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ホーム > カレントアウェアネス > 2003年 (通号No.275-No.278:CA1483-CA1514) > No.277 (CA1500-CA1506) 2003.09.20

No.277 (CA1500-CA1506) 2003.09.20

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CA1500 - 英国「国民のネットワーク」の成果と今後 / 橋詰秋子

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カレントアウェアネス
No.277 2003.09.20

 

CA1500

 

英国「国民のネットワーク」の成果と今後

 

 情報化社会における"新しい図書館"の構築を目指し,英国の公共図書館を電子化・ネットワーク化している「国民のネットワーク(People's Network)」プロジェクト(詳細はCA1394 [3]参照)は,公共図書館の利用にどのような影響をもたらしているのだろうか。当初の計画期限であった2002年末を迎えるにあたって,プロジェクトを主導する博物館・文書館・図書館国家評議会(Council for Museums, Archives and Libraries: Resource)は2002年10月に全国の図書館行政庁を対象とした調査を行い,2003年1月にその調査報告書『国民のネットワーク:公共図書館の転換点第一次調査報告(People's Network: A turning point for public libraries - First Findings)』(E054 [4]参照)を発表した。

 この報告書によると,「国民のネットワーク」が推進する公共図書館へのインターネット端末の設置とそれを用いたサービスは,図書館行政庁の作成する年次図書館計画に組み込まれるなど,新たな図書館サービスとして定着していた。2002年11月の時点で,18,578台のインターネット端末が公共図書館で提供され,約2,000館が2Mbps以上の,約200館が10Mbps以上のブロードバンドと接続していた。また「国民のネットワーク」を通して提供されるインターネットアクセス時間は12月までの一年間で約6,800万時間にも達すると予測されている。当初の目標(約4,000の図書館に30,000台の端末を設置)には達していないものの,同書においてResourceは,「国民のネットワーク」は英国各地で"静かな革命"を起こし,利用者に積極的かつ有益なインパクトを与えていると高く評価している。この報告書には今後の資金獲得のねらいがあるとみられるが,同プロジェクトの成果を知る上でも興味深い。以下,その概要を紹介する。

 調査の結果,「国民のネットワーク」のサービスは小学生から高齢者まで幅広く利用され,コンピュータをほとんどあるいは全く使ったことのない人々を公共図書館に引きつける要因となっていた。「国民のネットワーク」は,特に,家庭にインターネットを導入することが困難な低所得者層から歓迎されていた。報告書では,こうした広範な利用の理由の一つとして,公共図書館は一般の人にとって他の公的教育機関よりも心理的な抵抗の少ない場所であるため,公共図書館に設置されたコンピュータには挑戦しやすいことを指摘している。

 「国民のネットワーク」サービスの実施に伴って,閲覧などの伝統的な図書館利用も緩やかな増加傾向を示していた。例えば,図書館に登録していなかった「国民のネットワーク」利用者のうち40%が新たに図書館にも登録していた。

 また,「国民のネットワーク」の利用目的は次のようにカテゴライズできた。

  • (1)学習:これまでも公共図書館は学校教育等のフォーマル・エデュケーション,個人的に行うインフォーマル・エデュケーションを支援してきたが,「国民のネットワーク」は,特に,個人の技能や知識の向上を目的としたインフォーマル・エデュケーションのために多く利用されていた。UKオンラインセンター(CA1394 [3]参照)に指定されている図書館も多く,そうした図書館はUKオンラインが提供する多様な学習講座へのアクセスポイントにもなっていた。
  • (2)就職活動:コンピュータを使った履歴書の作成やインターネットによる職探しなど,公共図書館の端末を使って就職活動をする人が多く見受けられた。図書館が開催した講習会で得た資格によって仕事が見つかった人の例も報告されている。
  • (3)個人的なやりとり:電子メールで遠く離れた親戚や友人とやりとりをする利用者が非常に多く見られた。英国を訪れている観光客などの利用もあった。

 その他,(4)地域活動,(5)低所得者や障害者等の人々の社会的包摂(social inclusion)の促進,(6)レクリエーション,のための利用もなされていた。

 しかし,プロジェクト実施の礎となる資金には問題もあるようだ。同書は,「国民のネットワーク」にはこの3年間で宝くじ基金から1億2,000万ポンドが出資されたものの,より実際的な成果を得るためには更なる資金が必要であり,プロジェクトの資金調達は転換期を迎えていると述べている。実際,自治体監査委員会が昨年発表した公共図書館の現状に関するレポートでは公共図書館にあるコンピュータの古さが指摘されているが,端末のリプレースには今まで以上に資金が必要であり,そのためには新たな資金源の発掘が不可欠であるという。

 

「国民のネットワーク」の今後

 以上のような結果を踏まえ,同書では,プロジェクトの今後の課題として,質の高い多様なデジタルコンテンツの提供とそれに基づいたサービスの構築を挙げている。一方,文化・メディア・スポーツ省は,2003年2月に発表した公共図書館サービスの戦略ビジョン『将来への枠組み(Framework for the Future)』(E056 [5]参照)において,「国民のネットワーク」が国家的な情報政策の中で果たしている役割を評価し,今後の活動に関してはResourceが各地の図書館行政庁と議論を重ねていると言及している。また今後は,これまでの成果に基づいて,オンライン上にコンテンツ,学習支援サービス,コミュニティを構築するための戦略策定へ重心を移すことになるだろうとしている。

 1998年に発表されプロジェクトの礎となった報告書『新しい図書館:国民のネットワーク』(CA1181 [6]参照)では,"新しい図書館"は3つのストランド(より糸)で編まれる,つまり(1)ネットワークの構築,(2)図書館職員の情報技能研修,(3)コンテンツの開発から成るとされていた。「国民のネットワーク」のホームページによると,現在プロジェクトはその活動を第2フェーズと呼ばれる新たな段階へと移行させ,「国民のネットワーク」を図書館外の様々な場所でも利用できるサービスへ展開しようとしている。この第2フェーズは,(1)「国民のネットワーク」を国家規模のオンラインサービスとするためのプロトタイプの開発と(2)それを構成する具体的なサービスの充実という2つのストランドから成っており,後者については,既に,読書促進に焦点をあてた様々なサービスが英国読書協会などの関係諸機関と共同で行われている(CA1498 [7]参照)。

 「国民のネットワーク」はインフラ整備という初期段階を終え,サービスの定着を目指した次なるステップへ進んでいる。今後の展開にも注目していきたい。

関西館事業部図書館協力課:橋詰 秋子(はしづめあきこ)

 

Ref.

Brophy, Peter. The People's Network: A turning point for public libraries -First Findings. resource, 2003, 21p.

DCMS. Framework for the Future : Libraries, Learning and Information in the Next Decade. DCMS, 2003, 59p.

People's Network. (online), available from < http://www.peoplesnetwork.gov.uk/ [8] >, (accessed 2003-05-21).

英国図書館情報委員会情報技術ワーキンググループ. 新しい図書館:市民のネットワーク.東京, 日本図書館協会, 2001, 131p.

 


橋詰秋子. 英国「国民のネットワーク」の成果と今後. カレントアウェアネス. 2003, (277), p.2-3.
http://current.ndl.go.jp/ca1500 [9]

カレントアウェアネス [10]
図書館政策 [11]
英国 [12]
公共図書館 [13]

CA1501 - デジタル学術情報のアーカイビング-英国JISCの動き- / 呑海沙織

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カレントアウェアネス
No.277 2003.09.20

 

CA1501

 

デジタル学術情報のアーカイビング −英国JISCの動き−

 

1. はじめに

 デジタル情報資源の長期保存は,「文化の継承」および「研究・教育・学習環境の整備」という二つの側面をもつ。知を継承し,情報を提供するという使命をもつ図書館にとって,爆発的に増え続けるデジタル情報資源の長期保存は避けて通れない問題であり,その方法論の確立と実行は急務となっている。

 米国はもとより欧州でも,様々なデジタル情報資源の保存に関するプロジェクトが進行中である(CA1490 [15]参照)。英国では,2001年5月から6か月間実施された英国図書館のウェブ・アーカイビング・パイロット・プロジェクトであるDomain.uk(CA1467 [16]参照),英国の総合的電子図書館プロジェクトeLib(CA1333 [17]参照)の助成の下で実施されたCedars (CURL Exemplars in Digital Archives)プロジェクトをはじめ,2001年7月には電子情報保存連合(Digital Preservation Coalition:DPC)が設立されている。

本稿では,主要なデジタル学術出版物である電子ジャーナルに焦点をあて,英国の情報システム合同委員会(Joint Information Systems Committee:JISC)(1)によるアーカイビングに関する動向について概観したい。

 

2. 英国継続・高等教育機関におけるJISCの役割

 JISCは,情報技術を活用することによって,継続・高等教育機関における学習や研究,教育を促進することを目的とした非営利団体である。1993年4月1日,高等教育財政審議会(Higher Education Funding Councils:HEFCs)によって設立された。

 HEFCsは,1992年の継続・高等教育法によって,イングランド,ウェールズ,スコットランドそれぞれに設置された高等教育機関への補助金配分を主たる目的とする独立法人である。英国では,高等教育機関への補助金総額は政府によって決定されるが,各高等教育機関への配分は,HEFCsの裁量に任されている。補助金は各機関に一括して配分され,機関内の配分は各機関に任されている。補助金の各機関への配分は原則として機関側の代表との協議を経て決定され,配分に対して政府が直接関与することは許されていない。

 継続・高等教育法では,複数のHEFCsが共同して活動することを推奨している。1992年4月30日の閣内大臣からHEFCsへの指針書が,ネットワークや専門的な情報サービスに対応するJISCの設立へとつながった。

 JISCの主たる役割は,英国における継続・高等教育に情報通信技術を活用するための基盤整備を行い,洗練された情報サービスを構築するための戦略をたてることである。実際には,JISCの全国的ビジョンにそったプロジェクトに対して公募を行い,選出された高等教育機関等およびそのコンソーシアムへ助成を行っている。JISCが助成を行っているプロジェクトおよびサービスには,高速学術情報ネットワークであるSuperJANET4(2),包括的電子図書館プロジェクトであるeLib(Electronic Libraries Programme)(3),ソフトウェア,データベース等IT関連製品の契約交渉代行機関であるCHEST(4),全国認証システムであるATHENS等,多岐にわたっている。

3. JISCによるデジタル学術情報のアーカイビング指針

デジタル・アーカイビングについては,JISCの2001年からの5か年計画(JISC 2001 to 2005 strategy)(5)において,主要な戦略のひとつとして掲げられている。学習・教育・研究のための新しい環境を創出するために,デジタル資料の保存やレコード管理についての助言が必要であるとされ,デジタル情報資源の保存およびレコード管理に関する助成プログラムの下,6プロジェクトが立ち上がった。

 Archiving E-Publicationsは,上記プロジェクトのひとつであり,2002年5月1日から2003年4月30日まで実施された。このプロジェクトは,デジタル学術情報のアーカイビングに焦点をあてたプロジェクトである。

 英国では,1995年より学術雑誌のナショナル・サイト・ライセンスに関わるプロジェクトが進行している(CA1438 [18]参照)。PSLI(Pilot Site Licensing Initiative)としてはじまったプロジェクトは,NESLI(National Electronic Site Licensing Initiative)に引き継がれ,現在第3フェーズにさしかかっている。NESLIは,高等教育機関に代わって,複雑な電子ジャーナルのナショナル・サイト契約を行い,電子ジャーナルの統合インターフェースを提供することを目的としたプロジェクトである。

 ウェブにおける電子ジャーナルのアクセス契約では,利用権限をもつ利用者が,出版社のサーバに直接アクセスして論文を利用する。従来のプリント版雑誌の購読とは異なり,コンテンツは図書館に所蔵されることなく,契約終了後は,契約中に利用できた論文へのアクセスも保証の限りではない。このアクセスの不安定性の問題と長期的アクセス確保の必要性については,早くから指摘されており,JISCの電子ジャーナルに関するライセンス・モデル(JISC Model Licence)(6)においても3条項(2.2.2,5.4.1および5.4.2)に渡って言及されている。

 電子ジャーナルの入手や利用についてはNESLIの範疇であるが,そのアーカイビングについては,Cedarsプロジェクトにおいて研究が進められた。アーカイビングについて技術的なアプローチがなされたこのプロジェクトは,1998年から5年間の時限プロジェクトであり,2002年に終了した。最終的に,更なる査定とビジネス・モデルの必要性が課題として残され,この継続プロジェクトとして立ち上げられたのが,Archiving E-Publicationsである。

 Archiving E-Publicationsでは,これまで行われてきたライセンス契約の評価や,出版社などデジタル情報資源へのアクセスや保存に関わる組織の調査,デジタル・アーカイビングに関する海外のプロジェクトの分析等を行い,2003年5月,高等教育機関におけるデジタル学術情報のアーカイビングについての草案『Archiving E-Journals Consultancy - Final Report』(7)を発表した。主査は,Cedarsの主査を務めたジョーンズ(Maggie Jones)氏である。6月30日まで,図書館や出版社等デジタル・アーカイビングに関わる組織からの意見を募り,これらを加味して最終報告書がまとめられる予定である。

 この報告書では,JISCライセンスモデルにおけるアーカイビングに関する条項の実現に向けて出版社と交渉を続けることや,アーカイビングに関して図書館界と出版界の連携を深めること,ジャーナル保存の経済性に関する研究を行うこと,LOCKSSやOCLC Digital Archive,JSTOR等,他のアーカイビングに関わるプロジェクトやサービスに対する分析を引き続き行うこと,ビジネス・モデルを作成すること等13の勧告がなされている。

 

4. おわりに

 英国の大学では,学術雑誌においてプリント版離れの傾向がみられる。プリント版・デジタル版双方の経費は,もはや維持できる段階ではない。しかしデジタル版への移行には,大きな壁が立ちはだかっている。これまで述べてきた長期的アクセスの確保―アーカイビングと,VAT(付加価値税)の問題である。英国においては,出版物に対するVATはゼロ税率であるが,デジタル出版物においては17.5%とされている。この税率不均衡問題に対しては今後,出版者協会(Publishers Association)の動きに注目したい(8)。

英国の学術情報流通の発展は,JISCの存在なくしては語ることができない。どの機関にも属することなく,かつ確固たる財政的基盤を持つJISCは,全国的な視野をもったプロジェクトを次々と立ち上げてきた。デジタル情報資源のアーカイビングについても,個々の組織で対応すべき問題ではなく,全国的・全世界的視点からのグランドデザインが不可欠な分野であろう。Archiving E-Journals Consultancyの最終報告書が待たれる。

京都大学人間・環境学研究科・総合人間学部図書館:呑海 沙織(どんかいさおり)

 

(1)JISC. (online), available from < http://www.jisc.ac.uk [19] >, (accessed 2003-07-01).
(2)JANET and UKERNA. (online), available from < http://www.ja.net/ [20] >, (accessed 2003-07-01).
(3)eLib. (online), available from < http://www.ukoln.ac.uk/services/elib/ [21] >, (accessed 2003-07-05).
(4)呑海沙織. 英国における学術情報資源提供システム. 情報の科学と技術. 51(9), 2001, 484-494.
(5)JISC Strategy 2001-05. (online), available from < http://www.jisc.ac.uk/index.cfm?name=strategy_jisc_01_05 [22] >, (accessed 2003-07-04).
(6)Model Ejournal Licence(based on the NESLI and PA/JISC model licence for journals). (online), available from < http://www.nesli.ac.uk/modellicence.pdf [23] >, (accessed 2003-07-04).
(7)Jones, Maggie. Archiving E-Journals Consultancy - Final Report: Report Commissioned by the Joint Information Systems Committee (Consultation Draft). 2003, 64p. (online), available from < http://www.jisc.ac.uk/uploaded_documents/ejournalsdraftFinalReport.pdf [24] >, (accessed 2003-07-16).
(8)Publishers Association. "The New European VAT Legislation (November 2002)". (online), available from < http://www.publishers.org.uk/paweb/paweb.nsf/0/BD213DEBD5B73E6B80256C36003E3138?opendocument [25] >, (accessed 2003-07-04).

 


呑海沙織. デジタル学術情報のアーカイビング −英国JISCの動き−. カレントアウェアネス. 2003, (277), p.3-5.
http://current.ndl.go.jp/ca1501 [26]

  • 参照(16989)
カレントアウェアネス [10]
電子情報保存 [27]
JISC(英国情報システム合同委員会) [28]

CA1502 - 国家規模でデジタル情報を保存する-LC主導のNDIIPPが本格始動- / 塩崎亮

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カレントアウェアネス
No.277 2003.09.20

 

CA1502

 

国家規模でデジタル情報を保存する
−LC主導のNDIIPPが本格始動−

 

 デジタル形式でしか存在しない情報(ボーンデジタル情報)の量的拡大(ウェブページの増大等)と質的多様化(テキスト,ハイパーテキスト,画像,音声,動画等の複合化等)が加速し,それらにも人類の知的・文化的遺産としての価値があると認めざるをえない状況となってきた。つまり,それらデジタル情報を誰がどのように後世に残していくかという未知かつ壮大なるテーマが現出したのである。

 アナログ情報保存の場合は「モノ」としての媒体を保存することが主目的であったが,デジタル情報保存の概念枠組みは様相を異にする。再生するための機器・ソフトウェア等を組み合わせて,いわば「コト」としてのアクセスを長期的に保証することが「保存」と同義になる。8インチのフロッピーを保管しているだけでは,あるいはビット列が存在するだけでは,後世における利用機会を何ら保証できないのである。

 国際的には,ユネスコが「デジタル文化遺産」の保存に関する憲章およびガイドラインの策定に取り組みはじめた(E021 [30]参照)他,国立図書館長会議(CDNL)デジタル問題委員会においても国立図書館の責務としてデジタル情報保存を重要視すべきことが謳われてきた。とはいえデジタル情報保存の取組みは総じて揺籃期にある。欧米におけるデジタル情報保存計画の動向について調査した英国の情報システム合同委員会(JISC)のビーグリー(Neil Beagrie)氏は,現状ではデジタル情報保存よりもデジタル化の取組みに対して資金配分されることが主であり,短期的なアクセスが重視され,長期的な益をもたらすはずの保存問題は軽視傾向にあることを指摘した。確かにウェブページをアーカイブする計画は各国においていくつか確認できるものの(CA1490 [15]参照),これまでの電子図書館事業が主にコレクションの電子化に重点を置いてきたことは否定できないだろう。このような意味で,国家規模の包括的なデジタル情報保存プロジェクトが米国において本格始動したことは注目に値する。本稿ではその米国議会図書館(LC)が主導する「全米デジタル情報基盤整備・保存プログラム(National Digital Information Infrastructure and Preservation Program: NDIIPP)」について紹介したい。

 NDIIPPの直接的な引き金は,全米科学アカデミー(National Academy of Science: NAS)全米研究協議会(National Research Council: NRC)により2000年7月に提出された報告書『LC21:LCのためのデジタル戦略』である。当該報告書では,LCに対し,他の公共・民間部門と連携してデジタル情報を国家規模で協同的に収集保存するためのリーダーシップを取るべきことが提唱された(CA1343 [31]参照)。この提言を受ける形で,2000年12月,主にボーンデジタル情報を長期的に保存するために,LCが全米規模の基盤整備を主導することを目的としたNDIIPP法が成立(Public Law. No.106-554)。さらに2003年2月14日には,NDIIPPの初期基本計画が議会で承認されたとビリントン(James H. Billington)LC館長は公表した。その予算額は初期計画策定および選択的なウェブアーカイビングのために500万ドル,議会承認後の初期計画履行のために2,000万ドルと報告されているが,加えて,民間部門から寄付等により資金調達すれば,連邦政府が同額の予算(上限7,500万ドル)を計上措置することになっているともいう。なお,NDIIPPの使命は「現在および将来世代のために,急増するデジタル情報―特にデジタル形式でしか存在しない情報―を収集保存するための国家戦略を策定すること」と定義されている。

 この使命を達成するための国家的基盤は,(1)多様なパートナーとの協同的なネットワーク構築,(2)そのネットワークを介し協同的なデジタル情報保存を可能とする分散型のシステムアーキテクチャ構築,から構成されるべきだという。この発想の根底には,デジタル情報保存は単独の組織で解決できる問題ではないという現実が潜む。冒頭に述べたように,「コト」としての保存プロセスにおいては利害が複雑に絡みあう。例えば記録フォーマットの統一,プロトコルやメタデータの標準化,知的財産権の処理等の諸問題が存在し,それらに取り組むためにはどうしても異業種組織間での協力体制が不可欠となるのである。実際,NDIIPP初期計画策定段階において,LCは全米デジタル戦略諮問委員会(National Digital Strategy Advisory Board)を設置するなどし(公共部門から商務省,ホワイトハウス科学技術政策室,国立公文書館,国立医学図書館など,民間部門から図書館関連業界やデジタルコンテンツ業界,IT業界などで構成),多様な利害関係者との協議を重ねてきた。

 これら戦略を現実のものとするため,ウェブサイト等を介した広報体制も充実させながら,具体的には次の諸プロジェクトを当面1〜5年の期間で進めていくことが初期基本計画では定められている。

  • (1)誰が何を保存するか:誰が何を保存するかを明確にするために,国立図書館間あるいは他の収集機関と協同収集の協定を結ぶこと,永続的価値があるコンテンツを査定するためのガイドライン策定,動的なデジタル情報を選択するためのベストプラクティスの検証,ウェブコンテンツの保存対象範囲の定義,デジタル情報にも適用可能なコレクション構築方針の検証が実施される。
  • (2)ビジネスモデルの開発:保存プロセスを事業として成立させるにはそれを支える仕組みが不可欠となる。そこでビジネスモデルを開発するために,コンテンツを納本する情報作成者側等のインセンティブの同定,デジタル情報保存の費用と便益を測定する手法の策定,長期性を保証しえない可能性のある営利組織等が保存する資料の避難場を設けるためのモデル化,などに資源が投資される。
  • (3)標準化の促進:標準化を促進するために,メタデータおよび永続識別子などの標準化,記録フォーマットや符号化方式に関する調査およびベストプラクティス活用の推奨,マイグレーションやエミュレーションなどに関する調査や戦略策定などが挙げられている。
  • (4)知的財産権問題:障害となる知的財産権問題を解決するために,インターネット上のデジタル情報をLCが保存するために必要な権限についての調査,デジタルコンテンツと納本制度との関係性の調査,デジタル情報保存の上でのセキュリティやプロテクト機能の調査,他の国立図書館や多国籍出版・メディア産業との協同において問題となる著作権法等の国際的な適用範囲の調査なども実施される。
  • (5)システムアーキテクチャの構築:現実化するには高度なシステムが必要となるために,LCは他機関と協同し,以下の要件を満たすアーキテクチャ構築を目指している。その要件とは,組織間の連携協力を支援するものであること,保存とアクセスの問題を区分して扱えるような設計とし,概念的に4層構造―インタフェース層,コレクション層,ゲートウェイ層,レポジトリ層―とすること(つまり,法的・経済的問題が解決するまで暫定的なアクセス制限を容認しておく戦略をとることを意味する),可能な限り既存技術を活用しモジュール方式での設計とすること,一度に構築するのではなく長期的に組み立てていくことができるような設計とすること,幅広く適用されているプロトコルを採用すること,としている。

 このように米国は,LCがリーダーシップをとり,多様な利害関係者とのパートナーシップにより実現しうるデジタル情報保存のネットワークとアーキテクチャから成る国家基盤を築き,責任を分担する形で全米のデジタル情報を国家遺産として保存していく戦略を選択しようとしている。翻って日本の現状を鑑みると,デジタル情報保存に対する認識は総じて低く,直面する問題の緊急性に比して課題の困難度は相当程度高いといわざるをえない。従ってデジタル情報保存のWHY,HOWは重要な問題であるけれども,現段階で日本において早急に取り組むべきは,誰が責務を負うべきなのかという問い「WHO」に他ならないと思われる。

総務部企画・協力課電子情報企画室:塩崎 亮(しおざきりょう)

 

Ref.

NDIIPP. (online), available from < http://www.digitalpreservation.gov/ [32] >, (accessed 2003-07-08).

Beagrie, Neil. National Digital Preservation Initiatives: An Overview of Developments in Australia, France, the Netherlands, and the United Kingdom and of Related International Activity. (online), available from < http://www.clir.org/pubs/abstract/pub116abst.html [33] >, (accessed 2003-07-08).

 


塩崎亮. 国家規模でデジタル情報を保存する−LC主導のNDIIPPが本格始動−. カレントアウェアネス. 2003, (277), p.5-7.
http://current.ndl.go.jp/ca1502 [34]

  • 参照(18321)
カレントアウェアネス [10]
電子情報保存 [27]
LC(米国議会図書館) [35]

CA1503 - RLGの新総合目録RedLightGreenにみる図書館目録の可能性 / 松井一子

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カレントアウェアネス
No.277 2003.09.20

 

CA1503

 

RLGの新総合目録RedLightGreenにみる図書館目録の可能性

 

 米国の研究図書館グループ(Research Libraries Group:RLG)のプロジェクトRedLightGreenは,RLG参加館の総合目録をウェブ上で提供する方法を再検討し,図書館目録に新たな価値を生み出そうとする試みである。2003年1月現在,データを限定して試験公開中であり,2003年秋に全データを使用した試験公開を予定している。

 RLGの持つ書誌データは合計約1億2,600万件(タイトル数は約4,200万。RLGでは個々の図書館がそれぞれ書誌データと所蔵データを維持しているため,システム内部では同一の書誌データが並存する),300か国以上の機関が作成しており,370種以上の言語を扱う。現在はEureka(Web),RLIN(telnet),Z39.50ゲートウェイにより提供されている。日本国内では,2002年に慶應義塾大学が正会員(general member)として加盟した。また,図書館流通センターからTRC MARC(児童書と翻訳書を除く)が提供されている。

 RLGは新たな総合目録を設計するにあたり,「図書館らしさ」を払拭すること,「GoogleやAmazon.comのような」機能とインタフェースを持つこと,書誌データ利用の新たな可能性として,「単に資料のありかを探すためのものではなく,信頼できる有用な情報資源を目指す」ことを目標とした。

 2002年3月,メロン財団の援助のもとでプロジェクトが開始された。第一段階では,主な利用対象を学部生とし,ニーズ調査を行った。その結果,次の5点がオンライン目録の重要な要件として浮かび上がった。[1]発見:関連する資料,最新かつすぐ入手できる(current)資料,信頼度の高い(legitimate)資料を見つけられること,[2]フィルタリング(filtering):検索結果の絞り込みやソート機能,[3]入手:発見した著作を入手するための情報,[4]パーソナライズ(個人の要求への対応):目的に応じて検索結果を編集できること,[5]使いやすさ:親しみやすく,利用者の感覚に合ったインタフェース。また,学部生が図書館用語を好まないこと,米国議会図書館分類表のように詳細な分類表や件名標目表を利用したがらないことなども判明した。これらの調査結果をもとに,RedLightGreen試行版が作られた。

 edLightGreenの第一の特徴は,徹底した利用者志向である。図書館用語を極力避け,一般的な言葉を使用することを基本方針としている。検索画面はシンプルで,入力欄は1か所である。利用者は思いつく言葉を自由に入力し,検索ボタンを押すだけでよい。

 検索結果の表示には,FRBR(Functional Requirements for Bibliographic Records:書誌的記録の機能要件,CA1480 [37]参照)の提案が実践されている。FRBRで提示された四つの実体モデル「著作(Work)」「表現形(Expression)」「実現形(Manifestation)」「個別資料(Item)」のうち,RedLightGreenでは「著作」と「実現形」を利用している。ある一つの著作の詳細表示画面では,「英語版12件,中国語版1件…」,また「図書17件,録音資料(audio)2件」のように,言語や媒体を選ぶことができる。

 

 

検索結果画面

 

 システム内部では,利用者が入力した自然語のほか,関連する統制語でも検索し,利用者自身が絞り込みの範囲を選択できるような形で表示する。たとえば国名を特定せず"civilwar"で検索すると,米国やスペインなど国別の件名ごとに検索結果が表示され,求めるものを選ぶことができる。"New York riots"で検索すると,"New York−History−Civil War, 1861-1865"のほか,"Civil War, 1861-1865−Fiction"など,検索語とは異なる件名も選択肢として表示される。また,検索結果は著者や言語別でも表示される。

 第二の特徴は,複数の図書館の所蔵情報を一望できる総合目録の特性を,資料の価値判断材料として利用していることである。多くの図書館が所蔵するほど資料へのアクセスしやすさが増し,さらに,資料の信頼性も高まるとみなして,所蔵情報による検索結果の重みづけを行っている点が興味深い。ただし,RLGのデータには個々の図書館内の所在情報までは記録されていないので,実際に資料にたどりつくためには,各図書館のOPACを再検索する必要がある。

 そのほか,検索式の保存機能や,検索結果を数種類の定型的な参照文献記述書式でダウンロードする機能など,利用者の便宜が各所で考慮されている。今後は,利用者の要望の高い雑誌論文への対応が必要との認識が示されている。

 データベースの構築にあたっては,書誌データのフォーマット変換に多大な苦労があったようである。問題の一つは文字コードであった。従来使用していたEBCDIC(IBM社が策定した8ビットの文字コード体系)をUTF-8(UCS(Universal Multiple-Octet Coded Character Set)で表現される文字のためのエンコード方式の一つ)に変換したのだが,非常に複雑な仕様を必要とした。特にアジア・中東地域の言語の処理が問題だったようだ。

 また,従来のデータをXMLフォーマットに変換するためのDTD(XML文書におけるタグや属性の定義)を策定するのも一苦労だった。当初は米国議会図書館(LC)のMARC XML(MARCのデータをそのままXMLに変換するためのDTD)を使おうとしたが,RLGのデータにはMARC21(LCで維持・管理しているMARCフォーマット)に存在しない独自のフィールドがあるため,独自のDTDを作成しなくてはならなかった。また,従来のデータベースにおける要素名の中に,XML上で使用できないものがあったことも足かせとなった。最終的には,2,000以上のサブフィールドを除外し,分量にしてLCのDTDの20%ほどの「ゆるやかな」ものとした。従来のデータベースがMARCフォーマットへの対応を済ませていたことも幸いした。しかし今後はより厳密なDTDが必要になると予測されている。

 図書館目録,特に総合目録が有用な情報源として機能するためには,書誌データの内容や提供方法の高度化だけでなく,蔵書構築やILLなど他の図書館機能の存在が重要であることを,RedLightGreenの試みは示している。また,分類表などの図書館独自の技術を利用者に直接使わせるのではなく「裏」の仕組みとして活用することで,簡易かつ正確な検索システムを構築しようとしている点も参考になる。多言語データの提供や大量データ変換などの点からも注目すべき事業であり,本格公開が待たれる。

 日本国内でも,国立情報学研究所のWebcat Plusが,連想検索や検索結果の表示方法,他のデータベースとの連携などについて取り組みを進めている。国立国会図書館のNDL-OPACでは,典拠データの利用により検索機能の高度化を図ったほか,郵送複写や閲覧予約の申込みが可能となった。目録の「利用者志向」は着々と実現しつつあり,さらに意識していく必要があるだろう。

書誌部国内図書課:松井 一子(まついかずこ)

 

Ref.

"Revolutionizing the Catalog: RLG's RedLightGreen Project". RLG. (online) , available from < http://www.rlg.org/redlightgreen/ [38] >, (accessed 2003-07-09).

RLG. "RLG's RedLightGreen Project: Mining the Catalog". RLG. (online), available from < http://www.rlg.org/redlightgreen/mining.html [39] >, (accessed 2003-07-09).

RLG. "RLG's RedLightGreen Project: Under the Hood". RLG. (online), available from < http://www.rlg.org/redlightgreen/underhood.html [40] >, (accessed 2003-07-09).

RLG to launch RedLightGreen pilot in fall 2003. Advanced Technology Libraries. 32(4), 2003, 1, 9-10.

 


松井一子. RLGの新総合目録RedLightGreenにみる図書館目録の可能性. カレントアウェアネス. 2003, (277), p.7-8.
http://current.ndl.go.jp/ca1503 [41]

  • 参照(12871)
カレントアウェアネス [10]
総合目録 [42]
RLG(研究図書館グループ) [43]

CA1504 - 動向レビュー:韓国における子ども図書館をめぐる動向 / ジョ在順

PDFファイルはこちら [44]

カレントアウェアネス
No.277 2003.09.20

 

CA1504

動向レビュー

 

韓国における子ども図書館をめぐる動向

 

はじめに

 いままで韓国では,ほとんどといっても過言ではないほど,子ども図書館への関心が示されてこなかった。しかし,21世紀に入ったここ数年間,子ども図書館への関心が急激に高まり,その設立運動が活発になっている。本稿では,韓国における子ども図書館の現状を踏まえ,子ども専門図書館を中心にその動きの背景を分析しながら,国,地方自治体,民間の3つのレベルに分けて,2000年以降の動向を考察したい。

 

1.これまでの状況(1)

 韓国における一般的な子ども図書館サービスは,公共図書館の一部施設として,児童室あるいは子ども閲覧室などの名をもって提供されている。

 サービスプログラムはほとんど読書中心に構成されている。その中でも,全国的に実施されている夏休み・冬休みの「読書教室」は特筆すべきものである。「読書教室」は,1971年1月から小・中学生を対象とし,夏休み・冬休みの1週間を利用して国立中央図書館分館が実施してきた読書教育プログラムである。プログラムの内容は,図書館利用指導,読書資料選択法,読後感想文の作成法などで,これらを通し読書意欲を高めて読書の習慣付けを図ることにその目的がある。年を重ねるにつれ呼応するところが増え,現在は国立中央図書館の指導・支援のもとに,全国の60%以上の公共図書館が参加している。2002年の冬休みには266の公共図書館で読書教室が開かれ,3,099の学校の11,902名の生徒がこれに参加した(2)。

 一方,子ども専門図書館の歴史は非常に浅い。まず,公立の子ども専門図書館としては「ソウル市立子ども図書館」がある。この図書館は,1979年「国際児童年」を記念し,同年5月4日に設立された。開館以来20年以上に渡って,韓国唯一の公立の子ども専門図書館として位置づけられてきた(3)。

 次に,私立の子ども図書館であるが,1990年代に入ってからはじめて民間レベルの子ども専門の公共図書館が設立された。韓国有数の製靴会社を母体とするエスクァイアー文化財団が,企業利益の社会還元を目的として設立した「寅杓(インピョ)子ども図書館」がそれである。同社会長の名前「李寅杓(イ・インピョ)」から名付けられたこの図書館は,1990年5月ソウル市の上渓洞(サンゲドン)に誕生した。2003年6月現在,国内に14館,中国に6館,カザフスタン共和国とロシアのサハリンに1館ずつの合計22館の分館をもっている。その主な特徴は,文化的,経済的に恵まれない地域の子どもを主たる対象としていることにある。そのため,ほとんどの図書館は社会的弱者のための福祉施設である「総合社会福祉館」のなかに位置している(4)。

 

2.2000年以降の動向

(1)国レベルの動き
 国レベルで図書館政策を担当している文化観光部では,1999年に「国立子ども図書館」の設立計画を立てたが,国の厳しい財政事情のため結局計画段階で終わってしまったことがある(5)。現在同部は,子ども専用の図書館の設立よりは,一般公共図書館の設立に力を入れ,既存の公共図書館における子ども資料室の水準を高めることに重点を置いている(6)。その理由として以下のことが考えられる。

 現在,韓国には462館の公共図書館があり,1館当たりのサービス対象人口は10万人以上にものぼる。また,各館に設けられている子どもの閲覧席は平均約10%にすぎないのが現状である。しかし,韓国の「図書館及び読書振興法」施行令第3条に関わる「図書館及び文庫の種類別施設及び資料の基準」には,「公共図書館における子どものための閲覧席は全体閲覧席の20%以上とする」と規定されている。このような事実に鑑みれば,公共図書館の子ども閲覧席を法律の基準に到達させることと,公共図書館の設立支援を先決問題として挙げていることが理解できる。

 一方,文化観光部の管轄下にある国立中央図書館は,「学位論文館」の機能転換を検討している。国立中央図書館は,児童図書の唯一の納本図書館として,現在,毎年約3万5千冊の児童図書を受け入れている(7)。しかし,1999年末から分館の機能が学位論文の提供に変わるにつれ,それまで所蔵していた児童図書は20歳以上の利用年齢制限のある本館に移された。そのため,児童図書サービスの直接的提供は中止されている。

 国立中央図書館は,現在2008年度の開館を目標として「国立デジタル図書館」計画を推進しており,今後,本館と学位論文館,国立デジタル図書館の3館システムで運営する展望である。そこで役割分担の調整という点から,学位論文館として運営されている分館の機能に対する根本的な見直しが行われている。つまり,学位論文館の廃止と同時に,司書研修館および研究所として活用する一方,子ども・青少年図書館としての機能を検討中である(8)。

 いずれにしても,国レベルの動きは,子ども専門図書館の設立ではなく,子どもを含む図書館サービスの計画あるいは強化である。

(2)地方自治体レベルの動き
 地方自治体レベルでは,単独の子ども専門図書館の設立が盛んである。特に,ソウル市をはじめ,首都圏の地方自治体の動きが活発である。

 具体的には,まず,ソウル市に2つめの子ども専門図書館が誕生した。2000年に着工し,今年2月にソウル市蘆原(ノウォン)区に開館した「蘆原子ども図書館」がそれである。区レベルの自治体として公立の子ども専門図書館を設立したのは,全国ではじめてのことである。地下1階,地上3階,延べ面積1,274平方メートルの自然採光を十分に取り入れたこの図書館は,子ども専用のデジタル図書館としての機能に焦点を合わせている(9)。

 次に,京畿道の場合は最も壮大な計画を表明している。京畿道はソウルを囲む形の隣接地域で,1990年代以降形成された,いわゆる「新都市」と呼ばれるベッドタウンが多い。この新都市は超高層団地で人口密度が高いことが特徴である。同道は,地域間教育機会の不均衡現象の解消とともに,子どもたちの図書館利用率を高めることを目的に,2006年までに先端施設を備えた子ども専門図書館を31館建てる計画を公表した。今年はまず8館を建てる方針であり,そのため256億ウォン(約25億円)の予算を割当てている(10)。

 なお,ソウルの隣接都市で国際空港がある仁川広域市の計画によれば,2007年まで約1,000億ウォン(約100億円)の予算を投入し公共図書館17館を設立することになっている。その中には8館の子ども専門図書館の設立計画が含まれている(11)。ほかに,慶尚地域の鬱山広域市の場合は,同市北区地域に子ども専門図書館を建てる予定があり,それとともに2,000坪規模の子ども公園を作って,子どもタウンを造成する展望をもっている(12)。

 ソウル市以外の他の自治体の政策は今年発表されたばかりで,特に「奇跡の図書館」プロジェクト(後述)を掲げたマスコミの影響が強いものと考えられる。

(3)民間レベルの動き
 現在韓国では,個人や市民団体を中心とした民間レベルの子ども図書館づくり運動が盛んである。児童図書出版量の増加とともに,1990年代半ばから児童専門書店が登場しはじめた。それとほぼ同時に,個人が運営する私立で有料の会員制子ども図書館が増えるようになった。それが2000年代に入ってからは急増し,児童専門書店は60店以上,子ども図書館は100館以上を数えることとなった。

 その背景には,政府の図書館政策が期待に応じられず満足できないこと,インターネットの急速な普及への反作用から読書,とりわけ幼いときからの読書の重要性を再認識するようになったこと,学校図書館運動が活発に展開され,より低年齢の子どもにも関心が向けられるようになったこと,首都圏を中心とする市民の意識高揚と運動の活性化が全国に広まったこと,特に今年からは,市民運動にマスコミの影響が加わることによって,国民的な関心を呼び起こす起爆剤になったこと,などが考えられる。

 以下では,個人,市民団体,宗教団体などの動きをそれぞれ考察する。

 まず,個人運営の「子ども図書館」が2000年を前後して急増している。これらはほとんど小規模で,法律上私立文庫に該当するが,親の教育熱が高い団地を中心に形成・拡張されつつある。人口の多い首都圏,特に新都市地域に集中している。現在,約45館以上あり,その内20館は1998年に設立された「小さな子ども図書館協議会」に加入し活躍している。ほとんど有料の会員制度で運営されており,会員になると図書の閲覧や貸出はもちろん各種の読書指導プログラムにも参加できる(13)。

 市民団体としては,既存の「子ども図書研究会」およびその地域組織の性格をもつ「童話を読む大人の会」(全国112か所),「小さな子ども図書館協議会」,「ソウル読書教育研究会」などに加え,2000年代に入ってからは「本を読む社会づくり国民運動」,「盆唐(プンダン)子ども図書館建設推進運動の会」(盆唐は新都市名),「2002社会福祉共同募金会」などの団体が結成され,活発な活動を行っている。

 特に,「本を読む社会づくり国民運動」(以下「本読む社会」)は,いままで公共図書館の増設,図書館資料・予算の確保のための運動を展開してきた市民団体である。「本読む社会」は,子ども専門図書館の設立を民間放送局に提案・連携し,今年1月から1年間の計画で「奇跡の図書館」プロジェクトを推進している。「奇跡の図書館」とは,韓国文化放送(MBC)テレビの娯楽番組「!」が毎月選定する本の販売売上金と,個人および団体の寄付金によって,子ども専門図書館を建てる計画である。「!」が選定する本は爆発的な人気で常にベストセラーとなるので,その弊害を怖れる批判の声も高いが,子ども図書館に対する一般市民や地方自治体の関心と積極的な参加を誘導している点で,大局的には肯定的に評価されている。現在,全国的な反響の中で6つの地域が選定され,その設立が推進されている段階である(14)。

 その他,「ソウル読書教育研究会」は「ソウル子ども図書館」(仮)の設立運動を推進しており,「盆唐子ども図書館建設推進運動の会」は2004年の子ども図書館完成を目指して活発な運動を展開している(15)。なお,「2002社会福祉共同募金会」の支援で学習室に設けられた子ども図書館も10館ある。

 宗教団体による子ども図書館設立運動で目立つのは,キリスト教会図書館,とりわけメソジスト教会の活動である。「メソジスト教会子ども図書館協議会」は,日々深刻になっていく教育の現状への対案を提示し,地域社会における教会の定着を通じ21世紀における布教モデルを模索することを目的とし,2001年4月に結成された。しかし,必ずしも布教の目的だけをもっているのではなく,一般児童書も備えて広く地域の子どもや住民に開放している。運営はほとんど有料の会員制を採用している。2002年8月現在,同教会に建てられた子ども図書館は21館ある(16)。

 

むすび

 以上のように,韓国における子ども図書館設立の動きは,2000年代に入ってから急激に高まっている。特に,今年放映されているテレビ番組の強い影響で,子ども専門図書館設立への熱い関心は当分の間続く見込みである。その主な特徴は,独立した子ども専門図書館が求められていること,民間レベルの動きが積極的に広げられていること,にまとめられる。

しかし,韓国における子ども図書館がうまく機能するためには,公共図書館における児童室の拡充,所蔵資料の充実,様々なサービス・プログラムの提供,専門司書の確保および教育など,今後解決すべき課題は多いだろう。

東京大学大学院教育学研究科:曺 在順(じょじぇすん)

 


 〔 〕はハングルであることを示す。
(1)詳しくは,以下の2つの文献を参照すること。 宋永淑. 韓国の図書館と読書教育. 現代の図書館. 34(4), 1996, 175-180. ; 韓允玉 (林昌夫訳). アジアの子どもと図書館−韓国の図書館における児童サービスと子どもの本(前編). 図書館雑誌. 91(5), 1997, 351-354.
(2)〔国立中央図書館〕. 〔2002年度国立中央図書館年報〕. 2003, 82.
(3)〔ソウル市立子ども図書館〕. (online), available from < http://children.lib.seoul.kr/ [45] >, (accessed 2003-08-08).
(4)〔寅杓(インピョ)子ども図書館〕. (online), available from < http://www.inpyolib.or.kr/index_new.jsp [46] >, (accessed 2003-08-08).
(5)〔文化観光部,今年の主要業務計画〕. 京郷新聞. 1999-02-20. ; 〔暮らしと文化/国立子ども図書館のない国〕. 東亜日報. 2001-09-25.
(6)〔本で育つ子ども/子ども専門図書館に多様なコンテンツ必要〕. 世界日報. 2003-01-18.
(7)〔国立中央図書館〕. op.cit., 37.
(8)〔国立中央図書館〕. 〔国立デジタル図書館(仮称)設立基本計画樹立技術外注報告書〕. 2002, 138-141.
(9)〔蘆原子ども図書館開館〕. (online), available from < http://www.nowon.seoul.kr/nowonnews/nw0302/pdf/01.pdf [47] >, (accessed 2003-08-08).
(10)〔京畿道,暮らしの質を高める公共図書館など大幅に拡充〕. 〔国民日報〕. 2003-04-07.
(11)〔仁川,公共図書館拡充:2007年まで17か所〕. 〔毎日経済〕. 2003-06-17.
(12)〔鬱山北区に子ども図書館建てられる〕. 〔国民日報〕. 2003-04-28.
(13)〔全英順〕. "〔私立子ども図書館の現状〕". 〔公共図書館における児童サービス活性化の方策模索のための討論会〕. 〔韓国図書館協会〕, 2003, 33-37.
(14)〔子どもの目線に合わせた「奇跡の図書館」着工〕. 〔韓国日報〕. 2003-04-01 ; 〔!:本本本,本を読みましょう〕. (online), available from < http://www.imbc.com/tv/ent/big5/html/kymyjs_01.html [48] >, (accessed 2003-08-08). ; 〔奇跡の図書館〕. (online), available from < http://www.kidslib.or.kr/sub01/sub01.asp [49] >, (accessed 2003-08-08). ; 〔想像力の運動場を作る:<!>・本読む社会,子ども図書館設立プロジェクト開始〕. (online), available from < http://www.bookreader.or.kr/news/nk_view.php?num=40 [50] >, (accessed 2003-08-08).
(15)〔我が子どもたちに専用図書館を〕. 〔韓国日報〕.2001-01-29.
(16)〔メソジスト教会子ども図書館協議会創立〕. 〔国民日報〕. 2001-04-30.

 


曺在順. 韓国における子ども図書館をめぐる動向. カレントアウェアネス. 2003, (277), p.9-11.
http://current.ndl.go.jp/ca1504 [51]

  • 参照(15851)
カレントアウェアネス [10]
動向レビュー [52]
図書館政策 [11]
韓国 [53]
児童図書館 [54]

CA1505 - 動向レビュー:図書館員教育の国際動向 / 中村香織, 三浦太郎, 山形八千代, 石井奈穂子, 刈田朋子

PDFファイルはこちら [55]

カレントアウェアネス
No.277 2003.09.20

 

CA1505

動向レビュー

 

図書館員教育の国際動向

 

 情報通信技術の進展や経済状況の悪化など図書館を取り巻く環境の変化は,図書館員教育プログラムのあり方にも大きな影響を及ぼしている。本号では,米国,ドイツ,フランス,オランダ,台湾における取組み事例について紹介する。

 

1. 図書館職員の研修ニーズを探る −米OCLCによる研修市場調査−

 OCLCは,米国の調査会社であるOutsell社に依頼し,図書館職員研修に関する調査を行った。目的は,図書館の研修ニーズを把握し,OCLCがどのようにそのニーズに応えることができるかを,特にウェブを用いた研修に焦点を当てて探ることである。2000年7月から2001年6月までのデータによると,OCLCが系列の図書館サービス機関で行った研修のうち,約3分の1が遠隔研修となっていた。OCLCでは図書館職員のための研修を継続的に行っており,今回の調査に先立つ2002年4月には,「職員育成に果たすOCLCの役割に関する作業部会(Task Force on OCLC's Role in Staff Development)」を設置している。

 調査は,2002年8月20日から同年9月13日まで,ウェブを通じて行われた。主な対象は,学術図書館,中規模の大学や研究所の図書館,大規模公共図書館,専門図書館とされた。期間内に得られた回答は2,112件で,うち32%は米国外からの回答であった。回答分析は主に,1)需要と市場機会,2)市場浸透と市場機会,3)現在行われている研修,4)研修予算,以上の観点から行われた。以下に分析結果の概要を紹介する。

(1)需要と市場機会について

 現在のところ,講師主導の研修や会議への参加といった伝統的形態に比べ,ウェブなどを用いた新しい形態の研修は普及度も重要性の認識も低い。職員の所属機関もまた,新しい形態の研修よりも伝統的形態の研修に参加する職員をより援助する傾向がある。しかし,ウェブ研修は遠隔学習形式の中では最も普及しており,1年以内にウェブ研修を利用する意思のある人も少なくない。ウェブ研修参加の潜在的な動機は,仕事において専門的能力の開発が要求されていること,という回答者が約5分の1を占める。回答者の3分の1は個人的に能力開発計画を立てており,分野は「情報技術・コンピュータ」が最も多かった。

 1年のうち研修に費やす日数は平均で約5日であり,69%の人は適切な研修機会が得られているという。しかし,専門的能力の開発に必要なだけの時間があるという人は60%で,適切な時期に研修がある,参加に必要な財源があると考える人は半数以下であった。全体としてウェブ研修への需要はあるが,十分な機会が提供されているとは言いがたい。

(2)市場浸透と市場機会について

 ウェブ研修を利用する意思のある人の内訳を見ると,自分以外の職員の研修についても助言や計画ができ,職員の研修の選択に影響を与える立場にある「影響者(influencers)」が59%を占めたのに対し,自分個人が受ける研修についてのみ計画できる立場の「消費者(consumers)」は28%であった。加えて,管理的立場にある人も他の職員より多かった。よってウェブ研修の浸透度を高めるために,「消費者」に直接働きかけるより管理職や「影響者」に働きかける方が効果的かもしれないと指摘されている。また,「影響者」が選んだ職員育成計画の評価基準で最も多かったのは「図書館サービスの質」であったことから,研修を働きかける際には,研修の結果,サービスの質が向上することに焦点を当てるとよいとしている。

 研修の開催情報を得る手段で最も多かったのは専門職の協会(57%),次いで図書館ネットワーク(52%)であった。ここでは研修のマーケティングにおける協会やネットワークとの提携可能性が示唆されている。

 研修テーマごとのニーズについては,所属機関の職員に必要なテーマを尋ねた場合と自分自身に必要なテーマを尋ねた場合とでは結果が違っていたが,双方に共通して需要が高かったのは,「データベース検索」,「図書館マーケティング」,「コンピュータ,ネットワーク,OS」などであった。一方,ある程度需要が高いものの現在受講できない研修のテーマには,「電子図書館構築」,「コレクションの構築と管理」,「図書館の機械化」などが挙げられた。これらが比較的市場浸透率の高いテーマと言うことができるだろう。

(3)現在行われている研修について

 現在最も利用されている研修は,地域の図書館ネットワークの研修(71%),職場内の研修(70%),図書館協会の研修(62%)の順に多く,最も良質と考えられているのは協会の研修である。民間機関の提供する研修を利用しているのは約3分の1である。

 現在の研修に対する考え方をみると,回答者の97%が図書館員のための継続教育には賛成であり,継続教育を受ける第一の理由は「時代の変化についていくこと」とする人が多い。また,「影響者」にとっては「能力格差の縮小」も同様に重要な理由となっている。

 さらに,これまでに受けたウェブ研修に対する満足度は非常に高い。ウェブ研修の利点では,86%が挙げた利便性,費用効果の高さ(82%),ウェブでなければ受講できなかった講座を受講できること(71%)などがあった。問題点では,困難なこととして,時間を作ること(42%),適切な講座を探すこと(32%),費用の獲得(32%),利用できる講座の情報入手(26%)などが上位を占めた。インターネット接続環境などの技術基盤はそれほど問題にされていないことが明らかになった。

(4)研修予算について

 図書館の研修受講のための平均予算額は年12,067ドルで,館の運営予算総額の約0.5%である。翌年の研修予算が削減されると考える人は,増額されると考える人より多い。しかし今後3年間について尋ねると,増額を予測する人の方が多くなっている。

 一人当たりの研修費用については,現在の年平均額は531ドルだが,妥当とみなされた額の平均はそれより高い692ドルであった。一方,ウェブ研修は費用効果が高いとみなされており,妥当とされる額は1回平均171ドルで,講師主導の研修の285ドルに比べて低くなっている。

 OCLCは,この調査報告が,図書館員や研修に関する決定を行う人たちに仕事の助けとなる情報を提供するとともに,研修機会を提供する人たちに図書館のニーズに応えるよう働きかけるものになることを期待している。さらに,前述の作業部会と引き続き協力し,調査結果を今後のOCLCの活動に生かす方法を明らかにしていくとしている。

 調査では,研修に関する様々な問題が挙げられたものの,図書館員の研修意欲は全体的に高いことが窺える。研修提供側だけでなく研修を受ける側にとっても,この調査結果が良い刺激となるのではないだろうか。

関西館事業部図書館協力課:中村 香織(なかむらかおり)

 

Ref.

Wilkie, Katherine. et al. OCLC Library Training and Education Market Needs Assessment Study. Burlingame, Outsell, 2003, 119p.

OCLC. "FY01 Network Training Survey". (online), available from < http://www.oclc.org/oclc/uc/pdf/Network_Training_Survey_by_B_Juergens.pdf [56] >, (accessd 2003-07-08).

OCLC. "News : OCLC Library Training & Education Market Needs Assessment Study". (online), available from < http://www.oclc.org/promo/unlimited/edu01b.htm [57] >, (accessd 2003-07-08).

 

2. ドイツの図書館学教育改革

 近年,ドイツでは経済の低迷と州財政の逼迫事情を反映して大学再編が進められ,その余波は司書養成講座の閉鎖や統合にまで及んでいる。以下,変革にさらされるドイツ図書館学教育の動向について報告する。

 ドイツの図書館学教育は,< 1 >専門学校(Fachschule)での職業教育,< 2 >大学での「上級職(gehobener Dienst)」司書教育,< 3 >「高等職(Hoeherer Dienst)」司書教育の3つのレベルに大別できる。高等職とはある学問分野でディプロームやマギステルといった第一学位を得て,その上で図書館学関連課程を修めた司書のことであり,上級職は図書館学関連の学位のみを取得した司書を指す。大規模な図書館で館長や部局長などの職位に就くためには,高等職の資格が必要とされる。

< 1 >専門学校での職業教育

 1998年,情報専門職として「メディアおよび情報サービス職員(Fachangestellten fuer Medien- und Informationsdienste : FaMI)」が新設された。これは,限りなく増え続ける書籍や電子情報の効果的活用に資するため設けられた専門職であり,資料館,図書館,情報と資料,写真や絵画資料,医学関係資料の各領域を対象としている。司書職とは別に養成される。教育期間は3年で,最初の2年間は専門学校で理論面の教育が共通に行われ,3年目から専門領域の教育や実習が始められる。共通講座では,情報選別能力の育成,データベース構築,コミュニケーション・ネットワークの分析,マーケティング理解などが目指される。専門学校以外にも,カールスルーエ情報センター[http://www.fiz-karlsruhe.de] [58]やドイツ医学ドキュメンテーション研究所[http://www.dimdi.de] [59]などの教育機関で養成が行われている。

< 2 >大学での「上級職」司書教育

 ドイツには351大学(2001年現在)が存在する。このうち次頁に挙げる総合大学1校と専門大学(Fachhochschule : FH)9校に司書養成の講座が置かれている。修学期間は7〜8学期であり,たいていは期間中に半年間の実習が義務づけられる。卒業生はディプローム(専門大学の場合にはディプローム(FH))の学位が与えられ,上級職に就くことができる。

  • ベルリン フンボルト総合大学 哲学部図書館学科 [http://www.ib.hu-berlin.de/] [60]
  • ケルン専門大学 情報・コミュニケーション学科 [http://www.f03.fh-koeln.de/] [61]
  • シュトゥットガルト メディア専門大学 情報コミュニケーション学科 [http://www.hdm-stuttgart.de/] [62]
  • ダルムシュタット専門大学 情報および知識マネージメント学科 [http://www.iud.fh-darmstadt.de/] [63]
  • ハノーファー専門大学 情報・コミュニケーションシステム学科 [http://www.ik.fh-hannover.de/] [64]
  • ハンブルク応用科学専門大学 図書館情報学科 [http://www.haw-hamburg.de/] [65]
  • ポツダム専門大学 情報ドキュメンテーション学科 [http://www.iid.fh-potsdam.de/] [66]
  • ボン公共図書館制度専門大学 [http://www.fhoebb.de/] [67]
  • ミュンヘン バイエルン行政専門大学 資料館・図書館学科 [http://www.baybfh.bayern.de/] [68]
  • ライプチヒ技術・経済・文化専門大学 書籍・博物館学科 [http://www.htwk-leipzig.de/] [69]

 フランクフルトには1967年から学術図書館高等職および上級職を養成する図書館学校(Bibliotheksschule)が置かれていたが,2000年にこれがダルムシュタット専門大学に統合された。図書館学に関わる教科は「情報および知識マネージメント学科」に取り込まれたが,学術図書館高等職の資格付与は廃止され,上級職に相当する情報経済学士(Diplom- Informationswirt/ -in)(FH)のみが付与されている。

 シュトゥットガルトには,戦後1946年4月という早い時点で南ドイツ図書館学校が再開され,これが1970年の大学組織改編とともに図書館情報専門大学へと移行したのちも,公共図書館司書の養成を中心的に行ってきた。しかし2001年に印刷メディア専門大学と合併し,メディア専門大学と改称されている。

 司書養成の講座の縮小,改編も随所に見られる。ケルンでは,1946年夏から西ドイツ図書館学校が再開され,1949年にはケルン大学にノルトライン・ヴェストファーレン州の図書館司書養成所が置かれた。1971年以降はケルン専門大学で公共図書館司書,ケルン大学で学術図書館高等職・上級職の養成に力が注がれてきたが,近年になってケルン大学における養成課程がなくなり,またケルン専門大学の図書館情報学科は言語学科と統一され「情報・コミュニケーション学科」へと改組された。同学科では図書館学士(Diplom- Bibliothekar/ -in)(FH)や情報経済学士(FH)などの学位を取得することができる。

 司書養成カリキュラムの変更も顕著である。従来のカリキュラムは,公共図書館,学術図書館,専門図書館など図書館制度に則った編成であったが,情報環境の変化を背景に情報やメディア,さらには市場意識が強く反映されるようになった。講座内容の変化にともない,講座名に「図書館制度」や「図書館システム」といった言葉が使われることは稀になっている。

< 3 >「高等職」司書教育

 高等職となるための講座を開講しているのは,目下のところ上記10大学のうちバイエルン行政専門大学だけである。

 これ以外に,修士課程を修了して高等職に就く道もある。ドイツでは1998年に高等教育大綱法(Hochschulrahmengesetz)の第4次改正が行われ,ディプロームやマギステルといったドイツ固有の学位のほか,国際的に通用する修士号(マスター)を取得することができるようになった。ベルリンのフンボルト総合大学やいくつかの専門大学で,図書館学修士の講座が開講されるようになっている。シュトゥットガルトのメディア専門大学でも,図書館およびメディア・マネージメントの分野で「情報・メディアコミュニケーション学修士」の資格講座が用意されている。修士号を持つ者は原則として高等職に就けるが,専門大学で修士号を取得した者は一定の実務経験の上で初めて高等職に任じられる。

 2000年にはノルトライン・ヴェストファーレン州学校・教育・研究省の指導のもと,ケルン専門大学に図書館情報学修士課程が開設された。従来ケルン大学で行われた学術図書館高等職養成に代わり,3学期間で修士号を授与する体制が整えられた。ただし,専門大学でディプローム(FH)の学位を取得していても受講することはできず,大学で学位を取り直すことが要件である。

 このほか,フンボルト総合大学では図書館学分野において博士学位や大学教授資格を得るための研究をすることができる。

東京大学大学院教育学研究科:三浦 太郎(みうらたろう)

 

Ref.

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Peisert, Hansgertほか(小松親次郎ほか訳). ドイツの高等教育システム. 東京, 玉川大学出版部, 1997, 290p.

Teichler, Ulrich(山崎博敏編訳). ドイツの高等教育制度と卒業生の雇用.広島大学大学教育研究センター,2000,79p.

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Krauss-Leichert, Ute(吉次基宣訳). 変革期のドイツ司書教育. Doitsu-lis. (3), (メーリングリスト), 入手先 < yoshitsugu@tokyo.goethe.org [74] >, (入手2003-04-12).

 

3. フランスにおける司書教育のあり方をめぐって −DCBの評価−

 国立高等情報科学図書館学校(Ecole nationale superieure des sciences de l'information et des bibliotheques: Enssib)における教育のあり方について,2000年から2年にわたって再検討が行われた。

 Enssibは,1992年に国立高等図書館学校(Ecole nationale superieure des bibliothecaires: Ensb。1964年創設)の後を受けて発足したフランスで唯一の図書館管理職養成のための高等専門教育機関で,図書館上級司書免許(Diplome de conservateur de bibliotheque: DCB)等の資格取得を目的とした教育を行っている。

 さて,Enssibの核とも言うべきDCBの教育内容については,当初より,在校生,卒業生のみならず図書館界や関係省庁からも厳しい批判の声が挙がっていた。Enssibではこうした状況を踏まえてDCBの評価への着手を決定し,1994年,ボルドー市立図書館長ボティノー(Pierre Botineau)氏を座長とするワーキング・グループが設置された。グループは翌年『DCB:そのカリキュラムの評価』と題する報告書を提出,教育は重大な機能不全に陥っており,将来の上級司書を養成するにはあまりに不十分であることを指摘した。そして,より構造化された,一貫性のある,明確な教育計画を目指すよう勧告するとともに,Enssibは自己点検・自己評価できる手段を持つことが必要であると結論づけた。Enssibでは,グループの提言に従ってDCB刷新の努力を続けること,という1999年から2002年期の文化通信省との取り決めに従い,学術委員会の中に3つの委員会(DCB検討委員会,図書館員の初期教育検討委員会,図書館員の継続教育検討委員会)を設置した。「真の教育スタッフの構築」,「学生一人一人の要望にあわせた教育」を実現するためである。

 DCB検討委員会は,国民教育省の図書館監督官ゴーティエ=ジャンテス(Jean-Luc Gautier-Gentes)氏を座長とし,2000年から2002年にかけて5回にわたって開かれた。委員会では,学校側が作成した資料を参考にしながら,DCB第10期生76名(2001年−2002年期。教育期間は18か月)に適用される教育の評価を行い,Enssibの学術委員会に報告書を提出した。

 女性が多いこと,ほとんどが文科系であるという共通点を除けば,年齢,経歴,知識,図書館での勤務経験の有無も様々な10期生への教育評価,提言は以下のようなものである。

  1. 教育目標:「DCB取得者は教育課程修了後,どんな能力を身につけているべきか」についてEnssibは明確に答えられず,「上級司書」の標準的な定義を示すことができなかった。
  2. 教育の状況:授業,実習,研修は,一見バランスの取れた配置になっている。また,学校における研究活動の経験は,将来上級司書となる学生にとっては不可欠なものであるが,その意味が学生たちによく理解されておらず,教育課程の最後に提出する研究報告も,単なる報告や調査と研究が混同されている。学校と指導教官の注意が必要である。Enssibでは技術のための技術の教育が先行し,理論と研究がなおざりにされており,それが学校に危機的状況をもたらしている。
  3. 教育課程の構成:8つのユニットに分けられた教育課程は,そのこと自体に異論はないにしても,統一性と一貫性を欠く危険性がある。
  4. 教育課程の内容:以下のテーマの欠如,あるいは存在の希薄さ。「図書館の使命」,「図書館の行政的・法的背景」,「図書館員としての職業倫理」,「図書館員という職業の展望」,「マネジメント,特に人事管理」,「図書館に勤務する職員の身分規定と管理」,「公衆とサービス」,「相互協力」,「報告と評価」。実情にあっていない「図書館資料」と,単なる技術的アプローチに終わっている「情報学」の2つの科目。また,授業の中で大学図書館に比べて地方自治体の図書館が低く扱われているとの指摘が学生からあった。
  5. 教育スタッフ:学校に勤務する教育スタッフが図書館の日常業務を知ることは大切である。定期的な教育スタッフの入れ替えが,Enssibにとっても関係者にとっても望ましい。
  6. 監視と評価の手段:Enssibは委員会に「図書館職監視委員会」の創設を提案した(ここでいう「図書館職」とは,Enssibを卒業した上級職の司書を指す)。Enssibでは図書館職に関する研究は未発達であり,是非準備をすすめてもらいたい。

 委員会の教育評価,提言は上記のボティノー・ワーキング・グループのそれをかなり色濃く反映している。教育のより一層の専門化,理論と実践のバランスをとること,いくつかの基礎的な領域についての教育の構造化などである。

 委員会がその任期の間に取り上げられなかった,入学試験,学校の中での研究活動の位置,必修教育と選択教育との配分などは,今後の検討課題となった。

恵泉女学園大学図書館:山形 八千代(やまがたやちよ)

 

Ref.

Gautier-Gentes, Jean-Luc. Evaluation du diplome de conservateur. Bull Bibl Fr. 48(1), 2003, 16-27.

Gautier-Gentes, Jean-Luc et al. "Recrutement des personnels de categorie A". (online), available from < http://www.education.gouv.fr/syst/igb/thematiques/thematiques2001.htm [75] >, (accessed 2003-05-20).

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Comite national d'evaluation(CNE). L'Ecole nationale superieure des sciences de l'information et des bibliotheques: Rapport d'evaluation. 1996, (online), available from < http://www.cne-evaluation.fr/WCNE_pdf/ENSSIB.pdf [77] >, (accessed 2003-06-15).

 

4. オランダTicerの研修プログラム

 「あなたなら,この大学を,この図書館を再建するために何をしますか?どのようなアドバイスができますか?」2002年7月大阪で開催されたTicerの「明日のリーダーのためのデジタル・ライブラリー管理」セミナーで,ワークショップはこのような問いかけで幕を開けた。デジタル時代における図書館員の役割を考察すべく,また電子図書館構築に向け先進的な取組みを進めているTicerを紹介する。

(1)Ticer設立の歴史・経緯−ティルブルグ大学との関係−

 Ticer(Tilburg Innovation Centre for Electronic Resources)B.V.は,オランダのティルブルグ大学が100%出資して設立した民間会社である。オランダ南部のティルブルグ市にあるティルブルグ大学(Katholieke Universiteit Brabant)は,ヨーロッパでも早くから電子図書館構想を戦略的に推進してきた大学として知られている。「ユーザのデスクトップから電子情報へのアクセスを」をスローガンに,1992年に新図書館を建築した際,館内に450台の利用者用ワークステーションを設置し,様々な電子情報源をすべての学内構成員に開放した。電子図書館構築に向けたプロジェクトは,図書館員だけではなく,計算機センターのスタッフもメンバーとして加わったことが成功の一因であった。

 その後,33を超える国々から,ティルブルグ大学における電子図書館の取り組みやITインフラ整備に関して見学が相次いだ。増加するその要求を満たすべく,大学とは別の組織で請け負うことを可能にするために,1995年,図書館と計算機センターが共同で設立したのがTicerである。現在では年間50万ドルを超える利益があり,それらは大学内での新たな取り組みの原資となっている。

(2)Ticerの活動内容

 当初,ティルブルグ大学への見学者に対応するために設立されたTicerであったが,現在ではその活動内容を大きく広げ,各種セミナーの開催や図書館業務のコンサルタントを主な業務としている。

 設立の翌年には,ティルブルグ大学を会場としたサマースクールが57人の参加者を得て開催された。ティルブルグ大学で開催するメリットとして以下の点が認識されている。

  • 図書館や事務室内を見学しながら,コースを進められること
  • 学内の情報基盤を活用して,セミナーが進められること
  • ティルブルグ大学の図書館員や計算機センター職員と直接議論する機会が持てること

 以降サマースクールは毎年開催されており,内容は技術的なものから,デジタル・ライブラリー構築に向けた事例研究へとシフトしてきている。

 同時に,Ticerでは世界各国でセミナーも開催している。こちらはサマースクールよりも短期間で,テーマも限定して開催されている。

(3)「明日のリーダーのためのデジタル・ライブラリ管理」セミナーに参加して

 2002年7月,アジア地区としては初めてのTicerセミナーが,ソウル,東京,大阪で開催された。エルゼビア・サイエンス社との共催で,ティルブルグ大学図書館長,カリフォルニア大学バークレー校図書館副館長,スウェーデン国立図書館の図書館員による講義およびワークショップが行われた。講義の中で,カリフォルニア大学バークレー校においては,図書館の役割を文書の配信およびレファレンスのゲートウェイと置き,単なる倉庫としての役割ではなく,空間や場所にとらわれないサービスを提供しているという内容が非常に印象に残った。

 ここで冒頭の問いかけに戻ることになる。どこの大学でも直面しがちなシチュエーションを与えられた架空の大学について,図書館機能の建て直しに向け,セミナーの参加者自身がコンサルタントとして,図書館と学習支援施設の今後のビジョンを提示し,それを実現するための提案を行うというものである。5〜8人ずつのグループに分かれ,提案書をまとめた上で,各グループ5分程度でプレゼンテーションを行うという形で進められた。討議をはじめる前に,ティルブルグ大学図書館長より「出来るだけシンプル,かつゲーム感覚あふれる提案にしてほしい」とのコメントもあった。

 セミナーへは,大学図書館だけではなく専門図書館からも参加していたため,様々な立場から討論を行うことができた。課題は非常に難しく,即座に答えの出るものではなかったが,このワークショップを通して,自らのユーザを知りそのニーズをつかむことの重要性を再認識し,ニーズをビジョンへと昇華させる経験をすることができた。

 Ticerが目指しているのは,まさにこの点で,自ら戦略を立て,能動的に,自らの手で図書館を運営し得る図書館員を育成することであり,これを達成するために,経営的な視点を現場に提供しうるカリキュラムが各種セミナーで組まれているのである。

 ここで再度,自分自身に問いかけたい。「私なら,この大学を,この図書館を活性化させるためにどのようなプランが考えられるだろうか?」

立命館大学総合情報センター:石井 奈穂子(いしいなほこ)

 

Ref.

Geleijnse, Hans. et al. Developing the library of the future : the Tilburg experience. 2nd rev. ed. Tilburg University Press, 1996, 125p.

Prinsen, Jola G.B. The International Summer School on the Digital Library: Experiences and Plans for the Future. D-Lib Magazine. 5(10), 1999. (online), available from < http://www.dlib.org/dlib/october99/prinsen/10prinsen.html [78] >, (accessed 2003-07-01).

Roes, Hans. Digital Libraries and Education. D-lib Magazine. 7(7/8), 2001. (online), available from < http://www.dlib.org/dlib/july01/roes/07roes.html [79] >, (accessed 2003-06-25).

永田治樹. 大学におけるディジタル図書館−英国並びにオランダの大学図書館での試み. ディジタル図書館. (5), 1995, 19-28. (online), available from < http://www.dl.ulis.ac.jp/DLjournal/No_5/nagata/nagata.html [80] >, (accessed 2003-06-26).

 

5. 台湾国家図書館の遠隔教育プログラム

 台湾行政院の教育部は1998年を「生涯学習年」とし,理念を形にするため『学習社会推進白書(邁向学習社会白皮書)』を公布し,生涯学習を社会目標とした。同時に,現代の高度情報化社会においては,市民の情報リテラシーの向上が必要であり,それには図書館情報の効率的な利用が不可欠であるとして,国家図書館(CA1083 [81]参照),中国図書館学会,各大学図書館情報学部,各種図書館,各教育機関が共同で市民の生涯学習と情報リテラシー教育に積極的に貢献していく方針を固めた。

 台湾では,インターネット人口が2000年末にはすでに626万人(全人口の27%)を超え,インターネットを通じた遠隔教育が盛んに行われている。その中で,国家図書館は2000年に「情報リテラシーおよび図書館情報学専攻遠隔教育開始協同計画(合作建置資訊素養及圖書資訊學專業非同◆遠距教學計畫)」を策定した。計画書では以下の3点に重点が置かれている。

  • 市民の情報リテラシー向上による国際競争力の増強
  • 情報科学技術による学習環境の地域格差の縮小
  • 遠隔教育の基盤システムの構築,他機関との協力によるカリキュラムの作成

 この計画書に基づき,遠隔教育プログラム「国家図書館遠距学園」を2000年12月に発表した。

 この国家図書館遠距学園は他の遠隔教育システムとは異なり全て無料で提供されている。すなわちインターネットに接続して国家図書館遠距学園のホームページにアクセスさえできれば,いつでも自由に学習を開始することができる。また,各講座は開設から最低5年間保存され,その間はいつでも利用することができる。

 創設当初は,小学生以下の子どもや一般向けの図書館情報リテラシー講座や教養講座が開設された。しかし,市民すなわち図書館利用者のより高度な要求に応えるためには,図書館員はより専門的な能力と最新の知識を身につける必要があるとし,国家図書館は2001年に「図書館情報リテラシーおよび図書館情報学専攻課程遠隔教育開始計画(建置圖書資訊利用素養及圖書資訊學專業課程非同遠距教學計畫)」を策定し,図書館員を対象としたカリキュラムを開設した。

 図書館員を対象に公開されているのは,「図書館情報学専攻課程」と「遠隔教育または図書館情報学シンポジウム・セミナー課程」である。これらは一般向け講座と同様にいつでも無料で受講・聴講でき,図書館員は日常業務に従事しながら専門能力を高め,進んだ学術スキルを身につけることができるようになっている。なお図書館員を対象にしているが,図書館情報学を専攻している学生が日頃の学習の補助として受講することも可能である。

 遠距学園では学生登録をしなくても全講座について聴講ができるようになっているが,ハンドルネームや電子メールアドレス等を登録すると,各講座の試験が受験できたり,教師や他の受講生との討論に参加できるようになる。また受講生個人のページに受講講座の履修進度や試験の点数などが表示され,学習に役立てることができるようになっている。

 「図書館情報学専攻課程」のうち2003年7月現在受講が可能な講座は,「利用者サービス」「レファレンスサービスとレファレンス情報源」など基礎的な図書館情報学の講座や,「ビデオ・マルチメディア資料製作および保管管理」「中国語の文字セットと文字コード」など比較的新しいテーマに関する講座の計10科目である。各講座とも10章前後に分かれており,基本理論から実務,図書館界の進展動向までの解説がなされている。各章はPowerPointなどの講義のレジュメと講義の音声映像ファイルからなる。講師は主に台湾各大学の図書館情報学あるいは関連分野の教員と国家図書館の職員が担当している。

 「遠隔教育または図書館情報学シンポジウム・セミナー課程」では,過去に関係学会などで行われた各シンポジウム・セミナーの講演や討論のレジュメと音声映像ファイルが公開されている。

 2002年12月には,インターネットへの接続が困難な地域に対する配慮と国家図書館遠隔教育課程の一層の普及を目的とし,「図書館情報学専攻課程」の講義をまとめたCD-ROMが出版された。

 生涯学習に対する関心が高まるなか,図書館はどのような役割を負うべきか,また,時代の変化に対応できる図書館員をどのように養成していくべきかという,図書館が現在直面する二つの問題に対して,台湾の国家図書館の取り組みはわが国にとっても大いに参考になることであろう。

関西館資料部アジア情報課:刈田 朋子(かりたともこ)

 

Ref.

經濟部技術處全球資訊網. (online), available from < http://doit.moea.gov.tw/ [82] >, (accessed 2003-07-10).

國家圖書館遠距學園. (online), available from < http://cu.ncl.edu.tw/ [83] >, (accessed 2003-07-10).

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中村香織, 三浦太郎, 山形八千代, 石井奈穂子, 刈田朋子. 図書館員教育の国際動向. カレントアウェアネス. 2003, (277), p.12-18.
http://current.ndl.go.jp/ca1505 [86]

  • 参照(5898442)
カレントアウェアネス [10]
動向レビュー [52]
研修 [87]
オランダ [88]
ドイツ [89]
フランス [90]
台湾 [91]
米国 [92]
OCLC [93]

CA1506 - 研究文献レビュー:電子資料と目録規則,メタデータ,リンキング・テクノロジー / 北克一

PDFファイルはこちら [94]

カレントアウェアネス
No.277 2003.09.20

 

CA1506

研究文献レビュー

 

電子資料と目録規則,メタデータ,リンキング・テクノロジー

 

 

はじめに

 「国内の図書館情報学研究に関する概況把握を目的として,特定テーマに関する最近2年間の研究論文をレビューする」というのが,この企画である。この種のレビューは,日本図書館研究会が機関誌『図書館界』において,50号区切りで実施してきた。ただし,隔月刊の同誌において50号の刊行単位は,8年強の時間経過であり,そのレビューは実質には概ね過去10年間を対象として行われてきている(1)。また日本図書館協会では,各年の『図書館年鑑』において,「図書館概況」の下に館界の各種動向レビューを行ってきた(2)。

 本稿では,「電子資料と目録規則,メタデータ,リンキング・テクノロジー」を対象範囲として,2000年以降を中心に文献レビューを行う。なお,対象論文等をやや広めに採録し,動向記事・実践報告等も対象とした。また,単行書についても一部を取り上げた。

 21世紀の最初の数年は,20世紀最後の10年間における情報基盤ネットワークの進展と,WWWテクノロジーを核としたアプリケーション・プラットホーム上で展開されてきたネットワーク情報資源への対応をめぐって,目録法原理,目録法関係標準化規則,MARCの見直し,メタデータ規則開発,リンキング・テクノロジーとその実装・展開などが中心となる。

 

1. 目録規則等

 目録法関係が大きく動き出したのは,1997年頃からである。同年には,1)国際標準書誌記述(電子資料)(ISBD(ER))の刊行(3),2)書誌的記録の機能要件に関するIFLA研究グループによるFRBRの最終報告書(書誌的記録の機能要件: Functional Requirements for Bibliographic Records : final report)(翌年刊行)(4),3)AACR2の原則と将来展開に関する国際会議開催(5)があった。和中(6)がこれらを軸に英米目録規則(AACR2)の2002年改訂版までを手際よくまとめている。

 AACR2の2002年改訂版が2002年9月に刊行され,1999年以降の改訂を取りまとめるとともにいくつかの大きな改訂が行われた(7)。直近の改訂版は1998年版であるが,今回は1999年修正事項,2001年修正事項を統合し,さらにAACR改訂合同運営委員会の2002年改訂に対応した(8)。なお,今回より加除式媒体のみの刊行となった(9)。以下,主な改訂点を見る。

 第一は,条項0.24「規則適用原則」(Cardinal principle)の「資料の記述は,第一に当該資料が属する資料の種別を扱う章に基づく」を変更した。従来より目録規則の章立ては,資料種別といいつつも,この種別の区分原理の混在が指摘されてきた。今回の改訂版では,「記述対象資料のあらゆる側面(内容,媒体,刊行タイプ,書誌的関連,逐次刊行等)を明らかにすることが重要」と抽象的語句に変更されている。目録の記述対象のレベル,媒体型資料以外の資料への対応,逐次刊行性の見直し等の影響である。

 第二には,第12章「逐次刊行物(Serials)」が,「継続資料(Continuing Resources)」となり,根本的な変更がなされた。「継続資料」の下に,「逐次刊行物」と「更新資料」とに二分した点が大きな特徴である。この新第12章の対象範囲は,a.従来の逐次刊行物,b.継続する更新資料(加除式媒体資料やウェブサイトやデータベースなどの電子資料),c.終期があるが逐次刊行物の要件を備えている資料(逐次刊行物の復刻,期間限定の「逐次刊行物」,期間限定の「更新資料」)となった。ただし,項番「c.」は,以前よりの課題である逐次刊行性という第12章の基本原則との「衝突」を包含し,拡大している。

 関連して,記述の基盤を,逐次刊行物は初号主義,ネットワーク情報源等の更新資料は新規号主義を採用した。また,ISSN(国際標準逐次刊行物番号),ISBD(CR)との調整の上で,「タイトル変更」の判断基準を緩和し,新規書誌レコードの抑制を図った。

 その他,第3章「地図資料(Cartographic Materials)」が電子資料に関わる事項を中心とする全面改訂,第9章は2001年修正条項を反映して「コンピュータ・ファイル(Computer File(s))」から「電子資料(Electronic Resource(s))」への変更,出版者・頒布者の記述の簡略化などがある。

 古川が改訂の動向を紹介するとともに(10),第9章についてはISBD(ER)との比較考察,第12章については詳しい変更の考察を行っている(11)。他には,吉田ほかの論及がある(12)。

 IFLAの国際標準書誌記述(ISBDs)関係では,2002年6月に「国際標準書誌記述(単行書)(ISBD(M))」が改訂された(13)。同年8月には,「国際標準書誌記述(逐次刊行物)(ISBD(S))」の改訂版が,「国際標準書誌記述(逐次刊行物およびその他の継続資料)(ISBD(CR))」と名称変更の上,刊行されている(14)。1998年刊行の「書誌的記録の機能要件(FRBR)」における全国書誌の基礎的レベル要件とISBDs条項との整合性の見直しの一環である。

 ISBD(M)では,記述対象資料の同定識別のための記述要素が見直され,記述要素の「必須」と「選択」の項目が変化している。ISBD(CR)では,先のAACR2改訂項目で言及した電子的外部環境の変化を大きな背景に,ISSNおよびAACR側との協議,調整を経て改訂がなったものである。

 この間の経緯については,ISBD(M)と(CR)について関連する「国際標準逐次刊行物タイトル(International Standard Serials Title: ISST)」を含めて,那須による詳しい論考がある(15)。

 話題を国内に転じると,「日本目録規則1987年版改訂版(NCR1987R)」の第9章改訂案が,1999年11月に「電子資料の組織化:日本目録規則1987年版改訂版第9章の改訂とメタデータ検討会」で公表された(16)。後に,日本図書館協会のWWWでも公開,意見聴取が行われた。

 同案に対しては,北(17),北・村上(18)の論考がある。同第9章改訂案は,若干の修正の後,抜き刷りで刊行され(19),その後「日本目録規則1987年版改訂2版」が刊行された。第9章改訂案は,ISBD(ER)に依拠したものであり,電子資料をローカルアクセス資料とリモートアクセス資料に二分し,それぞれに対応した記述の情報源や記述要素を整理した。しかし,この第9章改訂案は,あらゆる電子資料を扱えることとしたことから,従来の規則において逐次刊行性を軸に第2章図書から第12章マイクロ資料と第13章逐次刊行物とに二分されていた規則構成構造に,「電子資料」という第三の軸を持ち込み,規則構造は複雑化した。

 NCR1987Rの第13章逐次刊行物の改訂案が,『図書館雑誌』に公表,WWWにも公開されている(20)。ISBD(CR),AACR2の2002年改訂に対応したものである。対応する論考は,寡聞にして未見である。その他,NCR1987Rに関しては,志保田・北(21),古川・志保田(22),古川等(23)がある。

 一方,国立国会図書館のJAPAN/MARCのNCR1987Rへの対応,UNIMARCフォーマット対応に関連して,JAPAN/MARCマニュアルの新規刊行がなされた(24)。

 いずれにせよ,国内規則のみならず,目録規則原則を規定する総則をも含め,規則の基本的な枠組みの見直し,改訂は今後の課題である。

 

2. メタデータ

 2000年当初から,メタデータに関する言及が増大している。メタデータとは,「データに関するデータ」や「データに関する構造化されたデータ」といわれる広範な概念であり,一般的にはサロゲート(代替物)とも総称される二次情報である。広義には,目録,書誌,索引,抄録,辞書,書評等々を含み,媒体や種類を問わない。

 しかし,最近のメタデータを巡る動向は,情報資源発見のためのメタデータという目的と,情報の意味的な相互可搬性(セマンティック・インターオペラビリティ)を中心として論議が進んでいる。すなわち,1)キーワード検索や全文検索の一定の限界への対処,2)保存関係や権利関係等の記述対象そのものに含まれない情報の保持,3)様々な種類のデータの統合検索基盤,4)既存媒体資料情報(目録)などと,ネットワーク情報資源等との統合検索の基盤などをその視野に入れている。

 図書館界においては,特にネットワーク上の情報資源へのメタデータとして構想,開発されたダブリン・コア(Dublin Core)を中心に論議,実践報告,実務報告が進展した(25)。従来の図書館界の目録規則との相違を念頭にダブリン・コアの特徴を簡単に整理しておく。

 第一には,目録規則では記述要素ごとに記述の情報源を規定し,「何を記述するか」という意味定義(セマンティクス定義)と「どのように記述するか」という構文定義(シンタックス定義)を行っている。

 別の見方では,カード目録では入力・出力が一体であり,MARCフォーマットにおいても目録規則との間に相互規定性・拘束性を持っている。一方,ダブリン・コアでは意味定義のみを規定し,記述文法は規定していない。なお,汎用的な記述形式としては,XML(26)を記述言語としたW3CによるRDF(Resource Description Framework)が標準的な枠組みを与えている(27)。

 ダブリン・コアの第二の特徴として,緩やかな定義とオプション性の保持がある。これは,このメタデータを「作成者」自身が記述・付加することを想定していることから,1)基本エレメントとして15項目(当初は13項目)を制定し(Simple Dublin Core: DCS),2)この15基本エレメントのいずれに対しても入力必須項目を定めず,すべてが任意項目であり,繰り返し可能である。

 第三の特徴として,拡張性の構造化が指摘できる。DCSの記述を詳細化するために,要素詳細化(qualifier)(28)と要素コード化形式(encoding scheme)を付加したDCQ(Qualified Dublin Core)セットが開発された。要素詳細化については,基本エレメントに対して詳細化を図るエレメント詳細化(Element Refinement Qualifier: 例えば,「日付」エレメントに対する「作成日付」や「更新日付」など)と,値が依拠する体系を示す値のコード化形式(Encoding Scheme Qualifier: 例えば,「主題」エレメントに対する「LCC」や「MeSH」など)がある。

 なお,要素詳細化において,「限定子を含む記述から限定子を取り除いても記述に矛盾を生じないこと」を限定子導入可否の基本原則(Dumb-down原則)としている。

 さらに,さまざまなコミュニティにおいて,ダブリン・コアに依拠してメタデータを開発・運用するには,一層の記述要素の拡張性が求められることが多い。こうした拡張枠組みを,アプリケーション・プロファイル(Application Profile: AP)という。APはそれぞれのコミュニティにおいてひとつ以上の名前空間(namespace)をXMLによってエレメントの定義とその場所を宣言し,エレメントの共有を可能にする枠組みである。なお,こうしたコミュニティ単位でのAPに対してのダブリン・コア・コミュニティ(DCMI)の対応が,運用審議会(Usage Board)での指針として2002年春に合意されている。

図書館界のAP(Library Application Profile: LAP)については,Dublin Core Libraries Working Group(29)によって開発され,ネットワークで公開されている(30)。

 このように,DCS,DCQ,APという階層構造をもつことで,広い範囲のコミュニティでの柔軟な運用と参加と相互運用性の確保が整備されつつある。

 以上のような国際的な動向を受けて,ダブリン・コアの動向紹介では,杉本に一連の論述がある(31)。また少し広い範囲でメタデータを検討したものに,目録規則とメタデータの関係を考察した渡邊(32),流通から保存までを射程した田畑(33),他には堀池・吉田(34)等がある。

 また,フィレンツェにおいて開催されたDublin Core-2002(2002.10.14-17)を踏まえた,国立国会図書館第3回書誌調整会議での永田(35),杉本(36)は参考になる。永田は,メタデータを巡る今後の課題を5つにシンプルに整理してみせた。杉本はダブリン・コアの論議を,意味,構文,具体的記述方式に総括した。共に,メタデータ・スキーマ・レジストリと,メタデータ・ハーベスティング(37)に言及している。今後の課題であり,共に必見としておきたい。併せて,同連絡会議記録集(38)に収録の「討議」記録は,メタデータを巡る国内を中心とする図書館関係の協同化,文書館等他のコミュニティとの協同化などを巡り,短いが多くの示唆に富んでいる。

 また,国立大学図書館協議会図書館高度情報化特別委員会ワーキンググループによる報告書(39)が出されている。併せて参照したい。

 一方,メタデータ構築事業の報告が輩出している。国立国会図書館関係では,例えば中井(40),大幸(41),河合(42)の報告がある。国立情報学研究所(NII)関係では,米澤(43),杉田(44)の報告がある。大学図書館関係でのメタデータを軸にした実践報告には,栃谷(45),尾城(46),平岡(47)などがあり,公共図書館関係では,森山(48)などがある。また,デジタル情報資源の保存問題とメタデータを考察したものに,大島(49),栗山(50)などがある。

 OCLC等の海外の動向等に関連してのものには,鹿島によるCORCプロジェクト参加報告(51)や中井のOCLC Connexion紹介(52)がある。

 2000年に米国議会図書館は200周年シンポジウム「新千年紀のための書誌調整に関する200周年記念会議(Bicentennial Conference on Bibliographic Control for the New Millennium)」を開催した。同館のネットワーク開発・MARC標準局(Network Development and MARC Standard Office)は,MARC21と共にMARC21のダブリン・コアへのマッピングも公表している(53)。

 また,2002年6月には新しいメタデータ・スキーマとして,MODS(Metadata Object Description Schema)を発表した。MARC21をXMLで展開したものであるが,MARC21のサブセットでもあり,新たなメタデータ・スキーマとも位置づけできよう。MODS開発の経緯を含めて,MARC21,MODS,ダブリン・コアの比較考察を,鹿島(54)が論考している。

 なお,国内では国立国会図書館が,上記のテーマを中心に「書誌調整連絡会議」を開催している(55)。

 

3. リンキング・テクノロジー

 情報資源提供の新しい環境構築が模索されている。先に触れた国立国会図書館のインターネット資源選択的蓄積実験事業(WARP),データベース・ナビゲーション・サービス(Dnavi)や,国立情報学研究所の学術コンテンツ・ポータル(GeNii),引用文献情報ナビゲータ(CiNii)などのサービス(56)が試験公開されている。

 一方,大学図書館等では電子ジャーナル,二次データベース,アグリゲータ・サービス,OPAC等の統合環境での提供を目指して,学術情報ポータル(玄関)の構築努力が始まっている。これらは初期のURLベースに基礎をおいたOPAC間の横断検索やOPACと電子情報とのリンクに止まるのではなく,新しいリンキング・テクノロジーと情報環境への挑戦と理解できる。

 外部環境としては,伝統的なISBN,ISSN,キータイトルに加えて,DOI(Digital Object Identifier)システム(57)による文献の一意識別コードによる名前空間の導入がある。 DOIは,オブジェクト識別子体系,DOIからURLへの変換を行うディレクトリ・サーバ(リゾルバー),オブジェクト(対象文献等の著作物)が保存されている出版社等のサーバから構成される。これを実装したサービスに出版者国際リンキング連盟(Publishers International Linking Association. Inc.: PILA)が運営するCrossRefがある(58)。関連文献に,鎌倉(59),時実(60),Pebtz, Ed(61),尾城(62)などがある。尾城は一読しておきたい。

 一方,1)すべての電子情報が一つのサービスで組織化されておらず,また2)利用者の所属,属性などによりアクセス条件が変わること,3)媒体型資料はOPACから所蔵情報やILLシステムに依存すること,また逆に4)複数の情報アクセス方法が存在する場合の優先順序提示の必要性などに対して,バン・デ・ソンペル(Herbert Van de Sompel)らが提唱したOpenURLテクノロジー(63)が,実装されてきた。OpenURLはリゾルバーが様々な情報資源からのメタデータや識別子情報を含むURLを受け,適切に解釈するためのデータ表記法の構文であり,BASE-URLとDESCRIPTIONから構成されている。多くのネットワーク情報資源提供者が,リゾルバーにOpenURLに準拠したメタデータを送信する機能に対応し始めている。詳しくは,その実装システムS・F・Xと共に紹介した増田(64)の論述がある。

 

最後に

 以上,21世紀に入っての目録規則,国際標準等の動向,ダブリン・コアを中心にメタデータの開発と導入実践例,リンキング・テクノロジーを軸とする新しい情報提供環境の変化を中心に駆け足でレビューした。明らかに,初期のWWW OPACや貴重書コレクションの電子化,二次情報データベースや電子ジャーナルのLAN提供等が個々のサービスとして独立に提供されてきた段階から,時代の階段は一段のぼった。一方,こうしたリゾルバーモデルによる統合環境を維持する資源や,複数資源の優先順位を規定する内部データベースの維持などにおいて,大多数の図書館において投入可能な資源の限界とのせめぎあいが見えてきている。図書館経営の視座,外部ビジネス・モデルの視点からも注視していきたい。

 なお,文中の敬称は略させていただいた。本稿では情報検索プロトコル関係,電子ジャーナルそのものを巡る課題等は対象外とした。

大阪市立大学大学院創造都市研究科:北 克一(きたかついち)

 

(1) 直近の『図書館界』のレビュー特集は,
特集:図書館・図書館学の発展−21世紀を拓く. 図書館界. 53(3), 2001, 173-406.
であり,本稿とテーマ的に関連したレビュー類は,次である。
北克一,呑海沙織 「学術情報流通の変容と大学図書館:20世紀最後の10年間」 ; 高鍬裕樹 「ネットワーク情報資源」 ; 田窪直規 「書誌情報とその標準化」.
(2) 毎年の『図書館年鑑(日本図書館協会発行)』の「I 図書館概況」中の「整理技術と書誌情報(執筆:永田治樹)」が概ね対応している。
(3) IFLA. ISBD(ER). K.G. Saur, 1997, 109p.
(4) IFLA. Functional Requirements for Bibliographic Records: Final Report. K.G. Saur, 1998, 136p. (online), available from < http://www.ifla.org/VII/s13/frbr/frbr.pdf [95] >. (accessed 2003-07-10).
(5) Weihs, Jean ed. The principles and future of AACR: proceedings of the International Conference on the Principles and Future Development of AACR, Toronto, Ontario, Canada, October 23-25, 1997. ALA, 1998, 272p.
(6) 和中幹雄. AACR2改訂とFRBRをめぐって:目録法の最新動向[CA1480 [37]]. カレントアウェアネス. (274), 2002, 11-14.
(7) ALA et al. AACR2. 2002 revision. ALA, 2002, 772p.
(8) Joint Steering Committee for Revision of Anglo-American Cataloguing Rules (JSC)。米国図書館協会,オーストラリア目録委員会,英国図書館,カナダ目録委員会,英国図書館・情報専門家協会(CILIP),米国議会図書館で構成。< http://www.nlc-bnc.ca/jsc/ [96] >参照。
(9) 今回のAACR2 2000年改訂版自体が,その新第12章「継続資料(Continuing Resources)」の中の「更新資料(Integrated Resources)」になった。
(10) 古川肇. "アメリカにおける『英米目録規則』改訂の動向". 電子資料の組織化:日本目録規則(NCR)1987年版改訂版第9章改訂とメタデータ. 東京, 日本図書館協会, 2000, 10-16 ; 古川肇. 『英米目録規則』に関する改訂の動向:一つの展望. 資料組織化研究. (43), 2000, 15-29.
(11) 古川肇. 『英米目録規則 第2版2002年版』の二つの章. 資料組織化研究. (47), 2003, 15-24.
(12) 吉田暁史ほか. 記述対象と書誌記述:最近における国際的な目録研究および規則改訂動向をふまえて. 図書館界. 54(2), 2002, 110-115.
(13) IFLA. ISBD(M). 2002 revision. (online), available from < http://www.ifla.org/VII/s13/pubs/isbd_m0602.pdf [97] >, (accessed 2003-07-10).
(14) IFLA. ISBD(CR). K.G. Saur. 2002, 112p.
(15) 那須雅煕. ISBDの新たな展開:ISBD(M)と(CR)[CA1485 [98]]. カレントアウェアネス. (275), 2003, 4-7.
(16) 日本図書館協会目録委員会編. 電子資料の組織化:日本目録規則(NCR)1987年版改訂版第9章改訂とメタデータ. 東京, 日本図書館協会, 2000, 95p.
(17) 北克一. 『日本目録規則1987年版改訂版』第9章改訂案「電子資料」の検討. 整理技術研究. (42), 2000, 1-12.
(18) 北克一, 村上泰子. 電子資料と目録規則―NCR第9章を対象に. 図書館界. 53(2), 2001, 134-141.
(19) 日本図書館協会目録委員会編. 日本目録規則1987年版改訂版第9章電子資料:旧第9章コンピュータファイル改訂版. 東京, 日本図書館協会, 2000, 37p.
(20) JLA目録委員会. 『日本目録規則 1987年版改訂2版』第13章検討のポイント. 図書館雑誌. 96(2), 2002, 132-133. (online), available from < http://wwwsoc.nii.ac.jp/jla/mokuroku/13point.html [99] >, (accessed 2003-07-10).
(21) 志保田務, 北克一. 『日本目録規則 1987年版改訂版』における区切り記号法に関する一検討:書誌レベルを主軸に. 整理技術研究. (42), 2000, 13-18.
(22) 古川肇, 志保田務. 続『日本目録規則1987年版改訂版』への意見と提案(下). 整理技術研究. (42), 2000, 19-26.
「上」は,同誌(41), 1999, 13-27. に掲載。
(23) 古川肇. 目録の構造に関する試論. 資料組織化研究. (44), 2001, 1-9.
(24) 国立国会図書館編. JAPAN/MARCマニュアル 単行・逐次刊行資料編. 東京, 日本図書館協会, 2002, 183p.
なお,合わせて次にも目配りをしておきたい。国立国会図書館 - 図書館員のページ - 書誌データの作成及び提供 < http://www.ndl.go.jp/jp/library/data_make.html [100] >.
(25) Dublin Core Metadata Initiative DCMI. (online), available from < http://dublincore.org/ [101] >, (accessed 2003-07-10).
Simple Dublin Coreが,2003年1月に,ISO/TC46/SC4で投票結果,承認されている。
(26) XMLの基礎知識については,例えば次がわかり易い。
特集:学術・情報分野のためのXML基礎. 情報の科学と技術. 52(8), 2002, 395-434.
(27) Resource Description Framework (RDF). (online), available from < http://www.w3c.org/RDF/ [102] >, (accessed 2003-07-10).
(28) Dublin Core Qualifiers. (online), available from < http://dublincore.org/documents/2000/07/11/dcmes-qualifiers/ [103] >, (accessed 2003-07-10).
ISO15836として,承認されている。
(29) DCMI Libraries Working Group. (online), available from < http://dublincore.org/groups/libraries/ [104] >, (accessed 2003-07-10).
(30) DC - Library Application Profile. (online), available from < http://dublincore.org/documents/2001/10/12/library-application-profile/ [105] >, (accessed 2003-07-10).
(31) 多筆なので一部を紹介する。
杉本重雄. Dublin Coreについて:最近の動向,特にqualifierについて. ディジタル図書館. (18), 2000, 36-48, (online), available from < http://www.dl.ulis.ac.jp/DLjournal/No_18/4-sugimoto/4-sugimoto.html [106] >, (accessed 2003-07-10). ; 杉本重雄. Dublin Coreについて(1)概要. 情報管理. 45(4), 2002, 241-254.;杉本重雄. Dublin Coreについて(2)より深い理解のために. 情報管理. 45(5), 2002, 321-335.;杉本重雄. "情報資源組織化の努力―メタデータについて―". 電子図書館:デジタル情報の流通と図書館の未来. 東京, 勉誠出版, 2001, 103-129.
(32) 渡邊隆弘. 図書館目録とメタデータ. 図書館界. 53(2), 2001, 126-133.
(33) 田畑孝一. ディジタル図書館. 東京, 勉誠出版, 1999, 155p. (特に「IV目録とメタデータ」および「V情報資源のメタデータ記述の枠組み」);田畑孝一. "デジタル情報の流通・保存と電子図書館システム". 電子図書館:デジタル情報の流通と図書館の未来. 東京, 勉誠出版, 2001, 87-101.
(34) 堀池博巳, 吉田暁史. ネットワーク情報資源の組織化. 図書館界. 55(2), 2003, 94-100.
(35) 永田治樹. "メタデータをめぐる問題−図書館コミュニティの対応". ネットワーク系電子出版物の書誌調整に向けて:メタデータの現況と課題(第3回書誌調整連絡会議記録集). 東京, 日本図書館協会, 2003, 11-20.
(36) 杉本重雄. "Dublin Coreの最近の話題から". 前掲, 21-32.
(37) 例えば,Open Archive InitiativeによるハーベスティングのプロトコルであるOAI-PMH(Protocol for Metadata Harvesting)< http://www.openarchives.org/OAI/openarchivesprotocol.html [107] >参照。
(38) 国立国会図書館編. ネットワーク系電子出版物の書誌調整に向けて:メタデータの現況と課題(第3回書誌調整連絡会議記録集). 東京, 日本図書館協会, 2003, 128p.
概要は< http://www.ndl.go.jp/jp/library/data/030228-1.html [108] >参照。
(39) 図書館高度情報化特別委員会ワーキンググループ. 電子図書館の新たな潮流:情報発信者と利用者を結ぶ付加価値インターフェイス. 国立大学図書館協議会, 2003, 49p. (online), available from < http://wwwsoc.nii.ac.jp/anul/Kdtk/Rep/73.pdf [109] >, (accessed 2003-07-10).
(40) 中井万知子. 国立国会図書館におけるメタデータ記述の検討と計画. ディジタル図書館. (22), 2002, 19-29. (online), available from < http://www.dl.ulis.ac.jp/DLjournal/No_22/3-mnakai/3-mnakai.html [110] >, (accessed 2003-07-10).
(41) 大幸直子. "国立国会図書館におけるネットワーク系電子出版物の組織化". 前掲(38), 33-42.
(42) 河合美穂. "国立国会図書館のインターネット資源選択的蓄積実験事業(WARP)及びデータベース・ナビゲーション・サービス(Dnavi)について". 前掲(38), 43-57.
関連して,前掲(38)には,「付録1 国立国会図書館メタデータ記述要素」も収録されている。また,関係情報としては,第三回書誌調整連絡会議報告―インターネット上の情報資源の組織化―. 国立国会図書館月報. (503), 2003, 16-20.;WARP. < http://warp.ndl.go.jp/ [111] >;Dnavi. < http://dnavi.ndl.go.jp/ [112] >を参照。
(43) 米澤誠. 国立情報学研究所のメタデータ共同構築計画. ディジタル図書館. (22), 2002, 30-35. (online), available from < http://www.dl.ulis.ac.jp/DLjournal/No_22/4-yonezawa/4-yonezawa.html [113] >, (accessed 2003-07-10).
(44) 杉田茂樹. "国立情報学研究所のメタデータ・データベース共同構築事業について". 前掲(38). 59-66.
関連しては,NIIメタデータ・データベース入力マニュアル1.2版. (online), available from < http://www.nii.ac.jp/metadata/manual/ [114] >, (accessed 2003-07-10).
(45) 栃谷泰文. ゲートウェイ・サービスのためのメタデータ: 「インターネット学術情報インデックス」作成の事例報告. 現代の図書館. 38(1), 2000, 55-62.
(46) 尾城孝一. サブジェクトゲートウェイの構築と運営:理工学分野の高品質なインターネットリソースの提供をめざして. 情報の科学と技術. 50(5), 2000, 280-289.
関連して,尾城孝一. 電子図書館サービスの新たな可能性:欧米の動向のレビューを中心に. (online), available from < http://yicin.komachi.gr.jp/~dtk/kenkyu/resource/DOC12_ojiro.pdf [115] >, (accessed 2003-07-10).がある。
(47) 平岡博. 図書館情報大学ディジタル図書館のメタデータ作成. ディジタル図書館. (16), 1999, 44-49. (online), available from < http://www.dl.ulis.ac.jp/DLjournal/No_16/5-liru/5-liru.html [116] >, (accessed 2003-07-10).
なお,これ以外に例えば次のような関連発表の文献がある。
石村恵子ほか. 筑波大学電子図書館の現状と課題. 大学図書館研究. (55), 1999, 65-74.;新麗. "2.4 考古学フィルムライブラリー". NAIST電子図書館レポート 2000. 2000, 24-27.;今井正和. "2.5 学位論文のメタデータ". NAIST電子図書館レポート 2000. 2000, 28-40.;渡邊隆弘. "震災アーカイブにおけるメタデータの設計". 人文科学とコンピュータシンポジウム論文集. 東京, 情報処理学会, 2000, 89-96.
(48) 森山光良. Z39.50とDublin Coreを用いた郷土関係電子図書館ネットワークの構築: 「デジタル岡山大百科」における構想と課題. ディジタル図書館. (21), 2002, 3-18. (online), available from < http://www.DL.ulis.ac.jp/DLjournal/No_21/1-moriyama/1-moriyama.html [117] >, (accessed 2003-07-10).
(49) 大島薫. 電子出版物の保存. 情報の科学と技術. 50(7), 2000, 383-388.
(50) 栗山正光. デジタル情報保存のためのメタデータに関する動向[CA1489 [118]]. カレントアウェアネス. (275), 2003, 13-16.;栗山正光. ディジタル情報保存のためのメタデータ(2). (online), available from < http://www.tulips.tsukuba.ac.jp/memb/mtkuri/reports/metadata2.html [119] >, (accessed 2003-07-10).
関連して, RLG. Working Group on Preservation Issues of Metadata : Final Report. (online), available from < http://www.rlg.org/preserv/presmeta.html [120] >, (accessed 2003-07-10).
(51) 鹿島みづき. CORCプロジェクトに参加して. 情報の科学と技術. 51(8), 2001, 409-417.
(52) 中井惠久. OCLC Connexion:目録作成サービスの統合[CA1477 [121]]. カレントアウェアネス. (274), 2002, 3-4.
関連して,OCLC Connexion. < http://www [122]. oclc.org/connexion/ >;OCLC Connexion: Guide to Migration. < http://www.nelinet.net/tech/cat/connex.htm [123] >。基本は,OCLCとLCを中心とする目録世界とメタデータ世界のCross Walkの挑戦である。
(53) LC. MARC STANDARDS. (online), available from < http://lcweb.loc.gov/marc/marc.html [124] >,(accessed 2003-07-10).;LC. MARCXML. (online), available from < http://www.loc.gov/standards/marcxml/ [125] >, (accessed 2003-07-10).
(54) 鹿島みづき. MODS:図書館とメタデータに求める新たなる選択肢. 情報の科学と技術. 53(6), 2003, 307-318.
関連して,MODS < http://www.loc.gov/standards/mods/ [126] >。
(55) 国立国会図書館編. 書誌コントロールの課題(第2回書誌調整連絡会議記録集). 東京, 日本図書館協会, 2002, 78p ; 前掲(38).
概要は< http://www.ndl.go.jp/jp/library/data/020228.html [127] >参照。
(56) GeNii. (online), available from < http://ge.nii.ac.jp/ [128] >, (accessed 2003-07-10).;CiNii. (online), available from < http://ci.nii.ac.jp/ [129] >, (accessed 2003-07-10).
また,メタデータ・データベース共同構築事業として,学術情報リポジトリー・ポータル(NII-IRP: NII Institutional Repository Portal),統合サブジェクト・ゲートウェイ(NII-USG: NII Union Subject Gateway)の構築が構想されている。
(57) DOI. (online), available from < http://www.doi.org/ [130] >, (accessed 2003-07-10).
(58) CrossRef. (online), available from < http://www.crossref.org/ [131] >, (accessed 2003-07-10).
(59) 鎌倉治子. DOI(デジタル・オブジェクト識別子). 国立国会図書館月報. (455), 1999, 32-35.
(60) 時実象一. 引用文献リンクプロジェクトCrossRef:「情報検索」から「情報リンク」へ. 情報管理. 43(7), 2000, 615-624.
(61) Pentz, Ed. インタビュー ペンツ,エド氏に聞く:CrossRefについて. 情報管理. 45(4), 2002, 227-229.
(62) 尾城孝一. CrossRefをめぐる動向[CA1481 [132]]. カレントアウェアネス. (274), 2002, 14-17.
(63) OpenURL syntax description. (online), available from < http://www.sfxit.com/openurl/openurl.html [133] >, (accessed 2003-07-10).;OpenURL Generator. (online), available from < http://demo.exlibrisgroup.com:9003/OpenURL/ [134] >, (accessed 2003-07-10).
(64) 増田豊. OpenURLとS・F・X[CA1482 [135]]. カレントアウェアネス. (274), 2002, 17-20.;増田豊. 学術リンキング:S・F・XとOpenURL. 情報管理. 45(9), 2002, 613-620.
関連して,OpenURLを実装したシステムとして,SFX Source(Open-URL Enabled Resources)< http://www.sfxit.com/sources-list.html [136] >がある。

 

 


北克一. 電子資料と目録規則,メタデータ,リンキング・テクノロジー. カレントアウェアネス. 2003, (277), p.19-24.
http://current.ndl.go.jp/ca1506 [137]

  • 参照(22536)
カレントアウェアネス [10]
研究文献レビュー [138]
メタデータ [139]
電子情報資源 [140]
目録規則 [141]

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