査を実施すると発表した。委員会はまず,出版社の価格設定や提供方法が学術コミュニティに及ぼす影響,オープンアクセス雑誌について政府のとるべき姿勢などについて,関係諸機関に公式文書の提出を求めた。次に,2004年3月から5月にかけて,エルゼビア社やブラックウェル社など学術出版社大手,学協会出版者協会(ALPSP),BMC,PLoS,大学図書館,英国図書館(BL),大学研究者,JISC,高等教育財政審議会(HEFCE),政府系研究助成機関である研究会議(Research Councils)といった主要な利害関係者に対してヒアリングを行った。
こうした経緯で7月に公表された報告書では,文書またはヒアリングでの証言を核に科学研究の要である学術情報流通の現状と課題について分析している。以下では,報告書の論点を3点に絞って紹介したい。
報告書の第1の特徴は,科学研究を推進する立場から,現行の学術出版モデルに対して厳しい評価がなされている点である。特に,消費者物価指数に比べて5倍以上とされる雑誌価格の高騰に注意を向けている。出版社側は値上げの理由を,投稿される記事の増加,査読システムにかかるコスト,電子出版に対する設備コスト,利用統計における利用率の高さなどに求めているが,委員会は完全には納得しておらず,こうした価格付けの傾向をモニターするための方法を,JISCを中心に策定していくように求めている。
アクセスの面からは,電子ジャーナルの一括契約方式やコンソーシアム・サイトライセンス,いわゆるビッグ・ディール(Big Deal)が,個々の大学で利用できるタイトル数を増大させる効果を持ちながら,コンテンツの囲い込みの結果として,キャンセルすると契約していたバックナンバーも利用できなくなるといった弊害も発生させていると報告している。
学術雑誌市場の寡占状態と大手出版社の高利益率に関しては,公正取引委員会に合併・買収がどのように学術雑誌の価格と市場に影響を及ぼしたか調査し,今後の市場動向についてモニターするように求めている。
第2の特徴は,科学情報へのアクセシビリティを向上させる有効な手段として,機関リポジトリを位置付けている点である。機関リポジトリに関する勧告の骨子は,(1)全ての高等教育機関は,自機関の知的成果物を蓄積し,オンラインで無料で読むことができるようにするための機関リポジトリを設置すること,(2)研究会議および他の政府系助成機関は,助成した研究論文のコピーを機関リポジトリに登録するよう研究者に義務づけること,(3)政府は,リポジトリを監督し,ネットワーク化,技術の標準化を推進する中央機関を指定することというものである。
報告書は,機関リポジトリを,低コストで実現でき,研究成果普及の速度,範囲を向上させる可能性があるとして高く評価し,SHERPAを拡張する形で,全国的な分散型リポジトリ・ネットワークを構築することを構想している。現在のところ機関リポジトリは個別の大学による散発的な事業であることを考えると,今回の勧告の持つ意味は大きい。
問題となるのは出版社に著作権が譲渡される現在の慣行であるが,報告書は政府および研究会議等に対し,著作権を著者が保持したまま出版できるような方策を探るよう提言している。同時に,2004年6月にエルゼビア社が掲載論文のテキスト版をセルフ・アーカイブすることを許可した件に触れ,その方針転換を評価しながらも,掲載論文そのもの(PDF版やHTML版)は許可しないとした制限について憂慮を表明している。
BLには,他の機関リポジトリに収蔵されない研究成果を保存する役割とともに,デジタル情報の長期保存全般に関して中心的な役割を果たしていくことを期待している。
機関リポジトリを整備したとしても,それで学術情報流通のいわば上流が変わるわけではない。そこで,長い目で変革を見据えるため,第3に,著者支払い型モデルについて詳細な検討が加えられている。
著者支払い型モデルの利点は,研究成果へのアクセスを拡張するところにあり,英国の研究者のみならず,購読力に限りのある発展途上国の研究者や,あるいは科学情報を求める市民に対しても利益があると指摘している。ただし,どれだけのコストがかかるか明確には分かっておらず,持続可能なモデルであるか疑問視する声が多いこと,また商業出版社や学協会出版社に与える影響など考えなければならない問題も数多くあることに留意しており,そういった点を明らかにするためにもひとつの可能性として実験的に推進する必要があるとしている。
このモデルの場合,研究者に投稿料・出版料を求めることになり,経済的負担から研究成果の発表に萎縮効果があるのではないかとの懸念もあるが,所属機関や助成機関に負担を求めることが現実的であり,そのために研究会議には研究者が著者支払い型で出版しようと考えた際に利用できる基金を設立するように勧告している。ただし,査読システムによる品質管理に関しては学術コミュニケーションにとって不可欠なプロセスなので堅持する必要があると念を押している。
以上のように,現行の学術情報流通には検討されるべき論点が数多いので,政府は喫緊の課題として将来計画を戦略的に立てるとともに,国際的な課題として世界を先導するような改革策をとるべきであると報告書は結論付けている。
米国では2004年7月14日,下院歳出委員会(House Appropriations Committee)が,2005会計年度予算案承認に伴い,国立衛生研究所(National Institute of Health:NIH)の助成した研究成果について,オープンアクセスとするよう勧告した(E241 [92]参照)。税金に基づく研究成果をパブリック・ドメインとして位置付けようとするものである。これを受けてNIHは9月3日,「NIH研究情報への強化されたパブリックアクセス」(8)と題する通知書を公表し,計画案を発表した。計画案では,査読を反映した最終原稿のデジタル・コピーの提出を著者に要求すること,その最終原稿をNIH下の国立医学図書館(National Library of Medicine:NLM)が運営するデジタル・リポジトリPubMed Centralに収録し,出版6か月後(出版社の同意があればさらに短期間)に誰にでも無料でアクセス可能とすることなどを構想している。パブリックコメントを受けた後,歳出委員会に正式の方針を伝えることになっている。
英国と同様,米国でも著名科学者を擁するPLoSなどを中心にオープンアクセスを支持する動きは活発である。SPARCも近年戦略を転換し,機関リポジトリを積極的に推奨している(9)。2003年6月には,連邦政府の資金を受けた研究の成果については著作権保護の対象外とする著作権法改定法案が提出された。
こうした動きの中で,2003年7月,2004会計年度予算案の中で歳出委員会がNIHに対して,近年における学術雑誌価格の高騰が生物医学(biomedical)情報へのアクセスに及ぼす影響とそれへの対策について報告するよう求めた。これに答える形で,2004年5月,NIHは『生物医学研究情報へのアクセス』(10)と題する報告書を提出した。報告書では,医学関係雑誌の値上がり率が特に急激であることを示し,こうした傾向が研究者やヘルスケア提供団体を支援する図書館の能力に悪影響を及ぼし,当該分野の情報へのアクセスに制約を生んでいると指摘している。これに対して,オープンアクセスの動きについては,研究の推進における公益性,連邦政府投資に対する効果などを追求するNIHの方針に適っているとして高く評価し,今後の活動方針として,PubMed Centralの強化による生物医学文献の長期的保存と安定的アクセスの達成を掲げている。7月の勧告,9月の通知はこの提案の延長線上にある。
NIHの計画案は賛否両論の反応を巻き起こした(E241 [92]参照)。勧告前後から100社以上の出版社がNIHを訪れ強く反対の声を挙げた。8月23日には,全米出版社協会専門・学術出版部門(AAP/PSP)など出版3団体がNIH宛てに公開状(11)を提出し,反対する理由と立場を明確にした。それによると,一連の提案の前に利害関係者と話し合わなかったことを非難した上で,(1)民間セクターのビジネスに対する政府の不当な介入であること,(2)税金で助成された研究成果であっても出版社は査読プロセスなどにコストをかけ,また付加価値も付与していること,(3)出版社自らの技術開発によって医学文献へのアクセスは格段に向上しつつあることなどを訴えている。雑誌論文を6か月後に強制的に無料で公開すると出版社の経営が成り立たず,また研究者にとっても著作を発表する自由が制約されることになるとしている。さらに,米国会計検査院(GAO)に対し,この計画が実行されれば出版業界の雇用にどのような影響を与えるか,この計画で納税者に強いる負担はどの程度なのか,科学の検閲・統制の危険はないのかなどを調査するよう要請している(12)。
一方,NIHの計画を歓迎する動きも活発である。米国図書館協会(ALA)などの図書館団体や遺伝性疾患同盟(Genetic Alliance)といった患者団体など41機関は,8月24日,納税者アクセス同盟(Alliance for Taxpayer Access:ATA)を結成した(10月末現在62機関)。ATAは,公的資金による研究成果へのオープンアクセスは納税者の当然の権利であるとして,NIHの計画を支持するために活動するとしている(13)。また,オープンアクセスこそ科学研究が飛躍的な進歩を遂げるための重要なカギであるとして,ノーベル賞受賞科学者25名が連名で,NIHの計画を支持するよう議員に求める公開状(14)を議会に送る動きも出てきている。計画推進派の主張は,6か月間の公開猶予期間(embargo)により出版社の購読基盤は失われず,現行モデルでの出版活動を阻害するものではないというものであるが,科学者の中には,研究は日々進展するので,猶予機関をおかず即時に公開しなければ真のオープンアクセスではないとする考えもある。
最後に,今回の英米両議会の勧告が持つ意味を考えてみたい。第1に,オープンアクセスが国レベルの政策課題として俎上に載せられる段階を迎えたということであり,公的資金に対するアカウンタビリティの文脈でオープンアクセスを推進する論理が確立したといえる。第2に,機関リポジトリが学術情報のオープンアクセス化に果たす役割が高く評価され,分散型か集中型かの違いはあるものの,その設置およびネットワーク化が現実的な課題として要請されたことも重要である。また,学術出版モデルについても,著者支払い型モデルの是非を含め,再検討の契機となるだろう。英米両勧告が今後どのような展開を見せるか目が離せない(15)。EUでも英国と同様の調査が開始されており,その動向も注目される。
国際図書館連盟(IFLA)は2003年12月に「学術研究文献のオープンアクセスに関する声明」を採択(E185 [61]参照)しており,またカナダ研究図書館協会(CARL)やスコットランド大学研究図書館連合(SCURL)など各地の図書館団体がオープンアクセスを戦略として取り込む動きも出てきている(E240 [93]参照)。さらに広い文脈では,コンピュータ・プログラムのオープンソース化やクリエイティブ・コモンズの活動など,新たな知の公共性を模索する動きも活発である。オープンアクセスの流れにどのように対応するか,知の公共性を担う図書館の理念と戦略が問われている。
関西館事業部図書館協力課:筑木 一郎(つづき いちろう)
(1) 土屋俊. 学術情報流通の最新の動向−学術雑誌価格と電子ジャーナルの悩ましい将来. 現代の図書館. 42(1), 2004, 3-30.
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(15) 本稿脱稿後の11月8日,英国勧告に対する政府からの回答書が公表された(E270 [105]参照)。貿易産業省を中心にまとめられた政府回答は,オープンアクセスの理念には賛意を示しながらも,現行の学術情報流通に変革すべき大きな問題があるとは思えないとの認識を示し,主要勧告である機関リポジトリの全国的設置については,個々の機関の判断によるものとして,政府による義務化,推進策には消極的姿勢をとるものであった。ただ同時に,JISCからの回答は勧告に大筋で合意するもので,今後もオープンアクセス推進策を推し進めていくとしているなど,オープンアクセスは政府内でも対応に温度差がみられる問題となっている。
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近年,電子ジャーナルに代表される電子情報資源や,図書館を経由しない情報流通手段の出現が目立っている。これらがドキュメント・デリバリー・サービスにどのような影響を与えるのか,またこれらにどのように対応するかがこの先重要になるものと思われる。
本稿では,電子的手段によるドキュメント・デリバリー・サービスに積極的に取り組んでいる機関の中から,英国BLDSC,ドイツsubito,フランスINIST,カナダCISTIの4機関を取り上げ,各機関のドキュメント・デリバリー・サービスについて,最近の動きを紹介する。
英国図書館(British Library:BL)は1993年の戦略計画(British Library's Strategic Objectives)の発表以後10年に渡って情報通信技術を文献提供サービスに活用するべく検討を重ねてきた(CA1367 [109]参照)。この流れの中で2003年末,文献の電子的な送信をより安全かつ便利に行うことを可能とする新サービスSecure Electronic Delivery(SED;E093 [110]参照)が導入され,複写の申込の際には従来の郵送,ファックス,Arielによる送信に加えて電子メールと組み合わせた電子的送信が選択肢に加わることになった。
SEDによる送信を選択した複写の申し込みがあると,BLではまずスキャナを使用して対象資料のイメージを読み込む。このイメージをBLの管理下にあるサーバに保存し,申し込み時に資料の送信先として指定された電子メールアドレス宛てにファイルへのハイパーリンクを張った電子メールを送ることで複写物の送信が完了する。申し込みからここまでにかかる時間は最短で2時間以内を指定することが可能であり,電子メールを受け取った利用者は都合のよい時間にハイパーリンクから保存されたイメージファイルを開き,その場でそのイメージをプリントアウトできる。
これまで行われてきた郵送以外の文献送信方法と比べても,SEDはファックスより画質の点で優れ,Arielのように特殊なソフトウェアを必要としない点で個人利用者への直接送信に適している。電子情報を直接送信するという点では出版社の提供する電子ジャーナルのサービスに近いが,SEDのサービスはBLのドキュメント・デリバリー用資料のほとんど全てが対象となるため,より広範囲の需要に対応することが可能となった。このようにSEDは,今後の電子的送信サービス仕様の標準となりうる条件を備えている。
一方で,資料を出版する側がこのような電子的送信サービスに難色を示す大きな理由に,電子ファイルの副次的配布の問題がある。この問題に対しては,アドビ社との提携により暗号化されたファイルを同社のソフトウェアAdobe Readerを用いて利用する仕組みを築いたことと,イメージファイルそのものを利用者に渡すのではなく図書館の管理下にあるサーバ上で利用に供し一定期間経過後に削除することにより解決が図られている。
Adobe Reader 6.0.1はアドビ社のホームページから無料でダウンロードでき,ファイルを不正に改変することを防ぐとともに,ファイルからのプリントアウトも一度のみに限定している。但し最初の印刷指示がなんらかの問題で失敗に終わった場合は,再度印刷を行うことも可能である。
サーバ上にイメージファイルが保存されている期間は,フェア・ユースとして著作権料の支払いを免除されるサービスにおいては電子メールの送信日付から14日間に限られている。著作権料を支払って複写を依頼する場合はさらに最長で3年間ファイルを保存し,Adobe Readerの機能を使用して画面上に書き込みを表示することも可能となる。
英国で開催されたデータベースに関する国際展示会“Online Information 2002”でBLが電子的送信サービスの導入を検討していることが発表された時点では,同館のInsideWebサービスの発展形として,電子ジャーナルを含むエルゼビア・サイエンス社の雑誌論文から約100万件の論文を,著作権料を徴収した上で電子的に送信することが想定されていた。しかし,その後の開発段階における同社との協議の結果,上記の条件の下にSEDのサービス対象は著作権料の支払いを伴うサービス以外にも拡大することで合意が図られ,現在のサービスが実現することとなった。
SEDの利用を希望する利用者にとっての問題は利用環境の整備にあることが多い。利用者の機器操作の習熟度によるもの以外にも,OSやソフトウェアの旧版を利用しており何らかの事情で更新することができない場合や,機関利用者においては機関のシステム上またはファイアーウォール等の安全設備上ソフトウェアの導入や必要な電子メールの受信が妨げられる場合などがある。このような問題の解決に向けてBLは利用者教育に力を入れると共に,利用を意図する機関と協議を行って解決方法を模索している。
SEDによるサービスは2004年7月現在で全体の1割弱を占めるまでに普及している。一般利用者へのサービス開始から1年が経過して,今後認知度の上昇とともにこの割合も増えていくことが予想される。
関西館資料部文献提供課:井上 佐知子(いのうえ さちこ)
Ref:
Robinson, P. Introducing SED: Secure Electronic Delivery from the British Library. Newsletter of the IFLA Document Delivery and Interlending Section. July 2004, 12-14. (online), available from < http://www.ifla.org/VII/s15/pubs/Document-Delivery-Newsletter-July04.pdf [111] >, (accessed 2004-10-05).
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CA1484 [114]ですでに紹介したように,ドイツのドキュメントサプライサービスsubitoは,発足以来順調に業績を伸ばしてきていた。2003年には,117万7千件の利用件数を記録し,その約49%に当たる約57万3千件が国外からの利用であった。subitoの今後の事業拡大の重要な柱の一つが国外サービスの充実にあったため,この数字は戦略の成功を意味していたと評価することができよう。しかし,著作権問題を契機として,国外における事業拡大にストップがかかることとなった。
前回の記事で紹介したように,subitoの利用料金は,国内外を問わず,グループ1に該当する利用者(学生・大学職員・公法人の職員等)については,1文書あたり,電子媒体4ユーロ(1ユーロ=約136円),郵送6ユーロ,ファックス7ユーロ,グループ3に該当する利用者(個人)については,電子媒体6.5ユーロ,郵送8ユーロ,ファックス9ユーロと設定されていた(なお,グループ3の利用者については,2004年1月から郵送8.5ユーロ,ファックス9.5ユーロに値上げされている)。こうした国際的に見て安価なドキュメントサプライサービスに対し,STM(科学・工学・医学)系出版社が著作権侵害を理由にsubitoを提訴する事態に発展し,双方の交渉の結果,2003年9月20日以降,subitoは,ライブラリー・サービス,すなわち,図書館を通じて利用者に資料を提供するサービスを除き,非ドイツ語圏の国外へのサービスを自粛することとなったのである。
その後,出版社側との紛争はさらに拡大し,2004年6月には,ドイツ書籍出版販売取引業者組合とSTM国際協会が,subitoとsubito参加館のアウグスブルク大学図書館の運営管理者であるバイエルン州とを相手取り,電子媒体によるドイツ,オーストリア,スイスへの資料提供および電子的手段,郵送,ファックスによる図書館を通じた第三者への資料提供の中止を求める訴訟をミュンヘンの州裁判所に提起した。なお,ドイツ書籍出版販売取引業者組合とSTM国際協会は,ドイツ政府が著作権に関するEU指令(Directive 2001/29/EC)を適切に国内法化していないと主張し,現在,欧州委員会に不服申立てを行っている。
出版社側との訴訟に関し,subitoのローゼマン(Uwe Rosemann)理事長は,原則的に現状の法的枠組みを変更することなく,サービス提供を継続することができるであろうとの楽観的な見通しを述べている。一方,国外サービスをめぐるSTM系出版社との交渉も近いうちに妥結し,国外サービスが再開されるであろうとも述べている。とはいえ,基本的なサービスの枠組みを維持できるとしても,こうした出版社側の抗議を受け,subitoは,今後著作権料の引き上げなどの措置に迫られるのではないかと予想される。
調査及び立法考査局政治議会課憲法室:山岡 規雄(やまおか のりお)
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Rosemann, Uwe. ドイツの図書館サービスの最新動向-subitoとvascoda-. デジタル時代のドキュメント・デリバリー・サービス:ビジョンと戦略 (国際セミナー配布資料), 京都, 2004.12, 国立国会図書館. 京都, 2004.
フランスでは,文献提供業務は主に大学図書館や科学技術情報研究所(Institut de l'information scientifique et technique:INIST)によって処理されている。特にINISTは,科学論文の複写サービスを毎年70万件提供しており,フランスの文献提供市場の過半数を占めている。
INISTとは,国立科学研究センター(Centre national de la recherche scientifique:CNRS)に属する文献提供機関であり,CNRSの2つのドキュメンテーションセンターを統合して,1988年に設立された。科学・技術・医学(STM)分野,人文社会分野に関するフランス国内および外国の文献などを中心に,逐次刊行物26,000タイトル(うち8,700タイトルを継続して購入),科学レポート75,000タイトル,会議録115,000点,博士論文125,000タイトルなどを所蔵し,主に,ドキュメント・デリバリー・サービス,STM,人文社会分野の資料の索引作成,オンラインその他電子的手段を通じた情報提供などを行っている。
INISTの蔵書は,Article@INIST(700万点以上にのぼるあらゆる蔵書の中から検索できる),ArticleSciences(特にSTM分野の雑誌の中から記事・論文を検索できる)の2つのオンラインデータベースで検索することができ,検索結果を見て直接ウェブ上で複写を注文することもできる。また,INISTおよび協力館が有する科学技術情報をポータルサイト“ConnectSciences”を通して提供しているほか,2004年9月には,オビッド・テクノロジーズ(Ovid Technologies)社と協力し,人文社会科学関連の情報を提供するポータルサイト“BiblioSHS”を運営することを発表した。
INISTによる文献提供は,文献そのものの貸出ではなく,著作権法に規定された範囲内での複写物(photocopies)の提供によって行われ,提供方法は,Ariel,ファクシミリ,郵送から選択できる。必ずしも利用者からの要求のすべてをINISTの蔵書で賄えるわけではないが,BLDSC,カナダ国立科学技術情報機関(CISTI),ハノーバー技術情報図書館など約200の文献提供機関と協力して,利用者からの要求に可能な限り対応している。1987年の時点では,要求された文献のうち5%が他機関からの取り寄せであったが,現在は他機関からの取り寄せが約20%を占めている。
INISTに対する文献提供の要求は,1990年代前半に急増したが,その要因としては,ドキュメント・デリバリーの流れの自動化,電子的手段での注文の急増,サービスの改善などが挙げられており,特に,工業・ビジネス・調査研究部門における情報の必要性が急増したこと,電子媒体の資料へのアクセスが3〜5年前から増大しはじめたことが大きいと考えられている。
文献の提供にあたって重要となる著作権への対応については,INISTではフランス著作権センター(Centre Francais d'exploitation du droit de Copie:CFC)との契約に基づいて対応しているが,英国,ドイツ,オランダなどの図書館から文献を取り寄せると,それぞれの国内法の適用を受ける提供館とCFCの2機関に対して,著作権料を二重に支払わなければならない場合がある。こういった点については,対象国との間で欧州指令(Directive 2001/29/EC)に沿った見直しを行う必要性が指摘されている。
INISTは最近,科学技術情報を広める手段としてのドキュメント・デリバリー・サービスの向上を目指して,文献提供業務の更なる自動化,提供対象の拡大(論文に限らず写真,映像資料も),サービス品質の向上,といった点について検討を進めているところである。
現在,INISTの文献提供は多くが電子媒体によるもので,ウェブ上で検索・注文ができるなどオンライン化も進んでいるが,これを更に進めて,BLDSCでも検討された,電子ジャーナルを出版社の電子情報を用いて送信する方法(1. [117]参照)も検討に値すると指摘されている。
また,サービス品質については,「INISTを通して,あらゆる文献を早く,安く入手する」という利用者の期待に応えるため,協力機関の書誌情報を収めたデータベースを公開するなどの対応を行っているが,システムの整備だけでなく,担当する職員の質の向上も重要と考えている。これに関連して,INISTでは2005年に,INISTのデータベースの使い方,インターネットを用いた科学技術情報の検索方法や,メタデータ,HTML言語の解説など,幅広い分野の研修が科学技術分野の専門家によって行われる予定である。
関西館事業部図書館協力課:上田 貴雪(うえだ たかゆき)
Ref:
Scoepfel, Joachim. INIST-CNRS in Nancy, France: “a model of efficiency”. Inrerlending & Document supply. 31(2), 2003, 94-103.
INIST. (online), available from < http://www.inist.fr/index_fr.php [118] >, (accessed 2004-09-14).
Creff, Christelle. Opening interlending services to end users: The Catalogue Collectif de France. Interlending & Document Supply. 30(3), 2002, 126-129.
Ovid INIST Partnership On Humanities And Social Sciences Portal. Managing Information. 2004-09-10. (online), available from < http://www.managinginformation.com/news/content_show_full.php?id=3083 [119] >, (accessed 2004-09-30).
カナダ国立科学技術情報機関(Canada Institute for Scientific and Technical Information : CISTI)は,カナダはもとより,世界でも有数の科学技術情報資源の所蔵・提供機関である。1924年に国家研究会議(National Research Council)の図書館として設立され,その後1957年にカナダ国立科学図書館へ,1974年にCISTIへと改組されて現在に至っている。
2004年9月現在,CISTIの所蔵資料は,50,000タイトルを超える逐次刊行物(うち11,000タイトル以上が現在受入中のもの),60万冊を超える図書および会議録・テクニカルレポート,世界中のテクニカルレポートのマイクロフィッシュ200万枚などで,主要な科学雑誌はもちろん,世界中のあらゆる言語の科学技術情報資源をカバーしている。
CISTIはこれら豊富な科学技術情報資源をもとに,ドキュメント・デリバリー・サービスに力を入れている。最新の公式統計は確認できなかったが,1999年から2000年の実績で約54万件の文献複写需要を充足させている。また,参加しているOCLCのILL活動の中では,2001年7月から2002年6月までの統計で,ILL総件数の約42%である約7万件を受け付け,その内73%(約5万件)の要求に応えているなど,国際的にも主要なドキュメント・サプライヤーとしてその地位を確立している。
CISTIは世界中からの情報入手要求に応えるため,3種類のサービス・レベルを設定している。Direct Serviceは,科学・技術・医学・農学に関する分野についてCISTIおよびカナダ国立農学図書館の所蔵資料から提供するもので,注文の90%は24時間以内に処理される。オプションとして4時間以内の至急サービスも行っている。Link Serviceは全分野について,所蔵資料のほかBLDSC(英国)や中国科学技術信息研究所(中国)など提携機関の情報源から提供するもので,注文の大部分は72時間以内に処理される。Global Serviceは全分野,全世界のソースから提供するもので,注文の大部分は4週間以内に処理される。
ドキュメントの送付手段も,クーリエ(郵送),ファックスに加え,電子環境に対応するため,ArielおよびSecure Desktop Delivery(SDD)といったインターネットを介した文献伝送システムを用意している。Arielは米国研究図書館グループ(RLG)が開発したファイル転送ソフトウェアで,IPアドレスを指定してのドキュメント送受信を可能にする。ドキュメント・ファイルは,マルチページTIFFフォーマットの画像ファイルと依頼者名や送付先といったファイル情報を合わせたGEDIフォーマットで構成される。SDDは2003年12月に開始したウェブ・インターフェイスでの送付方法であり,利用者のPCにAcrobat Readerのプラグイン・ソフトを組み込むことで実現する。スキャンしたドキュメントをCISTIのウェブ・サーバにアップロードし,同時に利用者には電子メールで書誌情報とURLの情報を送る。利用者はそのURLにアカウントを使ってアクセスし,ドキュメントを閲覧することができる。閲覧および印刷は一度きり有効の設定となっている。同様の送付方法はBLDSCでも実現しており,デジタル時代のドキュメント・デリバリーにおける主流になりつつある。CISTIは個々の出版社と著作権処理の交渉にあたり,2004年2月には全ての雑誌をSDDで提供できるようになっている。
近年,CISTIは資源共有の観点から,大学図書館や医学図書館,それらのコンソーシアムなど,様々な情報機関とのネットワーク活動に力を入れている。例えば,機関契約した大学図書館とは,大学のローカルシステムとシステム連携を図り,検索した文献で大学が所蔵するものは大学図書館の利用へと誘導し,所蔵しないものについてCISTIへ依頼が廻るようにしている。また,電子資源の共有も視野に入れており,連邦科学技術図書館戦略同盟(Strategic Alliance of Federal Science and Technology Libraries)を結成し,政府系研究機関への電子ジャーナル・サイトライセンスを実現する連邦科学電子図書館(Federal Science eLibrary)の設立を政府に働きかけている。このように,CISTIは資源共有の理念の下,各情報機関とのネットワーク化や電子資源の共有化を推進しながら,国際的なサプライヤーとして,研究に不可欠な印刷物のドキュメント・デリバリー・サービスを拡張・強化している。
関西館事業部図書館協力課:筑木 一郎(つづき いちろう)
Ref:
CISTI. “About Document Delivery”. (online), available from < http://cisti-icist.nrc-cnrc.gc.ca/docdel/docdel_e.shtml [120] >, (accessed 2004-09-22).
Krym, Naomi et al. Resource-sharing roles and responsiblities for CISTI: change is the constant. Interlending & Document Supply. 29(1), 2001. 11-16.
VanBuskirk, Mary et al. Resource-sharing roles and responsibilities for CISTI: for better or for ILL? Interlending & Document Supply. 31(3), 2003. 169-173.
OCLC. “Performance report: OCLC Interlibrary Loan Statistics 1 July 2001 through 30 June 2002”. (online), available from < http://www.oclc.org/ill/options/managelenders/customholdings/supplier/docsupplier/performance.htm [121] >, (accessed 2004-09-22).
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本稿では,学校図書館に関する日本国内の研究の2000年頃からの動向を報告する。NDL-OPACで和図書と雑誌記事を「学校図書館」「司書教諭」「学校司書」といったキーワードで検索するなどして把握された近年の研究の特徴を指摘し,それについて若干の私見を示したい。その上で,学校図書館に関わって今後期待される研究を指摘して終わる。
筆者は,全般的な動向として,日本において近年,学校図書館研究が増えてきているという印象をもっている。1997年に立ち上げられた日本学校図書館学会で発表されている研究は,ほぼすべて学校図書館に関するものである。また,国内の図書館情報学研究者の本格的な研究がしばしば発表される日本図書館情報学会でも,特に春季研究集会と秋季研究大会という口頭発表の場で,数年前から,学校図書館に関わる研究発表が他の館種に関する研究発表よりも多いということがある。しかし,本格的な研究,つまり査読を経て発表された論文や,オリジナリティのある質の高い研究書となると,その数は未だに極めて限られている。
NDL-OPACを検索したところ,2000年以降に複数の研究者によって取り組まれている主な研究として,(1)学校図書館職員のあり方に関する研究(職員制度,職員養成,職務内容等),(2)学校図書館の電子化に関する研究,(3)学校図書館における知的自由に関する研究,(4)特別支援教育と学校図書館に関する研究,(5)占領期における学校図書館改革に関する研究, (6)『インフォメーション・パワー』に関する論考・翻訳書が見つかった。以下,これらの研究について順に述べていく。
学校図書館職員のあり方に関する研究は,1997年の学校図書館法の改正後,新たな局面に入った観がある。法改正によって,2003年度末までに,12学級以上の規模の学校に司書教諭が必ず置かれることとなった。日本では,学校図書館職員制度の問題は,戦後長く,学校図書館に関わる人たちの多くが関心を持ってきた問題であるが,学校図書館法の改正後に関心はさらに高まり,様々な論考が著されている。法改正直後は改正そのものについて,その是非などを議論するものが多かったが,2000年以降は,より本質的または具体的な議論へと移行しているようである。
学校図書館職員の問題は複雑で,異なる意見を持つ人・グループがいくらでも存在するように思われるから,突っ込んだ形での議論は,公の場では必ずしも頻繁に行われてはいない。そうした中で,2002年に『図書館界』誌上で現場の実践者と研究者の双方が「学校図書館職員像」についての意見を述べあった対論(1)は,注目される。
学校図書館法に規定された司書教諭に焦点をあて,そのあり方について論じたものは多い。日本学校図書館学会は,旧文部省の委嘱をうけて,1999年度と2000年度に,「学校図書館の効果的な運営と司書教諭の在り方に関する総合的研究」に取り組み,2つの研究報告を公にした(2)。同学会は1998年度と1999年度に,「学校図書館に対する現状認識」を明らかにするとして,全国の公立小学校・中学校の校長を対象に学校図書館に関する意識調査を実施していたが,それらの調査の中で,校長の間に司書教諭の役割と職務に関する認識が不足していることが明らかになった。その調査結果を受け,「学校図書館の効果的な運営と司書教諭の在り方に関する総合的研究」では,学校としてどのように図書館運営の協力体制を作り,また司書教諭がいかにその専門性を発揮していくかについて考えることを目指したという。
ところで,近年,学校経営に責任を持つ校長の学校図書館に対する理解が学校図書館や学校図書館職員のあり方に大きな影響を与えると指摘する研究が注目されている。上掲の日本学校図書館学会のものとは別に,平久江祐司氏が,昨年,論文「学校図書館及び司書教諭に対する校長の意識の在り方:東京,大阪,京都の高等学校校長の意識調査の分析をもとに」(3)を発表している。
ほとんどの司書教諭が充て職であるということ,また司書教諭のあり方は,同じ学校図書館で働く他の学校図書館職員のあり方からもある程度規定されることによるのであろうが,司書教諭を含む学校図書館職員間の連携と職務分担についての研究も,学校図書館法の改正後に本格化してきている。2000年の春,塩見昇氏の『学校図書館職員論:司書教諭と学校司書の協同による新たな学びの創造』(4)が出された。また,黒沢学氏と筆者の共同研究「千葉県市川市における学校図書館への複数職種の配置とその連携:学校図書館関係職員の意識調査から」(5)も,学校図書館に関わる複数の職員の間の連携について論じた。そのほか,浦野はるみ氏による「(研究情報[国内])学校図書館における職務分担:スタッフマニュアルの分析から」(6)などの研究がある。
他方で,いわゆる「学校司書」のあり方に焦点をあてた論考も,数多く発表されている。たとえば,『学校図書館』誌では,2002年7月号から,「学校図書館を支える学校司書」というリレー連載(7)が掲載されている。また,『現代の図書館』2001年3月号の「特集:「司書」という職業」では,田中瑞穂氏による「小学校図書館司書の仕事」と,宮崎健太郎氏による「高校で,ただ一人の司書として:学校司書の仕事を見てみると」(8)が掲載されている。
以上のように,学校図書館職員に関しては,職員のあり方についての意見表明の論述や,現在の職員制度の中で学校図書館をいかに運営するかといった考え方に基づく論考・研究が数多く見つけられる。これに対して,ある特定の職種・立場や現行の職員制度を超えた本質的な議論は数少ない。現行制度を前提とした職員間の連携の問題を取り上げた論文(9)を著したことのある筆者は,近年,そうした現行制度の中での議論に限界を感じるようになってきている。以下にも述べるように,学校図書館の電子化,戦後最大の教育改革といったことが進行している一大展開期にあって,職員問題も根本的な再検討を行うべく,原点に返ってより本質的な議論をしていくことが求められているのではないだろうか。
学校図書館の電子化については,現場からの実践報告が各誌に数多く見つけられる。また,図書としては,根本彰氏監修,堀川照代氏と筆者による編集の『インターネット時代の学校図書館:司書・司書教諭のための「情報」入門』(10)がある。
学校図書館の電子化についての研究・論考は,多くが情報教育,特に高校に新設された教科「情報」,小・中・高校に新設された「総合的な学習の時間」との関わりを中心に論じている。新設の「情報」「総合的な学習の時間」の実践に学校図書館がいかに貢献するかは,現場の実践者の間で近年特に関心をもたれている分野であるように思われる。情報教育や教科「情報」との関わりでは,青山比呂乃氏(11),有吉末充氏(12),萩原環氏(13)の論文が興味深い。また,総合的な学習の時間との関わりでは,『学校図書館』の特集「総合的な学習と学校図書館メディア」(14),『現代の図書館』の特集「「総合的な学習」と図書館」(15),『学校図書館』の連載「総合的な学習と学校図書館」(16)といった特集号・連載に複数の論考が掲載されているほか,『学校図書館学研究』にも,国内の研究情報や実践報告が掲載されている(17)。
学校図書館の電子化について,実践報告以外では,金沢みどり氏を中心とした研究グループによる,学校図書館ホームページについての研究がある(18)。金沢氏らはその研究について口頭発表も数度,行ってきている。
この分野は,本格的な研究と言えるものは現在までのところ大変少ない。実践から理論を生み出すといった,もう一歩踏み込んだ研究が望まれているように思われる。
この分野の研究は,主として川崎良孝氏と前田稔氏によって精力的に進められている。両氏の名前で検索すれば,研究をほぼ網羅できるほどである。
図書としては,翻訳『学校図書館の検閲と選択:アメリカにおける事例と解決方法』(19)がある。
雑誌論文としては,前田氏と川崎氏の共著「アメリカにおける学校図書館蔵書をめぐる裁判事例」(20),前田氏による「学校図書館蔵書の除去をめぐる裁判の核心:表現の自由と思想の自由」(21),川崎氏による「学校図書館の検閲と生徒の知る権利:チェルシー事件(1978年)の場合」(22)などがある。そして,おそらく最も新しいものとして,川戸理恵子氏「(事例研究)アメリカにおける「ハリー・ポッター」シリーズ検閲論争」(23)がある。
図書館の自由の問題は,図書館にインターネット接続端末が導入されるにあたっての,インターネット上のいわゆる有害情報への対策の是非という新たな問題が加わって,より複雑になってきている。今後もさらに研究が積み重ねられることが期待される。
このテーマについては,野口武悟氏が精力的に研究を発表している(24)。このほか,松戸宏予氏が修士論文で「特別なニーズを抱える児童生徒への学校司書の役割と支援」(25)を完成させ,その研究成果の一部を口頭発表で明らかにしてきている。松戸氏の研究は,特別支援教育といっても,普通学級に通う子どもたちと学校図書館の関わりを論じている。
学校図書館の資源がマルチメディア化しつつあることなどを考えても,特別支援教育に対して学校図書館が様々な役割を担える可能性が増えてきているだろう。この分野は,本質的な問題設定に基づいて研究を進めようとする研究者が現れてきており,今後の研究成果を期待できる。
占領期についての歴史研究としては,篠原由美子氏による「(資料紹介)メイ・グラハム「日本の学校図書館」」の発表(26)が最も早く,以後,同氏による「『学校図書館の手引』作成の経緯」(27),田辺久之氏の「占領期GHQ/SCAPによる高等学校図書館振興施策としてのコンプトン百科事典コンテストの経緯」(28)と続き,2002年の末に,筆者が「戦後日本における学校図書館改革の着手:1945-47」(29)を発表したのが最も新しい。
第二次世界大戦終結後のアメリカ軍による日本占領の時期に,学校図書館についての新しい考え方が日本に移入されており,その時期を振りかえることで,現代の学校図書館の検討に新しい視点を持ち込もうという意図は,占領期の研究に取り組む研究者に共通しているように思われる。この分野も,複数の研究者が取り組んでおり,今後,さらなる研究成果が期待できるだろう。
米国で1998年に出版された“Information power : building partnerships for learning”の日本語訳が,2000年に,『インフォメーション・パワー:学習のためのパートナーシップの構築』として出版された(30)。これを受けて,主としてその翻訳者たちによって,口頭発表を含めて多くの研究・論考が発表されている(31)。
また,その続編とも言うべき翻訳書『インフォメーション・パワー:学習のためのパートナーシップの構築:計画立案ガイド.2』(32)や,姉妹版とも言うべき実践書『インフォメーション・パワーが教育を変える!:学校図書館の再生から始まる学校改革』(33)が,2003年に続けて出版された。
これらの翻訳書や論考が,日本の学校図書館,学校図書館研究に与えた影響は定かではない。だが,翻訳者をはじめとする幾人かは,現在,日本の現場でその応用に試行錯誤していると聞いており,日本の学校図書館になんらかの影響をもたらす可能性はこれからまだあるであろう。
さて,最後になってしまったが,実は,上記のどこにも収まりきらなかった本格的な研究書がある。『学習社会・情報社会における学校図書館』(34)である。図書館学・教育史学・教育工学・教育行政学・教育法学の5人の研究者がその著者であり,文部科学省の科学研究費補助金による研究の成果をまとめたものである。これまで,教育学者が本格的な学校図書館研究に携わることはほとんどなかった。それを覆し,教育学の中の異なる手法・関心を持つ研究者が集まって,教育における学校図書館の意義を多方面から明らかにしようとした試みであり,注目される。
また,実践書としても,学校図書館の活動を多角的に扱った注目すべき2冊に言及しておきたい。山形県鶴岡市立朝暘第一小学校編著『こうすれば子どもが育つ学校が変わる』と,浅井稔子著『司書教諭1年生:授業・子どもがこんなに変わる』である(35)。タイトルを見てもわかるように,この2冊は学校図書館の活動を網羅的に紹介しているというだけでなく,学校図書館における学びによる子どもの変化に着目している点が評価されよう。
さて,本稿では,学校図書館研究の近年の動向を概観したが,学校図書館における情報リテラシーの育成に関する研究が,一般的な翻訳書のほかにほとんど見られないことが,筆者には残念に思われた。本格的な研究としては唯一,河西由美子氏の修士論文「インターネット利用が情報探索過程に及ぼす影響について−高校生のウェブ検索における失敗の研究−」(36)があるのみである。情報教育を進めてきている教育工学分野で,情報活用能力の育成に注目が集まっている。日本でも学校図書館が,情報リテラシーまたは情報活用能力と呼ばれるような情報やメディアの活用に関わる能力の育成を今後担っていくことを目指すなら,学校図書館研究でも,翻訳に限らず,この分野についての本格的な研究が行われることを期待したい。
以上,2000年以降の学校図書館研究の動向をみてきたが,改めて,本質的な議論を目指す論考・研究が少ないと感じた。科学的な研究手法とみなせるような手法を用いた研究も未だに数少ない。意見表明や実践報告は大変貴重であるが,単なる意見に留まらず実践から理論を生み出すような,または研究から実践を変革するような意識を持った論考が増えて欲しいと思う(自らに対してもそう戒めたい)。それにはまず,現場の実践者と研究者の共同研究が増えることが期待されよう。しかし,研究者数には限界もあるであろうし,現場の実践者の方たちが,自らの実践を客観視する視点を持ったり,客観性あるデータや資料に基づいて科学的な手法によってそれを分析し,理論を生み出す力を持つことを,筆者は個人的には期待している。外に対して,つまり学校図書館関係者だけでなく,広く学校教育関係者,保護者,一般市民に理解されるためには,議論が自らの立場によって規定・限定されているものでは不十分であろう。米国などでは,そうした「研究」と呼べるものを発表できる人たちの裾野の広さが,図書館,はたまた学校図書館の発展を支えているように思われる。
また,近年,これまで文系の研究手法として一般的であった,主として文献調査に基づく事例研究や歴史研究,調査と統計による研究以外に,質的研究の手法や学際的な研究法等,図書館への新たなアプローチが考えられるようになってきている。新しいタイプの研究・研究者の誕生も期待したい。
同志社大学文学部:中村 百合子(なかむら ゆりこ)
(1) | 宇原郁世. 21世紀の図書館を展望する(4) 学校図書館職員像をめぐって: 市民は何を期待し,職員はどう考えてきたか. 図書館界. 53(6), 2002, 526-535. 柴田正美. 論文検討会要旨: 宇原郁世「学校図書館職員像をめぐって: 市民は何を期待し,職員はどう考えてきたか」. 図書館界. 54(3), 2002, 156-159. 渡辺信一. <宇原郁世: 学校図書館職員像をめぐって>に関する若干の考察. 図書館界. 54(3), 2002, 160-163. 北村幸子. 21世紀の学校図書館: 宇原郁世「学校図書館職員像」を考える. 図書館界. 54(3), 2002,164-169. |
(2) | 平成11年度文部省委嘱研究「学校図書館の効果的な運営と司書教諭の在り方に関する総合的研究」調査研究結果報告書. 熱海則夫, 2000.6. 平成12年度文部省委嘱研究「学校図書館の効果的な運営と司書教諭の在り方に関する総合的研究」調査研究結果報告書その2. 熱海則夫, 2001.6. |
(3) | 平久江祐司. 学校図書館及び司書教諭に対する校長の意識の在り方: 東京,大阪,京都の高等学校校長の意識調査の分析をもとに. 日本図書館情報学会誌. 49(2), 2003, 49-64. |
(4) | 塩見昇. 学校図書館職員論: 司書教諭と学校司書の協同による新たな学びの創造. 東京, 教育史料出版会, 2000, 207p. |
(5) | 中村百合子ほか. 千葉県市川市における学校図書館への複数職種の配置とその連携: 学校図書館関係職員の意識調査から. 日本図書館情報学会誌. 48(1), 2002, 17-33. |
(6) | 浦野はるみ. 研究情報[国内]: 学校図書館における職務分担−スタッフマニュアルの分析から. 学校図書館学研究. (5), 2002, 41-47. |
(7) | リレー連載: 学校図書館を支える司書. 学校図書館, (621), 2002, 90-92. 以降連載継続中. |
(8) | 田中瑞穂. 小学校図書館司書の仕事. 現代の図書館. 39(1), 2001, 20-25. 宮崎健太郎. 高校で,ただ一人の司書として: 学校司書の仕事を見てみると. 現代の図書館. 39(1), 2001, 26-30. |
(9) | 中村百合子ほか, 前掲(5). |
(10) | 堀川照代ほか編著. インターネット時代の学校図書館: 司書・司書教諭のための「情報」入門. 東京, 東京電機大学出版局, 2003, 173p. |
(11) | 青山比呂乃. 司書教諭のいる学校図書館と情報教育の可能性: 1つの事例報告. 情報の科学と技術. 50(8), 2000, 425-431. |
(12) | 有吉末充. 学校図書館を舞台にした情報メディア教育. 教育. 52(4), 2002, 63-69. |
(13) | 萩原環. 実践報告: 教科「情報」とのコラボレーション授業. 現代の図書館. 42(1), 2004, 59-63. |
(14) | 特集: 総合的な学習と学校図書館メディア. 学校図書館. (605), 2001, 15-39. |
(15) | 特集:「総合的な学習」と図書館. 現代の図書館. 40(1), 2002, 3-55. |
(16) | 連載: 総合的な学習と学校図書館. 学校図書館. (621), 2002, 87-89. 以降連載継続中. |
(17) | 例えば,佐藤正代. 研究情報[国内]:高等学校における「総合的な学習の時間」に対する学校図書館の支援と利用指導. 学校図書館学研究. (5), 2003, 49-54. 佐藤幸江. 実践報告:主体的な学びを充実させる情報活用の実践:総合的な学習の時間における学校図書館の活用. 学校図書館学研究. (4), 2002, 51-56. |
(18) | 例えば,金沢みどりほか. シーライ・コンテンツ・モデルの比較によるアメリカの学校図書館ホームページの評価. 学校図書館学研究. (3), 2001, 19-27. 金沢みどりほか. 調査報告: アメリカの学校図書館ホームページにおけるWeb版OPACの評価. 学校図書館学研究. (4), 2002, 35-42. |
(19) | Reichman, Henry. (川崎佳代子, 川崎良孝訳) 学校図書館の検閲と選択: アメリカにおける事例と解決方法. 京都, 京都大学図書館情報学研究会, 2002, 285p. |
(20) | 前田稔ほか. アメリカにおける学校図書館蔵書をめぐる裁判事例. 京都大学生涯教育学・図書館情報学研究. (2), 2003, 101-134. |
(21) | 前田稔. 学校図書館蔵書の除去をめぐる裁判の核心: 表現の自由と思想の自由. 図書館界. 55(1), 2003, 2-16. |
(22) | 川崎良孝. 学校図書館の検閲と生徒の知る権利: チェルシー事件(1978年)の場合. 図書館界. 55(4), 2003, 194-206. |
(23) | 川戸理恵子. 事例研究: アメリカにおける「ハリー・ポッター」シリーズ検閲論争. 学校図書館学研究. (6), 2004, 21-29. |
(24) | 野口武悟. 盲学校図書館における地域の視覚障害者に対する図書館サービスの構想と展開: 学校図書館法成立前後から1960年代の検討を通して. 日本図書館情報学会誌. 49(4), 2003, 156-171. 野口武悟. 「障害児学校」における学校図書館の制度的成立と展開: 「学校図書館法」成立前後の学校図書館行政の検討を中心に. 学校図書館学研究. (6), 2004, 3-19. |
(25) | 松戸宏予. 特別なニーズを抱える児童生徒への学校司書の役割と支援. 東京学芸大学大学院教育学研究科提出, 2004. 修士論文. |
(26) | 篠原由美子. 資料紹介: メイ・グラハム「日本の学校図書館」. 図書館文化史研究. (18), 2001, 107-119. |
(27) | 篠原由美子. 『学校図書館の手引』作成の経緯. 学校図書館学研究. (4), 2002, 15-33. |
(28) | 田辺久之. 占領期GHQ/SCAPによる高等学校図書館振興施策としてのコンプトン百科事典コンテストの経緯. 学校図書館学研究. (4), 2002, 3-13. |
(29) | 中村百合子. 戦後日本における学校図書館改革の着手: 1945-47. 日本図書館情報学会誌. 48(4), 2002, 147-165. |
(30) | アメリカ・スクール・ライブラリアン協会ほか編. (同志社大学学校図書館学研究会訳) インフォメーション・パワー: 学習のためのパートナーシップの構築: 最新のアメリカ学校図書館基準. 京都, 同志社大学, 2000, 234p. |
(31) | 例えば,岩崎れいほか.『インフォメーション・パワー:学習のためのパートナーシップの構築』に関する一考察: 1999〜2001年の文献レビューを中心に. 同志社大学図書館学年報. (28別冊), 2002, 27-52. |
(32) | アメリカ・スクール・ライブラリアン協会ほか編. (同志社大学学校図書館学研究会訳) インフォメーション・パワー 2 学習のためのパートナーシップの構築: 計画立案ガイド. 京都, 同志社大学学校図書館学研究会, 2003, 116p. |
(33) | アメリカ公教育ネットワーク,アメリカ・スクール・ライブラリアン協会. (足立正治ほか監訳) インフォメーション・パワーが教育を変える!: 学校図書館の再生から始まる学校改革. 東京, 高陵社書店, 2003, 211p. |
(34) | 塩見昇ほか. 学習社会・情報社会における学校図書館. 東京, 風間書房, 2004, 279p. |
(35) | 山形県鶴岡市立朝暘第一小学校編著. こうすれば子どもが育つ学校が変わる: 学校図書館活用教育ハンドブック. 東京, 国土社, 2003, 199p. 浅井稔子. 司書教諭1年生: 授業・子どもがこんなに変わる. 東京, 全国学校図書館協議会, 2004, 134p. |
(36) | 河西由美子. インターネット利用が情報探索過程に及ぼす影響について−高校生のウェブ検索における失敗の研究−. 東京大学大学院学際情報学府提出, 2002. 修士論文. |
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