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No.12 中国国家図書館の現況

 国立国会図書館が2008年度に実施した在外研究及び2009年度の実地調査にて、中国国家図書館の概況、業務実態等についての調査研究を行い、その成果をまとめた。

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中国 [6]
国立図書館 [7]
中国国家図書館 [8]

0. はじめに

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 急成長する中国と共に、中国国家図書館は急成長を続けている。電子図書館サービスをはじめ、新たなサービスを次々と打ち出し、大胆に、かつ融通無碍にそれを実現する。中国国家図書館の取組みとその成果は、国外からの注目度も極めて高い。国立図書館のあり方を考える上でも、我が国の図書館サービスについて考える上でも、参考になる点が少なくない。

 国立国会図書館(以下、「当館」という。)は1981年から毎年、中国国家図書館との間で業務交流を実施している。約30年にわたる業務交流を通じて、中国国家図書館の業務やサービスについて多くの情報を入手してきた。人的交流の実績も豊富である。中国国家図書館について当館が蓄積している情報は、単なる文献調査や一過性の参観見学では得られない信頼性を有していると言えるだろう。当館では今後、その蓄積をより広く共有できるようにしていきたいと考えている。本書では、そのような取組みの一環として、中国国家図書館の現況と最近の動きを、実地調査報告と最新の公表資料により紹介する。

 本文編は、中国国家図書館の概況、収集整理業務、利用者サービス、電子図書館事業等についての調査報告である。特に、収集整理業務についての体系的な紹介、注目すべき新たな利用者サービスの動向に重点を置いた。実地調査の結果をありのまま記述することを主眼としたので、言及のない業務やサービスもある。所蔵資料の詳しい紹介なども割愛した。また、既出の調査報告等を再構成した部分があるため、記述に若干の重複が生じているが、あえて調整は行わなかった。巻末の資料編・統計編には、本文中で紹介した業務に関係する基本文書や主な業務統計を掲載した。

 本書の執筆は当館の前田直俊(関西館電子図書館課)と岡村志嘉子(関西館アジア情報課)が担当した。前田担当部分は、当人が関西館アジア情報課在職中、2008年10月10日から2009年1月10日までの間、「中国国家図書館の収集組織化と提供サービスならびに中国における書誌作成に関する調査研究」をテーマとして実施した在外研究の調査報告である。在外研究時点の情報を基本とするが、特に必要な場合はその後の動きについても注記した。岡村担当部分は、中国国家図書館ホームページから得られる情報をはじめ中国国家図書館の最新の公表資料を基礎とし、2009年10月の短期間の実地調査、同年11月の両館業務交流などを通じて中国国家図書館側から得た情報をそれに付加している。資料編の翻訳、統計の編集及び全体の調整は岡村が担当した。

 なお、中国国家図書館は中国国内では「国家図書館」と称され、対外的な呼称として必要な場合のみ「中国」を冠するのが通例である。本書においても、本文中では多くの場合、「国家図書館」と表記している。

 中国国家図書館について、また、中国の図書館事情について調べる際の基本資料の一つとして、本書を活用していただければ幸いである。

(岡村志嘉子)

 

凡例

  1. 本文中の統計、金額等の数値で、特に記載のないものは、前田の在外研究(2008年10月~2009年1月)時点のものである。
  2. 本文中の組織人員は、「4. 1. 電子図書館業務」については2010年8月現在、それ以外の章・節で特に記載のないものについては、前田の在外研究時点の人数である。
  3. 本文中の写真は、全て前田が在外研究中に撮影したものである。
  4. 本文中の【 】内は中国語表記を示す。中国語資料の表記は、本文中では原則として日本漢字を用いた。
  5. 1元は約12.4円(2010年9月現在)。
  • 参照(6367)
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中国 [6]
国立図書館 [7]
中国国家図書館 [8]

1. 中国国家図書館概況

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1. 1. 役割・機能

 中国国家図書館は中華人民共和国唯一の国立図書館であり、文化部(「文化省」に相当する。)が所管する。

 その機能としては、「国の総書庫」「国家書誌センター」「国家古籍保護センター」の3つが掲げられている。このうち「国家古籍保護センター」機能は、国の重点政策として2007年から推進されている「中華古籍保護計画」と連動する形で新たに加えられたものである。

 3つの機能は、より具体的には次のように説明されている(1)。

  • 国内外の出版物の収集と保存を責務とし、全国の資料保存事業の指導と調整を行う。
  • 中央政府機関、社会団体及び一般公衆に対し、文献情報とレファレンスサービスを提供する。
  • 図書館学理論及び図書館事業についての研究を行い、全国の図書館の業務を指導する。
  • 対外的に文化交流機能を発揮し、国際図書館連盟(IFLA)その他関係国際機関に参加し、国内外の図書館の交流協力を促進する。

 

1. 2. 略史

 国家図書館の前身は、清朝末期に創設が決まった京師図書館である。1909年(宣統元年)9月9日、宣統帝によって京師図書館設立の裁可が下された。翌1910年(宣統二年)には、中国で初めての図書館法規となる「京師及各省図書館通行章程」も制定された。京師図書館は広化寺を庁舎と定め開館準備を進めたが、完成を見ぬうちに清朝は滅亡する。正式に開館するのは、辛亥革命を経て中華民国に移管された後、1912年8月27日のことであった。1916年には正式に国内出版物の納本を受け入れるようになり、国立図書館としての機能を拡充していく。1928年には館名が国立北平図書館と変更された。所在地も幾度か変遷した。1931年になって文津街庁舎が完成し、当時の中国国内で最大規模の、最も先進的な図書館となった。

 中華人民共和国成立後、1950年3月6日、国立北平図書館は国立北京図書館と名を改め、1951年6月12日には北京図書館と改称された。文津街の庁舎は増築を重ねたが、蔵書の増加と業務の拡大に伴い手狭となり、周恩来首相の指示の下、1975年3月、北京図書館新館の建設が決まった。新館が落成したのは1987年、所在地は北京市西部の白石橋である。1998年12月12日、北京図書館は国家図書館と改称され、対外的には中国国家図書館と称されることになった。2004年12月からは、国家図書館二期プロジェクトとして国家デジタル図書館の建設が進められた。国家デジタル図書館は2008年9月9日に開館し、国家図書館はまた新たな段階に入った(2)。

 

1. 3. 組織・人員

 国家図書館は文化部が所管する非営利の事業単位(3)で、2009年末現在の職員数は、館長1名、副館長5名を含め、計1,365名である。

 内部組織は行政部門と業務部門の2つに大別され、計26の部署で構成される。行政部門の各部署は総務、人事、会計、庁舎管理、国際協力などの事務を司る。業務部門の各部署は収集整理、レファレンス、閲覧などの図書館業務を司る。さらに、中国図書館学会事務局、国家図書館出版社など、組織上の位置付けは直属ではないが、国家図書館内に事務所を置いて密接な関係を有している機関もある(図1.1、巻末「資料2. 中国国家図書館組織一覧」参照)。

 

図1.1 中国国家図書館組織図(2010年9月現在)

図1.1 中国国家図書館組織図(2010年9月現在)

 

 行政部門は業務部門の監督・調整も行っており、その担当部署として業務管理処が設置されている。業務部門に属する各部は、館全体の基本指針である五か年計画(4)に基づき、毎年初めに1年間の具体的な業務遂行計画を策定して、業務計画書を作成・提出する。業務管理処はこの計画書を基に、半年ごとに各部の業務遂行状況について評価を行い、その結果によっては、報奨金または課徴金の措置がなされる。評価の対象となる指標は、例えば収集部門では収集率、納本率など、目録作成部門では作成データの質、作成にかかる時間、資料供用の正確さなど、外国語資料部門では選書の質や重複率などである。そのほか、複数の部門にわたる事項の調整についても、業務管理処が担当している。

 組織運営においては、各部門が職員採用の裁量を有しており、また部門ごとに給与体系が異なっているなど、各部門の独立性が強い点に特徴がある。部門間の人事異動は、それほど頻繁には行われない。

 職員は年頭に契約書を提出することが義務付けられており、年末に1年間の総括報告を行って、業績評価が下される。

 職員の身分体系としては、①給与に係る等級、②ライン(部長、副部長など)、③職称の3系統がある。職称は、図書館業務については「研究館員」、「副研究館員」、「館員」、「助理館員」、「管理員」の5つに分けられており、学位、勤続年数、発表論文数などに基づく評価制度によって認定される。

 国家図書館は、政府の推進する「文化体制改革」のモデル機関の1つに指定され、近年、政府の方針に基づき、組織運営、人事管理などについて新たな制度の試行的な導入が進められてきた。人事管理面では幹部職員の若年化と能力主義の徹底が図られ、かつての年功序列的な組織形態は様変わりした。管理職の任命には、館内外を対象とした公募制が実施され、その任期は3年である。また、新卒者の採用は、大学院修士課程修了以上を基本としている。

 

1. 4. 施設

 現在の国家図書館は、表1.1のとおり北京市内の2か所に分かれている。市内西部の文教地区にある本館は、1987年完成の一期館と2008年完成の二期館からなる。また、北京市中心部、故宮近くにある元の文津街庁舎が現在、古籍館となっている。

 建物延べ面積約25万m2は、世界の国立図書館で第3位の大きさである。

 

表1.1 中国国家図書館の庁舎

 建物延べ面積完成年所在地
本館  北京市海淀区中関村南大街33号
 一期館(南区)14万m21987 
 二期館(北区)8万m22008 
 計  22万m2  
古籍館3万m21931北京市西城区文津街7号
 総計  25万m2  

 

図1.2 本館二期館

図1.2 本館二期館

 

図1.3 本館一期館

図1.3 本館一期館

 

図1.4 古籍館

図1.4 古籍館

 

1. 5. 所蔵資料

 国家図書館は国内出版物を網羅的に収集している。正式出版物だけでなく、市場に流通しない非正式出版物の収集も重視される。国務院学位委員会の指定する学位論文所蔵館でもある。台湾・香港・マカオで刊行された資料については専門の資料室を設けている。外国資料は1920年代から購入が開始され、現在、外国資料の所蔵は中国国内で最も多く、言語の種類は115に上る。国際連合資料の寄託図書館にも指定されている。

 2009年末現在の蔵書総数は27,783,105点である。また、2009 年の年間資料受入点数は829,106点である。貴重な蔵書としては、甲骨資料、敦煌遺書、『趙城金蔵』、『永楽大典』、『文津閣四庫全書』、1470年代のインキュナブラなどがある。

 近年はデジタル資源の構築も重視され、データ総容量は2009年末現在、327.8TBに達している。そのうち、2.02TBが電子新聞の納本、70TBがデータベースの購入、239.1TBが蔵書のデジタル化、16.18TBがウェブアーカイビング等によるものである。電子資料の所蔵点数は、電子図書約1,515,000冊、電子ジャーナル約44,000タイトル、電子新聞約3,100タイトルなどである(5)。

 

1. 6. 納本制度

 1916年3月6日、中華民国教育部から「国内で書籍を出版するときは出版法に基づいて必ず登録を行い、登録された図書はいずれも1部を京師図書館(訳注:現国家図書館)に納めなければならない」という内容の通達《教育部片奏内务部立案出版之图书请饬该部分送京师图书馆收藏摺》が出された。これによって、国家図書館に対する出版物の納本が正式に制度化された。以来今日まで一貫して、法令(通達等により国家図書館は納本資料の受入機関に指定されている。

 現行法では、「出版管理条例」(国務院令第343号)をはじめとする関係法規に納本規定がある。具体的な納本部数、納本期限、罰則等については、1991年に新聞出版署から出された「『図書・雑誌・新聞見本の納入方法について』を再通知する通知」((91)新出図字第990号)などに定められている。

 1990年代以降、電子出版物や録音映像出版物の納本が正式に開始された。また、学位論文は「中華人民共和国学位条例暫定実施方法」(1981年5月20日)に基づいて納本され、ポストドクター研究報告書も国家図書館の納本対象と規定されている。

 

1. 7. 利用者サービス

 国家図書館は1年365日開館し、1日当たりの平均利用者数は延べ約12,000人である。利用資格は満16歳以上で、利用者カードの種類に応じて館内閲覧、貸出などのサービスが利用できる。また、本館二期館内には2010年5月、6~15歳を利用対象とする少年児童図書館もオープンした。

 2008年9月の本館二期館、即ち、国家デジタル図書館の開館を機に、国家図書館の利用者サービスは新たな段階に入った。本館一期館は外国語資料や国内外の専門資料を中心に、専門性の高い図書館サービスが行われる。本館二期館は中国語資料や電子資料を中心に、一般閲覧サービスが行われる。古籍館では古典籍資料が利用に供される。

 レファレンスサービスは、有料サービスも含め、主題検索、科学技術文献最新情報調査、委託調査、情報配信サービスなど幅広く業務を拡大している。オンラインでのチャットレファレンスも実施している。近年特に重視しているのが立法・行政に対するサービス機能の強化であり、新たに設置された立法・政策決定サービス部がこの業務を担当している。また、ホームページの拡充により、インターネットを通じた情報発信を強化するとともに、展示会や講演会、セミナーなどの活動にも力を入れている。

 

1. 8. 業務機械化とデジタル化の歩み

 国家図書館で業務機械化に向けた検討が開始されたのは、新館の建設が決まった1975年のことである。1980年代に入ると書誌作成をはじめとして業務機械化への取組みが本格化した。中国語書誌データベースの構築は1987年から始まり、1989年には大型コンピュータ総合管理システムが稼働した。1995年からはデジタル化とネットワーク構築に向けた検討が始まった。1995年に電子閲覧室が開室、1997年には国家図書館ホームページが開設され、また、1999年にはギガレベルの館内LANが本格稼働している。図書館システムに関しては、2003年以降、Ex Libris社のALEPH500図書館統合管理システムが採用されている。

 デジタル図書館の構築に関する研究開発は1996年から始まった。その後、「国家デジタル図書館プロジェクト」が立案され、国家図書館におけるデジタル資源の構築と利用提供体制の整備は、国家重点プロジェクトとして計画的に進められ、今日に至っている。

(岡村志嘉子、前田直俊)

 

注

(1) “关于国图 历史沿革”. 中国国家图书馆・中国国家数字图书馆.
http://www.nlc.gov.cn/service/gygt_lsyg.htm [11], (参照 2010-09-02).

(2) 中国国家図書館の沿革は、以下の記述による。
陈源蒸ほか編. 中国图书馆百年纪事(1840-2000). 北京图书馆出版社, 2004, p. 2.
李致忠編. 中国国家图书馆. [中国国家图书馆], 1999, p. 6-8.
“关于国图 历史沿革”. 中国国家图书馆・中国国家数字图书馆.
http://www.nlc.gov.cn/service/gygt_lsyg.htm [11], (参照 2010-09-02).

(3) 主に公益性の高い分野で実事業を担当する組織・機関。

(4) “关于国图“十一五”规划纲要”. 中国国家图书馆・中国国家数字图书馆.
http://www.nlc.gov.cn/service/gygt_ghgy.htm [12], (参照 2010-09-02).

(5) “Annual Report to CDNL 2010”. 国立国会図書館.
http://www.ndl.go.jp/en/cdnlao/meetings/pdf/CR2010_China.pdf [13], (参照 2010-09-02).

  • 参照(12247)
図書館調査研究リポート [5]
中国 [6]
国立図書館 [7]
中国国家図書館 [8]

2. 収集整理業務

  • 参照(5543)
図書館調査研究リポート [5]

2. 1. 中国における書誌作成と中国国家図書館の役割

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2. 1. 中国における書誌作成と中国国家図書館の役割(1)

 

2. 1. 1. はじめに-CIPと全国書誌-

 CIP(Cataloging In Publication)とは、出版者から提供される事前情報に基づいて全国書誌の作成機関などが作成した書誌データあるいはその提供元情報を、出版物の標題紙裏などに印刷して出版することである。世界の多くの国々で導入され、アジア地域においても既に8か国で実施されている(2)。

 一方、全国書誌は1つの国における出版物についての包括的な記録の集積であり(3)、多くの場合、納本制度で収集された資料に基づいて、国立図書館など国を代表する書誌作成機関によって作成される出版物の最終的なリストである。

 書誌作成の過程を、出版界から図書館界までの大きな枠組みの中で時系列に捉えた場合、出発点がCIPで終着点が全国書誌といえよう。CIPから全国書誌にいたる流れを眺めれば、その国の書誌作成の実際がみえてくる。

 本節では、中国のCIPと全国書誌の作成に携わる新聞出版総署情報センター及び国家図書館を取り上げて、中国における書誌作成の現状を概観し、そこからみえてくる課題及び今後の展開について述べる。

 

2. 1. 2. 中国におけるCIPの導入過程

 

(1) 導入前史

 中国では、既に1970年代末から海外のCIPの実施事例が紹介され、図書館界を中心に活発に議論されていた。また、一部では実験的な試みも行われていたものの、総体としては理論としての枠組みを越えるものではなかった(4)。その後、1983年から1985年にかけて「文献著録総則」「普通図書著録規則」「文献主題標引規則」など書誌情報に関する国家規格が相次いで整備されたことを受けて、CIP導入に向けての動きが本格化することになる。

 1985年に実施の可能性に関する予備調査が行われ、翌年から導入に向けての具体的な検討が開始された。1987年には関連規格の制定のため、新聞出版署標準室、北京図書館(現国家図書館)、中国科学院図書館、北京大学図書館、人民出版社、機械工業出版社、新華書店本店、信息分類編碼研究所からなる起草班が編成され、同年末に草案が作成された。次いで出版界及び図書館界からの意見聴取を経て、1989年に「図書在版編目数据」及び「図書書名頁」の2つの国家規格が策定された。そして、強制規格(5)として、それぞれ[GB12451-90]、[GB12450-90]の規格コードが付与され、1990年7月に国家技術監督局の認可を経て、1991年3月より施行されることとなった。

 

(2) 2つの国家規格

 「図書在版編目数据」は、CIPデータに記載すべきデータ項目、区切り記号、記述フォーマットなどを定めたものである。データ項目は記述データと検索データの2種類から成り、前者には書名、著者名、版表示、出版事項、シリーズ情報、附注、ISBNなどが、後者には書名や著者名などのアクセスポイント、分類記号、件名などが含まれる(図2.1)。

 

図2.1 CIPデータの例

図2.1 CIPデータの例

 

 一方、「図書書名頁」は、世界標準のISO1086-87“Documentation: Title-leaves of a book”に準拠し、図書の標題紙(標題紙裏を含む)に記載すべき項目について定めたもので、書名、著者名、出版事項、版権説明、版本記録(6)、CIPデータ、形態情報、印刷発行記録などが必須項目として挙げられている。

 

(3) CIPの実施

 国家規格が定められたことにより、出版者が図書を出版する際には、これら規格に定められた項目を、定められた形式で当該出版物に記載することが義務付けられた。

 しかしながら、中国における初めての試みであり、かつ全国500余の出版者に関わる大事業であることから、実施は一足飛びではなく段階的に行われた。

 まず、1992年に北京地区の出版者を中心に41社を選定して研修会を開催し(7)、対象地域や出版者を増やしながら(8)数年間の試行による経験を重ねた後、1994年から北京地区の全ての出版者を対象とした(9)。当時、手引書として出版された許綿主編『図書在版編目工作手冊』(人民出版社 1994)には、CIPの概念や意義、データの作成手順、国家規格の本文と解説、関連する通達文書、実例集などが掲載されている(10)。最終的には、1999年4月から全国規模での実施が始まり(11)、その結果、新刊図書の約90%にCIPデータが記載されるようになった(12)。その後、両規格は強制規格から任意規格へと変更され、2002年には改訂が行われている(13)。

 

2. 1. 3. 新聞出版総署情報センター

 CIPは、新聞出版総署情報センターが管理運営を行っている。同センターはその名が示すとおり新聞出版総署(14)の直属機関で、出版情報の作成と頒布に関する業務を主管している。同時に中国版本図書館という名称も併せ持つが、これは中国の組織機構によくみられる、いわゆる「1つの機構、2枚の看板」【一个机构两个牌子】(図2.2)で、実体は1つの組織でありながら、その果たす機能や役割によって、名称が使い分けられる。出版物を収集・保存する際には中国版本図書館と称するが、これについては2.1.4.で詳しく述べる。

 

図2.2 「1つの機構、2枚の看板」

図2.2 「1つの機構、2枚の看板」

 

(1) CIPデータの作成手順

 出版者が出版物を発行する際には、事前に新聞出版総署情報センターに申請をして、CIPデータを取得する。出版物の詳細が決まった段階で、「図書在版編目(CIP)数据工作単」(図2.3)に必要事項を記入して、担当部門である図書在版編目処に送付する。その際、記述は「普通図書著録規則」に拠り、主題分析には『中国図書館分類法』『漢語主題詞表』が用いられる。図書在版編目処では、出版者から送られてきたデータを検査し、修正・追加をした後に、出版者に返却する。そして、出版者は返却されたCIPデータを図書の標題紙裏に印刷するという流れである。「工作単」は、以前は郵送やFAXでやり取りされていたため、申請からデータ返送までに1か月以上(15)を要していたが、2003年からは専用システムの導入により、オンライン申請が可能になった。現在では申請から3~5日以内に出版者にデータを返送することを原則としている(16)。

 

図2.3 図書在版編目(CIP)数据工作単

図2.3 図書在版編目(CIP)数据工作単

 

(2) データベースと検査番号

 新聞出版総署情報センターのホームページではCIPデータベースが公開されており(17)、書名、著者名、出版者、ISBNのほか「CIP数据核字」で検索することができる。「CIP数据核字」とは、データ1件ずつに付与される検査番号のことで、CIPデータの最下行に記されている(図2.1)。

 因みに、海賊版や未申請の出版物には、偽造されたCIPデータが記載されている場合があるが(18)、このデータベースでその「CIP数据核字」を検索すると、ヒットしないかあるいは内容が合致しないデータがヒットする。逆に言うと、「CIP数据核字」で検索して該当データがなければ、正式出版物ではないと判断できるのである(19)。

 なお、このデータベースのほか、同センターが編集する新刊書の紹介雑誌『全国新書目』にもCIPデータが掲載されている(20)。

(3) CIPデータの品質

 中国では、これまでCIPに関する論文が数多く発表されているが、最も多く指摘されているのがCIPデータの品質の低さである(21)。分類や件名など、専門的な知識と技術を要するデータの誤りのみならず、書名、責任表示、出版年などの基本的な記述データでさえ、現物と異なる例が散見される(22)。

 こうした誤りが発生する原因としては、出版者の担当者が未習熟のため「工作単」を誤って記入すること(23)、図書在版編目処のデータ検査が現物を見ずに「工作単」のみで行われること、またCIPデータの取得後に変更があっても、出版者が報告を怠ってデータを修正しなかったり、改竄したりすることなどが挙げられる(24)。そもそもCIPは、出版者にとっては単なる手続きに過ぎず、正確なデータを作成しようとする意識は低い(25)。

 また、人員不足も問題である。年間のデータ作成数が約20万件であるのに対して、データ検査に従事する作業員は20余名しかおらず、1人あたりの作業量が膨大で、データ1件あたりに費やす時間が短い。多い時には1人で1日100件を処理することもあるという。

 さらには、作業員の技術的な水準が低いことや、書誌作成の専門知識と技術を有する図書館が運営に関与していないことなども原因として挙げられる(26)。2.1.2.(1)で紹介したとおり、CIPの導入にあたっては、図書館は理論的な側面から検討に参加したものの、その後の運営においては無関係の状態である。

 こうしたことから、図書館の目録作成現場におけるCIPデータに対する信頼度は極めて低い(27)。さらには、MARCフォーマットで頒布されていないなど、CIPデータは図書館でそのまま活用できる水準には達していないのが現状である。こうした状況に対して、フォーマットの改善やより効率的で正確なCIPデータの提供に向けたECIP(28)の研究が進められているものの、未だ理論の段階に留まっている(29)。

 

2. 1. 4. 中国版本図書館

 次に、新聞出版総署情報センターのもう1つの役割である出版物の収集・保存及び目録作成をみていこう。上述の通り、この場合の名称は中国版本図書館となる。

 

(1) 納本制度と中国版本図書館の役割

 中国版本図書館の歴史は長く、その前身である中央人民政府出版総署図書館が創設された1950年まで遡る。以来、大陸で出版された出版物を幅広く収集・保存し、幾度かの名称と所属機関の変更を経て、1983年に現在の中国版本図書館と称するようになった(30)。

 中国版本図書館の蔵書は全て納本によって収集されたものである。中国では「出版管理条例」(国務院令第343号)、「録音映像製品管理条例」(国務院令第341号)、及び新聞出版総署が出した複数の行政規則などによって納本に関する事項が定められており、出版物の納本先として国家図書館、新聞出版総署、中国版本図書館の3機関が指定されている(表2.1)。国家図書館に納本される出版物は公開を前提としているのに対し、新聞出版総署への納本は出版動向の把握と合法性についての検査が、そして中国版本図書館への納本は保存が目的とされる(31)。納本に係る規則が新聞出版総署の行政規則で定められていること自体が、出版物管理としての側面を強く表しているとも言えよう。こうした位置付けから、中国版本図書館の蔵書(約350万タイトル)は北京郊外に設けられた2つの書庫に保存されているだけで、一般には公開されていない。

 

表2.1 納本資料の受入機関、種類、部数

受入機関図書雑誌新聞音楽映像資料電子出版物
新刊増刷
中国国家図書館3部1部3部1部1部1部
新聞出版総署1部1部1部1部1部1部
中国版本図書館1部1部1部1部1部1部

 

(2) 収集と目録作成

 出版物の収集から保存までを担当する徴集管蔵処では、毎年約20万タイトル(新刊図書13万、増刷図書2万、音楽映像資料3万、その他2万)の納本資料を受け入れている。到着した資料は、登録処理を行った後、目録データを作成する(32)。約90%については、既に登録されているCIPデータを流用して、現物を確認しながら修正を行う。CIPデータがあるにもかかわらず納本されない出版物については、定期的に未納情報を抽出し、出版者に対して督促を行っている。

 

(3) 全国総書目

 作成された目録データは、1年ごとに編集・加工し、『全国総書目』として出版する。『全国総書目』の始まりは古く、1955年に新華書店本店から1949-1954年版と1955年版が出版され、翌1956年から中国版本図書館による編集となった。以後、文化大革命期の中断があったものの現在まで継続して刊行されている。冊子体は2003年で終了して、以後は電子版(CD-ROM及びオンライン)のみの刊行となっている。

 

2. 1. 5. 中国国家図書館における書誌作成

 以上、新聞出版総署情報センターでの書誌作成の概要をみてきた。続いて、国家図書館における書誌作成の現況をみていこう。

 国家図書館は、前述のとおり、新聞出版総署、中国版本図書館と並んで、納本制度による出版物の受入機関であり、購入、寄贈などによる収集を含めると年間約64万冊の新刊図書を受け入れている(33)。中国語図書の書誌作成は、館内に設置されている全国図書館聯合編目センターと連携して行われているため、先に同センターの概略から紹介する。

 

(1) 全国図書館聯合編目センター

 

①概要

 中国では1990年代後半から全国規模の総合目録ネットワークが形成され始めた。中国における図書館は、国家図書館、大学図書館、公共図書館、中国科学院図書館の4つの系統に大別することができるが、総合目録ネットワークもこの枠組みに沿って形成されている。主なものとして、国家図書館が運営する全国図書館聯合編目センター(OLCC: Online Library Cataloging Center、以下OLCC)、大学図書館を主な参加館とする中国高等教育文献保障系統(CALIS: China Academic Library System)、深圳図書館を中心に6つの省級図書館が共同構築する地方版聯合采編共作網(CRLnet: China Regional Libraries Network)や上海図書館が運営する上海市文献聯合編目センター、そして中国科学院国家科学数字図書館(CSDL: Chinese National Science Digital Library)の総合目録が挙げられる。

 そのうちOLCCは1997年10月の設立で、中国で最も早く創設された総合目録ネットワークである。書誌データの共同構築と共同利用、目録作成にかかるコストの削減、重複作業の低減、目録作業者の技術向上などを主旨としており、全国の公共図書館が主な参加館となっている。創設初期には収益重視の企業運営方式が採られていたが、2004年に実施された国家図書館の機構改革を契機に、公益性の重視へと運営方針を転換し、国家図書館の内部組織として位置付けられるようになった(34)。

 以後は、国家図書館内の中国語収集整理部総合目録組が中央センターを運営している。この中央センターの下に地方センターが設置され、さらにその下位に参加館が所属する三層構造となっている。地方センターは省級規模の公共図書館や蔵書に特徴のある図書館で構成されており、2008年6月現在で、広東省立中山図書館、広西壮族自治区図書館、四川省図書館、天津図書館、遼寧省図書館、浙江省図書館、福建省図書館、山東省図書館、吉林省図書館、黒竜江省図書館、安徽省図書館、中国社会科学院文献情報センター、天津少年児童図書館の13館である。参加館数は674館、ユーザー数は1,105、年間のアップロード・ダウンロードの総件数は249万件に及ぶ。

 

②データ作成

 OLCCが提供するデータベースは20種以上あり、それらのほとんどが国家図書館の作成した書誌データファイルで構成されている(35)。参加館はデータをダウンロードして利用することができるほか、中国語図書のデータベース「中文図書書目数据庫」は参加館が共同で書誌作成を行っている。データベースごとに利用料金が定められており(36)、例えば「中文図書書目数据庫」の場合、ダウンロード1件につき0.15元が課金される(最初の1,000件までは無料)。反対に、書誌データを作成してアップロードをすると1件あたり3元の収入となる。これが誘因となってか、ここ数年「中文図書書目数据庫」へのアップロード件数が増加しており、同データベースは参加館が作成したデータが約半数を占めるまでになった。ただし、アップロードは参加館の全てに認められているわけではなく、中央センターが実施する「アップロード資格認証研修」に参加して規定の課程を修了した後、中央センターによる品質検査に合格した参加館にのみ資格が与えられる。現在のところ、資格を有するのは25館である。

 

図2.4 OLCCと中国国家図書館の書誌データ作成概念図

図2.4 OLCCと中国国家図書館の書誌データ作成概念図

 

③データの品質管理

 データの品質管理は、中央センターで集中的に行われる。参加館がアップロードしたデータは、中央センターにおいて1日単位でリスト抽出され(図2.4①)、これをもとに中央センターの担当者が検査を行う。誤りのあるデータは修正を施し、作成館に連絡をした後に公開される(図2.4②)。また、既に公開されているデータに誤りが発見された場合は、発見館が中央センターに連絡をした後、中央センターによって調整及び修正が行われる。

 

④所蔵情報

 中央センターで使用しているシステムは、深圳市科図自動化新技術応用公司が開発した図書館統合システム(ILASⅡ)をカスタマイズしたものである。このシステムには、1書誌ごとに参加館のアップロード・ダウンロードの履歴が残されているものの、それらが所蔵情報として登録されていないため、正確な所蔵情報を確認することはできない。そのためOPAC機能がなく、一般には公開されていない。これは、「聯合編目」という名称が表すとおり、書誌データの共同構築を第一義としてきたためのシステム的な制約と考えてよい。近い将来には国家図書館の現行システムであるEx Libris社のALEPH500を導入することで、リアルタイムでのデータ更新を実現し、所蔵館情報とOPAC機能を搭載した総合目録データベースへと発展させる計画である。

 

(2) 国家図書館の自館目録

 国家図書館の自館の目録作成も、このOLCCを利用して行われている。書誌データの作成は資料受入及び目録作成の2過程で行われるが、それぞれの過程で「中文図書書目数据庫」を検索して、ヒットしたものをダウンロードし、必要な箇所を修正して自館データベースに取り込む(図2.4③)。現在、新刊書の書誌データの約6割がダウンロードにより作成されている。ヒットしない場合は自館で書誌データを作成する。そして、修正したダウンロードデータと自館作成データが混在する新規作成データを1日ごとに抽出し(図2.4④)、ISBN、書名、出版年を基にバッチ処理でOLCCのデータと重複調査を行い(図2.4⑤)、自館作成データのみを抽出した後、それらを「中文図書書目数据庫」にアップロードする(図2.4⑥)。

 

(3) 中国国家書目

 国家図書館が編纂する『中国国家書目』は、1987年に1985年版の刊行が開始されたものの、資金面での問題から、1994年を最後に冊子体の刊行が中止された。その一方で、1988年からデータベース化が開始され、1990年よりCNMARCとして頒布されている。また1998年には、上海図書館、広東省立中山図書館、深圳図書館との協力で、1949年から1987年までの遡及データ40万件の入力も完成した。現在は、これらのデータとOLCC作成のデータの集合が、冊子体『中国国家書目』に代わる電子版として位置付けられている(37)。

 

2. 1. 6. 課題と展望

 

(1) 併存する全国書誌

 以上みてきたように、中国においては、新聞出版総署情報センター(中国版本図書館)と国家図書館のいずれもが納本制度に基づいて出版物を大規模に収集し、それぞれが全国書誌に相当する書誌を作成している。

 中国版本図書館の『全国総書目』は、約半世紀にわたって出版され続けている出版物目録であり、長い間、事実上の全国書誌として扱われてきた(38)。しかし、もともと出版物に関する統計資料及び登記目録としての性格が強いため、記載項目が簡略過ぎで品質が低く、全国書誌としての要件を満たしていないともされる(39)。それに対して、国家図書館の『中国国家書目』は、目録作成の専門家である図書館員によって作成されており、その品質は相対的に高い。『中国国家書目』の出現は、それまでの『全国総書目』の全国書誌としての独占的地位を揺るがしたといえる。

 その一方で、収録率についてみてみると、『中国国家書目』よりも『全国総書目』のほうが高い(40)。何故ならば、中国版本図書館への納本率のほうが国家図書館への納本率よりも高いからである。出版機関を管理監督するのは新聞出版総署であるため、出版者は新聞出版総署ならびに同署所属の中国版本図書館への納本を優先する傾向にある。国家図書館は文化部に属しているため、仮に納本しない出版者があったとしても、組織上それらを直接に監督・指導できる立場にない(41)。さらに新聞出版総署との連携も弱く、制度の改善がなかなか進まない。結果として、国家図書館への納本率は低くなりがちで、購入など他の手段により欠本を補ってはいるものの、収集しきれない出版物が数多く残されることになる。

 そもそも、中国における納本率は全体的にみて高いとは言えないが、その原因として、納本制度が強制力に乏しく罰則規定が機能していないこと、また地方政府によってはさらに独自の納本制度を定めているところもあり(42)、出版者の経済的な負担が大きく、納本に対する積極的な理解が得られていないことなどが挙げられる(43)。

 このように、『全国総書目』は収録率は高いが品質が低く、『中国国家書目』は品質は高いが収録率が低い。どちらか一方のみをとって、中国を代表する全国書誌とは言えず、双方ともに全国書誌を自称しながら、過去20数年にわたって重複状態が続いている。

 こうした状況に対しては、当然のことながら『中国国家書目』が刊行された当初から問題視されており、1987年から1989年にかけて、中国版本図書館と北京図書館(当時)との間で全国書誌の共同編纂についての協議が行われた。しかし、結局は版本図書館側が『全国総書目』の存続を主張して物別れに終わっている(44)。また、組織編制の歴史を振り返ってみると、1970年代に版本図書館が一旦、北京図書館(当時)に合併されたものの数年後に再び分離しており、現在は縦割り行政の縛りから相互の関係は極めて薄い。

 このように2つの全国書誌が存在する背景には、その刊行の経緯のみならず、行政組織に係る構造的な問題も絡んだ根深い要因が潜んでいるのである。

 

(2) 図書館法の制定

 こうした状況を改善する契機として考えられるのが、図書館法の制定である。中国にはこれまでのところ、正式な図書館法は存在しない。そのため、十数年前から図書館法制定に向けての活動が行われており、2008年には第11期全国人民代表大会常務委員会立法計画に図書館法が盛り込まれるなど(45)、制定に向けた動きが目立ってきている。ただし、中国図書館界における複雑に絡んだ状況もあって、現在は行き詰まりの状態にあり、図書館法が最終的に成立するまでには暫く時間がかかると思われる(46)。とはいえ、図書館法の制定は法定納本制度の整備に向けての格好の機会であり(47)、これにより納本の枠組みが大きく変わる可能性もある。今後の動きに注目したい。

 

(3) 業種を跨ぐ書誌共有化

 もう1つ、今後の展開が注目されるのは、出版流通業界と図書館による書誌データの共同作成である。

 2005年10月、中国最大級の出版グループである中国出版集団は、在庫情報を提供する中版通公司を設立した。同社は、約120の出版者と契約を結んで、新刊書もしくはその電子版を入手し、それらの書誌データを、表紙・書名頁・版権頁・目次・本文の一部・裏表紙などの画像データと合わせて、ホームページで提供している(48)。

 現在、OLCCでは、この中版通公司が開発したシステムを利用して、書誌作成の新たな実験が進められている。同システムの提供する電子データを基に、国家図書館が目録規則に基づいて書誌データの補足・修正を行い、CNMARCに変換してOLCCのシステムに搭載し、参加館が利用できるようにしようという試みである(49)(図2.5)。これが実用化されれば、出版者や書店など、書誌作成の源流から品質の高いデータを提供することが可能となり、業界の枠組みを越えた効率化と標準化が期待できる。

 

図2.5 中版通とOLCCの試験システム

図2.5 中版通とOLCCの試験システム

 

2. 1. 7. おわりに

 書誌作成の過程を川の流れに喩えるならば、出版界、流通界、図書館界は、それぞれ上流、中流、下流といえよう。中国では長らく三者間の境界が、いわば堰き止められた状態であった。しかし、前段で紹介したように、最近は境界間に新たな流れが生まれてきている。社会全体での書誌情報の共有化と標準化を実現するためには、この流れをより本格化させ、さらには上流からの流れを取り込むことが必要となる。そのためには、CIPデータの改善、ECIPの実現、納本制度の改革など解決すべき課題は多い。

(前田直俊)

 

注

(1) 本節は、前田直俊. 中国における書誌作成の現状―CIPと全国書誌. アジア情報室通報. 2009, 7(2), p. 2-7. に若干の加筆修正を加えたものである。

(2) Knutsen, Unni. “Survey on the state of national bibliographies in Asia” IFLA.
http://archive.ifla.org/VII/s12/pubs/Survey-Asia_MiddleEast-report.pdf [15], (accessed 2009-05-08).

(3) Žumer, Maja ed. “Guidelines for National Bibliographies in the Electronic Age (draft)” IFLA.
http://archive.ifla.org/VII/s12/guidelines-national-bibliographies-electronic-age.pdf [16], (accessed 2009-05-08).

(4) 郝志平. 中国图书在版编目(CIP)的起步与进展. 图书馆理论与实践. 1998(2), p. 20-22.

(5) 強制規格は強制的な執行力を有し、コードが「GB」で始まる。強制執行力を伴わないものは任意規格で、コードが「GB/T」で始まる。

(6) 版本記録については、小島浩之. 現代中国書の書誌的特徴. 大学図書館研究. 2002, (64), p. 1-9. が詳しい。

(7) 新闻出版署. 关于实施CIP国家标准试点的有关问题的通知. 新出图. 1992-12-19, 1992(1936).

(8) 新闻出版署. 关于扩大实施CIP国家标准试点有关问题的通知. 新出图. 1993-03-04, 1993(173).

(9) 新闻出版署办公室. 关于在京出版社实施“图书在版编目(CIP)”有关问题的通知. 新出办. 1993-12-07, 1993(1611).

(10) その他、概説書として、陈源蒸. 图书在版编目・书目数据的标准化与规范化. 北京大学出版社, 1994, 156p. が出版された。

(11) 新闻出版署. 关于在全国各出版社实施图书在版编目(CIP)有关问题的通知. 新出技. 1999-03-08, 1999(185).

(12) 陈源蒸. 中文图书ECIP与自动编目手册. 北京图书馆出版社, 2003, 436p.

(13) 修訂後の規格コードは、「图书在版编目数据」が[GB/T12451-2001]、「图书书名页」が[GB/T12450-2001]。詳細は、傅祚华編著. 图书书名页标准解说. 北京, 中国标准出版社, 2007, 201p. を参照。

(14) 国内の出版やメディアに関する事業の監督・管理を行っている国務院直属の機関。また、著作権の保護・管理も行っており、その際は国家版権局の名称を用いる。

(15) 樊玉敬ほか. 我国图书在版编目(CIP)工作研究综述. 津图学刊. 2003(4), p. 14-19.

(16) 郝志平. 我国图书在版编目工作获突破性进展. 中国新闻出版报. 2005-09-29, 第001版.

(17) “CIP中心”. 中国新闻出版信息网. http://www.cppinfo.com/zxgk/jgjs/cipzx/index.shtml [17], (参照 2010-09-02).

(18) 偽造の理由の1つとしてISBNの不足が挙げられる。ISBNは前年の出版量に応じて、配布量が決められるため、出版者のなかには、ISBNが不足した場合に、異なる出版物に同じISBNを付与することがある。その際、CIPデータも偽造される。

(19) 正式出版物とは、新聞出版総署にISBN登録をして一般に流通する出版物という概念であり、合法非合法の判断規準ではない。反義の非正式出版物は、灰色文献の概念に近い。

(20) 1999年から2004年には『图书在版编目快报』(週刊)も刊行されていた。

(21) 唐开ほか. 20世纪90年代以来在版编目(CIP)研究论文统计分析. 全国新书目. 2007, (701), p. 79-81.

(22) 沈凌燕. 图书在版编目存在的问题分析及改进对策. 大学图书情报学刊. 2004, 22(3), p. 61-62. によると、記述の誤りは33%、分類の誤りは36%、件名の誤りは20%。

(23) 郝志平. 中国CIP:问题和对策. 中华读书报. 2000-10-11, 第043版.

(24) こうした事態に対処すべく管理体制の強化が図られている。例えば、提出された工作単の記載が不完全な場合は出版者に返却して、完全に修正されるまでデータ検査を保留する。さらには、出版後の図書のCIPデータの正確さを調査し、毎年の定期検査の項目に加えるなど。
新闻出版总署信息中心. 关于继续加强CIP工作,进一步提高数据质量的函. 新出信. 2006-08-11, 2006(53).

(25) 杨兰芝ほか. CIP存在的问题与ECIP计划的实施. 现代情报. 2007(6), p. 149-151.

(26) 张耀蕾. 中美在版编目的比较研究. 图书馆学研究. 2008(5), p. 47-51.

(27) 筆者が実務研修を受けた中国国家図書館の目録作成部門においても、CIPデータは参考程度に参照するだけで、情報源としては採用していない。

(28) ECIPとは、出版物の電子テキスト情報を基にCIPデータを自動生成し、より正確なデータ生成を行うこと。

(29) 前掲注(12)。

(30) 中国大百科全书 : 图书馆学、情报学、档案学. 北京, 中国大百科全书出版社, 1993, p. 555.

(31) 纪晓平ほか. 我国呈缴本制度的立法思考. 大学图书馆学报. 2006(3), p. 18-23.

(32) 独自開発のシステムを用いているが、Ex Libris社のALEPH500の導入が予定されている。

(33) 新刊図書は、基本的に納本で3部、その他の手段で2部、合計5部を収集する。

(34) 顾犇ほか. 全国图书馆联合编目工作的回顾与展望. 国家图书馆学刊. 2008, (65), p. 72-74.

(35) “数据库介绍”. 全国联合编目中心. http://olcc.nlc.gov.cn/proserv-sjkjs.html [18], (参照 2009-05-08).

(36) “服务范围”. 全国联合编目中心. http://olcc.nlc.gov.cn/join-fwfw.html [19], (参照 2009-05-08).

(37) Ben, Gu. “National Bibliographies: the Chinese Experience”. World Library and Information Congress: 72nd IFLA General Conference and Council 2006. Seoul, Korea, 2006-08-20/24, IFLA, 2006. http://ifla.queenslibrary.org/IV/ifla72/papers/109-Gu-en.pdf [20], (accessed 2009-05-08).

(38) 肖希明ほか. 《全国总书目》与图书馆文献资源建设. 图书馆. 2008(6), p. 26-29.

(39) 黄俊贵. 我国书目系统控制的流弊及其对策-从UBC与UAP说起-. 全国总书目2006 电子版使用手册. 2006, p. 1-23.

(40) 柯平ほか. 21世纪的国家书目控制. 全国总书目2005 电子版使用手册. 2005, p. 1-23.

(41) 赵志刚. 对国家图书馆接受呈缴本的思考-基于新制度经济学视角的分析. 信息资源建设中的图书馆采访工作:第二届全国图书采访工作研讨会论文集. 北京图书馆出版社, 2007, p. 139-145.

(42) 北京市、湖北省、内蒙古自治区、深圳経済特別区、上海市、浙江省、河南省など。

(43) 孙雷. “中外图书馆样本缴送制度比较分析”. 中国人大网. 2009-03-25.
http://www.npc.gov.cn/npc/xinwen/rdlt/fzjs/2009-03/25/content_1495035.htm [21], (参照 2009-05-08).

(44) 前掲注(38)。

(45) “十一届全国人大常委会立法规划”. 中国人大网. 2008-10-29.
http://www.npc.gov.cn/npc/xinwen/syxw/2008-10/29/content_1455985.htm [22], (参照 2009-05-08).

(46) 李常慶. 中国における図書館法制度の成立およびその課題. 情報の科学と技術. 2009, 59(12), p. 597-603.

(47) “图书馆法列入本届人大常委会立法计划:图书呈缴有望引入补偿机制”. 法制日报. 2008-08-03.
http://www.legaldaily.com.cn/bm/2008-08/03/content_915042.htm [23], (参照 2009-05-08).

(48) 书业公共数据交换中心. http://www.cbip.cn/ [24], (参照 2009-05-08).
なお、中版通公司は現在、2008年に設立された数字伝媒有限公司に統合されている。

(49) 聚焦跨业书目协作与共享. 新华书目报 社科新书目. 2008-08-18, (868), C1,C4-C7版.

  • 参照(7267)
図書館調査研究リポート [5]
中国 [6]
国立図書館 [7]
中国国家図書館 [8]

2. 2. 中国国家図書館における中国語資料の収集と組織化

 PDF版はこちら [25]

 

 本節では、中国国家図書館における中国語資料(図書、雑誌、新聞、学位論文、非正式出版物)の収集・組織化について、担当部署である中国語収集整理部【中文采編部】での業務内容を詳しく紹介する。

 同部内の組織構成と業務分担は次の通りである。図書の収集業務は中国語図書収集組が、目録作成業務は中国語図書書誌データ組が、装備は中国語図書装備組がそれぞれ担当する。逐次刊行物の収集整理業務は、中国語逐次刊行物収集整理組が行い、雑誌と新聞で担当グループが分かれている。学位論文は学位論文収集整理組が、非正式出版物は中国語資料組が担当している。その他、台湾・香港・マカオの出版物の収集整理を行う台湾・香港・マカオ文献収集整理組、著者名典拠や件名典拠のコントロールを行う典拠及び件名標目組、2.1.で述べた全国図書館聯合編目センターを運営する総合目録組、ISSNセンターを運営するISSN組、データ遡及を担当する遡及書誌データ組がある。

 

2. 2. 1. 図書

 

(1) 収集

 収集業務を担当する中国語図書収集組の職員は全23名で、そのうち正職員が11名、臨時職員が12名である。納本に係る連絡事務、地方志・図書館学資料・敦煌文献の処理、会計事務、欠本処理【补藏】、データ検査【校对】は正職員が担当し、現品検収・受入・登録などの定型業務は臨時職員が行う。

 

①収集経路と受入部数

 年間の受入量は図書約64万冊、CD-ROM約3万枚である。入手手段は納本、購入、寄贈の3種類で、ほとんどの資料について複数部数を収集する。一般図書の場合、基本的な収集部数は、納本3部、購入2部の都合5部であるが(図2.6A)、最大で6部まで受け入れる場合もある。その場合、受入れ順序によって処理が異なっており、例えば6部目が寄贈(図2.6B)もしくは納本(図2.6C)の場合は、蔵書として受け入れ、7部目以降は他の図書館に無償で提供する【调拨】。6部目が購入本の場合は書店に返却する(図2.6D)。

 

図2.6 収集経路と受入部数

図2.6 収集経路と受入部数

 

②納本

 納本される図書は、全国約580の出版社から国家図書館に直接送付される。納本率は約61%(1)である。新聞出版総署の行政規則では、出版後1か月以内に納本するよう定められているが、地方出版の場合は遅れることが多く、実際には3か月から1年を要している。納本部数は、定価100元未満が3部、100元以上及びセット価格1,000元以上が1部であるが、100元以上であっても、比較的安価な図書は3部納本されることが多い。

 

③購入

 購入本の納品業者は毎年入札によって決定され、2008年現在は取次業者の中国図書進出口総公司が一括して納品している。納品業者は毎年更新されるのが原則だが、実績が良ければ1年に限って延長することができる。

 基本的には2部を購入するが、定価500元以上の資料は、取次業者から送られてくるリストをもとに、1~2部を発注する。10,000元以上になると、業務管理処に報告書を提出し、さらに館長の決裁が必要となる。

 出版後3か月を経過しても納品されない新刊書、欠本補充、立法・政策決定サービス部向けの推薦書、年鑑類などは北京国図書店から購入している。また、法律出版社と機械工業出版社の出版物については、試験的に両出版社から直接購入している。

 

④寄贈

 個人や団体からの年間の寄贈受入数は約250冊である。受入にあたっては、正式出版物であることが第一条件となる。新聞出版総署情報センターのホームページ(2)で、図書のCIPデータに記されているチェック番号【CIP数据核字】を用いて検索し、当該データがヒットしなければ非正式出版物と判断してここでは受け入れない(3)。

 また、出版されて5年未満の図書は最大6部、5年を過ぎた図書は2部のみ受け入れることを原則としており、これらを超過する場合は受け入れない。仮にこの条件を超えた部数が寄贈された場合は、蔵書としては受け入れずに、他の図書館に無償提供する(4)。献詞の記された資料を他館へ提供する場合、寄贈者の本意と反することもあるため、寄贈者と相談の上、その可否を決定する。

 

⑤複本とその属性

 同一タイトルにつき複数部数を収集するため、資料を受け入れる際には、受入順序によって各部それぞれ異なった属性が割り当てられる。1部目が「保存本」、2部目が「基蔵本」、3部目が「閲覧本」、4部目が「貸出本」、5部目が「デジタル化」、6部目が「閲覧・貸出の代替本」である(図2.7)。

 

図2.7 受入資料の種別(図書)

図2.7 受入資料の種別(図書)

 

 保存本は永久に保存される資料で、本館一期館の保存本書庫に収められる。完全に保存用なので、他に複本が無い場合を除いて、原則として利用に供さない。

 基蔵本の「基蔵」とは、「基本蔵書」の略で、長期的に保存しかつ利用にも供する資料である。本館一期館の基蔵本書庫に収蔵される。同一資料が3部以上ある場合は、出版されてから5年以内は、3部目以降のみを利用に供して、基蔵本は利用に供さない。5年が経過すると3部目以降は除籍され、保存本と基蔵本のみが残されるので、以降は基蔵本を利用に供する。なお、5年以内であっても同一資料が合計2部しかない場合は、基蔵本が利用される。

 3部目は開架閲覧用で、出版されてから5年間、本館二期館の閲覧室に開架される。5年を過ぎると除籍され、状態の悪いものは廃棄され、状態の良いものは財政状況の厳しい地方の図書館などに寄贈される。

 4部目は貸出本である。出版されてから3年間、本館一期館の館外貸出閲覧室に開架されて、利用者は手続きをして館外に借り出すことができる。3年を過ぎると除籍され、廃棄もしくは他の図書館に寄贈される。

 国家図書館では、古典籍のみならず新刊書についてもデジタル化を進めており、この作業に5部目を使用する。

 6部目は閲覧本や貸出本が破損した際の代替本として5年間、保管される。5年を過ぎて残ったものは、地方の図書館などに寄贈される。

 

⑥受入処理

 到着した資料は現品検収の後、出版社別に区分して、ALEPH500で受入処理を行う。

 重複調査をしたのち、新規受入の資料について簡略な書誌データを作成する(図2.8)。その際、全国図書館聯合編目センターのデータベースに既存データがある場合はダウンロードして利用する(5)。

 

図2.8 ALEPH500目録作成機能 簡略書誌データ

図2.8 ALEPH500目録作成機能 簡略書誌データ

 

 さらに、別システム【采访拟定系统】を用いて、書店の提供するデータを取り入れて簡略書誌データを作成する実験も行われており、将来的には実用化する方向で検討が進められている。

 簡略書誌データの作成後、発注情報【订单】(図2.9)を作成し、さらに到着情報【登到】(図2.10)、個体情報【单册】(図2.11)を作成する。発注情報には入手方法(納本、購入、寄贈)、書店名、数量、価格などの情報を、個体情報には供用先の情報を入力する。これらデータを入力後、標題紙にバーコードを貼付し、蔵書印を押印して、受入処理が完了する。

 

図2.9 ALEPH500収集機能 発注情報

図2.9 ALEPH500収集機能 発注情報

 

図2.10 ALEPH500収集機能 到着情報

図2.10 ALEPH500収集機能 到着情報

 

図2.11 ALEPH500収集機能 個体情報

図2.11 ALEPH500収集機能 個体情報

 

⑦供用

 受入処理の完了後、1部目と2部目は、目録データ作成のため中国語図書書誌データ組に送られる。3、4、6部目は迅速に利用に供するため、中国語図書装備組でラベル貼付などの装備をした後、利用提供部門へ送られる。5部目はデジタル資源部にてデジタル化される(図2.12)。

 

図2.12 資料の流れ

図2.12 資料の流れ

 

⑧OPAC表示

 受入時に簡略書誌データを作成した段階で、OPACに当該データが公開される。各々の処理過程でデータが更新されると、ステータスが随時「受入処理中【记到处理中】」「目録作業中【编目中】」「装備中【文献加工中】」と変更される。「書架にあり【在架上】」となれば利用者が利用可能である。「受入処理中」から「書架にあり」までの目標期限は1か月と定められている。

 

(2) 目録作成

 中国語図書の目録作成を担当するのは、中国語図書書誌データ組である。

 

①目録規則

 基本規則は『中国文献編目規則』第二版(北京図書館出版社2005)に拠る。実務作業に当たっては、CNMARCの利用ガイドである『新版中国機読目録格式使用手冊』(北京図書館出版社 2004)や、その簡略版『中文図書機読目録格式使用手冊』(華芸出版社 2000)、及び事務細則『中文普通図書著録規則』などを使用している。

 著者名典拠【名称规范】の細則については、内部刊行の『中国機読規範格式使用手冊 ;中文図書名称規範款目著者規則 ; 中文図書主題規範数据款目著録規則』(国家図書館図書採編部 2001)及び事務細則『規範控制簡述』を使用している。また、西洋人名は中国語訳の姓を標目形とするため(例えばCharles Robert Darwinは达尔文)、中国語訳に『世界人名翻訳大辞典』(中国対外翻訳出版公司 2007)を用いる。

 

②目録データ作成

 目録データの作成に当たっては、2つの方法がある。1つは全国図書館聯合編目センターの総合目録データベースからダウンロードする方法【套录编目】、もう1つは自館作成【原编】である。詳細については2.1.5.(2)を参照。

 

図2.13 ALEPH500目録作成機能 図書書誌データ編集画面

図2.13 ALEPH500目録作成機能 図書書誌データ編集画面

 

③著者名典拠

 著者名典拠で特徴があるのは、東アジアの人名については、標目形の姓と名の間を分かたない点である。その理由について複数の担当者に尋ねたところ、中国において人名を呼称する場合、姓のみで呼称することはなく、姓名をあわせた全称で呼ぶのが習慣のためという回答が多かった。同姓同名が多い中国においては、仮に姓名を分離したとしても、検索や差異化の観点からすると有効ではないという理由である(6)。

 しかし、同様の呼称習慣を持つ台湾においては、例えば台湾国家図書館OPACの著者名標目は姓と名をスペースで区切っているなど、人名呼称の習慣は必ずしも標目形の姓名を分かたないことの積極的な根拠とは言い切れない。

 

図2.14 ALEPH500目録作成機能 著者名典拠データ

図2.14 ALEPH500目録作成機能 著者名典拠データ

 

 著者名典拠に関しては、国家図書館、中国高等教育文献保障系統(CALIS)、香港大学図書館長聯席会、台湾漢学研究中心の4機関が成員となり、中国語著者名典拠総合調整委員会【中文名稱規範聯合協調委員會】が毎年開催されている。同委員会のホームページ(7)では、参加4機関と米国議会図書館の著者名典拠データベースの一括検索プラットフォームを提供している。また、2008年11月に開かれた第6回会議において、著者名典拠の共同データベースを構築する方針が確認された。2009年には試験システム「中国語著者名典拠総合データベース検索システム【中文名称规范联合数据库检索系统】」が構築され、2010年に正式運用の予定である。今後は、標目形の統一化も含めた共通の典拠規則の制定について議論の進展が期待される。

 

④主題分析

 件名【主题词】と分類【分类号】の付与には『中国分類主題詞表』第二版 (北京図書館出版社 2005)及びその電子版を用いる(図2.15)。

 

図2.15 『中国分類主題詞表』第二版 電子版

図2.15 『中国分類主題詞表』第二版 電子版

 

 分類は、「中図分類号」と「排架分類号」の2種類を付与している。「中図分類号」は『中国図書館分類法』第四版(北京図書館出版社 1999)(8)に拠り、中国語図書書誌データ組による詳細な主題分析を経て付与される書誌分類である。もう1つの「排架分類号」は『中国図書館分類法簡本』第四版(北京図書館出版社 2000)に拠るもので、収集部門において付与される。これは「中図分類号」を簡略化したものである。

 請求記号【索书号】は「排架分類号」の前方に出版年、後方に図書記号を組み合わせて生成される。図書記号は書庫資料の場合は一連番号を、開架資料の場合は著者姓名の漢字拼音(ピンイン)の頭文字3字を採用している。書庫資料については、中国語図書書誌データ組にて「中図分類号」を付与した後に、「排架分類号」に一連番号を加えた請求記号順に書庫へ納架される。この過程には相応の時間を要するため、迅速な資料提供には向いていない。そのため開架閲覧及び館外貸出に供する図書については、中国語図書収集組にて「排架分類号」を付与後、中国語図書書誌データ組を経由することなく閲覧部門へ資料を流して利用に供している。また、著者名に拠る図書記号を採用することで同一著者を集中化させブラウジングの利便を図っている。

(請求記号の例)
書名/著者名:清代报人研究 / 程丽红著
中図分類号:G219.294.9
排架分類号:G219.2
書庫資料の請求記号:2008/G219.2/68
開架資料の請求記号:2008/G219.2/clh

 「排架分類号」は、排架を主眼としているため、主題分析にはさほど労力を割かず、CIPデータに記載されている分類をそのまま付与することが多い。ただし、2.1.3.(3)で述べた通りCIPデータには間違いが多く、特に分類については品質の低さが指摘されており、詳細な主題分析を経て付与される「中図分類号」と相違することが間々ある。しかし、「中図分類号」は書誌分類、「排架分類号」は排架分類と明確に区別されているため、両者間の違いが資料管理や閲覧業務に影響を及ぼすことはない。

 また図書記号についても、書庫資料は一連番号、開架資料は著者名拼音(ピンイン)と違いがあるため、書庫と開架で請求記号が異なるが、書庫資料が開架資料になることはなく、またその逆も無いため、これについても問題は生じない。

 

2. 2. 2. 雑誌

 逐次刊行物の収集整理業務は中国語逐次刊行物収集整理組が行い、雑誌と新聞とで担当が分かれている。

 雑誌の収集整理業務は、組長1名、収集担当3名、目録担当4名、チェックイン担当12名、その他の業務5名で行っている。

 

(1) 収集対象

 継続タイトル数は約1万種、年間の受入部数は約38万冊である。正式出版物は網羅的に収集するが、非正式出版物は積極的には収集していない(9)。両者の区別については、制度上は出版物を統括する新聞出版総署の認可を得たものか否かであるが、現物から判断する際に指標となるのは、ISSNと国内統一刊号である。

 中国国内のISSNは国家図書館内に設置されたISSNセンターで管理されており、ISSN組が実務を担当している。国内統一刊号とは中国国内の逐次刊行物に付与される記号で、「CN」の後に、規格で定められている行政区画番号(10)、一連番号、分類記号を加えて構成される。例えば、国内統一刊号「CN35-1139/J」の場合、「35」は福建省、「1139」は福建省のなかの一連番号、「J」は『中国図書館分類法』の芸術類を意味する。

 なお、逐次刊行物にはさらにもう1つの記号が付与されている場合がある。郵便発送番号【邮发号】と呼ばれるのもので、郵便局が定期購読を取り扱っているタイトルにはこの番号が付いている。

 

(2) 収集経路と受入部数

 収集経路は納本と購入の2種類である。行政規則で定められた納本部数は3部であるが、完全に納本されるタイトルは全体の約50%である。その他は、部数不足のタイトルが約30%、納本漏れが約20%である。督促をしても納本されないものは購入して補うほか、さらに複本が必要な場合も購入で収集している。

 

(3) 購入タイトル選定

 購入タイトルについて、毎年1度、選定作業を行う。取次書店8社(11)から送られてくる約6万件の雑誌データを精査し、重複を排除したのち、継続と新規に区別してタイトルを決定する。購入に係る年間予算は約300万元、新規タイトルは毎年500件~600件、打ち切りタイトルは約100件である。タイトル決定の後、購入タイトルを取次書店に通知し、価格交渉をして正式に発注を確定する。

 

(4) 発注情報の作成

 ALEPH500で、発注情報【订单】を作成する(図2.17)。同一タイトルを納本及び購入の2つの経路で入手する場合は、それぞれの経路ごとに発注情報を作成する。その際、書店情報に、納本分は出版者コードを、購入分は書店コードを入力し、「収集方法【采访方式】」に納本と購入を区別するコードを入力する。さらに、それぞれの発注データごとに、刊行頻度に基づいて1年間に予測される数量分だけ、受入用データを自動生成する【建立单册】(図2.18)。

 

図2.17 ALEPH500収集機能 発注情報の作成

図2.17 ALEPH500収集機能 発注情報の作成

 

図2.18 ALEPH500収集機能 受入情報の作成

図2.18 ALEPH500収集機能 受入情報の作成

 

 2008年までは、継続タイトル約1万種について、すべて手作業で処理を行っていたため、かなりの時間と労力を要していた。そこで、ALEPH500のサブシステムとして、APSS(ALEPH Preordering System for Serial)が開発され、2009年分からはバッチ処理にて自動処理が可能となった。タイトルリストのデータを流し込み、継続タイトルデータと突き合せをして、修正の必要のないデータについては、自動で受入用データの予測作成まで行う機能である。これにより労力の大幅な削減、並びにこれまで脆弱だった統計機能の向上が実現された。

 

(5) チェックイン作業

 到着した資料は、一般雑誌を人文社会科学・自然科学の2分野、紀要類を人文社会科学・自然科学の2分野、合わせて4分野に粗分けする。次にタイトルの頭文字の筆画数別に分類した後、さらに同一筆画数の中を「てん、よこ、たて、はらい【点・横・竖・撇】」の起筆別に細分して、同一タイトルを集中させる(図2.19)。その後、筆画数ごとに定められている担当者が、ALEPH500でチェックイン登録【记到(登到)】を行う(図2.20)。チェックイン時に新着資料が発見された場合は、目録担当者に回し、書誌作成を行った後に、チェックインする。

 

図2.19 チェックインの流れ

図2.19 チェックインの流れ

 

図2.20 ALEPH500収集機能 チェックイン画面

図2.20 ALEPH500収集機能 チェックイン画面

 

 発注情報の作成時に、年間の受入用データを予測して作成済みのため、チェックイン時には当該巻号を選択して、バーコードを読み込ませるだけで、受入順序に基づいて各個体の属性が決定され、個体情報として登録される(図2.21)。

 

図2.21 ALEPH500収集機能 個体情報の入力

図2.21 ALEPH500収集機能 個体情報の入力

 

図2.22 受入資料の種別(雑誌)

図2.22 受入資料の種別(雑誌)

 

 1部目と2部目はそれぞれ保存用と基蔵用で、チェックイン後に事務室に隣接する仮書庫【中文期刊周转库】に筆画順で納架する。3部目は閲覧用で、本館二期館の雑誌閲覧室【北区中文期刊区】で開架提供される(図2.22)。継続誌約1万タイトルのうち、約7,000タイトルが開架提供されている。2年が経過すると、1部目と2部目を製本し、1部目は保存用として、2部目は基蔵用として、正書庫【书刊保存本库、中外文期刊库】へ送られる。製本時には、ALEPH500にて、合冊製本の単位で個体データを再生成する【挂接】。開架用は、1、2部目の製本が終了した後(約2年半後)に除籍され、以後は基蔵用が利用に供される。4部目以降が到着した場合は、破損代替用及び他の図書館への無償提供用として【中文期刊流通本】、仮書庫内に別置して保管する【中文期刊复本库】。

 

(6) 排架方法

 チェックインならびに仮書庫への納架時には筆画順で、開架書架及び正書庫では請求記号順で排列される。これは、『中国図書館分類法』が制定される以前は、正書庫の排架も含めて全てが筆画順で処理されていたことの名残である。同分類法の制定後は、正書庫内の排架は分類順に改められたが、チェックイン作業は筆画順のまま現在まで至っている。

 全体的な作業工程の観点からすると、効率性に欠けるようにも思えるが、複本処理の効率化のためには、相応の理由が考えられる。つまり、チェックイン前に可能な限り同一タイトルを集中化させ、常に同一の担当者がチェックイン処理することで、納入状況を容易に把握し、欠号督促のタイミングが計りやすい。仮に別の方法を採用した場合、同一タイトルの同一巻号が、別の担当者や異なるタイミングで処理される可能性があり、納入状況の同期的な把握が難しい。複本の処理を前提に考えた場合、この方法のほうが効率が良いという判断である。また、作業の流れを根本的に変更することのコストと、変更によって得られる効果とを比較して考えても、現状維持が得策というのが現場の意見である。

 

(7) 目録作成

 基本規則は『中国文献編目規則』第二版(北京図書館出版社 2005)に拠る。実務作業に当たっては、CNMARCの利用ガイドである『新版中国機読目録格式使用手冊』(北京図書館出版社 2004)のほか、『中文連続出版物機読目録著録細則』(華芸出版社 2001)を使用している。

 請求記号は雑誌【期刊(qi kan)】を表す「Q」に続けて、「分類」「一連番号」「開始巻号」「開始年」から成る。

(請求記号の例)Q/I2/436/总1-/1984-

 

図2.23 ALEPH500目録作成機能 雑誌書誌データ編集画面

図2.23 ALEPH500目録作成機能 雑誌書誌データ編集画面

 

2. 2. 3. 新聞

 新聞の収集整理業務は、副組長1名、収集担当1名、チェックイン担当7名で行っている。

 

(1) 収集

 2008年末現在で、所蔵する総タイトル数は約1万種、継続タイトル数は約1,100種である。2008年に中国国内で出版された新聞の総タイトル数は1,943種(12)であるから、収集率は56%にとどまっている。

 中国国内で発行される新聞は、その発行地域と機関によって、①全国級、②省・部級、③地・市級、④県区級の4種に大別される。2008年の統計に拠ると、発行数は①224種、②826種、③877種、④16種である。

 国家図書館の資料収集方針書では「国内の市、地、専区及び自治州以上で発行された各種の新聞をできる限り集める」と定めており(13)、これに拠ると①②③が該当することになる。つまり、ほとんどの新聞が収集対象となるのだが、実際には級別が曖昧なものや不明なものが多く、収集漏れの原因となっている。また、45%という納本率の低さ(14)も収集率の低さの大きな原因である。その理由としては、新聞社の納本に対する理解が低いこと、及び新聞社自身の構造変化が激しく、担当者との連絡体制が不安定になりやすいことなどが指摘されている(15)。

 このように納本率が低いのに加え、納本部数が1部のみであること、さらに複本が3部必要なことなどから、新聞の収集においては、図書や雑誌など他の資料に比べて、購入による収集が大きな割合を占めている。

 毎年年末になると、次年度の購入タイトルを決定するリニューアル作業が行われる。前年度の実績及び『中国報紙名録』『郵発報刊簡明目録』などの関連資料を基に、次年度に購入予定のタイトル一覧表を作成し、収集する部数ならびに入手手段を記入していく。

 主な入手手段は、①郵便局、②新聞社からの直接購読、③配達員による配達、④赤帽【小红帽】、⑤納本の5種である。①郵便局分は、受け入れの仕分けの際に便利なよう、保存用を全国81局の一般郵便局に、閲覧用を近隣の魏公村局に分けて発注している。合訂本は②新聞社から直接購読し、北京の地元紙は③配達員により配達される。④赤帽は北京青年報社が運営する逐次刊行物の販売代理会社で、他の手段で入手できないものをここから購入する。

 

(2) チェックイン作業

 到着した資料は、チェックカードに受け入れ情報を記録して、紙面に青判を押印する。1部目と2部目はそれぞれ保存用と基蔵用で、チェックイン後は事務室に隣接する仮書庫に筆画順で納架する。ALEPH500では新着紙1部ごとのチェックインデータは入力しない。1か月ごとに紐で括ってまとめる際に(図2.25)、ALEPH500で個体データを作成する。2年が経過した後、製本して正書庫【报纸保存本库】へ納架する(図2.26)。

 3部目と4部目は閲覧用で、本館二期館の新聞閲覧室で開架提供される。約1,100タイトルの継続紙のうち、295タイトルが開架提供されている。最初の2か月間は3部目を未製本のまま提供し(図2.27)、2か月後はそれらを廃棄して、4部目を簡略製本して(図2.28)、2年間、開架提供する。保存用と基蔵用が製本された後に除籍され、他の図書館に無償で提供される。

 

図2.24 受入資料の種別(新聞)

図2.24 受入資料の種別(新聞)

 

図2.25 月単位でまとめられた保存用紙

図2.25 月単位でまとめられた保存用紙

 

図2.26 製本済新聞

図2.26 製本済新聞

 

図2.27 開架閲覧用の未製本紙

図2.27 開架閲覧用の未製本紙

 

図2.28 開架閲覧用の簡略製本紙

図2.28 開架閲覧用の簡略製本紙

 

(3) 目録作成

 目録作成は雑誌とほぼ同様である。請求記号は新聞【报纸(bao zhi)】を表す「B」に続けて、「地域コード」「一連番号」から成る。

(請求記号の例)B/CN11/0118

 

図2.29 ALEPH500目録作成機能 新聞書誌データ編集画面

図2.29 ALEPH500目録作成機能 新聞書誌データ編集画面

 

2. 2. 4. 学位論文

 学位論文の収集整理業務は学位論文収集整理組が担当し、職員は合計12名で、うち収集担当4名、目録担当4名、校正担当4名である。

 

(1) 中国における学位論文の分布

 中国国内の博士論文は、「中華人民共和国学位条例暫定実施方法」(1981年5月20日国務院批准)第23条により、以下のように定められている。

 

第二十三条 審査を通過した修士論文及び博士論文は、授与機関の図書館に1部を提出し保存しなければならない。審査を通過した博士論文は、さらに北京図書館及び関係の専門図書館に各1部ずつ提出し保存しなければならない。

 

 また、国務院学位弁公室により、人文社会科学分野の学位論文を中国社会科学院文献信息中心に、自然科学の学位論文を中国科学技術信息研究所に提出することが定められている(16)。

 このように、中国における学位論文は、授与機関である各大学や研究機関、そして全国規模の所蔵機関である国家図書館、中国社会科学院文献信息中心、中国科学技術信息研究所で主に所蔵されている。

 

(2) 国家図書館所蔵の学位論文

 2007年現在、国家図書館における博士論文の所蔵数は約18万7千件である。2007年の受入数は約4万件で、前年比30%の伸び率である。1999年から始まった高等教育の拡大政策により、大学院生の数が急増しており、その結果、博士論文の生産量も飛躍的に増加している。なかでも理工系、医学系が多く、北京大学、清華大学、浙江大学、武漢大学、復旦大学、同済大学などが論文生産量の上位を占める。修士論文は近年になってから収集を開始し、年間の増加量は約9万件である。さらに、ポストドクター研究員が所属を移動する際に提出を義務付けられているポストドクター研究報告書も収集している。また、海外における中国人留学生の博士論文や中国に関する博士論文も収集の対象にしているが、UMIなどから購入できるもの以外の収集量は多くない。

 

(3) 学位論文の収集

 学位授与機関から、教育部に対して授与者の名簿が提出され、教育部で取りまとめた後に国家図書館に名簿が送付される。名簿には姓名、題名、専攻分野、指導教官、発表時期、キーワードが記されている。国家図書館は名簿を受け取った後、各大学の学位授与部門や人事部門に連絡をして、北京市内の大学へは直接受け取りに行き、その他の大学からは郵送してもらう。ポストドクター研究報告書は大学から送られてくるほかに、著者自らが納本する場合もある。大学によっては、学位論文の認定条件として、国家図書館の受領証明書の提出を義務付けているところもある。

 国家機密に係る学位論文、軍事大学の学位論文、秘密保持期限がある学位論文(17)については、納期が遅れることがあるものの、最終的な納本率は98%に及ぶ。

 ところが、近年、中国科学院の内部規定が改訂され、2006年以降、同院所属の研究所が生産する博士論文が、同院所属の国家科学図書館にのみ送付されるようになった(18)。これにより、中国科学院から国家図書館に納本される博士論文の数が激減し、同院からの納本率が5%未満まで落ち込んでいる。国家図書館は、中国科学院に対して従来どおり納本するよう呼びかけ、両者間で妥協策を協議中であるが、2008年末現在は未解決のままである。

 また、商業データベース企業の台頭による新たな問題も発生している。近年、中国学術情報データベース(CNKI)を初めとする商業データベース企業が、学位論文を大規模に購入して商品化を進めているのにともなって、著者自らが学位論文をこれらの企業に売却してしまい、本来、国家図書館へ納本されるべきものが送られてこないという事態が起きている。また、大学によっては、著者から提出されたうちの1部をこれらの企業に売却してしまい、国家図書館に納本しないというケースもある。いまのところ、根本的な対処策はなく、所蔵大学にコピーを依頼するなどして、欠本を補っている。

 

(4) 受入及び目録作成

 収集した学位論文は、冊子ノート及びエクセルにて、授与機関、授与時期、数量、受理日などの簡単な項目を記録した後、ALEPH500で受入記録を作成する。

 博士論文の目録データは職員が作成し、修士論文の目録データ作成は外注している。現在は滞貨処理のため博士論文の一部分も外注しているが、これはあくまで滞貨解消のための一時的な措置である。

 目録データの作成にあたっては、記述部分と分類・標目部分とで担当を分けている。ヨミ(拼音(ピンイン))は付与していない。また、著者名典拠は、既存データにはリンクするが、新規作成はしていない。

 2.2.1.で述べたように、一般図書の場合は受入と同時にデータがOPACに表示されるが、学位論文は滞貨が多く、無用な混乱を避けるため、書誌作成が完了するまで非表示にしている。

 

(5) 閲覧提供

 目録データの作成と装備が終了した学位論文は、典蔵閲覧部へ供用され、閲覧に供される。秘密保持期限のある学位論文については、受け入れの際に保密室に別置し、制限期間が明けた後に目録を作成して公開する。秘密保持期限については、表示方法を定めた国家規格があるものの、大学によってその用語や年限指定が異なる場合もあることから、年限指定が曖昧な学位論文の公開に当たっては、必ず授与大学に確認をとり、公開許可の証明を得てから、公開をしている。公開の可否が曖昧なものは公開しない。

 

図2.30 学位論文閲覧室(閉架式)

図2.30 学位論文閲覧室(閉架式)

 

(6) 学位論文のデジタル化

 国家図書館では、博士論文と修士論文のデジタル化を行っている。インターネット及び館内PCで利用可能である。ただし、本文データは最初から24ページのみが閲覧可能で、全文を閲覧するためには、来館して原資料を利用する必要がある。

 その他、学位論文の電子データを提供している機関としては、国家科技図書文献中心、中国科学技術信息研究所、中国科学院国家科学図書館、そして各大学の機関リポジトリ、CNKIや万方数据などの商業データベースなどが挙げられる(19)。

 

図2.31 国家図書館の学位論文データベース

図2.31 国家図書館の学位論文データベース

 

2. 2. 5. 非正式出版物

 非正式出版物とは、市場に流通しない、いわゆる灰色文献に近い概念である。非正式出版物の収集については、近年、収集方針と収集体制の2つの側面から見直しが行われた。

 収集方針については、2003年に改訂された収集方針書「国家図書館文献採選条例」において、それまで限定的だった収集範囲の拡大を行った。

 まず、政府の非正式出版物について収集対象が明記された。重点的に収集するものとして、全国人民代表大会、政治協商会議、最高人民法院や最高人民検察院などの司法機関、国務院の各部・委員会及び直属機関が出版する公報、簡報、法律法規、業務報告、統計資料、資料集、調査成果などが挙げられている。

 また、学位論文も非正式出版物の一種として位置付け、「納本の対象となる国内の教育・研究機関が授与する博士論文及びポストドクター研究報告書は網羅的に収集」し、「海外の中国人留学生の博士論文及びポストドクター研究報告書、ならびに国内の教育・研究機関が授与する修士論文は重点的に収集する」とした。

 さらに、政府出版物と学位論文以外の非正式出版物については、省(市)級の機関、全国規模の学術団体、科学研究機関、重点大学、影響力の強い大企業、事業単位、権威ある出版機関などが編集出版したもの、及び学術性、資料性、参考性が高く収集する価値があるものを対象とする。

 収集体制については、2008年3月に非正式出版物の収集を担当する中国語資料組を中国語収集整理部内に設置し、収集対象となる機関に対して「国家図書館における非正式出版物の収集について」と題する通知を行い、収集活動を開始した。同年7月から10月までの4か月間に収集した資料は約500種1,300冊である。担当者によると、出版状況を把握することの難しさ、さらには著作権や秘密保持の問題、檔案との境界が曖昧なものがあるなど、軌道に乗せるにはある程度の時間が必要ということである。

(前田直俊)

 

注

(1) 全国政协委员、国家图书馆馆长周和平呼吁:加快公共图书馆立法. 中国文化报. 2010-03-16, 第2版.
http://news.idoican.com.cn/zgwenhuab/html/2010-03/16/node_24311.htm [26], (参照 2010-09-02).

(2) “CIP中心”. 中国新闻出版信息网. http://www.cppinfo.com/zxgk/jgjs/cipzx/index.shtml [17], (参照 2010-09-02).

(3) 非正式出版物については2.2.5. を参照。

(4) 施設・蔵書ともに整備が遅れている西部地域の図書館に贈られることが多い。

(5) 全国図書館聯合編目センターについては2.1.5. を参照。

(6) 著者名標目の差異化については、以下を参照。
顾犇ほか. “「中国文献編目規則」と「国際目録原則」”. 渡邊隆弘訳. IFLA目録原則:国際目録規則に向けて, 4. ティレット, バーバラ B.ほか編. München, K.G.Saur, 2007, p. 439-454, (IFLA Series on Bibliographic Control, 32).

(7) 中文名稱規範聯合協調委員會. http://www.cccna.org/ [27], (参照 2010-09-02).

(8) 2010年8月に第五版が出版された。

(9) 継続タイトル約1万種のうち、正式出版物は約9,000種、非正式出版物は1,000種弱である。

(10) 《中华人民共和国行政区划代码》(GB2260-1995)

(11) そのうち主な取次業者は、海天华教、人天、国图书刊公司、郵便局の4社。

(12) 中国出版工作者协会ほか編. 中国出版年鉴 2009. 北京, 中国书籍出版社, 2009. による。

(13) 担当者の説明による。資料収集方針書については、「北京图书馆书刊采选条例」(1996)制定の後、2003年と2006年に改訂版「国家图书馆文献采选条例」が制定されたが、内部刊行のため未見。2003年改訂版の概略は、汪东波, 赵晓虹. 完善文献采选政策,建设国家总书库—《国家图书馆文献采选条例》修订概述. 国家图书馆学刊. 2004年第1期, p. 7-11,20. で紹介されている。

(14) 前掲注(1)。

(15) 牛春兰, 陈国英. 从报业发展看国家图书馆中文报纸馆藏建设. 国家图书馆学刊. 2004年第2期, p. 13-17.

(16) 赵嘉朱. 中国学位论文管理的历史回顾与前景展望. 中国社会科学院研究生院学报. 2006年第4期, p. 136-141.

(17) 秘密保持の種類や保持期間については、国家規格《文献保密等级代码与标准》(GB/T7156-2003)で規定されている。

(18) 担当者の説明による。

(19) 陈传夫ほか. 我国学位论文服务模式调查与服务机制创新. 图书馆. 2008年第4期, p. 59-62.

  • 参照(9405)
図書館調査研究リポート [5]
中国 [6]
国立図書館 [7]
中国国家図書館 [8]

3. 利用者サービス

  • 参照(4924)
図書館調査研究リポート [5]

3. 1. 閲覧サービスと閲覧室

 PDF版(3章)はこちら [28]

 

3. 1. 閲覧サービスと閲覧室

 

3. 1. 1. 利用資格と利用手続き

 国家図書館は満16歳以上を利用対象としている。ただし、少年児童図書館の利用対象は満6~15歳である。

 週末の連休及び法定祝祭日には、中学・高校生、保護者同伴の小学生以下の子どもも館内見学ができる。小中高生の団体見学は常時可能である。

 閲覧室に入室するとき、サービスポイントでサービスを受けるときは、いずれも国家図書館利用者カードが必要となる。満16歳以上の中国国民は、第二代身分証(1)の提示により開架閲覧室での閲覧が可能である。少年児童図書館入館には少年児童図書館利用者カードが必要となる。利用者カード所持者は国家図書館資料利用規則その他関係規則を遵守しなければならない。また、高齢者や障害者には利用に際して優遇措置が講じられている。

 利用者カードの種類と機能、発行手続きは表3.1のとおりである。

 

表3.1 中国国家図書館利用者カード一覧

カードの種類カードの機能利用可能範囲申請条件発行手続き登録有効期限
利用者カード基本機能普通閲覧室(開架・閉架)閲覧機能普通閲覧室(開架・閉架)の閲覧満16歳以上の中国国民及び外国人有効な本人身分証明書(身分証、軍人証、パスポート、香港・マカオ通行証、台湾同胞帰郷証、戸籍簿)を持参し、「国家図書館利用者カード申請書」に記入すればその場で発行される。初回手続きは手数料不要。3年
少年児童図書館利用者カード開架閲覧室閲覧機能少年児童図書館満6~15歳の少年・児童有効な本人身分証明書(身分証、戸籍簿、パスポート、香港・マカオ通行証、台湾同胞帰郷証)、学籍カード、学生証を持参し、「国家図書館少年児童図書館利用者カード申請書」に記入すればその場で発行される。初回手続きは手数料不要。1年
第二代身分証開架閲覧室閲覧機能普通開架閲覧室での閲覧満16歳以上の中国国民第二代身分証を所持する本人が開架閲覧室に直接来室する。3年
利用者カードまたは第二代身分証拡張機能基蔵資料閲覧機能基蔵書庫所蔵の資料が閲覧できる。資料利用は当日のみ。貸出不可。満16歳以上の中国国民及び外国人利用者カードまたは第二代身分証を持参し、申請書に記入し保証金100元を納付する。貸出機能の手続きを行えば、本機能は自動的に付与される。3年
中国語図書貸出機能中国語図書貸出室所蔵図書3冊、附録ディスク3点の貸出が可能。満16歳以上の中国国民利用者カードまたは第二代身分証を持参し、申請書に記入し保証金100元を納付する。基蔵資料閲覧機能が自動的に付与される。3年
外国語図書貸出機能基蔵書庫所蔵の外国語図書3冊(出版後20年以上経過した図書を除く)、附録ディスク3点の貸出が可能。満16歳以上の中国国民利用者カードまたは第二代身分証を持参し、申請書に記入し保証金1,000元を納付する。基蔵資料閲覧機能が自動的に付与される。3年

出典:“办理借阅证”. 中国国家图书馆・中国国家数字图书馆.
http://www.nlc.gov.cn/service/dzzn_bljyz.htm [29], (参照 2010-09-02). に基づき作成。

 

3. 1. 2. 閲覧室とサービスポイント

 国家図書館は原則として1年365日、法定祝祭日を含め毎日開館している。開館時間は次のとおりである。

 

本館南区(一期館)月曜~日曜9:00~17:00
本館北区(二期館)月曜~金曜9:00~21:00
 土曜、日曜9:00~17:00
古籍館月曜~金曜9:00~17:00

 

 各閲覧室及びサービスポイントで提供される資料とサービスの内容、サービス時間、利用条件は表3.2のとおりである。

 

表3.2 中国国家図書館閲覧室・サービスポイント一覧

名称提供資料サービス項目利用資格・カード要件サービス時間
本館北区(二期館・国家デジタル図書館)
総合レファレンスカウンター 来館及び非来館(電話)総合案内、一般的なレファレンス、蔵書検索支援 月~日
9:00-17:00
利用者カード受付 利用者カードの発行、第二代身分証の閲覧・貸出機能付与、機能変更、登録更新、チャージ等 月~金
9:00-21:00
土日
9:00-17:00(利用者カード機能の手続きは毎日
9:00-16:30)
目録検索区 OPAC検索、貸出延長手続き、閲覧予約等 月~日
9:00-17:00
中国語図書区面積約7,000m2、閲覧席728、休憩席50
最近刊行された中国語の人文・社会・自然科学図書及び附録CD-ROM、計約50万冊(点)
閲覧(図書は開架、CD-ROMは閉架)、電子資源サービス、所蔵資料に関するレファレンス、複写サービス、研究室サービス等国家図書館利用者カード又は第二代身分証(16歳以上)月~金
9:00-21:00
土日
9:00-17:00
参考図書区面積約2,000m2、閲覧席656
四庫全書及び関連叢書(影印版)、古典籍叢書、中国語・外国語参考図書、計約4万冊
開架閲覧、所蔵資料に関するレファレンス、複写サービス等国家図書館利用者カード又は第二代身分証(16歳以上)月~金
9:00-21:00
土日
9:00-17:00
名著区面積540m2、閲覧席64、休憩席10
著名な受賞図書、名著、影響力のある現代の叢書、各分野の古典的著作等、計約2万冊
閲覧(図書は開架、CD-ROMは閉架)、電子資源サービス、所蔵資料に関するレファレンス、複写サービス等国家図書館利用者カード又は第二代身分証(16歳以上)月~金
9:00-21:00
土日
9:00-17:00
アート・デザイン資料区面積1,100m2、閲覧席100、休憩席66
アート、デザイン関係の最近の中国語図書と附録CD-ROM、約7万冊
閲覧(図書は開架、CD-ROMは閉架)、電子資源サービス、所蔵資料に関するレファレンス、複写サービス等国家図書館利用者カード又は第二代身分証(16歳以上)月~金
9:00-21:00
土日
9:00-17:00
中国語新聞区最近2年分の国内主要新聞295紙、OPAC検索可能でマイクロ化・電子化されていない建国後の国内刊行中国語新聞原紙(香港・マカオ・台湾及び外国刊行の中国語新聞を除く)開架閲覧、電子資源サービス、所蔵資料のレファレンス、複写サービス等国家図書館利用者カード又は第二代身分証(16歳以上)月~金
9:00-21:00
土日
9:00-17:00
中国語雑誌区最近3年分の国内刊行中国語雑誌約7,000種、OPAC検索可能な基蔵書庫収蔵の合冊製本済中国語雑誌開架閲覧、電子資源サービス、所蔵資料のレファレンス、複写サービス等国家図書館利用者カード又は第二代身分証(16歳以上)月~金
9:00-21:00
土日
9:00-17:00
デジタル共有空間インターネット学習区、デジタル研究区、特殊サービス区、電子ビジネス区、インターネット交流区、メディアセンター等のデジタルサービス空間デジタル資源・インターネットサービス、マルチメディア・録音映像資源の視聴、携帯型電子書籍リーダーの提供、障害者サービス、情報リテラシー研修等国家図書館利用者カードで有料閲覧(1人1日1時間は無料)月~金
9:00-21:00
土日
9:00-17:00
学術活動区学術報告ホール(面積315m2、300人収容)、レクチャールーム4室、会議室3室各種会議、講座、研修  
セルフ複写コーナー1、2、4階に各1箇所セルフ複写サービス、複写代行サービス(対象:高齢者・障害者・妊婦)国家図書館利用者カード(磁気・ICカード)、第二代身分証月~金
9:00-21:00
土日
9:00-17:00
サービス受付 スキャニング、印刷、写真撮影、製本等 月~金
9:00-21:00
土日
9:00-17:00
少年児童図書館面積約650m2、閲覧席80
少年・児童用の図書・雑誌・新聞・マルチメディアディスク・デジタル資源、約2万2000冊
図書・雑誌・新聞の開架閲覧、ディスク類の閉架閲覧、デジタル資源サービス、読書指導等少年児童図書館利用者カード、
同伴保護者(1名のみ)は有効な身分証を提示する。
月~日
9:00-17:00
本館南区(一期館)
利用者カードサービス
利用者カード受付 利用者カードの発行、第二代身分証の閲覧・貸出機能付与、機能変更、登録更新、チャージ等 月~日
9:00-17:00
(利用者カード発行と保証金返還は月~日
9:00-16:30)
レファレンスサービス
総合レファレンスカウンター2階に2箇所、4階に1箇所来館及び非来館(電話)総合案内、一般的なレファレンス、蔵書検索支援 2階:月~日
9:00-17:00
4階:月~金
9:00-17:00
文献提供センター 文献提供、図書館間貸出、国際貸出 月~金
9:00-17:00
社会科学レファレンス室 口頭・電話・文書レファレンス、事実調査、ビジネス情報検索等 月~金
9:00-17:00
科学技術レファレンス室 口頭・電話・文書レファレンス、事実調査、科学技術最新情報調査、ビジネス情報検索等 月~金
9:00-17:00
企業情報サービスセンタ― 専用のサービスプラットフォームによる企業関係情報提供サービス 月~金
9:00-17:00
検索サービス
OPACサービスコーナー2階と4階に各1箇所OPAC検索、貸出延長手続き、閲覧予約等 2階:月~日
9:00-17:00(土曜は予約サービスなし)
4階:日~金
9:00-17:00(予約サービスは
9:00-16:00)
カード目録検索コーナー2000年以前の中国語図書、2003年以前の外国語図書、電子閲覧室資料、マイクロフィルム、中国語・外国語雑誌のカード目録等  月~日
9:00-17:00
参考図書閲覧室主要言語の百科事典、常用参考図書、辞書、伝記資料、書誌等開架閲覧国家図書館利用者カード又は第二代身分証(16歳以上)月~日
9:00-17:00
中国年鑑閲覧室中国(香港・マカオ・台湾を含む)の総合・分野別・統計年鑑(創刊号から最新号まで)閉架閲覧国家図書館利用者カード日~金
9:00-17:00
閲覧サービス:一般資料
台湾・香港・マカオ文献閲覧室台湾・香港・マカオ及び国外刊行の中国語図書・雑誌・新聞閉架閲覧国家図書館利用者カード(資料によっては紹介状が必要)日~金
9:00-17:00
日本出版物文庫閲覧室最近2年間に整理された日本出版物文庫図書及び附録CD-ROM開架閲覧国家図書館利用者カード又は第二代身分証(16歳以上)月~金
9:00-17:00
外国語文献第一閲覧室最近3年間に整理された欧文人文・社会科学類図書(法律・文学・芸術類を除く)及び附録CD-ROM閲覧国家図書館利用者カード又は第二代身分証(16歳以上)月~日
9:00-17:00
外国語文献第二閲覧室最近3年間に整理された科学技術類図書及び附録CD-ROM、最近2年の外国語新聞閲覧(外国語新聞は閉架)国家図書館利用者カード又は第二代身分証(16歳以上)月~日
9:00-17:00
外国語文献第三閲覧室最近3年間の欧文雑誌及び附録CD-ROM(法律類を除く)閲覧国家図書館利用者カード又は第二代身分証(16歳以上)月~日
9:00-17:00
外国語文献第四閲覧室最近3年間に整理された日・露語図書(法律・文学・芸術類を除く)、日・露・韓国・朝鮮語雑誌、日・露語索引誌及び附録CD-ROM開架閲覧国家図書館利用者カード又は第二代身分証(16歳以上)月~日
9:00-17:00
閲覧サービス:専門資料
学位論文閲覧室国内の博士・修士学位論文及びポスドク研究報告書、海外学位論文、計約30万冊閉架閲覧国家図書館利用者カード日~金
9:00-17:00
マイクロ文献閲覧室各種マイクロフィルム・マイクロフィッシュ閉架閲覧国家図書館利用者カード(資料によっては紹介状が必要)日~金
9:00-17:00
国際機関及び外国政府出版物閲覧室1949年以降の国連及び国連専門機関、国連関係機関、EU、OECD、ADB、CRS、RAND、GPO、カナダ政府等の出版物閲覧国家図書館利用者カード又は第二代身分証(16歳以上)月~金
9:00-17:00
貴重書閲覧室古典籍貴重書(マイクロフィルム・影印本を含む)、新貴重書、外国語貴重書、金石拓片、少数民族語古典籍、中外地図等閉架閲覧、カード目録・オンライン書誌検索、レファレンス、複写サービス国家図書館利用者カード(保証金100元を含む)
原本閲覧には紹介状が必要
月~金
9:00-16:45(12:00-13:00は出納休止)
敦煌トルファン文献閲覧室敦煌・トルファン学研究資料閉架閲覧、所蔵資料に関するレファレンス、複写サービス国家図書館利用者カード月~金
9:00-17:00
中国少数民族語文献閲覧室少数民族語の図書・雑誌・新聞開架閲覧、カード目録・オンライン書誌検索、レファレンス、複写サービス国家図書館利用者カード月~金
9:00-17:00
保存本閲覧室中国語保存本(=永久保存)図書、3年以前の保存本雑誌、3年以前の台湾・香港雑誌及び内部資料閉架閲覧(貸出本、閲覧本、基蔵本、電子化・マイクロ化資料のいずれも利用できない場合のみ閲覧可)国家図書館利用者カード(内部資料閲覧には紹介状が必要)日~金
9:00-17:00(資料出納は
9:00-12:00、13:00-16:30)
法律参考閲覧室2003年以降の中国語法律図書、最近3年間の中国語法律雑誌、1993年以降の欧文法律図書、最近3年間の欧文法律雑誌、2000年以降の日・露語法律図書、最近3年間の日・露語法律雑誌開架閲覧国家図書館利用者カード又は第二代身分証日~金
9:00-17:00
海外中国学文献研究センター1985年以降の欧文中国学図書、最近3年間の日・露語中国学図書、最近3年間の欧・日・露語中国学雑誌、国外中国学研究関係の中国語図書開架閲覧国家図書館利用者カード又は第二代身分証日~金
9:00-17:00
基蔵資料閲覧サービス
基蔵図書・雑誌出納台基蔵書庫所蔵の中国語・外国語図書及び外国語雑誌(中華人民共和国成立前の中国語図書・雑誌は含まない)閉架閲覧国家図書館利用者カード日~金
9:00-17:00
基蔵図書・雑誌閲覧室 基蔵図書・雑誌の閲覧国家図書館利用者カード日~金
9:00-17:00
基蔵外国語図書貸出出納台最近20年間の基蔵書庫所蔵の外国語図書館外貸出外国語資料貸出機能付き国家図書館利用者カード日~金
9:00-17:00
貸出サービス
中国語図書貸出室最近5年間の中国語図書(附録CD-ROMを含む)、約30万冊館外貸出中国語図書貸出機能付き国家図書館利用者カード又は第二代身分証月~日
9:00-17:00
24時間セルフ返却サービス南区東門に資料返却機を設置
厚さ6㎝、大きさ32㎝までの資料に対応
資料返却中国語図書貸出機能付き国家図書館利用者カード又は第二代身分証毎日24時間
その他のサービス
セルフ複写コーナー外国語文献第四閲覧室、海外中国学文献研究センター、国際機関及び外国政府出版物閲覧室に設置セルフ複写サービス、複写代行サービス(対象:高齢者・障害者・妊婦)国家図書館利用者カード(磁気・ICカード)、第二代身分証各閲覧室の開室時間
複写受付本館南区の利用者サービスエリア及び閲覧室複写、スキャニング、プリントアウト、マイクロフィルム引き伸ばし、写真撮影、製本、CD-ROM焼付 利用者サービスエリア:月~日
9:00-17:00
閲覧室:各閲覧室の開室時間
古籍館
利用者カード受付 利用者カード手続き 月~金
9:00-16:30
普通古籍閲覧室明・清・中華民国期の普通古典籍、中華人民共和国建国後に印刷された古典籍閉架閲覧、レファレンス、スキャニング、写真撮影、複写サービス国家図書館利用者カード(原本閲覧は修士課程在籍又は中級職称以上)月~金
9:00-17:00(資料出納は
9:00-12:00、13:00-16:30)
清史文献センター清史及び関連の大型史料叢書・研究書開架・閉架閲覧、複写サービス国家図書館利用者カード月~金
9:00-17:00(資料出納は
9:00-12:00、13:00-16:30)
地方志・家譜閲覧室1949年以前に編纂された地方志・家譜の原本閉架閲覧、レファレンス、複写サービス国家図書館利用者カード(原本閲覧は修士課程在籍又は中級職称以上)月~金
9:00-17:00(12:00-13:00は出納休止)
地方文献第一閲覧室1949年以降に編纂された全国各行政レベルの総合志、地方年鑑、地方志学研究参考書開架閲覧、レファレンス、複写サービス国家図書館利用者カード又は第二代身分証(16歳以上)月~金
9:00-17:00
地方文献第二閲覧室国内各業種志、地方政協文史資料、影印旧地方志、マイクロ化旧地方志、影印旧家譜、新家譜、関連参考書閉架閲覧、レファレンス、複写サービス国家図書館利用者カード月~金
9:00-17:00

出典:“读者指南 阅览室介绍”. 中国国家图书馆・中国国家数字图书馆.
http://www.nlc.gov.cn/service/ylsjs.htm [30], (参照 2010-09-02). に基づき作成。

 

3. 1. 3. 本館二期館(国家デジタル図書館)の閲覧サービスモデル(2)

 国家デジタル図書館として2008年9月9日に開館した本館二期館は、最新のIT技術を駆使し、次のような新たなサービスモデルを展開している。

  • 館内全域を無線LAN化し、利用者が館内のどこからでも個人の携帯PCを使ってインターネット接続できる。
  • デジタル資源を利用しやすいように、利用者用PCを約500台設置した。うち、デジタル共有空間に約250台、残りは他の区域に分散配置されている。
  • RFID(Radio Frequency Identification=無線自動識別)技術により、二期館閲覧エリアの資料の現在の排架位置情報がOPAC上で利用者に即座に提供される。
  • 来館利用者が電子図書・雑誌・新聞等を閲覧するのに便利なように、携帯型の電子書籍リーダーを提供し、館内に電子読書ステーションを設置している。
  • 視覚障害者サービス専用エリアが設置され、視覚障害者は画面読み上げソフト対応PCや、国家図書館と中国障害者連合会が共同で構築した「盲人デジタル図書館」によって、健常者と同様にデジタル情報資源へのアクセスが可能である。
  • バーチャルリアリティ技術により来館利用者にバーチャルナビゲーションサービスを提供し、同時にインターネット上で非来館利用者に館内バーチャルナビゲーションを提供している。
  • 国家デジタル図書館展示システムを通じて、ユーザーにデジタル図書館システムの利用方法の研修を行うと共に、国家デジタル図書館構築の成果を展示している。

 

3. 1. 4. 本館の閲覧サービス概況(3)

 本館二期館は地下3階、地上5階で、ガラス張りの建物である(4)。地下1階から地上4階までが閲覧スペースで、地下2~3階は書庫、地上5階は事務スペースとなっている。

 吹き抜けの中央閲覧室には国内外の参考図書(2階)、古典籍及び一次資料類の影印叢書(1階)、四庫全書関連の影印叢書(地下1階)が開架されている(図3.1)。また、地下1階には、ガラス張りの保存書庫を設けて、四大貴重蔵書(5)のうちの1つである『文津閣四庫全書』の原本を保存する(図3.2)。普段は幕が下ろされていて、内部の様子を窺うことはできないが、記念式典の際には、幕を上げてガラス越しに一般に披露される。

 さらに、中央閲覧室の周囲を取り囲むかたちで、地下1階から地上3階まで、回字型の閲覧室があり、最近5年間に出版された中国語図書約60万冊が開架されている。また、4階には逐次刊行物の閲覧室が設けられ、最新2年分の中国語雑誌7,000タイトル及び中国語新聞約300タイトルを開架している。

 中国語図書にはすべてRFIDタグが貼付されており、OAPCを検索すると資料が排架されている書架と段数が図で表示され、入口からの最短経路が画面上に表示される。そのほか、タッチパネル式の大型閲覧器を10台設置し、毎日クローラを用いて採取した電子版の新聞約200紙を閲覧提供している(図3.3)。

 

図3.1 本館二期館の中央閲覧室

図3.1 本館二期館の中央閲覧室

 

図3.2 文津閣四庫全書を収める保存書庫

図3.2 文津閣四庫全書を収める保存書庫

 

図3.3 タッチパネル式大型閲覧器

図3.3 タッチパネル式大型閲覧器

 

 4階のデジタル共有空間には約250台のPCが設置され、国内外の電子ジャーナル、データベース、電子書籍、視聴覚資料など約130種類以上のコンテンツが提供されている。インターネットも利用できる。利用者カードのID・パスワードを入力すれば、1時間は無料で利用できるが、1時間を越えて利用する場合には、事前に利用者カードに料金をデポジットしておかなければならない。利用料金は1時間当たり3元である。さらに、携帯型の電子書籍リーダーの貸与も行っており、これに閲覧用PCから電子資料をダウンロードして、館内の随意の場所で利用することもできる。また、新館内には無線LANが張り巡らされ、持ち込みのPCで館内LANにアクセスすることもできる。

 一方、本館一期館には、外国語資料、学位論文、古典籍資料など、専門性の高い資料を配置する。また、館外貸出用の閲覧室を設置し、最近3年間に出版された中国語図書を館外貸出している。国立図書館が館外貸出サービスを提供していることに関しては、中国では公共図書館の整備が十分でなく、国家図書館に対して公共図書館としての機能を求める声が根強いという事情がある。ただし、そうした要請に応える一方、限られた予算と人的資源のなかで、これらのサービスにどのくらいの力点を置くべきか、また今後も継続していくべきかについては、館内でも議論されているようである。実際、2007年末の機構改革に当たって、従来3つあった貸出閲覧室を2つに減らすなど、貸出サービスにかける比重を減少させている。ある幹部職員によると、国家図書館が提供している公共図書館の機能のうち、少なくとも館外貸出については、今後の公共図書館の整備状況や電子図書など代替メディアの進展具合を見ながら、さらに縮小する方向で調整していくつもりだという。

(岡村志嘉子、前田直俊)

 

注

(1) ICチップが埋め込まれた新式の身分証。

(2) 中国国家图书馆. 中国国家图书馆读者指南. 2009, p. 5.

(3) 2008年10月~2009年1月の前田の現地調査による。

(4) ドイツのKSPエンゲル・ツィンマーマン建築設計と華東建築設計研究院の合同設計。

(5) 『四庫全書』、『永楽大典』、『敦煌文書』、『趙城金蔵』の4つ。

  • 参照(7975)
図書館調査研究リポート [5]
中国 [6]
国立図書館 [7]
中国国家図書館 [8]

3. 2. レファレンスサービスと文献提供

 PDF版(3章)はこちら [31]

 

3. 2. レファレンスサービスと文献提供

 

3. 2. 1. レファレンスサービス

 一般利用者に対するレファレンスサービスは、参考レファレンス部に属する総合レファレンス組、社会科学レファレンス組、科学技術レファレンス組の3組によって行われている(6)。

 

(1) 総合レファレンス

 総合レファレンス組は、総合レファレンスカウンターで来館利用者の振り分けや簡単なレファレンスを行うほか、電話レファレンスや、インターネットを通じたバーチャル・レファレンスを担当している。

 バーチャル・レファレンスは、2006年末から提供を開始した比較的新しいサービスで、平日の午前9~11時、午後2~4時の間に、職員2名が常駐して、オンラインで利用者からの質問に回答している。質問形式は2種類あり、1つはチャット形式、もう1つは質問票形式である。チャット形式で寄せられる質問は1日平均30~40件で、検索の方法や資料の利用方法に関する問い合わせが多い。質問票形式は1日10件程度である。

 

図3.4 バーチャル・レファレンス

図3.4 バーチャル・レファレンス

 

図3.5 チャット形式

図3.5 チャット形式

 

(2) 人文社会科学レファレンス

 社会科学レファレンス組は人文社会科学分野のレファレンスを担当しており、職員は8名である。利用案内や文献の探し方など、簡単な質問に対しては、無料で回答している。また、有料での委託調査も行っており、主な調査内容としては、特定主題についての網羅的な文献調査、法律に関する文献調査、事柄・人物などについての事実調査、解題書誌の作成などが挙げられる。料金は担当する職員のレベルに基づいて算出される。事前に、調査に必要なレベルや時間を見積もった上で、依頼者と協議をして決定する。そのため、固定された料金体系は存在しないが、文献目録作成で300~500元、過去数年間の網羅的な研究論文調査で2,000~3,000元がおおよその目安である。

 

(3) 科学技術レファレンス

 科学技術レファレンス組は12名の職員からなり、うち9名が正職員、3名が退職後の再任用である。専門知識が必要とされるため人事異動は少なく、近年は再任用も多い。これは、上述の社会科学レファレンス組においても同様である。

 レファレンス調査についても、社会科学レファレンスと同様、簡単な調査以外は有料で行っている。主なものとしては、顧客が実施予定の研究プロジェクトについて、他に類似のプロジェクトが過去や海外で行われていないかを調査し、その研究の意義・効果・水準について評価を行って総合的な報告書を作成する「科技査新」や、論文の引用状況を調査する文献引用調査証明、科学技術分野における事実調査、技術面からのビジネス情報調査などが挙げられる。依頼受理数は年間5,000~6,000件である。

 なお、「科技査新」については、国家図書館のほか、中国科学院、中国科学技術信息研究所、北京大学図書館、清華大学図書館、上海図書館などでも同様のサービスを提供している。

 

3. 2. 2. 企業向けサービス

 企業向けサービスは企業サービス組が担当し、職員は33名(うち半数は非常勤職員)である。主な提供サービスは「クリッピング・サービス」、「メディア追跡調査」、「企業情報調査」、「新聞記念品サービス」の4種で、すべて有料で提供している。

 

(1) クリッピング・サービス

 1998年から開始したサービスである。常用顧客は約60で、科学研究機関、政府機関、企業など様々である。顧客の要求に応じて、特定の業界や商品などを対象に、全国各地の新聞・雑誌・インターネット情報を追跡して情報を収集する。毎日、毎週、毎月など期間を区切って、その期間内の関連情報を網羅的に調査し、原紙のコピーとともに、発行量、発行地域、抄録、版面形式、字数、面積、広告価値、抄録などの付加情報を加える(図3.6-3.8)。サービス開始当初は文字通り紙の新聞を切り貼りして提供していたが、最近では電子媒体での提供が主流となっている。従来どおり冊子体での提供も行っている。また、最新の情報のみならず、過去の報道を遡って収集・整理するサービスも行っている。

 

図3.6 冊子体の報告書

図3.6 冊子体の報告書

 

図3.7 左が付加情報、右が原紙のコピー

図3.7 左が付加情報、右が原紙のコピー

 

図3.8 付加情報

図3.8 付加情報

 

(2) メディア追跡調査

 新聞・雑誌・インターネット等で公開された、特定の業界に関する報道、ニュース原稿、記者会見資料、広報活動資料などを追跡・収集し、要求に応じて選別・整理・分析を行うサービスである。ネット上の情報を収集する際には、事前にキーワードを設定して、自動で当該キーワードを含む情報を採取したのち、職員が選別する方法を採っている。提供にあたっては、顧客向けの専用ポータルサイトを設け、顧客自らがログインして、依頼した情報をオンラインで入手することができる。常用顧客数は約100である。

 

(3) 企業情報調査

 顧客の指定する業界や競争相手企業の最新情報、統計データ、文献情報などを調査し、報告書を作成するサービスである。ブランド商品のキャッチ・コピーや広告の投入状況を調査して、広告価値の評価も行っている。調査対象は公開された情報に限られる。大企業は自社で調査部門を設置しているところが多いため、中小企業の利用者が比較的多い。

 

(4) 新聞記念品サービス

 誕生日や記念日などの新聞を選び、感光製版や水晶鍍金で記念品を作成するサービスである(図3.9)。

 

図3.9 北京オリンピックの記事を使った記念品

図3.9 北京オリンピックの記事を使った記念品

 

3. 2. 3. 文献提供センター

 文献提供センターは1997年に設置された。以前は典蔵閲覧部に属していたが、2007年末の機構改革の際に、参考レファレンス部に編入された。職員数は25名である。

 

(1) 図書館間貸出と遠隔複写

 年間の処理件数は、図書館間貸出が約1,000件、遠隔複写が3~4万件である。

 図書館間貸出は、事前に申請・登録を行った機関のみが対象である。貸出の対象となる資料は、中国語図書の基蔵本ならびに出版後3年が経過した外国語図書に限られる。遠隔複写は機関、個人のいずれも申し込むことができる。両サービスとも国家図書館の蔵書で応えられない場合は、国内外の他館の所蔵を調査し、代理で処理をするサービスも提供している。

 

(2) 料金体系

 図書館間貸出と遠隔複写はいずれも有料サービスで、図書館間貸出は、中国語図書が10元/冊、外国語資料が15元/冊で、梱包費と郵送料が含まれている。遠隔複写の料金は、以下の計算式で算出される。

 

(検索料金+複写料金+梱包費)×手数料130%+郵送料

 

 検索料金は、利用者の申込情報に不備があった場合に課されるもので、国家図書館の蔵書検索については2元/件、他機関の所蔵調査については10元/件が課金される。通常は申込を受け付けてから2~3日で処理されるが、当日中の処理を希望する場合は、括弧内の料金が2倍となる。合計が50元以下は後払い、50元以上は先払いとなっている。また、他機関への代理処理の場合は、さらに図3.10のⒶ郵送料とⒸ利用料を利用者が負担する。Ⓑ郵送料は国家図書館と他機関の間で相殺処理される。

 

図3.10 遠隔複写のフロー

図3.10 遠隔複写のフロー

 

(3) 申込方法

 「図書館間貸出及び文献提供システム」【馆际互借与文献传递系统】(7)で、インターネットを通じて申し込むことができる。

(前田直俊)

 

注

(6) 参考レファレンス部は、その他、利用者カード組、企業サービス組、文献提供組、複写組からなる。

(7) CALISで使われているシステムを国家図書館向けに改修したシステム。2009年に導入された。
“馆际互借网关登陆”. 中国国家图书馆. http://202.96.31.83/gateway/index.jsf [32], (参照 2010-09-02).

  • 参照(5883)
図書館調査研究リポート [5]
中国 [6]
国立図書館 [7]
中国国家図書館 [8]

3. 3. 立法・行政に対するサービス

 PDF版(3章)はこちら [31]

 

3. 3. 立法・行政に対するサービス

 

3. 3. 1. 業務体制

 

 国の立法及び政策決定に必要な文献情報や各種レファレンスサービスの提供は、国家図書館が一貫して重要なサービス項目の一つと位置付けてきたものである。国家図書館は1998年の全館的な機構改革を機に、担当部局を一元化しサービスを大きく進展させた。

 1999年、中央国家機関の立法及び政策決定のためのレファレンスサービスを専門に担当する国家立法・政策決定サービス部が、参考研究部の中に置かれた。参考研究部が国家立法・政策決定サービス部という組織も併せ持つ形で、立法・行政に対するサービスを順次拡大していった。その後、2007年末に国家立法・政策決定サービス部は参考研究部から独立し、専門の部局による本格的なサービス実施体制が確立した。新たに設立された立法・政策決定サービス部は、2008年初頭の職員数が27名、2009年10月には48名まで増員された。さらなる業務拡大と人員増が今後の課題である。

 

3. 3. 2. 立法・政策決定サービス部の業務内容

 立法・政策決定サービス部では、国家図書館の豊富な文献情報資源を基礎に、多様な専門性を有するレファレンス担当職員を通じて、厖大な情報の中から有用な情報を検索、抽出、分析し、サービス対象に提供している。提供するサービスの種類は、クリッピング・サービス、世論分析、戦略情報分析、主題レファレンス、研究動向報告、サービスプラットフォーム構築、中央国家機関附設図書館の全体設計プラン策定、業務研修・講座開講などである。

 立法・政策決定サービス部はサービス拡充の一環として、海外中国学文献研究センターと法律参考閲覧室を2009年9月に開室した。また、2010年6月には、立法・政策決定サービスの質的向上を目的として、「国家図書館国情レファレンス顧問委員会」と「国家図書館国情レファレンス専門家委員会」を発足させた。顧問は、政府機関の要職にある者など34名、専門家は各分野の学者など19名が委嘱された。任期はそれぞれ3年である。これら外部有識者の参画によって、立法・政策決定サービスの一層の質的向上を目指している。

 

3. 3. 3. 重点サービス項目

 

(1) 中国共産党と国の主要指導者のための文献情報サービスの提供

 中国共産党と国の主要指導者に対するレファレンスサービスは、中華人民共和国成立当初から国家図書館の重要な業務と位置付けられ、実施されてきた。近年では恒常的な業務となり、件数も増加している。年間処理件数は少ない年で20件余、多い年には60件余に上る。2003年末、温家宝首相の訪米準備として、「和して同ぜず」について3万字の詳細な調査報告を作成したことが、その代表的な事例である。

 

(2) 全国人民代表大会代表と中国人民政治協商会議委員に対する文献情報レファレンスサービスの提供

 全国人民代表大会と中国人民政治協商会議(中国では両者を併せて「両会」という。年1回、3月開催)の参加者に対し、審議参加、法案・議案作成に必要な文献情報やレファレンスサービスを提供する。1998年3月の「両会」会期中、全国人民代表大会情報センターと連携してサービスを行ったのが始まりである。翌1999年3月の「両会」会期中、「両会レファレンスサービス処」が初めて設置され、「サービス用語の規範化、業務手順の制度化、レファレンス回答は当日中に依頼者に届ける」という方針の下に、24時間レファレンスホットラインサービスを実施した。

 2001年以降、国家図書館は全国人民代表大会情報センターとの密接な協力の下、会議が開かれる人民大会堂と参加代表団の宿泊先にサービスステーションを設置し、レファレンス担当職員が直接各参加者に文献情報サービスを提供している。2008年3月、国家図書館立法・政策決定サービス全国人民代表大会プラットフォームがテスト稼働、同12月に本格稼働した。

 また近年、国家図書館の「両会」レファレンスサービスをサービスモデルとして、中国国内の各省立図書館も各省の「両会」代表に対するサービスに取り組むようになってきている。

 

(3) 全国人民代表大会の常務委員会と各専門委員会の委員に対するサービス

 全国人民代表大会の常務委員会と9つの専門委員会の委員に対する文献情報提供サービスは、2003年7月から開始された。年1回の「両会」会期中のみのサービスから通年のサービスに転換したことは、中国の最高権力機関ならびに立法機関である全国人民代表大会に対する国家図書館のサービスが、より実質的なサービスを提供する段階に入ったことを意味している。

 主なサービス内容は、全国人民代表大会常務委員会で審議中の法案に関する基本資料・背景説明資料、法律の基本概念・定義その他関連文献資料の提供のほか、法案の起草や検討に必要な主題に関するレファレンスなどである。

 

(4) 行政機関等への分館の設置

 国の行政機関等に国家図書館分館を設置し、国家図書館と各分館が自主、平等を基礎とし、人的・文献的資源の共同構築・共同利用という手段によって政策立案・政策決定に必要な情報サービスを提供する。制度整備に当たっては、当館の支部図書館制度が参考にされた。

 現在設置されている分館とその設置年月は次のとおりである。

 

  • 人事部分館(1999年6月)
  • マクロ経済分館(2000年7月)
  • 労働・社会保障部分館(2001年5月)
  • 財政部分館(2004年1月)
  • 中国民航分館(2006年6月)
  • 民政部分館(2008年8月)
  • 交通運輸部分館(2009年12月)
  • 中央社会主義学院分館(2010年6月)

 

(5) 「中南海ウェブサイト」デジタル資源構築プロジェクト

 2002年末、国家図書館は中南海(=中国共産党中央委員会と国務院の所在地。政権の中枢を指す。)各部門にサービスする「中南海ウェブサイト(国家図書館データベース)」デジタル資源構築プロジェクトを正式に始動させた。第一段階のコンテンツとして構築されたのは、「世界各国基本資料庫」「国際機関資料庫」「世界遺産資料庫」「ホットイシュー資料庫」「二十世紀大事典資料庫」「新刊書推薦」の計6種類の文字・画像・映像資料を一体化した主題データベースである。

 「中南海ウェブサイト」は2004年10月18日、国務院弁公庁において本格稼働したのに続き、中国共産党中央弁公庁に対しても、2007年4月26日から同様のサービスを提供している。

 

(6) 閣僚級指導幹部に対する歴史文化講座

 閣僚級指導幹部に対する歴史文化講座は、中国共産党中央国家機関工作委員会、文化部、中国社会科学院が共催し、国家図書館が実施主体となって2002年から開始された。内容は古今の哲学、歴史文化、民族宗教、文学芸術、時事問題、社会経済と多岐にわたり、各分野の著名な学者が講師を務める。開催回数は、2002年の初回から2008年までに100回を超えている。

 

(7) 国家図書館立法・政策決定サービスプラットフォーム

 国家図書館立法・政策決定サービスプラットフォームは、中央国家機関に対し立法・政策決定の参考情報を総合的に提供するデジタル化情報サービスプラットフォームとして、2008年12月に本格稼働した。全国人民代表大会及び各分館向けにカスタマイズされたプラットフォームが整備されている。

(岡村志嘉子)

  • 参照(4629)
図書館調査研究リポート [5]
中国 [6]
国立図書館 [7]
中国国家図書館 [8]

4. 電子図書館事業

  • 参照(5030)
図書館調査研究リポート [5]

4. 1. 電子図書館業務

 PDF版(4章)はこちら [33]

 

4. 1. 電子図書館業務

 電子図書館事業は、国家図書館が近年特に重点的に取り組んでいる事業の一つである。国家図書館では長らく、パッケージ系電子出版物、ネットワーク系電子出版物、デジタル化事業、ホームページ管理など、電子図書館事業関連の業務を担当する部署が複数に分散していた。2007年末の機構改革により、新たにデジタル資源部が設置され、電子図書館に関するこれらの業務は、全てデジタル資源部に集約された。電子図書館関連業務を一元的に担当するデジタル資源部は、その後も人員増など業務体制の強化が図られている。本節では、デジタル資源部の業務の概況を紹介する。

 同部内には、収集を担当するデジタル資源収集組、組織化を担当するデジタル資源組織化組、所蔵資料のデジタル化を担当する文献デジタル化組、利用提供を担当するデジタル資源サービス組、ホームページを管理するウェブサイト管理組、著作権を始め法律に係る業務を担当する著作権管理組、国家デジタル図書館分館に係る事務を担当する国家デジタル図書館分館サービス組の7つの組が設けられている。職員は107名である。

 

(1)収集

 デジタル資源収集組は、パッケージ系電子出版物【实体型电子出版物】の収集ならびに国内オンラインデータベースの契約事務を担当している(1)。職員は12名である。

 2008年度年報によると、パッケージ系電子出版物の年間の受入数は、録音映像資料が7,383種15,399点、その他の電子出版物が2,765種4,945点である。収集経費は、資料購入費全体の約8%を占めている(2)。

 電子出版物については、「電子出版物出版管理規定」(3)及び「録音映像製品出版管理規定」(4)によって、国家図書館、版本図書館、新聞出版総署に納本するよう定められている。従って、パッケージ系電子出版物の収集においては、納本が約70%と主な手段となっているものの、納本漏れも多く、管理体制の不十分さが指摘されている(5)。

 一方、オンラインデータベースについては、納本に関する法的な枠組みがないため、購入契約や許諾契約など他の方法によって収集している。

 

(2)組織化、インターネット情報の収集、ナビゲーションサービス

 デジタル資源組織化組は、パッケージ系電子出版物とネットワーク・データベースの組織化、インターネット情報の収集組織化、ナビゲーションサービスなどを担当している。職員は19名である。

 

①インターネット情報の収集

 国家図書館では、2003年1月より「ウェブ情報資源収集保存実験プロジェクト(Web Information Collection and Preservation:WICP)」を実施しており、主に政府ウェブサイトと主題ウェブサイトを対象とした選択的な収集を行っている(6)。

 政府ウェブサイトの収集は、「gov.cn」ドメインを対象とする。収集・組織化したウェブサイトは、収集した時点の状態のまま保存して館内PCで閲覧提供する。さらに、「中華人民共和国政府情報公開条例」(7)の施行にともない、政府情報の総合的な検索窓口としての機能を果たすため、2009年4月から「中国政府公開情報統合サービスプラットフォーム【中国政府公开信息整合服务平台】」(8)を公開し、WICPで収集した政府情報のほか、各政府機関ウェブサイトへのリンクなどを提供している(図4.1)。さらには、過去に紙媒体で出された政府出版物のデジタル化を行い提供することも視野に入れている(9)。

 主題ウェブサイトの収集は、北京オリンピックや四川大地震など、政治、文化、経済、科学技術などの分野において、その年の大きな出来事を中心に主題を設定し、関連ウェブサイトの収集を行っている。これまでに30主題500種のサイトを収集・保存している。収集したウェブサイトは「中国事典」(10)でインターネットを通じて提供している(図4.2)。

 

図4.1 中国政府公開情報統合サービスプラットフォーム

図4.1 中国政府公開情報統合サービスプラットフォーム

 

図4.2 中国事典

図4.2 中国事典

 

②ナビゲーションサービス

 ナビゲーションサービスは、「図書館界【图书馆界】」、「新農村建設【新农村建设】」、「電子逐次刊行物ナビゲーション【电子报刊导航】」の3種類がある。

 「図書館界」(11)は国家図書館が主体となって作成するポータルサイトで、図書館に関する最新情報、会議情報、研究動向、機関リポジトリサービス、そして図書館、文書館、類縁機関のホームページへのリンクなどを提供する(図4.3)。

 「新農村建設」(12)は農業科学院がコンテンツを作成しており、農林分野の最新情報、研究機関案内、論文、会議情報などを提供する(図4.4)。

 「電子逐次刊行物ナビゲーション」(13)はインターネット上で公開されている電子版の雑誌と新聞をナビゲートする(図4.5)。

 

図4.3 図書館界

図4.3 図書館界

 

図4.4 新農村建設

図4.4 新農村建設

 

図4.5 電子逐次刊行物ナビゲーション

図4.5 電子逐次刊行物ナビゲーション

 

(3)デジタル化事業

 所蔵資料のデジタル化事業は文献デジタル化組が担当している。

 国家図書館における資料デジタル化の嚆矢となったのは、国際敦煌プロジェクトの一環として、1998年から行ったデジタル化事業である。その後、2003年に科学技術部のデジタル化プロジェクトに参加するなどして、経験を蓄積してきた。2005年には国家デジタル図書館プロジェクト建設開始が国務院により承認され、「2003-2005年国家図書館デジタル資源構築計画」「2006-2010年デジタル資源構築計画」などの関連諸計画を策定して、所蔵資料のデジタル化を進めている。2008年末現在で、図書30万冊分、メタデータ54万件分のデジタル化が終了している。毎年のデータ増加量はメタデータ単位で14万件である。

 主なコンテンツは、地方志、甲骨資料、金石拓片、西夏文献、年画、民国図書、民国雑誌、民国法律などで、全て国家図書館のホームページで閲覧することができる(14)(図4.6)。また、2.2.でも紹介した通り、中国語の新刊書を年間5万冊、博士論文を年間3万冊の規模でデジタル化を進めている。最近では、民国期の新聞をデジタル化するプロジェクト「DiNeR」が開始され(15)、2008年には試験的に『益世報』400版面分のデジタル化と全文テキスト化が行われた(図4.7)。また、2006年からは、ネットで公開されているPDF版の新聞についても、新聞社の許諾が得られたものについて保存を行っている。

 

図4.6 地方志のデジタル化

図4.6 地方志のデジタル化

 

図4.7 新聞のデジタル化

図4.7 新聞のデジタル化

 

(4)著作権処理

 資料のデジタル化に係る著作権の処理は著作権管理組が担当する。法律の専門知識を有する職員6名のほか、外部の法律顧問2~3名から成っており、著作権処理に関する規程の策定や著作権処理の実務のほか、図書館全体の法律に関わる事項、及び図書館法の立法活動に関わる業務も担当している。

 また、内部刊行物『デジタル著作権通報』【数字版权传真】を発行して、国内外の最新動向を紹介するほか、館内の関係部署を対象に研修を開催するなどして、館内全体の著作権に対する理解の向上を図っている。

 

(5)閲覧サービス

 電子資料は、主に本館二期館の4階にあるデジタル共有空間で提供されている(図4.8)。同空間は、全体が7つのエリアに区分され(16)、約250台のPCが設置されている。設計当初はエリアごとに異なったコンテンツを提供する予定であったが、現在は実質的な区別はなく、一部を除いてほぼ全てのPCで同じコンテンツが提供されている。

 国内外の電子ジャーナル、データベース、電子書籍、視聴覚資料など約130種類以上のコンテンツが提供されており(17)、インターネットも利用できる。利用者カードのID・パスワードを入力すれば、1時間は無料で利用できるが、1時間を越えて利用する場合には、事前に利用者カードに料金をデポジットしておかなければならない。利用料金は1時間当たり3元である。さらに、携帯型の電子書籍リーダーの貸与も行っており、これに閲覧PCから電子資料をダウンロードして、館内の随意の場所で利用することもできる(図4.9)。

 インターネットが1時間無料で利用できるため、ネットサーフィンが目的の利用者が多く、常に満席の状態で空きがない。そのため、他の電子資料の利用に支障をきたしており、近い将来には、インターネットの利用は有料に、その他の電子資料の利用は無料に切り分けることを検討中である。

 

図4.8 デジタル共有空間

図4.8 デジタル共有空間

 

図4.9 携帯型電子書籍リーダー

図4.9 携帯型電子書籍リーダー

 

 商用データベースの中で利用率が高いのは、中国学術データベース(CNKI)(18)と方正電子図書(19)である(図4.10)。紙への複写ができるほか、契約で許諾を得ている電子資料については、USBメモリへ保存して持ち帰ることもできる。紙に複写する場合は、PCからネットワークを通じて複写センターに印刷指示を送信し、センターに設置されたリーダーに利用者カードを読み込ませて、複写物を受け取る。利用者カードにはデポジット機能が備えられているので、カードを読み込ませると同時に複写料金の精算も行われる(図4.11)。

 

図4.10 方正電子図書

図4.10 方正電子図書

 

図4.11 プリントシステム

図4.11 プリントシステム

 

(6)国家デジタル図書館分館

 国家図書館では2005年より、国家デジタル図書館分館事業を推進している。これは、国家図書館のデジタル資料を、ミラーリングや直接配信などの方法により、中国各地の図書館で利用できるようにする事業で、2010年8月末現在、四川省図書館、山西省図書館、陝西省図書館など合計16の図書館が分館となっている。また、電子図書館分野における人材育成を目的として、分館の職員を対象とした研修なども開催している。本事業に係る業務は国家デジタル図書館分館サービス組が担当している。

(前田直俊)

 

注

(1) 海外のオンラインデータベースの契約業務は外国語収集整理部が担当。

(2) 全資料費144,915,793元のうち12,055,311元(内訳:録音映像資料159,451元、電子出版物11,895,860元)。2008年末の為替(1元≒13.2円)で換算すると、全資料費約19億円のうち、約1.6億円となる。

(3) 新聞出版総署令第34号(2008年2月21日公布)

(4) 新聞出版総署令第22号(2004年6月17日公布)

(5) 王志庚. 国家图书馆的数字资源建设. 国家图书馆学刊. 2008年第3期, p. 18-22.

(6) 李春明. “中国国家図書館におけるネットワーク情報保存の現状と将来計画”. 国立国会図書館. 2009-11-26. http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/pdf/theme1_nlc.pdf [34], (参照 2010-09-02).

(7) 概要と全文訳は、岡村志嘉子, 刈田朋子. 中国の政府情報公開条例. 外国の立法. 2008, (235), p. 146-168. http://www.ndl.go.jp/jp/data/publication/legis/235/023505.pdf [35], (参照 2010-09-02).

(8) 中国政府公开信息整合服务平台. http://govinfo.nlc.gov.cn/ [36], (参照 2010-09-02).

(9) “国家图书馆专家谈政府公开信息资源的开发和利用”. CNET科技资讯网. 2009-02-06.
http://www.cnetnews.com.cn/2009/0206/1337541.shtml [37], (参照 2010-09-02).

(10) 中国事典. http://210.82.118.162:9090/webarchive/index.swf [38], (参照 2010-09-02).

(11) “图书馆界”. 中国国家图书馆・中国国家数字图书馆. http://www.nlc.gov.cn/yjfw/ [39], (参照 2010-09-02).

(12) 网络资源科学信息导航. http://navi.nlc.gov.cn:8080/science_navi/webcenter/index.jsp [40], (参照 2010-09-02).

(13) 电子报刊导航. http://navi.nlc.gov.cn:8080/newspaper_navi [41], (参照 2010-09-02).

(14) 各コンテンツの詳細については、以下を参照。
陳力. “中国国家図書館の中国語デジタル資源構築”. 国立国会図書館. 2007-11-06.
http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/data/pdf/nlc27_2_chen.pdf [42], (参照 2010-09-02).

(15) 李春. “中国国家図書館新聞デジタルリポジトリー(DiNeR)プロジェクト”. 国立国会図書館. 2007-11-07. http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/data/pdf/nlc27_6_li.pdf [43], (参照 2010-09-02).

(16) 「eラーニングエリア」、「研究調査エリア」、「特別サービスエリア」、「ビジネスエリア」、「ネットワーク交流エリア」、「メディアセンター」、「全国文化情報資源共有プロジェクト体験エリア」の7つ。

(17) 提供コンテンツはホームページで確認できる。
数字资源检索系统. http://dportal.nlc.gov.cn:8332/nlcdrss/database/sjk_lb.htm [44], (参照 2010-09-02).

(18) 清華同方が提供する総合的な学術情報データベース。学術雑誌、新聞、学位論文、会議論文、年鑑などを収録している。

(19) 方正Apabiが提供する電子書籍データベース。

  • 参照(6902)
図書館調査研究リポート [5]
中国 [6]
国立図書館 [7]
中国国家図書館 [8]

4. 2. 国家デジタル図書館の発展構想

 PDF版(4章)はこちら [33]

 

4. 2. 国家デジタル図書館の発展構想

 国家デジタル図書館の現況と将来構想について、2009年11月に行われた国家図書館と当館との業務交流で中国側から報告があった。その報告資料(20)の要点を以下に紹介する。

 

デジタル資源の構築

 デジタル資源の構築に関する我々(筆者注:国家図書館)の全体目標は、中国語デジタル資源を網羅的・系統的に収集・組織化・統合し、中国語デジタル資源のメタデータ登録・高価値化・創出センターを構築し、中国語デジタル資源の調達・長期保存・サービスセンターとなることであり、また、必要な外国語デジタル資源を選択的に購入・所蔵し、サービスを提供することである。

 国家デジタル図書館のデジタル資源構築の原則は次のとおりである。まず、方正中国語電子図書、同方中国語逐次刊行物データベース、大型参考図書など、代表的な中国語全文データベースを収集する。次に、所蔵資料のデジタル化については、甲骨、拓片、年画、敦煌文献、地方志、民国文献など、中国の歴史や文化を代表する、特色のある文献を優先する。3番目として、ウェブページの収集・組織化を重視し、中国学、無形文化遺産や第29回オリンピックなど、重要なできごとや特定の主題に関する情報の収集に力を入れる。4番目として、国際敦煌デジタル化プロジェクトやワールドデジタルライブラリーのような、デジタル資源の共同構築・共同利用を積極的に展開する。

 国家図書館は1980年代に中国語及び外国語のデータベースと電子出版物の購入、所蔵資料の書誌データベースの大規模な構築を開始した。1998年には所蔵資料のデジタル化を開始し、2002年にウェブページの収集・保存・サービスに関する検討を開始した。2008年末現在、国家図書館のデジタル資源は計250TBに達した。そのうち自館構築の資源が200TB、デジタル化した文献は1億1,200万ページを超える。購入した中国語・外国語のデータベースは200種以上で、データ量は50TBに上る。

 

ネットワーク化情報サービス

 1990年代の初め、国家図書館は電子閲覧室を開設し、デジタル図書館とネットワーク情報サービスの検討と実験を開始した。1997年に館のウェブサイトを開設し、国家図書館のネットワーク情報サービスは急速に発展した。2008年9月9日、国家図書館二期及び国家デジタル図書館が開館し、ネットワーク情報サービスの発展がさらに促進されることになった。2008年の国家図書館ウェブサイトへのアクセス数は、2007年と比べ44.7%増加している。

 近年、国家図書館はコンピュータネットワークを基盤として、データベース検索、バーチャルレファレンス、情報配信、文献提供などのサービスを展開してきたばかりでなく、常にサービス方法の刷新に努め、次のような新たなサービスを展開している。

(1)基層図書館へのサービス

 2005年から全国各地で選択的に「国家デジタル図書館分館」を構築し、ミラーサイトや直接配信などの方法で、当館(筆者注:国家図書館)の質の高いデジタル資源を各市の分館に送信している。国家デジタル図書館の情報サービスネットワークは、ひととおり全国に行き渡った。

(2)モバイルデジタル図書館サービス

 2007年、先進的なモバイル技術を図書館サービスに導入し、携帯電話を媒体とする国家デジタル図書館モバイルサービス―てのひら国家図書館―を開始した。このサービスを通じて、利用者はいつでもどこでも図書館の資源とサービスを知り、また利用することができる。このプラットフォームによるショートメールサービス、携帯電話閲覧、国家図書館漫遊などのサービスが既に稼働している。

(3)視覚障害者デジタル図書館サービス

 2008年10月14日、国家図書館と中国障害者連合会情報センター、中国点字出版社が連携して共同構築した中国視覚障害者デジタル図書館のウェブサイトが正式に稼働した。

(4)デジタルテレビサービス

 国家図書館と北京歌華ケーブルテレビが提携し、デジタルテレビでの配信に適した図書館資源・サービスを、北京地域のケーブルテレビネットワークを通じて、300万戸のデジタルテレビ利用家庭に送り届ける。ユーザーは、デジタルテレビを通して「国家図書館講座」「国家図書館展覧」「テレビ閲覧」「国家図書館の名品」などのサービスが利用できるだけでなく、インタラクティブ・ポータルを通じて、さらに多くのカスタマイズサービスを受けることができる。

(5)タッチパネル式電子新聞閲覧サービス

 出力装置をタッチパネル式の端末に変更し、利用者がよりリアルに電子新聞やデジタル資源を閲覧できるようになった。現在、新聞200種、雑誌40種を閲覧に供しており(毎日更新)、利用者は紙面を自由に移動、縮小、拡大、ページめくりすることができる。

 

発展戦略構想

 

(1)戦略目標

 国家デジタル図書館は国の書誌センターであるだけでなく、インターネット上の国の情報・知識・サービスセンターとして、国の公共文化サービス体系を整備する上で不可欠の重要な役割を果たし、世界の中で信頼に足る中国語情報・知識資源センターとなることを長期目標とする。

 戦略目標として掲げるのは次の3機能である。

  • ①デジタル資源のアグリゲーター
  • ②国のデジタル情報インフラにおける情報資源センター
  • ③インターネット上の高品質な中国語デジタル資源サービスセンター
(2)戦略計画

 上記戦略目標を実現するため、デジタルコンテンツ、ブランドサービス、技術推進の三大戦略を策定・実施しなければならない。

 ①デジタルコンテンツ戦略 1つは国家デジタル図書館所蔵コンテンツの価値を高めることを目指した計画であり、もう1つは国家デジタル図書館所蔵コンテンツの優位性を向上・拡大する計画である。前者では、各種文献情報資源の統合・組織化を通じて、所蔵文献情報へのアクセシビリティを高めることにより、所蔵文献の社会的価値とサービス・パフォーマンスを効果的に向上させる。後者では、インターネットをベースに、中国に立脚し、世界に向けて、中国語文献・情報・知識のサービスプラットフォームを構築し、国家図書館の国内的、国際的な影響力を高める。

 ②ブランドサービス戦略 サービスは、いかなる図書館においても中核となる価値を最終的に体現するものであり、国家図書館も例外ではない。国家図書館は、国家デジタル資源ポータルの構築を加速し、良質な情報資源のナビゲーターとなり、より系統的、完全で、科学的な専門情報サービスをユーザーに提供していく。

 ③技術推進戦略 図書館の発展は、例外なく技術発展と密接に結び付いている。国家図書館は成熟した情報技術を利用して、文献・情報・知識コンテンツを収集・組織化・サービス提供し、完全な中国国家デジタル図書館デジタル情報資源アクセスシステムを構築する。

(岡村志嘉子)

 

注

(20) 詹福瑞. “中国国家デジタル図書館の発展構想”. 国立国会図書館. 2009-11-25.
http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/pdf/keynote_nlc.pdf [45], (参照 2010-09-02).

  • 参照(5901)
図書館調査研究リポート [5]
中国 [6]
国立図書館 [7]
中国国家図書館 [8]

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リンク
[1] http://current.ndl.go.jp/files/report/no12/lis_rr_12.pdf
[2] http://current.ndl.go.jp/files/report/no12/lis_rr_12_toc.pdf
[3] http://current.ndl.go.jp/files/report/no12/lis_rr_12_data.pdf
[4] http://current.ndl.go.jp/files/report/no12/lis_rr_12_stat.pdf
[5] https://current.ndl.go.jp/taxonomy/term/3
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